JP3840405B2 - 沈埋函及び沈埋函を用いた異形シールド機の発進・到達方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、海底又は湖底等にトンネルを構築するための沈埋函に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
沈埋函を用いて海底トンネルを構築する場合、図5に示すように沈埋函30を海底に並べるように沈めたのち、これら沈埋函30を土砂35で埋め、地山2側に形成したトンネル31に接続するようにしている。
【0003】
沈埋函30と地山2側のトンネル31との接続は、一般に通常の土木工事で行っている。
【0004】
本出願人は、このような海底トンネルをより効率よく構築する方法を研究する中で、シールド機(図示せず)を地山2側から沈埋函30の内部まで掘進させる技術を発案した。
【0005】
この技術は、シールド機の外周を囲繞して収容する金属製のスライドフード(図示せず)を沈埋函30の本体部32に出没自在に設け、シールド機を発進又は到達させる時にスライドフードを地山に近接させるものである。埋め立てられた軟弱な地盤をほとんど掘進しなくてよくなり、安定してシールド機を掘進させられるという優れた効果を発揮する。
【0006】
この技術に使用されるシールド機としては、断面円形のものが考えられている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、図6に示すように沈埋函には複数のトンネルを区画形成するものがある。このような沈埋函33と地山2側のトンネル31とを接続する場合、複数のカッタを組み合わせて形成された多芯円シールド機(図示せず)を沈埋函33の内部まで掘進させられると、複数のトンネルを一括して接続でき、理想的である。
【0008】
しかしながら、多芯円シールド機は、外周を鋭角な窪みのある複雑な形状に形成されるものであるため、沈埋函33の本体部34と、スライドフード(図示せず)と、多芯円シールド機(又は後続するセグメント)とのそれぞれの間のシール性をそれぞれ確保することは困難であるという課題があった。
【0009】
特に、沈埋函33の本体部34はコンクリートと鋼殻の合成構造であり、精度良く複雑な形状に形成するのは困難であるため、多芯円シールド機の外周に沿うように屈曲形成されたスライドフードとの間のシールは困難であった。
【0010】
そして、高い水圧の作用する条件下では特に問題となった。
【0011】
そこで、本発明の目的は、上記課題を解決し、良好なシール性を確保しつつ異形シールド機を発進又は到達させることのできる沈埋函と、その異形シールド機の発進・到達方法を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために本発明は、沈埋函本体部内に地山へ向けて押し出し可能に設けられシールド機を発進又は到達可能に収容する金属製のスライドフードを備えた沈埋函であって、上記スライドフードが、異形シールド機を収容すべく内周形状を当該異形シールド機の外周形状と相似に形成されると共に、外周形状を楕円状に形成されたものである。
【0013】
上記沈埋函本体部には、上記スライドフードとの間の隙間をシールするためのリップシールを設けるとよく、上記スライドフードの内周側には、上記異形シールド機との間の隙間をシールするための拡縮自在な簡易シールを設けるとよい。
【0014】
また、本発明は、異形シールド機を収容すべく内周形状を当該異形シールド機の外周形状と相似に形成されたスライドフードを沈埋函本体部の内側に設け、このスライドフード内に上記異形シールド機を収容し、上記スライドフード内に上記異形シールド機の反力を受けるためのセグメントを組み立て、このセグメントを上記スライドフードに止水溶接した後、上記異形シールド機を発進させるものである。
【0015】
そして、異形シールド機を収容すべく内周形状を当該異形シールド機の外周形状と相似に形成されたスライドフードを沈埋函本体部の内側に設けると共に、このスライドフードの内側に拡縮自在な簡易シールを設け、上記異形シールド機を地山から沈埋函内に進入させたのち、上記簡易シールを拡張させ、簡易シールの地山側に止水剤を注入して止水するものである。
【0016】
【発明の実施の形態】
本発明の好適実施の形態を添付図面に基づいて詳述する。
【0017】
海底に設置した沈埋函の側面図を図1に、図1のII−II線矢視断面図を図2に示す。
【0018】
図1及び図2に示す沈埋函1は、地山2側から到達される多芯円シールド機などの外周に窪みを有する異形シールド機3を受けて収容するタイプのものであり、コンクリート又は鋼殻合成構造で形成された沈埋函本体部4と、沈埋函本体部4内に地山2へ向けて押し出し可能に設けられ異形シールド機3を到達可能に収容する金属製のスライドフード5とからなる。
【0019】
沈埋函本体部4は、地山2へ向けられる先端側に断面楕円形(長円形)の挿入穴6を有し、挿入穴6内にスライドフード5を摺動可能に設けるようになっている。
【0020】
また、挿入穴6の開口部7近傍には、沈埋函本体部4とスライドフード5との間の間隙をシールするためのリップシール8が設けられている。リップシール8は、スライドフード5の外周を全周に亘ってシールするように環状に形成されている。
【0021】
スライドフード5は、内周形状を異形シールド機3の外周形状と相似に形成されると共に、外周形状を楕円状に形成された異形筒状のものであり、異形シールド機3の外周をその形状に沿って囲繞するようになっている。
【0022】
スライドフード5は、複数の油圧シリンダ13を介して沈埋函本体部4に軸方向スライド自在に設けられている。
【0023】
また、スライドフード5は、地山2側の端を開口されると共に、奥側の端を隔壁(バルクヘッド)9にて密閉されており、異形シールド機3が開口を通じて到達されるまでの間沈埋函本体部4内への浸水を防ぐようになっている。
【0024】
隔壁9は、スライドフード5に着脱可能に取り付けられており、異形シールド機3が到達されたのちに取り外せるようになっている。そして、隔壁9にはスライドフード5内の水を抜くためのバルブ10が設けられており、異形シールド機3がスライドフード5内に進入するときにスライドフード5内の水を抜けるようになっている。
【0025】
また、スライドフード5には、到達される異形シールド機3との間の間隙をシールするための簡易シール11が多段に設けられている。
【0026】
図1及び図3に示すように、簡易シール11は、バック状に形成されエア圧で拡縮するインフレートシールからなり、比較的大きな締め代を確保できるようになっている。簡易シール11には、スライドフード5に沿って設けられたエア配管12を通じて圧気を供給するようになっている。そして、簡易シール11は、圧気を供給されることで膨らんで異形シールド機3側に密着されるようになっている。
【0027】
次に作用を述べる。
【0028】
海底に沈埋函1,30を一列に並べ、互いに水密に接続し、沈埋函1内部の水を抜く。このとき、両端位置にスライドフード5を有する沈埋函1を配置し、中間位置に従来からある通常の沈埋函30を配置する。
【0029】
そして、沈埋函1の上に土砂を堆積させて沈埋函1を埋め、地山2と沈埋函1の間を土砂で埋める。
【0030】
地山2側から掘進されてくる異形シールド機3を受け入れるときは、予め油圧シリンダ13を伸張させてスライドフード5を地山2側へ押し出しておく。
【0031】
このとき、スライドフード5の外周形状と沈埋函本体部4の内周形状とは単純な楕円形に形成されているため、リップシール8はほぼ一定の締め代でシールしており、沈埋函本体部4とスライドフード5との間から浸水することはない。
【0032】
異形シールド機3をスライドフード5の開口へ向けて掘進させ、スライドフード5内に到達させる。地山2とスライドフード5の間に埋められた土砂は水中であることから軟弱であるが、スライドフード5が地山2に近接されているため異形シールド機3は姿勢を崩すことはなく、安定してスライドフード5内に到達される。
【0033】
異形シールド機3がスライドフード5内に入り始めたら、バルブ10を開け、スライドフード5内の水を徐々に抜く。
【0034】
そして、異形シールド機3がスライドフード5内に到達されたら、図3に示すように、簡易シール11に圧気を供給すると共に、異形シールド機3の後端部から機体の外側に止水剤14を注入する。
【0035】
簡易シール11は拡張されて異形シールド機3に密着され、止水剤14は簡易シール11の地山2側に満たされてスライドフード5と異形シールド機3及びセグメント15との間隙をシールする。
【0036】
この後、隔壁9を取り外すと共に異形シールド機3を解体し、地山2側に構築したトンネル(図示せず)と沈埋函1とを接続する。このとき、異形シールド機3の外周壁を形成するスキンプレート(図示せず)はトンネルの壁材として残す。
【0037】
そして、沈埋函本体部4にスライドフード5を水密に固定し、スライドフード5とスキンプレートとを止水溶接し、スキンプレートとセグメント15とを止水溶接する。これにより、沈埋函本体部4とセグメント15との間が恒久的に止水される。
【0038】
このように、コンクリート又は鋼殻合成構造で形成された沈埋函本体部4と、沈埋函本体部4内に地山2へ向けて押し出し可能に設けられ異形シールド機3を到達可能に収容する金属製のスライドフード5とを備えた沈埋函1であって、スライドフード5が、外周に窪みを有する異形シールド機3を収容すべく内周形状を異形シールド機3の外周形状と相似に形成されると共に、外周形状を楕円状に形成されたものとしたため、精度を出すのが難しいコンクリート製の沈埋函本体部4と複雑な形状に形成された異形シールド機3との間を良好にシールすることができ、良好なシール性を確保しつつ異形シールド機3をスライドフード5内に到達させることができる。
【0039】
そして、沈埋函本体部4にスライドフード5との間の隙間をシールするためのリップシール8を設けたため、沈埋函本体部4とスライドフード5との間の隙間を容易かつ確実にシールすることができる。
【0040】
スライドフード5の内周側に、異形シールド機3との間の隙間をシールするための拡縮自在なバッグ状の簡易シール11を設けたため、複雑に入り組んだスライドフード5と異形シールド機3との間の隙間を確実にシールすることができる。
【0041】
また、外周に窪みを有する異形シールド機3を収容すべく内周形状を異形シールド機3の外周形状と相似に形成されたスライドフード5を沈埋函本体部4の内側に設けると共に、スライドフード5の内側に拡縮自在なバッグ状の簡易シール11を設け、異形シールド機3を地山2から沈埋函1内に進入させたのち、簡易シール11を拡張させ、簡易シール11の地山2側に止水剤14を注入して止水するため、沈埋函1に異形シールド機3を水密に到達させることができる。
【0042】
なお、簡易シール11は多段に設けるものとしたが、十分なシールを得られるならば単一の簡易シール11を設けるものとしてもよい。
【0043】
また、簡易シール11は、エアで膨らむものとしたが、これに限るものではなく、水や油など他の流体で膨らむものとしてもよい。
【0044】
他の実施の形態について述べる。上述と同様の構成については説明を省き、同符号を付す。
【0045】
図4に示す沈埋函20は、上述した異形シールド機3を発進させるタイプのものであり、沈埋函本体部4と、沈埋函本体部4内に地山2へ向けて押し出し可能に設けられ異形シールド機3を発進可能に収容する金属製のスライドフード21とからなる。
【0046】
スライドフード21は、内周形状を異形シールド機3の外周形状と相似に形成されると共に、外周形状を楕円状に形成された異形筒状のものであり、複数の油圧シリンダ13を介して沈埋函本体部4に軸方向スライド自在に設けられている。
【0047】
スライドフード21は、両端を開口されており、内周側に後述するセグメント23を受けるための受け部22を有する。
【0048】
受け部22は、スライドフード21の内周面24からリング状に突起されている。また、受け部22には、地山2側へ延び異形シールド機3を掘進させるための基礎となるセグメント23の基端側が止水溶接にて水密に取り付けられている。
【0049】
セグメント23の先端側には、異形シールド機3が仮留めされており、セグメント23の先端側を水密に塞ぐようになっている。
【0050】
そして、受け部22と、セグメント23と、異形シールド機3とでスライドフード21内を水密に塞ぐようになっている。
【0051】
次に作用を述べる。
【0052】
海底に設置された沈埋函20から地山2側へ異形シールド機3を掘進させる場合、まず、油圧シリンダ13を伸張させてスライドフード21を地山2側へ押し出す。
【0053】
このとき、スライドフード21の外周形状と沈埋函本体部4の内周形状とは単純な楕円形に形成されているため、リップシール8はほぼ一定の締め代で埋函本体部4とスライドフード21との間の間隙をシールしており、この間隙から浸水することはない。
【0054】
そして、セグメント23と異形シールド機3との仮留めを外し、異形シールド機3を掘進させる。異形シールド機3はセグメント23を後方へ押すことで推力を得て掘進される。
【0055】
地山2とスライドフード21の間に埋められた土砂は水中であることから軟弱であるが、スライドフード21が地山2に近接されているため、軟弱な土砂中を掘進する距離は僅かであり、異形シールド機3は姿勢を崩すことはなく、安定して地山2側へ到達する。
【0056】
そして、異形シールド機3で地山2にトンネルを構築し、沈埋函本体部4にスライドフード21を水密に固定する。
【0057】
このように、内周形状を異形シールド機3の外周形状と相似に形成されたスライドフード21を沈埋函本体部4の内側に設け、スライドフード21内に異形シールド機3を収容し、スライドフード21内に異形シールド機3の反力を受けるためのセグメント23を組み立て、セグメント23をスライドフード21に止水溶接した後、異形シールド機3を発進させるようにしたため、良好なシール性を確保しつつ外周に窪みを有する異形シールド機3を発進させることができる。
【0058】
なお、スライドフード21は両端を開口するものとしたが、これに限るものではなく、先端側に止水用の隔壁(図示せず)を設けてもよい。この場合、隔壁はモルタル状の材料など異形シールド機3で掘削可能なものとするとよい。
【0059】
【発明の効果】
以上要するに本発明によれば、次のような優れた効果を奏する。
(1)良好なシール性を確保しつつ異形シールド機を沈埋函から発進させることができる。
(2)良好なシール性を確保しつつ異形シールド機を沈埋函に到達させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の好適実施の形態を示す沈埋函の側断面図である。
【図2】図1のII−II線矢視断面図である。
【図3】沈埋函に異形シールド機が到達されたときの要部側断面図である。
【図4】他の実施の形態を示す沈埋函の側断面図である。
【図5】海底に沈埋函を設置した状態を示す概略説明図である。
【図6】沈埋函の断面図である。
【符号の説明】
1 沈埋函
2 地山
3 シールド機
4 沈埋函本体部
5 スライドフード
8 リップシール
11 簡易シール
14 止水剤
21 スライドフード
23 セグメント
Claims (5)
- 沈埋函本体部内に地山へ向けて押し出し可能に設けられシールド機を発進又は到達可能に収容する金属製のスライドフードを備えた沈埋函であって、上記スライドフードが、異形シールド機を収容すべく内周形状を当該異形シールド機の外周形状と相似に形成されると共に、外周形状を楕円状に形成されたことを特徴とする沈埋函。
- 上記沈埋函本体部には、上記スライドフードとの間の隙間をシールするためのリップシールが設けられた請求項1記載の沈埋函。
- 上記スライドフードの内周側には、上記異形シールド機との間の隙間をシールするための拡縮自在な簡易シールが設けられた請求項1又は2記載の沈埋函。
- 異形シールド機を収容すべく内周形状を当該異形シールド機の外周形状と相似に形成されたスライドフードを沈埋函本体部の内側に設け、上記スライドフード内に上記異形シールド機を収容し、上記スライドフード内に上記異形シールド機の反力を受けるためのセグメントを組み立て、該セグメントを上記スライドフードに止水溶接した後、上記異形シールド機を発進させることを特徴とする異形シールド機の発進方法。
- 異形シールド機を収容すべく内周形状を当該異形シールド機の外周形状と相似に形成されたスライドフードを沈埋函本体部の内側に設けると共に、該スライドフードの内側に拡縮自在な簡易シールを設け、上記異形シールド機を地山から沈埋函内に進入させたのち、上記簡易シールを拡張させ、簡易シールの地山側に止水剤を注入して止水することを特徴とする異形シールド機の到達方法。
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