JP3835839B2 - 優れたガス吸収能力を有する活性炭の製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、優れたガス吸収能力を有する、BET比表面積が2000m2 /g以上である活性炭の製造方法に関する。
本発明の活性炭は、従来にない優れたガス吸収能力を有するので、防毒・防臭用、特に呼吸保護マスクの有毒ガス吸収材として有用である。
【0002】
【従来の技術】
活性炭は気体吸収用として良く使用され、活性炭により有毒ガス・悪臭ガスなどの有毒ガスを吸収除去することは従来からなされている。
活性炭は、通常、種々の炭素材料を炭化し、次いで賦活することにより製造される。炭化処理は、炭素材料の炭化度を高めるために行われ、炭素材料を乾燥し、例えば、600℃程度で不活性雰囲気で加熱することで実施される。炭化後、必要により破砕又は造粒して粒度を揃えた後に賦活処理が行われる。
【0003】
賦活処理は、細孔構造を生成させて吸収能力を向上させるために行われる。賦活処理にはガス賦活と薬品賦活の2種類がある。賦活は、ガス賦活は、炭化した材料を、例えば、水蒸気、二酸化炭素、酸素の混合雰囲気で800℃〜1000℃で加熱することにより行われる。一方、薬品賦活は、炭化した材料を、化学薬品(例えば、塩化亜鉛、リン酸、アルカリ塩等)を含浸させて加熱することにより行われる。賦活により得られる活性炭のBET比表面積は、原料の種類にもよるが、通常800〜1600m2 /gである。
【0004】
ところで、呼吸保護マスクの小型化や使用可能時間を延長するためには、より高性能の吸収剤が必要とされる。そのため、より比表面積が大きく吸収能力の高い活性炭に対する要望がある。しかし、上記賦活の技術は、ほぼ確立したものであり、新たな賦活技術の開発は困難である。また、粒状の活性炭のガス吸収能力は、粒度が小さくなると、向上することが知られているが、粒度が小さくなると、通気ガスの圧力損失が上昇するという短所がある。
そこで、通気抵抗を低下させずに粒状活性炭のガス吸収能力を向上させるためには、賦活後に活性炭の表面をさらに改質する技術の開発が必要である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明の目的は、従来よりBET比表面積の高い、BET比表面積が2000m2 /g以上である活性炭を製造する方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、活性炭をアルカリ処理し、プラズマ処理することを特徴とするBET比表面積が2000m2 /g以上である活性炭の製造方法に関する。
【0007】
以下、本発明について説明する。
本発明の製造方法に原料として用いられる活性炭には、従来の活性炭をそのまま用いることができる。活性炭の原料となる炭素材料は、通常は椰子殻であるが、椰子殻以外に、木炭、のこくず、亜炭、石炭、ピッチ、もみ殻、古タイヤ等であっても良い。さらに、活性炭製造時の賦活方法にも特に制限はなく、ガス賦活及び薬品賦活のいずれの方法により賦活された活性炭も用いることができる。
さらに、活性炭には、通常、形状によって造粒炭、破砕炭、顆粒炭、球形炭等があるが、本発明では、いずれの形状の活性炭も処理することができる。
【0008】
本発明の製造方法においては、活性炭をアルカリ処理する。
本発明においてアルカリ処理とは、活性炭をアルカリ水溶液に一定時間浸漬する処理である。アルカリ水溶液に含まれるアルカリ成分としては特に制限はないが、アルカリ金属水酸化物(例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等)、アルカリ土類金属水酸化物(例えば、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化ストロンチウム等)、アンモニア、アミン類等を挙げることができる。アルカリ成分の濃度は、アルカリの種類、原料、及び原料の量等を考慮して適宜決定されるが、通常0.1〜2モル/リットルの範囲とすることが適当である。
【0009】
活性炭をアルカリ水溶液へ浸漬する時間は、アルカリの種類、原料、及び原料の量等を考慮して適宜決定されるが、例えば10分間〜2時間程度とすることができる。また、浸漬時のアルカリ水溶液の温度は、特に制限はないが、処理時間の短縮等を考慮すると40〜80℃の範囲の加熱下で行うことが適当である。この加熱処理は、例えばエバポレーターを用いて吸引脱水しながら行うことができる。
【0010】
尚、アルカリ水溶液への浸漬前に、処理対象である活性炭を真空下で加熱して脱水することで、アルカリ処理の効果を高めることができることから好ましい。この真空加熱処理は、例えば温度120〜600℃、真空度1torr以下、処理時間1〜5時間の条件で行うことができる。
アルカリ水溶液への浸漬処理が済んだ活性炭は、水分を除去した後、プラズマ処理を施す。
【0011】
活性炭のフラズマ処理は、例えば図1に示すような装置を用いて行うことができる。図中、1はマイクロ波発生器、2は導波管、3は石英ガラス製の処理室、4はアイソレーター、5はスリー・スタブ同調器(Three−stub tuner)、6はマイクロ波出力計、7はマイクロ波反射用プランジャ、8はマノメーター、9は真空計、10は液体窒素である。マイクロ波反射用プランジャ7はマイクロ波を反射して処理室3にマイクロ波を集中させるために使用される。処理室3の排気ガスを液体窒素10内を通して真空源に導くのは処理室の真空度を高めるためである。
【0012】
プラズマは、励起した分子、原子、イオン、電子など荷電粒子を含み、全体として電気的にほぼ中性を保つ粒子の集団である。プラズマは、1Pa〜1atm程度の範囲にある気体を極めて高い高温状態にするか、あるいは強い磁場又は電磁波のもとにおくと発生する。本発明においてプラズマ処理とは、このような環境中に、対象とする材料を一定時間置くことをという。
【0013】
図1に示す上記装置では、プラズマは、処理室3を真空にし、例えばマイクロ波のような電磁波を照射することにより、発生させることができる。処理室3の真空度は、約1トル(Torr)以下にすることが、プラズマの発生を維持するという観点から適当である。また電磁波は、ラジオ波からマイクロ波の範囲が適当であり、振動数は、おおよそ1GHz〜1000GHzの範囲、通常は1〜10GHzが適当である。
【0014】
尚、本発明におけるプラズマは、減圧下でラジオ波やマイクロ波などの電磁波を利用するいわゆる低温プラズマである。
プラズマ処理後の活性炭は、好ましくは水洗等により、付着したアルカリ分を除去することが好ましい。
【0015】
上記本発明の製造方法により、アルカリ処理及びプラズマ処理前に比べてBET比表面積が格段に高められた活性炭が得られる。得られる活性炭のBET比表面積は、アルカリ処理条件やプラズマ処理条件により変化し、特に、電磁波の波長及び出力が一定の場合、処理時間を制御することにより、BET比表面積が2000m2 /g以上である活性炭を得ることができる。本発明の製造方法によれば、好ましくはBET比表面積が2200m2 /g以上、より好ましくはBET比表面積が2400m2 /g以上の活性炭を製造することができる。
【0016】
【実施例】
以下本発明を実施例によりさらに説明する。
実施例1
〔活性炭のアルカリ処理〕
市販の椰子殻活性炭(BET比表面積1617m2 /g)を120℃で1時間真空加熱処理した。次いで、真空加熱処理した活性炭10gをフラスコ内の1モル/リットルの水酸化カリウム水溶液500mlに添加した。活性炭と水酸化カリウム水溶液の混合物をロータリエバポレーターを用いて40〜60℃で加熱しながら攪拌し、並行してフラスコ内の蒸発水分をアスピレーターを用いて水がなくなるまで吸引脱水した。処理後の活性炭は、そのまま、次のプラズマ処理の試料とした。
【0017】
〔活性炭のプラズマ処理〕
図1に概略説明図を示す装置を用いて活性炭のプライマ処理を行った。即ち、アルカリ処理した活性炭を処理室3に充填し、次いで真空ポンプにより処理室3内を約1.0トル以下に減圧した。所定の圧力にまで減圧した後、300Wのマイクロ波(2.45GHz)を処理室に照射して処理室内をプラズマ状態にした。2分間経過後、マイクロ波の照射をやめ、活性炭を処理室から取り出した。
処理室から取り出した活性炭は、水500mlでの洗浄とろ過とを繰り返し行い、ろ液のpHが7付近になったら洗浄を終了し、乾燥して本発明の活性炭を得た。
【0018】
〔各種物性の測定〕
上記実施例1で得た活性炭、未処理椰子殻活性炭、プラズマ処理(2分間)のみを施した活性炭について、BET比表面積を測定し、結果を表1に示す。尚、BET比表面積の測定は、常法により行った。
【0019】
【表1】
Figure 0003835839
【0020】
【発明の効果】
本発明によれば、優れたガス吸収能力を有するBET比表面積が2000m2 /g以上である活性炭の製造方法を提供することができる。本発明のアルカリ処理及びプラズマ処理により、活性炭のBET比表面積を容易に増大させることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の製造方法を実施する装置の一例の説明図。
【符号の説明】
1 マイクロ波発生器
2 導波管
3 処理室
4 アイソレーター
5 スリー・スタブ同調器
6 マイクロ波出力計
7 マイクロ波反射用プランジャ
8 マノメータ
9 真空計
10 液体窒素

Claims (3)

  1. 活性炭をアルカリ処理し、次いでマイクロ波プラズマ処理することを特徴とするBET比表面積が2000m2/g以上である活性炭の製造方法。
  2. アルカリ処理が、活性炭をアルカリ水溶液に浸漬することにより行われる請求項1記載の製造方法。
  3. プラズマ処理が、低温プラズマ処理である請求項1又は2記載の製造方法。
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