JP3835186B2 - バラ荷重量物搬送容器の整備状態及び操作性の判定方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、広くはバラ荷重量物ハンドリング用設備に含まれる巻上げ機等のモータ電流やモータ電力により評価される負荷量を測定し、これに適切な信号処理をすることにより、当該バラ荷重量物の搬送容器内・外部の整備状態について判定し管理する方法に関するものであり、特に、当該搬送容器に残留物がないかどうか、どの程度残留しているか等、当該搬送容器の整備状態を判定し管理すると共に、当該搬送容器の巻上げ・巻下げ時における当該搬送容器とその周囲構造物等との間の競り発生等、当該搬送容器の操作性における異常発生はないかどうか等について判定し管理する技術に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に、バラ荷重量物の搬送用の容器は、そのバラ荷の衝撃荷重による損傷、あるいは当該バラ荷が高温状態にある場合にはその熱的損傷と衝撃荷重による損傷により、変形したり、バラ荷が搬送容器内部に固着・残留するという搬送容器の異常状態が発生する。そのために、その搬送用容器を操作中に、その搬送容器が周囲の構造物と接触異常したり、競ったりして正常な操作に支障をきたす。
【0003】
例えば、製鉄所等のコークス製造設備において、コークス炉で処理が完了した赤熱コークスは、押出機により炭化室から窯出しされてコークス搬送用バケットに装入される。特に最近のようにコークス炉が高生産率操業状態にある場合には、炉寿命の延長及びエネルギーコスト低減のために、炭化室内におけるカーボンの析出成長の抑制、及び乾留熱量低減のために炉温を低目に抑えた操業が指向される。そのため、炉蓋近傍の温度は炉中央部温度よりも低くなり、石炭の乾留が不十分となり易い。その結果、コークスの窯出し時に最初にコークス搬送バケット内部に落下装入される、炉蓋近傍にあった未乾留ないし乾留不十分なコークスが、コークス搬送バケットの底面や側面にはり付いて、搬送バケト内に所謂棚吊りを発生させる。
【0004】
コークス搬送バケット内にこのような棚吊りが発生すると、コークス搬送バケットに装入された赤熱コークスを次工程において排出するときに、全量を完全に排出することは不可能となり、コークスの一部がバケット内部に残留する。その結果、その棚吊りが発生したバケットを用いて次回の窯出しコークスを受入れようとしたときには、所定量の赤熱コークスを収容することができず、赤熱コークスがそのバケット外部にオーバーフローするという事故につながることもある。また、このような棚吊り発生を起こしたコークス搬送バケットは、高温域での熱サイクルに曝される厳しい使用条件下においては局部的な異常変形をすることがある。この場合には、赤熱コークスの消火処理に際し、例えば多くの場合に採用されているコークス乾式消火設備(所謂CDQ)に赤熱コークスを装入するために、CDQタワー内で赤熱コークス入りコークス搬送バケットをクレーンで巻上げたり、あるいは残コークス入りコークス搬送バケットをクレーンで巻下げたりするときに、タワー内面と接触したり、競ったりして、正常なクレーン操作が困難となる。
【0005】
上述したコークス搬送バケットのようなバラ荷重量物搬送容器の使用・操作において、特に、これを定常的搬送工程において用いる場合であって、一定の搬送対象物の一定の搬送重量について、繰返し受け入れと繰返し払出しをするといった工程においては、その搬送容器の操作は自動化することが望ましい。このような場合には、上述したコークス搬送バケットにおける棚吊り発生により引き起こされる残コークスの重量の自動検知や、コークス搬送バケットの異常変形の自動検知により、搬送容器に関わる異常動作や異常作業の発生を予防する必要がある。
【0006】
従来、バラ荷重量物の搬送容器の操作に当たっては、巻上げ機等クレーン設備を用いることが多く、一般に吊り荷重を測定して搬送容器内残量の管理をしている。そして、吊り荷重を測定する方法としては、ロードセルを荷重点に設置して、直接吊り荷重を測定する方法、あるいは、クレーンのモータ電流やモータ電力を測定してその負荷を判断するが、その負荷状態の判断方法として、そのモータ電流値やモータ電力値のレベル管理をすることにより行なわれている。例えば、特開2000−313591号公報には、簡易型シンキング装置でバラ荷を十分な量だけ掴み取りするために、底開きバケットを用いて当該バケットのシンキング深さとバケット底部閉操作のタイミング設定との関係を適切化する際に、バケット巻上げ時の、吊りワイヤー巻取りドラムのモータ駆動電流値に基づき、バラ荷の掴み取り量を測定する方法が記載されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
▲1▼バラ荷重量物の搬送容器内・外部の整備状態、特に、その搬送容器内部に残留物がないかどうか、どの程度残留しているか等、及び、▲2▼その搬送容器の異常変形等により、巻上げ・巻下げ時にその搬送容器が周囲の構造物等との間に競り等が発生していないかどうか等について判定し、その搬送容器を管理するために、上述した従来技術では下記問題点が解決されない。
【0008】
1.吊り荷重を測定するために、ロードセルを荷重点に設置して、直接吊り荷重を測定するためには、ロードセルを使用中の設備に新規に設置する場合には、作業等の安全状態を確保した関連設備の改造や、法令で定められた官庁検査が必要であり、高額の費用と時間とを要する。更に、仮にこの方法を採用したとしても、通常、搬送容器の製作仕様が必ずしも一定のものに限定されているとは限らないので、この場合には搬送容器風袋のみの重量は必ずしも一定ではなく、搬送容器間には重量差がある。従って、ロードセルを荷重点に設置して、直接吊り荷重を測定し、そのレベル管理をするという方法では、ある一の搬送容器についてバラ荷排出後の搬送容器の重量が、予め設定された閾値を超えていても、搬送容器内に異常量のバラ荷が残留していると判断することには問題がある。かかる搬送容器間の重量差の存在は、クレーンのモータ電流やモータ電力を測定し、そのレベル管理をするという方法に対しても同じ問題が残る。
【0009】
2.クレーンのモータ電流やモータ電力を測定し、そのモータ電流値やモータ電力値のレベル管理をする方法では、当該電流値や電力値が、機械動力伝達系の負荷であるのか、吊り荷重負荷であるのかの区別をすることができない。従って、例えば、搬送容器に異常な変形等が発生して、これと周囲構造物との間に競りが発生しているか否かといった判断はできない。
【0010】
そこで、本発明者等は、上記1及び2項の問題点を解決するために、できるだけコストを節減してその問題点を解決するための方法を目指し、先ず、既存の巻上げ機等クレーン設備に対して機械的な改良を加えず、巻上げモータの電流や電力を測定する方法を前提とし、且つ、既存設備の安全状態を変えずに、吊り荷重を測定することとした。そして、更に、クレーンのモータ電流やモータ電力の変化パターンを測定することにより異常を検知し、その異常は機械動力伝達系の負荷であるのか、あるいは吊り荷重の負荷であるのかの区別を行なって、搬送容器内のバラ荷異常残留等による吊り荷重異常を検知し判定すると共に、機械動力伝達系の異常をも検知し判定することにより、総合的に巻上げ機により、搬送容器の整備状態及びその操作性の異常を判断することを、この発明の目的とした。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、上述した問題点を解決するために鋭意試験・検討を重ね、下記知見を得た。即ち、バラ荷重量物搬送容器内の残留荷の有無とその重量を正確に且つ精度よく検知するためには、当該搬送容器の操作クレーンの当該搬送容器巻上げモータについて、その動作中における当該巻上げモータの電流及び/又は電力を測定し、これらそれぞれに適切な信号処理を施し、得られた結果について適切な判定処理を行なうことにより、当該検知をすることができることがわかった。上記方法により、更に、バラ荷重量物搬送容器が操作クレーンにより操作されているとき、周囲構造物との接触異常や競り等、その搬送容器の操作性異常の発生を検知することもできることがわかった。ここで、上記電流及び電力の測定及びこれらに対する適切な信号処理の基本は、下記の通りである。
【0012】
▲1▼巻上げ機のモータ電流の測定に際しては、3相交流モータの例えばR相に電流検出器(CT)を設置し、この電流検出器の2次側配線に交流電流を直流電圧に変換する電流変換器を設置するものとし、これにより巻上げ機のモータ電流を測定する。
【0013】
▲2▼巻上げ機のモータ電力の測定に際しては、上記交流モータ3相配線のR、S相間に電圧検出器(PT)を設置し、この電圧検出器5の2次側信号線と、上記で設置された電流検出器(CT)の2次側配線からの分岐配線とに電力変換器を設置するものとし、これにより巻上げ機のモータ電力を測定する。
【0014】
▲3▼上記のようにして、搬送容器の巻上げあるいは巻下げ動作中における巻上げ機のモータ電流及びモータ電力の測定信号を所定の信号処理装置に入力する。この信号処理装置内部で、上記電流及び電力の測定データの平滑化演算又は平均化演算、時間勾配演算、及び時間変動演算を行ない、各演算結果を所定の判定式を用いて目的の判定結果を得る。即ち、この判定結果により、搬送容器内の残留荷の有無とその重量の把握等、搬送容器の重量異常による当該搬送容器の整備状態、及び、その搬送容器が操作クレーンにより操作されているときの周囲構造物との接触異常や競り等、クレーンの機械伝達系異常による当該搬送容器の操作性の判定をする。そして、この情報把握及び判定結果出力を、巻上げ機運転制御回路にフィードバックして、運転自動停止アクションをとったり、オペレータへの警報を発する。
【0015】
上記電流測定及び電力測定、並びにその信号処理においては、巻上げモータの単一動作における単一測定値の絶対値又はその信号処理の単一結果についての判定では、搬送容器間の重量差の存在(所謂、風袋間の重量差)に起因して、誤判定や誤警報が発生する。その防止策として、例えば、同一バラ荷搬送容器を用いたときの、バラ荷収容時搬送容器の巻上げ時重量と、バラ荷排出後搬送容器の巻下げ時重量との差分測定がなされるように配慮することにより、搬送容器間に存在する重量差が消去されて、収容されたバラ荷のうち、排出された正味の重量のみが測定されるようにした。なお、その際には、一般的に、電流測定値よりも電力測定値に基づいて信号処理する方が望ましい。
【0016】
この発明は、上記知見を具体化することによりなされたものであり、その要旨は次の通りである。即ち、請求項1記載の発明に係るバラ荷重量物搬送容器の整備状態を判定する方法は、次の(イ)〜(ハ)の3工程:
(イ)バラ荷を排出操作した後のバラ荷重量物搬送容器を、クレーンの巻上げ駆動モータで巻下げ操作中、又は巻上げ操作中に、その駆動モータの電流又は電力を測定し、得られた測定電流又は測定電力に所定の信号処理を施して前回の信号処理結果を得る工程、
(ロ)次いで上記バラ荷重量物搬送容器から前回と同様にバラ荷を排出操作した後のそのバラ荷重量物搬送容器を、上記クレーンの巻上げ駆動モータで巻下げ操作中、又は巻上げ操作中に、その駆動モータの電流又は電力を測定し、得られた測定電流又は測定電力に上記所定の信号処理を施して今回の信号処理結果を得る工程、及び、
(ハ)こうして得られた測定電流に基づく今回の信号処理結果と前回の信号処理結果との差演算、又は、測定電力に基づく今回の信号処理結果と前回の信号処理結果との差演算を行ない、得られたそれぞれの差演算結果に対してそれぞれに対応する所定の閾値とのレベル比較を行なうことにより、上記バラ荷重量物搬送容器内のバラ荷残留異常を検知する工程、
を含むことに特徴を有するものである。
【0017】
請求項2記載の発明に係るバラ荷重量物搬送容器の整備状態を判定する方法は、次の(ニ)〜(ヘ)の3工程:
(ニ)バラ荷を所定量積載したバラ荷重量物搬送容器を、クレーンの巻上げ駆動モータで巻上げ操作中、又は巻下げ操作中に、その駆動モータの電流又は電力を測定し、得られた測定電流又は測定電力に所定の信号処理を施してバラ荷積載時の信号処理結果を得る工程、
(ホ)上記バラ荷重量物搬送容器からバラ荷を排出操作した後の当該バラ荷重量物搬送容器を、上記クレーンの巻上げ駆動モータで巻上げ操作中、又は巻下げ操作中に、その駆動モータの電流又は電力を測定し、得られた測定電流又は測定電力に所定の信号処理を施してバラ荷排出操作後の信号処理結果を得る工程、及び、
(ヘ)こうして得られた測定電流に基づくバラ荷積載時の信号処理結果とバラ荷排出操作後の信号処理結果との差演算、又は、測定電力に基づくバラ荷積載時の信号処理結果とバラ荷排出操作後の信号処理結果との差演算を行ない、得られたそれぞれの差演算結果に対してそれぞれに対応する所定の閾値とのレベル比較を行なうことにより、上記バラ荷重量物搬送容器内のバラ荷残留異常を検知する工程、
を含むことに特徴を有するものである。
【0018】
請求項3記載の発明に係るバラ荷重量物搬送容器の整備状態を判定する方法は、請求項1又は2記載の発明において、上記測定電流又は測定電力に施される上記所定の信号処理として、平滑化処理又は平均化処理を適用することに特徴を有するものである。
【0019】
請求項4記載の発明に係るバラ荷重量物搬送容器の操作性を判定する方法は、
次の(ト)及び(チ)の2工程:
(ト)バラ荷を排出操作した後のバラ荷重量物搬送容器を、クレーンの巻上げ駆動モータで巻下げ操作中、又は巻上げ操作中に、その駆動モータの電流又は電力を測定し、得られた測定電流又は測定電力に、測定時間経過に対するその測定電流又は測定電力の勾配計算の信号処理を施して、電流勾配又は電力勾配を得る工程、及び、
(チ)こうして得られた測定電流又は測定電力に基づく勾配計算信号処理結果のそれぞれに対して、それぞれに対応する所定の閾値とのレベル比較を行なうことにより、上記バラ荷重量物搬送容器に対する機械動力伝達系の負荷異常を検知する工程、
を含むことに特徴を有するものである。
【0020】
請求項5記載の発明に係るバラ荷重量物搬送容器の操作性を判定する方法は、
次の(リ)及び(ヌ)の2工程:
(リ)バラ荷を排出操作した後のバラ荷重量物搬送容器を、クレーンの巻上げ駆動モータで巻下げ操作中、又は巻上げ操作中に、その駆動モータの電流又は電力を測定し、得られた測定電流又は測定電力に、測定時間経過に対するその測定電流又は測定電力の変動計算の信号処理を施して、電流変動発生回数又は電力変動発生回数を得る工程、及び、
(ヌ)こうして得られた測定電流又は測定電力に基づく変動計算信号処理結果のそれぞれに対して、それぞれに対応する所定の閾値とのレベル比較を行なうことにより、上記バラ荷重量物搬送容器に対する機械動力伝達系の負荷異常を検知する工程、
とを含むことに特徴を有するものである。
【0021】
【発明の実施の形態】
この発明の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。
【0022】
図1は、この発明のバラ荷重量物搬送容器の整備状態及び操作性の判定方法を実施する際に電流及び電力を測定し、これらに対して所定の信号処理をするに至るまでの装置フロー図である。同図に示すように、上記搬送容器を操作中に、巻上げ駆動モータ1の電流を測定するために、3相配線の例えばR相に電流検出器(CT)2を設置し、この電流検出器2の2次側信号線に電流変換器3を設置し、電流変換器3により交流電流信号を直流電圧信号に変換する。こうして変換された直流電圧信号を信号処理器4に入力して所定の信号処理を行なう。同じく操作中の上記巻上げ駆動モータ1の電力を測定するために、その3相配線のR、S相間に電圧検出器(PT)5を設置し、この電圧検出器5の2次側信号線と、上記電流検出器2の2次側信号線とに電力変換器6を設置し、電力変換器6により電力信号を直流電圧信号に変換する。こうして変換された直流電圧信号を信号処理器7に入力して所定の信号処理を行なう。
【0023】
次に、図1に示した装置フロー図の信号処理器4及び7以降における信号処理とそれに対する判定方法について説明する。
【0024】
(1)はじめに、電流測定による信号処理判定方法について、図2及び図3を参照して説明する。図2及び図3はそれぞれ、電流測定値の信号処理及びそれに対する判定方法のフロー図である。
【0025】
搬送容器からバラ荷の排出操作をした後の状態の当該搬送容器を、巻上げ駆動モータ1で巻下げ中に、電流測定値を信号処理器4に入力する(8)。入力された電流測定値に対して、同時に下記▲1▼〜▲3▼の3種類の信号処理を行なう。
【0026】
▲1▼搬送容器内の残留バラ荷重量を判定するために、巻下げ時の電流をローパスフィルター(L.P.F)で平滑化処理を行ない(9)、1つの読取り値として一時的に記憶し、これを前回値とする(10)。次いで、上記で前回値として記憶された対象搬送容器と同じ搬送容器が、次の作業サイクルにおいて、バラ荷が排出操作された後の状態の当該搬送容器を巻下げ中に、上記と同様の信号処理を行ない、これを今回値とする。そして、今回値と前回値との差演算を行ない(11)、得られた差演算結果を予め定めておいた差演算の閾値とレベル比較を行ない(図3(a)参照)、重量異常の成否判定を行なう(12)。その結果、差演算結果がその閾値を超える場合には、重量異常としてその警報を出力し(13)、搬送容器内に棚吊り等が形成されてバラ荷が残留している等の異常が発生していることを知らせる。なお、上述した平滑化処理の替わりに平均化処理を行なってもよい。以下、この発明における平滑化処理に対しては同様である。また、上記閾値としては、巻上げ機その他の関連設備を含む固有条件を考慮して、所定値を設定する。以下、この発明における閾値の設定については同様である。
【0027】
▲2▼搬送容器が周囲構造物等との間に接触異常や機械的な競り等を起こすことにより発生する、クレーンの機械伝達系異常等による当該搬送容器の操作性異常が発生していないかどうかを判定するために、同じくバラ荷を排出後の搬送容器を巻下げ中に、巻下げ時電流の時間勾配計算処理を行なう(14)。ここで、時間勾配計算とは、図3(b)に模式的に示すように、巻下げ開始から巻下げ完了までの電流値の時間に対する勾配を算出するものである。そして、こうして算出された勾配を、予め定めておいた時間勾配の閾値と比較を行ない(15)、この閾値以上の勾配を有する場合には、搬送容器が機械的にロックされて操作不能となり、巻下げ動作が強制停止される競り等が発生しているとの異常判定をする。
【0028】
▲3▼上記▲2▼と同様に機械的競り等の発生有無を判定する他の信号処理として、同じくバラ荷を排出後の搬送容器を巻下げ中に、巻下げ時電流の時間変動計算処理を行なう(16)。ここで、時間変動計算とは、図3(c)に模式的に示すように、巻下げ開始から巻下げ完了までの電流値の時間に対する変動の発生回数を算出するものである。そして、こうして算出された変動発生回数を、予め定めておいた変動発生回数の閾値と比較を行ない(17)、この閾値の回数以上に変動が発生する場合には、搬送容器に対する機械的な競り等が異常に繰返し発生しているとの異常判定をする。
【0029】
そして、搬送容器の機械的競り等による当該搬送容器の操作性に対する判定結果の警報については、上述した▲2▼又は▲3▼の少なくともいずれか一方において異常発生の判定がなされたときに、搬送容器と昇降装置との間の競り発生等、搬送容器の操作性異常を知らせる警報を出力する(18)。
【0030】
なお、搬送容器内の残留バラ荷重量の判定方法、及び搬送容器と昇降装置との間の競り発生等の判定方法としては、上記▲1▼、並びに▲2▼及び▲3▼の方法に類似した方法として、以下の方法を採用してもよい。即ち、上記▲1▼、▲2▼及び▲3▼においてはいずれも、同一搬送容器を対象としてバラ荷を排出後の搬送容器の巻下げ時電流測定値の信号処理により行なったが、同一搬送容器を対象としてバラ荷を排出後の搬送容器について前回及び今回巻上げ時の電流を測定し、これを上記▲1▼、▲2▼及び▲3▼に準じた信号処理をすることにより行なう。この方法によっても、上記▲1▼、▲2▼及び▲3▼と同様の作用・効果が発揮される。更に、この(1)項における電流測定の替わりに、次に述べるような電力測定を行ない、それ以降の工程を上記電流測定時における工程に準じて行なうという方法によっても、上記▲1▼、▲2▼及び▲3▼と同様の作用・効果が発揮される。
【0031】
しかしながら、一般的に、上記(1)項で述べたような電流測定値に基づく信号処理よりも、電力測定値に基づく信号処理の方が、機器回路の変動要因の影響を受けにくいので望ましい。更に、この発明において解決すべき問題として、搬送容器間の重量差の存在(所謂、風袋間の重量差)に起因する測定値のバラツキ分が、異常判定時における対象数値の誤差となる問題があり、一層正確な重量判定をするためには、この問題も解決することが望ましい。
【0032】
(2)そこで、上述した問題の解決方法として、巻上げ機モータの電力測定を行ない、この測定値の一層望ましい信号処理方法を図4及び図5を参照して説明する。図4及び図5はそれぞれ、電力測定値の信号処理及びそれに対する判定方法のフロー図である。
【0033】
▲1▼はじめに、搬送容器内の残留バラ荷重量を判定するための方法について説明する。
【0034】
図4において、搬送容器Aにバラ荷が満載された状態の当該搬送容器を、巻上げ駆動モータ1(図1参照)で巻上げ中の電力測定値を、信号処理器7に入力し(19)、巻上げ/巻下げタイミング切替え装置20を巻上げ方向に選択し、巻上げ時電力を平滑化処理して(21)、1つの読取り値に加工後、一時記憶エリアに記憶する(22)。次いで、上記と同一搬送容器Aからバラ荷が排出された状態の当該搬送容器Aを、巻上げ駆動モータ1(図1参照)で巻下げ中の電力測定値を信号処理器7に入力し(19)、切替え装置20を巻下げ方向に選択し、巻下げ時電力を平滑化処理して(23)、別の読取り値に加工する。そして、上記一時記憶された巻上げ時電力とこの巻下げ時電力との差演算を実施する(24)。
【0035】
得られた差演算結果を予め定めておいた差演算の閾値とレベル比較を行ない、重量異常の成否判定を行なう(25)。その結果、差演算結果がその閾値を超える場合には、重量異常としてその警報を出力し(26)、搬送容器内に棚吊り等が形成されてバラ荷が残留している等の異常が発生していることを知らせる。
【0036】
この実施の形態においては、任意の一定の搬送容器Aに注目し、バラ荷が満載の場合とそれを排出操作後の場合とについての搬送容器の重量差を評価し、その値が閾値以下であるかないかを判定する方法である。従って、当該バラ荷の満載重量が一定の水準値範囲内に管理されている場合に適用される方法であり、ここにおける閾値とは、満載されたバラ荷重量の管理範囲値の下限重量に依存する値となる。
【0037】
図5(a)の正常状態は、このように満載バラ荷の重量が管理されている場合、使用された搬送容器A、Bの相違にかかわらず、巻上げ時電力と巻下げ時電力との差ΔPA、ΔPBが、閾値ΔP以上となることを説明する模式図である。このようにして、搬送容器間の重量差に起因して、巻上げ時及び巻下げ時のそれぞれの電力測定値が変動しても、上記差演算処理により搬送容器間の重量差は消去されて、搬送容器内部のバラ荷重量のみを算定することができる。ところがもし、例えば搬送容器Aの使用時に巻下げ時に搬送容器内に残留バラ荷があれば、図5(b)の残留バラ荷状態に示すように、正常状態の差演算結果ΔPAより小さいΔPA’となる。
【0038】
▲2▼次に、搬送容器が周囲構造物等との間に競り等が発生していないかどうかを判定するための方法について説明する。
【0039】
図4において、搬送容器からバラ荷の排出操作をした後の状態の当該搬送容器を、巻上げ駆動モータ1で巻下げ中に、電力測定値を信号処理器7に入力する(19)。入力された電力測定値に対して、下記信号処理を行なう。即ち、巻下げ時電力の時間勾配計算処理を行なう(27)。算出された勾配を、予め定めておいた時間勾配の閾値と比較を行ない(28)、この閾値以上の勾配を有する場合には、異常判定をする。ここで、時間勾配計算とは、図3(b)を用いて行なった説明に準じたものであり、巻下げ開始から巻下げ完了までの電力値の時間に対する勾配を算出するものである。
【0040】
▲3▼上記▲2▼と同様に機械的競り等の発生有無を判定する、他の信号処理として、同じくバラ荷を排出後の搬送容器を巻上げ駆動モータ1で巻下げ中に、巻下げ時電力の時間変動計算処理を行なう(29)。算出された変動発生回数を、予め定めておいた変動発生回数の閾値と比較を行ない(30)、この閾値の回数以上に変動が発生する場合には、搬送容器に対する機械的な競り等が異常に繰返し発生しているとの異常判定をする。ここで、時間変動計算とは、図3(c)を用いて行なった説明に準じたものであり、巻下げ開始から巻下げ完了までの電力値の時間に対する変動の発生回数を算出するものである。
【0041】
そして、搬送容器の機械的競り等による当該搬送容器の操作性に対する判定結果に基づき警報を発するかどうかについては、上述した▲2▼又は▲3▼の少なくともいずれか一方において異常発生の判定がなされたときに、搬送容器と昇降装置との間の競り発生等、搬送容器の操作性異常を知らせる警報を出力する(31)。
【0042】
なお、搬送容器と昇降装置との間の競り発生等を判定する方法としては、上記▲2▼、▲3▼に依る方法に類似した方法として、以下の方法を採用してもよい。即ち、上記▲2▼、▲3▼においては、巻上げ駆動モータ1の電力の測定を、搬送容器からバラ荷の排出操作をした後の状態の当該搬送容器を巻下げ中のものについて行ない、その電力測定値を信号処理の対象としたのに対して、搬送容器にバラ荷が満載された状態の当該搬送容器を、巻上げ駆動モータ1(図1参照)で巻上げ中の電力測定値を、信号処理器7に入力し、これを上記▲2▼、▲3▼に準じて信号処理を行なうという方法である。この方法によっても、▲2▼、▲3▼と同様の作用・効果が発揮される。
【0043】
この発明に係るバラ荷重量物搬送容器の整備状態及び操作性の判定方法は、製鉄所等におけるコークス炉から窯出しされた赤熱コークスの搬送用バケットや、土木建設工事等における残土の土質改良剤添加配合時等において、改良材添加比率の精度向上のために、残土搬送量を正確に秤量する必要がある場合等、搬送容器内の残留荷を管理することが重要となる作業工程に対して、広く適用することができる。
【0044】
【実施例】
この発明を実施例により、更に説明する。
【0045】
コークス炉から窯出しされ、コークス炉付帯のコークガイド車上に積載されたコークス搬送用のバケットに所定量装入されて満載となった赤熱コークスを、コークス乾式消火設備(CDQ)に装入するため、当該コークス炉からCDQまで搬送し、タワー内に引き入れた後、所定のクレーン巻上げ機を用いて赤熱コークスが入っているコークス搬送用バケットを巻上げ、次いでこれを横持ちしてCDQ装入口へセットし、赤熱コークスをバケット底部から開口排出した。赤熱コークスを排出操作した後のバケットを、上記タワー内に再度引き込み、上記クレーン巻上げ機で巻下げた後、コークガイド車上へ戻して、次のコークス窯出しに備えた。
【0046】
この作業工程において、コークスが満載されたバケットを巻上げ機で巻上げ操作しているときと、コークス排出後の空バケットを上記巻上げ機で巻下げ操作しているときとの両時期における、巻上げ機のモータ電流及び電力を測定した。ここで、モータ電流及びモータ電力は、図1で説明した方法で測定し、一方、上記クレーン巻上げ機に設置されているロードセルで、上記巻上げ操作中及び巻下げ操作中の荷重を測定した。
【0047】
図6に、電流及び電力の平滑化処理後の値と、ロードセルによる重量測定値との相関図を、同一バケットについての巻上げ時の測定値と巻下げ時の測定値とを直線で結び示す。但し、電力の値は、装置及び測定処理回路に固有の定数を乗じた値であり、電力に比例する電力指標で表わした。
【0048】
同図によれば、巻上げ時及び巻下げ時のいずれにおいても、電流及び電力はそれぞれの動作中における、ロードセルで測定された荷重との間に高い相関が見られ、いずれの測定結果を用いても、空バケット重量の測定が可能であるが、特に、電力測定値と荷重との間に高い相関が見られる。また、荷重に対する平滑化処理後の電流の変化率(電流についての直線の勾配)は、測定チャンス(この場合は使用されたバケットの違い)によって若干バラツキがあるが、これに対して荷重に対する平滑化処理後の電力指標の変化率(電力指標についての直線の勾配)は、測定チャンスによるバラツキがほとんどなく一定値を示している。
【0049】
以上の試験結果より、下記事項がわかる。
【0050】
コークス排出後に同一バケットについての電流測定値を平滑化処理して、前回値と今回値との差演算結果に基づいて、バケット内コークス残留コークス量をある程度推定することができるが、これよりも更に優れた方法は下記の通りである。同一バケットについて、先ず、巻上げ時にバケット内コークス満載時の電力を測定し、次に、CDQにコークスを投入した後のバケット巻下げ時の電力を測定する。次いで、この2つの電力測定値を平滑化処理し、差演算することにより、バケット重量が消去される。従って、一段と優れた精度でバケット内コークス残留量を推定することができ、適切な閾値の設定により、優れた精度のバケット重量異常警報を発することができる。
【0051】
【発明の効果】
上述した通り、この発明の方法によれば、バラ荷重量物搬送容器に残留している荷の重量を測定しようとする時に、ロードセル等の大掛かりな重量測定センサーを新たに設置することなく、特別な設備改造をせずに、既存のクレーン巻上げ駆動モータの電流や電力を測定し、簡単な信号処理装置を設置するだけで、上記搬送容器内の残留バラ荷重量や、その搬送容器の周囲構造物との異常接触や競り発生を、自動的に精度よく測定することができる。この発明によれば、このようなバラ荷重量物搬送容器の整備状態及び操作性の判定方法を提供することが可能となり、工業上有用な効果がもたらされる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を実施するための測定及び信号処理装置のフロー図である。
【図2】本発明の実施における電流測定値の信号処理のフロー図である。
【図3】本発明の実施における電流測定値の信号処理結果の判定方法を説明する模式図である。
【図4】本発明の実施における電力測定値の信号処理のフロー図である。
【図5】本発明の実施における電力測定値の信号処理結果の判定方法を説明する模式図である。
【図6】実施例における電流及び電力の平滑化処理後の値と、ロードセルによる重量測定値との相関を示すグラフである。
【符号の説明】
1 巻上げ駆動モータ
2 電流検出器
3 電流変換器
4 信号処理器
5 電圧検出器
6 電力変換器
7 信号処理器
8 電流測定値入力
9 平滑化処理
10 前回値記憶
11 差演算
12 レベル比較判定
13 重量異常警報
14 時間勾配計算処理
15 勾配比較判定
16 時間変動計算処理
17 変動比較判定
18 昇降装置競り警報
19 電力測定値入力
20 巻上げ/巻下げタイミング切替え装置
21 平滑化処理
22 一時記憶
23 平滑化処理
24 差演算(巻上げ−巻下げ)
25 レベル比較判定
26 重量異常警報
27 時間勾配計算
28 勾配比較判定
29 時間変動計算
30 変動比較判定
31 昇降装置競り警報
Claims (5)
- バラ荷を排出操作した後のバラ荷重量物搬送容器を、クレーンの巻上げ駆動モータで巻下げ操作中、又は巻上げ操作中に、当該駆動モータの電流又は電力を測定し、得られた測定電流又は測定電力に所定の信号処理を施して前回の信号処理結果を得る工程と、
次いで前記バラ荷重量物搬送容器から前回と同様にバラ荷を排出操作した後の当該バラ荷重量物搬送容器を、前記クレーンの巻上げ駆動モータで巻下げ操作中、又は巻上げ操作中に、当該駆動モータの電流又は電力を測定し、得られた測定電流又は測定電力に前記所定の信号処理を施して今回の信号処理結果を得る工程と、
こうして得られた測定電流に基づく今回の信号処理結果と前回の信号処理結果との差演算、又は、測定電力に基づく今回の信号処理結果と前回の信号処理結果との差演算を行ない、得られたそれぞれの差演算結果に対してそれぞれに対応する所定の閾値とのレベル比較を行なうことにより、前記バラ荷重量物搬送容器内のバラ荷残留異常を検知する工程とを含むことを特徴とする、バラ荷重量物搬送容器の整備状態を判定する方法。 - バラ荷を所定量積載したバラ荷重量物搬送容器を、クレーンの巻上げ駆動モータで巻上げ操作中、又は巻下げ操作中に、当該駆動モータの電流又は電力を測定し、得られた測定電流又は測定電力に所定の信号処理を施してバラ荷積載時の信号処理結果を得る工程と、
前記バラ荷重量物搬送容器からバラ荷を排出操作した後の当該バラ荷重量物搬送容器を、前記クレーンの巻上げ駆動モータで巻上げ操作中、又は巻下げ操作中に、当該駆動モータの電流又は電力を測定し、得られた測定電流又は測定電力に所定の信号処理を施してバラ荷排出操作後の信号処理結果を得る工程と、
こうして得られた測定電流に基づくバラ荷積載時の信号処理結果とバラ荷排出操作後の信号処理結果との差演算、又は、測定電力に基づくバラ荷積載時の信号処理結果とバラ荷排出操作後の信号処理結果との差演算を行ない、得られたそれぞれの差演算結果に対してそれぞれに対応する所定の閾値とのレベル比較を行なうことにより、前記バラ荷重量物搬送容器内のバラ荷残留異常を検知する工程とを含むことを特徴とする、バラ荷重量物搬送容器の整備状態を判定する方法。 - 前記測定電流又は測定電力に施される前記所定の信号処理は、平滑化処理又は平均化処理であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のバラ荷重量物搬送容器の整備状態を判定する方法。
- バラ荷を排出操作した後のバラ荷重量物搬送容器を、クレーンの巻上げ駆動モータで巻下げ操作中、又は巻上げ操作中に、当該駆動モータの電流又は電力を測定し、得られた測定電流又は測定電力に、測定時間経過に対する当該測定電流又は測定電力の勾配計算の信号処理を施して、電流勾配又は電力勾配を得る工程と、
こうして得られた測定電流又は測定電力に基づく勾配計算信号処理結果のそれぞれに対して、それぞれに対応する所定の閾値とのレベル比較を行なうことにより、前記バラ荷重量物搬送容器に対する機械動力伝達系の負荷異常を検知する工程とを含むことを特徴とする、バラ荷重量物搬送容器の操作性を判定する方法。 - バラ荷を排出操作した後のバラ荷重量物搬送容器を、クレーンの巻上げ駆動モータで巻下げ操作中、又は巻上げ操作中に、当該駆動モータの電流又は電力を測定し、得られた測定電流又は測定電力に、測定時間経過に対する当該測定電流又は測定電力の変動計算の信号処理を施して、電流変動発生回数又は電力変動発生回数を得る工程と、
こうして得られた測定電流又は測定電力に基づく変動計算信号処理結果のそれぞれに対して、それぞれに対応する所定の閾値とのレベル比較を行なうことにより、前記バラ荷重量物搬送容器に対する機械動力伝達系の負荷異常を検知する工程とを含むことを特徴とする、バラ荷重量物搬送容器の操作性を判定する方法。
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