JP3833846B2 - 低弛度架空線 - Google Patents
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【発明の属する技術分野】
本発明は、長時間高温に曝されるなどしても弛度(架空線の鉄塔間の弛みの程度)が十分低いレベル(弛みの小さいレベル)に維持される低弛度架空線に関する。
【0002】
【従来の技術】
架空線には、従来より、鋼撚線の外周に純アルミ線またはアルミ合金線を撚り合わせたもの(ACSRなど)が用いられていたが、これら架空線は、送電時の抵抗発熱で弛度が増大し短絡事故などが起き易くなるという欠点がある。このため鋼撚線に代えて熱膨張係数の小さいインバー(Fe−36wt%Ni合金)の撚線を用いた架空線が提案されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、前記インバー撚線を用いた架空線でも、長時間高温に曝されたり、落雷などで大電流が流れた後などは、外周の純アルミ線などの撚り形状が崩れて、弛度を初期の設計レベルに維持できなくなるという問題がある。これは、撚り形状の崩れによりインバー撚線の熱膨張係数の小さい効果が架空線全体に及ばなくなるためであり、本発明者等はこれの改善策について種々検討した。その結果、熱膨張係数が十分小さい線材にアルミを被覆して素線とし、これを撚り合わせれば前記問題は解決し得ることを見いだし、さらに検討を重ねて本発明を完成させるに至った。本発明は、長時間高温に曝されたりしても、弛度を十分低いレベルに維持できる低弛度架空線の提供を目的とする。ここで、架空線とは架空地線、架空送電線などである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の発明は、純アルミまたはアルミ含有率95wt%以上のアルミ合金にPAN(ポリアクリロニトリル)系カーボンファイバが複合された複合心線の外周に純アルミ層またはアルミ含有率95%以上のアルミ合金層が前記複合心線の直径の8%以上の厚さに被覆された素線の撚り合わせ体からなることを特徴とする低弛度架空線である。
【0005】
請求項2記載の発明は、複合心線に占めるPAN系カーボンファイバの体積率が40%以上であることを特徴とする請求項1記載の低弛度架空線である。
【0006】
請求項3記載の発明は、前記複合心線が、PAN系カーボンファイバ束に純アルミ溶湯またはアルミ含有率95wt%以上のアルミ合金溶湯を含浸させ固化させて製造されていることを特徴とする請求項1または2記載の低弛度架空線である。
【0007】
請求項4記載の発明は、前記アルミ合金溶湯に時効硬化型アルミ合金を用い、前記複合心線、素線、または素線の撚合わせ体に時効硬化処理が施されていることを特徴とする請求項3記載の低弛度架空線である。
【0008】
請求項5記載の発明は、前記素線が、前記複合心線の外周に純アルミ溶湯またはアルミ含有率95wt%以上のアルミ合金溶湯を付着させ固化させて製造されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の低弛度架空線である。
【0009】
請求項6記載の発明は、前記素線が、前記複合心線の外周に純アルミ層またはアルミ含有率95wt%以上のアルミ合金層を押出被覆して製造されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の低弛度架空線である。
【0010】
請求項7記載の発明は、前記アルミ合金層に時効硬化型アルミ合金を用い、前記複合心線、素線、または素線の撚合わせ体に時効硬化処理が施されていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の低弛度架空線である。
【0011】
【発明の実施の形態】
請求項1記載発明の架空線は、図1に示すように熱膨張係数の小さい(負の)PAN(ポリアクリロニトリル)系カーボンファイバ4が複合されたアルミ複合心線5の外周にアルミ層2が被覆された素線6を撚合わせたものである。この架空線では、前記複合心線5の熱膨張係数の小さい効果が有効に発現され、高温に長時間曝されたりしても撚り形状が崩れたりせず低弛度が良好に維持される。
【0012】
前記複合心線は、PAN系カーボンファイバの体積分率が高いほど高強度となり、その分複合心線の径を小さくでき、それに応じてアルミ層を厚くでき、その結果素線の靱性が向上して撚線加工が良好に行えるようになる。そのため複合心線に占めるPAN系カーボンファイバの体積分率は40%以上にするのが望ましい。しかし前記体積分率があまり高いと複合心線の靱性が低下して取扱い時に複合心線が破断したりするので、前記体積分率の上限は80%程度が良い。
【0013】
請求項1記載の発明において、素線は、前記PAN系カーボンファイバ束に純アルミ溶湯またはアルミ含有率95wt%以上のアルミ合金溶湯(以下アルミ溶湯と総称する)を含浸させ固化させて(溶湯含浸法)複合心線とし、この複合心線にアルミ層を押出法やDIP法などにより被覆して製造される。前記PAN系カーボンファイバ束にアルミ溶湯を含浸させる工程(溶湯含浸工程)において、各PAN系カーボンファイバの表面にあらかじめメッキまたはCVD法などにより、金属、或いはSiO2やAl2O3などのセラミックスをコーティングしておくと、各PAN系カーボンファイバとアルミ溶湯との反応が抑えられ、PAN系カーボンファイバとアルミ溶湯との間により強固な界面接合が得られ複合心線の強度が向上する。前記DIP法は、アルミ溶湯中に複合心線を通して前記複合心線の外周にアルミ溶湯を付着凝固させる方法であり、長尺線の製造に適しまた製造中複合心線が塑性加工されるようなことがない。従って接続性および塑性加工性に劣るPAN系カーボンファイバを複合した素線の製造に適する。またDIP法では複合心線とアルミ層との密着性が優れるため、PAN系カーボンファイバの熱膨張係数の小さい効果がより有効に発現される。
【0014】
請求項1記載の発明において、複合心線外周のアルミ層は電流通路となる。このアルミ層の厚さが薄いと、十分な送電容量がとれず、また使用中の環境腐食によりPAN系カーボンファイバが露出し電食が進行する。このためアルミ層の厚さは複合心線の直径の8%以上とする。
【0015】
請求項7記載の発明において、複合心線に被覆するアルミ層に、高強度高導電性の時効硬化型合金(例えばAl−Mg−Si系合金)を用いると素線の強度が向上して架空線をより高力で吊架することができ低弛度化に有利である。時効硬化処理は、複合心線、素線、または素線の撚合わせ体のいずれに施しても良い。
【0016】
請求項1〜7記載発明の架空線は、(1)PAN系カーボンフアイバが軽いため架空線が軽量となり特に初期弛度の低減に有利である。(2)PAN系カーボンファイバは高温強度に優れるため高張力で吊架でき、高温下でも低弛度が維持できる。(3)撤去線屑をアルミの溶解温度に加熱するとPAN系カーボンファイバは炭化し分解消失するので、従来のACSRのように鋼撚線を取除く作業が不要でリサイクル性に優れる。
【0017】
【実施例】
以下に本発明を実施例により詳細に説明する。
(実施例1)
PAN系カーボンファイバ(直径15μm)の束をアルミ溶湯中に通して、前記束内に前記アルミ溶湯を含浸させ固化させて複合心線とし、この複合心線の外周にアルミ層を熱間押出法により被覆して直径3.2mmの素線を製造した。前記アルミ層のうちアルミ合金層にはAl−Zr合金またはAl−Mg−Si合金を用いた。Al−Zr合金を被覆した素線は撚線前に380℃で60時間の時効処理を施し、Al−Mg−Si合金を被覆した素線は撚線前に160℃で18時間の時効処理を施した。素線におけるアルミ層の横断面面積率は81%(複合心線の径1.40mmの57%の厚さ)とした。含浸用アルミ溶湯と被覆用アルミ層の組成および複合心線に占めるカーボンファイバの体積率は表1に示すように種々に変化させた。
【0018】
(実施例2)
実施例1で得た複合心線の外周にアルミ層をDIP法により被覆した他は実施例1と同じ方法により直径3.2mmの素線を製造した。
【0019】
比較のため、常法により製造した直径3.2mmのアルミ素線、亜鉛メッキ鋼線(JISC3110に基づく)、亜鉛メッキインバー線を用意し、これらを用いて亜鉛メッキ鋼線の7本撚線の周囲にアルミ素線を30本撚合わせた架空線、または亜鉛メッキインバー線の7本撚線の周囲にアルミ素線を30本撚合わせた従来の架空線を製造した。前記架空線は表2に示すようにアルミ素線の組成を変えて4種とした。
【0020】
実施例1、2で製造した各々の素線を用いて、それぞれ37本撚り公称断面積240mm2の架空線を製造した。得られた各々の架空線について、熱膨張係数、引張強さ、電気抵抗、重量比(ACSRの重量を1.00としたときの各撚線の重量比)を測定し、また前記測定結果からACSR比強度(引張強さを前記重量比で除した値)を求めた。前記熱膨張係数、引張強さ、電気抵抗は、それぞれJISH7404、JISZ2241、JISH0505に準じて測定した。結果を表3に示す。
表3には比較のため製造した前記4種の架空線の測定結果も併記した。
【0021】
【表1】
【0022】
【表2】
【0023】
【表3】
【0024】
表3より明らかなように、本発明例の架空線(No.1〜9)は、いずれも熱膨張係数が3.3〜4.2×10−6/℃と小さく、このため長時間高温に曝されたりしても弛度が十分低いレベルに維持される。これは本発明例の架空線が熱膨張係数の小さいPAN系カーボンファイバを複合した複合心線の外周にアルミ層を被覆した素線を撚合わせた構造からなるためである。また本発明例のNo.1〜6は高強度低比重のため比強度が著しく高く、初期弛度を極めて低いレベルに設計することができる。なおNo.9の熱膨張係数がやや大きいのは冷間伸線加工率が低いためである。
【0025】
従来材のNo.10〜13はいずれも熱膨張係数が大きく、その上No.10〜12は比強度が低いため初期弛度も低くできない。
【0026】
【発明の効果】
以上に述べたように、本発明の架空線は、熱膨張係数の小さい(負の)PAN系カーボンファイバが複合されたアルミ複合心線の外周に純アルミ層またはアルミ含有率95wt%以上のアルミ合金層が被覆された素線が撚合わされたもので、前記PAN系カーボンファイバの熱膨張係数の小さい効果が有効に発現されて、前記架空線は高温に長時間曝されたりしても撚り形状が崩れたりせず低弛度が良好に維持される。また本発明の架空線は、溶湯含浸法、押出被覆法、DIP法などを利用することにより容易に製造することができる。そしてPAN系カーボンファイバを用いた架空線は、軽量、高強度のため初期弛度を低くでき、またPAN系カーボンファイバが大気加熱により炭化し分解消失するため撤去線屑を容易に処分できリサイクル性に優れる。依って、工業上顕著な効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の架空線の実施形態を示す横断面説明図である。
【符号の説明】
2 純アルミ層またはアルミ含有率95wt%以上のアルミ合金層
4 PAN系カーボンファイバ
5 複合心線
6 素線(PAN系カーボンファイバを含む)
Claims (7)
- 純アルミまたはアルミ含有率95wt%以上のアルミ合金にPAN(ポリアクリロニトリル)系カーボンファイバが複合された複合心線の外周に純アルミ層またはアルミ含有率95%以上のアルミ合金層が前記複合心線の直径の8%以上の厚さに被覆された素線の撚り合わせ体からなることを特徴とする低弛度架空線。
- 複合心線に占めるPAN系カーボンファイバの体積率が40%以上であることを特徴とする請求項1記載の低弛度架空線。
- 前記複合心線が、PAN系カーボンファイバ束に純アルミ溶湯またはアルミ含有率95wt%以上のアルミ合金溶湯を含浸させ固化させて製造されていることを特徴とする請求項1または2記載の低弛度架空線。
- 前記アルミ合金溶湯に時効硬化型アルミ合金を用い、前記複合心線、素線、または素線の撚合わせ体に時効硬化処理が施されていることを特徴とする請求項3記載の低弛度架空線。
- 前記素線が、前記複合心線の外周に純アルミ溶湯またはアルミ含有率95wt%以上のアルミ合金溶湯を付着させ固化させて製造されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の低弛度架空線。
- 前記素線が、前記複合心線の外周に純アルミ層またはアルミ含有率95wt%以上のアルミ合金層を押出被覆して製造されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の低弛度架空線。
- 前記アルミ合金層に時効硬化型アルミ合金を用い、前記複合心線、素線、または素線の撚合わせ体に時効硬化処理が施されていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の低弛度架空線。
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