JP3831890B2 - スリップフォーム工法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、煙突、サイロ、ビルなどの塔状構造物を構築するためのスリップフォーム工法の技術分野に属する。
【0002】
【従来の技術】
スリップフォーム工法は、分割された門型構造からなるスリップフォーム型枠を、構築しようとする躯体壁面に沿って配置するとともに、スリップフォーム型枠を躯体に埋設したロッドで支持させ、油圧ジャッキでロッドを支柱として徐々にスライドアップさせながらスリップフォーム型枠内にコンクリートを打設し、塔状鉄筋コンクリート構造物を構築する工法である。
【0003】
この塔状構造物の施工管理においては、筒体の高さ、中心位置(倒れ)、筒体回転量、半径、壁圧の5項目を迅速に測定する必要がある。この測定を行う場合に、本出願人が特開平4−69515号公報により提案した鉛直度測定システムを採用することが考えられる。この測定システムは、地上面の既知座標に固定される回転台と、該回転台に配設されレーザを鉛直方向に投光する発光部と、被測定物の頭部に固定される受光部と、コントローラとを備え、地上面の既知座標を測定フロア上に移動させ、測定フロア上の被測定物の位置を測定するシステムである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、スリップフォーム型枠を用いる塔状構造物の施工管理においては、スリップフォーム型枠のスライドアップ毎に型枠の変形状況を迅速に確認し、塔状構造物構築時のサイクルタイムを乱すことなく、型枠の修正作業に迅速にフィードバックさせる必要がある。しかしながら、上記従来の測定システムをスリップフォーム工法に適用する場合には、レーザ発光部、受光部およびコントローラを複数組(2〜4組)設ける必要があり、これら複数の位置を同時計測するためには、複数の人間が同時に計測開始ボタンを押さなければならず、また、複数位置の測定データの整理作業に時間がかかるという問題を有している。
【0005】
本発明は、上記従来の問題および課題を解決するものであって、スリップフォーム型枠の複数の位置を1人で同時に自動計測可能にするとともに、型枠の修正作業を容易に行うことができるような情報を提供し施工精度の向上を図ることができるスリップフォーム工法における測量システムおよび該測量システムを用いたスリップフォーム工法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明のスリップフォーム工法は、構築すべき塔状構造物にスリップフォーム型枠を壁面に沿って配置し、スリップフォーム型枠をスライドアップさせながら型枠内にコンクリートを打設するスリップフォーム工法において、塔状構造物内の基盤上に設置される複数のレーザ発光手段と、これら複数のレーザ発光手段の鉛直線方向にスリップフォーム型枠に設置される複数のX、Y方向の位置検出用のフォトダイオードマトリックスで構成される受光手段と、前記レーザ発光手段から発振されるレーザを回転させ、受光手段でレーザ発光手段から発振されるレーザを複数回測定し、各受光手段の検知信号の平均値により各測定点の位置座標を算出する位置座標算出する手段と、算出された位置座標とレーザ発光手段の既知座標とを比較し各測定点の位置座標および回転量並びに塔状構造物の中心位置の変位量を演算する変位量演算手段と、演算された変位量を表示する変位量表示手段とを備えた測量システムを用い、変位量が所定値を越えた場合に、スリップフォーム型枠の修正作業を行い、さらに、塔状構造物内部に構築した測量架台上に設置した3次元測量装置とスリップフォーム型枠に設置した複数のミラーによりスリップフォーム型枠の精密測量を行い、その測定結果を型枠修正のための前記測量システムにフィードバックすることを特徴とする。
以上
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。図1は、本発明のスリップフォーム工法における測量システムの1実施形態を示す構成図である。
【0008】
塔状構造物1の上部には、壁面に沿ってスリップフォーム型枠2(便宜上円周で示す)が設置されている。塔状構造物1内の基盤3上には、4つのレーザ発光手段4が設置される。設置条件は、対向するレーザ発光手段4を結ぶ直線の中点が塔状構造物1の中心になるように設置することである。
【0009】
一方、スリップフォーム型枠2には、4つのレーザ発光手段4の鉛直線方向に対向するように受光手段5が取り付けられている。各受光手段5で得られた検知信号は、コントローラ6の位置検出手段6aに送られ、ここで、各測定点の位置座標が算出される。算出された位置座標は、パソコン7の変位量演算手段7aにおいてレーザ発光手段4の既知座標と比較され、各測定点の変位量が演算され、演算された変位量の値は、CRT画面やプリンタ等からなる変位量表示手段7bに出力される。そして、この変位量に基づいて、変位量修正手段8においてスリップフォーム型枠の修正が行われる。修正方法は、ロッドや油圧ジャッキ、ヨークの傾き調整等、周知の方法を採用する。
【0010】
なお、塔状構造物1の内部には測量架台9が構築され、測量架台9上にトータルステーション(光波測距儀による3次元測量装置)10およびパソコン10’が設置されている。トータルステーション10およびパソコン10’は、スリップフォーム型枠2の複数箇所に設置されたミラー11を視準して精密測量を行うためのシステムである。
【0011】
図2は、図1で説明したレーザ発光手段4と受光手段5を説明するための断面図である。スリップフォーム型枠2は、門型構造からなるヨーク2aと、ヨーク2aに形成された内側作業床2b、外側作業床2c、上部作業床2dおよび型枠2e、2fを備え、ヨーク2aは、塔状構造物1に埋設したロッド12で支持され、油圧ジャッキ13でロッド12を支柱として徐々にスライドアップさせながら型枠2e、2f内にコンクリートを打設していく。内側作業床2bの下面には受光手段5が取り付けられ、内側作業床2b上にはコントローラ6およびパソコン7が設置され、また、ミラー(又はプリズム)11が図示矢印に示すように傾斜可能に設けられている。
【0012】
レーザ発光手段4は、ベース台4a、回転台4b、不可視光レーザ発振器4cとから構成される。ベース台4aは予め墨出しされた位置に回転台4bを固定するための治具であり、回転台4bは、レーザ発振器4cの下部に取り付けたセンサにより、予め設定された回転数で一方向に回転する構造になっている。回転台4bは、鉛直方向の測定精度を補正するものであり、ベース台4aの位置ずれによりレーザ発振器4cからの発光位置がずれていても、また、レーザ光が長い距離の間に真の鉛直線からずれることもあり、この場合、回転台4bを1回転、または2回転以上回転させることにより鉛直方向の真の位置を決定するためのものである。
【0013】
レーザ発光手段4により回転しながら発振されたレーザは上部の受光手段5で総計256回(もしくは126回)測定され、平均値を算出しレーザ発振位置を測定する。受光手段5は、可視光遮断フィルタを有し、X、Y方向の位置検出用のフォトダイオードマトリックスにて構成され、所定の時間、レーザ光の軌跡をサーチすることにより、揺れ幅、レーザ光の輝度、測定領域等の計測パラメータを算出し、デジタルデータをコントローラ6へ送信する。また、受光手段5で得られたデータは所定周期毎にコントローラ6へ送信される。
【0014】
図3は、スリップフォーム工法による塔状構造物の管理精度の例を示している。塔状構造物の施工管理項目は、スリップフォーム型枠の半径、壁厚、塔状構造物とスリップフォーム型枠との芯ずれ、回転(ねじれ)、レベル(高さ)の5項目であり、概ね管理値を許容精度の1/2と定め、スリップフォーム施工中に、この値を越えると修正作業を行う。
【0015】
上記5項目の精度を測定するために、本実施形態においては、図4に示すように、成形精度確認のための計測と滑動(スライド)中の修正のための計測との2本立ての測量を実施するが、本発明はとくに後者の測量に特徴を有している。
【0016】
前者の成形精度確認のための計測は1回/1日行われ、図1に示すように、スリップフォーム型枠2の内側30点にミラー11を設置し、その座標位置(x、y、z)をトータルステーション10により測定し、これを携帯パソコンに送信し、現在打設中の塔状構造物の高さ、芯ずれ、回転角、半径を求め、また、コンベックスにより壁厚を測定する。
【0017】
後者の型枠修正のための測量は、レーザ発光手段4、受光手段5(VL装置)を用いてスリップフォーム型枠2の4点について芯ずれと回転角を計測するもので、通常はスライドアップ毎に1回行い、型枠修正時は確認できる頻度で適宜行う。高さは型枠の1点についてスチールテープにより計測する。なお、これら計測値は、トータルステーション10での精密測量の測定結果と比較され、型枠修正のための測量にフィードバックされる。
【0018】
図5は、計測すべき芯ずれと回転角を説明するための図である。塔状構造物1の底部の中心位置Oを通る鉛直線Vに対して、鉛直線Vを含むX平面と、X平面に直角なY平面が設定され、スリップフォーム型枠2の中心位置O’を通る鉛直線V’に対して、鉛直線V’を含むX’平面と、X’平面に直角なY’平面が設定され、スリップフォーム型枠2が変形した場合の中心位置の芯ずれδと回転角θを測定する。
【0019】
図6〜図8は、図1の変位量表示手段7bにおいて表示される表示面の例を示している。図6においては、塔状構造物1の既知座標(レーザ発光手段4の位置)A、B、C、Dに対するスリップフォーム型枠2の測定点A’、B’、C’、D’および中心の位置座標(X、Y)、回転角(回転量)θ、芯ずれδの量が表示されている。なお、測定点の座標は接線方向がX座標である。これらの変形量に基づいてスリップフォーム型枠2を容易に修正することが可能となる。
【0020】
図7においては、B点での回転角θBの管理図が示され、図8においては芯ずれδ量の管理図が示されている。これらの管理図から測定値が管理値を越えた場合にスリップフォーム型枠2の修正作業を行うことになる。以上の変形量のデータおよび管理データは、1分/回程度で迅速に提供され、型枠修正作業を行うか否かの判断はもとより、型枠修正中の位置の確認を迅速に行うことができ、型枠の修正作業を容易に行うことができ、施工精度の向上を図ることができる。
【0021】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく種々の変更が可能である。例えば、上記実施形態においては、スリップフォーム型枠修正のための測量を4点について計測しているが、これに限定されるものではなく、2点以上を測定すればよい。
【0022】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、スリップフォーム型枠の複数の位置を1人で同時に自動計測可能にするとともに、同時計測データをもとにスリップフォーム型枠の芯ずれ量、回転量、中心座標値が出力されるため、型枠の修正作業を容易に行うことができ、施工精度の向上を図ることができる。また、これに加えて三次元測量装置と組み合わせることにより、高精度かつ手間の少ない施工管理が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のスリップフォーム工法における測量システムの1実施形態を示す構成図である。
【図2】図1で説明したレーザ発光手段と受光手段を説明するための断面図である。
【図3】スリップフォーム工法による塔状構造物の管理精度の例を示す図である。
【図4】本発明に係わる測量方法を説明するための図である。
【図5】計測すべき芯ずれと回転角を説明するための図である。
【図6】図1の変位量表示手段において表示される表示画面の例を示す図である。
【図7】図1の変位量表示手段において表示される表示画面の例を示す図である。
【図8】図1の変位量表示手段において表示される表示画面の例を示す図である。
【符号の説明】
1…塔状構造物
2…スリップフォーム型枠
3…基盤
4…レーザ発光手段
5…受光手段
6a…位置座標算出手段
7a…変位量演算手段
7b…変位量表示手段
Claims (1)
- 構築すべき塔状構造物にスリップフォーム型枠を壁面に沿って配置し、スリップフォーム型枠をスライドアップさせながら型枠内にコンクリートを打設するスリップフォーム工法において、塔状構造物内の基盤上に設置される複数のレーザ発光手段と、これら複数のレーザ発光手段の鉛直線方向にスリップフォーム型枠に設置される複数のX、Y方向の位置検出用のフォトダイオードマトリックスで構成される受光手段と、前記レーザ発光手段から発振されるレーザを回転させ、受光手段でレーザ発光手段から発振されるレーザを複数回測定し、各受光手段の検知信号の平均値により各測定点の位置座標を算出する位置座標算出する手段と、算出された位置座標とレーザ発光手段の既知座標とを比較し各測定点の位置座標および回転量並びに塔状構造物の中心位置の変位量を演算する変位量演算手段と、演算された変位量を表示する変位量表示手段とを備えた測量システムを用い、変位量が所定値を越えた場合に、スリップフォーム型枠の修正作業を行い、さらに、塔状構造物内部に構築した測量架台上に設置した3次元測量装置とスリップフォーム型枠に設置した複数のミラーによりスリップフォーム型枠の精密測量を行い、その測定結果を型枠修正のための前記測量システムにフィードバックすることを特徴とするスリップフォーム工法。
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