JP3832708B2 - ウォータポンプの駆動装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、エンジン被冷却部に冷却水を送給するウォータポンプを、エンジンあるいは電動モータにより回転駆動するようにしたウォータポンプの駆動装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
シリンダジャケット等のエンジン被冷却部に冷却水を送給するウォータポンプは、通常、車両用等の中小型エンジンにおいては該エンジンに直結駆動され、大型エンジンにおいては別置きの電動モータにより駆動されている。
図3(A)はエンジンに直結駆動されるウォータポンプの一例を示し、図において10はウォータポンプ、11は該ウォータポンプの羽根車、013はポンプ室、16はポンプ軸、2は該ポンプ軸16に複数のボルト02にて固定されたプーリである。該プーリ2にはエンジンのクランク軸側のプーリとを連結するVベルトが架設されており、エンジンからの回転は前記Vベルトを介して前記プーリ2に伝達され、該プーリ2により前記ポンプ軸16及び羽根車11が回転駆動せしめられるようになっている。
図3(B)は電動モータにより駆動されるウォータポンプの一例を示し、図において1は電動モータであり、該電動モータ1の出力軸にウォータポンプ10のポンプ軸16が直結されている。
【0003】
また、特開平9−46970号には、ウォータポンプをエンジンに直結駆動するようにしたウォータポンプの駆動システムが開示されている。かかる技術においては、ウォータポンプの回転軸に固定されたプーリに、エンジンのクランク軸側のプーリとを連結するVベルトが架設され、エンジンからの回転を、前記Vベルトを介して前記プーリに伝達し、該プーリによりウォータポンプの回転軸及び羽根車が回転駆動される一方、該プーリ及びシャフトをオルタネータと共用化し、部品点数を低減して製造コストを低減すると共に、オルタネータの小型化を図った技術が開示されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、特開平9−46970号記載のように、エンジンからの回転を、Vベルトを介してプーリに伝達し、該プーリによりウォータポンプを回転駆動するものにあっては、エンジンの停止時にはこれに直結されたウォータポンプも停止するため、温水による暖房用のヒータの暖房性能が大幅に低下するという問題点を抱えている。
【0005】
また、図3(B)の技術のように、電動モータ1の出力軸にウォータポンプ10のポンプ軸16を直結して、該ウォータポンプ10を駆動するものにあっては、電動モータ1が故障した際にはウォータポンプ10が停止し、エンジンの冷却不良によるオーバーヒートの発生をみる。
【0006】
一方、寒冷地等の低温状態での運転では、冷却水温度が上昇し難く、必要な暖房性能が得られ難いという問題点を有している。
【0007】
本発明はかかる従来技術の課題に鑑み、エンジンの停止時においても、これに影響されることなく電動モータによるウォータポンプの運転を可能として、暖房用ヒータの暖房性能の低下を防止し、電動モータの故障時においてはエンジンによるウォータポンプの運転を可能として、エンジンのオーバーヒートの発生を防止するとともに、寒冷地等の低温状態での運転時に、常時所要の暖房性能を得ることができるウォータポンプの駆動装置を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明はかかる課題を解決するもので、エンジン被冷却部に冷却水を送給するウォータポンプを備えるとともに、エンジン側回転部材とポンプ側回転部材との間にエンジン側回転部材の回転数がポンプ側回転部材の回転数よりも大きいときにのみエンジン側からウォータポンプ側に動力伝達を行うワンウェイクラッチと、前記ポンプ側回転部材に連結されて前記ウォータポンプを回転駆動する電動モータとを設けたウォータポンプの駆動装置において、前記冷却水の温度を検出する水温(冷却水温度)検出手段をそなえるとともに、エンジンの運転状態、ヒータの運転状態及び大気状態に基づき設定された水温設定値と前記水温検出手段からの水温検出値とを比較する比較手段と、該比較手段における水温の比較結果に基づき前記水温設定値に対応する電動モータの回転数を算出するモータ回転数演算手段と、前記電動モータの回転数を該モータ回転数演算手段にて算出された回転数に制御するモータ回転数操作手段とを有するコントローラをそなえ、該コントローラはさらに水温の変化と電動モータの回転数の変化量との関係が設定されている水温/モータ回転数設定部を有し、前記モータ回転数演算手段では前記比較手段の水温比較結果を前記水温/モータ回転数設定部に適用して回転数変化量を求めて前記水温設定値に対応する電動モータの回転数を算出するように構成し、さらに前記電動モータはオルタネータと共用されていることを特徴とする。
【0009】
かかる発明によれば、エンジンの停止時にはウォータポンプ側とエンジン側とは、前記エンジン側回転部材とポンプ側回転部材との間に設けられたワンウェイクラッチによって遮断され、電動モータによりウォータポンプを駆動でき、これにより、エンジンの停止時にも、ウォータポンプは、電動モータの動力により支障なく運転されることとなり、該ウォータポンプの停止による温水暖房用ヒータの暖房性能低下の発生を防止でき、また、前記電動モータの故障により該電動モータからの動力が得られない場合には、エンジンの動力がワンウェイクラッチを介してウォータポンプに伝達され、該ウォータポンプをエンジンにより駆動することにより、電動モータに故障の発生があっても、ウォータポンプは支障無くエンジンにより駆動され、該ウォータポンプの停止により、エンジンの冷却不良及びこれに伴うオーバーヒートが発生するのを防止することができるのに加えて、次のような作用効果を相乗して得ることができる。
【0010】
すなわち、エンジンの運転状態、ヒータの運転状態及び大気状態に基づき設定された水温設定値と水温検出手段からの水温検出値との比較結果に基づき水温設定値に対応する電動モータの回転数を算出し、該電動モータを回転数算出値に制御するので、前記電動モータ及びこれに直結されているウォータポンプの回転数(動力)を、常時大気状態(外気温度等)、エンジンの運転状態及びヒータの所要暖房性能に適応した回転数で運転することができ、これにより、リーン運転を行うエンジンや、寒冷地等の低温状態での運転を行う際等において、エンジンのみによるウォータポンプの駆動ではヒータの所要暖房性能が得られない場合でも、電動モータによってウォータポンプを駆動して該ウォータポンプの流量を増大させることにより、常時所要の暖房性能を得ることができる。
また、水温設定値と水温検出値とを比較する比較手段からの水温偏差を、前記水温の変化と電動モータの回転数の変化量との関係が設定されている水温/モータ回転数設定部に適用して、水温設定値に対応する電動モータの回転数を算出して制御するので、電動モータ及びウォータポンプはエンジンの運転状態、ヒータの運転状態及び大気状態に適応した回転数で運転される。
さらに、前記電動モータはオルタネータと共用されているので、エンジンによりウォータポンプを駆動する時には充電を行なうと共に、エンジン停止時にはオルタネータ側から電力を供給してウォータポンプを駆動することができ、上記の常時所要の暖房性能を得る作用効果に加えて、部品点数を低減でき、スペース的にも有利となる。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を図に示した実施例を用いて詳細に説明する。但し、この実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは特に特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
【0012】
図1は本発明の実施形態に係る自動車用エンジンのウォータポンプの駆動装置の縦断面図、図2は電動モータの回転制御ブロック図である。
図1において、10はウォータポンプで次のように構成されている。
12はポンプケース、16は該ポンプケース12に回転自在に支持されたポンプ軸、11は該ポンプ軸16の軸端に固定された羽根車である。該羽根車11は前記ポンプケース12に形成された渦巻室13内に回転自在に収納されている。14は前記渦巻室13の前部に連通する水入口、15は前記渦巻室13の外周部に連通する水出口である。
【0013】
1は電動モータで、そのモータ出力軸4は前記ポンプ軸16に連結されている。2はプーリで、エンジンのクランク軸側のプーリ(図示省略)にVベルト等のベルト又はチェーン(図示省略)を介して連結されている。前記エンジン側の回転部材であるプーリ2とポンプ10側の回転部材であるモータ出力軸4との間にはワンウェイクラッチ3が介装されている。該ワンウェイクラッチ3は前記プーリ2側の回転数がモータ出力軸4側の回転数よりも大きい時にのみプーリ2側からモータ出力軸4側に動力を伝達可能とするもので、スプラグ型等の公知のワンウェイクラッチである。
【0014】
かかる構成からなるウォータポンプの駆動装置を備えた自動車用エンジンにおいて、該エンジンの運転時には、エンジンに連結されているプーリ2の回転数がウォータポンプ10側のモータ出力軸4の回転数よりも大きくなり、前記ワンウェイクラッチ3の作用によりエンジンの動力がプーリ2及びワンウェイクラッチ3を介してポンプ軸16に伝達される。そして、該ポンプ軸16とともに羽根車11が回転せしめられ、水入口14から渦巻室13に供給されている水を加圧し、水出口15からエンジンのシリンダジャケット等の被冷却部に送給する。これにより、ウォータポンプ10はエンジンで駆動される。
【0015】
スタート・ストップシステムが用いられている車両において、いわゆる信号待ち時等においてエンジンを停止している際には、電動モータ1を運転すると、該ウォータポンプ10側のモータ出力軸4の回転数がプーリ2の回転数よりも大きくなり、前記ワンウェイクラッチ3は空廻りしてプーリ2とモータ出力軸4との間の動力伝達系が遮断され、電動モータ1の動力がモータ出力軸4を経てポンプ軸16及び羽根車11に伝達される。これにより、ウォータポンプ10は電動モータ1で駆動される。
【0016】
かかる実施例においては、以上のように構成されているため、エンジンの停止時にはウォータポンプ10側とエンジン側とはワンウェイクラッチ3の作用によって動力伝達が行われず、電動モータ1によりウォータポンプ10が駆動される。これにより、エンジンの停止時にもウォータポンプ10は電動モータ1の動力により支障なく運転されることとなり、該ウォータポンプ10の停止による温水暖房用ヒータの暖房性能低下の発生は無い。
【0017】
また、前記電動モータ1の故障により該電動モータ1からの動力が得られない場合には、エンジンの動力がプーリ2及びワンウェイクラッチ3を介してウォータポンプ10に伝達され、該ウォータポンプ10はエンジンにより駆動される。これにより、電動モータ1に故障の発生があっても、ウォータポンプ10は支障無くエンジンにより駆動され、該ウォータポンプ10の停止によるエンジンの冷却不良、並びにこれに伴うオーバーヒートの発生が回避される。
【0018】
次に、本発明の実施例に係る自動車搭載ウォータポンプ駆動用電動モータの回転制御ブロック図を示す図2おいて、21は外気(大気)の温度を検出(計測)する外気温度検出器、22はエンジンの回転数を検出する回転検出器、23はエンジンの水温(冷却水温度)を検出する水温検出器である。
100は後述する制御演算を行うコントローラ、24は車内暖房用ヒータの所要性能(暖房温度、風量等)の設定値を前記コントローラ100に入力するヒータ設定値入力手段である。
【0019】
前記外気温度検出器21からの外気温度の検出値、回転検出器22からのエンジン回転数の検出値、及び前記ヒータ設定値入力手段24からの車内暖房用ヒータの性能(暖房温度、風量等)の設定値は、コントローラ100の水温設定値算出部25に入力される。該水温設定値算出部25においては、エンジンの運転状態(エンジン回転数等)、大気状態(外気温度等)の各検出値から前記ヒータの所要性能に対応する水温の基準値(設定値)を算出し、水温比較部26に入力する。
【0020】
該水温比較部26においては、前記水温検出器23から入力された現状運転状態における水温の検出値と前記水温設定値算出部25から入力された水温の基準値(設定値)とを比較して水温偏差を算出し、これをモータ回転数算出部28に入力する。
27は水温/モータ回転数設定部で、水温の変化と電動モータ1の回転数の変化量との関係が設定されている。
モータ回転数算出部28においては、前記水温比較部26から入力された水温偏差を前記水温/モータ回転数設定部27に突き合わせて、該水温偏差に対応する電動モータ1の目標回転数変化量を算出し、これをモータ操作部29に入力する。
【0021】
該モータ操作部29においては,前記電動モータ1を、その回転数が前記モータ回転数算出部28からの目標回転数変化量に基づいて操作する。これにより、前記電動モータ1及びウォータポンプ10は前記エンジンの運転状態、大気状態(外気温度等)、及び前記ヒータの所要性能に適応した回転数で運転されることとなる。
【0022】
以上のように、かかる実施例によれば、前記のような作用効果に加えて、エンジンの運転状態及びヒータの運転状態に基づき設定された水温設定値と水温検出器23からの水温検出値との比較結果に基づき水温設定値に対応する電動モータ1の回転数を算出し、該電動モータ1を回転数算出値に制御するので、電動モータ1及びこれに直結されているウォータポンプ10の回転数(動力)を、常時大気状態(外気温度等)、エンジンの運転状態及びヒータの所要暖房性能に適応した回転数で運転することができる。
【0023】
これにより、前記リーン運転を行うエンジンや、寒冷地等の低温状態での運転を行う際等において、エンジンのみによるウォータポンプ10の駆動ではヒータの所要暖房性能が得られない場合でも、前記のようにして、電動モータ1によってウォータポンプ10を駆動して該ウォータポンプ10の流量を増大させることにより、常時所要の暖房性能を得ることができる。
尚、電動モータをオルタネータと共用化してもよく、この場合、エンジンによりウォータポンプ10を駆動する時には充電を行なうと共に、エンジン停止時にはオルタネータ側から電力を供給してウォータポンプを駆動すれば、上記実施形態と同様の作用効果に加えて、部品点数を低減でき、スペース的にも有利となる。
【0024】
【発明の効果】
以上記載の如く本発明によれば、エンジンの停止時にはウォータポンプ側とエンジン側とをワンウェイクラッチによって遮断し、電動モータによりウォータポンプを駆動でき、これにより、エンジンの停止時にも、支障なくウォータポンプを電動モータの動力により運転することができ、該ウォータポンプの停止による温水暖房用ヒータの暖房性能低下の発生を防止することができるとともに、前記電動モータの故障により該電動モータからの動力が得られない場合には、エンジンの動力を、ワンウェイクラッチを介してウォータポンプに伝達してこれを駆動できるので、電動モータに故障の発生があっても、ウォータポンプは支障無くエンジンにより駆動され、該ウォータポンプの停止によるエンジンの冷却不良及びこれに伴うオーバーヒートの発生を防止することができ、さらには、電動モータ及びウォータポンプの回転数を、常時冷却水温度、エンジンの運転状態及びヒータの所要暖房性能に適応した回転数で運転することができ、これにより、ヒータの所要暖房性能が得られない場合でも、前記電動モータの回転数制御により、該ウォータポンプの流量を増大させることにより、常時所要の暖房性能を得ることができる。
また、水温設定値と水温検出値とを比較する比較手段からの水温偏差を、前記水温の変化と電動モータの回転数の変化量との関係が設定されている水温/モータ回転数設定部に適用して、水温設定値に対応する電動モータの回転数を算出して制御するので、電動モータ及びウォータポンプはエンジンの運転状態、ヒータの運転状態及び大気状態に適応した回転数で運転される。
さらに、前記電動モータはオルタネータと共用されているので、エンジンによりウォータポンプを駆動する時には充電を行なうと共に、エンジン停止時にはオルタネータ側から電力を供給してウォータポンプを駆動することができ、上記の常時所要の暖房性能を得る作用効果に加えて、部品点数を低減でき、スペース的にも有利となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施形態の第1実施例に係る自動車用エンジンのウォータポンプの駆動装置の縦断面図である。
【図2】 第2実施例に係る電動モータの回転制御ブロック図である。
【図3】 従来技術にかかるウォータポンプの駆動装置の縦断面図である。
【符号の説明】
1 電動モータ
2 プーリ
3 ワンウェイクラッチ
4 モータ出力軸
10 ウォータポンプ
11 羽根車
12 ポンプケース
13 渦巻室
16 ポンプ軸
21 外気温度検出器
22 回転検出器
23 水温検出器
24 ヒータ設定値入力手段
25 水温設定値算出部
26 水温比較部
27 水温/モータ回転数設定部
28 モータ回転数算出部
29 モータ操作部
30 ワンウエイクラッチ
100 コントローラ

Claims (1)

  1. エンジン被冷却部に冷却水を送給するウォータポンプを備えるとともに、エンジン側回転部材とポンプ側回転部材との間にエンジン側回転部材の回転数がポンプ側回転部材の回転数よりも大きいときにのみエンジン側からウォータポンプ側に動力伝達を行うワンウェイクラッチと、前記ポンプ側回転部材に連結されて前記ウォータポンプを回転駆動する電動モータとを設けたウォータポンプの駆動装置において、
    前記冷却水の温度を検出する水温(冷却水温度)検出手段をそなえるとともに、エンジンの運転状態、ヒータの運転状態及び大気状態に基づき設定された水温設定値と前記水温検出手段からの水温検出値とを比較する比較手段と、該比較手段における水温の比較結果に基づき前記水温設定値に対応する電動モータの回転数を算出するモータ回転数演算手段と、前記電動モータの回転数を該モータ回転数演算手段にて算出された回転数に制御するモータ回転数操作手段とを有するコントローラをそなえ、該コントローラはさらに水温の変化と電動モータの回転数の変化量との関係が設定されている水温/モータ回転数設定部を有し、前記モータ回転数演算手段では前記比較手段の水温比較結果を前記水温/モータ回転数設定部に適用して回転数変化量を求めて前記水温設定値に対応する電動モータの回転数を算出するように構成し、さらに前記電動モータはオルタネータと共用されていることを特徴とするウォータポンプの駆動装置。
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