JP2978573B2 - モールド母線の部分放電検出方法及び装置 - Google Patents

モールド母線の部分放電検出方法及び装置

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、モールド母線及びその
近傍の部品の接続部の絶縁体内部及び絶縁体−導体界面
で発生する部分放電(Partial Discharge ;PD)を検
出するモールド母線の部分放電検出方法及び装置に係
り、特に前記部分放電を活線下で感度よく検出し得るモ
ールド母線の部分放電検出方法及び装置に関する。
【0002】
【従来の技術】高圧の電力伝送用配線部品は勿論、中低
圧の配線部品においても、絶縁性能を維持することは、
安全性及び信頼性の確保等のために極めて重要であり、
随時絶縁性能を検査診断する必要がある。ケーブルその
ものについての絶縁診断技術としては、次に述べるよう
な方法が有効であり、活線絶縁診断装置として製品化さ
れている。
【0003】第1の方法では、接地変圧器の中性点とケ
ーブルシールドとに交流分を阻止するための交流阻止フ
ィルタを設け、活線下で前記接地変圧器の中性点とケー
ブルシールドとの間に直流を重畳し、ケーブルの絶縁抵
抗を高抵抗まで測定する。
【0004】第2の方法では、ケーブルのtanδを測定
する。即ち、この方法は、誘電正接法と称される方法で
あり、接地線に流れるケーブルの電流をCT(変流器)
により検出し、ケーブルへの印加電圧を分圧器を介して
測定して、ケーブルのtanδを求める。
【0005】しかしながら、上記第1及び第2の方法
は、主としてケーブルの水トリー劣化を検出するもので
あり、これらの方法は、通常の場合、使用開始後10年
以上経たものしか診断対象とすることができない。
【0006】また、中低圧の配線部品では、幹線の超高
圧ケーブル等と異なり、測定時に運転を停止させること
ができる可能性があり、その場合には電力ケーブル内に
発生する部分放電を検出する方法として従来提案されて
いる次のような方法を用いて部分放電の測定を行うこと
も可能であると考えられる。
【0007】即ち、従来電力ケーブル内に発生する部分
放電を検出する方法として、例えば同調式検出法及びA
E(アコースティック・エミッション)センサを使用す
る方法がある。
【0008】前記同調式検出法を用いた同調式検出装置
は、電力ケーブル等の終端部の内部導体と金属遮蔽層と
の間に、結合コンデンサ及び検出インピーダンスを直列
に接続し、前記検出インピーダンスの両端に生じた電位
差を数百kHzの同調周波数を持つ同調増幅器によって
取出すようにしたものである。
【0009】しかしながら、この同調式検出装置は、内
部導体から信号を取り出す必要があるため、活線下での
検出は困難であり、専用の結合コンデンサも必要であ
る。また、この装置における同調周波数は、数百kHz
であるため、周囲のノイズの影響を受け易く、シールド
ルーム内の実験では良好な検出精度が得られるものの、
布設後のケーブル等への適用は難しい。
【0010】また、AEセンサを使用する検出装置は、
部分放電によって絶縁体内部を伝搬する弾性波をAEセ
ンサで検出するものであるが、この装置では、電気的な
ノイズによる影響を受けない反面、超音波が直進性を有
しているために強い指向性を有し、検出位置によっては
検出感度が極端に低下する。
【0011】更に、電力ケーブル等の接続部において、
金属シールド層を絶縁し、部分放電発生時に絶縁部を挟
む両金属シールド層間に発生する電位差を、前記両金属
シールド層間に接続された検出インピーダンスによって
検出する検出法も提案されている(「南池上線 275kV
CVケーブル線路の部分放電試験結果」;勝田他、電
気学会絶縁材料研究会資料 EIM−90−20)。
【0012】この方法は、金属シールド層が絶縁された
接続部のみに適用を限定され、また金属シールド層を非
接地状態とするために、短絡事故発生時の安全性に欠け
る。また、装置も大型となり、測定にも熟練を要する。
【0013】ロードブレーク用エルボーのような中低圧
の配線部品においては、実際上、接続部等の部品で絶縁
破壊する例が多い。これらの絶縁破壊は、部品の界面で
起こる部分放電が原因であると考えられる。このため、
部品自体について局部的に感度よく部分放電の観測・診
断を行うことが望ましいが、実施を前提とした具体的な
技術としてはあまり検討されていない。また、最近で
は、コンピュータの普及等に伴い、ほとんど全ての場合
に、無停電での点検が必要となってきており、上述した
ような、従来の測定方法による部分放電観測は好ましく
ない。
【0014】ロードブレーク用エルボーについては、線
路電圧をコンデンサ分圧して外部に取り出すための検電
端子が存在し、これを利用して部分放電の検出を行うこ
とが考えられる。
【0015】しかしながら、モールド母線は、外部導体
が露出しており、しかもロードブレーク用エルボーの場
合の検電端子のような分圧部は存在しない。
【0016】即ち、図4にモールド母線の一例における
一部分の断面を示すように、モールド母線1は、半導電
ゴム等の導電性ポリマからなる外部導体11の内部に絶
縁ゴムからなる絶縁層12を介して銅(Cu)等からな
る内部導体13が設けられている。モールド母線1にお
ける部分放電は図示A部において生じ易い。
【0017】
【発明が解決しようとする課題】従来、市販の部分放電
測定器を用いてモールド母線における部分放電を測定し
ようとする場合、図5に示すようにモールド母線1の外
部導体11にリード線を直接接続し、接地点との間に抵
抗21及びコンデンサ22の直列回路を接続し、交流電
源ACをモールド母線1の内部導体13に接続し、交流
電源ACのホット側と接地点との間にカプリングコンデ
ンサ23を接続する。抵抗21及びコンデンサ22の直
列回路の両端に市販の測定器を接続する。
【0018】このように、外部導体11に直接リード線
を接続して、市販の部分放電測定器を用いると、外部ノ
イズの影響を受け易く、しかも部分放電を生じている絶
縁劣化個所の位置に拘らず同様に部分放電が検出され
る。このため、この方法では、部分放電を生じている劣
化個所を判定することができず、撤去及び交換すべき部
分の特定が困難である。この方法は、ノイズの影響が大
きいため、モールド母線の設置現場には適用することが
できず、この方法による絶縁診断は現実には行われてい
ない。
【0019】本発明はかかる問題点に鑑みてなされたも
のであって、モールド母線にて感度よく部分放電の観測
・診断を行うことができ、しかも活線下での点検も可能
なモールド母線の部分放電検出方法及びその実施に直接
使用する装置を提供することを目的とする。
【0020】
【課題を解決するための手段】本発明に係るモールド母
線の部分放電検出方法は、モールド母線の外部導体に当
接される絶縁部材、この絶縁部材を介して前記外部導体
に対して容量結合して結合容量を形成する電極、前記結
合容量に直列に結合されるインダクタンス要素、及び前
記電極及びインダクタンス要素をシールドするシールド
部材を有する手動操作可能な検出部を用い、前記絶縁部
材が前記モールド母線の外部導体の所望の部位に当接さ
れたときの前記検出部の前記結合容量とインダクタンス
要素との共振特性によりモールド母線及びその近傍の部
分放電を検出することを特徴とする。
【0021】本発明に係るモールド母線の部分放電検出
装置は、モールド母線の外部導体に当接される絶縁部材
と、この絶縁部材を介して前記外部導体に対して容量結
合する電極と、この電極による結合容量に直列に結合さ
れ前記結合容量と共に共振回路を構成するインダクタン
ス要素と、及び前記電極及びインダクタンス要素をシー
ルドして前記絶縁部材、電極及びインダクタンス要素と
共に検出部を形成するシールド容器と、前記共振回路の
出力を処理する信号処理手段とを具備し、部分放電パル
スによってモールド母線及びその近傍の電力伝送部に発
生し且つこの電力伝送部の導電層を伝播する信号の高周
波成分を前記共振回路の共振特性を用いて検出すること
を特徴とする。
【0022】
【作用】本発明のモールド母線の部分放電検出方法及び
装置においては、モールド母線にあらわれる部分放電サ
ージを、手動操作可能な検出部により検出する。前記検
出部は、モールド母線の外部導体に当接される絶縁部材
と、この絶縁部材を介して前記外部導体に対して容量結
合して結合容量を形成する電極と、前記結合容量に直列
に結合されるインダクタンス要素と、及び前記電極及び
インダクタンス要素をシールドするシールド部材とを有
する。この検出部の前記絶縁部材を前記モールド母線の
外部導体の所望の部位に当接することにより、前記検出
部の前記結合容量とインダクタンス要素との共振特性を
利用してモールド母線及びその近傍の部分放電を検出す
ることができる。
【0023】本発明では、手動操作によりモールド母線
の任意の個所に当接することの可能な検出部を用いて、
モールド母線の絶縁診断を活線下で行えるようにしてい
る。検出部は、絶縁部材を介して前記外部導体に対して
容量結合する電極による結合容量にインダクタンス要素
を接続し、インダクタンス要素と前記結合容量とにより
共振回路を構成して、共振特性を利用して部分放電を高
感度に検出する。
【0024】本発明は、部分放電発生の際に外側金属層
から接地に向かう進行波の高周波成分を、手動操作によ
りモールド母線の任意の個所に検出部を当接することに
より検出する方式であるため、モールド母線に検出部を
当接するだけで測定を行うことができる。このため、実
使用状態にあるモールド母線の点検を随時、容易に行う
ことができ、活線状態下での部分放電測定も容易であ
る。
【0025】また、本発明では外側金属層を伝播する進
行波を検出する方式を用いているから、外側金属層を非
接地状態にする必要がない。このため本発明は、接続部
等の形式によって適用を限定されたり、安全性が低下し
たりする等の問題は発生しない。
【0026】
【実施例】以下、添付の図面を参照して、本発明の実施
例について説明する。
【0027】図1は、本発明の一実施例に係るモールド
母線の部分放電検出装置の構成を示す。
【0028】検出部、即ちセンサ2は、絶縁部材として
のゴム片5、電極6、シールド容器7、インダクタンス
要素としてのコイル8及びコネクタ9を有する。ゴム片
5は、モールド母線1の外部導体に当接される。電極6
は、ゴム片5の背面に密着して設けられ、ゴム片5を介
してモールド母線1の外部導体11に対して容量結合す
る。コイル8は、電極6による結合容量に直列に結合さ
れ、この結合容量と共に共振回路を構成する。シールド
容器7は、導電体、又は内面に金属蒸着等による導電層
が形成された絶縁体からなり、電極6及びコイル8を収
容してシールドする。このシールド容器7の内部のコイ
ル8からの信号は例えばBNC規格等に準拠した同軸ケ
ーブル用コネクタからなるコネクタ9を介して外部に導
出される。
【0029】センサ2はコネクタ9に接続された同軸ケ
ーブル3を介して観測用のオシロスコープ4に接続され
る。
【0030】測定に際しては、モールド母線1の露出し
た外部導体11にセンサ2のゴム片5部分を圧接する。
このとき、センサ2は、図2に示すように作業者によっ
て把持されて、あたかも医師が聴診器を操作するように
して操作される。このため、シールド容器7の外部にさ
らに図2に示すように保護用のゴムカバー10が設けら
れることが望ましい。特にシールド容器7が導体で構成
されているときには、絶縁用も兼ねて保護用のゴムカバ
ー10を設ける。センサ2をモールド母線1の外部導体
11に当接した状態で、ゴム片5を介して外部導体11
と電極6とで形成される結合容量は、コイル8に直列に
接続されている。これら結合容量とコイル8とで構成さ
れる共振回路により検出される部分放電信号は、コネク
タ9を介してシールド容器7の外部に引き出され、同軸
ケーブル3を介してオシロスコープ4で観測される。現
在、ポータブルタイプのオシロスコープでも100MH
z以上の精度のよいものが市販されており、このような
オシロスコープを用いれば定期点検等での部分放電測定
は容易に行える。前記共振回路の共振周波数としては、
外部からのノイズの混入等を考慮して約30〜50MH
zの範囲に定めることが推奨される。
【0031】このセンサ2は、図3に示すようにモール
ド母線1の外部導体11の任意の複数個所に容易に圧接
することができ、複数個所に逐次当接することにより、
出力される検出信号の大きさの比較から、放電発生個所
を容易に推定することができる。即ち、センサ2をモー
ルド母線1の外部導体11の複数個所に逐次当接して検
出信号を観測し、検出信号が最大となる個所の近傍に部
分放電が発生していると推定する。このように、放電発
生個所を推定することができるので、モールド母線等の
部品のみを交換すればよいのか、ケーブルの再敷設を必
要とするのか等を破壊前に予知することもできる。
【0032】従って、図1に示した装置によれば、次の
ような種々の利点がある。活線時にいつでも部分放電を
測定することができるので、配電設備の定期点検等に利
用することができる。簡単な操作で短時間に測定するこ
とができるので、多数の個所についての検出が容易であ
る。検出信号の大きさを比較することにより、部分放電
の発生個所を評定することができる。モールド母線のど
の部分で部分放電が発生しているかを検出することがで
きるので、修理に際して交換すべき部分を特定すること
ができ、修理作業を容易に行うことができる。この装置
をもとに検出信号を常時監視することができるシステム
を構築すれば、さらに信頼性の高いモールド母線の部分
放電検出を行うことができる。
【0033】本発明は、上述の実施例にのみ限定される
ことなく、その要旨に含まれる範囲内で種々の変形実施
が可能である。
【0034】例えば、上述では、センサ2による検出信
号をオシロスコープ4で観測する場合について説明した
が、検出信号を積分器により積分して部分放電パルス波
形を電流値として出力させるようにすれば、検出信号波
形をレコーダ等で記録することができる。また、積分器
を通したセンサ2の検出信号は、ハンディタイプの電流
計で容易に測定することができる。
【0035】
【発明の効果】以上述べたように、本発明によれば、部
分放電発生の際に外側金属層から接地に向かう進行波の
高周波成分の検出を、手動操作によりモールド母線の任
意の個所に検出部を当接するだけで行うことができるの
で、モールド母線にて感度よく部分放電の観測・診断を
行うことができ、しかも活線下での点検も可能なモール
ド母線の部分放電検出方法及びその実施に直接使用する
装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例に係るモールド母線の部分放
電検出装置の構成を示す模式図である。
【図2】図1に示されたセンサの使用状態の様子を示す
斜視図である。
【図3】図1に示されたセンサの使用例を説明するため
の図である。
【図4】モールド母線の構成を説明するための断面図で
ある。
【図5】従来のモールド母線における部分放電の測定方
法を説明するための図である。
【符号の説明】
1;モールド母線 2;センサ 3;同軸ケーブル 4;オシロスコープ 5;ゴム片 6;電極 7;シールド容器 8;コイル 9;コネクタ 10;保護用ゴムカバー
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 石川 泉 東京都江東区木場一丁目5番1号 藤倉 電線株式会社内 (72)発明者 高橋 享 東京都江東区木場一丁目5番1号 藤倉 電線株式会社内 (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) G01R 31/12 - 31/20

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 モールド母線の外部導体に当接される絶
    縁部材、この絶縁部材を介して前記外部導体に対して容
    量結合して結合容量を形成する電極、前記結合容量に直
    列に結合されるインダクタンス要素、及び前記電極及び
    インダクタンス要素をシールドするシールド部材を有す
    る手動操作可能な検出部を用い、前記絶縁部材が前記モ
    ールド母線の外部導体の所望の部位に当接されたときの
    前記検出部の前記結合容量とインダクタンス要素との共
    振特性によりモールド母線及びその近傍の部分放電を検
    出することを特徴とするモールド母線の部分放電検出方
    法。
  2. 【請求項2】 モールド母線の外部導体に当接される絶
    縁部材と、この絶縁部材を介して前記外部導体に対して
    容量結合する電極と、この電極による結合容量に直列に
    結合され前記結合容量と共に共振回路を構成するインダ
    クタンス要素と、及び前記電極及びインダクタンス要素
    をシールドして前記絶縁部材、電極及びインダクタンス
    要素と共に検出部を形成するシールド容器と、前記共振
    回路の出力を処理する信号処理手段とを具備し、部分放
    電パルスによってモールド母線及びその近傍の電力伝送
    部に発生し且つこの電力伝送部の導電層を伝播する信号
    の高周波成分を前記共振回路の共振特性を用いて検出す
    ることを特徴とするモールド母線の部分放電検出装置。
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