JP3840286B2 - ワンサイドボルト - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、例えば角型鋼管柱と鉄骨製の梁との接合に用いられるワンサイドボルトに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、閉鎖断面である角型鋼管柱と鉄骨製の梁との接合や、該柱同士の接合に際し、閉鎖断面の一方(外側)から他方(内側)への動作のみでこれらの部材を接合するワンサイドボルトとして、例えば図10(a),(b)に示されるものが周知である(例えば、特開平7−331745号公報参照)。
【0003】
同図に示すワンサイドボルトは、主部101aより若干大径の頭部101bを有するピン101と、その外周に順に被嵌された第1スリーブ102、第2スリーブ103、グリップアジャスタ104、ワッシャ105、およびカラー106とからなり、頭部101bを先頭にして、閉鎖断面の外側から接合される二つの部材107,108に形成された挿通穴に挿通してワッシャ105を外側の部材107の端面に密着させた後、専用の工具109を用いカラー106に反力をとってピンテール101cを外側に向けて引くことにより、同図(b)に示すように、カラー106、グリップアジャスタ104、第2スリーブ103を相対的に前進せしめて第1スリーブ102を拡径状態に塑性変形させ、さらにグリップアジャスタ104を剪断破壊させて第1スリーブ102の後端を内側の部材108の端面に接触させ、カラー106を塑性変形して所定の張力が導入されたときにピンテール101cが破断されるものである。
【0004】
また、閉鎖断面の内側にてピンの外周に被嵌されたバルブスリーブを鍔状に塑性変形させるものも周知である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような従来のワンサイドボルトにあっては、次のような課題があった。
【0006】
▲1▼最終的にピンテールが破断されるまでこれを引く作業が必要であり、接合完了までの時間がかかるし、作業自体が特殊で面倒である。
【0007】
▲2▼専用の工具が必要であり、工具の取扱いに熟練を要するし、工具自体の管理、とりわけ一般に高所作業となる接合場所での管理が面倒である。
【0008】
▲3▼ボルト自体の構造が複雑で部品点数が多く、歩留まりが多いことが懸念されるし、製造誤差が蓄積されるので、最終的に導入される張力、すなわち接合強度が製品ごとでばら付くおそれがある。
【0009】
▲4▼一度仮締めした後に本締めするといったことができない。
【0010】
▲5▼目視できない閉鎖断面の内側にて、第1スリーブまたはバルブスリーブが所望の塑性変形がなされているかの確認が困難であり、所望の変形がなされていたとしても第1スリーブの先端がボルト頭部の後端部に僅かに係止されているだけであって、応力伝達が確実になされるかどうかに不安がある。また、接合部材の肉厚の合計が小さい場合には、第1スリーブの先端とボルト頭部の後端部との係止部に第2スリーブが至るおそれがあり、この場合、第1スリーブの先端部をも拡開変形させてボルト頭部との係止を不十分にするおそれがある。
【0011】
▲6▼近年、大被害をもたらした阪神大震災では、不測の荷重が接合される部材間に加わっていたことが報告され、このような大震災時には、第1スリーブやバルブスリーブの塑性変形部分が再変形する可能性を完全に否定しさることはできない。
【0012】
▲7▼異種の部品点数が多く構造が複雑であってボルト単体が高価である上、専用の工具のコストも必要である。
【0013】
この発明は、前述した従来の問題に鑑みなされたもので、その目的は、作業が迅速かつ容易であり、特殊な工具が不要であり、構造も簡単で単価も低廉でありながら、仮締め後の本締めが可能であり、確実に応力伝達が可能なワンサイドボルトを提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するため、本発明は、以下のような手段を採用している。
すなわち、請求項1に記載の発明は、接合される複数の部材に形成された挿通穴を軸方向に挿通可能なボルト本体と、このボルト本体の外周に嵌装されその軸方向に移動可能なスリーブと、このスリーブよりボルト本体の先端側に嵌装され軸方向に移動可能で、かつ拡開変形可能な複数枚のワッシャと、前記ボルト本体の先端側に固定された筒状ナットとを備え、前記ボルト本体とその後端部に形成されたねじに螺合されたナットとの相対回転により、前記ワッシャを前記接合される部材の端面との間で密接状態で拡開変形させつつ、前記筒状ナットの後端側の変形部を該ワッシャの周囲を包囲あるいは該ワッシャの先端面に圧接するように拡開変形させることを特徴とする。
【0015】
本発明によるワンサイドボルトによれば、接合される複数の部材に形成された挿通穴にボルト本体を挿通させ、ボルト本体とその後端部に形成されたねじに螺合されたナットとを相対回転させると、ボルト本体に対してスリーブが先端に向けて相対移動し、後端側に位置するワッシャから順に先端に向けて相対移動する。スリーブ、各ワッシャ、筒状ナットがそれぞれ当接した後、さらにナットを締め付けると、ワッシャが順に拡開変形しつつ、筒状ナットの後端側の変形部が拡開変形し、ワッシャが密接状態となるとともに、筒状ナットの変形部がワッシャの周囲を包囲しあるいはワッシャの先端面に圧接する。その結果、ワッシャおよび筒状ナットの拡開変形部が協働してあたかも単一のナットが形成されることになる。その後、さらにナットを締め付けると、ボルト本体に所定の張力が導入され、接合される複数の部材が摩擦接合される。
筒状ナットの変形部は、すべてのワッシャの周囲を包囲し、さらにその後端縁が接合される部材の端面に当接することが望ましいが、変形部の後端が接合部材の端面に当接すること、およびすべてのワッシャの周囲を包囲することは本発明において必須ではなく、ワッシャの一部の周囲のみを包囲するものであってもよいし、ワッシャの周囲を包囲することなく、その先端部に圧接するものであってもよい(この場合、筒状ナットの変形部は、単に外側に向けて塑性変形するものでもよいし、折り返し変形されるものであってもよい)。
また、筒状ナットの拡開変形する後端部は、後端部のみが別体となってもよい。さらに、筒状ナットをボルト本体に固定する手段としては、ボルト本体の先端部に形成されたねじ部への螺合、スポット溶接等の溶接、かしめ、ボルト本体の先端部に形成された大径の頭部への当接等の種々の技術を採用することができる。
【0016】
以上の発明では、ボルトを挿通穴に挿通した後は、通常のナットの締め付け作業を行うだけでよく、作業時間が短くてすむし、作業自体がきわめて容易である。また、ナットを締め付ける従来の工具があれば足り、従来のワンサイドボルトで用いられるような特殊な工具が不要であり、特殊な工具の取扱いに熟練を要することもないし、管理も容易である。
そして、ナットの締め付けにより、複数枚のワッシャが密接状態になること、ならびにボルト本体に固定された筒状ナットの変形部がこれらを包囲し、あるいは圧接すること、および筒状ナットの後端縁が接合部材の端面に当接される場合にはこれが相俟って、ボルト本体に所定の張力が確実に導入されるので、不測の荷重が接合される部材に加わっても、ワッシャおよび筒状ナットで形成されるナットが変形するおそれはなく、確実に応力を伝達することができる。また、ボルト単体でみた場合には、構成が簡単であるし、最終的に導入される張力、すなわち接合強度が製品ごとでばら付くおそれは解消できるし、単価が安い。
【0017】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載のワンサイドボルトであって、前記ワッシャは、ボルト本体の先端に向けて凸となる傘状であることを特徴とする。
本発明によるワンサイドボルトによれば、ナットの締め付けによるワッシャの変形がスムーズに行われることになる。
【0018】
請求項3に係る発明は、請求項1又は2に記載のワンサイドボルトであって、前記ワッシャと前記筒状ナットとの間に、前記筒状ナットの拡開変形をガイドするガイドワッシャを設けるとともに、前記スリーブの先端側に、該スリーブの拡開変形をガイドする受けワッシャを設けたことを特徴とする。
本発明によるワンサイドボルトによれば、筒状ナットの変形がガイドワッシャにガイドされてスムーズに行われる。また、スリーブの拡開変形が受けワッシャにガイドされてスムーズに行われることになる。
【0019】
請求項4に係る発明は、請求項1から3の何れかに記載のワンサイドボルトであって、前記ボルト本体の先端部にはねじが形成され、前記筒状ナットがこのねじに螺合されていることを特徴とする。
本発明によるワンサイドボルトによれば、ボルト本体と筒状ナットとが強固に一体化されることになるので、接合強度を高めることができる。
【0020】
請求項5に係る発明は、請求項1から4の何れかに記載のワンサイドボルトであって、前記筒状ナットは、前記ボルト本体の先端部に形成された大径の頭部に当接していることを特徴とする。
本発明によるワンサイドボルトによれば、製造を容易にすることができる。
【0021】
請求項6に係る発明は、接合される複数の部材に形成された挿通穴を軸方向に挿通可能なボルト本体と、このボルト本体の外周に嵌装されてその軸方向に移動可能で、かつ先端側の変形部が拡開変形可能なスリーブと、前記ボルト本体の先端側に固定された筒状ナットと、前記スリーブと前記筒状ナットとの間に配置されて、前記筒状ナットの拡開変形をガイドするガイドワッシャと、前記スリーブの先端側に配置されて、該スリーブの拡開変形をガイドする受けワッシャとを備え、前記ボルト本体とその後端部に形成されたねじに螺合されたナットとの相対回転により、前記スリーブの変形部を前記接合される部材の端面との間で拡開変形させつつ、前記筒状ナットの後端部を該スリーブの周囲を包囲あるいは該スリーブの先端面に圧接するように拡開変形させることを特徴とする。
【0022】
本発明によるワンサイドボルトによれば、接合される複数の部材に形成された挿通穴にボルト本体を挿通させ、ボルト本体とその後端部に形成されたねじに螺合されたナットとを相対回転させると、ボルト本体に対してスリーブが先端に向けて相対移動し、該スリーブの変形部が拡開変形しつつ、筒状ナットの後端側の変形部が拡開変形し、筒状ナットの変形部がスリーブの周囲を包囲し、あるいはスリーブの先端面に圧接する。その結果、スリーブおよび筒状ナットの拡開変形部が協働してあたかも単一のナットが形成されることになる。その後、さらにナットを締め付けると、ボルト本体に所定の張力が導入され、接合される複数の部材が摩擦接合される。また、筒状ナットの変形がガイドワッシャにガイドされてスムーズに行われる。さらに、スリーブの拡開変形が受けワッシャにガイドされてスムーズに行われることになる。
【0023】
以上の発明では、ボルトを挿通穴に挿通した後は、通常のナットの締め付け作業を行うだけでよく、作業時間が短くてすむし、作業自体がきわめて容易である。また、ナットを締め付ける従来の工具があれば足り、従来のワンサイドボルトで用いられるような特殊な工具が不要であり、特殊な工具の取扱いに熟練を要することもないし、管理も容易である。
そして、ナットの締め付けにより、複数枚のワッシャが密接状態になること、ならびにボルト本体に固定された筒状ナットの変形部がこれらを包囲し、あるいは圧接すること、および筒状ナットの後端縁が接合部材の端面に当接される場合にはこれが相俟って、ボルト本体に所定の張力が確実に導入されるので、不測の荷重が接合される部材に加わっても、ワッシャおよび筒状ナットで形成されるナットが変形するおそれはなく、確実に応力を伝達することができる。また、ボルト単体でみた場合には、構成が簡単であるし、最終的に導入される張力、すなわち接合強度が製品ごとでばら付くおそれは解消できるし、単価が安い。
【0024】
請求項7に係る発明は、請求項6に記載のワンサイドボルトであって、前記スリーブは複数設けられていることを特徴とする。
本発明によるワンサイドボルトによれば、変形したスリーブ同士が径方向に重ね合わされたり、軸方向に重ね合わされたりし、さらに、その周囲または先端面に筒状ナットの変形部が係合するので、接合強度が高くなる。
【0025】
請求項8に係る発明は、請求項6又は7に記載のワンサイドボルトであって、前記ボルト本体の先端部にはねじが形成され、前記筒状ナットがこのねじに螺合されていることを特徴とする。
本発明によるワンサイドボルトによれば、ボルト本体と筒状ナットとが強固に一体化されるので、接合強度が高くなる。
【0026】
請求項9に係る発明は、請求項6から8の何れかに記載のワンサイドボルトであって、前記筒状ナットは、前記ボルト本体の先端部に形成された大径の頭部に当接していることを特徴とする。
本発明によるワンサイドボルトによれば、製造が容易になる。
【0029】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の実施例を図面を用いて詳細に説明する。
【0030】
図1(a),(b)は、本発明の好適な実施例を示している。本発明にかかるワンサイドボルト1は、接合される複数の部材(同図では、例えば角型鋼管柱3と鉄骨製の梁のエンドプレート5)に形成された挿通穴3a,5aを挿通可能なボルト本体7を備え、ボルト本体7の外周には、スリーブ9、受けワッシャ11、複数枚の変形ワッシャ13,13,……、ガイドワッシャ15、筒状ナット17が先端(図中左側)に向けて順に嵌装されている。
【0031】
ボルト本体7は、先端および後端にねじ部7a,7bを有し、後端のねじ部7bは右ねじとなっているのに対し、先端のねじ部7aは左ねじとなっている。また、ボルト本体7の後端部には若干小径のピンテール7cが設けられている。
【0032】
スリーブ9は、内径がボルト本体7の外径より僅かに大きい貫通孔9aを有し(JIS規格に準じればその内径はボルト本体7の外径+2mm)、全体がボルト本体7に対し相対回転および軸方向への相対回転可能となっている。そして、スリーブ9の先端側は、内周部が穿たれて拡開変形可能な薄肉の変形部9bとなっている。また、スリーブ9の後端縁から変形部9bの中間部までの長さは、接合される鋼管柱3とエンドプレート5の肉厚の合計とほぼ一致している。
【0033】
ぞれぞれの変形ワッシャ13は、先端に向けて凸となる傘状となっていて、拡開状態に塑性変形可能となっており、ボルト本体7に嵌装されてその軸方向に移動可能となっている。この実施例では、1mmのものが5枚設けられているが、後述する作用を奏するものであれば厚さを任意に設定することができるし、その枚数も1〜12,13枚程度とすることができる。
【0034】
そして、ボルト本体7のねじ部7aには筒状ナット17が螺合されている。筒状ナット17は、ボルト本体7のねじ部7aに螺合される内ねじ部17aが形成された肉厚部17Aと、後端側に設けられ内周部が穿たれて拡開変形可能な薄肉の変形部17Bとからなっている。ここで、少なくとも肉厚部17Aは、焼き入れを施すことが望ましい。
【0035】
受けワッシャ11には、スリーブ9の変形部9bの先端部内側角部が当接し、かつボルト本体7の先端に向けて漸次拡開するテーパー部11aが形成されている。ガイドワッシャ15には、筒状ナット17の変形部17Bの後端部内側角部に対向し、かつボルト本体7の後端に向けて漸次拡開するテーパー部15aが形成されている。
【0036】
以上のスリーブ9、受けワッシャ11、変形ワッシャ13,13,……、ガイドワッシャ15、筒状ナット17は、その外径がほぼ一致しており、挿通穴3a,5aを挿通可能となっている。また、ボルト本体7、筒状ナット17、スリーブ9、受けワッシャ11、変形ワッシャ13、ガイドワッシャ15は、従来のボルトと同質または同等の材質からなっている。
【0037】
また、ボルト本体7のねじ部7bにはワッシャ19を介して通常のナット21が螺合されている。ここで、前記筒状ナット17の肉厚部17Aの軸方向の長さは、ナット21のそれに対し1.5〜2倍程度であることが好ましい。
【0038】
以上の構造を有するワンサイドボルト1は、次のようにして鋼管柱3と梁のエンドプレート5とを接合する。
【0039】
まず、角型鋼管柱3と梁のエンドプレート5に形成された挿通穴3a,5aに対し、エンドプレート5の外側から筒状ナット17を先頭にしてガイドワッシャ15、変形ワッシャ13,13,……、受けワッシャ11、スリーブ9の先端部を順に挿通し、これらを閉鎖断面である鋼管柱3の内側に抜け出させる。
【0040】
次いで、ボルト本体7とナット21とを相対回転させると、スリーブ9がボルト本体7の先端に向けて相対移動し、後端側に位置する変形ワッシャ13から順に先端に向けて相対移動する。スリーブ9、各変形ワッシャ13,13,……、筒状ナット17がそれぞれ当接した後、さらにナット21を締め付けると、受けワッシャ11にガイドされてスリーブ9の変形部9bが拡開変形し、さらに変形ワッシャ13の先端が筒状ナット17の肉厚部17A後端に阻止され、複数枚のワッシャ13,13,……が順に拡開変形するとともに、筒状ナット17の後端側の変形部17Bが拡開変形する。その後、変形ワッシャ13,13,……が密接状態となり、さらに、筒状ナット17の変形部17Bがガイドワッシャ15にガイドされて密接状態となった変形ワッシャ13,13,……の周囲を包囲するよう変形するとともに、筒状ナット17の後端縁が鋼管柱3の端面に当接する。
【0041】
その結果、密接状態となった変形ワッシャ13,13,……の後端がスリーブ9の変形部9bを介して鋼管柱3の端面に当接するとともに、その先端および外周部がボルト本体7の先端部に固定された筒状ナット17の変形部17Bで包囲され、かつ筒状ナット17の後端縁が鋼管柱3の端面に当接し、さらに、密接状態の変形ワッシャが受けワッシャ11およびガイドワッシャ15間で挟み込まれる。
【0042】
さらにナット21を締め付けると、以上のスリーブ9の変形部9b、変形ワッシャ13,13,……、筒状ナット17が協働してあたかも単一のナットとして機能し、ボルト本体7に所定の張力が導入され、鋼管柱3および梁のエンドプレート5が高い強度で確実に摩擦接合される(図1(b)を参照)。
【0043】
なお、ピンテール7cに破断部(図示しない)を設け、ボルト本体7に所定の張力が導入されたときにこの破断部が破断する構成とすれば(図1(b)では破断されている)、破断部が破断するまでボルト本体7とナット21とを相対回転することにより、安定した接合作業を行うことができ、接合品質が均一化するし、自動化も可能である。なお、この破断部は、本発明において必須の構成要件ではない。
【0044】
このように、ボルトを挿通穴3a,5aに挿通した後は、通常のナット21の締め付け作業を行うだけでよく、作業時間が短くてすむし、作業自体がきわめて容易である。また、ナット21を締め付ける従来の工具があれば足り、従来のワンサイドボルトで用いられるような特殊な工具が不要であり、特殊な工具の取扱いに熟練を要することもないし、管理も容易である。さらに、ナット21を二重ナットとすることもできるし、仮締め後に本締めを行うことができるといった効果もある。
【0045】
そして、ナット21の締め付けにより、複数枚の変形ワッシャ13,13,……が密接状態になること、ならびにボルト本体7に固定された筒状ナット17の変形部17Bがこれらを包囲しあるいは圧接すること、および筒状ナット17の後端縁が鋼管柱3の端面に当接されること、変形ワッシャが受けワッシャ11およびガイドワッシャ15間で挟み込まれることが相俟って、ボルト本体7に所定の張力が確実に導入されるので、鋼管柱3とエンドプレート5とを高い強度で接合することができ、不測の荷重が接合される部材に加わっても、変形ワッシャおよび筒状ナット等で形成されるナットが変形するおそれはなく、確実に応力を伝達することができる。
【0046】
また、ボルト単体でみた場合には、構成が簡単であるし、最終的に導入される張力、すなわち接合強度が製品ごとでばら付くおそれが解消されるし、単価が安い。
【0047】
以下、他の実施例について説明する。
【0048】
図2(a),(b)は、前述した実施例の変形例を示している。この実施例では、ボルト本体7の先端部にねじ部7aが形成される代わりに大径の頭部7dが形成され、筒状ナット17の先端が該頭部7dに当接しており、前述の実施例と同様の効果を奏する。
【0049】
図3(a),(b)は他の実施例を示している。この実施例では、筒状ナット17の軸方向長さが短くなっており、ナット21の締め付け後におけるボルト本体7の張力導入時に筒状ナット17の後端縁が密接される変形ワッシャの先端面に圧接する構成となっている。この実施例においても、前述の実施例と同様な効果を奏する。
【0050】
図4ないし図7は、以上の実施例と同様な効果が得られるさらに他の実施例を示している。図4以下では、ボルト本体7の図示を省略してスリーブ9と筒状ナット17との関係を主として説明するが、その他の構成は前述の実施例と同様である。
【0051】
図4(a),(b)に示す実施例は、スリーブ9の変形部が別体の変形スリーブ23となっており、ナット21の締め付けにより変形スリーブ23が折り返されるように拡開状態に塑性変形し、この拡開変形した変形スリーブ23の周囲を包囲するように筒状ナット17が変形するものである。この例では、変形スリーブ23が一つのものを示したが、軸方向に複数設けることもできる。この場合、複数の変形スリーブのすべての周囲を筒状ナット17の変形部17Bが包囲することは本発明において必須ではなく、変形部17Bは変形スリーブの一部を包囲することもできる。筒状ナット17の変形部17Bは、折り返し変形されるものでもよく、この場合、変形部17Bとスリーブ9の変形部9bとの間で一又は複数の変形スリーブが挟持されることになる。さらに、複数の変形スリーブを設ける場合、それらの変形の仕方は同じでも同じでなくてもよく、他の変形スリーブの周囲を包囲するものでもよい。
【0052】
図5(a),(b)に示す実施例は、スリーブ9の変形部9bが折り返されるように拡開状態に塑性変形するものであり、受けワッシャ11およびガイドワッシャ15なしでこのような変形を可能にするため、スリーブ9の先端部が先端側に向けて縮径するテーパー部9cとなっている一方、筒状ナット17の後端部がテーパー部9cと係合するテーパー部17bとなっている。
【0053】
図6(a),(b)に示す実施例は、図5の実施例におけるスリーブ9の先端部より若干後部側に内周部を穿たれた肉薄部9dが形成されていて、ボルト本体7とナット21との相対回転によるスリーブ9と筒状ナット17との当接によりスリーブ9の先端肉厚部9eが外側に折れ曲げられるように拡開状態となるものである。
【0054】
図7(a),(b)に示す実施例は、スリーブ9と筒状ナット17の双方が同様に折り返されるように拡開変形するものである。
【0055】
図8(a),(b)および図9(a),(b)は、またさらに他の実施例を示し、図8はスリーブ9の変形部9bが筒状ナット17の外周を包囲するように変形する例であり、図9は図8の実施例にガイドワッシャを付加することによってスリーブ9の変形を大きくした例である。
【0056】
なお、それぞれの構成部材の外形寸法は、接合される部材に応じて適宜設定される。また、ボルト本体7の筒状ナット17との接合部は、異形状とすることもできる。
【0057】
また、以上の実施例では、二つの接合される部材として角型鋼管柱3と梁のエンドプレート5とを例示したが、鋼管柱同士の接合その他の接合に適用することができることはいうまでもない。
【0058】
【発明の効果】
以上詳細に説明したように、本発明にかかるワンサイドボルトは、作業が迅速かつ容易であり、特殊な工具が不要であり、構造も簡単で単価も低廉でありながら、仮締め後の本締めが可能であり、高い強度で接合することができ、確実に応力伝達が可能であるといった優れた効果を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)は本発明の好適な実施例を示すナット締め付け前の断面図である。
(b)はナット締め付け後の断面図である。
【図2】(a)は他の実施例を示すナット締め付け前の断面図である。
(b)はナット締め付け後の断面図である。
【図3】(a)は他の実施例を示すナット締め付け前の断面図である。
(b)はナット締め付け後の断面図である。
【図4】(a)は他の実施例を示すナット締め付け前の断面図である。
(b)はナット締め付け後の断面図である。
【図5】(a)は他の実施例を示すナット締め付け前の断面図である。
(b)はナット締め付け後の断面図である。
【図6】(a)は他の実施例を示すナット締め付け前の断面図である。
(b)はナット締め付け後の断面図である。
【図7】(a)は他の実施例を示すナット締め付け前の断面図である。
(b)はナット締め付け後の断面図である。
【図8】(a)は他の実施例を示すナット締め付け前の断面図である。
(b)はナット締め付け後の断面図である。
【図9】(a)は他の実施例を示すナット締め付け前の断面図である。
(b)はナット締め付け後の断面図である。
【図10】(a),(b)は従来例を示す断面図である。
【符号の説明】
1 ワンサイドボルト
3 角型鋼管柱(挿通穴3a)
5 エンドプレート5(挿通穴5a)
7 ボルト本体
9 スリーブ(9b 変形部)
11 受けワッシャ
13 変形ワッシャ
15 ガイドワッシャ
17 筒状ナット(17B 変形部)
19 ワッシャ
21 ナット
Claims (9)
- 接合される複数の部材に形成された挿通穴を軸方向に挿通可能なボルト本体と、このボルト本体の外周に嵌装されその軸方向に移動可能なスリーブと、このスリーブよりボルト本体の先端側に嵌装され軸方向に移動可能で、かつ拡開変形可能な複数枚のワッシャと、前記ボルト本体の先端側に固定された筒状ナットとを備え、
前記ボルト本体とその後端部に形成されたねじに螺合されたナットとの相対回転により、前記ワッシャを前記接合される部材の端面との間で密接状態で拡開変形させつつ、前記筒状ナットの後端側の変形部を該ワッシャの周囲を包囲あるいは該ワッシャの先端面に圧接するように拡開変形させることを特徴とするワンサイドボルト。 - 前記ワッシャは、ボルト本体の先端に向けて凸となる傘状であることを特徴とする請求項1に記載のワンサイドボルト。
- 前記ワッシャと前記筒状ナットとの間に、前記筒状ナットの拡開変形をガイドするガイドワッシャを設けるとともに、前記スリーブの先端側に、該スリーブの拡開変形をガイドする受けワッシャを設けたことを特徴とする請求項1又は2に記載のワンサイドボルト。
- 前記ボルト本体の先端部にはねじが形成され、前記筒状ナットがこのねじに螺合されていることを特徴とする請求項1から3の何れかに記載のワンサイドボルト。
- 前記筒状ナットは、前記ボルト本体の先端部に形成された大径の頭部に当接していることを特徴とする請求項1から4の何れかに記載のワンサイドボルト。
- 接合される複数の部材に形成された挿通穴を軸方向に挿通可能なボルト本体と、このボルト本体の外周に嵌装されてその軸方向に移動可能で、かつ先端側の変形部が拡開変形可能なスリーブと、前記ボルト本体の先端側に固定された筒状ナットと、前記スリーブと前記筒状ナットとの間に配置されて、前記筒状ナットの拡開変形をガイドするガイドワッシャと、前記スリーブの先端側に配置されて、該スリーブの拡開変形をガイドする受けワッシャとを備え、
前記ボルト本体とその後端部に形成されたねじに螺合されたナットとの相対回転により、前記スリーブの変形部を前記接合される部材の端面との間で拡開変形させつつ、前記筒状ナットの後端部を該スリーブの周囲を包囲あるいは該スリーブの先端面に圧接するように拡開変形させることを特徴とするワンサイドボルト。 - 前記スリーブは複数設けられていることを特徴とする請求項6に記載のワンサイドボルト。
- 前記ボルト本体の先端部にはねじが形成され、前記筒状ナットがこのねじに螺合されていることを特徴とする請求項6又は7に記載のワンサイドボルト。
- 前記筒状ナットは、前記ボルト本体の先端部に形成された大径の頭部に当接していることを特徴とする請求項6から8の何れかに記載のワンサイドボルト。
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