JP4429442B2 - 架空送電線 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は架空送電線に係り、特に軽量で引張強度が大きく、熱膨張の小さい架空送電線に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から電力用ケーブルは、硬銅撚線、鋼心アルミ撚線、及びアルミニウム合金撚線などが知られている。なかでも鋼心アルミ撚線(ACSR)は、軽量であるため高圧送電線に広く用いられている。鋼心アルミ撚線は中心に亜鉛メッキ鋼線をより合わせ、その外側に硬アルミニウム線をより合わせた電線が一般的である。導体として用いられるアルミニウム線は重量で銅の1/3であるため、銅線と同じ電流を流すために断面積を大きくしても銅線を用いるよりも軽くすることができる。また中心部には亜鉛メッキ鋼線などの補強部材が配置されているため、引張強度も大きいものである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
従来の鋼心アルミ撚線においては、大電流が流れると、ジュール熱が発生し、これによって電線が熱膨張し、弛度が増加して地上との絶縁距離が低下するものであった。このような従来の鋼心アルミ撚線の電流容量は、このような弛度によっても決定されていた。より大容量にするには、より太い径の電線を使用すればよいが、より太い径の電線を使用すると重量増加して、鉄塔への負担が大きくなるという問題があった。
【0004】
このような課題に対して、高強度で、熱膨張係数の小さい炭素繊維を分散材とするアルミ合金被覆複合材を架空送電線に用いる検討がなされている。しかしながら、炭素繊維を分散材とするアルミ合金被覆複合材では、炭素繊維とアルミ合金との濡れ性が悪く十分な界面密着性を得ることができず、また反応した場合には潮解性で脆弱な炭化アルミ化合物を造るなど問題があり、十分な引張強度が達成されないことや熱サイクル条件での諸特性の劣化などが生じ、十分な信頼性を得ることができなかった。
さらに、このような課題に対して、炭素繊維に金属やセラミックを被覆することも検討がなされている。しかしながら、このような外層に施されたセラミック被膜ではアルミ合金との密着性は改善されるが、セラミック被膜と炭素繊維との界面で十分な密着性は得られておらず、架空送電線として特性を有する複合線材を得ることができなかった。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記課題を解決するためのもので、珪素の濃度が炭素繊維表面で高く内部で低くなる濃度勾配となった被覆層を有する炭素繊維の束の間に、アルミまたはアルミ合金が含浸した複合線材からなることを特徴とする架空送電線である。
また、本発明の架空送電線は、前記炭素繊維の被覆層が、炭素繊維直径の30%以内であることを特徴とするものである。
また、本発明の架空送電線は、前記被覆層を有する炭素繊維とアルミまたはアルミ合金との複合線材が、その外周にアルミまたはアルミ合金単体の最外層を設けたものであることを特徴とするものである。
【0006】
具体的に、本発明は、架空送電線の素線であるセラミック層が表面から内部へ傾斜的に生成・被覆されている炭素繊維とアルミまたはアルミ合金との複合線材において、傾斜的に生成・被覆されているセラミック被覆層を含んだ炭素繊維の体積充填率は40〜70%である。
また、架空送電線の素線であるセラミック層が表面から内部へ傾斜的に生成・被覆されている炭素繊維とアルミまたはアルミ合金との複合線材において、長手方向の熱膨張係数はRT〜200℃間で7ppm/℃以下である。
また、架空送電線の素線であるセラミック層が表面から内部へ傾斜的に生成・被覆されている炭素繊維とアルミまたはアルミ合金との複合線材において、その比重は2.6以下である。
また、架空送電線の素線であるセラミック層が表面から内部へ傾斜的に生成・被覆されている炭素繊維とアルミまたはアルミ合金との複合線材において、その断面内に炭素繊維を均質に分散させた構造のものである。
また、架空送電線の素線であるセラミック層が表面から内部へ傾斜的に生成・被覆されている炭素繊維とアルミまたはアルミ合金との複合線材において、その炭素繊維軸方向の引張弾性率は255GPa以上である。
また、架空送電線の素線であるセラミック層が表面から内部へ傾斜的に生成・被覆されている炭素繊維とアルミまたはアルミ合金との複合線材において、引張強度は500MPa以上で、破断伸びは1.0%以上である。
【0007】
【作用】
本発明の架空送電線は、炭素繊維とアルミまたはアルミ合金との複合線材からなるもので、その炭素繊維がセラミック層が表面から内部へ傾斜的に生成・被覆されているので、炭素繊維とセラミック被覆層との十分な界面密着性を得ることができ、またマトリックスとなるアルミまたはアルミ合金と炭素繊維で脆弱な炭化アルミ化合物を形成されることもなく、十分な引張強度が達成され、熱サイクル条件での諸特性の劣化もなく、十分な信頼性を有するものである。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明は、セラミックを炭素繊維表面から炭素繊維内部へ傾斜的に反応生成させて、炭素繊維表面でセラミック濃度の高い構成とし、傾斜的に生成・被覆されている炭素繊維に、アルミまたはアルミ合金を複合した複合線材を架空送電線に用いることにより、従来材と比して軽量で、高強度を達成することができ、熱サイクルなどの疲労条件でも劣化のない複合材架空送電線を得ることができたものである。
【0009】
以下に、本発明について詳細に説明する。
本発明に用いる炭素繊維は、連続炭素繊維の束として使用し、炭素繊維の種類はPAN系、Pitch系のいずれでもよい。また炭素繊維は表面酸化を施した炭素繊維でもよいし、表面酸化を施されていない炭素繊維でもよい。
本発明は、セラミック層が表面から内部へ傾斜的に生成・被覆されている炭素繊維で、セラミックの被覆層を炭素繊維表面から内部へ傾斜的に生成・被覆するセラミックの被覆層の生成方法しては、プリセラミックポリマーを用いての傾斜生成や、金属Si等を直接炭素繊維表面に付着させて拡散反応させる等の方法が挙げられる。また、気相法としては、金属元素を蒸発させ、炭素繊維表面に付着し、その後に加熱処理にて反応物を生成させ、傾斜的に生成・被覆することもできる。反応物により傾斜的に生成されたセラミックの濃度は炭素繊維の表面で高く、炭素繊維の内部になるにしたがって炭素の濃度が高くなっている。
本発明において、傾斜的に生成させるセラミックとしては、炭化珪素、炭化チタン、炭化ボロンなどが挙げられる。特に炭化珪素が好適である。炭化珪素の生成法としては、活性な一酸化珪素を炭素繊維と反応させて生成させることが最も好適である。
【0010】
炭素繊維のセラミックを被覆する方法として、化学気相蒸着法や溶射などを含めた物理蒸着法が一般的であるが、蒸着法では、炭素繊維界面でのセラミックの濃度勾配が極端に大きな生成層ができるため、炭素繊維とセラミック被覆層との密着が不十分であったり、応力発生時の集中箇所となり、十分な性能を発揮せず界面での破壊が認められる。そこで炭素繊維表面から内部へ傾斜的に生成・被覆するセラミックの被覆層を生成する方法しては、炭素繊維自体を反応させ、セラミックを生成させ、表面から内部へ傾斜的にしたものが好ましい。これにより、マトリックスとの密着性の確保、炭素繊維とセラミック被覆層との密着性の確保をすることができ、強度特性が向上したものである。また、セラミック被覆層を傾斜生成させたことにより、マトリックスと炭素繊維の熱膨張差による熱応力が緩和され、熱サイクル等の熱疲労に対する特性が改善されたものである。
【0011】
本発明において、炭素繊維の表面から内部へ傾斜的に生成されているセラミック層は、炭素繊維直径の30%以内が適当である。このセラミック層が30%以上であると、架空送電線にした場合の炭素繊維の低熱膨張特性を十分に発揮させることができず、炭素繊維自体の強度特性を十分に得ることができない。最適値は約20%である。
本発明において、傾斜的にセラミック層が生成・被覆されている炭素繊維とアルミまたはアルミ合金との複合線材は、傾斜セラミック層である被覆層を含んだ炭素繊維の体積充填率40〜70%が好適である。体積充填率が40%未満であると、十分に高い強度を得ることができず、低弛度を目的とした熱膨張特性を得ることができない。70%を越えると強度特性が飽和する、またアルミまたはアルミ合金の複合化が困難となる。
【0012】
本発明において、傾斜的にセラミック層が生成・被覆されている炭素繊維とアルミまたはアルミ合金との複合線材は、架空送電線の素線となるものであり、その線材の熱膨張係数は、RT(25℃)〜200℃で7ppm/℃以下が好ましい。送電線としての適用する上で送電鉄塔間での送電線の弛みの低減効果は重要である。素線の熱膨張係数が7ppm/℃以下であれば、弛みによる敷設周辺環境への影響が小さく、また鉄塔自体への構造面での負担を低減することができる。
また、傾斜的にセラミック層が生成・被覆されている炭素繊維とアルミまたはアルミ合金との複合線材の比重は2.6以下であることが好ましい。2.6以下にすることにより、送電鉄塔への荷重的負担を低減することができる。
また、傾斜的にセラミック層が生成・被覆されている炭素繊維とアルミまたはアルミ合金との複合線材は、引張弾性率が255GPa以上であることが好ましい。255GPa以内であると熱膨張と同様に十分な低弛度化を行うことができない。
【0013】
また、傾斜的にセラミック層が生成・被覆されている炭素繊維とアルミまたはアルミ合金との複合線材の引張強度は、500MPa以上であることが好ましい。実使用上の素線への荷重負担を行う上でこのような引張強度のものが好ましいまた、傾斜的にセラミック層が生成・被覆されている炭素繊維とアルミまたはアルミ合金との複合線材の破断伸びが1.0%以上であることが好ましい。破断予測を含めた安全性の確保の上で1.0%以上であることが好ましい。
また、傾斜的にセラミック層が生成・被覆されている炭素繊維とアルミまたはアルミ合金との複合線材の外周にアルミ、アルミ合金単体層を最外層に構成することが好ましい。これは、複合材の耐食性を挙げる手段として好適である。特に腐食環境下での炭素繊維とアルミ、アルミ合金との界面部の露出が、極度の腐食発生を伴い機械的特性の劣化を伴う。そこで腐食環境下での複合線材の腐食劣化を防止する手段として外周にアルミ、アルミ合金単体層を最外層に構成することが有効である。
また、セラミック層が表面から内部へ傾斜的に生成・被覆されている炭素繊維とアルミまたはアルミ合金との複合化は、例えば、セラミック層が傾斜的に生成・被覆されている炭素繊維を、アルミまたはアルミ合金の溶湯内に浸漬してガス圧にて複合含浸させるものであり、炭素繊維の束の間にアルミまたはアルミ合金が含浸して複合化しているものである。
【0014】
【実施例1】
本発明の実施例1について、図1、図2、図3及び表1、表2を参照して説明する。
図1は炭素繊維のSEM(×3000)を示す図、図2は炭素繊維のオージェ分析によるSiの拡散を示す図、図3は複合素線製造装置を示す図である。表1は実施例1の諸特性を示すものであり、表2は比較例を示すものである。
炭素繊維として、ピッチ系炭素繊維(三菱化学(株)製 6000フィラメント、繊維径10μm)の長繊維の束を、450℃、Ar雰囲気中で加熱し、サイジング剤の除去を行い、600mをボビン巻き取った。
このピッチ系炭素繊維にセラミック被膜生成させるため、炭素繊維供給装置、予熱装置、被膜蒸着装置及び加熱装置からなる連続被膜生成装置を用いた。
【0015】
まず、600mを巻き取ったボビンを炭素繊維供給装置に設置し、連続炭素繊維を予熱装置へ供給した。予熱条件は、Ar雰囲気中で800℃に加熱を行った。予熱後、金属被膜蒸着装置に炭素繊維を連続供給した。被膜条件は、加熱温度1100℃とし、SiCH4,H2,Arガスを導入し炭素繊維に接触させて、SiCH4+H2→Siの反応により炭素繊維上にSiを析出させた。Siを析出させたピッチ系炭素繊維を加熱装置に供給し、加熱条件1800℃、Ar雰囲気で2hrで加熱反応処理を行った。
【0016】
上記の処理を行ったピッチ系炭素繊維をX線回折による生成物同定を行い、ピッチ系炭素繊維の表面にSiCが生成していることが確認できた。
また、処理を行ったピッチ系炭素繊維は、図1のSEM組織に示すように、炭素繊維の形状を保持しつつ、反応して炭素繊維の表面から内部へセラミック層が傾斜的に生成され、被覆されているものであり、表面から内部へ傾斜的に生成されていることが、炭素繊維の断面から見られる。
また、図2はオージェ分析によるSiの拡散を示すもので、横軸は深さ(Depth、nm)、縦軸は拡散mol%である。Siは炭素繊維の表面から1000nm(1μm)程度まで内部に拡散しており、また拡散mol%が示すように表面から内部に傾斜的に拡散されている。
【0017】
この様に処理を行って得られたSiC被膜炭素繊維を図3に示す複合素線製造装置を用いて複合化した。
図3に示す複合素線製造する装置は、ファイバー供給装置(4)、ファイバー加熱装置(5)、圧力遮断用オリフィス(7)(8)を設けた加圧(ガス圧)含浸装置(6)、巻取り装置(9)を備えている。加圧(ガス圧)含浸装置(6)はオリフィスを使用して内圧を上げているものである。また超音波印加手段(10)により溶湯中の超音波印加を行ってもよい。巻取り装置(9)は巻取り速度調節機能を付けてもよく、またロードセルによる重量測定機能を付けてもよい。
【0018】
図3に示すように、SiC被膜炭素繊維(1)はファイバー供給装置(4)からファイバー加熱装置(5)に供給される。ファイバー加熱装置(5)はSiC被膜炭素繊維(1)の付着物の除去・予熱を行うもので550℃である。またファイバー加熱装置(5)の全長約1m、SiC被膜炭素繊維(1)の搬送速度は20m/minである。次いで加圧含浸装置(6)に供給される。加圧含浸装置(6)は圧力遮断用オリフィス(7)(8)を含め、その全長約0.5mである。加圧含浸装置(6)に供給されたSiC被膜炭素繊維(1)は、アルミ合金溶湯内に浸漬してガス圧にて複合含浸した。複合含浸後、アルミ合金マトリックスの凝固複合体を連続的に引き出し、巻取り装置(9)に複合線材(2)を巻取った。このとき複合線材(2)の炭素繊維体積充填率は、30〜80%とした。また、アルミ合金マトリックスはAl−Mg−Si合金とした。
【0019】
また、比較例として、図3に示す複合素線製造装置を用いて、SiCを施した炭素繊維に、実施例1と同様のアルミ合金溶湯内に浸漬して複合線材(2)を得た。このときも複合線材の炭素繊維体積充填率は、30〜80%とし、ま 、アルミ合金マトリックスはAl−Mg−Si合金とした。
表1に、実施例1について体積充填率(%)、複合材密度(g/cm)、引張強度(MPa)、引張弾性率(GPa)、熱膨脹係数(ppm/K)を示し、表2に比較例の諸特性を示す。
【表1】
Figure 0004429442
【表2】
Figure 0004429442
【0020】
表1の実施例1、表2の比較例1の特性から明らかなように、体積充填率(%)が同じものでは、実施例1の炭素繊維表面にSiCを施したものは、比較例1の表面処理を行っていないものより機械的特性が向上しているものである。
また、表1(実施例1)のNo.3〜No.9の傾斜セラミック被覆層を含んだ炭素繊維の体積充填率40%〜70%のものは、複合材密度(比重)は2.6(g/cm)以下、引張強度500(MPa)以上、炭素繊維軸方向の引張弾性率255GPa以上、長手方向の熱膨張係数RT〜200℃間で7ppm/℃以下であり、優れた特性を有しているものであった。
また、実施例1の炭素繊維表面から内部へ傾斜的にSiCを施したものは炭素繊維とセラミック被覆層との密着性がよく、またアルミ合金マトリックスと密着性がよいもので、熱サイクル等の熱疲労に対しする優れた特性を有するものであった。
【0021】
【実施例2】
本発明の実施例2について、表3を参照して説明する。
炭素繊維として、ピッチ系炭素繊維(三菱化学(株)製 6000フィラメント、繊維径10μm)の長繊維を、450℃、Ar雰囲気中で加熱し、サイジング剤の除去を行い、600mボビン巻き取った。このピッチ系炭素繊維にセラミック被膜生成させるため、炭素繊維供給装置、予熱装置、金属被膜蒸着装置及び加熱装置からなる連続被膜生成装置を用意した。まず、ボビンを炭素繊維供給装置に設置し、連続炭素繊維を予熱装置へ供給した。予熱条件は、Ar雰囲気中で800℃に加熱を行った。予熱後、金属被膜蒸着装置に炭素繊維を連続供給した。被膜条件は、加熱温度1100℃とし、SiCH4,H2,Arガスを導入し繊維接触させて、SiCH4+H2→Siの反応により炭素繊維上にSiを析出させた。Siを析出させたピッチ系炭素繊維を加熱装置に供給し、加熱条件1800℃、Ar雰囲気で加熱反応処理を行った。そして傾斜生成層の厚みを変化させた。この傾斜生成層の厚みは、Ar雰囲気での加熱反応せる処理時間を変えてることで変化させた。
傾斜生成層のSiC被膜炭素繊維の複合化は、実施例と同様の条件で、図3に示す複合素線製造装置を用いて行った。
また、炭素繊維体積充填率は60%とした。
【表3】
Figure 0004429442
【0022】
表3から明らかなように、No.23〜No.28の傾斜生成層が30%以内のものは、引張強度、引張弾性率、熱膨張係数が優れたものであり、No.29、No.30の傾斜生成層が30%を超えたものは、極端に機械的特性が低下することが確認できる。
【0023】
【実施例3】
本発明の実施例3について、図4及び表4を参照して説明する。
図4は架空線の構成を示す図であり、表4は実施例4の特性を示すものである。
セラミック層が表面から内部へ傾斜的に生成・被覆されている炭素繊維とアルミまたはアルミ合金との複合線材として、実施例1で得られたものを用いた。すなわち、束になっているピッチ系炭素繊維(三菱化学(株)製 6000フィラメント、繊維径10μm)にSiを析出させ、加熱反応処理を行って傾斜生成層のSiC被膜炭素繊維とし、これにAl−Mg−Si合金マトリックスを複合化させた複合線材を用いた。
【0024】
この複合線材(φ(直径)2.0mm、Vf(体積充填率)60%)の外周にアルミ合金層を熱間押出法にて被覆して、直径3.2mmの素線を製造した。
被覆したアルミ合金層はAl−Zr合金とした。Al−Zr合金を被覆後、この被覆素線は撚線前に380℃で60hr時効処理を施した。
Al−Zr合金を被覆した素線におけるアルミ合金(Al−Zr)層の横断面面積率は61%(複合素線の径3.2mmの38%の厚さ)とした。
得られたAl−Zr合金を被覆した素線はそれぞれ37本より、公称断面積300mmの架空線を製造した。
図4に示すように、複合線材(2)の外周にアルミ合金(Al−Zr)層(3)を被覆した素線(11)を用い、37本の素線(11)により架空線(12)としたものである。
【表4】
Figure 0004429442
【0025】
表4の記載について、素線中の繊維体積充填率(%)は、傾斜生成層のSiC被膜炭素繊維にAl−Mg−Si合金マトリックスを複合化させた複合線材における、傾斜生成層のSiC被膜層を含んだ炭素繊維の体積充填率(%)である。
被覆素線密度(g/cm)は、複合線材にAl−Zr合金を被覆した素線の密度である。
引張強度(MPa)、引張弾性率(GPa)、熱膨脹係数(ppm/K)は
図4に示す架空線(12)の引張強度、引張弾性率、熱膨脹係数である。
表4に示すように、実施例3の架空線は、上記実施例1の複合線材を用い、その外周にアルミ合金(Al−Zr)層を被覆した素線で架空線(12)としているので、引張強度、引張弾性率、熱膨脹係数と優れた特性を有し、従来の鋼心アルミ撚線より軽量で引張強度が大きく、熱膨張の小さいものであった。
【0026】
【発明の効果】
以上に述べたように、本発明の架空送電線によれば、熱膨張係数の小さく、高強度、高剛性の特性を有し、また軽量で、熱サイクルなどの疲労条件でも劣化がないものであり、工業上顕著な効果を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明実施例1の炭素繊維のSEMを示す図、
【図2】本発明実施例1の炭素繊維のオージェ分析によるSiの拡散を示す図、
【図3】本発明実施例2の複合線材の製造装置を示す図
【図4】本発明実施例3の架空線の構成を示す図
【符号の説明】
1.SiC被膜炭素繊維
2.複合線材
4.ファイバー供給装置
5.ファイバー加熱装置
6.加圧含浸装置
11.複合線材の外周にアルミ合金を被覆した素線
12.架空線

Claims (3)

  1. 珪素の濃度が炭素繊維表面で高く内部で低くなる濃度勾配となった被覆層を有する炭素繊維の束の間に、アルミまたはアルミ合金が含浸した複合線材からなる架空送電線。
  2. 前記炭素繊維の被覆層は、炭素繊維直径の30%以内であることを特徴とする請求項1記載の架空送電線。
  3. 前記被覆層を有する炭素繊維とアルミまたはアルミ合金との複合線材が、その外周にアルミまたはアルミ合金単体の最外層を設けたものであることを特徴とする請求項1または2記載の架空送電線。
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