JP3835671B2 - 排ガス浄化用触媒の製造方法 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、自動車等の内燃機関から排出される排ガス中に含まれるHCなどの有害物質を浄化できる排ガス浄化用触媒の製造方法に関する。本発明で得られた排ガス浄化用触媒は、排ガス中に酸素が多く含まれる高温のリーン雰囲気で用いられる場合に特に有用である。
【0002】
【従来の技術】
従来より、自動車の排気ガス浄化用触媒として、CO及びHCの酸化とNOx の還元とを同時に行って排気ガスを浄化する三元触媒が用いられている。このような三元触媒としては、コーディエライトなどからなる耐熱性基材にγ-Al2O3からなる多孔質担体層を形成し、その多孔質担体層にPt,Rhなどの触媒貴金属を担持させたものが広く知られている。
【0003】
ところで近年、排ガス浄化用触媒の設置場所がエンジンに近いマニホールド直下とされる傾向があり、また高速走行時などには排ガス温度が高くなることから、排ガス浄化用触媒は高温に晒される場合が多くなっている。ところが従来の排ガス浄化用触媒では、高温の排ガスによりγ-Al2O3の熱劣化が進行し、これに伴う触媒貴金属のシンタリング現象で触媒性能が劣化するという不具合があった。
【0004】
そこで、例えば特開平4-122441号公報には、予め熱処理されたアルミナを用いて触媒貴金属を担持させる排ガス浄化用触媒の製造方法が開示されている。この製造方法によれば、アルミナは既に熱処理されているため、得られた排ガス浄化用触媒は高温の排気ガスに晒されても熱劣化がほとんど進行しない。したがって触媒貴金属のシンタリングが生じず安定した浄化性能が得られる。
【0005】
一方、自動車の走行において、市街地走行の場合には加速・減速が頻繁に行われ、空燃比はストイキ(理論空燃比)近傍からリッチ状態までの範囲内で頻繁に変化する。このような走行における低燃費化の要請に応えるには、なるべく酸素過剰の混合気を供給するリーン側での運転が必要となる。
【0006】
ところが上記公報に開示された製造方法で製造された排ガス浄化用触媒では、リーン条件で 800℃以上の高温が作用した場合に触媒貴金属のシンタリングが著しく、触媒性能が低下するという不具合があった。
【0007】
この不具合を解決するために、本願出願人は特開平8-038897号公報において、多孔質担体に貴金属を担持した後、非酸化性雰囲気中にて 800℃以上で熱処理する製造方法を提案している。この製造方法によれば、多孔質担体は焼結によって細孔が収縮し、担持されている貴金属は多孔質担体に緊密に取り囲まれるので、移動が困難となる。一方、熱処理時は非酸化性雰囲気であるので、PtO2などが生じず触媒貴金属の気相移動が起こらない。したがって熱処理中には、触媒貴金属のシンタリングがほとんど生じず、多孔質担体によって緊密に取り囲まれる反応が主として生じる。そのため得られた排ガス浄化用触媒では、触媒貴金属の移動が規制されているので、リーン雰囲気においてもシンタリングを抑制することができる。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
ところがさらなる研究の結果、特開平8-038897号公報に記載の製造方法で製造された排ガス浄化用触媒であっても、その耐熱性にばらつきがあることが明らかとなった。また近年では排ガス温度がさらに高温となる傾向があり、さらなる耐熱性の向上が求められている。
【0009】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、特開平8-038897号公報に開示された製造方法を改良して排ガス浄化用触媒の耐熱性をさらに向上させるとともに、その高い耐熱性を確実に付与して品質を安定化することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決する本発明の排ガス浄化用触媒の製造方法の特徴は、多孔質担体に少なくとも Pt を含む触媒金属を担持して触媒担持担体とする担持工程と、触媒担持担体を非酸化性雰囲気中にて熱処理し比表面積を30〜70%の低減率で低下させる熱処理工程と、からなることにある。
【0011】
本発明の製造方法において、多孔質担体は純度98%以上のγ-Al2O3を含むことが望ましい。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明者らは、特開平8-038897号公報に記載の製造方法をさらに改良すべく鋭意研究したところ、この製造方法の効果の発現量を表す指標は、熱処理温度よりも比表面積低減率が相応しいことが明らかとなった。
【0013】
すなわち本発明の製造方法では、非酸化性雰囲気中における熱処理によって比表面積を30〜70%の低減率で低下させている。この範囲の比表面積低減率となるように熱処理することにより、熱処理工程における担体中の細孔の収縮程度が最適な範囲となり、担持されている触媒金属が多孔質担体に緊密に取り囲まれる。したがって担持されている触媒金属の移動が規制され、高温域における触媒金属のシンタリングを抑制することができる。
【0014】
比表面積低減率が30%未満であると、担体中の細孔の収縮が僅かとなり、触媒金属の移動を規制することが困難となって触媒金属のシンタリングが生じる。また比表面積低減率が70%を超えると、担体自体が大きく変形してコート層の剥離やひび割れが生じる場合がある。
【0015】
ところで排ガス浄化用触媒用の担体としては、γ-Al2O3が広く用いられている。このγ-Al2O3は、性能を安定化するために、予めLaあるいはBaなどの安定化元素を混合した安定化アルミナとして供給されている。これらの安定化元素は一般に酸化物としてγ-Al2O3中に存在し、その合計量は約4モル%程度となっている。
【0016】
そして本発明者らは、特開平8-038897号公報に記載の製造方法をさらに改良すべく鋭意研究したところ、この製造方法の効果は上記の安定化元素の存在によって大きくばらつくことが明らかとなり、安定化元素の存在は本発明にとって障害となることが明らかとなった。
【0017】
そこで多孔質担体としては、純度98%以上のγ-Al2O3を含む担体を用いることが望ましい。純度98%以上とすることで、熱処理工程における細孔の収縮が円滑に進行し、比表面積低減率を上記範囲とすることができる。
【0018】
本発明の作用は、以下のように考えられている。例えばアルミナ表面に担持されたPtは、高温で酸素が共存する雰囲気においてはPtO2となり、気相移動により拡散・凝集が促進される。そのためO2を多く含むリーン雰囲気又はストイキ雰囲気では、高温に晒されるとPtにシンタリングが生じ触媒性能が大きく低下する。
【0019】
そこで本発明では、触媒金属を担持後に非酸化性雰囲気中にて熱処理している。これにより多孔質担体は焼結して細孔が収縮し、担持されている触媒金属は多孔質担体に緊密に取り囲まれるので、移動が困難となる。
【0020】
一方、熱処理時は非酸化性雰囲気であるので、PtO2などが生じず触媒金属の気相移動が起こらない。したがって熱処理中には、触媒金属のシンタリングがほとんど生じず、多孔質担体によって緊密に取り囲まれる反応が主として生じる。
【0021】
したがって得られた排ガス浄化用触媒では、触媒金属の移動が規制されているので、高温のリーン雰囲気においても触媒金属のシンタリングが防止され、高い耐熱性を有している。
【0022】
なお、熱処理時に触媒金属を多孔質担体で緊密に取り囲ませるには、熱処理前の多孔質担体の平均細孔径を1〜5nmの範囲とするのが望ましい。平均細孔径が1nmより小さいと、細孔内に担持されにくく、また熱処理による収縮で細孔が閉じる場合があり触媒性能が低下する。また、5nmより大きくなると表面積が低下して担持力が低下するとともに、熱処理により細孔が収縮しても担持された触媒金属を緊密に保持することが困難となり移動を許容してしまう。
【0023】
本発明に用いられる多孔質担体としては、上記した安定化元素を含まない純度98%以上のγ-Al2O3が最も望ましいが、これに限るものではなく、非酸化性雰囲気での熱処理によって比表面積が30〜70%の低減率で低下するものであれば用いることができる。また純度98%以上のγ-Al2O3を含めばその分だけ触媒金属の移動を規制できるので、純度98%以上のγ-Al2O3を少なくとも含んでいることが好ましい。他の多孔質担体として、TiO2,ZrO2,TiO2など他の担体あるいはCeO2などの助触媒を純度98%以上のγ-Al2O3に混合して用いることもできる。
【0024】
担持工程は、上記多孔質担体に触媒金属を担持する工程であり、従来より用いられている吸着担持法、含浸担持法などを用いて行うことができる。触媒金属としては、Pt,Rh,Pd,Ir,Ru,Ag,Auなどの貴金属、Fe,Co,Ni,Mn,Cuなどの卑金属などが例示されるが、本発明は特にシンタリングしやすいPt に効果的である。また触媒金属の担持量は特に制限ないが、従来と同様に多孔質担体に対して 0.1〜20重量%が一般的である。
【0025】
熱処理工程は、非酸化性雰囲気で行う。非酸化性雰囲気とは酸素を含まなければよく、真空雰囲気、窒素ガス雰囲気、不活性ガス雰囲気、還元性雰囲気などが例示される。また熱処理工程における熱処理温度は、 800℃以上が望ましく、1000℃〜1200℃とすることもできる。目的とする触媒の使用時に作用する最高温度以上であればよい。熱処理時間は、 800℃以上で5時間もあれば充分である。
【0026】
粉末状の多孔質担体に触媒金属を担持した触媒担持担体粉末に対して熱処理工程を行い、それをハニカム基材にコートして排ガス浄化用触媒を製造することもできるし、触媒担持担体からなるコート層をハニカム基材に形成した排ガス浄化用触媒を製造してから熱処理工程を行うこともできる。ペレット形状の触媒の場合も同様である。
【0027】
【実施例】
以下、実施例及び比較例により本発明を具体的に説明する。
【0028】
(実施例1)
所定濃度のジニトロジアンミン白金水溶液の所定量を純度98%以上のγ-Al2O3粉末 200gに含浸し、蒸発・乾固した後 300℃で2時間焼成してPtを 1.5g担持した。次いで所定濃度の硝酸ロジウム水溶液の所定量を含浸し、蒸発・乾固した後 300℃で2時間焼成してRhを 0.3g担持した。
【0029】
得られた触媒粉末に対して、N2ガス流通下にて1000℃で5時間保持する熱処理を行った。熱処理前の比表面積と熱処理後の比表面積を測定し、結果を表2に示す。また比表面積低減率を計算し、結果を表2に併せて示す。
【0030】
熱処理後の触媒粉末を常法にてペレット化し、ペレット触媒とした。このペレット触媒に対して、空気中にて 800℃で5時間保持する耐久試験を行った。そして耐久試験後のペレット触媒を評価装置に配置し、表1に示すモデルガスを用いてHC浄化率を測定した。評価条件は、SV=26万/hで 500℃×20分の前処理後、5℃/分で降温し20℃下がる毎に10分間保持してHC浄化率を測定した。そしてHC50%浄化温度を算出し、結果を表2に示す。
【0031】
【表1】
【0032】
(実施例2)
熱処理温度を1100℃としたこと以外は実施例1と同様である。触媒粉末の熱処理前の比表面積と熱処理後の比表面積及び比表面積低減率を表2に示す。また熱処理後の触媒粉末から実施例1と同様にペレット触媒を調製し、実施例1と同様にして耐久試験後のHC50%浄化温度を測定した。結果を表2に示す。
【0033】
(実施例3)
純度98%以上のγ-Al2O3粉末 200gに代えて、純度98%以上のγ-Al2O3粉末 100gとCeO2−ZrO2固溶体粉末(モル比Ce:Zr=1:1) 100gの混合粉末を用いたこと以外は実施例1と同様である。触媒粉末の熱処理前の比表面積と熱処理後の比表面積及び比表面積低減率を表2に示す。また熱処理後の触媒粉末から実施例1と同様にペレット触媒を調製し、実施例1と同様にして耐久試験後のHC50%浄化温度を測定した。結果を表2に示す。
【0034】
(比較例1)
N2ガス雰囲気中における触媒粉末の熱処理を行わなかったこと以外は実施例1と同様である。触媒粉末の熱処理前の比表面積を表2に示す。また触媒粉末から実施例1と同様にペレット触媒を調製し、実施例1と同様にして耐久試験後のHC50%浄化温度を測定した。結果を表2に示す。
【0035】
(比較例2)
N2ガス雰囲気中における触媒粉末の熱処理を行わなかったこと以外は実施例3と同様である。触媒粉末の熱処理前の比表面積を表2に示す。また触媒粉末から実施例1と同様にペレット触媒を調製し、実施例1と同様にして耐久試験後のHC50%浄化温度を測定した。結果を表2に示す。
【0036】
<評価>
【0037】
【表2】
【0038】
表2より、各実施例のペレット触媒は各比較例の触媒に比べてより低温域からHCを浄化することができ、これは触媒粉末にN2ガス雰囲気中における熱処理を行って比表面積を30〜48%の低減率で低下させた効果であることが明らかである。
【0039】
(実施例4)
純度98%以上のγ-Al2O3粉末 100gと、CeO2−ZrO2固溶体粉末(モル比Ce:Zr=1:1) 100gを混合し、さらに所定量のアルミナゾルと水を加えてスラリーを調製した。このスラリーを用いてコージェライト製の容積 1.5Lのハニカム基材表面にコート層を形成し、 120℃で乾燥後 500℃で焼成してコート層を固定した。
【0040】
次に所定濃度のジニトロジアンミン白金水溶液の所定量をコート層に含浸させ、乾燥後 500℃で焼成してPtを担持した。さらに所定濃度の硝酸ロジウム水溶液の所定量をコート層に含浸させ、乾燥後 500℃で焼成してRhを担持した。ハニカム基材1LあたりPtは 1.5g、Rhは 0.3g担持された。この触媒を試料1とした。
【0041】
試料1の触媒に対して、N2ガス流通下にて1000℃で5時間保持する熱処理を行い、それを試料2の触媒とした。
【0042】
以下、表3に示す種々の担体原料を用い、熱処理の有無、熱処理条件を種々の水準で選択して、試料1〜試料20の触媒を調製した。
【0043】
<試験・評価>
【0044】
【表3】
【0045】
試料1〜試料20の触媒の熱処理前の比表面積をそれぞれ測定し、熱処理したものについては熱処理後の比表面積をそれぞれ測定した。さらに比表面積低減率を算出し、それぞれの結果を表3に示す。熱処理を行わなかった試料については、比表面積低減率をゼロ%とした。
【0046】
また試料1〜試料20の触媒をそれぞれ触媒コンバータに収納し、2Lエンジンの排気系に装着して、空燃比をストイキを中心に大きく変動させ(A/F=14.6±1)、触媒床温 900℃で 100時間運転する耐久試験を行った。
【0047】
上記耐久試験後、A/F=14.6の条件で 240℃から 440℃まで昇温し、その時のHC50%浄化温度をそれぞれ測定した。結果を表3に示す。
【0048】
そして、表3から各試料について比表面積低減率とHC50%浄化温度との関係をプロットした結果を図1に示す。
【0049】
図1より、比表面積低減率が30〜70%にあればHC50%浄化温度が 350℃以下となることがわかる。しかし試料5及び試料6では、比表面積低減率が30〜70%にあるものの、 La2O3で安定化されたγ-Al2O3を用いているためにHC50%浄化温度が 340℃以上と比較的高い。
【0050】
そして純度98%以上のγ-Al2O3を用い、かつ比表面積低減率が30〜70%となるように熱処理された図1の楕円で囲まれた各試料では、ほとんどHC50%浄化温度が 330℃以下であり、きわめて高い活性を有している。これは、耐久試験時における貴金属のシンタリングが抑制されたことによる効果と考えられる。
【0051】
【発明の効果】
すなわち本発明の排気ガス浄化用触媒の製造方法によれば、触媒金属が多孔質担体で緊密に取り囲まれ、高温時における触媒金属の移動が防止される。したがって本発明の製造方法によって製造された排ガス浄化用触媒によれば、触媒金属のシンタリングが抑制されているので、高温耐久後にも高い浄化活性が発現される。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例4における各試料の比表面積低減率とHC50%浄化温度との関係をプロットしたグラフである。
Claims (2)
- 多孔質担体に少なくとも Pt を含む触媒金属を担持して触媒担持担体とする担持工程と、
該触媒担持担体を非酸化性雰囲気中にて熱処理し比表面積を30〜70%の低減率で低下させる熱処理工程と、からなることを特徴とする排ガス浄化用触媒の製造方法。 - 前記多孔質担体は純度98%以上のγ-Al2O3を含むことを特徴とする排ガス浄化用触媒の製造方法。
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