JP3835291B2 - アンテナ素子 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、頂部負荷型のモノポールアンテナ素子に関し、特に、広帯域で、表面自動実装可能で、しかも安価で構造が簡単、かつ、入力インピーダンス及び共振周波数の微調整が容易に行えるアンテナ素子の構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、パソコン等のコンピュータの普及により、コンピュータ間のネットワーク化が急速に進んでおり、コンピュータ間をネットワークケーブル等で配線することなく簡単にコンピュータ・ネットワークを構築することができる無線LAN機器に注目が集まっている。
【0003】
このような機器のなかには、無線を介してコンピュータ間でやり取りされるデータを送受信するアンテナ素子(以下、単にアンテナと記載する)が含まれる。例えば、5GHz帯を使用してデータの送受信を行うアンテナの構造は後で詳細に説明するが、主として、金属などの導体からなる円板、これを支える誘電体、プリント板、及び一端が当該円板の中心に接続され、他端が当該プリント板に接続される導体のモノポールから構成されている例がある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
一方、無線LANシステムは、そのシステムの利便性から各国の通信機構において周波数割当が拡大される傾向にあり、無線LANシステムに使用するアンテナを広帯域化する技術が必要となってきている。
【0005】
また、このような無線LANの普及により、各製造メーカにとっては、ハードウエアの原価を低減させることが重要な課題となり、安価なアンテナを実現するための表面自動実装可能なアンテナ構造についてのアイデアも重要である。
【0006】
更に、各製造メーカの製造検査部門において、アナログRF特性の調整は必ず行われる作業であるが、こうした調整をアンテナ単体において実施できれば、製品の直行率(歩留まり)を改善することができ、結果的に、アンテナに関するトータルコストを低減することができる。
【0007】
しかし、上述した構成を有する従来のアンテナでは、本発明のアンテナを凌ぐ広帯域特性やアンテナ入力インピーダンス及び共振周波数の微調整機能には対応できない。
【0008】
また、アンテナを表面実装するための位置固定とハンダ付けが簡単にできない上に、アンテナの給電部である垂直エレメント下底部のハンダ付け確認において、目視による簡単な方法を採用することができない。
【0009】
更に、上記モノポールと円板との接続は、場合によりこれらを一体のものから切削するか、鋳型によって成形を行うか、あるいは、これらを別々に作ってハンダ等で接合することによって行われ、いずれの方法をとっても製造コストは比較的高いのが現状である。
【0010】
また、製造後にアンテナ部分の微調整が容易にできないため、直交率(歩留まり)を効率的に改善することができず、結果的に安価なアンテナの供給を不可能にしている。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明は、本来、アンテナの先端上部に円環等の負荷を装荷したアンテナを発展させたものである。この種のアンテナは、例えばコロナ社「アンテナ・電波伝搬」P69及びP70に説明されている。当初は、電波の仰角面内における放射角度を低くおさえることが目的であったが、アンテナ自身の低姿勢化の効果も存在する。時代的背景として、本アンテナは周波数の低い中波などで使用されていたため、仰角面内の放射角度の改善や低姿勢化が主目的であり、今日の無線LANに用いられる2.4GHzや5GHzで実現された場合の実装上の利便性や、広帯域化、調整の容易さには目がむけられていなかったものである。
【0012】
従って、本発明の目的は、従来のアンテナと比べて構造が単純で、製造コストのかからない表面自動実装可能な安価なアンテナを提供することである。
【0013】
また、本発明の他の目的は、広帯域なアンテナを提供することである。
【0014】
また、本発明の更に他の目的は、アンテナの入力インピーダンス及び共振周波数の微調整を容易に行うことができるアンテナを提供することである。
【0015】
本発明の実施態様によれば、縦に延びる円筒状導体を表面に有するとともに、前記円筒状導体の内部に誘電体を有する垂直エレメントと、前記円筒状導体の上端に接続され、当該接続点から横に延びる放射状の導体で構成された頂部板を下面に取り付けた誘電体の天板と、前記垂直エレメントと天板を支えるために天板端より下方に設けた棒状もしくは面状の誘電体の足とを有し、前記垂直エレメントの誘電体と、前記天板の誘電体と、前記足の誘電体とがモールド技術で一体成型した誘電体により構成されるアンテナ素子が提供される。
【0017】
本発明の実施態様によれば、縦に延びる円筒状導体を表面に有するとともに、前記円筒状導体の内部に誘電体を有する垂直エレメントと、前記円筒状導体の上端に接続され、当該接続点から横に延びる放射状の導体で構成された頂部板を下面に取り付けた誘電体の天板と、前記垂直エレメントと天板を支えるために天板端より下方に設けた棒状もしくは面状の誘電体の足とを有し、前記垂直エレメントの誘電体と、前記天板の誘電体と、前記足の誘電体とがモールド技術で一体成型した誘電体により構成され、前記垂直エレメントの形状を逆円錐台にしたアンテナ素子が提供される。
【0018】
本発明の実施態様によれば、縦に延びる円筒状導体を表面に有するとともに、前記円筒状導体の内部に誘電体を有する垂直エレメントと、前記円筒状導体の上端に接続され、当該接続点から横に延びる放射状の導体で構成された頂部板を下面に取り付けた誘電体の天板と、前記垂直エレメントと天板を支えるために天板端より下方に設けた棒状もしくは面状の誘電体の足とを有し、前記垂直エレメントの誘電体と、前記天板の誘電体と、前記足の誘電体とがモールド技術で一体成型した誘電体により構成され、前記誘電体表面にアンテナ入力インピーダンス及び共振周波数の調整用導体パターンを設けたアンテナ素子が提供される。
【0019】
【発明の実施の形態】
最初に、従来のアンテナの構造について説明する。図21には、例えば、特開平08−09626号公報記載の従来の平面アンテナの構造図が示されている。
【0020】
図21に示すアンテナは、金属などの導体よりなる円板201、同じく金属などの導体よりなる棒状の垂直エレメント202、及び金属などの導体よりなるグランド板203、円板201と垂直エレメント202を支える誘電体204より構成される。垂直エレメント202の上端部は、円板201の中心に接続されている。
【0021】
上記アンテナは、通常プリント板上に形成されたマイクロストリップラインの接続ポイントに搭載され、垂直エレメント202の下端部はマイクロストリップラインの給電部と接続される。また、グランド板203はマイクロストリップラインのグランドパターン部と接続される。
【0022】
このとき、垂直エレメント202の下端部とマイクロストリップラインの給電部、並びにグランド板203とマイクロストリップラインのグランドパターン部は、ハンダ付け等によって接続される。
【0023】
次に、従来のアンテナの電気的な動作原理について説明する。
【0024】
図20(a)(b)は、従来のアンテナにおける動作原理図が示されており、図20(a)は、通常の1/4波長モノポールアンテナである。放射エレメント100の高さHAは、約1/4波長になっており、放射エレメントの根元より給電する。このとき、高周波電流iが流れ、垂直偏波の電波が放射される。
【0025】
図20(b)は、通常の1/4波長モノポールアンテナと類似している。当該アンテナも高さHBの垂直エレメント101の根元より給電するが、1/4波長モノポールアンテナとの違いは、垂直エレメント101の先端部分が半径Rの円板102になっていることである。そして、垂直エレメント101の高さHBと先端部分の半径Rの合計がエレメント100の高さHAにほぼ等しくなっている。また、図20(a)と同様に高周波電流imが流れ、垂直偏波の電波が放射される。
【0026】
図20(b)では、高周波電流は円板102上で放射状に電流が流れると考えられるが、この円板102上の放射状の電流はベクトル的にキャンセルされるため、水平偏波の電波は放射されない。
【0027】
図20(c)は、本発明のアンテナ(図3)の断面図である。この場合の動作原理も図20(b)と類似である。給電部8から給電され、高周波電流inが垂直エレメント3の外周上を流れ、垂直偏波の電波が放射される。円板6には、上記同様放射状に高周波電流が流れるが、ベクトル的にキャンセルされるので、水平偏波は放射されない。ただし、図15(a)、(d)のように対称性のない形状の導体板が用いられている場合は、この高周波電流は完全にはキャンセルされないため、残留電流の振幅に応じた水平偏波の電波も放射されることになる。この水平偏波成分の放射は、アンテナの用途に応じて故意に放射させる設計もありえるので、アンテナとしての優劣を単純に評価する指標ではない。
【0028】
具体的な寸法においては、図20(b)の高さHBおよび半径Rは、図20(c)の高さH’及び等価半径R’に概ね一致して考えて差し支えない。また、垂直エレメント3の直径Sは、細くするとRとR’が一致する傾向になるため、共振周波数の一致という観点から、なるべく細い方が設計上容易となる。
【0029】
なお、本アンテナの広帯域性は、図20(C)のように、垂直エレメント3が円筒状になっていることによる効果が大と考えられる。これはエレメントを太くすることにより、本来の共振周波数と多少ずれた周波数においても太いエレメントを流れる電流の経路に幅ができるためである。
【0030】
即ち、波長の長い電波は斜めに電流が流れることで、波長の短い電波は最短距離で垂直電流が流れることにより共振できるからである。また、高周波においては表皮効果により電流は導体表面しか流れないため、構造上は円筒の導体面で十分となる。
【0031】
また、図20(c)においては、天板2や垂直エレメント3の構成と一体になった誘電体が用いられ、当該誘電体の誘電率は2〜6程度の場合が多く誘電率の影響に見合った波長短縮、即ち、寸法の短縮を見込む必要がある。具体的な事例としては、5GHz帯で設計した場合、比誘電率が4程度で、H’が約5mm、R’が約3mm、Sが約1mm程度となる。
【0032】
次に本発明のアンテナの構造について説明する。本発明の第1の実施形態のアンテナを上方向から見た斜視図を図1(a)に、下方向から見た斜視図を図1(b)に示す。図1(a)及び図1(b)において、本発明の第1の実施形態のアンテナ1は、誘電体よりなる天板2と、内部が誘電体で表面が金属などの導体よりなる垂直エレメント3と、誘電体よりなる足4より構成される。
【0033】
前記足4の底部には、ボス5が配置されており、ボス5を含む足4の底面及び足4の下側部の表面が金属などの導体部7で覆われた構造となっている。さらに、天板2の裏側には、金属などの導体よりなる円板6が配置され、円板6と垂直エレメント3は電気的に接続されている。誘電体の材料には、はんだ付けの耐熱性、及び誘電率、誘電損失を考慮して、液晶ポリマー等があげられる。
【0034】
本発明のアンテナを真上から見た上面図を図2(a)に、真下から見た底面図を図2(b)に示す。図2(a)及び図2(b)において、本発明のアンテナ1の垂直エレメント3は円板6の中心に位置している。
【0035】
本発明のアンテナの図2(b)A−A’面における断面図を図3(a)に、図2(b)B−B’面における断面図を図3(b)に示す。図3(a)及び図3(b)において、本発明のアンテナ1の垂直エレメント3は内部が誘電体よりなり、その側面及び底面が導体で覆われている。円板6は天板2の下面に配置され、垂直エレメント3の上部で電気的に接続されている。垂直エレメント3の底面には給電部8がある。また足4の底面にはボス5が配置され、ボス5を含む底面全体が導体で覆われた導体部7が付いた構造となっている。
【0036】
本発明のアンテナの足4における底面部分の詳細図を図4に示す。図4において、本発明のアンテナ1の足4はボス5を含む底面全体が導体で覆われ、かつ足4の下側の外側壁面にも導体部7が配置された構造となっている。本実施例ではボスを設けているが、必要に応じてボスの無い構造も取れる。
【0037】
図5から図11は、本アンテナを実際に使用した場合の実装例を示したものである。図5は、本アンテナ1をプリント板10に搭載した実装例1である。図5において、プリント板10は、下側にグランド板11、上側にマイクロストリップライン8を有している。アンテナ1の足4は、銅箔のランドパタ−ン12の上に配置され、ハンダ付けされる。一方、垂直エレメント3の底部も銅箔よりなるマイクロストリップライン8の先端の給電点9で接触するようになっていて、ここでハンダ付けされる。通常、足4及び垂直エレメント3のハンダ付けは、表面自動実装技術により実装される。
【0038】
本発明のアンテナ実装面であるプリント板10の上側のプリントパタ−ン例を図6に、実装状態の断面図を図7に示す。図6において、銅箔よりなる4つのランドパタ−ン12の内側には、それぞれ、スル−ホ−ル13が構成されており、プリント板10の下側に設けられたグランド板11と接続されている。また、銅箔よりなるマイクロストリップライン8の先端部分には、給電点9がある。
【0039】
図7は図6のプリントパタ−ンに本発明のアンテナを実装した例における断面図である。図7において、足4の底面のボス5がスル−ホ−ル13にはまり込み、位置が固定される。そして、ランドパタ−ン12上でハンダ付け14により固定される。また、垂直エレメント3の下底部も給電点9でハンダ付け14により、固定される。
【0040】
なお、図7の構造において、スルーホール13と足4のボス5を設けずに、足4をランドパターン12に直接ハンダ付けする方法も有効である。
【0041】
図8は図5と同様に、本アンテナ1をプリント板20に搭載した実装例2である。図8において、プリント板20は上側にグランド板21とマイクロストリップライン22、下側にグランド板23を有している。垂直エレメント3の下底部はマイクロストリップライン22の先端の給電点24で接触し、ハンダ付けされる。グランド板21とグランド板23はスル−ホ−ル25によって、電気的に接続されている。この場合、スル−ホ−ル25は、グランド板21とグランド板23が高周波的に同電位となるように、多数設けられる。実際には、使用波長の1/5〜1/20程度の間隔で設けられることが多い。また、アンテナ1の足4は、グランド板21とハンダ付けされて接続される。
【0042】
図9は、図8の実装方法をとった場合におけるプリント板20のプリントパタ−ン例である。図9において、4つのスル−ホ−ル26は図7の例と同様にアンテナ1の足4のボス5がはまり込むため、適切な径となっている必要がある。また、スル−ホ−ル25は、前述したように、グランド板21とグランド板23を高周波的に同電位とするために設けているので、その径は適当に選ばれればよい。また、銅箔よりなるマイクロストリップライン22の先端部分には、給電点24がある。
【0043】
図10は、本アンテナ1をプリント板30に搭載した実装例3である。図10において、プリント板30は上側にグランド板31、下側にマイクロストリップライン32を有している。この場合、垂直エレメント3の下底部は銅箔よりなるランドパタ−ンの給電点33で接触し、ハンダ付けされる。給電点33はスル−ホ−ル34を介して下側のマイクロストリップライン32に電気的に接続される。また、アンテナ1の足4は、グランド板31とハンダ付けされて接続される。
【0044】
図11は、図10の実装方法をとった場合におけるプリント板30の実装プリントパタ−ン例である。図11において、4つのスル−ホ−ル35は図7の例と同様にアンテナ1の足4のボス5がはまり込むため、適切な径になっている必要がある。また、グランド板31と絶縁された状態でランドパターンの給電点33がある。
【0045】
図12(a)(b)は、本発明の第2の実施形態のアンテナの構造を示した下面図である。図12に示すように、図1のアンテナでは足4は4本あるが、本第2の実施形態によれば足4は図12(a)のように2本、または図12(b)のように3本でも構成できる。また、安定に実装できるのであれば、1本でもよいと言える。
【0046】
図13(a)(b)は、本発明の第3の実施形態のアンテナの構造を示した図である。図13(a)の斜視図に示すように、図1で構成したアンテナの足4を1つとする代わりに、幅の広い足41としており、一つの足41に対してボス42は2つ付いている。これは足41が一つでも、より安定に実装できるように配慮したものであり、ボス42の数は任意でよい。また、天板40も4角形であるが、特に形状を制限するものではない。図13(b)は、図13(a)の縦断面図であるが、垂直エレメント3や円板6、ボス42を含む足41の底面導体部43の配置においては、図1の構成とほぼ同じである。
【0047】
これまで、本発明のアンテナにおいては頂部に円板が使用されてきたが、このアンテナの頂部の形状として、様々な他の形状を選択することができる。図14には、本発明のアンテナを底面から見た頂部の他の形状例1を示したものである。図14(a)は比較のために、図1と同じ円形の円板6を用いた例である。図14(b)は円板6の替わりに楕円の導体板50を用いた例である。図14(c)では正方形の導体板51を用いた例である。図14(d)では長方形の導体板52を用いた例である。図14(e)では平行四辺形の導体板53を用いた例である。図14(f)では菱形の導体板54を用いた例である。これらはすべて金属などの導体で構成される。
【0048】
図15には図14同様、本発明のアンテナを底面から見た頂部の他の形状例2を示したものである。図15(a)は円板6の替わりに台形の導体板55を用いた例である。図15(b)は8角形の導体板56を用いた例である。図15(c)は12角形の導体板57を用いた例である。図15(d)では螺旋状の導体板58を用いた例である。図15(e)では2重の円環状の導体板を用いた例である。これらも、すべて金属などの導体で構成される。
【0049】
図16は、本アンテナの縦断面の形状、主に垂直エレメントの形状に関する他の実施例を示したものである。図16(a)は、下底面を球状にした垂直エレメント60を用いた例である。これは、ハンダ付けの際にハンダ付着の面積が増し、接続強度を強くすることができる。図16(b)は、逆円錐台形状の垂直エレメント61を用いた例である。図16(c)は、図16(b)の天板中央上部に穴62を付加した例である。これは、本アンテナの天板中央上部に穴62を開けることにより、誘電体の厚さが変化し、アンテナの入力インピーダンス及び共振周波数の微調整ができるようにしたものである。図16(b)(c)は垂直エレメントを逆円錐台形状にすることにより、本アンテナをモールド技術で一体成型する際の抜き作業を楽に実施できるようにしたものである。また、同時にアンテナ特性の広帯域化を実現することができる。
【0050】
図17は、本アンテナの足4の側面に調整用導体パターンを有した実施例を示したものである。図17(a)は、足4の側壁面に縦に伸びた線状または帯状の導体パターン70を用いた例である。同様に図17(b)は、図17(a)の縦に伸びた線状または帯状の導体パターンを底面側壁部の導体である導体部7と電気的に接続した導体パターン71を用いた例である。図17(c)は、図17(b)の導体パターン71をクランク状に形成した導体パターン72を用いた例である。図17(c)の応用として、図17(c)の導体パターン72の下部が足4の底面側壁部の導体部7と接続していない場合も考えることができる。また、これらの導体パターンを足4の裏側(内側)に配置することも可能である。
【0051】
図18は、本アンテナの天板2の上面及び側面に調整用導体パターンを用いた例である。図18(a)は、天板2の上面に導体パターン80を用いた例である。この天板2の上面導体パターン80の形状は、図14、図15で示したような形状応用が考えられる。図18(b)は、天板2の側面に外周状に伸びた線状または帯状の導体パターン81を配置した例である。図18(c)は、図18(b)の導体パターンを足4の側面方向に逆L字形状に延長した導体パターン82を用いた例である。
【0052】
図19は、本アンテナの天板2の上面に小さな導体パタ−ン90を配置した例である。この導体パターン90は、本アンテナを成形する過程において、工程を容易にするためのものである。
【0053】
本発明のアンテナは図1に示すように、従来のアンテナでは実現できなかった表面自動実装を可能とするために、金属導体でできた足4の下底部に位置固定用のボス5を備え、垂直エレメントアンテナ素子3の下底部もハンダ付けしやすい構造に工夫したものである。さらに、本発明のアンテナの給電部である垂直エレメント3の下底部が目視できる構造となっているため、実装後にアンテナにとって最も重要な給電部分のハンダ接続を目視によって検査し、確認ができる。
【0054】
また、無線LANカードのようなアンテナとRF回路が一体化して実装されるような装置においては、個別の調整、即ちアンテナ及びRF回路を別々に調整して組み合わせることができない(一体化実装していて特性検査のためのコネクタがでていない)ため、RF部分以外にアンテナ部分でも、最終的な整合状態を調整する必要があり、このようなアンテナ部分の調整は、あらかじめ図17、図18のような金属導体パターンを設けておき、あとで削り取ることによって、調整が可能である。この方法は、量産製造工程における導体パターン作成マスクの変更も容易であるため、短期間での量産、設計変更に有効である。
【0055】
例えば、本アンテナをプリント板に搭載した機器を新規に設計し、毎月1000台づつ量産する場合をシュミレーションすると以下のようになる。アンテナ自身は図17、図18のような導体パターンを設けて周波数を合わせこみ、アンテナ単体で量産する。その後、本アンテナを製品用のプリント板に実装し、カバ−等をつけた場合に共振周波数がずれてしまっても、その月の1000台は、上記導体パターン部分をカッタ−等で削ることによって対応できる。そして、削る量が明確になったら量産時の導体パターン作成マスクをすぐに変更し、次の月の生産からはアンテナ無調整とすることができる。
【0056】
近年のLAN機器やPDA機器では、新規製品になるたびに筐体の構造がかわり、アンテナもあらかじめ試作を必要としたが、本アンテナを用いれば試作の必要も無く、開発費並びに開発期間の短縮に大いに貢献すると考えられる。
【0057】
本明細書ではここまで、本発明のアンテナについていくつかの実施形態を説明してきたが、これらの実施形態を任意に組み合わせて、本発明のアンテナを構成することができる。
【0058】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、モールド技術で一体成型した天板とその中央から下部に延びた棒状の垂直エレメント並びに天板と垂直エレメントを支える足を持つ形状の誘電体を形成し、当該誘電体の垂直エレメント表面と天板裏面の表面において金属導体でできた放射エレメントアンテナ素子と頂部アンテナ素子を構成し、さらに金属導体でできた足の下底部に位置固定用のボスを構成するようにしたため、構造が単純で、製造コストのかからない表面自動実装可能な安価なアンテナを提供することができる。
【0059】
また、本発明のアンテナ構造は、アンテナの給電部である垂直エレメント下底部が目視できる構造となっているため、実装後における給電部分のハンダ付け確認を簡単な目視による検査で実施することができる。
【0060】
更に、本発明のアンテナは、垂直エレメントの形状を逆円錐台に形成したため、広帯域特性のアンテナを提供することができる。
【0061】
また、本発明のアンテナは、モールド技術で一体成型した誘電体表面に調整用金属導体パターンを設け、その金属導体パターンを必要に応じて削り取ることにより、アンテナの入力インピーダンス及び共振周波数の微調整を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施形態のアンテナ1を示す斜視図である。
【図2】本発明の第1の実施形態のアンテナ1を真上から見た上面図と真下から見た底面図である。
【図3】本発明の第1の実施形態のアンテナ1の図2(b)A−A’面における断面図と図2(b)B−B’面における断面図である。
【図4】本発明の第1の実施形態のアンテナ1の足4における底面部分の詳細図である。
【図5】本発明の第1の実施形態のアンテナ1を実際に使用した場合の実装例1を示したものである。
【図6】本発明の第1の実施形態のアンテナ実装面であるプリント板10の上側のプリントパタ−ン例である。
【図7】図6のプリントパタ−ンに本発明のアンテナ1を実装した例における断面図である。
【図8】本発明の第1の実施形態のアンテナ1をプリント板20に搭載した実装例2である。
【図9】本発明の第1の実施形態のアンテナ1において、図8の実装方法をとった場合におけるプリント板20のプリントパタ−ン例である。
【図10】本発明の第1の実施形態のアンテナ1をプリント板30に搭載した実装例3である。
【図11】本発明の第1の実施形態のアンテナ1において、図10の実装方法をとった場合におけるプリント板30の実装プリントパタ−ン例である。
【図12】本発明の第2の実施形態のアンテナの構造を示した下面図である。
【図13】本発明の第3の実施形態のアンテナの構造を示した図(斜視図、縦断面図)である。
【図14】本発明のアンテナを底面から見た頂部の他の形状例1を示したものである。
【図15】本発明のアンテナを底面から見た頂部の他の形状例2を示したものである。
【図16】本アンテナの縦断面の形状、主に垂直エレメントの形状に関する他の実施例を示したものである。
【図17】本アンテナの足4の側面に調整用導体パターンを設けた実施例を示したものである。
【図18】本アンテナの天板2の上面及び側面に調整用導体パターンを用いた例である。
【図19】本アンテナの天板2の上面に小さな導体パタ−ン90を配置した例である。
【図20】従来のアンテナにおける動作原理図である。
【図21】従来の平面アンテナの構造図である。
【符号の説明】
1 アンテナ
2、40 天板
3、60、61、101、202 垂直エレメント
4、41 足
5、42 ボス
6、102、201 円板
7、43 導体部
8、22、32 マイクロストリップライン
9、24、33 給電点
10、20、30 プリント板
11、21、23、31、203 グランド板
12 ランドパターン
13、25、26、34、35 スルーホール
14 ハンダ付け
50、51、52、53、54、55、56、57、58、59 導体板
62 穴
70、71、72、80、81,82,90 導体パターン
100 エレメント
200 従来のアンテナ
204 誘電体

Claims (16)

  1. 縦に延びる円筒状導体を表面に有するとともに、前記円筒状導体の内部に誘電体を有する垂直エレメントと、
    前記円筒状導体の上端に接続され、当該接続点から横に延びる放射状の導体で構成された頂部板を下面に取り付けた誘電体の天板と、
    前記垂直エレメントと天板を支えるために天板端より下方に設けた棒状もしくは面状の誘電体の足とを有し、
    前記垂直エレメントの誘電体と、前記天板の誘電体と、前記足の誘電体とがモールド技術で一体成型した誘電体により構成されることを特徴としたアンテナ素子。
  2. 請求項に記載のアンテナ素子において、
    前記足の下底部に実装位置固定用の凸部(ボス)を設けることを特徴とするアンテナ素子。
  3. 請求項に記載のアンテナ素子において、
    前記足の下底部及び実装位置固定用の凸部(ボス)に金属導体を設け、当該凸部(ボス)をグランド板のスルーホールにはめ込み、前記金属導体をグランド板にハンダ付けすることで位置固定することを特徴とするアンテナ素子。
  4. 請求項に記載のアンテナ素子において、
    前記頂部板が、正方形、長方形、菱形、台形、8角形、12角形を含む多角形のうち、いずれかの形状であることを特徴とするアンテナ素子。
  5. 請求項に記載のアンテナ素子において、
    前記頂部板が、前記多角形の角の全てあるいは一部が、円弧で置き換えられた形状であることを特徴とするアンテナ素子。
  6. 請求項に記載のアンテナ素子において、
    前記垂直エレメント下底面を球状導体にすることを特徴とするアンテナ素子。
  7. 請求項に記載のアンテナ素子において、
    前記垂直エレメントの形状を逆円錐台にすることを特徴とするアンテナ素子。
  8. 請求項に記載のアンテナ素子において、
    前記逆円錐台形状の垂直エレメントの上部天板にアンテナ入力インピーダンス及び共振周波数の調整用穴を設けることを特徴とするアンテナ素子。
  9. 請求項に記載のアンテナ素子において、
    前記誘電体表面にアンテナ入力インピーダンス及び共振周波数の調整用導体パターンを設けることを特徴とするアンテナ素子。
  10. 請求項に記載のアンテナ素子において、
    前記アンテナ入力インピーダンス及び共振周波数の調整用導体パターンを前記足部分の誘電体表面に設けることを特徴とするアンテナ素子。
  11. 請求項に記載のアンテナ素子において、
    前記アンテナ入力インピーダンス及び共振周波数の調整用導体パターンを前記足部分の誘電体裏面(内側)に設けることを特徴とするアンテナ素子。
  12. 請求項に記載のアンテナ素子において、
    前記アンテナ入力インピーダンス及び共振周波数の調整用導体パターンを前記天板横部分の誘電体表面に設けることを特徴とするアンテナ素子。
  13. 請求項に記載のアンテナ素子において、
    前記アンテナ入力インピーダンス及び共振周波数の調整用導体パターンを前記天板上部の誘電体表面に設けることを特徴とするアンテナ素子。
  14. 請求項に記載のアンテナ素子において、
    前記アンテナ入力インピーダンス及び共振周波数の調整用導体パターンを前記天板横部分及び足部分の誘電体表面に続けて設けることを特徴とするアンテナ素子。
  15. 請求項乃至請求項14いずれかに記載のアンテナ素子において、
    前記アンテナ入力インピーダンス及び共振周波数の調整用導体パターンを前記誘電体表面及び裏面に設けると共にグランド板に接続することを特徴とするアンテナ素子。
  16. 請求項に記載のアンテナ素子において、
    アンテナを製造する際に、工程を容易にするための導体パターンを前記天板の上面周辺部に複数配置することを特徴とするアンテナ素子。
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