JP3832823B2 - 表示装置 - Google Patents

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好之 金子
進 佐々木
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浩 川崎
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  • Cathode-Ray Tubes And Fluorescent Screens For Display (AREA)
  • Vessels, Lead-In Wires, Accessory Apparatuses For Cathode-Ray Tubes (AREA)

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、前面基板と背面基板の間に形成される真空中への電子放出を利用した表示装置に係り、特に、電子源を有する陰極配線および電子源からの電子の引き出し量(放出量)を制御する制御電極を高精度に設置して前面基板と背面基板の間を真空に保って安定した表示特性を実現した表示装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
高輝度、高精細に優れたディスプレイデバイスとして従来からカラー陰極線管が広く用いられている。しかし、近年の情報処理装置やテレビ放送の高画質化に伴い、高輝度、高精細の特性をもつと共に軽量、省スペースの平板状ディスプレイ(パネルディスプレイ)の要求が高まっている。
【0003】
その典型例として液晶表示装置、プラズマ表示装置などが実用化されている。また、特に、高輝度化が可能なものとして、電子源から真空への電子放出を利用した表示装置(以下、電子放出型表示装置、または電界放出型表示装置と呼ばれる)や、低消費電力を特徴とする有機ELディスプレイなど、種々の型式のパネル型表示装置の実用化も近い。
【0004】
このようなパネル型の表示装置のうち、上記電界放出型表示装置には、C.A.Spindtらにより発案された電子放出構造をもつもの、メタル−インシュレータ−メタル(MIM)型の電子放出構造をもつもの、量子論的トンネル効果による電子放出現象を利用する電子放出構造(表面伝導型電子源とも呼ばれる)をもつもの、さらにはダイアモンド膜やグラファイト膜、カーボンナノチューブの持つ電子放出現象を利用するもの、等が知られている。
【0005】
電界放出型の表示装置は、内面に電界放出型の電子源を有する陰極配線と制御電極を形成した背面基板と、この背面基板と対向する内面に陽極と蛍光体を形成した前面基板を有し、両者の内周縁に封止枠を介挿して貼り合わせ、その内部を真空にして構成される。また、背面基板と前面基板との間の間隔を所定値に保持するために、当該背面パネルと前面パネルの間に間隔保持部材を設けているものがある。
【0006】
背面基板と前面基板との間の間隔を保持するための間隔保持部材はガラスやセラミックスの薄板で形成され、画素を避けた位置に植立される。なお、このような間隔保持部材を設けた表示装置の従来例としては、特開平7−326306号公報、特開2001−338528号公報を挙げることができる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
図1は電界放出型の表示装置の概略構成の模式的説明図である。図1の(a)は前面基板側から見た平面図、同(b)は同(a)を矢印A方向から見た側面図である。図1中、参照符号1は背面基板、2は前面基板、3は外枠、4は排気管(封止した状態)を示す。背面基板1はガラスあるいはアルミナ等のセラミックスを好適とする絶縁基板の上に電子源をもつ複数本の陰極配線が一方向(x方向)に延在し他方向(y方向)に並設されている。この陰極配線の上には、当該陰極配線と絶縁されてy方向に延在しx方向に並設した複数本の制御電極を有する。そして、背面基板1と前面基板2の対向する間隙の外周に外枠3が介挿され、この外枠3で囲まれた内部を真空に封止されている。前面板2は背面板1に対してz方向に積み重られている。背面基板1と前面基板2を外枠3で貼り合わせた後、排気管4から排気し、所定の真空度に封止される。
【0008】
図2は図1に示した表示装置を構成する背面板の構成例の模式的説明図である。図2の(a)はz方向上側から見た平面図、同(b)は同(a)を矢印B方向から見た側面図を示す。参照符号5は陰極配線、6は板部材制御電極、7は電極押さえ部材、8は排気孔、図1と同一参照符号は同一機能部分を示す。なお、図2における排気管は封止前の状態で示す。板部材制御電極6は電子通過孔を有する多数の帯状電極素子を平行に配列して構成されるものであり、本発明に至る開発過程で本発明者等が提案したものであって、公知のものではない。
【0009】
背面基板1の内面には陰極配線5が敷設されている。陰極配線5は背面基板1上でx方向に延在し、x方向に交差するy方向に多数本並設される。陰極配線5は銀などを含む導電ペーストの印刷等でパターニングされる。陰極配線5の端部は陰極配線引出し線5aとして外枠3の外側に引き出されている。陰極配線5上には、メタル−インシュレータ−メタル(MIM)型の電子放出素子、量子論的トンネル効果による電子放出現象を利用する電子放出構造(表面伝導型電子源とも呼ばれる)素子、ダイアモンド膜やグラファイト膜、あるいはカーボンナノチューブ等の電子源(図示せず)を有する。
【0010】
図2における板部材制御電極6は別部品として別の工程で製作され、電子源を有する陰極配線5の上方(前面基板側)に近接して設置され、表示領域の外側かつ外枠3の内側に設けたガラス材などの絶縁体からなる電極押さえ部材7等で背面基板1に固定される。板部材制御電極6には電極押さえ部材7の近傍あるいは外枠3の近傍で引出し線が接続されて表示装置の外縁に引き出されている(図示せず)。そして、陰極配線5と板部材制御電極6との交差部にマトリクス状に画素が形成され、このマトリクス配列された画素で上記の表示領域が形成される。なお、外枠3に電極押さえ部材7の機能を持たせることもできる。
【0011】
そして、陰極配線5と板部材制御電極6との間の電位差で陰極配線5に有する電子源からの電子の放出量(オン・オフを含む)が制御される。一方、図1に示した前面基板2はガラス等の光透過性を有する絶縁材料で形成され、その内面に陽極と蛍光体とを有する。蛍光体は陰極配線5と板部材制御電極6の交差部に形成される画素に対応して形成される。また、蛍光体の回りに遮光層(ブラックマトリクス)を有する。
【0012】
外枠3で封止された前面基板2と背面基板1の内部は排気孔8から排気管4を通して真空引きされ、例えば10-31〜10-5Paの真空に排気される。板部材制御電極6の陰極配線5との各交差部には図示しない電子通過孔を有し、陰極配線5に有する電子源から放出される電子を前面基板側(陽極側)に通過させる。板部材制御電極6は、陰極配線5を形成した背面基板1上にあって、当該陰極配線に対して表示領域の全域にわたって所定の間隔をもって設置する必要がある。
【0013】
間隙保持部材9は通常、多数の薄いガラス板等からなり、板部材制御電極6の間に垂直(z方向)に、すなわち背面基板と前面基板の間に仕切り壁を形成するように設置されるものであるため、その組立て工程は繊細、かつ高度の熟練を要する。また、この間隙保持部材は前面基板と背面基板からの真空圧に対抗する応力がかかるため、複数の間隙保持部材が当該応力を均一に受けるように設置しないと、間隙保持部材の一部に応力集中が起こり、間隙保持部材自身あるいは前面基板や背面基板の破損を招く。
【0014】
その対策の一つである前記した特開平7−326306号公報に開示の発明では、間隙保持部材と基板の間に弾性材として銀を主成分とするペーストを塗布し、焼成したもの、あるいは低ヤング率の無機接着剤(実施例では東亜合成化学社製アロンセラミックス)を用いている。また、前記の特開2001−338528号公報でも間隙保持部材と基板の間に導電性フリットを介在させている。しかし、このようなものの弾性材としてのヤング率は間隙保持部材を構成するガラス板やセラミックス板に比べて格段に大きい(柔らかい)性質を有するものではないため、応力分散効果に限界がある。特に、陰極配線や制御電極を有する背面基板に導電性ペーストを用いた場合の絶縁性の問題もある。
【0015】
また、間隙保持部材の設置は背面基板と前面基板の間に高い精度で均等に配置する必要があると共に、前記した大気圧による応力が多数の間隙保持部材に対して均等にかかるようにする必要がある。しかし、上記従来の技術は背面基板と前面基板の間に間隙保持部材を植立させると言う観点のみが考慮されたものであり、背面基板と前面基板の間に制御電極を配置した表示装置における間隙保持部材の設置を考慮したものではない。
【0016】
本発明の目的は、背面基板と前面基板の間に制御電極を配置した表示装置に多数の間隙保持部材を高精度で設置し、かつ大気圧による応力が多数の間隙保持部材に対して略均等にかかるようにして当該間隙保持部材や背面基板もしくは前面基板の破損を抑制して高い信頼性をもつ表示装置を提供することにある。
【0017】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明は、背面基板と前面基板の間に植立して両基板の間隔を保持する多数の間隙保持部材の上記背面基板および/または前面基板とが当接する部分に当該背面基板と前面基板から印加される大気圧を略均等に分散させるための高弾性を有する緩衝材と接着材からなる緩衝固着材を介挿し、熱処理と加圧工程により背面基板と前面基板の間に間隙保持部材を固定した。
【0018】
本発明の構成により、上記熱処理と加圧の工程で緩衝材が多数の間隙保持部材に圧力が略均等にかかるように固定される。その結果、間隙保持部材や背面基板もしくは前面基板の破損が抑制される。本発明の代表的な構成を記述すれば次のとおりである。
【0019】
(1)、陽極及び蛍光体を内面に有する前面基板と、
一方向に延在し前記一方向に交差する他方向に並設され、かつ電子源を有する複数本の陰極配線と、表示領域内で前記陰極配線と非接触で交差し、かつ前記他方向に延在し前記一方向に並設されて前記電子源からの電子を前記前面基板側に通過させる電子通過孔を有する複数本の帯状電極素子を平行配列した板部材制御電極を内面に有して前記前面基板と所定の間隔をもって対向する背面基板と、
前記前面基板と背面基板の間に植立挟持されて当該前面基板と背面基板を所定の間隔に保持する間隔保持部材とを具備し、
前記前面基板と背面基板の少なくとも一方と前記間隔保持部材との間に組立て時に高弾性を有し焼成工程で消失する高弾性材に接着剤を混合した緩衝固着材を設けた。
【0020】
(2)、(1)において、前記前面基板と前記背面基板の間で前記表示領域を周回して介挿され、前記所定の間隙を保持するための外枠を有すると共に、
前記表示領域外かつ前記外枠の内側において前記背面基板に前記板部材制御電極を構成する帯状電極素子の両端領域を固定する電極押さえ部材を備えた。
【0021】
(3)、(1)または(2)において、前記高弾性材として低温分解性発泡樹脂を用いる。
【0022】
(4)、(3)において、前記低温分解性発泡樹脂としてウレタンを用いる。
【0023】
(5)、陽極及び蛍光体を内面に有する前面基板と、
一方向に延在し前記一方向に交差する他方向に並設され、かつ電子源を有する複数本の陰極配線と、表示領域内で前記陰極配線と非接触で交差し、かつ前記他方向に延在し前記一方向に並設されて前記電子源からの電子を前記前面基板側に通過させる電子通過孔を有する複数本の帯状電極素子を平行配列した板部材制御電極を内面に有して前記前面基板と所定の間隔をもって対向する背面基板と、
前記前面基板と背面基板の間に植立挟持されて当該前面基板と背面基板を所定の間隔に保持する間隔保持部材とを具備し、
前記前面基板と背面基板の少なくとも一方と前記間隔保持部材との間に高弾性を有し焼成工程後に補強材として存在する高弾性材に接着剤を混合した緩衝固着材を設けた。
【0024】
(6)、(5)において、前記前面基板と前記背面基板の間で前記表示領域を周回して介挿され、前記所定の間隙を保持するための外枠を有すると共に、
前記表示領域外かつ前記外枠の内側において前記背面基板に前記板部材制御電極を構成する帯状電極素子の両端領域を固定する電極押さえ部材を備えた。
【0025】
(7)、(5)または(6)において、前記高弾性材として耐熱繊維を用いた。
【0026】
(8)、(7)において、前記耐熱繊維としてアラミド系繊維を用いた。
【0027】
(9)、(1)乃至(8)の何れかにおいて、前記接着剤として低融点ガラスを用いた。
【0028】
上記の各構成により、背面基板と前面基板の間に植立した多数の間隙保持部材に対して印加される大気圧が略均一になり、背面基板や前面基板あるいは間隙保持部材の破損が回避される。なお、上記高弾性材としては、この他に発泡ポリエチレンなどのプラスチック材、あるいはアセテート繊維などを用いることができる。
【0029】
【発明の実施の形態】
以下、本発明による表示装置の実施の形態について、実施例の図面を参照して詳細に説明する。
【0030】
「実施例1」
図3は本発明による表示装置の第1実施例の説明図である。図3は間隙保持部材の設置構造の模式的に説明するもので、同図(a)は前面基板を取り去って示す背面基板の要部平面図、同図(b)は同図(a)の矢印C方向からみた側面図である。図中、参照符号9は間隙保持部材、図2と同一参照符号は同一機能部分に対応する。間隙保持部材9は板部材制御電極6の間に設置されている。
【0031】
また、図4は図3(b)のD部分の拡大図である。図4において、参照符号10は緩衝固着材であり、接着剤としての低融点ガラスに高弾性を有する低温分解性発泡樹脂としてウレタン樹脂を混合したものである。ウレタン樹脂は350°C程度の温度で消失する性質を有する。緩衝固着材10は背面基板1に形成されている陰極配線5の上、かつ板部材制御電極6に沿って、その間に塗布される。この上に後述する治具と同様の治具を用いて間隙保持部材9の一端を植立させる。本実施例では、3個の単位画素に相当する3本の板部材制御電極6毎に設置している。この3個の単位画素はカラー表示の1画素であるR,G,Bに相当する。しかし、間隙保持部材9の設置箇所はこれに限らない。
【0032】
図示しないが、間隙保持部材9の他端は前面基板に当接している。間隙保持部材9の他端はフリットガラス等の接着材でのみ固定してもよいが、前面基板の間にも同様の緩衝固着材10を介在させてもよいことは言うまでもない。
【0033】
間隙保持部材9は背面基板1側に緩衝固着材10を塗布した状態で当該緩衝固着材10を介して背面基板1と接合させるので、間隙保持部材9に接着剤のみを直接塗布するものとは異なり、その塗布量を均等化することができる。したがって、多数の間隙保持部材9は等量かつ全面で緩衝固着材10を介して仮固定されて植立される。この状態で仮焼成してもよい。
【0034】
図5は間隙保持部材の組立て治具の模式的説明図である。また、図6は図5のD−D’線に沿った断面図である。図5、図6において、参照符号11は下側治具、11aは突出部、12は上側治具、12aは段差部、前記の各図と同一参照符号は同一機能部分に対応する。なお、図5と図6では背面基板1の詳細構成は省略した。板部材制御電極マスター板60は実装置の板部材制御電極でもよいが、この板部材制御電極マスター板60は板部材制御電極6を製作するホトマスクを用いて製作する。
【0035】
図7は図5の組立て治具に有するスリットの形状例の模式的説明図、図8は図7のスリットに間隙保持部材を所期位置合わせする状態を示す模式図である。本発明における組立て治具を構成する下側治具11には、薄い間隙保持部材9を容易に挿入でき、かつ垂直配置できるように上部が広がったスリット11bが所要の間隔で形成されている。このスリット11bは図7の(a)(b)(c)に示したような平面形状を有する。すなわち、スリット11bの端部に広い開口部11b’を有し、間隙保持部材9を下側治具11のスリット11bに挿入する場合、図8に示したように、最初に当該間隙保持部材9の角を広い開口部11b’に合わせて挿入し、次に矢印のように全体をスリット11bに挿入する。
【0036】
このようなスリット形状とすることにより、下側治具11のスリット11bに間隙保持部材9を容易に挿入することができる。なお、スリット11bに形成する広い開口部11b’は、図7に示したように当該スリット11bの端部に限るものではなく、当該スリット11bの適宜の中間部に形成してもよい。
【0037】
図5に戻って、下側治具11の突出部11aに板部材制御電極マスター板60を載置し、さらにその上に段差12aを有する上側治具12を載せて板部材制御電極マスター板60を保持する。板部材制御電極マスター板60の周囲は枠体で固定されている。そして、板部材制御電極マスター板60には実装置の帯状電極素子の間の間隙に相当する多数の間隙60aを有する。この間隙60aと下側治具11のスリット11bとはz方向に整列関係にある。間隙保持部材9を仮固定した背面基板1を上側治具12の段差12aに載置する。又は、下記のようにして間隙保持部材9を整列させた後に背面板1を上側治具12の段差12a上で位置合わせして重ねることも可能である。
【0038】
このとき、間隙保持部材9は板部材制御電極マスター60の間隙60aを通って図8で説明した態様で下側治具11のスリット11bに挿入される。また、板部材制御電極マスター板60の間隙60aの間隙保持部材9の挿入側を若干広い形状としておくことで間隙保持部材9の挿入を容易にすることができる。
【0039】
板部材制御電極マスター板60の間隙60aから下側治具11のスリット11b内に突出する間隙保持部材9の先端部分の長さは、作業性を考慮すると当該間隙保持部材9の高さの1/4乃至1/3程度とすることが望ましい。この種の電界放出型表示装置では、3V/μm程度の電界強度で電子を放出させているので、板部材制御電極6と前面基板に有する陽極との間に3mm程度の間隔があれば約10kVの高圧を印加することができる。したがって、上記の突出量は1mm弱である。
【0040】
図6に示したように背面基板1を治具にセットし、背面基板1の上から面加圧しつつ加熱する。この加圧・加熱処理で緩衝固着材10に有するウレタン樹脂の緩衝作用で複数の間隙保持部材9には均等に圧力が印加され、同緩衝固着材10に有するフリットガラスの溶融と固化で間隙保持部材9は背面基板1に固定される。同時にウレタン樹脂は消失する。フリットガラスは350°付近から徐々に軟化を始めるので、ウレタン樹脂が分解して弾力性が消失するときには、粘稠なフリットガラスが間隙保持部材9と背面基板1との間でクッション材の役割を果たす。さらに、450°で30分程度の加熱後、降温してフリットガラスを固化する。その後、治具から間隙保持部材9の一端を固定した背面基板1を取り外す。
【0041】
図9は間隙保持部材を固定した背面基板の構成を説明する模式図であり、同図(a)は間隙保持部材を平面から見た図、(b)は(a)を矢印E方向から見た図、(c)は(a)を矢印F方向から見た図である。焼成前の緩衝固着材10は約1mm程度の厚さを有するが、図9に示した固化後の状態では0.1mm程度の厚さとなる。緩衝固着材10を背面基板1側に塗布して、その上に間隙保持部材9を載せて固定する場合、緩衝固着材10の塗布面積を間隙保持部材9の断面積より広くしておくことが望ましい。
【0042】
図10は本発明の第1実施例における前面基板の構成例の模式的説明図である。図10の(a)は平面図、同(b)は(a)のG−G’線に沿った断面図を示す。また、図11は背面基板に前面基板を組み込んで一体化した表示装置の要部断面図、図12は図11の矢印H部分の拡大図である。図11および図12中、参照符号2は前面基板、13は陽極、14は蛍光体、15は遮光膜(ブラックマトリクス)である。蛍光体14は赤(R)、緑(G)、青(B)の配列で1画素を構成する。各色の間はブラックマトリクス15で区画されている。本実施例では、1画素(R,G,B)毎に間隙保持部材を設置するための緩衝固着材10を塗布してある。
【0043】
例えば、前面基板2に有する蛍光体14の1トリオ画素(R, , B)が約1mm程度の場合、各色の蛍光体(蛍光体素子)の間は0.1mm程度の間隙を持たせることができる。この間隙に50μm程度の厚さの間隙保持部材9を設置するものとすると、間隙保持部材9が緩衝固着剤10の塗布領域から完全に外れないように10乃至15μm程度の裕度をみて、緩衝固着剤10の塗布幅を70乃至80μmとするのが望ましい。また、緩衝固着剤10の塗布の長さは間隙保持部材9との合わせ裕度を両端で各5mmとして、間隙保持部材9の長さに対し+10mm程度とするのが望ましい。
【0044】
図9に示した間隙保持部材を固定した背面基板1に図10の前面基板2を外枠3を介して貼り合わせる。外枠3と背面基板1および前面基板2とはフリットガラス等の接着剤3aで接着する。このとき、図10に示した前面基板2側に塗布した緩衝固着材10に図9の背面基板1に有する間隙保持部材9の他端を位置合わせする。前面基板2の蛍光体の平均粒径は2乃至5μm程度、膜厚は10μm程度である。この上を覆って形成される陽極13は例えばアルミニウム薄膜(所謂、メタルバック)である。陽極13の膜厚は、陽極電圧が10kV程度の場合は70nm乃至100nm程度である。
【0045】
図11は背面基板と前面基板を外枠で貼り合わせた表示装置の要部を示す模式的断面図である。また、図12は図11の矢印Hの部分の拡大図である。間隙保持部材9の一端は背面基板1の隣接する板部材制御電極6の間で陰極配線5上に緩衝固着材10を介して植立し、その他端は前面基板2に有する蛍光体14の間にあるブラックマトリクス15の位置で陽極13上に有する緩衝固着材10で保持されている。この構成例では、1カラー画素(R,G,B)の組み毎に間隙保持部材9が設置されている。間隙保持部材9の設置数は、その強度に基づいて計算され、例えば100μm幅程度のガラスを用いる場合は35mm間隔程度、50μm幅程度のガラスを用いる場合は16mm間隔程度で配置すればよい。
【0046】
この状態で背面基板1と前面基板2が対向する方向に加圧しながら加熱し、降温することにより緩衝固着材10が間隙保持部材9を両基板の間で均一な応力がかかるように固定する。その後、排気工程、エージング工程を経て表示装置として完成される。本実施例により、背面基板1と前面基板2の間に板部材制御電極6を配置した表示装置に多数の間隙保持部材9を高精度で設置できる。また大気圧による応力が多数の間隙保持部材に対して均等にかかり、間隙保持部材や背面基板もしくは前面基板の破損が抑制されて高い信頼性をもつ表示装置を得ることができる。
【0047】
「実施例2」
上記第1実施例では、緩衝固着材10として組立て時に高弾性を有し焼成工程で消失するウレタン樹脂等の発泡性樹脂からなる高弾性材に接着剤を混合したものを使用した。このような焼成工程で消失する発泡性樹脂に代えて、短時間の高温加熱では消失しない耐熱性のアラミド系樹脂繊維等の弾性材に接着剤を混合した緩衝固着材を用いるのが本発明の第2実施例である。
【0048】
耐熱性のアラミド系樹脂の繊維(商品名:ケブラー等)を弾性材として用いる場合は、間隙保持部材9と背面基板1および/または前面基板2との間にアラミド系樹脂繊維のシートを敷き、その周囲および上方に低融点のフリットガラス等の接着剤を塗布する。あるいは、この接着剤を滲み込ませたアラミド系樹脂繊維のシートを間隙保持部材9と背面基板1および/または前面基板2との間に介挿する。以降の加圧と熱処理は前記と同様である。熱処理によりアラミド系樹脂繊維は固定部分で補強材として残る。
【0049】
本実施例によっても、背面基板1と前面基板2の間に板部材制御電極6を配置した表示装置に多数の間隙保持部材9を高精度で設置できる。また大気圧による応力が多数の間隙保持部材に対して均等にかかり、間隙保持部材や背面基板もしくは前面基板の破損が抑制されて高い信頼性をもつ表示装置を得ることができる。
【0050】
「実施例3」
図13は本発明による表示装置の第3実施例の説明図である。図13は間隙保持部材の設置構造の模式的に説明するもので、同図(a)は前面基板を取り去って示す背面基板の要部平面図、同図(b)は同図(a)のI−I’線の沿った断面図である。また、図14は図13に示した背面基板と間隙保持部材の植立構造の詳細説明図、図15は図14の矢印Kで示した部分の拡大図である。
【0051】
図中、6dは電子通過孔、前記実施例と同じ参照符号は同一機能部分に対応する。本実施例では、間隙保持部材9は板部材制御電極6の上を横断して陰極配線5の間に対応する位置に設置されている。板部材制御電極6を横断して間隙保持部材9を設置することにより、板部材制御電極6を構成する各帯状電極素子の間隔を強固に保持できるため、板部材制御電極6の位置変動や捩じれ等の変形発生が抑制される。本実施例では、緩衝固着材10として前記第1実施例と同様に、組立て時に高い弾性を有し焼成工程で消失するウレタン樹脂等の発泡性樹脂からなる高弾性材に接着剤を混合したものを使用した。
【0052】
また、図14および図15に示したように、板部材制御電極6の間隙保持部材9と接する部分は当該板部材制御電極6に画素毎に有する電子通過孔6d(1または複数個)の隣接間で、かつ板部材制御電極が背面基板に直接または絶縁層を介して接する部分とすることで板部材制御電極6を強固に押圧することができる
【0053】
本実施例の表示装置に用いる板部材制御電極は、陰極配線5と交差する部分に凹部6aを形成したもので、背面基板とは上記凹部6aを構成する凸部6bで接している。また、この凸部6bに対応する反対側(前面基板側)に切込み6cを有し、この切り込み6cに間隙保持部材9の一端を設置する。この切り込み6cの内壁に上方に開くテーパを付与しておくことで、間隙保持部材9に上方から圧力がかかったときの、当該間隙保持部材9の一端の位置をテーパで矯正するようにすることが望ましい。また、本実施例における前面基板2に塗布する接着剤または緩衝固着材10は、前記図10の方向でブラックマトリクス15上に設ける。
【0054】
そして、前面基板を背面基板に貼り合わせ、両基板側から均一加圧して間隙保持部材9にかる圧力を均等化する。間隙保持部材9はその後の焼成工程で溶融固化するフリットガラスで背面基板1に固定される。なお、この焼成工程でウレタン樹脂は消失する。このようにして背面基板1と前面基板2の間に圧力に対して均等な応力がかかるように間隙保持部材9を設置することができる。
【0055】
本実施例の他の構成および効果は前記実施例と同様である。本実施例によっても、背面基板1と前面基板2の間に板部材制御電極6を配置した表示装置に多数の間隙保持部材9を高精度で設置できる。また大気圧による応力が多数の間隙保持部材に対して均等にかかり、間隙保持部材や背面基板もしくは前面基板の破損が抑制されて高い信頼性をもつ表示装置を得ることができる。
【0056】
「実施例4」
上記第3実施例では、緩衝固着材10として組立て時に高い弾性を有し焼成工程で消失するウレタン樹脂等の発泡性樹脂からなる高弾性材に接着剤を混合したものを使用した。このような焼成工程で消失する発泡性樹脂に代えて、短時間の高温加熱では消失せず、補強材として残る耐熱性のアラミド系樹脂繊維等の弾性材に接着剤を混合した緩衝固着材を用いるのが本発明の第4実施例である。
【0057】
耐熱性のアラミド系樹脂の繊維(商品名:ケブラー等)を弾性材として用いる場合は、間隙保持部材9と背面基板1および/または前面基板2との間にアラミド系樹脂繊維のシートを敷き、その周囲および上方に低融点のフリットガラス等の接着剤を塗布する。あるいは、この接着剤を滲み込ませたアラミド系樹脂繊維のシートを間隙保持部材9と背面基板1および/または前面基板2との間に介挿する。以降の加圧、熱処理は前記と同様である。熱処理後にアラミド系樹脂繊維は補強材として残留する。
【0058】
本実施例によっても、背面基板1と前面基板2の間に板部材制御電極6を配置した表示装置に多数の間隙保持部材9を高精度で設置できる。また大気圧による応力が多数の間隙保持部材に対して均等にかかり、間隙保持部材や背面基板もしくは前面基板の破損が抑制されて高い信頼性をもつ表示装置を得ることができる。
【0059】
また、上記した第2および第4実施例において耐熱性樹脂繊維を設置した後にフリットガラス等の接着剤を塗布するものに代えて、先にフリットガラス等の接着剤を塗布してから耐熱性樹脂繊維を設置してもよい。この場合はフリットガラス等の接着剤が軟化するまで加熱した後、加圧する。
【0060】
さらに、上記の各実施例では、緩衝固着材10を背面基板1側と前面基板2側に設けるものを主として説明したが、この緩衝固着材10は両基板の一方の側のみに設けて、他方の側には接着剤のみを設ける構成としてもよい。
【0061】
「実施例5」
陰極配線の電子源から放出される電子がフォーカスされていないため、蛍光体を有する前面基板2側における緩衝固着層10また接着層を完全な絶縁体で構成すると電子が緩衝固着層10また接着層に帯電して残像やコントラスト低下の問題をもたらす。このような帯電の発生を回避するためには、緩衝固着層10また接着層に1011乃至1012Ω・cm程度の比抵抗を持たせればよい。本実施例では、緩衝固着層10また接着層に微量のATOなどの導電性粒子を混入した。また導電性物質に抵抗値をコントロールするフイラーを混入してもよい。
【0062】
このような抵抗値をコントロールする物質として、陰極線管等の表面処理に用いられているシリカコート液を用いることができる。シリカコートでは、高温に加熱することでゾル−ゲル反応により脱アルコール化し、ポリシロキサン結合を形成し、その中に前記の導電性粒子を取り込んで安定した導電性を得ることができる。これにより、高圧が印加される前面基板2の帯電対策が実現できる。さらに、上記の緩衝固着層10また接着層に遮光性を有する物質を混入することでブラックマトリクスBMの塗布工程で緩衝固着層10また接着層を形成できる。
【0063】
このとき、ブラックマトリクスBMの材料として、400°乃至450°で軟化する材料を用い、遮光性を付与するために酸化クロム(Cr23)、酸化鉄(Fe23)等の酸化物を添加すればよい。これにより、緩衝固着層10また接着層を設ける工程が削除でき、製造工程が削減され、コスト低下を図ることができる。
【0064】
本実施例により、背面基板1と前面基板2の間に板部材制御電極6を配置した表示装置に多数の間隙保持部材9をさらに高精度で設置できる。また大気圧による応力が多数の間隙保持部材に対して均等にかかり、間隙保持部材や背面基板もしくは前面基板の破損が抑制されて高い信頼性をもつ表示装置を得ることができる。
【0065】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の代表的な実施例によれば、平行する多数の帯状電極素子で構成した板部材制御電極を有する背面基板と蛍光体と陽極を有する前面基板の間に設置する間隙保持部材にかかる応力を略均一化でき、かつその組立てを正確に行うことができるので、当該間隙保持部材や背面基板、前面基板の破損を回避して高信頼性の表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 電界放出型の表示装置の概略構成の模式的説明図である。
【図2】 図1に示した表示装置を構成する背面板の構成例の模式的説明図である。
【図3】 本発明による表示装置の第1実施例の説明図である。
【図4】 図3(b)の部分の拡大図である。
【図5】 間隙保持部材の組立て治具の模式的説明図である。
【図6】 図5のD−D’線に沿った断面図である。
【図7】 図5の組立て治具に有するスリットの形状例の模式的説明図である。
【図8】 図7のスリットに間隙保持部材を所期位置合わせする状態を示す模式図である。
【図9】 間隙保持部材を固定した背面基板の構成を説明する模式図である。
【図10】 本発明の第1実施例における前面基板の構成例の模式的説明図である。
【図11】 図11は背面基板に前面基板を組み込んで一体化した表示装置の要部断面図である。
【図12】 図11の矢印H部分の拡大図である。
【図13】 本発明による表示装置の第3実施例の説明図である。
【図14】 図13に示した背面基板と間隙保持部材の植立構造の詳細説明図である。
【図15】 図14の矢印Kで示した部分の拡大図である。
【符号の説明】
1 背面基板
2 前面基板
3 外枠
4 排気管
5 陰極配線
6 板部材制御電極
7 電極押さえ部材
8 排気孔
9 間隙保持部材
10 緩衝固着層
11 第1治具
12 第2治具
13 陽極
14 蛍光体
15 遮光層(ブラックマトリクス)。

Claims (8)

  1. 陽極及び蛍光体を内面に有する前面基板と、
    電子源を表示領域内で内面に有して前記前面基板と所定の間隔をもって対向する背面基板と、
    前記前面基板と前記背面基板の間で前記表示領域を周回して介挿され、前記所定の間隙を保持する外枠と、
    前記前面基板と背面基板の間で前記表示領域内に植立挟持されて当該前面基板と背面基板を所定の間隔に保持する間隔保持部材とを具備し、
    前記前面基板と背面基板の少なくとも一方と前記間隔保持部材との間に焼成工程で消失する高弾性材に接着剤を混合した緩衝固着材を設けたことを特徴とする表示装置。
  2. 前記高弾性材は低温分解性発泡樹脂であることを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
  3. 前記低温分解性発泡樹脂はウレタンであることを特徴とする請求項2に記載の表示装置。
  4. 前記接着剤は低融点ガラスであることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の表示装置。
  5. 陽極及び蛍光体を内面に有する前面基板と、
    電子源を表示領域内で内面に有して前記前面基板と所定の間隔をもって対向する背面基板と、
    前記前面基板と背面基板の間で前記表示領域を周回して介挿され、前記所定の間隙を保持する外枠と、
    前記前面基板と背面基板の間で前記表示領域内に植立挟持されて当該前面基板と背面基板を所定の間隔に保持する間隔保持部材とを具備し、
    前記前面基板と背面基板の少なくとも一方と前記間隔保持部材との間に焼成工程後に存在する高弾性材に接着剤を混合した緩衝固着材を設けたことを特徴とする表示装置。
  6. 前記高弾性材は耐熱繊維であることを特徴とする請求項5に記載の表示装置。
  7. 前記耐熱繊維はアラミド系繊維であることを特徴とする請求項6に記載の表示装置。
  8. 前記接着剤は低融点ガラスであることを特徴とする請求項5乃至7の何れかに記載の表示装置。
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