JP3830498B2 - インク注入具 - Google Patents

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Description

本発明は、インクカートリッジへインクを補充するために用いられるインク注入具に関し、更に詳しくはインク補充操作が容易なインク注入具に関する。
インクジェットプリンタには、一般に、着脱可能なインクカートリッジが装着されており、該インクカートリッジ内に所定量のインクが充填されている。印刷によってインクカートリッジ内のインクが使い切られた場合には、インクカートリッジを新しいものと交換することになるが、インクカートリッジを交換すると、まだ使用可能な印字ヘッドアセンブリーやケース自体も交換することになるので、交換に要するコストが高くなる。このため、インクが使い切られて空になったインクカートリッジにインクを補充することが行われている。
インクカートリッジへのインクの補充には、補充用のインクが充填されたインク注入具が用いられる(例えば、特許文献1参照)。斯かるインク注入具の材料には、内部のインク残量を分かりやすくするために、一般にポリエチレンやポリプロピレン等の透明樹脂が用いられている。
特開平9−136426号公報
しかしながら、従来用いられていたインク注入具においては、その構成樹脂とインクとの濡れ性が大きすぎる(即ち、表面張力が同程度)ため、インク注入具の内壁にインク液滴が付着しやすい。その結果、インク注入具内部の状態が見づらくなり、インクの補充中にインク残量が確認しにくくなるという欠点があった。特に、インクジェットプリンタに用いられるインクは、吐出安定性等の点からその表面張力がシビアにコントロールされているので、インク液滴の付着性を低下させるために、インク注入具を構成する樹脂の表面張力に応じてインクの表面張力を変更することは困難であった。
従って、本発明の目的は、インク補充操作が容易なインク注入具を提供することにある。
本発明は、ノズル部、中間部およびインク収容部から構成されているインク注入具であって、上記ノズル部には、その下端にノズルが形成され、その上端に上記中間部との取付部である取付外環部と取付内環部とが形成されていると共に、上記ノズル部の内部には、上記ノズルの先端から上記取付内環部の内側に亘ってインク流路が形成されており、上記中間部3は、上記ノズル部における上記取付外環部と上記取付内環部との間に嵌挿される嵌挿環部を有しており、該嵌挿環部の中心に封止棒が立設されており、且つ上記取付外環部の外周面上には凸部が形成されていると共に、上記嵌挿環部の外方には突設壁が形成されていて、該突設壁には上記インク流路の封止時に上記凸部が嵌入される切欠部が設けられており、上記中間部における上記嵌挿環部が上記ノズル部における上記取付外環部と上記取付内環部との間に嵌挿されて上記封止棒によって上記インク流路が封止されている状態から、上記中間部と上記インク収容部とを一体的に上方に向けてスライドさせることによって、上記封止棒による上記インク流路の封止が解除され、上記インク収容部内に収容されているインクが注出されるインク注入具を提供することにより上記目的を達成したものである。
また、本発明は、上記インク注入具の使用方法であって、上記インク注入具の使用前の状態においては、上記中間部における上記嵌挿環部が、上記ノズル部における上記取付外環部と上記取付内環部との間の一番奥まで嵌挿されると共に、上記中間部に備えられた上記封止棒によって上記インク流路が封止された状態となっており、上記インク注入具の使用時においては、上記中間部と上記インク収容部とを一体的に上方に向けてスライドさせることによって、上記封止棒による上記インク流路の封止が解除され、上記インク収容部内に収容されているインクが上記インク流路を通じて上記ノズルから注出されるインク注入具の使用方法を提供するものである。
本発明のインク注入具によれば、インク補充操作が容易になる。
以下、本発明のインク注入具の好ましい実施形態を、図面を参照して説明する。ここで、図1は、本発明のインク注入具の一実施形態を示す分解斜視図であり、図2は、図1に示すインク注入具におけるインク収容部の断面の要部拡大図である。
図1に示す実施形態のインク注入具1は、ノズル部2、中間部3およびインク収容部4から構成されている。
上記ノズル部2には、その下端にノズル21が形成され、該ノズル21の基端部に一対の取手部22,22が側方に向けて突設され、その上端に上記中間部3との取付部である取付外環部23と取付内環部24とが形成されている。そして、上記ノズル部2の内部には、上記ノズル21の先端から上記取付内環部24内側に亘ってインク流路(図示せず)が形成されている。また、上記取付外環部23の外周面上には、一対の凸部25,25が形成されている。
上記中間部3は、上記ノズル部2における上記取付外環部23と上記取付内環部24との間に嵌挿される嵌挿環部31を有しており、該嵌挿環部31の中心に封止棒32が立設されている。該封止棒32は、その基端部から、該封止棒32の立設方向に対して直角に且つ3方向に向けて放射状に延設された結合部(図示せず)を介して、上記嵌挿環部31に結合されている。そして、該結合部間に存在する空間を介して、上記インク収容部4から上記ノズル部2へ向けてインクが流通するようになされている。上記嵌挿環部31の上方には該嵌挿環部31よりもやや大きい直径を有する取付環部35が形成されており、該取付環部35が上記インク収容部4のネック部41と嵌合又は螺合されて上記中間部3と上記インク収容部4とが結合するようになされている。また、上記嵌挿環部31の外方には突設壁33が形成されており、該突設壁33には、上記ノズル部2内の流路の封止時に、該ノズル部2に設けられている上記凸部25が嵌入される切欠部34が設けられている。
上記インク収容部4は、ネック部41を有するボトル状の形状を有し、その断面が円形であることが望ましい。上記インク収容部4は透明材料(これについては後述する)から形成されており、該インク収容部4に収容されているインクの量が一目で分かるようになされている。上記インク収容部4は、その側面にインクの量を計るための目盛りが設けられており、また、その底部に該インク収容部4内部の圧力を上昇させてインクカートリッジへのインクの注入を容易にする蛇腹状のインク注入機構42が形成されている。
而して、本実施形態のインク注入具1においては、図2に示すように、上記インク収容部4が、ポリメチルペンテンを含む内側層43、熱可塑性樹脂を含む外側層44、及び該内側層と該外側層とを接着する接着層45から構成された積層材46で形成されている。
上記積層材46を構成する各層についてそれぞれ説明すると、上記内側層43はポリメチルペンテン(以下、PMPという)を含む樹脂から形成されている。PMPは4−メチルペンテン−1のホモポリマー或いはコポリマーであり、透明性が高いので、上記インク収容部4に収容されているインクの量が外部から一目で分かりやすい。また、PMPは表面張力が低いので、収容されたインクの液滴が該内側層43、特に、上記蛇腹状のインク注入機構42における該内側層43に付着しにくく(即ち、インクの「切れ」がよく)、防汚性が高くなる。従って、遮光性の高い黒色系インクを用いた場合であってもインク補充時にインク液面を視認しやすく、インク残量が一目で分かりやすい。特に、本実施形態のインク注入具1においては、上記蛇腹状のインク注入機構42によってインクを注入するので、インクカートリッジへの注入操作中にインク液滴が上記内側層43に飛散することもあるが、該内側層43をPMPを含む樹脂から形成することによって、飛散したインク液滴の付着およびそれに伴うインク残量の視認性の低下を効果的に防止することができる。表面張力の低い樹脂としてはフッ素系樹脂がよく知られているが、フッ素系樹脂は価格が高価であるためコスト的な難点がある。又、透明性が低くインク残量が確認しにくいことや、更に成形時に腐食性ガスを発生し、金型を傷めやすいといった課題を有している。これに対してPMPはフッ素系樹脂に較べて価格が低く、しかも透明性はフッ素系樹脂よりも高いので上記内側層43の形成材料としてふさわしいものである。PMPとしては、透明性が高く表面張力が低いものであれば、その種類に特に制限はなく、成形方法等に応じて種々のものを用いることができるが、就中、ASTM D 1238に基づくメルトフローレートが25g/10分以下、特に20g/10分以上23g/10分以下のPMPを用いることが好ましい。尚、内側層43には、PMPに由来する透明性、低表面張力、防汚性等の効果を損なわない範囲で、必要に応じて、フッ素樹脂等の他の樹脂をブレンドして用いてもよい。
上記外側層44は熱可塑性樹脂から形成されている。該熱可塑性樹脂としては、上記インク収容部4に保形性を付与し得るものであれば特に制限はなく、例えば低密度ポリエチレン(LDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)等のポリエチレン樹脂やポリプロピレン樹脂などのポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、これらの樹脂のブレンド物やこれらの樹脂を構成する単量体の組み合わせから得られる共重合体等を用いることができる。また、必要に応じて、ガスバリア性樹脂、例えば、ポリビニルアルコールにエチレンを重合させたもの、ポリエチレンテレフタレート(PET)、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)、PVDC等の如きものをブレンドして用いてもよい。特に、透明性、成形性、衝撃強度、クリープ特性に優れること等の点から、上記熱可塑性樹脂として低密度ポリエチレン(LDPE)を用いることが好ましい。
上記接着層45は、上記内側層43と上記外側層44とを接着するために用いられる層であり、その材料としては、該内側層43を形成するPMPと該外側層44を形成する上記熱可塑性樹脂との接着性に優れたものが用いられる。特に、本実施形態のインク注入具1は、上述の通り、上記蛇腹状のインク注入機構42を備えているので、インク注入操作の際に上記積層材46に繰り返しの曲げ応力が加わる。その結果、上記内側層43と上記外側層44とが層剥離しやすくなるが、上記接着層45の材料として適切なものを選択して用いることにより上記層剥離を効果的に防止することができる。例えば、上記外側層44が低密度ポリエチレン(LDPE)から形成されている場合には、上記接着層45の材料として接着性を有する変性ポリオレフィン樹脂を用いることが好ましい。
上記内側層43、上記外側層44および上記接着層45それぞれの厚さは、上記積層材46の透明性、強度、コスト等の点から下記の範囲であることが好ましい。
内側層43:20〜1000μm、特に50〜500μm
外側層44:50〜1500μm、特に100〜1000μm
接着層45:10〜500μm、特に20〜100μm
また、上記積層材46の厚さは、透明性、強度、コスト等の点から100〜2000μmであることが好ましく、500〜1500μmであることが更に好ましい。
上記インク収容部4の製造方法に特に制限はなく、樹脂の物性等に応じて種々の成形方法を選択して用いることができる。例えば、ブロー成形法を用いる場合には、PMPを含む樹脂からなるパリソン、上記接着剤層45を形成する材料からなるパリソン、及び上記熱可塑性樹脂を含む樹脂からなるパリソンがこの順で入れ子構造となるようにした多層ブロー成形法によって上記インク収容部4を容易に製造することができる。
本実施形態のインク注入具1の使用方法について簡単に説明すると以下の通りである。
上記インク注入具1の使用前の状態においては、上記ノズル部2と上記中間部3とは、該中間部3における上記嵌挿環部31が、該ノズル部2における上記取付外環部23と上記取付内環部24との間の一番奥まで嵌挿された状態となっており、該中間部3に備えられた上記封止棒32によって該ノズル部2内のインク流路が封止されている。そして、上記インク注入具1の使用時においては、上記ノズル部2における上記取手部22,22を一方の手で把持した状態で、他方の手で上記中間部3と上記インク収容部4とを一体的に上方に向けて所定距離スライドさせる。このスライドによって、上記封止棒32による上記ノズル部2内のインク流路の封止が解除される。そして、上記インク収容部4における上記蛇腹状のインク注入機構42を用いた注入操作によって、該インク収容部4内に収容されているインクが上記インク流路を通じて上記ノズル21から注出される。
本実施形態のインク注入具1によってインクカートリッジに補充されるインクについて簡単に説明すると、該インクとしては顔料系インク及び染料系インクの何れもが用いられ、特に水性媒体を主体とした水系インクとして用いられることが好適である。これらのインクの表面張力は、印字適性や上記内側層43におけるインクの「切れ」の良さを考慮すると、20℃で20〜60dyne/cmであることが好ましく、25〜50dyne/cmであることが更に好ましい。同様の理由から、インクの粘度は、20℃で1〜20cpsであることが好ましい。
以上、本発明のインク注入具をその好ましい実施形態に基づき説明したが、本発明は上記実施形態に制限されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。
また、本発明のインク注入具は、インクジェットプリンタのインクカートリッジにインクを補充する場合や、その他のインクカートリッジにインクを補充する場合に使用される。
本発明のインク注入具の一実施形態を示す分解斜視図である。 図1に示すインク注入具におけるインク収容部の断面の要部拡大図である。
符号の説明
1 インク注入具
2 ノズル部
3 中間部
4 インク収容部
42 蛇腹状のインク注入機構
43 内側層
44 外側層
45 接着層

Claims (4)

  1. ノズル部、中間部およびインク収容部から構成されているインク注入具であって、
    上記ノズル部には、その下端にノズルが形成され、その上端に上記中間部との取付部である取付外環部と取付内環部とが形成されていると共に、上記ノズル部の内部には、上記ノズルの先端から上記取付内環部の内側に亘ってインク流路が形成されており、
    上記中間部は、上記ノズル部における上記取付外環部と上記取付内環部との間に嵌挿される嵌挿環部を有しており、該嵌挿環部の中心に封止棒が立設されており、
    且つ上記取付外環部の外周面上には凸部が形成されていると共に、上記嵌挿環部の外方には突設壁が形成されていて、該突設壁には上記インク流路の封止時に上記凸部が嵌入される切欠部が設けられており、
    上記中間部における上記嵌挿環部が上記ノズル部における上記取付外環部と上記取付内環部との間に嵌挿されて上記封止棒によって上記インク流路が封止されている状態から、上記中間部と上記インク収容部とを一体的に上方に向けてスライドさせることによって、上記封止棒による上記インク流路の封止が解除され、上記インク収容部内に収容されているインクが注出されるインク注入具。
  2. 上記インク収容部の底部に、上記インク収容部の内部の圧力を上昇させる蛇腹状のインク注入機構が形成されている請求項1に記載のインク注入具。
  3. 上記ノズル部のノズルの基端部に一対の取手部が側方に向けて突設され、該取手部を把持した状態で、上記中間部と上記インク収容部とを一体的に上方に向けてスライドさせる請求項1又は2に記載のインク注入具。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載のインク注入具の使用方法であって、
    上記インク注入具の使用前の状態においては、上記中間部における上記嵌挿環部が、上記ノズル部における上記取付外環部と上記取付内環部との間の一番奥まで嵌挿されると共に、上記中間部に備えられた上記封止棒によって上記インク流路が封止された状態となっており、
    上記インク注入具の使用時においては、上記中間部と上記インク収容部とを一体的に上方に向けてスライドさせることによって、上記封止棒による上記インク流路の封止が解除され、上記インク収容部内に収容されているインクが上記インク流路を通じて上記ノズルから注出されるインク注入具の使用方法。
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