JP3829177B2 - アルミニウム含有制振鋳鉄 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この出願の発明は、アルミニウム含有制振鋳鉄に関するものである。さらに詳しくは、この出願の発明は、制振性に優れたアルミニウム含有制振鋳鉄に関するものである。
【0002】
【従来の技術とその課題】
鋳鉄は、固溶している炭素が凝固時に黒鉛として片状に晶出し、そのときの切欠効果により強度が低下するものの、成形性とともに制振性を有することから、工作機械などのベッド(台部)に用いられている。
【0003】
近年、IC製造装置をはじめとする精密加工機器の高精度化にともない、より高い制振性が要求されるようになってきている。制振性能の向上は、切削加工を行う工具のぶれから生ずる加工精度の低下防止をもたらし、また、光学機器への適用により焦点位置度が向上し、光の良好な絞込みが実現可能となるものと期待される。
【0004】
この出願の発明は、以上の通りの事情に鑑みてなされたものであり、制振性に優れたアルミニウム含有制振鋳鉄を提供することを課題としている。
【0005】
【課題を解決するための手段】
この出願の発明の発明者らは、前述の課題を解決するために鋭意検討した結果、鉄系合金の中でも鋳造性ならびに制振性に優れた普通鋳鉄に、ある特定量の範囲でアルミニウムを添加することにより、普通鋳鉄の制振性が飛躍的に向上することを突き止め、この出願の発明を完成した。
【0006】
すなわち、この出願の発明は、炭素を 2.0 4.5 重量 % 、シリコンを 1.0 3.0 重量 % 含有する普通鋳鉄にアルミニウムが16〜24重量%含有されていることを特徴とするアルミニウム含有制振鋳鉄(請求項1)を提供する。
【0008】
以下、実施例を示しつつ、この出願の発明のアルミニウム含有制振鋳鉄についてさらに詳しく説明する。
【0009】
【発明の実施の形態】
この出願の発明のアルミニウム含有制振鋳鉄は、炭素を 2.0 4.5 重量 % 、シリコンを 1.0 3.0 重量 % 含有する普通鋳鉄にアルミニウムが16〜24重量%含有されたものである。
【0010】
普通鋳鉄を構成する代表的な元素は、鉄、炭素、シリコンなどであり、一般に、炭素を 2.0 4.5 重量 % 、シリコンを 1.0 3.0 重量 % を含有する。このような普通鋳鉄は、元来、比較的優れた制振性を有しているが、前記特定範囲のアルミニウムの含有により、後述する実施例から確認されるように、制振性が飛躍的に向上する。
【0011】
アルミニウムの含有量 24重量%を上回ると、もはや鋳鉄の範疇を超えるように思われる。また、アルミニウムの含有量が 10 14 重量 % であると、鉄とアルミニウムの炭化物が晶出する。晶出する鉄とアルミニウムの炭化物は硬度が高く、ビッカース硬さで 650 が確認されており、制振性の向上にほとんど若しくは全く寄与しないと考えられる。このような鉄とアルミニウムの炭化物の組成は、現状では正確に同定されてはいないが、Fe3AlC0.5、Fe3AlC0.69(重量比)とほぼ考えられている。
【0012】
この出願の発明のアルミニウム含有制振鋳鉄が飛躍的に向上した制振性を有するのは、鉄アルミニウム合金に磁気変態が存在するため、磁区による振動の吸収が起こるのも、制振性の向上をもたらす一因ではないかと考えられる。すなわち、この出願の発明のアルミニウム含有制振鋳鉄では、黒鉛以外の組織において制振性能が向上するものと推定される。
【0013】
この出願の発明のアルミニウム含有制振鋳鉄は、制振性の向上が、安価で、入手容易であり、しかも環境への汚染の少ないアルミニウムの含有により実現されるという点においても特筆されるべきものである。アルミニウム原料には、たとえば、アルミニウムインゴットの他、アルミニウムスクラップやスチール缶なども利用可能である。このように、この出願の発明のアルミニウム含有制振鋳鉄は、廃物のリサイクル利用という、それ自体の特性とは全く別の観点からも、その有効性が指摘される。たとえばスチール缶は、胴部が高品位スチール、蓋部がアルミニウム合金の異種材から形成されている。しがって、この出願の発明のアルミニウム含有制振鋳鉄を作製する際には、胴部と蓋部に分離することなく、アルミニウムの含有量が前記所定範囲となる限りにおいて、スチール缶をそのままの状態で使用可能であると考えられる。
【0014】
また、アルミニウムの含有対象は、以上の通りの普通鋳鉄であり、したがって、この出願の発明のアルミニウム含有制振鋳鉄は、普通鋳鉄と何ら変わりなく作製することができる。
【0015】
以下、実施例を示し、この出願の発明のアルミニウム含有制振鋳鉄についてさらに詳しく説明する。
【0016】
【実施例】
電解鉄と電黒鉛とを黒鉛るつぼに入れ、これを高周波誘導炉内に配置し、電解鉄及び電解黒鉛がすべて溶解したところで、黒鉛るつぼにFe-Si合金(Fe:25重量%、Si:75重量%)を投入し、さらに純アルミニウムを黒鉛るつぼに投入し、1450℃に昇温して溶解させた後、生砂型に鋳込んだ。このときの鋳物の形状は、サイズが150mm×45mm×20mm程度の板状とし、この鋳物から80mm×10mm×1mmの短冊状の試験片を切り出した。
【0017】
なお、作製した鋳物におけるアルミニウム含有量は、0〜24重量%の間で変化させ、また、炭素及びシリコンの含有率は、それぞれ3.2重量%、2.0重量%とした。そして、得られた試験片について、その中央部を強制振動させる自由減衰法により制振性の評価を行った。試験片表面にひずみゲージを貼り、測定した。その結果を示したのが図1のグラフである。
【0018】
図1のグラフにおいて0%Alがいわゆる普通鋳鉄であり、その制振性は比較的優れていると言われているが、アルミニウムの含有量が4重量%、6重量%、16重量%のとき、制振性に顕著な向上が認められる。
【0019】
一方、アルミニウムの含有量が10重量%、14重量%のとき、制振性は、普通鋳鉄とほとんど変わりがなく、制振性能の向上は認められない。これは、鉄とアルミニウムの炭化物が晶出し、この炭化物の硬度が高いためと考えられる。
【0020】
もちろん、この出願の発明は、以上の実施形態及び実施例によって限定されるものではない。アルミニウム含有制振鋳鉄の原料、作製条件などの細部については様々な態様が可能であることは言うまでもない。
【0021】
【発明の効果】
以上詳しく説明した通り、この出願の発明によって、制振性に優れたアルミニウム含有制振鋳鉄が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例において自由減衰法による試験片の制振性を示したグラフである。

Claims (1)

  1. 炭素を 2.0 4.5 重量 % 、シリコンを 1.0 3.0 重量 % 含有する普通鋳鉄にアルミニウムが16〜24重量%含有されていることを特徴とするアルミニウム含有制振鋳鉄。
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