JP3831281B2 - エアフィルタ用濾材およびエアフィルタユニットの製造方法 - Google Patents
エアフィルタ用濾材およびエアフィルタユニットの製造方法 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、半導体や液晶の生産施設などのクリーンルームなどにおいて、該クリーンルーム内に流入する外気中に含まれる粉塵や該クリーンルーム内で発生した微塵を除去するエアフィルタ用濾材や、該クリーンルーム内に流入する外気中に含まれるガス状物質や該クリーンルーム内で発生したガス状物質を除去するケミカルフィルタとして好適に使用される、ガス状物質の発生が少ないエアフィルタ用濾材の製造方法に関する。また、本発明はこれらのフィルタをフィルタ枠に装着したガス状物質の発生が少ないエアフィルタユニットの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
半導体や液晶の生産施設、または半導体や液晶の周辺技術関連で用いるクリーンルームなどにおいては、該生産施設内または該クリーンルーム内の空気や雰囲気に対して高い清浄度が要求される。しかし、これら空気や雰囲気中には粉塵や有機系のガス状汚染物質や無機系のガス状汚染物質が含まれているのみならず、クリーンルーム構成部材や作業員などからも粉塵や有機系のガス状汚染物質や無機系のガス状汚染物質が発生するため、このような粉塵やガス状汚染物質を除去するフィルタシステムが図1に例示するように設置されている。外気空気は外調機1の粗塵除去用のプレフィルタ2、中性能フィルタ3、エアワッシャー4、HEPAフィルタ(高性能フィルタ)6の順に通過した後、さらに循環系のHEPAまたはULPAフィルタ8を通過して、空気中の塵埃が除去される。また、クリーンルーム内に流入するガス状汚染物質は必要に応じて循環系に設置されたケミカルフィルタ7によって除去される。特に、外気中にガス状汚染物質が多く含まれる場合は、外調機1のHEPAフィルタ6と中性能フィルタ3の間に更にケミカルフィルタ5が設置されている。
【0003】
前記ガス状汚染物質には、有機系ガス状汚染物質や、無機系ガス状汚染物質が含まれるが、例えば有機系ガス状汚染物質は、半導体基板であるシリコンウェハ表面上に付着すると、シリコンウェハ表面上に形成される絶縁酸化膜の絶縁耐圧が低下したり、空気中に浮遊する微粒子が静電吸着し易くなり、絶縁破壊が起こり易くなるなど、半導体や液晶の製造に悪影響を及ぼす。これら、有機系ガス状汚染物質のウェハ表面への吸着を防止するには、クリーンルーム雰囲気中の該有機物質の濃度をできるだけ低いレベルで管理しなければならない。このような管理濃度は次のようにして求めることができる。すなわち、1999年版SIA(Semiconductor Industry Association)ロードマップによれば、西暦2000年のウェハ表面上での有機物質管理レベルは6.6×1013Catoms/cm2と言われている。これをトルエン換算すると14.4μg/m2となる。これらウェハ表面上での管理レベルの値と、一般に知られている付着確率から、下記の算出式1によりクリーンルーム空気中での管理レベルの推定値を算出すると、総有機物質は41.7μg/m3の管理濃度となる。
算出式1:N=As/(v・t・γ)
N;空気中の汚染物質濃度(空気中の管理濃度)(μg/m3)
As;ウェハ表面の汚染物質濃度(ウェハ表面上での管理レベル)
(μg/m2)
v;クリーンルーム空気の流速(0.4m/sec)
t;ウェハの空気中暴露時間(86400sec)
γ;付着確率 (芳香族炭化水素類の付着確率1×10- 5)
【0004】
このような有機系ガス状汚染物質や、無機系ガス状汚染物質を吸着除去するケミカルフィルタには、例えば活性炭、活性炭繊維、ゼオライト、イオン交換樹脂、その他化学吸着材などの吸着材が利用されており、これら吸着材が単独で用いられたり、ネット状物や不織布などの基材に吸着材などが担持されている。そして該ケミカルフィルタは前記フィルタシステム中の循環系に設置され、また必要に応じて外調機にも設置されている。
【0005】
しかし、これらのガス状汚染物質は、外気中のみならず、微塵を除去するエアフィルタ用濾材自体や、ガス状汚染物質を除去するケミカルフィルタ自体からも発生していることが判ってきた。このうち、ケミカルフィルタの下流位置に配置されるHEPAまたはULPAフィルタはクリーンルームでは多用され、濾材の使用面積が非常に多いため、特にHEPAまたはULPAフィルタからの発生ガスの防止が課題とされてきた。また、HEPAフィルタの上流位置の外調機に主として配置される微塵除去用の中性能フィルタや、更に中性能フィルタの上流位置に配置されるプレフィルタについては、HEPAまたはULPAフィルタと比較して濾材の使用面積が少なく、またケミカルフィルタの上流位置に配置される場合はプレフィルタよりの発生ガスがケミカルフィルタによって除去されるため、これら中性能フィルタやプレフィルタから発生する有機系のガス状物質のクリーンルーム内への直接的な影響は少ないと考えられる。しかし、ケミカルフィルタの寿命を縮めるなどの問題があり、やはり発生ガスの防止が課題とされてきている。また同様にケミカルフィルタ自体よりの発生ガスについては、ケミカルフィルタ自体で除去される場合もあるが、発生ガスの種類によっては除去できなかったり、ケミカルフィルタの支持体から発生するということがあり、そのケミカルフィルタ自体あるいは他のケミカルフィルタの寿命を縮めるなどの問題があり、やはり発生ガスの防止が課題とされてきている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上述の従来技術の問題を解決するものであり、クリーンルームなどで使用される除塵用やガス除去用のエアフィルタ用濾材として、エアフィルタ用濾材の性能を損なうことなく、しかも短時間でガス状物質の低減処理を効率よく行うことができる製造方法を提供することによって、クリーンルームなどへの汚染ガスの進入を軽減し、クリーンルームなどでの汚染ガスに関する管理濃度を満たすことを課題とする。また、クリーンルームなどに設置されているケミカルフィルタの汚染ガス除去に関する負担を少なくして寿命を延ばし、フィルタシステムの運転維持経費の削減に寄与することを課題とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するための手段は、請求項1の発明では、エアフィルタ用素材を、該エアフィルタ用素材を構成する固体の材料の中で最も低い融点または分解温度より低い温度であり、しかも50℃以上100℃未満で、且つ0.08MPa以下の気圧の雰囲気中に晒すことにより、該エアフィルタ用素材から発生するガス状物質の量を低減処理することを特徴とするエアフィルタ用濾材の製造方法による。
【0008】
請求項2の発明では、前記気圧が0.03MPa以下であることを特徴とする請求項1に記載のエアフィルタ用濾材の製造方法による。
【0009】
請求項3の発明では、請求項1または2に記載の製造方法によって得られたエアフィルタ用濾材をフィルタ枠に装着してエアフィルタユニットとすることを特徴とするエアフィルタユニットの製造方法による。
【0010】
請求項4の発明では、エアフィルタ用素材をフィルタ枠に装着してエアフィルタユニット中間体とし、該エアフィルタユニット中間体を、該エアフィルタユニット中間体を構成する固体の材料の中で最も低い融点または分解温度より低い温度であり、しかも50℃以上100℃未満で、且つ0.08MPa以下の気圧に晒すことにより、該エアフィルタユニット中間体から発生するガス状物質の量を低減処理することを特徴とするエアフィルタユニットの製造方法による
【0011】
請求項5の発明では、前記気圧が0.03MPa以下であることを特徴とする請求項4に記載のエアフィルタユニットの製造方法による。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明にかかるエアフィルタ用濾材およびエアフィルタユニットの製造方法の好ましい実施の形態について詳細に説明する。
【0013】
本発明のエアフィルタ用濾材の製造方法は、エアフィルタ用素材を、該エアフィルタ用素材を構成する固体の材料の中で最も低い融点または分解温度より低い温度であり、しかも50℃以上100℃未満で、且つ0.08MPa以下の気圧の雰囲気中に晒すことにより、該エアフィルタ用素材から発生するガス状物質の量を低減処理することを特徴とするエアフィルタ用濾材の製造方法である。
【0014】
前記エアフィルタ用濾材とは、除塵用およびガス除去用のエアフィルタ用濾材である。このうち、除塵用のエアフィルタ用濾材には、粗塵除去用のエアフィルタ用濾材や中性能の濾過性能を有するものやHEPAまたはULPAフィルタなどがあり、粗塵除去用のエアフィルタ用濾材とは質量法による粒子捕集平均効率が50〜99%である性能のものである。また、中性能のフィルタとは捕集効率を比色法で評価すると20%〜99%の性能のものである。また、HEPAフィルタとは0.3μmのDOP粒子の捕集効率を計数法で評価すると99.97%以上の性能のものである。また、ULPAフィルタとは0.15μmのDOP粒子の捕集効率を計数法で評価すると99.9997%以上の性能のものである。また、ガス除去用のエアフィルタ用濾材には、有機系ガス状汚染物質や、無機系ガス状汚染物質を吸着除去するケミカルフィルタや脱臭フィルタなどがあり、例えば活性炭、活性炭繊維、ゼオライト、イオン交換樹脂、その他化学吸着材などの吸着材などの吸着材による吸着作用や、触媒による触媒作用を利用するものであり、これら吸着材や触媒が単独で用いられたり、ネット状物や不織布などの基材に担持されている。そして該ケミカルフィルタは前記フィルタシステム中の循環系に設置され、また必要に応じて外調機にも設置される。
【0015】
前記エアフィルタ用素材のうち除塵用のエアフィルタ用素材は通気性のある多孔質の素材であり、具体的には繊維構造物、膜構造物、スポンジ状の構造物などを挙げることができる。このうち繊維構造物には、合成繊維、半合成繊維、無機繊維、天然繊維などの繊維から作られる織物、編物、不織布、紙などがある。このうち不織布は繊維が三次元的に配置しており、粉塵の保持能力に優れると共に、通風時の圧力損失が少ないのでエアフィルタ用素材として好ましい構造である。不織布は公知の乾式法、湿式法、溶融紡糸法、メルトブロー法、フラッシュ紡糸法などの何れの繊維ウエブ形成法でも製造することができ、繊維ウエブの結合または絡合の方法は、浸漬接着法、熱融着法、水流絡合法、ニードルパンチ法などの方法を採ることができる。例えば中性能や高性能のエアフィルタ用濾材を得るには、例えばメルトブロー法やフラッシュ紡糸法を採るか、極細繊維やフィブリル化した繊維を湿式法により抄造してシート化する方法がある。また、例えば易分割性の繊維を、公知の上記繊維ウエブ形成法でシート化した後、シート中の繊維を熱的に分割する方法や、該繊維を水流やニードルパンチなどの機械的な応力により分割する方法や、或いは該繊維をアルカリ性などの薬品により化学的に溶融、抽出して分割する方法などがある。
【0016】
前記通気性のある多孔質の素材は膜構造物であってもよく、このような膜構造物としては、ポリエチレン、ポリプロピレンの膜や、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルホンなどの膜がある。また、このような膜構造物は補強用の支持体として上述のような不織布構造物を用いて、その支持体の上に形成されていてもかまわない。
【0017】
前記エアフィルタ用素材のうちガス除去用のエアフィルタ用素材には、例えば、(1)イオン交換繊維や活性炭繊維からなる通気性を有するシート状物、或いは(2)粒子状のイオン交換樹脂や活性炭、ゼオライト、その他化学吸着材などを集積したシート状物、或いは(3)粒子状のイオン交換樹脂や活性炭、ゼオライト、その他化学吸着材などを熱融着性の樹脂で互いに接合したシート状物、或いは(4)支持体に粒子状のイオン交換樹脂や活性炭、ゼオライト、その他化学吸着材を担持させたもの、或いは(5)支持体に繊維状のイオン交換樹脂や活性炭を担持させたもの、などがある。
【0018】
前記(1)のシート状物としては、不織布、織物、ろ紙などの多孔質体などが挙げられ、なかでも不織布は通気性が高いので好ましい。また前記(4)のイオン交換樹脂などを担持する支持体は通気性を有するシート状物ならばいずれも使用可能であり、このようなシート状物としては、不織布、織物、膜、ろ紙、スポンジなどの多孔質体などが挙げられ、なかでも不織布は通気性が高いので好ましい。また、支持体としてのシート状物が高分子材料であれば、フィルタ加工におけるプリーツ折り加工などへの追従性が高く、耐久性に優れているので好ましく用いることができる。
【0019】
前記除塵用のエアフィルタ用素材および前記ガス除去用のエアフィルタ用素材はその製造工程中などで、そのエアフィルタ用素材を構成する固体の材料の中に、有機質や無機質のガス状物質の発生の原因となる有機質や無機質の物質を含んでしまう。例えば、エアフィルタ用素材が有機質や無機質の繊維構造物である場合はその原料である繊維を繊維化する際に例えば繊維質量に対して0.01〜0.5重量%の有機質や無機質の油剤を含んだり、その原料である繊維から繊維ウエブを形成してエアフィルタ用素材とするまでに低分子量の有機物質や無機物質を含む接着剤を使用したりするためガス状物質の発生の原因となる有機質や無機質の物質を含んでしまう。
【0020】
前記ガス状物質の発生の原因としては、例えばエアフィルタ用素材の原料が有機物質の場合には、有機物質が合成されたり加工されたりした時に有機質の添加剤が加えられていたり、有機溶剤が残留していたりするので揮発性の有機物質が含まれていることが挙げられる。或いは有機物質が合成されたり加工されたりした時に例えば有機物の一部が分解して揮発性の有機物質が生成している。また、例えば微塵に対する捕集効率の高い中性能フィルタやHEPAまたはULPAフィルタなどの繊維原料として極細の繊維が用いられるがこのような繊維には極細化のために特に添加剤の量が多かったり、有機質の分解生成物を多く含んだりする傾向がある。また、エアフィルタ素材の加工のため接着性の繊維が用いられる場合も低融点の有機質成分が多く用いられ接着時の加熱により有機質の分解生成物を多く含む傾向がある。そして、このような揮発性の有機物質がエアフィルタ用素材に含まれていると、例えばクリーンルーム用のエアフィルタとして使用した時に、粉塵などを除去した処理空気中にガス状物質として揮発性の有機物質が含まれてしまい、クリーンルーム室内の雰囲気中の総有機物質の管理基準値を満たせなくなるという問題が生ずる。
【0021】
本発明の製造方法では、前記エアフィルタ用素材を、該エアフィルタ用素材を構成する固体の材料の中で最も低い融点または分解温度より低い温度であり、しかも50℃以上100℃未満で、且つ0.08MPa以下の気圧の減圧状態の雰囲気中に晒す、好ましくは、0.03MPa以下の気圧の減圧状態の雰囲気中に晒す、更に好ましくは0.01MPa以下の気圧の減圧状態の雰囲気中に晒すことによって、エアフィルタ用濾材を得ることができる。なお、エアフィルタ用素材を構成する材料の中で最も低い融点または分解温度より低い温度とは、エアフィルタ用素材がいくつかの材料から構成されている場合、その材料が融点のみを有している場合は融点、その材料が融点と分解温度を有している場合は融点と分解温度、その材料が分解温度のみを有している場合は分解温度、を相互に比較して、それらの中で最も低い温度のことをいう。
【0022】
前記エアフィルタ用素材を前記雰囲気中に晒すには、温度は0℃以上が好ましい。また、例えば、エアフィルタ用素材が加熱により劣化したり収縮するなどの問題があるような場合は、そのような劣化したり収縮するなどの温度以下が好ましく、例えば20〜120℃がより好ましく、20〜90℃がより好ましい。また、20〜60℃であればこのような劣化や収縮などの問題はほとんどないので更に好ましい。また、低減処理に要する晒しの時間は0.5分〜10時間が好ましく、5分〜5時間がより好ましい。
【0023】
前記エアフィルタ用素材を該エアフィルタ用素材を構成する固体の材料の中で最も低い融点または分解温度より低い温度であり、しかも50℃以上100℃未満で、且つ0.08MPa以下の気圧の雰囲気中に晒す具体的な方法としては、前記エアフィルタ用素材を前記雰囲気中に晒すことができれば、特に限定するものではないが、例えば真空乾燥機を用いる方法がある。また、例えば耐圧容器にエアフィルタ用素材を支持体と共に入れ、耐圧容器に付属させた排気管より耐圧容器内の気体を真空ポンプにより排出して、耐圧容器内の気圧を所定の圧力に保った後、耐圧容器の外壁に付属させたヒーターによって、耐圧容器全体を加熱する方法がある。
【0024】
前記雰囲気中に晒すことによって、減圧状態としない大気圧程度の常圧状態の雰囲気中に晒す場合と比較して、ガス状物質の発生を大きく減ずることができる。また、常圧状態と同程度にガス状物質の発生を減じようとする場合は、雰囲気中の温度を常圧状態の温度よりも低くすることができる。この有利な効果を一例をあげて説明すると、例えば常圧状態では90℃を超える高い温度で低減処理しなければならず、90℃を超えるとエアフィルタ用素材を劣化させたり収縮させたりする問題がある場合、本発明の製造方法による減圧状態では、90℃を超えずに低減処理することが可能となり得るので、エアフィルタ用素材を劣化させたり収縮させたりする問題を回避することができる。また、エアフィルタ用素材が熱変形したり、溶融したりすることを防ぐことができる。また、変形により、圧力損失が増加してフィルタとしての寿命が短くなったり、フィルタの開口部が減少して濾過性能が低下するなどの問題を防ぐことができる。
【0025】
このように、本発明の製造方法では、前記エアフィルタ用素材を前記雰囲気中に晒すことにより、少なくとも有機質のガス状物質に関して、前記エアフィルタ用素材から発生する総有機物質の量を低減処理することができる。その結果、本発明のエアフィルタ用濾材の製造方法により、好ましくは、該エアフィルタ用濾材から発生する総有機物質の量(トルエン換算重量)を発生ガス推測法により23℃において算出して、次に該エアフィルタ用濾材の面密度100g/m2あたりから発生する、単位時間における、該総有機物質の量を算出すると、1.0(pg/m2・hr)以上5(μg/m2・hr)以下とすることができる。また、より好ましくは該総有機物質の量を1.0(pg/m2・hr)以上2(μg/m2・hr)以下とすることができる。また、常圧状態での低減処理と比較して、例えば50℃以上の加熱時には、1.9分の1以下に総有機物質量を低減することができる。
【0026】
本発明のエアフィルタ用濾材の面密度は、例えば該エアフィルタ用濾材が除塵用であり、該エアフィルタ用濾材の構成材料が有機質である場合には、50〜300g/m2の面密度が好ましく、100〜200g/m2が更に好ましい。また、該エアフィルタ用濾材の厚さは、袋状に加工する場合は5〜50mmであることが好ましく、10〜30mmが更に好ましい。また、プリーツ加工する場合は0.1〜5mmであることが好ましく、0.5〜3mmが更に好ましく、0.8〜2mmが最も好ましい。
【0027】
本発明では、有機質のガス状汚染物質の定量には、ダイナミックヘッドスペース法によって、加熱状態で促進試験を行ない、発生ガス量を定量した後、その値を発生ガス推測法によって、室温時の値に換算した値を使用している。なお、本発明での効果を説明するため、有機質のガス状汚染物質の定量を行っているが、該ダイナミックヘッドスペース法では無機質のガス状汚染物質の定量に関しても有効である。
【0028】
次に、ダイナミックヘッドスペース法を説明する。図2はこの方法に用いる発生ガス捕集装置(ジーエルサイエンス(株)製 MSTD−258M)の説明図である。まず、測定したい素材を直径7cmの円形に切り、試料14を作成する。試料14をチャンバー10内の中央のガス吹き出し口13の上に設置する。次に、清浄なヘリウムガス11をチャンバー内に流速120ml/minで連続的に流通させながら所定の温度(60℃または80℃)で加熱する。ヘリウムガス11は試料14と接触する際、試料14から発生する汚染物質がヘリウムガス中に混入するので、気体濃度が平衡になった後、捕集速度100ml/minで固体吸着材12(成分;2,6-diphenylene oxide)に捕集する。次いで、固体吸着材12に捕集した物質をガスクロマトグラフ質量分析計で分析する。((株)島津製作所製 QP−5050を使用)加熱の温度は60℃と80℃の2条件で測定する。
【0029】
次に、発生ガス推測法とは、高温下で発生ガスの促進試験を行ない、実験式を用いて、室温での結果を推測する方法であり、以下、発生ガス推測法について具体的に説明する。実際のクリーンルームの室温23℃での発生ガスは極微量なので実測では分析感度の点で長時間の測定が必要になるなど、現実的には測定困難なため、前述のダイナミックヘッドスペース法により、試験条件を例えば60℃、80℃の高温下に設定して、試料から発生する有機物質の量を定性定量的に測定した結果から下記の式を用いて室温23℃での結果を推測する。(株)住化分析センターの竹田らによれば、試験温度と発生ガスの関係については、経験則として下記の式が成り立つことがわかっている。(平成11年第17回コンタミネーションコントロール研究大会予稿集などに記載)
ln(M/A・h)=−C1/T+C2
M;トルエン換算の発生ガス量(μg)
A;測定試料面積(m2)
h;捕集に要した時間(h)
T;試験温度(絶対温度K)
C1およびC2;定数
【0030】
また、本発明のエアフィルタ用濾材は上記のエアフィルタ用濾材と同じもの又は異なるものが複数積層していても構わない。また、上記のエアフィルタ用濾材と他の通気性を有するシート状物が積層していても構わない。このような通気性を有するシート状物には、例えば織物、編物、ネット、不織布、ろ紙などがあるが、ガス状物質を多く発生しないものが好ましい。
【0031】
本発明のエアフィルタユニットの製造方法は、本発明のエアフィルタ用濾材の製造方法によって得られたエアフィルタ用濾材をフィルタ枠に装着して、エアフィルタユニットとすることを特徴とするエアフィルタユニットの製造方法である。或いはエアフィルタ用素材をフィルタ枠に装着してエアフィルタユニット中間体とし、該エアフィルタユニット中間体を、該エアフィルタユニット中間体を構成する固体の材料の中で最も低い融点または分解温度より低い温度であり、しかも50℃以上100℃未満で、且つ0.08MPa以下の気圧の雰囲気中に晒すことにより、該エアフィルタユニット中間体から発生するガス状物質の量を低減処理することを特徴とするエアフィルタユニットの製造方法である。
【0032】
前記エアフィルタ用濾材または前記エアフィルタ用素材をフィルタ枠に装着する方法としては、例えばエアフィルタ用濾材またはエアフィルタ用素材を平板状にカットした後フィルタ枠に装着する方法や、或いはエアフィルタ用濾材またはエアフィルタ用素材をプリーツ状に多数折り曲げてからフィルタ枠に装着する方法や、或いはエアフィルタ用濾材またはエアフィルタ用素材を袋形状に成型してフィルタ枠に装着する方法などがある。このようにして、例えばプリーツ形状の場合はエアフィルタ用濾材の面積はユニットの間口面積あたり最大100倍程度まで、また袋形状に加工するとエアフィルタ用濾材の面積は最大30倍程度まで増加することができる。また、エアフィルタユニットに用いる枠体としては、ガス状物質の発生が少ない合成樹脂の板や、該ガス状物質の発生がほとんど無いアルミなどの金属を用いることが好ましい。
【0033】
本発明の製造方法では、前記エアフィルタ用素材をフィルタ枠に装着してエアフィルタユニット中間体とし、該エアフィルタユニット中間体を、該エアフィルタユニット中間体を構成する固体の材料の中で最も低い融点または分解温度より低い温度より低い温度であり、しかも50℃以上100℃未満で、且つ0.08MPa以下の気圧の減圧状態の雰囲気中に晒す、好ましくは、0.03MPa以下の気圧の減圧状態の雰囲気中に晒す、更に好ましくは0.01MPa以下の気圧の減圧状態の雰囲気中に晒すことによって、エアフィルタユニットを得ることができる。なお、エアフィルタユニット中間体を構成する材料の中で最も低い融点または分解温度より低い温度とは、エアフィルタユニット中間体がいくつかの材料から構成されている場合、その材料が融点のみを有している場合は融点、その材料が融点と分解温度を有している場合は融点と分解温度、その材料が分解温度のみを有している場合は分解温度、を相互に比較して、それらの中で最も低い温度のことをいう。
【0034】
前記エアフィルタユニット中間体を前記雰囲気中に晒すには、温度は0℃以上が好ましい。また、例えば、エアフィルタユニット中間体が加熱により劣化したり収縮するなどの問題があるような場合は、そのような劣化したり収縮するなどの温度以下が好ましく、例えば20〜120℃がより好ましく、20〜90℃がより好ましい。また、20〜60℃であればこのような劣化や収縮などの問題はほとんどないので更に好ましい。また、低減処理に要する晒しの時間は0.5分〜10時間が好ましく、5分〜5時間がより好ましい。
【0035】
前記雰囲気中に晒すことによって、減圧状態としない大気圧程度の常圧状態の雰囲気中に晒す場合と比較して、ガス状物質の発生を大きく減ずることができる。また、常圧状態と同程度にガス状物質の発生を減じようとする場合は、雰囲気中の温度を常圧状態の温度よりも低くすることができる。この有利な効果を一例をあげて説明すると、例えば常圧状態では90℃を超える高い温度で低減処理しなければならず、90℃を超えると、エアフィルタユニット中間体のフィルタ枠を劣化させたり、熱変形させたり、溶融させたり、またエアフィルタ用素材を劣化させたり収縮させたりする問題がある場合、本発明の製造方法による減圧状態では、90℃を超えずに低減処理することが可能となり得るので、エアフィルタユニット中間体のフィルタ枠を劣化させたり、熱変形させたり、溶融させたりすることを防ぐことができる。また、エアフィルタユニット中間体に装着されたエアフィルタ用素材を劣化させたり収縮させたりする問題を回避することができる。また、エアフィルタ用素材が熱変形したり、溶融したりすることを防ぐことができる。また、プリーツ形状などの変形により、圧力損失が増加してフィルタとしての寿命が短くなったり、フィルタの開口部が減少して濾過性能が低下するなどの問題を防ぐことができる。
【0036】
前記エアフィルタユニット中間体を該エアフィルタユニット中間体を構成する固体の材料の中で最も低い融点または分解温度より低い温度であり、しかも50℃以上100℃未満で、且つ0.08MPa以下の気圧の雰囲気中に晒す具体的な方法としては、前記エアフィルタユニット中間体を前記雰囲気中に晒すことができれば、特に限定するものではないが、例えば真空乾燥機を用いる方法がある。また、例えば耐圧容器にエアフィルタユニット中間体を入れ、耐圧容器に付属させた排気管より耐圧容器内の気体を真空ポンプにより排出して、耐圧容器内の気圧を所定の圧力に保った後、耐圧容器の外壁に付属させたヒーターによって、耐圧容器全体を加熱する方法がある。
【0037】
このように、本発明の製造方法では、前記エアフィルタユニット中間体を前記雰囲気中に晒すことにより、少なくとも有機質のガス状物質に関して、エアフィルタユニット中間体から発生する総有機物質の量を低減処理することができる。その結果、本発明のエアフィルタユニットの製造方法により、本発明のエアフィルタ用濾材の製造方法で得られたエアフィルタ用濾材を、要求される塵埃に関する濾過性能に応じて適宜使用面積を定めて用いることにより、エアフィルタ用濾材から発生する総有機物質の量(トルエン換算重量)を低減処理することができる。
【0038】
本発明のエアフィルタ用濾材の製造方法によって得られるエアフィルタ用濾材は、図1に例示するように、半導体や液晶の生産施設などのクリーンルーム9などにおいて、クリーンルーム9内に流入する外気中に含まれる粉塵を除去するHEPAフィルタ(高性能フィルタ)6や、クリーンルーム9内に設置されるHEPAまたはULPAフィルタ8や、HEPAフィルタ6の前段や外気中のガス状汚染物質を除去するケミカルフィルタ5や、ケミカルフィルタ5の前段に設置される中性能用のエアフィルタ3や、中性能エアフィルタ3の前段にされるプレフィルタ2に、ガス状物質の発生が少ないエアフィルタ用濾材として用いることができる。また、本発明のエアフィルタユニットの製造方法によって得られるエアフィルタ用ユニットは、エアフィルタ用濾材をHEPAまたはULPAフィルタや中性能フィルタとして使用するため、ジグザグ状の形状にプリーツ加工して通風面積を増やしてからフィルタ枠に装着したり、又は袋状に加工して通風面積を増やしてからフィルタ枠に装着したエアフィルタユニットの形態として使用することができる。また、粗塵除去用のプレフィルタとして使用するため、平板状でフィルタ枠に装着したエアフィルタユニットの形態として使用することができる。
【0039】
以下、本発明の実施例につき説明するが、これは発明の理解を容易とするための好適例に過ぎず、本願発明はこれら実施例の内容に限定されるものではない。
【0040】
(実施例1)
芯成分が融点260℃のポリエステル、鞘成分が融点130℃の変性ポリエステルからなる、繊度が17デシテックス、繊維長が51mmの複合繊維である熱接着性繊維100%からなる繊維を開繊した後、空気流で送りながら、ポリプロピレンのメルトブローのウェブを形成中に混入させて、メルトブロー法とエアレイ法の組み合わせによる混合ウェブを形成した。この混合ウェブの混合比率は熱接着性繊維87重量%、メルトブローによる繊維13重量%であった。次に、この混合ウェブに145℃の乾燥機で3分間加熱接着処理を行ない、鞘成分の変性ポリエステルを溶融して、その混合ウェブの繊維交点で繊維接着を行ない、厚さ12mmの繊維構造物とした後、引き続きスリットを設けた145℃の加熱ロールの間に通して厚さを1mmに調整した。その後そのまま空冷して面密度155g/m2、厚さ1mmのエアフィルタ用素材とした。次に、このエアフィルタ用素材を予め80℃に加熱した真空乾燥機に入れ、真空乾燥機の内圧を0.001MPaとすることにより、80℃で0.001MPaの気圧の減圧状態の雰囲気中に10分間晒し、ガス状物質の発生を低減させた面密度155g/m2、厚さ1mmのエアフィルタ用濾材を作製した。このエアフィルタ用濾材から発生する総有機物質の量(トルエン換算重量)を発生ガス推測法により23℃において算出して、次に該エアフィルタ用濾材の面密度100g/m2あたりから発生する、単位時間における、該総有機物質の量を算出すると、0.065(μg/m2・hr)であった。次に、このエアフィルタ用濾材15m2を用いてプリーツ折りを行い、外寸法が610cm×610cmの間口で奥行きが290cmのアルミ製のフィルタ枠に装着して、エアフィルタユニットを作製した。このエアフィルタユニットは、ASHRAE 52.1−1992に準じた試験方法によると風速56m3/minの試験条件で、比色法による粒子捕集平均効率が83%であり、中性能フィルタとしての性能を満足するものであり、クリーンルーム用フィルタシステムの外調機に取り付ける中性能フィルタとして好適であった。
【0041】
次に、実施例1によって得られた中性能フィルタとしてのエアフィルタユニットをクリーンルームに使用した場合の効果を示す。例えば、エアフィルタユニットをケミカルフィルタを有する外調機に設置して、その時のユニット間口を通過する風速を2.5m/secに設定したとすると、エアフィルタ用濾材から発生する総有機物質の量(トルエン換算重量)を発生ガス推測法により23℃において算出すると、エアフィルタユニットの間口面積の単位面積あたりから発生する、単位時間における、該総有機物質の量は、0.065μg/m2・hr×(155g/m2÷100g/m2)×15m2÷(0.61m×0.61m)÷2.5m/sec=4.5×10−4μg/m3となり、前述の管理基準値の41.7μg/m3を十分に満足できる。また、実施例1によるエアフィルタユニットを、ケミカルフィルタの前に設置する場合はエアフィルタ用濾材から発生する有機物質は、該ケミカルフィルタによって除去されるので、クリーンルーム中の空気中の汚染物質濃度は実質的に0μg/m3であるが、実施例1によるエアフィルタ用濾材からの発生ガス量は極めて少なく、ケミカルフィルタへの負担を格段に軽減して、ケミカルフィルタの寿命を大きく延ばすことができる。
【0042】
(実施例2〜6)
実施例1において、エアフィルタ用素材を80℃で0.001MPaの気圧の減圧状態の雰囲気中に10分間晒した代わりに、実施例2では50℃で0.001MPa、実施例3では80℃で0.01MPa、実施例4では50℃で0.01MPa、実施例5では80℃で0.05MPa、実施例6では50℃で0.05MPa、のそれぞれの気圧の減圧状態の雰囲気中に10分間晒した以外は実施例1と同様にして、ガス状物質の発生を低減させた面密度155g/m2、厚さ1mmのエアフィルタ用濾材を作製した。このエアフィルタ用濾材から発生する総有機物質の量(トルエン換算重量)を発生ガス推測法により23℃において算出して、次に該エアフィルタ用濾材の面密度100g/m2あたりから発生する、単位時間における、該総有機物質の量を算出すると、実施例2では0.58(μg/m2・hr)、実施例3では0.97(μg/m2・hr)、実施例4では1.8(μg/m2・hr)、実施例5では1.9(μg/m2・hr)、実施例6では3.0(μg/m2・hr)であり、それぞれクリーンルーム用フィルタシステムの外調機に取り付ける中性能フィルタのエアフィルタ用濾材として好適であった。
【0043】
(比較例1)
エアフィルタ用素材に低減処理を行なわなかったこと以外は実施例1と同様にしてエアフィルタ用濾材を作製した。このエアフィルタ用濾材から発生する総有機物質の量(トルエン換算重量)を実施例1と同様にして算出すると、8.1(μg/m2・hr)であり、クリーンルーム用フィルタシステムの外調機に取り付ける中性能フィルタのエアフィルタ用濾材として、有機質のガス状物質の発生が多く不適であった。
【0044】
(比較例2〜3)
実施例1において、エアフィルタ用素材を80℃で0.001MPaの気圧の減圧状態の雰囲気中に10分間晒した代わりに、比較例2では100℃で0.1MPa、比較例3では50℃で0.1MPa、の気圧である常圧状態の雰囲気中に10分間晒した以外は実施例1と同様にして、ガス状物質の発生を低減させた面密度155g/m2、厚さ1mmのエアフィルタ用濾材を作製した。このエアフィルタ用濾材から発生する総有機物質の量(トルエン換算重量)を発生ガス推測法により23℃において算出して、次に該エアフィルタ用濾材の面密度100g/m2あたりから発生する、単位時間における、該総有機物質の量を算出すると、比較例2では3.1(μg/m2・hr)、比較例3では5.7(μg/m2・hr)であり、それぞれクリーンルーム用フィルタシステムの外調機に取り付ける中性能フィルタのエアフィルタ用濾材として使用することはできたが、比較例2〜3のエアフィルタ用濾材の該総有機物質の量は、実施例1〜6のエアフィルタ用濾材の該総有機物質の量よりも、大きい値であった。
【0045】
(実施例7)
実施例1と同様にして、面密度155g/m2、厚さ1mmのエアフィルタ用素材とした。次に、このエアフィルタ用素材15m2を用いてプリーツ折りを行い、外寸法が610cm×610cmの間口で奥行きが290cmのアルミ製のフィルタ枠に装着して、エアフィルタユニット中間体を得た。次に、このエアフィルタユニット中間体を予め50℃に加熱した真空乾燥機に入れ、真空乾燥機の内圧を0.05MPaとすることにより、50℃で0.05MPaの気圧の減圧状態の雰囲気中に10分間晒し、ガス状物質の発生を低減させたエアフィルタユニットを作製した。このエアフィルタユニットに装着されたエアフィルタ用濾材から発生する総有機物質の量(トルエン換算重量)を発生ガス推測法により23℃において算出して、次に該エアフィルタユニットから発生する、単位時間における、該総有機物質の量を算出すると、70.5(μg/hr)であった。また、ガス状物質の低減処理によって、エアフィルタ用濾材のプリーツ形状に変化はなく、ユニットとしての圧力損失の変化もなかった。また、このエアフィルタユニットは、ASHRAE 52.1−1992に準じた試験方法によると風速56m3/minの試験条件で、比色法による粒子捕集平均効率が83%であり、中性能フィルタとしての性能を満足するものであり、クリーンルーム用フィルタシステムの外調機に取り付ける中性能フィルタとして好適であった。
【0046】
(比較例4)
エアフィルタユニット中間体に低減処理を行なわなかったこと以外は実施例7と同様にしてエアフィルタユニットを作製した。このエアフィルタユニットに装着されたエアフィルタ用濾材から発生する総有機物質の量(トルエン換算重量)を発生ガス推測法により23℃において算出して、次に該エアフィルタユニットから発生する、単位時間における、該総有機物質の量を算出すると、187.5(μg/hr)であり、クリーンルーム用フィルタシステムの外調機に取り付ける中性能フィルタとして、有機質のガス状物質の発生が多く不適であった。
【0047】
(比較例5)
実施例7において、エアフィルタユニット中間体を50℃で0.05MPaの気圧の減圧状態の雰囲気中に10分間晒した代わりに、比較例5では100℃で0.1MPaの気圧である常圧状態の雰囲気中に10分間晒した以外は実施例7と同様にして、ガス状物質の発生を低減させたエアフィルタユニットを作製した。このエアフィルタユニットに装着されたエアフィルタ用濾材から発生する総有機物質の量(トルエン換算重量)を発生ガス推測法により23℃において算出して、次に該エアフィルタユニットから発生する、単位時間における、該総有機物質の量を算出すると、72.0(μg/hr)であった。しかし、ガス状物質の低減処理によって、エアフィルタ用濾材のプリーツ形状が乱れてしまい、ユニットとしての圧力損失が上昇した。このため、クリーンルーム用フィルタシステムの外調機に取り付ける中性能フィルタとして不適であった。
【0048】
実施例1〜7、比較例1〜5の結果を下記の表1に示す。
【表1】
【0049】
以上のように、実施例1〜6では、本発明による減圧雰囲気中での低減処理によって作製されたエアフィルタ用濾材は、減圧および加熱による低減処理を行なわなかった比較例1と比較して、発生する総有機物質の量(トルエン換算重量)が2.7分の1〜125分の1と極めて少なく、中性能フィルタのエアフィルタ用濾材として好適であった。また、減圧状態での低減処理を行なわなかった比較例2〜3と比較しても、発生する総有機物質の量(トルエン換算重量)が1.9分の1〜48分の1と極めて少なくなっている。また、実施例7では、本発明による減圧雰囲気中での低減処理によって作製されたエアフィルタユニットは、減圧および加熱による低減処理を行なわなかった比較例4と比較して、発生する総有機物質の量(トルエン換算重量)が2.7分の1と極めて少なく、中性能フィルタとして好適であった。また、減圧状態とせずに常圧状態として、実施例7よりも加熱条件を高くすることによって、実施例7と同程度の低減処理を行った比較例5では、エアフィルタ用濾材のプリーツ形状が乱れてしまい、ユニットとしての圧力損失が上昇したため中性能フィルタとして不適であった。
【0050】
【発明の効果】
本発明によるエアフィルタ用濾材の製造方法およびエアフィルタユニットの製造方法によって、クリーンルームなどで使用されるエアフィルタ用濾材やエアフィルタユニットに対して、エアフィルタ用濾材の性能を損なうことなく、しかも短時間でガス状物質の低減処理を効率よく行うことができる製造方法を提供することができる。また、本発明による製造方法によるエアフィルタ用濾材やエアフィルタユニットによって、クリーンルームなどへの汚染ガスの進入を軽減し、クリーンルームなどでの汚染ガスに関する管理濃度を満たすことができる。また、クリーンルームなどに設置されているケミカルフィルタの汚染ガス除去に関する負担を少なくして寿命を延ばし、フィルタシステムの運転維持経費の削減に寄与することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】クリーンルームなどのフィルタシステム
【図2】ダイナミックヘッドスペース法に用いる発生ガス捕集装置の説明図
【符号の説明】
1 外調機
2 プレフィルタ
3 中性能フィルタ
4 エアワッシャ−
5 ケミカルフィルタ
6 HEPAフィルタ
7 ケミカルフィルタ
8 HEPAまたはULPAフィルタ
9 クリーンルーム
10 チャンバー
11 ヘリウムガス
12 固体吸着剤
13 ガス吹出し口
14 試料
Claims (5)
- エアフィルタ用素材を、該エアフィルタ用素材を構成する固体の材料の中で最も低い融点または分解温度より低い温度であり、しかも50℃以上100℃未満で、且つ0.08MPa以下の気圧の雰囲気中に晒すことにより、該エアフィルタ用素材から発生するガス状物質の量を低減処理することを特徴とするエアフィルタ用濾材の製造方法。
- 前記気圧が0.03MPa以下であることを特徴とする請求項1に記載のエアフィルタ用濾材の製造方法。
- 請求項1または2に記載の製造方法によって得られたエアフィルタ用濾材をフィルタ枠に装着してエアフィルタユニットとすることを特徴とするエアフィルタユニットの製造方法。
- エアフィルタ用素材をフィルタ枠に装着してエアフィルタユニット中間体とし、該エアフィルタユニット中間体を、該エアフィルタユニット中間体を構成する固体の材料の中で最も低い融点または分解温度より低い温度であり、しかも50℃以上100℃未満で、且つ0.08MPa以下の気圧の雰囲気中に晒すことにより、該エアフィルタユニット中間体から発生するガス状物質の量を低減処理することを特徴とするエアフィルタユニットの製造方法。
- 前記気圧が0.03MPa以下であることを特徴とする請求項4に記載のエアフィルタユニットの製造方法。
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