JP3835076B2 - 電力ケーブルの診断方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電力ケーブルの診断方法に関し、特に、絶縁体の劣化状況を精度よく診断することのできる電力ケーブルの診断方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
架橋化ポリエチレン絶縁電力ケーブル(以下、CVケーブルという)の絶縁体の劣化は、内部半導電層と外部半導電層から絶縁体に向けて成長する水トリー現象を原因とし、低圧CVケーブルの場合には、この水トリーが絶縁体を貫通するに近い状態にまで成長する。
【0003】
この水トリーによる絶縁体の劣化状況を診断する方法として、ケーブルに交流または直流電圧を印加するか、あるいは直流バイアス下で交流電圧を印加した状態とし、これにより絶縁体に流れる微小電流の直流成分を検出することによって絶縁体の劣化状況を診断する方法が知られている。特に、6.6kV以下のCVケーブルにおいては、水トリーが絶縁体をほぼ貫通するほどまでに成長するため、直流成分を捉えやすく、この方法が好適な診断手法として活用されている。
【0004】
また、22kV級CVケーブルにおいても、6.6kVCVケーブルのように水トリーが貫通程度には至らないまでも、それに近い状態にまで成長するため、直流バイアス下における交流課電によって絶縁体に流れる微小電流の直流成分を検出することができ、CVケーブルの劣化状態を非破壊状態で診断することができる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、従来の電力ケーブルの診断方法によると、66kV以上のCVケーブルを対象とするとき、絶縁劣化の診断が難しいものとなる。その原因は、使用電圧が高いために、診断に適するまで水トリーが成長する前に絶縁破壊が生じてしまうことと、絶縁破壊を起こす前の水トリーに基づく微小電流のレベルが低く、これを捉えにくいことによる。
【0006】
さらに、高電圧のCVケーブルの場合には、内部半導電層、絶縁体および外部半導電層の3層が同時押し出しにより形成されるのが普通であるとともに、絶縁体に対する異物混入管理が厳格なため、水トリーの挙動が6.6kV以下の場合とは異なるようになり、このことも微小電流の把握を難しくしている。
【0007】
また、22kV以下のCVケーブルの場合でも、検出される直流成分は微小であり、このため、外来ノイズが小さい環境下では高い精度で絶縁体の劣化を診断できるが、外来ノイズの多い環境下において測定を行う場合には、ノイズのために診断に支障をきたすことがある。
【0008】
従って、本発明の目的は、高電圧ケーブルを対象とするときにも精度よく絶縁体の劣化状況を診断することができ、かつノイズの多い環境下であっても22kV以下のCVケーブルの絶縁体の劣化を高い精度で診断することのできる電力ケーブルの診断方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記の目的を達成するため、電力ケーブルの架橋ポリエチレン等の絶縁体の劣化の進行状況を診断する電力ケーブルの診断方法において、前記電力ケーブルに直流電圧または交流電圧を印加した状態、あるいは交流電圧の印加のもとに直流電圧を重畳した状態において前記絶縁体に超音波を伝搬させて診断状態を設定し、前記診断状態において前記絶縁体に流れる微小の直流電流を測定することによって前記絶縁体の劣化状況を診断することを特徴とする電力ケーブルの診断方法を提供するものである。
【0010】
発明者らは、以上の診断方法を確立するまでに数多くの試行錯誤を繰り返してきた。その結果、電力ケーブルに直流をバイアスした交流課電状態の絶縁体に流れる直流成分電流の測定において、絶縁体に超音波を伝搬させたとき、絶縁体の劣化の進行度合に応じて直流成分電流が増大することを見いだしたものである。
【0011】
これは、ケーブル絶縁体に水トリーが発生し、劣化が進行している場合には、水トリーの部分に電子あるいはイオン性の電荷が多く存在し、これに超音波を作用させると、トリー部分に多くの電流が流れる現象に立脚しているもので、さらに、この現象は、ケーブルに直流電圧を印加した状態、および交流電圧を印加した状態においても、同様に発生することが確認されている。
【0012】
以上の微小電流の測定に当たっては、電力ケーブルのシースを剥ぎ取り、これによって露出した金属遮蔽層を測定用電極として使用することが好ましい。また、その場合、この測定用電極としては、電力ケーブルの所定の2個所においてシースと金属遮蔽層を剥ぎ取り、これにより2個所の剥ぎ取り部分の間に残された金属遮蔽層によって構成することが実際的である。
【0013】
【発明の実施の形態】
次に、本発明による電力ケーブルの診断方法の実施の形態を説明する。
図1は、本発明の実施の形態を模擬的に示したもので、1は、導体、内部半導電層、外部半導電層、金属遮蔽層、およびシースを省略して示した診断対象のCVケーブル、2はその絶縁体を示す。絶縁体2は、Aにより示される外部半導電層水トリー、Bにより示される内部半導電層水トリー、およびCにより示されるボウタイトリーを内包している。
【0014】
CVケーブル1の遮蔽層側Dは接地されており、導体側Eには課電用変圧器3からの交流電圧とバイアス用DC電源4からの直流電圧が印加されるように構成されている。5はCVケーブル1の絶縁体2に超音波を作用させるための超音波発生器、6は超音波を媒体する超音波伝搬用液体部を示す。
【0015】
7は測定回路に組み込まれた直流成分測定器、8は測定用のブロッキングコイル、9は測定用のバイパスコンデンサ、10はバイアス回路に組み込まれたブロッキングコイル、11はバイアス用のバイパスコンデンサ、12は接地を示す。
【0016】
以上の回路構成を有する図1においては、課電用変圧器3とバイアス用DC電源4から交流電圧と直流電圧がCVケーブル1に印加され、これによりCVケーブル1の絶縁体2に発生する微小電流が、直流成分測定器7により検出される。
また、この回路においては、超音波発生器5から絶縁体2に超音波が伝搬させられ、そのときの直流成分を測定器7が検出することによって、超音波伝搬の効果が確認できるように構成されている。
【0017】
表1は、図1の回路構成に基づく直流成分の測定結果を示す。
測定対象のCVケーブルとしては、劣化程度の異なる3種類の22kVケーブルを使用し、交流印加電圧を12.7kV、直流バイアス電圧を1kVに設定し、さらに、超音波発生器6からの発振を36kHz・900Wに設定した。
【0018】
【表1】
Figure 0003835076
【0019】
表1によれば、水トリー劣化の大きなCVケーブルを対象とした実施例1の場合には、交流電圧印加時の直流成分が、直流バイアス電圧の重畳では1桁の増大しか示さないのに比べ、これに超音波を作用させるときには、その増大は著しく顕著なものとなり、2桁もの増大を示すようになる。
また、水トリー劣化が中程度の実施例2の場合にも、交流印加・直流バイアス時に僅かな増大しか示さない直流成分が、超音波を作用させるときには、1桁もの増大を示している。
【0020】
一方、これに対して水トリー劣化のないCVケーブルを対象とした比較例1の場合には、交流印加時、交流印加・直流バイアス時、およびこれらに超音波を作用させたときの間に直流成分の差はなく、従って、以上の結果を基準にすれば、CVケーブルの絶縁劣化の進捗状況を精度よく診断することができる。なお、超音波による増大効果が大きいことは、ノイズとの峻別が可能なことを意味する。
【0021】
図2は、応用例を示す。21はCVケーブルを示し、導体22の上に内部半導電層23、絶縁体24、外部半導電層25、金属遮蔽層26およびシース27を順に形成した構成を有する。金属遮蔽層26とシース27は、所定の個所FとGにおいて段剥ぎされ、これによってF、Gの間に金属遮蔽層26′を孤立させた形で残存させている。
【0022】
28は金属遮蔽層26′に接続された直流成分測定器を示し、この接続により金属遮蔽層26′をその測定用電極として利用する。29は導体22に交流電圧を印加するための課電用変圧器、30は直流電圧を印加するためのバイアス用DC電源、31はそのブロッキングコイル、32はバイパスコンデンサ、33は接地を示す。
【0023】
34はCVケーブル21に超音波を作用させるための超音波発生器、35は超音波伝搬用液体部を示す。この例の場合には、直流成分測定器28を金属遮蔽層26′に接続させている点において導体に接続した図1とは異なるが、動作は基本的に図1と同じである。
【0024】
表2は、CVケーブル21として22kVケーブルを使用し、交流印加電圧を12.7kV、直流バイパス電圧を1kV、および超音波を36kHz・900Wに設定して、図2に基づいて行った直流成分電流の測定結果を示したものである。
【0025】
【表2】
Figure 0003835076
【0026】
表2によれば、水トリー劣化の大きなケーブルを供試した実施例3の場合が、交流印加時および交流印加・直流バイパス時に比較して、超音波を作用させたときに桁違いの直流成分の増大が認められ、また、水トリー劣化が中程度の実施例4の場合にも、水準は異なるが同様に顕著な効果を示している。
【0027】
一方、これに対して水トリー劣化のないケーブルを供試した比較例2の場合には、交流印加時、これへの直流バイアス時、および超音波作用時の間に検出直流成分において差はなく、従って、以上の結果に基づけば、CVケーブル21の絶縁劣化の状況を高感度のもとに精度よく診断することができる。
【0028】
表3は、図2のCVケーブル21に電源30から1kVの直流電圧を印加し、このときに絶縁体22に流れる漏れ電流を直流成分測定器28により測定する方法において、絶縁体24に超音波発生器34より36kHz・900Wの超音波を作用させたときの効果を示したものである。なお、CVケーブル21としては、表2の各例において使用された22kV・CVケーブルを使用した。
【0029】
【表3】
Figure 0003835076
【0030】
表3によれば、絶縁体の水トリー劣化の大きな実施例5において、直流電圧印加のみの場合に微小であった検出電流が、超音波を作用させることによって1桁の増大を示しており、また、水トリー劣化が中程度の実施例6の場合にも、4倍増の結果を示している。
【0031】
これに対し、水トリー劣化のない比較例3の場合には、超音波を作用させても検出される漏れ電流に増大はなく、従って、以上の結果に基づけば、CVケーブルの劣化の状況を容易に診断することが可能となる。なお、6.6kV級以下のCVケーブルが対象の場合には、交流電圧印加のもとに超音波を作用させることによって同様の効果が得られる。
【0032】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明による電力ケーブルの診断方法によれば、診断対象の電力ケーブルに超音波を伝搬させることによって診断の基準となる微小の直流電流を増大させたため、S/N比を向上させて精度のよい診断を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による電力ケーブルの診断方法の実施の形態を示す説明図。
【図2】本発明による電力ケーブルの診断方法の応用例を示す説明図。
【符号の説明】
1、21 CVケーブル
2、24 絶縁体
3、29 課電用変圧器
4、30 バイパスDC電源
5、34 超音波発生器
6、35 超音波伝搬用液体部
7、28 直流成分測定器
8 ブロッキングコイル(測定用)
9 バイパスコンデンサ(測定用)
10、31 ブロッキングコイル(バイアス用)
11、32 バイパスコンデンサ(バイアス用)
12、33 接地
22 導体
23 内部半導電層
25 外部半導電層
26、26′ 金属遮蔽層
27 シース

Claims (3)

  1. 電力ケーブルの架橋ポリエチレン等の絶縁体の劣化の進行状況を診断する電力ケーブルの診断方法において、
    前記電力ケーブルに直流電圧または交流電圧を印加した状態、あるいは交流電圧の印加のもとに直流電圧を重畳した状態において前記絶縁体に超音波を伝搬させて診断状態を設定し、前記診断状態において前記絶縁体に流れる微小の直流電流を測定することによって前記絶縁体の劣化状況を診断することを特徴とする電力ケーブルの診断方法。
  2. 前記微小の直流電流の測定は、前記電力ケーブルのシースを剥ぎ取って露出した金属遮蔽層を測定用電極として使用することを特徴とする請求項1項記載の電力ケーブルの診断方法。
  3. 前記微小の直流電流の測定は、前記電力ケーブルの所定の2個所においてシースと金属遮蔽層を剥ぎ取って剥ぎ取り部を形成し、前記2個所の前記剥ぎ取り部の間に残された金属遮蔽層を測定用電極として使用することを特徴とする請求項1項記載の電力ケーブルの診断方法。
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