JP3831585B2 - 連続鋳造用冷却ドラム及びその使用方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、金属薄板を連続的に鋳造するドラム式連続鋳造機の冷却ドラムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
図7は、一般的なドラム式連続鋳造機の斜視図である。
これによれば、互いに反対方向(図の矢印方向)に回転する一対の冷却ドラム1,1とサイド堰2,2とによって形成された湯溜りに、溶融金属(溶湯)3を供給し、冷却ドラム1,1の表面に接触させて冷却することにより、凝固シェルを形成させて薄帯鋳片(金属薄板)4が鋳造される。
【0003】
図8は、一対の冷却ドラムの表面が最も接近するキッシングポイントでの冷却ドラムの端部とサイド堰の摺動部を示す、図7のVIII−VIII矢視拡大断面図である。
一対の冷却ドラム1,1の端面1a,1aはサイド堰2に装着されたセラミックス板5と摺動し、かつ一対の冷却ドラム1,1の表面の端縁部1b,1bで溶湯3をシールし、湯溜まり外部へ溶湯3が漏れ出すのを防止している。この時、一対の冷却ドラム1,1の端面1a,1aは互いに軸方向(ドラム軸心方向)の相対ずれが無く、セラミックス板5と面で接触しなくてはならない。
【0004】
前記のような冷却ドラム1の従来の内部構造を図6に示す(特開平7−290204号公報等参照)。冷却ドラム1は、その剛性を高くするために、外側の銅合金製のドラムスリーブ10を内側から鋼製のドラム本体11で支持する構造となっている。前記ドラム胴体11は、中空軸部11aを一体形成した一対のシャフト部材11Aと、これらシャフト部材11A間に位置して当該シャフト部材11Aにボルト12で結合されると共に前記ドラムスリーブ10の内周面に焼き嵌めされたコア部材11Bとに分割形成される。
【0005】
冷却水は一方のシャフト部材11Aの中空軸部11aから流入し、他方のシャフト部材11Aの中空軸部11aから排出される。そして、冷却ドラム1の内部では、冷却水は二系統の冷却水系をたどるようになっている。
【0006】
その一つは、一方のシャフト部材11Aの中空軸部11aから流入した冷却水は、一方のシャフト部材11A寄りのコア部材11Bに形成した冷却水孔13aからドラムスリーブ10内部の冷却水孔14bへ導かれ、ここでドラムスリーブ10に蓄熱された熱を奪った後、他方のシャフト部材11A寄りのコア部材11Bに形成した冷却水孔13d及び冷却水ジャケット15bを通って他方のシャフト部材11Aの中空軸部11aから冷却ドラム外部へ排出される。
【0007】
もう一つは、他方のシャフト部材11A寄りのコア部材11Bに形成した冷却水孔13bからドラムスリーブ10内部の冷却水孔14aへ導かれ、ここでドラムスリーブ10に蓄熱された熱を奪った後、一方のシャフト部材11A寄りのコア部材11Bに形成した冷却水孔13c及び冷却水ジャケット15aを通り、更には冷却水配管16を通って他方のシャフト部材11Aの冷却水ジャケット15bに至り、ここから他方のシャフト部材11Aの中空軸部11aを通って冷却ドラム外部へ排出される。
【0008】
これらの二系統の冷却水系は冷却ドラム1の円周方向に交互に配置するので、ドラムスリーブ10内部の冷却水孔14a,14bを流れる冷却水は対向流となる。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、銅合金製のドラムスリーブ10の内面と鋼製のコア部材11Bの外面は焼き嵌めで接合されているが、ドラムスリーブ10の弾性変形内でもっともきつく締め付けたとしても、接合面間では、鋳造中のドラムスリーブ10の伸びによるせん断力が摩擦力より大きくなり、ずれを生じていた。この時、ドラムスリーブ10は冷却ドラム中心に対して左右対称に伸びる保証はなく、よって、一対の冷却ドラム1のドラムスリーブ10の端部間にずれが生じ、サイド堰2との溶湯シールが不十分となる不具合があった。
【0010】
本発明の目的は、冷却ドラムのドラムスリーブとドラム本体との焼き嵌め等接合面間での鋳造中の両者の熱膨張差によるずれを効果的に防止することができる連続鋳造用冷却ドラム及びその使用方法を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するための本発明に係る連続鋳造用冷却ドラムは、互いに反対方向に回転する一対の冷却ドラムとサイド堰とによって形成された湯溜りに、溶融金属を供給し、冷却ドラムの表面に接触させて冷却することにより凝固シェルを形成させて金属薄板を鋳造するドラム式連続鋳造機の冷却ドラムであって、前記冷却ドラムは、両側端部に軸部を有するドラム胴体と、該ドラム胴体の外周部に嵌装されたドラムスリーブとを有すると共に、前記ドラム胴体の少なくとも内部に前記ドラムスリーブとの接合面に沿ってドラム軸心方向へ延びる温水路を円周方向へ所定間隔離間して多数条形成したことを特徴とする。
【0012】
また、前記温水路へは、前記ドラム胴体の内面を加熱すべく当該内面に沿って形成された温水ジャケットを介して外部の温水ラインから温水が供給されることを特徴とする。
【0013】
また、前記温水路へは、前記ドラムスリーブの冷却水孔を流れ熱交換により温水となった冷却水が供給されることを特徴とする。
【0014】
本発明に係る連続鋳造用冷却ドラムの使用方法は、鋳造開始前に温水が供給されてドラムプレヒートされることを特徴とする。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る連続鋳造用冷却ドラムを実施例により図面を用いて詳細に説明する。
【0016】
[第1実施例]
図1は本発明の第1実施例を示す、冷却ドラムの内部構造断面図、図2は図1のII−II線断面図、図3は冷水及び温水ラインの概略構成図である。尚、これらの図において、図6〜図8と同一部材には同一符号を付して重複する説明は省略する。
【0017】
図1及び図2に示すように、本実施例は、鋳造中は冷却ドラム外部からは温水を供給せず、熱交換後の温水となった冷却水を利用するもので、冷却ドラム内部へ導かれた冷却水の経路には矢印で示すように二種類ある。
【0018】
一つの経路は、一方のシャフト部材11Aの中空軸部11aから流入した約25℃前後の冷却水は、先ず冷却水ジャケット20aに入り、ここから一方のシャフト部材11A寄りのコア部材11Bに形成した冷却水孔21aよりドラムスリーブ10内部の冷却水孔22bへ導かれ、ここでドラムスリーブ10に蓄熱された熱を奪って約43℃前後となる。この後、コア部材11B内部の前記ドラムスリーブ10との接合面に沿ってドラム軸心方向へ延びる温水路30bを通って一方のシャフト部材11A寄りのコア部材11Bに形成した冷却水孔21bよりコア部材11Bの内部空間に至り、ここから他方のシャフト部材11Aの中空軸部11aを通って冷却ドラム外部へ排出される。
【0019】
もう一つの経路は、前記冷却水ジャケット20aから冷却水配管23を通って他方のシャフト部材11A側に形成したもう一つの冷却水ジャケット20bに入り、ここから他方のシャフト部材11A寄りのコア部材11Bに形成した冷却水孔21cよりドラムスリーブ10内部の冷却水孔22aへ導かれ、ここでドラムスリーブ10に蓄熱された熱を奪って約43℃前後となる。この後、コア部材11B内部の前記ドラムスリーブ10との接合面に沿ってドラム軸心方向へ延びる温水路30aを通って他方のシャフト部材11A寄りのコア部材11Bに形成した冷却水孔21dよりコア部材11Bの内部空間に至り、ここから他方のシャフト部材11Aの中空軸部11aを通って冷却ドラム外部へ排出される。
【0020】
この経路によるとコア部材11Bの内部空間は熱交換を終えた約43℃前後の冷却水で満たされる事になる。これら二種類の冷却水経路は冷却ドラム1の円周方向に交互に配置しているので、ドラムスリーブ10内部の冷却水孔22a,22bを流れる冷却水、及びコア部材11B内部の温水路30a,30bを流れる熱交換後の冷却水は対交流となる(図2参照)。その他の構成は、図8で示した従来例と同様である。
【0021】
このように本実施例では、コア部材11Bを加熱する温水をドラムスリーブ10内で昇温された冷却水としたので、ドラムスリーブ10で昇温された冷却水は約43℃前後となり、コア部材11Bを十分加熱できる。
【0022】
これにより、鋳造中に高温となるドラムスリーブ10との熱膨張差が小さくなり、両者10,11Bの焼き嵌め接合面のせん断力は摩擦力より小さくなり、ずれは生じなくなる。この結果、一対の冷却ドラム1のドラムスリーブ10端部での相対ずれはなく、サイド堰2とのシール不良を防止できる。
【0023】
更に、本実施例では、冷却ドラム1外部からの温水の供給は必要としないので、冷却ドラム1内への温水供給配管等が不要となり、シンプルな構造となって冷却ドラム1の低コスト化が図れる。
【0024】
また、本実施例では、図3に示すように、前述した二種類の冷却水経路へは、鋳造開始前に温水が供給・循環されてドラムがプレヒートされるようになっている。
【0025】
即ち、前述した二種類の冷却水経路へ鋳造中に冷却水を供給する、ピット24,ポンプ25,弁26及び27等からなる冷水ラインに加えて、鋳造開始前に遮断弁39a〜39dを切り換える(閉じる)ことにより温水を供給・循環する、ピット31,ポンプ32,蒸気供給源33,弁34,逆止弁35,37及び弁38等からなる温水ラインが設けられるのである。
【0026】
前記温水の温度は、逆止弁35下流の温水の温度・圧力を検出し、コントローラ36(又はオペレータ)がこれらに基づいて蒸気供給源33からの蒸気投入量を制御することにより、コントロールされる。
【0027】
このようにして、鋳造時におけるコア部材11Bとドラムスリーブ10との温度差を可及的速やかに減少すべくドラムプレヒートすることにより、鋳造時における前述したずれはより生じなくなると共に、鋳造開始準備作業に要する時間が大幅に短縮される。
【0028】
[第2実施例]
図4は本発明の第2実施例を示す、冷却ドラムの内部構造断面図、図5は図4のV −V 線断面図である。尚、これらの図において、図6〜図8と同一部材には同一符号を付して重複する説明は省略する。
【0029】
この実施例は、前述した二種類の冷却水経路は従来技術の図6と同様であるが、コア部材11Bの内部にドラムスリーブ10との接合面に沿ってドラム軸心方向へ延びる温水路40を円周方向へ所定間隔離間して多数条新たに形成した例である。
【0030】
そして、前記温水路40に対する温水の給,排は、コア部材11Bの内面に並設した一対の温水ジャケット41a,41bと、冷却ドラム1の一対の中空軸部11aを貫通する供給配管43a及び戻り配管43bと、前記温水ジャケット41a,41bと供給配管43a及び戻り配管43bとを繋ぐべくドラム半径方向に複数本配設された供給パイプ42a及び戻りパイプ42b等を介して行われるようになっている。
【0031】
従って、コア部材11Bを加熱する温水は、他方のシャフト部材11Aの中空軸部11aの内部に中空軸部11aと同心に設置された供給配管43aから冷却ドラム内部へ導かれる。供給配管43aによって冷却ドラム1のほぼ中央まで導かれた温水はドラム半径方向に延びた複数本の供給パイプ42aを通ってコア部材11Bの内面に設置された温水ジャケット41aへ導かれ、コア部材11Bの内面を加熱する。そして、コア部材11B内部の温水孔40を通って前記ドラムスリーブ10との接合面部を加熱し、その後、温水ジャケット41bへ導かれ、前記コア部材11Bの内面を加熱して複数本の戻りパイプ42bを通り、一方のシャフト部材11Aの中空軸部11aの内部に中空軸部11aと同心に設置された戻り配管43b内部へ導かれ、冷却ドラム外部へ排出される。
【0032】
このように構成されたドラム式連続鋳造機の冷却ドラム1によれば、コア部材11Bの内面、及び内部を約43℃前後の温水が通るので、コア部材11B全体が加熱され、鋳造中に高温となるドラムスリーブ10との熱膨張差が小さくなり、両者10,11Bの焼き嵌め接合面のせん断力は摩擦力より小さくなり、よってずれは生じなくなる。そのため、一対の冷却ドラム1のドラムスリーブ10端部間での相対ずれはなく、サイド堰2とのシール不良を防止できる。
【0033】
尚、本実施例においても、第1実施例と同様に、ドラムがプレヒートされるが、この場合温水は、第1実施例と異なり、前述した二種類の冷却水経路には通さず、温水路40のみに通すことになる。
【0034】
尚、本発明は上記各実施例に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で各種変更が可能であることはいうまでもない。
【0035】
【発明の効果】
以上詳細に説明したように、請求項1の発明によれば、互いに反対方向に回転する一対の冷却ドラムとサイド堰とによって形成された湯溜りに、溶融金属を供給し、冷却ドラムの表面に接触させて冷却することにより凝固シェルを形成させて金属薄板を鋳造するドラム式連続鋳造機の冷却ドラムであって、前記冷却ドラムは、両側端部に軸部を有するドラム胴体と、該ドラム胴体の外周部に嵌装されたドラムスリーブとを有すると共に、前記ドラム胴体の少なくとも内部に前記ドラムスリーブとの接合面に沿ってドラム軸心方向へ延びる温水路を円周方向へ所定間隔離間して多数条形成したことを特徴とするので、鋳造中に高温となるドラムスリーブとの熱膨張差が小さくなり、両者の焼き嵌め接合面のせん断力は摩擦力より小さくなり、ずれは生じなくなる。この結果、一対の冷却ドラム端部間の軸方向ずれを防止でき、溶湯洩れを未然に回避出来る。
【0036】
また、請求項2の発明によれば、前記温水路へは、前記ドラム胴体の内面を加熱すべく当該内面に沿って形成された温水ジャケットを介して外部の温水ラインから温水が供給されることを特徴とするので、ドラム胴体の内面、及び内部を温水が通るので、ドラム胴体全体が加熱されるという利点がある。
【0037】
また、請求項3の発明によれば、前記温水路へは、前記ドラムスリーブの冷却水孔を流れ熱交換により温水となった冷却水が供給されることを特徴とするので、冷却ドラム外部からの温水の供給は必要としないので、冷却ドラム内への温水供給配管等が不要となり、シンプルな構造となって冷却ドラムの低コスト化が図れるという利点がある。
【0038】
また、請求項4の発明によれば、前記温水路へは、鋳造開始前に温水が供給されてドラムがプレヒートされることを特徴とするので、鋳造時における一対の冷却ドラム端部間のずれはより生じなくなると共に、鋳造開始準備作業に要する時間が大幅に短縮されるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施例を示す、冷却ドラムの内部構造断面図である。
【図2】図1のII−II線断面図である。
【図3】同じく冷水及び温水ラインの概略構成図である。
【図4】本発明の第2実施例を示す、冷却ドラムの内部構造断面図である。
【図5】図4のV −V 線断面図である。
【図6】従来例の冷却ドラムの内部構造断面図である。
【図7】一般的なドラム式連続鋳造機の斜視図である。
【図8】一対の冷却ドラムの表面が最も接近するキッシングポイントでの冷却ドラムの端部とサイド堰の摺動部を示す、図7のVIII−VIII矢視拡大断面図である。
【符号の説明】
1 冷却ドラム
1a 端面
1b 端縁部
2 サイド堰
3 溶融金属
4 薄帯鋳片
5 セラミックス板
10 ドラムスリーブ
11 ドラム胴体
11A シャフト部材
11B コア部材
11a 中空軸部
12 ボルト
13a〜13d 冷却水孔
14a,14b 冷却水孔
15a,15b 冷却水ジャケット
16 冷却水配管
20a,20b 冷却水ジャケット
21a〜21d 冷却水孔
22a,22b 冷却水孔
23 冷却水配管
24 ピット
25 ポンプ
26 弁
27 弁
30a,30b 温水路
31 ピット
32 ポンプ
33 蒸気供給源
34 弁
35 逆止弁
36 コントローラ
37 逆止弁
38 弁
39a〜39d 遮断弁
40 温水路
41a,41b 温水ジャケット
42a 供給パイプ
42b 戻りパイプ
43a 供給配管
43b 戻り配管
Claims (4)
- 互いに反対方向に回転する一対の冷却ドラムとサイド堰とによって形成された湯溜りに、溶融金属を供給し、冷却ドラムの表面に接触させて冷却することにより凝固シェルを形成させて金属薄板を鋳造するドラム式連続鋳造機の冷却ドラムであって、前記冷却ドラムは、両側端部に軸部を有するドラム胴体と、該ドラム胴体の外周部に嵌装されたドラムスリーブとを有すると共に、前記ドラム胴体の少なくとも内部に前記ドラムスリーブとの接合面に沿ってドラム軸心方向へ延びる温水路を円周方向へ所定間隔離間して多数条形成したことを特徴とする連続鋳造用冷却ドラム。
- 前記温水路へは、前記ドラム胴体の内面を加熱すべく当該内面に沿って形成された温水ジャケットを介して外部の温水ラインから温水が供給されることを特徴とする請求項1記載の連続鋳造用冷却ドラム。
- 前記温水路へは、前記ドラムスリーブの冷却水孔を流れ熱交換により温水となった冷却水が供給されることを特徴とする請求項1記載の連続鋳造用冷却ドラム。
- 請求項1,2又は3記載の連続鋳造用冷却ドラムの温水路へは鋳造開始前に温水が供給されてドラムがプレヒートされることを特徴とする連続鋳造用冷却ドラムの使用方法。
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