JP3828189B2 - 板ガラスの曲げ成形方法及びその装置 - Google Patents

板ガラスの曲げ成形方法及びその装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は板ガラスを湾曲成形する板ガラスの曲げ成形方法及びその装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
自動車の窓ガラス(特にサイドガラス)等の板ガラスを、湾曲成形する装置として、特開平5−9037号公報「ガラス板の曲げ成形方法およびその装置」や特開平6−191867号公報「曲げ板ガラスの製造装置」に開示されたエアフロート式のものが知られている。これらの公報の要部を次図にて再掲する。但し符号は新たに振り直した。
【0003】
図9は従来の板ガラスの曲げ成形装置の断面図である。
板ガラスの曲げ成形装置100は、板ガラス101…(…は複数個を示す。以下同様。)を軟化温度まで加熱する加熱炉102と、加熱炉102内に水平に敷設した複数の搬送ベッド103…と、加熱炉102内の出口近傍に傾斜角θ1°の上り勾配で敷設した傾斜ベッド104と、加熱炉102外の出口近傍に配置した冷却手段105とからなる。
【0004】
搬送ベッド103…は、上面を板ガラス101…の搬送方向と直交する方向(幅方向)に湾曲形状を呈し、その上面に形成した複数の噴出穴103a…から加熱エア106…を吹き上げて板ガラス101…を浮上させる。この板ガラス101…をチェーン等の搬送手段で搬送ベッド103…に沿って下流方向に搬送する。搬送中の板ガラス101…は加熱炉102内で軟化温度まで上昇し、搬送ベッド103…の湾曲上面に合せて幅方向に湾曲成形する。
【0005】
そして、搬送ベッド103…から傾斜ベッド104に板ガラス101が進入する際に、傾斜ベッド104の吹上げエア圧で板ガラス101を上方に押上げる。これにより、板ガラス101は上方に折り曲がった状態になる。
傾斜ベッド104は、上り勾配である点を除いて、前記搬送ベッド103と同構造である。
【0006】
冷却装置105は、冷却ベッド105aと、冷却ベッド105aの上方に配置した冷却ボックス(図示せず)とからなる。冷却ベッド105aは、傾斜ベッド104の下流側に傾斜角θ2°の下り勾配で敷設されている。
【0007】
従って、板ガラス101の前部101a(///で示す部分)が傾斜ベッド104の頂部104aを通過して傾斜ベッド104aからオーバーハングすると、オーバーハングした前部101aの自重で板ガラス101は下側に折り曲がる。これにより、板ガラス101が搬送方向(長手方向)に湾曲成形して、板ガラス101を幅方向と長手方向の2方向に湾曲成形することができる。
この板ガラス101の下面に冷却ベッド105aから冷却エア107…を吹きつけ、同時に上面に冷却ボックスから冷却エアを吹きつけて板ガラス101を急冷する。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、傾斜ベッド104からオーバーハングした前部101aの自重だけで、板ガラス101を長手方向に湾曲成形する場合、以下に示す(1)〜(7)の欠点がある。
(1)自重作用だけでは板ガラス101の曲げ量に制限があり、板ガラス101を大きく曲げ成形する場合、所望の湾曲形状に曲げ成形することが困難である。
(2)押下力をかける位置が選択できないので、板ガラス101を曲げる場所を任意に選択することができない。
(3)幅方向に深曲げした板ガラス101の場合、断面2次モーメントが大きくなり板ガラスの自重だけでは、長手方向に湾曲成形することが困難である。
(4)傾斜ベッド104からのオーバーハング量が大きくなると、傾斜ベッド104側の板ガラス101の後部が浮き上がり、板ガラス101を所望の形状に湾曲成形することが困難になる。
(5)板ガラス101の湾曲成形に時間がかかり、設備長さが長くなる。
(6)冷却装置105の冷却エア107…が加熱炉102内に侵入すると、薄板の板ガラス101が容易に軟化温度以下になり薄板の板ガラスを湾曲成形することが困難である。
(7)厚板の板ガラス101の場合、自重だけでは板ガラス101を十分に湾曲成形することが困難である。
【0009】
そこで、本発明の目的は、上記(1)〜(7)の欠点を解消して、
(1)板ガラスを長手方向に深く曲げる場合でも、板ガラスを所望の湾曲形状に曲げ成形することができ、
(2)板ガラスの曲げる場所を任意に選択することができ、
(3)幅方向に深曲げ成形して断面2次モーメントの大きな板ガラスを長手方向に湾曲成形することができ、
(4)板ガラスの後部の浮き上がりを防止して板ガラスを所望の形状に湾曲成形することができ、
(5)短時間で板ガラスを湾曲成形することにより、設備長さを短くすることができ、
(6)冷却エアの侵入を防止して、板厚の薄い板ガラスを湾曲成形することができ、
(7)厚板の板ガラスを湾曲成形することができる技術を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために本発明の請求項1は、板ガラスを浮上させるためのエア噴出穴を上面に備えた第1搬送ベッドと第2搬送ベッドとを直列に配置し、第2搬送ベッドを第1搬送ベッドに対して下り勾配とし、軟化温度まで加熱した板ガラスを第1、第2ベッドを通すことによって長手方向に湾曲成形する板ガラスの曲げ成形方法において、前記第1搬送ベッドを上り勾配とし、第1、第2搬送ベッドで側面視略へ字形状とし、前記板ガラスの曲げ工程中に、前記第1搬送ベッド上にある板ガラスの後部を下吹き加熱エアで押えて後部の浮き上がりを抑えたことを特徴とする。
【0011】
板ガラスにかかる押下力を自重と下吹き加熱エアによる押下力とを加えた値にすることにより、板ガラスにかかる押下力が大きくなるので、ガラス板の後部の浮き上がりを抑えることができ、自重だけでは曲げられなかった湾曲形状に曲げ成形することができる。
また、押下力が大きくなるので、板ガラスを短時間で湾曲成形することができる。従って、設備を短くすることができる。さらに、押下力が大きくなるので厚板の板ガラスを曲げ成形することができる。
また、第1搬送ベッドを上り勾配とし、第1、第2搬送ベッドで側面視略へ字形状としたので、第1搬送ベッドは上り勾配となり、曲げ領域を長くしないで、板ガラスを比較的深い湾曲形状に曲げ成形することができる。
【0012】
請求項2は、請求項1において、前記第1、第2搬送ベッドの境界上方から加熱エアを下吹きし、この下吹きエアの押下力と自重とで板ガラスを湾曲成形することを特徴とする。
板ガラスの曲げ工程中に、板ガラスの前部と後部とを下吹き加熱エアで押えて、後部の浮き上がりを抑えることにより、板ガラスを長手方向に所望の形状に湾曲成形することができる。
また、板ガラスの前部と後部に板ガラスを下方に押し曲げる押下力をかけることにより、断面2次モーメントが大きな板ガラスでも長手方向に湾曲成形することができる。
また、第1、第2搬送ベッドの境界上方から加熱エアを下吹きすることにより、下吹き加熱エアでエアカーテンを形成して冷却エアの侵入を阻止することができる。従って、薄板で冷却しやすい板ガラスでも湾曲成形することができる。
【0013】
請求項3は、請求項1又は請求項2において、前記下吹きエア圧を任意に調整することを特徴とする。
下吹きエア圧を任意に調整することにより、板ガラスの所望の場所を曲げることができる。
【0014】
請求項4は、板ガラスの曲げ成形装置であって、板ガラスを軟化温度まで加熱する加熱炉と、この加熱炉内の出口に配置され板ガラスを浮上させるためのエア噴出穴を備え上り勾配に配置された第1搬送ベッドと、該第1搬送ベッドの上り勾配部の上方に設けた加熱エア下吹き手段と、加熱炉外に引きつづき配置され板ガラスを浮上させるためのエア噴出穴を備え下り勾配に配置された第2搬送ベッドとからなることを特徴とする。
【0015】
加熱エア下吹き手段から噴出した下吹き加熱エアによる押下力を、自重に加えることにより、板ガラスの押下力を大きくすることができる。従って、ガラス板の後部の浮き上がりを抑えることができ、自重作用だけでは曲げられなかった湾曲形状に曲げ成形することができる。
また、押下力が大きくなるので、板ガラスを短時間で湾曲成形することができる。従って、設備長さを短くすることができる。さらに、押下力が大きくなるので、厚板の板ガラスを曲げ成形することができる。
【0016】
請求項5は、請求項4において、前記第1、第2搬送ベッドの境界上方から加熱エアを下吹きする加熱エアの下吹き手段を備えることを特徴とする。
板ガラスの曲げ工程中に、板ガラスの前部と後部とを下吹き加熱エアで押えて、後部の浮き上がりを抑えることにより、板ガラスを長手方向に所望の形状に湾曲成形することができる。
また、板ガラスの前部と後部に板ガラスを下方に押し曲げる押下力をかけることにより、断面2次モーメントが大きな板ガラスでも長手方向に湾曲成形することができる。
加熱エア下吹き手段は、第1、第2搬送ベッドの境界上方から加熱エアを下吹きすることにより、下吹き加熱エアでエアカーテンを形成して冷却エアの侵入を阻止することができる。従って、薄板で冷却しやすい板ガラスでも湾曲成形することができる。
【0017】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、図面は符号の向きに見るものとする。
【0018】
図1は本発明に係る板ガラスの曲げ成形装置(第1実施例)の斜視図である。
板ガラスの曲げ成形装置1は、板ガラス2…を軟化温度まで加熱する加熱炉3と、加熱炉3内に水平に敷設した複数の搬送ベッド4…と、搬送ベッド4…の下流側の加熱炉3内の出口近傍に上り勾配に敷設した傾斜ベッド8(第1搬送ベッド)と、傾斜ベッド8の上方に配置し、後述する加熱エア23,30,38,39aを下方に吹き出すエア下吹き手段16と、エア下吹き手段16の下流側に配置した冷却手段40とからなる。
【0019】
搬送ベッド4…は、板ガラス2…の幅方向に湾曲した湾曲上面4a…と、湾曲上面4aから加熱エア5を吹き上げる複数の噴出穴6…とを備える。
傾斜ベッド8は、傾斜角θ1°の上り勾配に傾斜し、搬送ベッド4と同様に、幅方向に湾曲した湾曲上面8aと、湾曲上面8aから加熱エア(9aのみ図示する)を吹き上げる複数のエア噴出穴14とを備える。傾斜ベッド8は頂部8bを長手方向に湾曲成形したものである。
なお、傾斜ベッド8は傾斜角θ1°を任意の角度に調整可能に構成されている。
頂部8bの湾曲上面の曲率の一例を挙げると、板ガラス2の長手方向の曲率半径R1が20,000mm〜40,000mmであり、幅方向の曲率半径R2は20,000mm〜40,000mmであるが、それぞれの曲率半径R1,R2は900mm〜∞の範囲で変更可能である。
【0020】
加熱エア下吹き手段16は、第1エア下吹き手段17と、第1エア下吹き手段17の下流側に配置した第2エア下吹き手段24と、第2エア下吹き手段24の下流側に配置した第3エア下吹き手段31と、第3エア下吹き手段31の下流側に配置した第4エア下吹き手段39とからなる。第1〜第4エア下吹き手段17,24,31,39は図3で説明する。なお、加熱エア下吹き手段16は、第1〜第4エア下吹き手段17,24,31,39の4段に限定されずに多段に分割可能である。
【0021】
冷却手段40は、冷却ベッド41と、冷却ベッド41の上方に配置した冷却ボックス47とからなる。冷却ベッド41は、傾斜ベッド8の下流側に傾斜角θ2°の下り勾配に傾斜し、冷却エア42を上方に吹き出す複数のエア噴出穴46を備える。傾斜ベッド8は傾斜角θ2°を任意の角度に調整可能に構成されている。なお、冷却ボックス47は図2で説明する。
【0022】
図2は本発明に係る板ガラスの曲げ成形装置(第1実施例)の断面図である。
傾斜ベッド8は下部にチャンバーボックス10を備え、チャンバーボックス10は、第1チャンバー11と、第1チャンバー11の下流側の第2チャンバー12と、第2チャンバー12の下流側の第3チャンバー13とからなる。
第1チャンバー11、第2チャンバー12及び第3チャンバー13はそれぞれ独立した空間を備え、各チャンバー11,12,13内から吹き上げる加熱エア圧を個別に調整することができる。各チャンバー11,12,13はエア噴出穴14…に連通する。
さらに、チャンバーボックス10は長手方向の仕切壁(図示しない)を設けて、チャンバーボックス10を碁盤の目状に複数のチャンバーに分割することも可能である。
【0023】
冷却ベッド41は下部にチャンバーボックス43を備え、チャンバーボックス43は、第1チャンバー44と、第1チャンバー44の下流側の第2チャンバー45とからなる。第1チャンバー44及び第2チャンバー45はそれぞれ独立した空間を備え、各チャンバー44、45内から吹き上げた冷却エア圧を個別に調整することができる。冷却ベッド41には、各チャンバー44、45内に連通する複数のエア噴出穴46…を備える。
【0024】
冷却ボックス47は第1冷却ボックス48と、第1冷却ボックス48の下流側の第2冷却ボックス49とからなる。第1冷却ボックス48及び第2冷却ボックス49はそれぞれ独立した空間を備え、各ボックス48、49内から吹き下ろすエア圧を個別に調整することができる。また、第1冷却ボックス48及び第2冷却ボックス49はそれぞれ、各ボックス48、49に連通する複数のエア噴出穴50…を備える。
チャンバーボックス43と冷却ボックス47とは、それぞれ長手方向の仕切壁(図示しない)を設けて、碁盤の目状に複数のチャンバーに分割することも可能であり、各チャンバーにより冷却エアを個別に調整することができる。
【0025】
図3は本発明に係るエア下吹き手段(第1実施例)の斜視図である。
加熱エア下吹き手段16の第1エア下吹き手段17は、加熱炉3内に開口する吸気ダクト18と、吸気ダクト18内に配置して加熱炉3内の加熱エア23を吸気ダクト18内に吸込む吸気ファン19と、吸気ダクト18に連通して吸気ダクト18内に吸い込んだ加熱エア23を充填するボックス20と、ボックス20内に回動自在に配置した流量制御板21とからなる。ボックス20は、底板にエア噴出穴22…を2列に備え、エア噴出穴22…から吹き下ろす加熱エア23の流量を流量制御板21で制御することができる。
【0026】
第2エア下吹き手段24は、第1エア下吹き手段17と同様に、加熱炉3内に開口する吸気ダクト25と、吸気ダクト25内に配置して加熱炉3内の加熱エア23を吸気ダクト25内に吸込む吸気ファン26と、吸気ダクト25に連通して吸気ダクト25内に吸い込んだ加熱エア23を充填するボックス27と、ボックス27内に回動自在に配置した流量制御板28とからなる。ボックス27は、底板にエア噴出穴29…を2列に備え、エア噴出穴29…から吹き下ろす加熱エア30の流量を流量制御板28で制御することができる。
【0027】
第3エア下吹き手段31は、第1エア下吹き手段17と同様に、加熱炉3内に開口する吸気ダクト32と、吸気ダクト32内に配置して加熱炉3内の加熱エア23を吸気ダクト32内に吸込む吸気ファン33と、吸気ダクト32に連通して吸気ダクト32内に吸い込んだ加熱エア23を充填するボックス34と、ボックス34内に回動自在に配置した流量制御板35とからなる。ボックス34は、底板にエア噴出穴36…を2列に備える。エア噴出穴36…から吹き下ろす加熱エア38の流量を流量制御板35で制御することができる。
【0028】
第4エア下吹き手段39は、第3エア下吹き手段31の吸気ダクト32に連通して吸気ダクト32内に吸い込んだ加熱エア23を充填するボックス52と、ボックス52内に回動自在に配置した流量制御板52aとからなる。ボックス52は底板の後端部に加熱エア39aを斜め後方に吹出すエア噴出穴37…を備える。エア噴出穴37…から斜め後方に吹き下ろす加熱エア39a…の流量を流量制御板35で制御することができる。
【0029】
図4は本発明に係るエア下吹き手段(第1実施例)の底部を示した斜視図である。
上述したように、第1エア下吹き手段17のボックス21は、加熱エア23を吹き下ろすエア噴出穴22…を底板に2列に備え、第2エア下吹き手段24のボックス27は、加熱エア30…を吹き下ろすエア噴出穴29…を底板に2列に備え、第3エア下吹き手段31のボックス34は、加熱エア38を吹き下ろすエア噴出穴36…を底板に2列に備える。また、第4エア下吹き手段39のボックス52は、加熱エア39aを斜め後方に吹出すエア噴出穴37…を底板の後端部に備える。
なお、第1実施例ではボックス21,27,34の底板にエア噴出穴22…,29…,36…を2列に備えた場合について説明するが、これに限定されずに、任意の配列に選択することができる。また、ボックス39の底板の後端部に備えたエア噴出穴37…はスリットの適用も可能である。
【0030】
以上に述べた本発明に係る板ガラスの曲げ成形装置(第1実施例)の作用を説明する。
図5は本発明に係る板ガラスの曲げ成形装置(第1実施例)の作用説明図である。
傾斜ベッド8の第1チャンバー11からエア圧PL1の加熱エア9a…を吹き上げ、第2チャンバー12からエア圧PL2の加熱エア9b…を吹き上げる。第3チャンバー13からエア圧PL3の加熱エア9c…を吹き上げる。各エア圧の関係は、
L1≧PL2≧PL3
が好ましいがこの関係に限定されない。
【0031】
また、第1エア下吹き手段17からエア圧PU1の加熱エア23…を吹き下ろし、第2エア下吹き手段24からエア圧PU2の加熱エア30…を吹き下ろす。第3エア下吹き手段31からエア圧PU3の加熱エア38…を吹き下ろす。各エア圧の関係は、特に限定しないが、
エア圧PU1≧PU2≧PU3≧0
が好ましい。
また、上下のエア圧の関係は、加熱エア下吹き手段16のボックス20,27,34の取付け高さ位置に依存するため、特に限定しないが板ガラス2の成形面位置及び形状に影響を与えるため、
L1≧PU1
L2≧PU2
L3≧PU3
となることが望ましい。
【0032】
この状態で、搬送ベッド4…の湾曲上面から加熱エア5…を吹き上げ、搬送ベッド4…の上方に板ガラス2を浮き上げる。次に、板ガラス2を下流側に搬送しながら加熱炉3内で軟化温度まで加熱して、搬送ベッド4…の湾曲上面に合せてを幅方向に湾曲成形する。
板ガラス2の搬送は、例えば搬送ベッド4…の片側に沿ってチェーン(図示せず)を配設し、このチェーンに板ガラス2…の片側を接触した状態でチェーンを走行することによりおこなう。
【0033】
下流側に搬送した板ガラス2が最後部の搬送ベッド4から傾斜ベッド8に進入するとき、傾斜ベッド8から吹き上げた加熱エア9a…が傾斜ベッド8側の板ガラス2を上方に押上げる。これにより、板ガラス2は傾斜ベッド8側に進入するとき上方に折り曲がった状態になり、その後傾斜ベッド8に沿って上昇する。
そして、板ガラス2の先端部が傾斜ベッド8の略中央に到達すると、第1エア下吹き手段17のエア噴出穴22…(図4参照)から吹き出した加熱エア23…で板ガラス2の先端部を押し下げる。
【0034】
図6は本発明に係る板ガラスの曲げ成形装置(第1実施例)の動作説明図である。
板ガラス2の先端部が傾斜ベッド8の頂部8bまで到達すると、第3エア下吹き手段31のエア噴出穴36…(図4参照)から吹き下ろした加熱エア38…で板ガラス2の先端部を上方から吹き付ける。これにより、板ガラス2の先端部にエア圧による押下力がかかる。
【0035】
この場合、傾斜ベッド8の頂部8bは、図1に示すように板ガラス2の長手方向に曲率半径R1で湾曲すると共に幅方向に曲率半径R2で湾曲している。従って、エア圧による押下力及び板ガラス2の自重で板ガラス2を幅方向に曲率半径R2で湾曲成形した状態で、頂部8bの湾曲上面に沿って長手方向に曲率半径R1で湾曲状に曲げ成形する。これにより、板ガラス2を幅方向と長手方向の2方向に湾曲成形することができる。
【0036】
また、第4エア下吹き手段39のエア噴出穴37…(図4参照)から吹き出した加熱エア39a…がエアカーテンを形成して、第1ボックス48から吹き下ろした冷却エア51の板ガラス2側への侵入を防止する。これにより、板ガラス2の温度を軟化温度に維持することができるので、薄板で冷却しやすい板ガラス2の場合でも湾曲成形することができる。
【0037】
このように、傾斜ベッド8の頂部8bに到達した板ガラス2に上方から加熱エア38…を吹き下げてエア圧による押下力をかけることにより、自重だけの場合より大きい押下力をかけることができる。 従って、板ガラス2の自重だけでは曲げられないような湾曲形状に曲げ成形できる。
【0038】
また、傾斜ベッド8の第1、第2、第3チャンバー11,12,13のエア圧を個別に調整し、かつ第1、第2、第3エア下吹き手段17,24,31のエア圧を制御することにより、板ガラス2の前部と後部に板ガラス2を下方に押し曲げる曲げモーメントM1、M2をかけることができる。
従って、幅方向に深曲げ成形して断面2次モーメントが大きくなった板ガラス2でも搬送方向に湾曲成形することができ、さらに、板ガラス2の搬送方向の所望の湾曲形状に曲げ成形することができる。
また、板ガラス2を短時間で湾曲成形することができるので設備長さを短くすることができ、かつ、厚板の板ガラス2を曲げ成形することができる。
さらに、傾斜ベッド8の第1、第2、第3チャンバー11,12,13のエア圧を個別に調整し、かつ第1、第2、第3エア下吹き手段17,24,31のエア圧を制御することにより、板ガラス2の曲げ場所を任意に選択することができる。
なお、上述したように傾斜ベッド8を碁盤の目状の複数のチャンバーに分割し、またエア下吹き手段16のボックス20,27,34,52をそれぞれ横方向に複数のチャンバーに分割(すなわち、碁盤の目状に分割)することにより、各チャンバーのエア圧を制御して板ガラス2をより正確に曲げ成形することができる。
【0039】
図7は本発明に係る板ガラスの曲げ成形装置(第1実施例)の動作説明図である。
頂部8bで長手方向と幅方向の2方向に湾曲成形した板ガラス2は、頂部8bからオーバーハングして冷却ベッド41と冷却ボックス47との間に進入する。進入した板ガラス2を、冷却ベッド41から吹き出した冷却エア42…と冷却ボックス47から吹き出した冷却エア51とで急冷する。
【0040】
この場合、傾斜ベッド8側に残った板ガラス2の後端部に、第2エア下吹き手段24から吹き下ろした加熱エア30…を吹き付ける。これにより、板ガラス2の後端部の上面にエア圧による押下力がかかり、板ガラス2の後端部の浮き上がりを防止することができる。
【0041】
図8は本発明に係るエア下吹き手段(第2実施例)の斜視図である。
第1実施例では、図3に示すように加熱エア下吹き手段16の第1エア下吹き手段17、第2エア下吹き手段24、第3エア下吹き手段31をそれぞれ個別に形成した場合について説明したが、これに限らず、加熱エア下吹き手段53を一体に形成してもよい。
【0042】
エア下吹き手段53はボックス54と、ボックス54に連通した吸気ダクト(図示せず)と、吸気ダクト内に配置した吸気ファン(図示せず)とからなる。ボックス54は仕切壁54a,54b,54cにより、第1チャンバー56と、第2チャンバー57と、第3チャンバー58と、第4チャンバー59とに分割する。
第1〜第4チャンバー56〜59を仕切壁54d,54eでサブチャンバーに3分割して複数のサブチャンバーを碁盤の目状に形成し、各サブチャンバーに流量制御板60…を回動自在に配置する。
各サブチャンバー底部には加熱エアを吹き下ろす噴出穴61…を備える。従って、碁盤の目状に配置した複数のサブチャンバーのエア圧を個々に制御して、各サブチャンバーの噴出穴61…から吹き下ろす加熱エアの吹出力を個々に制御して板ガラス2をより正確に曲げ成形することができる。
【0043】
【発明の効果】
本発明は上記構成により次の効果を発揮する。
請求項1は、板ガラスの自重作用に下吹き加熱エアによる押下力を加えることにより、
板ガラスの押下力を大きくすることができるので、ガラス板の後部の浮き上がりを抑えることができ、自重だけでは曲げられない湾曲形状に曲げ成形することができる。
また、押下力が大きくなることにより、板ガラスを短時間で湾曲成形することができるので設備長を短くすることができ、かつ、厚板の板ガラスを曲げ成形することができる。
また、第1搬送ベッドを上り勾配とし、第1、第2搬送ベッドで側面視略へ字形状としたので、第1搬送ベッドは上り勾配となり、曲げ領域を長くしないで、板ガラスを比較的深い湾曲形状に曲げ成形することができる。
【0044】
請求項2は、請求項1において、第1、第2搬送ベッドの境界上方から加熱エアを下吹きし、この下吹きエアの押下力と自重とで板ガラスを湾曲成形するようにしたので、請求項1の効果に加えるに、板ガラスの曲げ工程中に、板ガラスの前部と後部とを下吹き加熱エアで押えて、後部の浮き上がりを抑えることにより、板ガラスを長手方向に所望の形状に湾曲成形することができる。
また、板ガラスの前部と後部に板ガラスを下方に押し曲げる押下力をかけることにより、断面2次モーメントが大きな板ガラスでも長手方向に湾曲成形することができる。
また、第1、第2搬送ベッドの境界上方から加熱エアを下吹きすることにより、下吹き加熱エアでエアカーテンを形成して冷却エアの侵入を阻止することができる。従って、薄板で冷却しやすい板ガラスでも湾曲成形することができる。
【0045】
請求項3は、請求項1又は請求項2において、前記下吹きエア圧を任意に調整するようにしたので、請求項1又は請求項2の効果に加えるに、下吹きエア圧を任意に調整することにより、板ガラスの所望の場所を曲げることができる。
【0046】
請求項4は、板ガラスの曲げ成形装置であって、板ガラスを軟化温度まで加熱する加熱炉と、この加熱炉内の出口に配置され板ガラスを浮上させるためのエア噴出穴を備え上り勾配に配置された第1搬送ベッドと、該第1搬送ベッドの上り勾配部の上方に設けた加熱エア下吹き手段と、加熱炉外に引きつづき配置され板ガラスを浮上させるためのエア噴出穴を備え下り勾配に配置された第2搬送ベッドとからなるようにした。
請求項4では、加熱エア下吹き手段から噴出した下吹き加熱エアによる押下力を、自重作用に加えることにより、板ガラスの押下力を大きくすることができる。従って、ガラス板の後部の浮き上がりを抑えることができ、自重だけでは曲げられない湾曲形状に曲げ成形することができる。
また、押下力が大きくなることにより、板ガラスを短時間で湾曲成形することができるので設備長を短くすることができ、かつ、厚板の板ガラスを曲げ成形することができる。
また、第1搬送ベッドを上り勾配とし、第1、第2搬送ベッドで側面視略へ字形状としたので、第1搬送ベッドは上り勾配となり、曲げ領域を長くしないで、板ガラスを比較的深い湾曲形状に曲げ成形することができる。
【0047】
請求項5は、請求項4において、前記第1、第2搬送ベッドの境界上方から加熱エアを下吹きする加熱エアの下吹き手段を備えるので、請求項4の効果に加えるに、板ガラスの曲げ工程中に、板ガラスの前部と後部とを下吹き加熱エアで押えて、後部の浮き上がりを抑えることにより、板ガラスを長手方向に所望の形状に湾曲成形することができる。
また、板ガラスの前部と後部に板ガラスを下方に押し曲げる押下力をかけることにより、断面2次モーメントが大きな板ガラスでも長手方向に湾曲成形することができる。
また、加熱エア下吹き手段は、第1、第2搬送ベッドの境界上方から加熱エアを下吹きすることにより、下吹き加熱エアでエアカーテンを形成して、冷却エアの侵入を阻止することにより板ガラスを軟化温度に保つことができる。従って、薄板で冷却しやすい板ガラスでも湾曲成形することができる。
【0048】
さらに、加熱エア下吹き手段は、第1、第2搬送ベッドの境界上方から加熱エアを下吹きすることにより、下吹き加熱エアでエアカーテンを形成して、冷却エアの侵入を阻止することにより板ガラスを軟化温度に保つことができる。従って、薄板で冷却しやすい板ガラスでも湾曲成形することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る板ガラスの曲げ成形装置(第1実施例)の斜視図
【図2】本発明に係る板ガラスの曲げ成形装置(第1実施例)の断面図
【図3】本発明に係るエア下吹き手段(第1実施例)の斜視図
【図4】本発明に係るエア下吹き手段(第1実施例)の底部を示した斜視図
【図5】本発明に係る板ガラスの曲げ成形装置(第1実施例)の作用説明図
【図6】本発明に係る板ガラスの曲げ成形装置(第1実施例)の動作説明図
【図7】本発明に係る板ガラスの曲げ成形装置(第1実施例)の動作説明図
【図8】本発明に係るエア下吹き手段(第2実施例)の斜視図
【図9】従来の板ガラスの曲げ成形装置の断面図
【符号の説明】
1…板ガラスの曲げ成形装置、2…板ガラス、3…加熱炉、4…搬送ベッド、6,46…エア噴出穴、8…傾斜ベッド(第1搬送ベッド)、16,53…加熱エア下吹き手段、41…冷却ベッド(第2搬送ベッド)。

Claims (5)

  1. 板ガラスを浮上させるためのエア噴出穴を上面に備えた第1搬送ベッドと第2搬送ベッドとを直列に配置し、第2搬送ベッドを第1搬送ベッドに対して下り勾配とし、軟化温度まで加熱した板ガラスを第1、第2ベッドを通すことによって長手方向に湾曲成形する板ガラスの曲げ成形方法において、
    前記第1搬送ベッドを上り勾配とし、第1、第2搬送ベッドで側面視略へ字形状とし、
    前記板ガラスの曲げ工程中に、前記第1搬送ベッド上にある板ガラスの後部を下吹き加熱エアで押えて、後部の浮き上がりを抑えた、
    ことを特徴とする板ガラスの曲げ成形方法。
  2. 前記第1、第2搬送ベッドの境界上方から加熱エアを下吹きし、この下吹きエアの押下力と自重とで板ガラスを湾曲成形することを特徴とする請求項1記載の板ガラスの曲げ成形方法。
  3. 前記下吹きエア圧を任意に調整することを特徴とする請求項1又は請求項2記載の板ガラスの曲げ成形方法。
  4. 板ガラスを軟化温度まで加熱する加熱炉と、
    この加熱炉内の出口に配置され板ガラスを浮上させるためのエア噴出穴を備え上り勾配に配置された第1搬送ベッドと、該第1搬送ベッドの上り勾配部の上方に設けた加熱エア下吹き手段と、
    加熱炉外に引つづき配置され板ガラスを浮上させるためのエア噴出穴を備え下り勾配に配置された第2搬送ベッドと、
    からなることを特徴とする板ガラスの曲げ成形装置。
  5. 前記第1、第2搬送ベッドの境界上方から加熱エアを下吹きする加熱エアの下吹き手段を備えることを特徴とする請求項4記載の板ガラスの曲げ成形装置。
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