JP3832310B2 - プラズマディスプレイパネル - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、表示デバイスなどに用いるプラズマディスプレイパネルに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来のプラズマディスプレイパネル(以下、PDPという)は、図3に示すような構成のものが一般的である。図3のように、PDP1は、前面パネル2と背面パネル3とから構成され、そして前面パネル2は、前面ガラス基板11上に走査電極12a、維持電極12bを交互にストライプ状に形成し、さらにそれを絶縁層としての誘電体ガラス層13および酸化マグネシウム(MgO)からなる保護層14により覆うことにより形成されたものである。
【0003】
背面パネル2は、背面ガラス基板21上に、ストライプ状にアドレス電極22を形成し、これを覆うように電極保護層23を形成するとともに、アドレス電極22を挟むように電極保護層23上にストライプ状に隔壁24を形成し、そして隔壁24間に蛍光体層25を設けることにより形成されたものである。そして、このような前面パネル1と背面パネル2とを対向配置して周辺部を封着し、隔壁24で仕切られた空間4に放電ガスを封入することで放電空間が形成される。前記蛍光体層はカラー表示のために通常、赤、緑、青の3色の蛍光体層が順に配置されている。
【0004】
そして、放電空間4内には、例えばネオンおよびキセノンを混合してなる放電ガスが通常、0.67×105Pa程度の圧力で封入されている。
【0005】
次に、PDPの駆動方式について説明する。図4はPDPの駆動回路の構成を示したブロック図であり、この駆動回路は、アドレス電極駆動部31と、走査電極駆動部32と、維持電極駆動部33とから構成され、PDPのアドレス電極22にアドレス電極駆動部31が接続され、走査電極12aに走査電極駆動部32が接続され、維持電極12bに維持電極駆動部33が接続されている。
【0006】
一般に交流型のプラズマディスプレイパネルでは1フレームの映像を複数のサブフィールド(SF)に分割することによって階調表現をする方式が用いられている。そして、この方式ではセル中の気体の放電を制御するために1SFを更に4つの期間に分割する。この4つの期間について図5を使用して説明する。図5は、1SF中の駆動波形である。
【0007】
この図5において、セットアップ期間では放電を生じやすくするためにPDP内の全セルに均一的に壁電荷を蓄積させる。アドレス期間では点灯させるセルの書き込み放電を行なう。サステイン期間では前記アドレス期間で書き込まれたセルを点灯させその点灯を維持させる。イレース期間では壁電荷を消去させることによってセルの点灯を停止させる。
【0008】
セットアップ期間では走査電極12aにアドレス電極22および維持電極12bに比べ高い電圧を印加し、セル内の気体を放電させる。それによって発生した電荷はアドレス電極22、走査電極12aおよび維持電極12b間の電位差を打ち消すようにセルの壁面に蓄積されるので、走査電極12a付近の保護膜表面には負の電荷が壁電荷として蓄積され、またアドレス電極付近の蛍光体層表面および維持電極付近の保護膜表面には正の電荷が壁電荷として蓄積される。この壁電荷により走査電極−アドレス電極間、走査電極−維持電極間には所定の値の壁電位が生じる。
【0009】
アドレス期間ではセルを点灯させる場合には走査電極12aにアドレス電極22および維持電極12bに比べ低い電圧を印加させることにより、つまり走査電極−アドレス電極間には前記壁電位と同方向に電圧を印加させるとともに、走査電極−維持電極間に壁電位と同方向に電圧を印加させることにより書き込み放電を生じさせる。これにより蛍光体層表面、保護層表面には負の電荷が蓄積され走査側電極付近の保護層表面には正の電荷が壁電荷として蓄積される。これにより維持−走査電極間には所定の値の壁電位が生じる。
【0010】
サステイン期間では走査電極12aに維持電極12bに比べ高い電圧を印加させることにより、つまり維持電極−走査電極間に前記壁電位と同方向に電圧を印加させることにより維持放電を生じさせる。これによりセル点灯を開始させることができる。そして、維持電極−走査電極交互に極性が入れ替わるようにパルスを印加することにより断続的にパルス発光させることができる。
【0011】
イレース期間では、幅の狭い消去パルスを維持電極12bに印加することによって不完全な放電が発生し、壁電荷が消滅するため消去が行なわれる。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、セル構造の高精細化に伴って走査線数が増加するためにテレビ映像を表示する場合には1フィールド=1/60[s]内で全てのシーケンスを終了させる必要がある。これに応えるには、書き込み期間に印加するアドレスパルスのパルス幅を狭くして高速駆動を行なう必要があるが、パルスの立ち上がりからかなり遅れて放電が行なわれるという「放電遅れ」が存在するために、印加されたパルス幅内で放電で終了する確率が低くなり、本来点灯すべきセルに書き込みなどができずに点灯不良が生じてしまう。
【0013】
本発明は上記問題点に鑑みてなされた発明であって、「放電遅れ」を防止するのに効果的な構造を備えたプラズマディスプレイパネルを提供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
このような課題を解決するために本発明においては、保護層をホウ素(B)を含む酸化マグネシウム(MgO)により構成し、かつ前記保護層において、酸化マグネシウムに含まれるホウ素の濃度は、500〜20000ppmの範囲としたしたものである。
【0015】
【発明の実施の形態】
まず、放電遅れは、放電が開始される際にトリガーとなる初期電子が基板表面から放電空間中に放出されにくいことが主要な要因として考えられている。
【0016】
従って、この初期電子が放出されやすい状況を作り出すことができれば、放電遅れを効果的に防止することができると考えられる。
【0017】
このための方法として、アドレス時・放電維持時の駆動パルス電圧を上昇させるか、あるいは電極間距離を短縮する方法が考えられる。しかし、パルス電圧の増加は、駆動回路のスイッチング素子の耐圧のスルーレートとが相反する関係にあるため、高耐圧素子ではパルスの立ち上がりが鈍り、放電遅れ時間の抑制には限界がある。また、電極間距離を短縮することは、同時に隔壁の高さを低下させることになるが、このように隔壁の高さを低下させれば放電空間そのものが縮小し、プラズマを取り囲む単位体積あたりの放電空間を囲う壁の面積が増加するため、プラズマが壁面に衝突した際に消滅してしまうといういわゆる壁面損失によって効率が低下することとなる。
【0018】
従って、本発明者らは、このように駆動回路の構成や、電極間の距離には変更を加えず従来のものを踏襲したとしても、放電遅れを防止することができるパネル構造を模索した結果、本発明に想到した。
【0019】
つまり、上記目的を達成するために本発明は、基板上に形成した電極を絶縁層で覆うとともに、その絶縁層を保護層で覆ったプラズマディスプレイパネルであって、前記保護層をホウ素を含む酸化マグネシウムにより構成し、かつ前記保護層において、酸化マグネシウムに含まれるホウ素の濃度は、500〜20000ppmの範囲としたことを特徴とする。
【0021】
本発明において、この保護層を形成する方法としては、ペレット状のMgOと、ペレット状またはパウダ状のホウ素化合物を混合し、これを同時に加熱する蒸着方法によってMgOによる保護層を形成する方法である。また、パウダ状のMgOと、パウダ状のホウ素化合物を混合した焼結体を用意し、これを加熱する蒸着方法によってMgOによる保護層を形成する方法もある。さらに、蒸着方法に代えて、スパッタリング方法によってMgOによる保護層を形成してもよい。
【0022】
さらに、MgOよりなるターゲット材を入れる原材料容器をBまたはAlを含む材料により構成し、蒸着することによっても形成することができる。勿論、BおよびAlの両方を含む材料により容器を構成してもよい。
【0023】
また、上述した本発明によるプラズマディスプレイパネルの保護層を形成する酸化マグネシウム原材料としては、500〜20000ppmの濃度範囲のBを含む酸化マグネシウム原材料を用いればよい。
【0024】
これにより、アドレス放電や維持放電のためのトリガー電子が放出され易くなるので、アドレス放電や維持放電の際の放電遅れを抑えることができ、電圧印加に対する放電の発生の応答性を改善して、良好な画像を表示することが可能となる。
【0025】
以下、本発明の一実施の形態によるAC型のPDPについて図面を参照しながら具体的に説明する。なお、本発明によるPDPの構成は図3に示すものと同じであり、説明を省略するが、本発明においては保護層14として、MgO以外に他の元素、すなわちB、Alを一定の濃度で含む材料により構成したものである。
【0026】
このように保護層14において、MgOに不純物元素であるB、Alを含むことによって、保護層14からのトリガー電子の放出特性が向上し、その結果、アドレス放電や維持放電の際の放電遅れを抑えることができ、電圧印加に対する放電の発生の応答性を改善して、良好な画像を表示することが可能となる。
【0027】
このように不純物元素としてB、Alを保護層14にドープすることによって電子放出特性が向上する理由については不明であるが、仮説として、不純物の存在により保護層MgOのバンドギャップに局在準位を形成し、この準位の電子があるため同じ励起エネルギーでも伝導帯への電子放出能力が向上すると考えられる。
【0028】
このとき、不純物Bの濃度は500〜20000ppmの範囲内、また不純物Alの200〜10000ppmの範囲内であることが望ましい。これはこれら不純物の濃度を変化させて作製したMgO膜を使用して視認評価を行なった結果から、濃度領域を決定したものである。この観察結果を図1および図2に示す。この図1、図2は不純物を添加していないMgO膜を使用したPDPの画像表示レベルを基準とし、そこからBまたはAlの不純物を添加することによって、どの程度、表示品位が向上したかを示すものである。
【0029】
次に、PDPの製造方法について説明する。
【0030】
前面パネルは、まず、前面ガラス基板上に走査電極、維持電極を交互に配列するように形成する。
【0031】
走査電極、維持電極は、金属電極であって、白金を電子ビーム蒸着法によって成膜した後、リフトオフ法によってパターニングすることによって形成される。なお、ITOなどの透明電極と金属電極の対により各走査電極および維持電極とを形成してもよい。
【0032】
次に、前記走査電極および維持電極を覆うように、誘電体ガラス層をスクリーン印刷法などの公知の印刷法によって印刷後焼成することによって形成する。
【0033】
次に、誘電体ガラス層表面に保護層を形成する。具体的には、誘電体ガラス層の表面にMgO薄膜を電子ビーム蒸着法によって析出させることにより形成する。このとき蒸着源としては上記に規定した濃度の不純物B、Alを混合したMgO蒸着源を用いる。
【0034】
またその他の製造方法としては、ペレット状のMgOと、ペレット状またはパウダ状のB化合物、およびペレット状またはパウダ状のAl化合物のうちの少なくとも一方とを混合して同時に加熱する蒸着方法や、またはパウダ状のMgOと、パウダ状のB化合物、およびパウダ状のAl化合物のうちの少なくとも一方とを混合した焼結体を加熱する蒸着方法や、またはパウダ状のMgOと、パウダ状のB化合物、およびパウダ状のAl化合物のうちの少なくとも一方とを混合した焼結体をターゲットとしてスパッタリング方法による作製方法などがある。
【0035】
さらには、上述したように蒸着装置内の蒸着源の原材料容器にこれらB、Alを混合させることによって、成膜の際にこれら不純物元素を混入させる手法によっても同様な保護層を形成することができる。
【0036】
背面パネルは、背面ガラス基板上にアドレス電極を形成し、その上を電極保護層で覆い、この電極保護層の表面に隔壁を形成し、その後、蛍光体層を形成することによって作製する。
【0037】
アドレス電極は、背面ガラス基板上に前記走査電極、維持電極と同様の方法にて作製する。
【0038】
電極保護層は、アドレス電極の上にスクリーン印刷法などの印刷法を用いて印刷した後、焼成することによって形成されたもので、前記誘電体ガラス層と同じようなガラスの組成物に、酸化チタン(TiO2)粒子を含有させた薄膜である。
【0039】
隔壁は、スクリーン印刷法、リフトオフ法、あるいはサンドブラスト法等の方法で隔壁形成原料を塗布した後、これを焼成し、その後隔壁頂部に加工処理を施すことによって形成されたものである。
【0040】
蛍光体層は、スクリーン印刷法、ノズル噴霧法などの方法によって形成されたものである。なお、蛍光体には、赤色、緑色、青色の3色を用いる。そして、例えば、以下のものを用いることができる。
【0041】
赤色蛍光体 : Y2O3:Eu3+
緑色蛍光体 : Zn2SiO4:Mn2+
青色蛍光体 : BaMgAl10O17:Eu2+
次に、前面パネルと背面パネルとを走査電極、維持電極とアドレス電極とが直交する状態に位置合わせして両パネルを対向配置し、周辺部を封着部材で封着する。その後、隔壁に仕切られた放電空間内に放電ガス、例えばHe−Xe系、Ne−Xe系の不活性ガスを所定の圧力で封入することにより完成品となる。
【0042】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、MgOにホウ素(B)、アルミニウム(Al)の少なくとも一方を含む材料により保護層を形成したもので、これによりアドレス放電や維持放電のためのトリガー電子が放電され易くなり、アドレス放電や維持放電の際の放電遅れを抑えることができ、電圧印加に対する放電の発生の応答性を改善して、良好な画像を表示することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明において、B濃度に対する画像表示レベルの向上度合いを示す図
【図2】本発明において、Al濃度に対する画像表示レベルの向上度合いを示す図
【図3】プラズマディスプレイパネルを示す斜視図
【図4】プラズマディスプレイパネルと駆動回路との接続状態を示すブロック図
【図5】プラズマディスプレイパネルの駆動波形を示すタイムチャート
【符号の説明】
2 前面パネル
3 背面パネル
11 前面ガラス基板
12a 走査電極
12b 維持電極
13 誘電体ガラス層
14 保護層
Claims (6)
- 基板上に形成した電極を絶縁層で覆うとともに、その絶縁層を保護層で覆ったプラズマディスプレイパネルであって、前記保護層をホウ素を含む酸化マグネシウムにより構成し、かつ前記保護層において、酸化マグネシウムに含まれるホウ素の濃度は、500〜20000ppmの範囲としたことを特徴とするプラズマディスプレイパネル。
- ペレット状の酸化マグネシウムと、ペレット状またはパウダ状のホウ素化合物を混合し、これを同時に加熱する蒸着方法によって酸化マグネシウムによる保護層を形成することを特徴とする請求項1に記載のプラズマディスプレイパネルの製造方法。
- パウダ状の酸化マグネシウムと、パウダ状のホウ素化合物を混合した焼結体を用意し、これを加熱する蒸着方法によって酸化マグネシウムによる保護層を形成することを特徴とする請求項1に記載のプラズマディスプレイパネルの製造方法。
- 蒸着方法に代えて、スパッタリング方法によって酸化マグネシウムによる保護層を形成することを特徴とする請求項3に記載のプラズマディスプレイパネルの製造方法。
- 酸化マグネシウムよりなるターゲット材を入れる原材料容器をホウ素含む材料により構成し、酸化マグネシウムによる保護層を形成することを特徴とする請求項1に記載のプラズマディスプレイパネルの製造方法。
- プラズマディスプレイパネルの保護層を形成するプラズマディスプレイパネル用酸化マグネシウム原材料であって、500〜20000ppmの濃度範囲のホウ素を含むことを特徴とするプラズマディスプレイパネル用酸化マグネシウム原材料。
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