JP3835864B2 - 制振形材の溶接方法 - Google Patents

制振形材の溶接方法 Download PDF

Info

Publication number
JP3835864B2
JP3835864B2 JP27110196A JP27110196A JP3835864B2 JP 3835864 B2 JP3835864 B2 JP 3835864B2 JP 27110196 A JP27110196 A JP 27110196A JP 27110196 A JP27110196 A JP 27110196A JP 3835864 B2 JP3835864 B2 JP 3835864B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
welding
damping
vibration
resin material
aluminum
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP27110196A
Other languages
English (en)
Other versions
JPH10122299A (ja
Inventor
和男 米澤
誠二 笹部
明男 杉本
伸一 木下
光雄 日野
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Kobe Steel Ltd
Original Assignee
Kobe Steel Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Kobe Steel Ltd filed Critical Kobe Steel Ltd
Priority to JP27110196A priority Critical patent/JP3835864B2/ja
Publication of JPH10122299A publication Critical patent/JPH10122299A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP3835864B2 publication Critical patent/JP3835864B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Fee Related legal-status Critical Current

Links

Images

Landscapes

  • Butt Welding And Welding Of Specific Article (AREA)
  • Arc Welding Control (AREA)
  • Vibration Prevention Devices (AREA)
  • Arc Welding In General (AREA)

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は鉄道車両等に使用される制振形材の溶接方法に関し、特に、2mm以下の肉厚を有するアルミニウム又はアルミニウム合金板材に制振樹脂材が貼付された制振形材の溶接時において、溶接性を向上させることができる制振形材の溶接方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近時、鉄道分野において、高速化に対する要求がより一層高まっており、試験車両の製作及び試運転等が開始されている。このような走行速度の高速化に対する要求を満足するために、車両構体(台枠及び骨組外板等)を軽量にするための開発が進められているが、これと同時に、高速化に伴う騒音を防止するための静音化も要求される。従って、軽量であるアルミニウム又はアルミニウム合金材が車両用材料として注目されており、特に、金属−樹脂系制振材を中空薄肉形材面に貼付した制振断熱形材を車両構体に使用することにより、静音化を図ることができる。以下、アルミニウム又はアルミニウム合金を総称して、単にアルミニウムという。
【0003】
ところで、一般的に、アルミニウム製車両等の大型溶接構造物に使用されるアルミニウム材の厚さは、厚板から中板まで広範囲に及んでいる。そして更に、車両構体の軽量化を図るために、外板等に使用されるアルミニウム材は、その肉厚が1.5乃至2mm程度に薄肉化されている。これらの板材の溶接方法としては種々の方法があるが、例えば、アーク溶接と、抵抗スポット溶接法とが併用されている。また、このアーク溶接方法としては、TIG溶接法及びMIG溶接法があるが、溶接部に対する要求特性及び生産性を考慮して、MIG溶接法が多く使用されている。
【0004】
通常、肉厚が2mm未満の薄板のアルミニウム材をMIG溶接する場合、中板乃至厚板材と比較して、溶接ビード形成に及ぼす因子の影響が大きい。従って、種々の溶接条件を調整することにより、薄板のアルミニウム材の溶接におけるビード形状の向上を図っている。即ち、できるだけ溶接姿勢を下向とし、銅製の裏当材等を使用すると共に、仮付又は拘束ジグを利用してルートギャップを0(密着)、目違を0とする等、開先精度を高精度に管理し、更に、例えば、線径が1乃至1.2mmである細径ワイヤを使用して溶接している。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、アルミニウム材を鉄材と比較した場合、両者の融点、熱伝導率及び線膨張係数等の物理的性質が相違しているため、アルミニウム材の方が低融点であるにも拘わらず、その溶接は溶融に対して短時間で大熱量(電流)を必要とする。また、アルミニウム材の溶接においては、溶接変形又は溶接割れが発生しやすいという問題点がある。
【0006】
また、前述の如く、アルミニウム薄板の溶接条件を変化させることにより、ビード形状を向上させることはできるが、薄板の溶接時においては、中板乃至厚板と比較して、適正な溶接条件範囲が狭くなる。従って、溶接条件が変動すること等により、過小入熱に伴う溶込み不良の発生、及び過大入熱に伴うアーク貫通による溶接の中断等の溶接欠陥が発生しやすくなるため、薄板の溶接は中板乃至厚板の溶接と比較して極めて困難となる。
【0007】
更に、アルミニウム材を使用した車両等の高速化に伴う騒音を防止するために、溶接部の裏面(例えば、形材の内面)には制振断熱材料を貼付するが、これにより、溶接性がより一層困難になっている。例えば、制振断熱材料は水酸化物を含有しており、この水酸化物はアーク等の高温に晒されると熱分解して水素を発生する。アルミニウム材の水素溶解量と固溶量との差は、他の金属と比較すると極めて大きいので、制振断熱材料を貼付していないアルミニウム材の溶接時であっても、シールド性等を十分に考慮しない場合には、これに起因するブローホール欠陥が発生する。従って、制振断熱材料を貼付したアルミニウム材の場合には、溶込みが断熱材料にまで貫通すると、巨大なブローホールが多発する。
【0008】
このように、制振断熱材料を貼付したアルミニウム材のアーク溶接においては、溶接入熱が過大となり、板厚以上の深さで溶融させる条件では、裏面の樹脂が溶接に悪影響を及ぼし、溶接ビード形状が悪化する。従って、溶接施工条件としては、必然的に溶接入熱を抑えた条件を選定する必要があるが、これにより、溶接入熱不足による溶込み不良が発生しやすくなり、良好な溶接部を得ることができなくなる。そして、この現象は板厚が薄くなるほど顕著である。
【0009】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであって、2mm以下の薄肉のアルミニウム板材に制振樹脂材が貼付された制振形材であっても、その制振性を著しく低下させることなく、溶接時において、溶接性に悪影響を与えず、良好な溶込みを得ることができると共に、過大な溶接入熱によるビード形状の劣化を防止することができ、良好な溶接作業性を得ることができる制振形材の溶接方法を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る制振形材の溶接方法は、2mm以下の肉厚を有するアルミニウム又はアルミニウム合金板材の少なくとも1面に制振樹脂材が貼付された制振形材の溶接方法において、前記制振樹脂材には、第1の方向に延びる複数本の第1の線列と、この第1の方向に交叉する第2の方向に延びる複数本の第2の線列とが交叉する位置に、穴が形成されており、前記アルミニウム又はアルミニウム合金板材の制振樹脂材が貼付された面の裏面側から、逆極性アークと正極性アークとを交互に供給する交流パルスMIG溶接法により、正極性比率を5乃至50%として溶接することを特徴とする。
【0011】
このアルミニウム又はアルミニウム合金板材の板厚をt(mm)とし、前記穴の円相当径をD(mm)とし、第1の線列に配置された穴のピッチをP(mm)とし、第1の線列間の間隔をQ(mm)としたとき、前記制振樹脂材に形成する穴の円相当径Dを1t乃至4t(mm)、ピッチPを2D乃至3D(mm)、間隔Qを0.5P乃至1P(mm)、前記穴の総面積を前記制振樹脂材の面積の20%以下とすることが好ましい。
【0012】
また、正極性比率は10乃至40%とすることが好ましい。
【0013】
なお、前記円相当径Dとは、前記穴が円形状をなす場合はその直径をいい、その他の場合は、穴の断面積をSとしたときに、2(S/π)0.5をいう。即ち、穴の形状が円ではない場合は、穴の断面積が同一である円形状穴の直径を円相当径という。
【0014】
本発明において溶接の対象となる制振形材は、アルミニウム又はアルミニウム合金板材の少なくとも1面に制振樹脂材を貼付したものであるので、制振形材の制振性を高めることができる。また、この制振形材の溶接時においては、アーク熱等により制振樹脂材から水素ガスが発生するが、本発明においては、制振樹脂材に穴が形成されているので、発生したガスが溶融金属内に滞留することなく、穴を介して外部に放出される。従って、良好な形状の溶接ビードを形成することができる。
【0015】
また、本発明方法においては、溶接時に正極性アークと逆極性アークとを交互に供給する交流パルスMIG法を使用している。この交流パルスMIG法は、正極性アークを供給する時には、溶込みが浅く、ワイヤの溶融量が多くなり、逆極性アークを供給する時には、深い溶込みを得ることができるという特性を有している。従って、正極性比率を適切に規定することにより、板材の肉厚が薄いものであっても、板厚に適した溶接条件を得ることができる。その結果、溶込み不良、過大溶込み及びアーク貫通等の溶接不良の発生を防止することができ、安定した溶込みで良好な溶接ビードを得ることができる。
【0016】
【発明の実施の形態】
本願発明者等は車両の走行速度を高速にするための車両の軽量化と、高速化に伴って発生する騒音を低減し、板厚が薄い制振形材の溶接方法の欠点を解決する方法とを開発すべく種々研究を行った。その結果、アルミニウム板材に貼付する制振材料に複数個の穴を形成することにより、過大入熱に伴うビード形状の劣化を防止することができ、優れた溶接作業性及び良好な溶込みを得ることができることを見い出した。
【0017】
制振形材の溶接時においては、溶接熱サイクルによって被溶接部が約150℃以上に上昇するので、アルミニウム板材に貼付された制振樹脂材がアルミニウム板材から剥離し、アルミニウム板材と制振樹脂材との間にトンネル状の空隙部が形成される。本発明においては、アルミニウム板材に貼付する制振樹脂材に複数個の穴が形成されているので、この空隙部は密封状態ではなく、制振樹脂材に形成された穴を介して外部と導通される。従って、大入熱により板厚以上の深さでアルミニウム板材を溶融させた場合、この溶融金属が制振断熱材料(制振樹脂材)に到達することにより、制振樹脂材が熱分解して水素ガスを発生しても、この水素ガスはトンネル状の間隙部から穴を介して外部(空中)に放出される。その結果、水素ガスがトンネル状の間隙部に滞留して溶融金属内に吸収されることを防止することができるので、アークに悪影響を及ぼすことなく良好な溶接ビードを形成することができる。
【0018】
また、通常、肉厚が2mm以下の薄いアルミニウム板材をMIG溶接する場合、溶接入熱の変動により溶込み不良及びアーク貫通等の溶接不良が発生しやすくなるが、本発明においては、正極性アークと逆極性アークとを交互に供給する交流パルスMIG法を使用することにより、溶接性を向上させる。この交流パルスMIG法は、正極性アークを供給する時、即ち、ワイヤが陰極の時に、溶込みが浅く、ワイヤの溶融量が多くなり、逆極性アークを供給する時、即ち、ワイヤが陽極の時には、深い溶込みを得ることができるという双方の特性を有している。従って、ワイヤ送給速度を一定にして正極性比率を変化させることにより、溶接電流が変動するので、母材に供給される溶接入熱を調整することができる。その結果、正極性比率を調整することにより、母材の溶込み量を最適にすることができる。
【0019】
図1は本発明の実施例に係る溶接方法において、溶接対象物である制振形材を示す平面図である。図1に示すように、制振形材1は、例えば、アルミニウム板2の片面に制振樹脂材3が貼付されたものである。この制振樹脂材3には、その面内において、第1の方向に延びる第1の線列4と、この第1の方向に交叉する第2の方向に延びる第2の線列5との交叉する位置に、複数個の穴が設けられている。
【0020】
このように形成された制振形材1の溶接時においては、制振樹脂材3が貼付された面と反対側の面、即ち、アルミニウム板2側の面から所定の条件で溶接することにより、極めて優れた効果を得ることができる。また、本実施例に示すように、第1の線列4と第2の線列5とが直交しないように穴3aが形成されている場合、いずれの方向に溶接しても溶接線が穴3aの上を通る確率が高くなり、優れた効果を得ることができる。
【0021】
また、図1に示すように、本発明において、制振樹脂材に形成された穴3aの円相当径D、第1の線列に配置された穴3aのピッチP、第1の線列間の間隔Q及び制振樹脂材3の面積に対する穴3aの総面積についても、その範囲を規定すると、安定して良好な溶接性を得ることができる。以下、これらの限定理由について説明する。なお、制振樹脂材が貼付された部分のアルミニウム板材の板厚をt(mm)とする。
【0022】
穴の円相当径D:1t乃至4t(mm)
制振樹脂材に形成される穴の円相当径が1t(mm)未満であると、アルミニウム板材の板厚に対して溶接入熱が過大になった場合に、溶接時の温度上昇によって制振樹脂材が軟化変形し、穴が塞がれてしまうことがある。そうすると、制振樹脂材の熱分解により発生した水素ガスは穴を介してではなく、溶融金属を介して外部に放出されるので、溶接が阻害されてビード形状が劣化する。一方、穴の円相当径が4t(mm)を超えると、水素ガスはこの穴を介して外部に放出されるが、溶接入熱が過大になった場合に、アーク力及び凝固速度等の変化により、溶融金属の凝固過程において多量の溶融金属が穴に流入する。その結果、溶接裏面側のビード形状は凸状になる一方、溶接面側(表面側)では溶融金属が不足して、蒲鉾状の良好なビード形状を得ることができない。従って、制振樹脂材に形成される穴の円相当径Dは1t乃至4t(mm)とすることが好ましい。なお、本発明において、穴の形状は正円形状に限定されず、例えば、楕円、矩形及び多角形等の形状でもよく、その場合の穴の円相当径とは、穴と同一面積に相当する円の直径を示す。
【0023】
第1の線列に配置された穴のピッチP:2D乃至3D(mm)
制振形材の溶接時において、溶接熱サイクルにより被溶接部の温度が約150乃至200℃以上になる領域は、溶接中心部から20乃至30mm以内の領域となる。制振樹脂材は接着剤等を使用した熱融着によりアルミニウム板材に貼付されているが、溶接中心部から20乃至30mmを超える領域においては、溶接時に溶接熱によって制振樹脂材がアルミニウム板材から部分的に剥離することはない。従って、溶接中心部から離間した位置においては、穴のピッチ、第1の線列間の間隔が規定されなくても制振性に影響を与えるものではない。しかし、溶接中心部から20乃至30mm以内の領域で、穴のピッチ、第1の線列間の間隔及び面積率等が規定されていないと、過大入熱の溶接条件下において、アーク極近傍の制振樹脂材から発生した水素ガスが穴を介して外部に放出されることが阻害される。従って、本発明において規定する穴のピッチ等は、本来、溶接中心部から20乃至30mm以内の領域に関するものである。
【0024】
しかしながら、構造物の溶接部位において、溶接前に予め穴の位置を設定することは、構造物の種類を考慮すると極めて困難である。また、穴の位置等が溶接前に設定されていると、溶接部位の変更又は溶接による補強部品の追加等があった場合に、その変化に対応することができなくなる。更に、各溶接部位に対応させて、種々の位置に穴が形成された部品を準備すると、製造コストが上昇してしまう。従って、本発明においては、溶接性を向上させることができると共に、制振性を低下させないようなピッチ及び間隔で、制振樹脂材に穴を形成することが好ましい。
【0025】
穴のピッチPが2D(mm)未満であると連続穴となってしまい、制振性が阻害されて、制振形材としての性能が低下する。一方、穴のピッチPが3Dを超えると、穴を介して水素ガスを外部に放出させることが困難になり、溶接性が阻害されてしまう。従って、第1の線列に配置された穴のピッチPは2D乃至3D(mm)とすることが好ましい。なお、穴のピッチPとは、第1の線列上に隣接する穴において、穴の中央間の距離をいう。
【0026】
第1の線列間の間隔Q:0.5P乃至1P(mm)
穴が形成された第1の線列間の間隔Qが0.5P(mm)未満であると、制振性が阻害されて、制振形材としての性能が低下する。一方、第1の線列間の間隔Qが1P(mm)を超えると、大きな溶接ビード幅を有する大入熱の溶接条件以外では、その列間、即ち、穴が形成されていない領域が溶接線になる確率が高くなる。これにより、溶接性が阻害される確率が高くなる。従って、第1の線列間の間隔Qは0.5P乃至1P(mm)とすることが好ましい。なお、第1の線列間の間隔Qとは、隣接する第1の線列間の距離をいう。
【0027】
穴の総面積:制振樹脂材の面積の20%以下
穴の総面積が制振樹脂材の面積の20%を超えると、制振性が阻害され、制振形材としての性能が低下する。従って、制振樹脂材に形成される穴の総面積は、制振樹脂材の面積の20%以下とすることが好ましい。
【0028】
次に、上記範囲で穴が形成された制振樹脂材を有する制振形材の溶接条件について更に説明する。
【0029】
正極性比率;5乃至50%
ワイヤ供給速度を一定にした場合、正極性比率を増加させるにつれて、母材に供給される溶接入熱は減少し、母材の溶込みは少なくなるが、ワイヤ供給速度が一定であるので、溶接ビード形状は良好な蒲鉾状から、オーバラップの凸状に変化する。この正極性比率とは、アーク発生の交流波形1サイクル時間に対して、正極性アークが供給される時間の比率のことである。母材の溶込み量及び溶接ビード形状が劣化すると、溶接接合部の静的及び動的特性が低下するので、母材に対して、溶込み量及び溶接ビード形状を最適な条件として溶接する必要がある。
【0030】
正極性比率が5%未満であると、溶接電流が減少する割合が小さくなるので、母材に供給される溶接入熱の減少量も少なくなり、溶込み及び溶接ビード形状の変化量が小さくなり、過大溶込み及びアーク貫通等の溶接不良が発生しやすくなる。一方、正極性比率が50%を超えると、溶接電流が減少する割合が大きくなるので、母材に供給される溶接入熱の減少量も大きくなる。その結果、母材の溶込みは殆ど得られなくなり、ビード形状はオーバラップ状で極細の凸状となる。従って、本発明においては正極性比率は5乃至50%とする。なお、溶込み、溶接ビード形状及び溶接作業性を考慮すると、正極性比率は10乃至40%であることが望ましい。
【0031】
【実施例】
以下、本発明に係る制振形材の溶接方法の実施例についてその比較例と比較して具体的に説明する。先ず、種々の条件で穴が形成された制振樹脂材を使用して制振形材を作製し、これについて一定の溶接条件で交流パルスMIG法により溶接試験を実施して、溶接性及び制振性を評価した。
【0032】
先ず、アルミニウム合金板(A5052P−H34、板厚1.5mm、板幅250mm、長さ300mm)を準備し、その一方の面に、種々の径を有する穴を種々のピッチ及び第1の線列間の間隔で形成された制振断熱材料(制振樹脂材)を貼付することにより、制振形材を作製した。次に、この制振樹脂材が貼付された面を下方に向けて制振形材を配置し、この上にアルミニウム合金板(A5052−H34、板厚3mm、板幅50mm、長さ300mm)を重ねて、上方から重ね隅肉溶接することにより両者を接合した。なお、溶加材としては、直径が1.2mmであるA5356WYを使用した。また、溶接は逆極性アークと正極性アークとを交互に供給する交流パルスMIG法を使用し、溶接電流を140A、溶接電圧を22V、溶接速度を2m/分とし、正極性比率を10%とした。そして、種々の制振形材について、溶接性及び制振性を評価した。これらの制振形材に貼付された制振樹脂材の穴の形成条件を下記表1に示し、溶接性及び制振性の評価結果を下記表2に示す。
【0033】
但し、下記表1において、溶接性はビード形状、断面マクロ及び溶接作業性等により評価し、その評価基準としては、溶接性が良好であるものを○、溶接は可能であるがビード形状がアンダカット状であるものを△とし、溶接が不可能であったものを×とした。また、制振性は減衰特性等により評価し、その評価基準としては、良好であるものを○、若干制振性が低下するが実用上問題がないものを△とし、制振性が著しく低下したものを×とした。更に、総合評価については、溶接性及び制振性を考慮して総合的に判断し、溶接性が良好であり、制振性の低下も実用上の問題がないものを○とし、溶接性に問題が発生すると共に、制振性が著しく低下し、制振形材としての特性を満足しないものを×とした。
【0034】
【表1】
Figure 0003835864
【0035】
【表2】
Figure 0003835864
【0036】
上記表1及び2に示すように、実施例No.1乃至7は、穴の形成状態が本発明の範囲内であるので、溶接性が優れていると共に、実用上問題がない制振性を有する制振樹脂材を得ることができた。
【0037】
一方、比較例No.8は穴の円相当径Dが本発明範囲の下限未満であるので、溶接できなかった。比較例No.9は穴のピッチPが本発明範囲の下限未満であると共に、穴の面積率が本発明範囲の上限を超えているので、ビード形状がアンダカット状になり、制振性が著しく低下した。比較例No.10及び12は穴の面積率が本発明範囲の上限を超えているので、溶接性は良好であったが制振性が著しく低下した。
【0038】
また、比較例No.11は第1の線列間の間隔Qが本発明範囲の下限未満であると共に、穴の面積率が本発明範囲の上限を超えているので、ビード形状がアンダカット状になると共に、制振性が著しく低下した。比較例No.13及び14は第1の線列間の間隔Qが本発明範囲の上限を超えているので、溶接できなかった。比較例No.15は穴のピッチPが本発明範囲の上限を超えているので、制振性は良好であったが溶接できなかった。比較例No.16は穴の円相当径が本発明範囲の上限を超えているので、ビード形状がアンダカット状になった。比較例No.17は制振樹脂材に穴を形成していないので、溶接できなかった。
【0039】
このように、アルミニウム板材にソリッド状の制振樹脂材を貼付した制振形材(比較例No.17)は、過大な溶接入熱によって完全溶込みとなって、制振樹脂材から発生するガス(主に水素ガス)によりアークが不安定となるので、良好な溶接ビードを形成することが不可能になる。一方、本実施例に示すように、制振樹脂材に穴を形成すると、過大な溶接入熱で溶接した場合においても、発生したガスが穴を介して大気中に放出されるので、アークが不安定になることによりビード形状が悪化することはなく、溶接が可能となる。その結果、溶接条件範囲が拡大し、溶接性が改善される。しかしながら、穴の円相当径、ピッチ及び第1の線列間の間隔等が所定の範囲を超えると、溶接性を改善する効果を得ることができなくなるか、又は制振性が著しく低下することがあった。
【0040】
次いで、本発明の範囲内で穴を形成した制振樹脂材を使用して制振形材を作製し、これについて種々の正極性比率で交流パルスMIG法により溶接試験を実施して、溶接性及び制振性を評価した。
【0041】
先ず、アルミニウム合金製中空形材(A6N01S−T5、板厚1.8mm、板幅500mm、長さ1000mm)を準備し、その内面に下記表3に示す条件で穴が形成された制振断熱材料(制振樹脂材)を貼付することにより、制振形材を作製した。次に、この制振形材の外面上にアルミニウム合金板(A6N01S−T5、板厚3mm、板幅50mm、長さ300mm)を重ねて、上方から重ね隅肉溶接することにより両者を接合した。なお、溶加材としては、直径が1.2mmであるA5356WYを使用した。また、溶接は交流パルスMIG法により、下記表4に示す種々の正極性比率で、溶接電流を140A、溶接電圧を22Vとし、溶接速度を2m/分として、溶接性及び制振性を評価した。これらの溶接性及び制振性の評価結果を下記表4に併せて示す。
【0042】
但し、下記表4において、溶接性はビード形状、断面マクロ及び溶接作業性等により評価し、その評価基準としては、溶接性が良好であるものを○、溶接は可能であるがビード形状が凸状であるか又はアークが若干不安定であるものを△とし、ブローホールが多発し、アークが不安定になったものを×とした。また、制振性は減衰特性等により評価し、その評価基準としては、良好であるものを○、若干制振性が低下するが実用上問題がないものを△とし、制振性が著しく低下したものを×とした。更に、総合評価については、溶接性及び制振性を考慮して総合的に判断し、溶接性が良好であり、制振性の低下も実用上の問題がないものを○、溶接性が若干低下するが、溶接可能であるもの及び制振性が若干低下するが実用上問題がないものを△とし、溶接性に問題が発生すると共に、制振性が著しく低下し、制振形材としての特性を満足しないものを×とした。
【0043】
【表3】
Figure 0003835864
【0044】
【表4】
Figure 0003835864
【0045】
上記表3及び4に示すように、実施例No.21乃至30は溶接性及び制振性が共に実用上問題がないものとなった。特に、実施例No.22乃至24及び27乃至29は正極性比率が本発明の好ましい範囲内であるので、アークが不安定になることによるビード形状の悪化がなく、良好な溶接ビードが形成された。また、溶接熱による制振樹脂材の大きな剥離はなく、制振性能についても実用上問題がないものとなった。
【0046】
一方、比較例No.31及び33は正極性比率が0%、即ち、逆極性アークのみで溶接したものであるので、溶接性が低下した。また、貫通溶け落ちが発生し、制振樹脂材が劣化した。比較例No.32及び34は正極性比率が本発明範囲の上限を超えているので、溶接性が低下した。
【0047】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明によれば、アルミニウム板材に貼付する制振樹脂材に穴を形成しているので、制振性が著しく低下することがなく、その溶接時において、溶接性に悪影響を与えず、良好な溶込みを得ることができる。
【0048】
また、溶接条件として交流パルスMIG法を使用し、その正極性比率を適切に規定しているので、薄板の溶接時に問題となる過大入熱に伴うアークの貫通が発生することがなく、溶込みが安定した溶接ビードを形成することができ、これにより、溶接条件範囲が拡大され、溶接作業性を改善することができる。更に、制振樹脂材に形成される穴の円相当径、穴のピッチ、第1の線列間の間隔及び穴の総面積等を適切に規定すると、更に一層溶接性を向上させることができる。
【0049】
従って、本発明により、通常のMIG溶接法では溶接が困難であった2mm以下の肉厚を有するアルミニウム合金板材に制振樹脂材を貼付した制振形材の溶接を容易に実施することができる。即ち、本発明は工業上有用で、顕著な効果を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例に係る制振形材を示す平面図である。
【符号の説明】
1;制振形材
2;アルミニウム板
3;制振樹脂材
3a;穴
4;第1の線列
5;第2の線列

Claims (3)

  1. 2mm以下の肉厚を有するアルミニウム又はアルミニウム合金板材の少なくとも1面に制振樹脂材が貼付された制振形材の溶接方法において、前記制振樹脂材には、第1の方向に延びる複数本の第1の線列と、この第1の方向に交叉する第2の方向に延びる複数本の第2の線列とが交叉する位置に、穴が形成されており、前記アルミニウム又はアルミニウム合金板材の制振樹脂材が貼付された面の裏面側から、逆極性アークと正極性アークとを交互に供給する交流パルスMIG溶接法により、正極性比率を5乃至50%として溶接することを特徴とする制振形材の溶接方法。
  2. 前記アルミニウム又はアルミニウム合金板材の板厚をt(mm)とし、前記穴の円相当径をD(mm)とし、第1の線列に配置された穴のピッチをP(mm)とし、第1の線列間の間隔をQ(mm)としたとき、前記制振樹脂材に形成する穴の円相当径Dを1t乃至4t(mm)、ピッチPを2D乃至3D(mm)、間隔Qを0.5P乃至1P(mm)、前記穴の総面積を前記制振樹脂材の面積の20%以下とすることを特徴とする請求項1に記載の制振形材の溶接方法。
  3. 前記正極性比率を10乃至40%とすることを特徴とする請求項1又は2に記載の制振形材の溶接方法。
JP27110196A 1996-10-14 1996-10-14 制振形材の溶接方法 Expired - Fee Related JP3835864B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP27110196A JP3835864B2 (ja) 1996-10-14 1996-10-14 制振形材の溶接方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP27110196A JP3835864B2 (ja) 1996-10-14 1996-10-14 制振形材の溶接方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JPH10122299A JPH10122299A (ja) 1998-05-12
JP3835864B2 true JP3835864B2 (ja) 2006-10-18

Family

ID=17495370

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP27110196A Expired - Fee Related JP3835864B2 (ja) 1996-10-14 1996-10-14 制振形材の溶接方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP3835864B2 (ja)

Also Published As

Publication number Publication date
JPH10122299A (ja) 1998-05-12

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP4612076B2 (ja) 金属メッキ板のレーザー溶接方法
US8742294B2 (en) MIG welded joint between aluminum and steel members and MIG welding process
JP3115456B2 (ja) 亜鉛めっき鋼板のレーザ溶接方法
JP2007136489A (ja) 異材の溶接方法
JP3835864B2 (ja) 制振形材の溶接方法
JP2012223799A (ja) 溶接継手の製造方法
JP2006130562A (ja) 金属工作物の穴を修理する方法
JP3560426B2 (ja) 制振形材
JP2008200750A (ja) 片面アークスポット溶接方法
KR101922063B1 (ko) 아연도금강판의 용접방법
JP2004224246A (ja) サスペンションアーム及びその製造方法
Kah et al. Joining of sheet metals using different welding processes
JP2001150155A (ja) アルミニウム又はアルミニウム合金材の電子ビーム溶接方法
JPS61193788A (ja) 溶接方法
JP5231073B2 (ja) 溶接継手及びその製造方法
WO2021075533A1 (ja) アルミニウム材の抵抗スポット溶接方法、アルミニウム材の抵抗スポット溶接制御装置、および抵抗スポット溶接機
JP2004074212A (ja) アルミ合金溶接方法及びアルミ合金溶接装置
JP2002178169A (ja) 輸送機用構造体及びその製造方法
JP2006346709A (ja) 薄板縁継手のレーザ溶接方法
JP2020006416A (ja) ウェルドボンド継手およびその製造方法
US20060027549A1 (en) Buried arc welding of integrally backed square butt joints
JP3813031B2 (ja) 溶接継手構造材
JP2000153376A (ja) 摩擦接合方法及びその装置
JP7382114B2 (ja) スポット溶接方法
JP2003025082A (ja) 亜鉛めっき鋼板の重ねレーザー溶接方法

Legal Events

Date Code Title Description
TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20060725

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20060725

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20090804

Year of fee payment: 3

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20100804

Year of fee payment: 4

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees