JP3826005B2 - 湿式材料の圧送吹付け工法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、法面、擁壁、トンネル、地下構造物等の構築,補修,補強に際して、モルタル又はコンクリートを主体とする湿式材料を圧送ポンプとエアを併用して吹き付ける工法であって、特には圧送圧力,スランプ値,湿式材料を構成する骨材の粒形状,粗粒率及び0.3mm以下の微粉末の混入量等の各条件のバランスによる影響を受けず、かつ、スランプ値が1〜27cmの湿式材料を圧送ポンプを用いて圧送,吹付け可能とした湿式材料の圧送吹き付け工法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来からモルタル又はコンクリートを主体とする湿式材料を法面、擁壁、トンネル、地下構造物等の構築,補修,補強等の各種工事現場の施工場所に搬送して吹付ける工法として、ポンプ圧送とエア搬送を併用するポンプ圧送+エア搬送吹付け工法が一般に採用されている。この圧送ポンプとエアを併用して法面、擁壁、トンネル等の構築,補修,補強工事を行う例を図5に基づいて説明する。法面、擁壁を施工する場合は、シリンダ内径100〜160mmのピストン式圧送ポンプ1を使用し、このピストン式圧送ポンプ1から吐出管18を介して導出された曲管2の他端部に絞り管3を取り付け、この絞り管3に2.5インチ(内径約70mm)または3インチ(内径約80mm)の鉄管または高圧ホースからなる圧送配管4を必要本数だけ連結して、数メートル〜数百メートルの長さに及ぶ所定長さの圧送配管路を構築する。ピストン式圧送ポンプ1はピストンとシリンダを有する2基のプランジャポンプP,Mからなり、吸込み管17,17aから吸入した湿式材料をピストンの交互駆動によって吐出管18に連続的に送給可能となっている。
【0003】
絞り管3は曲管2に接続されて圧送方向に向けて口径を縮径した管であり、例えばピストン式圧送ポンプ1のシリンダ内径が100mmとすると、長さ500〜1500mmの間でこれを使用する圧送配管4と同径となる2.5インチ(内径約70mm)まで内径を縮径させる。これは圧送配管4の敷設は、急峻な現場にて手作業を主として行う苛酷な作業であるため、圧送配管4の内径を小さくして重量を軽減させることにより作業性を高める必要があるためである。この鉄管又は高圧ホースからなる圧送配管4の先端部にエア・急結剤合流管5が取り付けられ、該エア・急結剤合流管5にエアホース接続口6と急結剤ホース接続口7が設けてある。更に該エア・急結剤合流管5の先端部に内径38〜50mmのゴムホースまたはポリホース9が長さ5〜40メートル程度取付けられており、該ゴムホースまたはポリホース9の先端部に吹付けノズル10が取り付けられている。エア・急結剤合流管5はエアと合流直後に300〜1000mmの長さで2.5インチ(内径約70mm)又は3インチ(内径約80mm)から内径38〜50mmに絞られている。なお、急結剤ホース接続口7の配設位置は上記エア・急結剤合流管5に限定されず、吹付けノズル10または該吹付けノズル10の数メートル手前に接続することもある。
【0004】
吸込み管17,17aから吸入する湿式材料としてのモルタルは、セメント:細骨材の重量比が1:1〜4、コンクリートはセメント:細骨材:粗骨剤(15mm以下)の重量比が1:1〜4:1〜2を基本とし、スランプ値は8〜27cmである。吹付け作業は作業員が吹付けノズル10を保持した状態で行うため、吹き付け量は時間当り1〜5m3,エア量は2〜7Nm3/min程度が一般的である。スランプ値を8〜27cmとしているのは、圧送ポンプ1を使用して圧送する場合はエア搬送と異なり、圧送配管内を湿式材料が圧密状態で圧送されるので、スランプ値が8cm未満になると安定した圧送ができず、閉塞してしまうことが多々あるため、スランプ値が8〜27cmの流動性を高めたものしか圧送できないためである。
【0005】
上記スランプとは、フレッシュコンクリートの柔らかさの程度を示す指標であり、スランプコーンを引き上げた直後に測った頂部からの下がり長さ(cm)で表した値である。このスランプ値が小さいほどフレッシュコンクリートが固く、スランプ値が大きいほど柔らかいコンクリートであることが分かる。
【0006】
この工法では、斜面を形成する施工面全体に湿式材料を吹付けるベタ吹き工法と、法枠内に湿式材料を吹付ける法枠工法があり、スランプ値が8〜27cmの材料では、湿式材料のダレ及び枠内からの流出量が多くて材料ロスが多く発生する。また、吹付エア圧力により吹付けた材料が移動して均一な吹付けができないなどの問題があるため、急結剤ホース接続口7から液体の急結剤をセメント重量比の3〜8%供給し、吹付け時のスランプ値を1〜6cm程度にダウンさせて吹付けを行っている。即ち、ポンプ圧送のためにスランプ値を大きくして流動性を高め、圧送終了時点において施工のために適した性状に戻すために急結剤を添加してスランプ値を下げている。本来はスランプ値が8cm未満、好ましくはスランプ値が1〜6cmの湿式材料をそのままポンプで圧送できれば理想的であるが、従来は管路閉塞の問題を解決することができず、スランプ値が8cm未満の湿式材料はポンプ圧送することが不可能であるとされている。
【0007】
トンネル及び地下構造物の構築,補修,補強工事をする際の吹付け方法として、作業員が吹付けノズル10を保持しながら吹付けを行う方法と、吹付けロボットを利用して行う方法とがある。作業員が吹付けノズル10を保持しながら吹き付けを行う方法の場合は、前記した図5に示す法面、擁壁の場合とほぼ同様の方法で行われている。
【0008】
一方、吹付けロボットを利用する場合の例を図6に基づいて説明する。なお、図5に示す構成と同一の構成部分には同一の符号を付してある。シリンダ内径120〜180mmのピストン式圧送ポンプ1を使用し、このピストン式圧送ポンプ1からエア合流管5a間での数mの区間を鉄管又は高圧ホースからなる圧送配管4で配管し、圧送配管先端まで絞り管3を使用して3〜4インチ(内径約80mm〜100mm)まで絞り、圧送配管先端部にエア合流管5aを取り付け、そのエア合流管5a先端に内径65〜80mmのゴムホース9を10〜20m取り付け、その先端に吹付けノズル10を取り付けている。エア合流管5aは、エアと合流直後に300〜1000mの長さで3〜4インチ(内径約80mm〜100mm)から内径65mm〜80mmに絞られている。エアホースはエアホース接続口6を介してエア合流管5aに接続し、吹付けノズル10の数メートル手前に急結剤ホース接続口7を設けてある。湿式材料のコンクリートはセメント:細骨材:粗骨剤(15mm以下)の重量比が1:2〜3:1〜2を基本とし、スランプ値は8〜18cmである。材料の吹付け量は時間当り5〜25m3,エア量は10〜20Nm3/min程度が一般的である。このような軟らかい材料では、吹付け後に剥離する危険があって初期強度が必要なため、セメント重量比の5〜10%の粉体の急結剤を使用しているが、粉塵が多く発生して現場環境が悪化したりコスト高となりやすい問題がある。
【0009】
この場合においてもポンプ圧送のためにスランプ値を大きくして流動性を高め、圧送終了時点において施工のために適した性状に戻すために急結剤を添加してスランプ値を下げている。本来は各種施工に適したスランプ値に近い湿式材料をそのままポンプで圧送できれば理想的であるが、従来のポンプ圧送工程では管路閉塞の問題を解決することができず、スランプ値が8cm未満の湿式材料はポンプ圧送することが不可能であるとされている。
【0010】
又、上記何れの場合もエアと合流する圧送配管先端の内径は、圧送ポンプのシリンダ内径に較べて小さいため、圧送ポンプの吐出管又は圧送配管途中で内径を絞る必要があり、上記配合で製造された従来から使用されているスランプ値が8〜27cmの湿式材料であっても、圧送圧力及びスランプ値、湿式材料を構成する骨材の粒形状及び粗粒率,0.3mm以下の微粉末の混入量などの各条件のバランスによっては、圧送中に絞り管や曲げ半径の小さい曲管などの変形抵抗性の大きい管内を通過する際に材料が分離してスランプダウンしたり管内閉塞する場合があり、安定した品質が維持できないばかりでなく、安定したポンプ圧送が行えないという問題がある。このような問題を事前に実験室規模で評価する方法として、加圧ブリーディング試験と変形性評価試験がある。
【0011】
管内閉塞を生じる原因としては、材料分離及び骨材相互のアーチング現象と考えられている。材料分離による管内閉塞の可能性予測は、加圧ブリーディング試験によって評価することができる。吐出管及び圧送配管内のコンクリートの流れは、そのほとんどが管壁におけるすべりによって生じている。このすべりは管壁方向に水分やセメントペーストなどが移動することによる潤滑層の形成と密接な関係がある。この潤滑層の形成が不十分で粗骨材が直接管壁をこする状態では、コンクリートにスムーズな流れが生じない。これらの現象に対して前記加圧ブリーディング試験は水分の移動のしやすさを定量的に把握し、ポンプ圧送性を評価することができる。
【0012】
これに対して絞り管、曲管及び分岐管などの変形管における管内流動には通常の直管内を流動する場合と異なり、湿式材料の形状が変化することによって偶発的に発生する管内閉塞などの変形抵抗性を考慮する必要がある。骨材相互のアーチング現象は、変形部分における骨材相互の衝突や回転によって発生する骨材のブロッキングが主たる原因である。湿式材料の変形性評価試験は、粗骨材粒子群のアーチング現象が発生する可能性を実験室規模のポンプ圧送試験装置によって事前に評価することができる。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
従来から使用されているスランプ値が8〜27cmの湿式材料であっても、圧送圧力及びスランプ値,湿式材料を構成する骨材の粒形状,粗粒率及び0.3mm以下の微粉末の混入量等の各条件のバランスによっては、圧送ポンプの吐出管又は圧送配管途中の絞り管、曲管などの変形抵抗性の大きい管内での閉塞の頻度が多くなり、安定したポンプ圧送ができなくなるばかりでなく、湿式材料の分離によるスランプダウンにより性状変化が起こり、安定した品質を維持することができないという問題がある。
【0014】
又、湿式材料としてスランプ値が8cm以上のものをそのまま吹付けると、吹付け時のダレ、リバウンドロス、枠内からの流出が多くなって材料ロスが多く発生し、作業性が悪化するとともにコスト高になり、更に吹付け時のエア圧力により吹付けた材料が移動して均一な吹付けができないなどの問題点が生じる。その解決手段として急結剤を使用し、吹付け時のスランプ値を1〜6cm程度にスランプダウンさせ、湿式材料のダレ、リバウンドロス、枠内からの流出を少なくすることにより材料ロスをなくして均一な吹付けが行う手段が試みられているが、急結剤を使用することにより粉塵が多く発生して現場環境が悪化したり、コスト高になりやすいという問題がある。
【0015】
前記湿式材料のダレ、リバウンドロス、枠内からの流出を少なくするその他の手段として、湿式材料中に混和剤又はフライアッシュ、高炉スラグ微粉末、シリカヒューム、石灰石粉末などを混入することによって材料の粘性を高くする方法や、法枠の型枠材の開口率を少なくする手段が知られている。しかし何れもコスト高になり、粘性を高くするとエア搬送距離が短くなり、施工性が低下する問題がある。
【0016】
そこで各種の施工に適したスランプ値1〜6cm以下の湿式材料をそのまま圧送して吹付けが行えれば上記各手段が必要なく、急結剤も不要あるいは減量することができて作業環境も改善され、しかもコストが低減される結果となる。しかしながらスランプ値が8cm未満の湿式材料のポンプ圧送は、湿式材料の流動性が乏しいため、断面形状が変化する圧送ポンプの吐出管又は圧送配管の絞り管、曲管を使用すると変形抵抗性の増大に伴って管内圧力損失も増大し、圧送ポンプ内や圧送配管内での閉塞の頻度が多くなり、安定したポンプ圧送ができなくなるばかりでなく、湿式材料の分離によるスランプダウンにより性状変化が起こり、安定した品質を維持することができないという問題が生じる。よってスランプ値が8cm未満の低スランプ値の湿式材料を圧送ポンプを使用して圧送、吹付けることができない。
【0017】
他方で、近年モルタル及びコンクリートの材料である細骨材(砂)、粗骨材(砂利)は何れも川や海,山で採取していた天然産は少なくなり、岩石をクラッシャーなどで粉砕して人工的に作った砕砂、砕石が多く使用されるようになってきている。天然産のものは丸みがあってポンプ圧送性も良好であるが、人工的に作った砕砂、砕石は角ばっていて天然産の砂及び砂利に比べて安定した圧送が行えず、圧送配管の断面形状が変化して変形抵抗性の大きい絞り管や曲げ半径の小さい曲管での閉塞が生じやすいため、天然産のものと人工的に作った砕砂、砕石を混合して使用するケースが多くなり、天然産の混合率は益々小さくなっているのが現状であり、ポンプ圧送が困難となっている。
【0018】
従来はその対策手段として、混合砂の場合は粗い目の砂と細かい目の砂を混合比率を変えて混合することによって粒度分布を変更しており、粒度分布の変更のみでポンプ圧送性が改良されない場合には、セメント量、水量、混和剤の量、スランプ値の変更等を行っている。単一砂の場合には砂の粒度分布を変更することができないため、セメント量、水量、混和剤の量、スランプ値等の変更を行い、変形抵抗性の大きい管内をスムーズに通過する材料に変更する必要性があった。しかし材料の変更を行うためには、現場で圧送試験を繰り返し行い、しかも変更毎に湿式材料の強度試験を行わなければならず、多大な費用と時間を必要とする問題が生じる。
【0019】
更にスランプ値を大きくしたり微粉末とか混和剤量を増加する方法では、材料の粘性が増加して流動性が高められ、ポンプ圧送性が改善されるが、エア搬送距離が短くなって施工性が劣りコスト高になるという問題がある。特にポンプ圧送を併用した施工の場合には、安定した圧送が行えてポンプ内または配管内での閉塞が発生しないように配慮する必要がある。
【0020】
骨材の粒度を数値的に表す指標として粗粒率(FM)が用いられる。この粗粒率は呼び寸法が0.15mm,0.3mm,0.6mm,1.2mm,2.5mm,5mm,10mm,10mm,40mm,80mmの網篩いの一組を用いてふるい分けを行った場合、各ふるいを通らない全部の試料の百分率の和を100で除した値である。細骨材の粗粒率の値は2.7を指標の目安としているが、粒形状や0.3mm以下の微粉末の混入量により異なり、その値は通常2.4から2.9の範囲のものが多く使用されている。又、細骨材の0.3mm以下の微粉末は材料の分離を防ぐ効果があり、通常15%から30%含まれているものが使用されている。
【0021】
モルタル又はコンクリートを主体とする湿式材料が圧密状態で圧送される圧送ポンプの吐出管及び圧送配管を構成する絞り管,曲管などの変形管における管内流動には、通常の直管内を流動する場合と異なって圧送材料の形状が変化することによって偶発的に発生する変形抵抗性を考慮する必要がある。しかし変形性評価試験は絞り管の先端が解放されており、実際の圧送負荷要素が加味されておらず、加圧時の変形抵抗性とアーチング現象を評価するのに不十分であり、管内閉塞の危険性を正確に予測する技術はまだ確立されていないのが現状である。管内閉塞の危険性に対する検討は、実際の施工条件に近い配管条件で試験的に圧送を行い、変形管部での管内閉塞の有無を確認することが最も信頼性が高い。しかしながらこれらの現場実験は、費用、期間及び現場の条件などの制約で必ずしも実施可能であるとは限らない。
【0022】
更に圧送ポンプ内又は圧送配管内で閉塞を起こした場合には、閉塞場所の特定、解除作業、復旧作業、原因究明などを通常1時間以内で行わなければならない。復旧作業が長時間になると材料の品質が保てなくなるため、圧送配管及び圧送ポンプ内の材料を全て排出してから再圧送しなければならない。又、復旧作業が長時間になると圧送配管内及び圧送ポンプ内の材料が硬化してしまうので、圧送配管を廃棄したり圧送配管をやり直さなくてはならないこととなり、多大なコストと労力及び時間が必要になる。なお、変形抵抗性の大きい曲管、絞り管において、曲管は曲率半径を大きくすることによって変形抵抗性を小さくすることができるが、絞り管は長さを長くすると管内閉塞の頻度と変形抵抗性は多少減少する場合もあるが、根本的対策とはいえないという難点がある。
【0023】
本来、スランプ値は材料強度、耐久力、施工性、コストなどを重視して決定しなければならない。特に施工に適したスランプ値でポンプ圧送できれば、材料強度、施工性、コスト面で有効であり、耐久力のある構造物を構築することができる。又、圧送時の流動性を増すために単位水量を増すことは好ましくなく、水セメントを大きくするとコンクリートの耐久性が低下するという問題が生じる。水セメント比を一定にして単位水量を増加させた場合でもセメント量の増加がコスト高になり、ひび割れの増加にも結びつくので耐久性に悪影響を与える。
【0024】
単位水量を減らすと低スランプとなり、ポンプ圧送性は劣るが強度が増加して耐久力のある構造物ができる。更に単位水量を減らして流動性を増大し、ポンプ圧送性を改善する手段として高性能減水剤やAE減水剤を使用することもあるが、材料コストが高くなるばかりでなく、急結剤または急硬剤の使用量が多くなってさらにコスト高となり、またエア搬送距離が短くなって施工性が低下するという問題がある。スランプ値が1〜6cmの湿式材料に何も加えずそのままの状態でポンプ圧送及び吹付けが行えるのが理想であるが、従来はポンプ圧送を安定して行うためには湿式材料に混和剤や微粉末を入れてスランプ値と粘性を増加させ、絞り管などを通過する際の変形抵抗性を小さくした材料をポンプ圧送し、施工面に吹付ける際にスランプ値を1〜6cmにスランプダウンさせるために前記急結剤や急硬剤を使用しているのが実情である。
【0025】
そこで本発明は上記の問題点を解決して、従来から使用されているスランプ値が8〜27cmの湿式材料であっても圧送圧力,スランプ値,湿式材料を構成する骨材の粒形状,粗粒率及び0.3mm以下の微粉末の混入量等の各条件のバランスによる影響を受けず、かつ、従来圧送ポンプによる圧送が不可能とされていた法面、擁壁、トンネル、地下構造物等の構築,補修,補強等の各種施工に適したスランプ値が1〜6cmの低スランプ値の湿式材料であっても圧送ポンプ内又は配管内で閉塞を起こさずにスムーズに圧送してノズルから吹付け可能とした湿式材料の圧送吹き付け工法を提供することを目的とするものである。
【0026】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記目的を達成するために、モルタル又はコンクリートを主体とした湿式材料をエアによる搬送が可能となる地点まで圧送ポンプを使用して所定長さの圧送配管内を圧送し、圧送配管先端に接続した合流管を介してエアを合流させるとともに、該合流管の先端に吹付け作業に適した内径のホースを接続し、ホースの先端に取り付けた吹付けノズルから吹付けるようにした湿式材料の圧送吹付け工法であって、圧送ポンプとしてピストン式圧送ポンプを使用するとともに、該ピストン式圧送ポンプのシリンダ内径と概ね同径以上の内径を有し、かつ、圧送方向に向けて概ね縮径することのない吐出管及び圧送配管を使用することにより、スランプ値が1〜27cmのモルタル又はコンクリートを主体とした湿式材料を圧送可能とした圧送吹付け工法を提供する。
【0027】
そして圧送配管先端又はエアを合流させた後において急結剤を添加して、湿式材料中にエアと急結剤を合流させて吹付けを行う手段及びピストン式圧送ポンプのバルブ構造を平行摺動式とした手段を提供する。
【0028】
かかる湿式材料の圧送吹付け工法によれば、スランプ値が1〜27cmのモルタル又はコンクリートを主体とした湿式材料を、圧送圧力,湿式材料を構成する骨材の粒形状,粗粒率及び0.3mm以下の微粉末の混入量等の各条件のバランスによる影響を受けずに圧送ポンプを用いて圧送し、圧送配管先端に合流させたエアを併用して安定した吹付け作業を行うことができる。
【0029】
【発明の実施の形態】
以下図面に基づいて本発明にかかる湿式材料の圧送吹付け工法の具体的な実施形態を説明する。図1は法面とか擁壁に本発明を適用したケースについて説明する概要図であり、1はシリンダ内径70mmのピストン式圧送ポンプであり、P,Mは該ピストン式圧送ポンプ1を構成するピストンとシリンダを有する2基のプランジャポンプである。このピストン式圧送ポンプ1は吸込み管17,17aから吸入したモルタル又はコンクリートを主体とした湿式材料をピストンの交互駆動によって吐出管18に連続的に送給可能となっている。この吐出管18には、所定長さに配管された圧送配管11が連結されている。この圧送配管11は、2.5インチ(内径約70mm)又は3インチ(内径約80mm)で途中に曲げ半径500Rの曲管部分11aと曲管部分11bとを有している。本発明はこの吐出管18と圧送配管11としてはピストン式圧送ポンプ1のシリンダ内径と概ね同径以上の内径を有し、かつ、概ね圧送方向に向けて縮径することのない管を使用していること、圧送配管路において絞り管を使用しないことが特徴である。
【0030】
前記したようにエアを利用してモルタル又はコンクリートを主体とする湿式材料を法面,擁壁,トンネル,地下構造物等の構築,補修,補強等の各種工事現場の施工場所に吹付ける工法においては、エアによる搬送が可能となる地点まで圧送ポンプを使用して所定長さの圧送配管内を圧送する必要がある。この圧送配管を敷設する法面とか擁壁を構築する現場は急峻な場所が多く、そこに1本の長さが3〜6mの鉄管または高圧ホースからなる圧送配管11を手作業で運搬し、1本、1本接続していかなければならない大変過酷で危険性を伴う作業となるため、圧送配管11はなるべく軽くて小さいものであることが望まれる。そのため、前記したように従来は、吐出効率を高めるために内径の大きい圧送ポンプを使用すると共に、圧送配管路に絞り管を介在させることにより、径の小さい、即ち重量の軽い圧送配管を使用するようにしていた。ちなみに、通常使用される2.5インチ配管は肉厚2.8mmで長さ3mの直管で重量は一本当り16kg、長さ6mのもので31kgある。3インチ配管は肉厚3.2mmで長さ3mの直管で重量は一本当り21kg、長さ6mのもので41kgある。4インチ配管は肉厚3.2mmで長さ3mの直管で重量は一本当り24kg、長さ6mのもので47kgもある。配管と配管を接続するジョイントは、2.5インチ及び3インチ用は、1個当り3.4kg、4インチ用は、6.7kgもある。
【0031】
使用する圧送配管11の最小配管径は最大粗骨材径と圧送負荷により決定される。粗骨材は天然のものと人工的に造られた砕石とがあり、天然ものは丸みがあって圧送性が良いため、最大粗骨材径の3倍以上の配管径が必要であるが、砕石は角ばっていて圧送性が悪いため、最大粗骨材径の4倍以上の配管径が必要となる。
【0032】
湿式材料にコンクリートを使用する場合の最大粗骨材径は10〜15mmのものが多く使用されているので、最大粗骨材径から選定した最小配管径は60mm以上となるため、通常市販されている2.5インチ(内径70.7mm又は69.9mm)の配管を使用することが多い。長距離圧送及び高所圧送の場合は圧送負荷を低減するため、やむを得ず3インチ配管(内径82.7mm又は80.7mm)を使用する場合もある。なお、使用する配管は同じ外形寸法のものであっても、肉厚によって内径に微差を生じるため、前記したように内径に差異を生じる。
【0033】
よって、本発明ではピストン式圧送ポンプ1の吐出管18に連結された圧送配管11として最小配管径の2.5インチ直管(内径70.7mm)を主体として構成し、同様に2.5インチの管径を有し、曲げ半径500Rの曲管部分11aと曲管部分11bを使用して、所定長さの圧送配管路が構成される場合は、ピストン式圧送ポンプ1のシリンダ内径も吐出管18及び圧送配管11、更に曲管部分11a,11bと概ね同径のシリンダ内径として70mmのものを使用する。よって、圧送ポンプ1からエアを合流させる圧送配管先端までの管路が概ね同径以上であり、圧送方向に向けて概ね縮径することがない。なお、「概ね」は圧送配管11相互の接続や、曲管部分11a,11bとの接合時の数mm程度のズレは許容されることを示している。一般に市販されている配管は、外径寸法は同じものでも鋼管の肉厚により、その内径が異なってくる。また、曲管部分11a、11bは、直管を曲げ製作されているために、外側の肉厚は薄くなり、内側の肉厚は厚くなる。2.5インチ管を例にとると、外径寸法76.3mm、肉厚3.2mm、曲げ半径500Rのもので、外側の肉厚は元の肉厚の約93%で2.97mmとなる。曲げ半径を一定として、配管サイズが大きくなれば、肉厚の変化量も大きくなる。よって、耐圧力、磨耗を考慮すると、曲管は直管よりも肉厚の厚いものを使用することとなる。直管と曲管又は、吐出管の許容される段差は、通常圧送ポンプのシリンダ内径の3%以内であるが、低スランプ材料になる程その段差を小さくすることが望ましい。
【0034】
また、圧送配管11の先端部に合流管としてのエア・急結剤合流管12が接続されており、該エア・急結剤合流管12の先端に吹付け作業に適した内径のエアホース接続口6を設けるとともに、急結剤ホース接続口7を設けてある。上記エア・急結剤合流管12から施工現場近くまでは、内面に高分子ポリエチレン樹脂加工が施された摩擦係数及び搬送抵抗の少ない内径44mmのゴムホースもしくはポリホース9が長さ20〜80メートル接続されており、このポリホース9の先端部に内径42mm×38mm×250mm長さの吹付けノズル10が取り付けられている。尚、ポリホース9に曲げ半径を小さくできる内径42mmのゴムホースを5〜20メートル接続してから吹付けノズル10を取り付ける場合もある。エア・急結剤合流管12はエアと急結剤と合流された直後から長さ300〜1000mmの間で2.5インチ(内径約70mm)又は3インチ(内径約80mm)から内径38〜50mmに絞られている。なお、吹付けのためのエアを合流させた後は、エアによって圧密状態とならないため、ゴムホースもしくはポリホース9の内径は吹付け作業に適した内径にまで縮径させるものである。
【0035】
吸込み管17,17aから吸入する湿式材料の材料配合例を説明すると、湿式材料がモルタルの場合には、セメント量が400〜500kg/m3,水セメント比が45〜65%,スランプ値が1〜27cm、好ましくは1〜6cm以下とした。湿式材料がコンクリートの場合には、セメント量が360〜450kg/m3,水セメント比が45〜65%,粗骨材(15mm以下)は360〜750kg/m3,スランプ値が1〜27cm、好ましくは1〜6cm以下とした。
【0036】
法面,擁壁,トンネル,地下構造物等の構築,補修,補強に適したスランプ値について付言しておく。施工に適したスランプとは、法面、擁壁においては、ダレ、法枠からの流出を防ぎ、吹付け時のエア圧力により、吹付けた材料が移動しない程度のスランプ値となり、通常1〜6cmが好ましい。一方トンネル、地下構造物の場合は、側面及び天井面への吹付けとなり、吹付けた材料が剥離し落下する恐れがあり、大変危険であるため、吹付けた瞬間から強度が必要となり、急結剤を使用する。粉体の急結剤を使用する場合、あまり低スランプとなると、逆にリバウンドロス及び粉塵が多くなる場合もあり、通常スランプ値3〜8cm位が好ましい。液体の急結剤を使用する場合は、粉塵も少なくなるため、スランプ値1〜6cm位が好ましい。
【0037】
ピストン式圧送ポンプ1のバルブ構造は、平行摺動式のポンプを使用する。ピストン式圧送ポンプ1の具体的な構成に関しては本願出願人が提案した実公平6−17003号公報に記載されているように、生コンクリートを投入するホッパが連結された吸込み管及び該生コンクリートの吐出管とが並列接続された固定板と、該固定板に摺動可能に装備され、かつ、シリンダとピストンからなるプランジャポンプが直交して接続された摺動板と、該摺動板と上記プランジャポンプとを一体として前記固定板と平行な方向へ往復動作可能とした油圧シリンダと、取付台上に固定されて前記摺動板をガイドする案内台とを備えており、2基のプランジャポンプを摺動板に平行に接続して該摺動板をプランジャポンプと同期して固定板上を水平方向に往復摺動運動することにより、何れか一方のシリンダと吸込み管とを連通させてシリンダ内に生コンクリートを吸入する間に、他方のシリンダが吐出管を連通してシリンダ内に吸入された生コンクリートを押出し、この吸入と押出し動作を交互に行うことによって生コンクリートを連続的に圧送する。
【0038】
その構成を具体的に示すと、この圧送ポンプ1は、図3,図4に示すように、生コンクリートを吸入し吐出するシリンダ14,14aとそれに係合するピストン19,19aと、それらのピストンロッド21,21aの他端部に設けたピストン20,20aを係合する油圧シリンダ27,27aからなる2本のプランジャポンプP,Mを、摺動板(二穴面板)15に穿設した開口部と接続して並列せしめる一方、固定板(三穴面板)30の吐出管接続孔を生コンクリートの吐出管18に、又吸込み管接続孔を吸込み管17,17aと並列接続して摺動板15と摺動可能に対面せしめ、かつ、摺動板15は油圧シリンダ23によりプランジャポンプP,Mと同期して固定板30に摺接して水平方向に往復運動するように構成されている。固定板30の中央部開口に接続した吐出管18に生コンクリートの圧送用配管(図示略)を連結する一方、吸込み管17,17aをホッパに連結した構成となっている。
【0039】
そこで、図3に示すように、シリンダ14と生コンクリートの吸込み管17とを連通させて該シリンダ14内に生コンクリートを吸入している間に、他方のシリンダ14aを吐出管18と連通させて該シリンダ14a内に吸入した生コンクリートを押し出す。また、図4に示すように、シリンダ14aと生コンクリートの吸込み管17aとを連通させて該シリンダ14a内に生コンクリートを吸入している間に、他方のシリンダ14を吐出管18と連通させて該シリンダ14内に吸入した生コンクリートを押し出す。上記の操作を繰り返すことによって切換弁等の複雑な構成を要することなく、かつ、切り換え部における流路抵抗を増大させることなくホッパ内に投入された生コンクリートを固定板30に連結された吐出管18に連続的に圧送できるようにしたものである。この平行摺動式のピストン式圧送ポンプ1は切換弁などの複雑な弁構成が不必要であり、構成が簡易で生コンクリート等の湿式材料をスムーズに連続圧送することができる。
【0040】
以下に本発明にかかる湿式材料の圧送吹付け工法の具体的な実施例及び従来例を説明する。
[実施例1及び従来例1]
ピストン式圧送ポンプ1のシリンダ内径を実施例1として80mm,従来例1として100mmの2種類を用意した。ストローク長さは両方とも550mmとし、バルブ構造は平行摺動式、モルタル配合はセメント量420kg/m3、海砂824kg/m3、川砂828kg/m3、FM(砂の粗粒率)は2.7、水234kg/m3で、スランプ値は1.7cmとなった。実施例1に係るシリンダ内径が80mmのものはピストン式圧送ポンプ1の吐出口18に、シリンダ内径と概ね同径の3インチ曲管部分11a(内径80.7mm×500R×90°)を接続し、その先に同様にシリンダ内径と概ね同径の3インチ圧送配管11(内径82.7mm×6m)を5本接続し、配管長さを30mとした。従来例1に係る内径100mmのものはピストン式圧送ポンプ1の吐出口に4インチ曲管(内径105.7mm×500R×90°)を接続し、その先に絞り管(内径105.7mm×82.7mm×1m)を接続し、その先に3インチ直管(内径82.7mm×6m)を5本接続し、配管長さを31mとして2台のピストン式圧送ポンプ1を同時に駆動した。
【0041】
ピストン式圧送ポンプ1の理論吐出量は両方とも時間当り6m3の圧送速度であり、吐出効率の違いを測定した結果、実施例1に係るシリンダ内径が80mmの場合は93%、従来例1に係るシリンダ内径が100mmの場合は91%であった。尚、シリンダ内径が100mmの場合は圧送中絞り管で閉塞ぎみで圧送圧力が不安定となるので逆送運転を繰り返し行わなければならず、安定した圧送が行えなかった。一方、シリンダ内径が80mmの場合は一度も不安定とならず、安定した圧送が行えた。
【0042】
[実施例2及び従来例2]
ピストン式圧送ポンプ1のシリンダ内径を実施例2として80mmのものを、従来例2として100mmの2種類を用意し、ストローク長さは両方とも550mmとした。バルブ構造は平行摺動式、モルタル配合はセメント量420kg/m3、海砂488kg/m3、砕砂1166kg/m3、FM(砂の粗粒率)は2.59、水241kg/m3で、スランプ値は7.3cmとなった。モルタルはミキサー車内に放置してスランプダウンの経過をみた。約30分後スランプ値は4cmになり、更に約25分後には1.2cmまでスランプダウンした。このスランプダウンしたモルタルを用いて圧送を行った。圧送配管は実施例1と同じ条件とし、2台のピストン式圧送ポンプ1を同時に駆動した。
【0043】
ピストン式圧送ポンプ1の理論吐出量は両方とも時間当り6m3の圧送速度であり、吐出効率の違いを測定した結果、実施例2に係るシリンダ内径が80mmの場合は71%、従来例2に係るシリンダ内径が100mmの場合は80%であった。従来例2に係るシリンダ内径が100mmの場合は圧送を一次中断してから再圧送する際に絞り管で閉塞ぎみで圧送圧力が不安定となり、更に圧送不能となり、逆送運転を繰り返し行っても閉塞が解除できなかった。これに対して実施例2に係るシリンダ内径が80mmの場合一度も不安定とならず、安定した圧送が行えた。
【0044】
[実施例3及び従来例3]
ピストン式圧送ポンプ1のシリンダ内径が実施例3として70mmのものを、従来例3として100mmの2種類を用意し、ストローク長さは両方とも550mmとした。バルブ構造は平行摺動式、モルタル配合はセメント量420kg/m3、海砂673kg/m3、川砂1032kg/m3、FM(砂の粗粒率)は2.6、水210kg/m3で、スランプ値は1.7cmとなった。実施例3に係るシリンダ内径が70mmのものはピストン式圧送ポンプ1の吐出口に圧送ポンプシリンダ内径と概ね同径の2.5インチ曲管部分11a(内径69.9mm×500R×90°と30°)を接続し、その先に圧送ポンプシリンダ内径と概ね同径の2.5インチ圧送配管11(70.7mm×6m)を17本接続し、配管長さを102mとした。従来例3に係るシリンダ内径100mmのものはピストン式圧送ポンプ1の吐出口を長さ450mmの間で内径100mmから80.7mmに絞り、その先に3インチ曲管(80.7mm×500R×90°と30°)を接続し、その先に絞り管(内径80.7mm×69.9mm×1m)を接続し、その先に2.5インチ直管(内径69.9mm×6m)を17本接続し、配管長さを103mとして2台のピストン式圧送ポンプ1を同時に駆動した。
【0045】
ピストン式圧送ポンプ1の理論吐出量は両方とも時間当り6m3の圧送速度であり、吐出効率の違いを測定した結果、実施例3に係るシリンダ内径が70mmの場合は77%、従来例3に係るシリンダ内径が100mmの場合は78%であった。尚、従来例3に係るシリンダ内径が100mmの場合は圧送を一次中断してから再圧送する際の圧送圧力が不安定となったが、閉塞までには至らずに圧送可能であった。実施例3に係るシリンダ内径が70mmの場合は一度も不安定とならず、安定した圧送が行えた。
【0046】
[実施例4]
実施例3で行った湿式材料の配合で圧送配管も同じ条件で、シリンダ内径70mmの圧送ポンプを使用し、圧送配管先端にエア・急結剤合流管を接続しエアを合流させる様にして、その先に内径44mmのポリホースを40m接続し、その先に内径42mmのゴムホースを20m接続し、その先に吹付けノズルを接続してエア搬送距離を60mとし、吹付け面は約80°の傾斜角度にし、1m角の区間を10cm厚さで吹付けを行った。圧送ポンプの理論吐出量は、時間当り6m3の圧送速度で行い、急結剤は使用せず、エア量は1分間当り5Nm3の量を合流させ、エアの元圧力は0.3〜0.35MPaであった。吹付け材料のダレ及びエア圧力による移動もなく均一な仕上がりとなり、脈動も少なく、安定した圧送吹付けが行えた。
【0047】
以上説明した実施例1〜4及び従来例1〜3より、ピストン式圧送ポンプ1の吐出効率(吸込効率)は理論吐出量、セメント量が同じでスランプ値もほぼ同じものでも、海砂と川砂によっても吐出効率(吸込効率)が違ってくることが判明した。また、シリンダ内径の違いによる吐出効率(吸込効率)はスランプ値が1.7cmではほぼ同じ値であった。しかし、スランプ値が1.2cmまで低下した状態ではシリンダ内径の小さい実施例に係る80mmの場合は、従来例に係る内径100mmのものに比べて9%低下した。同じスランプ値でも吐出効率(吸込効率)のバラツキが生じるのは材料の粘性の違いによるものと考えられる。
【0048】
実施例1では海砂と川砂のFM(砂の粗粒率)=2.7であり、微粉分が少なく粘性が低い材料であったため吐出効率(吸込効率)は高かった。このような材料は、エア搬送距離も長くできる傾向になる。実施例2,3の砂は海砂と砕砂でFM(砂の粗粒率)は両方とも約2.6であり、実施例1のものに比べると全体に細砂で、微粉分が多く含まれている砕砂の割合が砂全体の60〜70%と多かったため、実施例1のものに比べると粘性が高い材料となって吐出効率(吸込効率)は低下した。このような材料はエア搬送距離が短くなる傾向にある。また、絞り管を設けた配管の方は閉塞または圧送が不安定になる傾向がある。絞り管の無い配管にすると一度の閉塞もなく、安定した圧送を行うことができる。
【0049】
ピストン式圧送ポンプで、シリンダ内径を小さくし、従来と同じ様な時間当りの吐出量を必要とした場合、その分だけピストンスピードを速くしなければならない。しかも、従来ピストン式圧送ポンプでは圧送が不可能とされていた8cm未満の極低スランプ値の材料を使用することは、材料の吸い込み効率が大幅に低下して、安定した圧送が出来ないのではないかと懸念されたが、実施例及び従来例1から3で行った結果、ほとんど差はみられないことが証明された。ちなみに、理論吐出量時間当り6m3の圧送速度でピストンスピードを比較すると、シリンダ内径100mmのものは秒速0.24m、シリンダ内径70mmのものは秒速0.57mである。よって、本発明は、施工に必要な最小配管径のものに、圧送ポンプのシリンダ内径を合わせた状態で、かつ、施工に必要される圧送量を確保でき、従来不可能とされてきた領域のスランプ値8cm未満の圧送吹付けを可能とした。
【0050】
次に、図2に基づいてトンネルとか地下構造物に本発明を適用したケースについて説明する。作業時に作業員が吹付けノズル10を保持しながら吹付けを行う場合には、前記図1に示す法面、擁壁の場合とほぼ同様の方法で行い、吹付けロボットで行う場合には、吐出量は最大時間当り25m3と大きくなり、圧送ポンプのシリンダ径も大きくしなければならない。吸い込み効率を考慮すると、ピストン式圧送ポンプ1のピストンスピードは0.6m/sec以内が望ましい。このピストンスピードにするとシリンダ内径は160mmとなり、圧送配管の配管径は6インチ管(内径160.2mm又は、155.2mm)を使用する。圧送配管は、数mの長さの配管でロボット台車に固定しているため、配管径は多少大きくても作業性は変わらない。
【0051】
図2はその概要図であり、基本的な構成は図1に示した法面とか擁壁に適用したケースとほぼ一致しており、同一の構成部分に同一の符号を付して表示してある。ピストン式圧送ポンプ1のシリンダ内径は160mm,圧送配管11は6インチ直管、曲管(曲げ半径500R)を使用し、先端にエア合流管5aを接続し、このエア合流管5aにエアホース接続口6を設けてある。エア合流管5aの先端に内径65mmのゴムホース9を7〜15m接続し、ゴムホース9の先端に粉体又は液体の急結剤合流管13を接続し、その先に内径65mmのゴムホース9を接続して該ゴムホース9の先端部に内径65mm×50mm×1m長さの吹付けノズル10を取り付けてある。吸込み管17,17aから吸入する湿式材料の材料配合例は法面とか擁壁に本発明を適用したケースの配合例と同一である。
【0052】
[実施例5]
ピストン式圧送ポンプ1のシリンダ内径を160mm、ストローク長さを550mmとし、バルブ構造は平行摺動式、モルタル配合は、セメント量420kg/m3、海砂824kg/m3、川砂828kg/m3、FM(砂の粗粒率)=2.75、水234kg/m3で、スランプ値は3.3cmとなった。圧送配管は圧送ポンプシリンダ内径と概ね同径の6インチ管(内径160.6mm)の直管を32m接続し、その途中に圧送ポンプシリンダ内径と概ね同径の6インチ曲管(内径155.2mm×500R×90°)を5本接続した。圧送ポンプの理論吐出量を時間当り20m3の圧送速度で行い、吐出効率は76.4%で安定した圧送が行えた。
【0053】
[実施例6]
実施例5と同じ条件で、コンクリート圧送を行った。コンクリート配合は、セメント量360kg/m3、海砂715kg/m3、川砂718kg/m3、FM(砂の粗粒率)=2.75、15mm以下の粗骨材360kg/m3、水204kg/m3で、スランプ値は2.9cmとなった。圧送ポンプの理論吐出量を時間当り20m3の圧送速度で行い、吐出効率は94%で安定した圧送が行えた。
【0054】
【発明の効果】
本発明によれば、ピストン式圧送ポンプから該ピストン式圧送ポンプのシリンダ内径と概ね同径以上の圧送ポンプの吐出管及び圧送配管を使用して湿式材料を圧送し、吹付けノズルから吹付けるようにしたことにより、従来使用されているスランプ値が8〜27cmの湿式材料であっても圧送圧力、スランプ値、湿式材料を構成する骨材の粒形状、粗粒率、0.3mm以下の微粉末の混入量などの各条件バランスによる影響を受け難く、かつ、従来はポンプ圧送が不可能とされていたスランプ値が1〜6cmの湿式材料を圧送ポンプの吐出管及び圧送配管内での閉塞を起こすことなくスムーズに圧送することができる。特に法面とか擁壁の施工において、時間当りの吹付量を4〜5m3確保できる速度で湿式材料を圧送した場合、スランプ値が1.2〜1.7cmのものでも71〜93%であり、スランプ値が2〜6cmのものであれば吐出効率は80%以上を安定して確保できて、吹付け時の脈動が少なく安定した吹付けを行うことができる。
【0055】
トンネルとか地下構造物の施工でコンクリートを時間当りの吹付量15〜20m3確保できる速度で湿式材料を圧送した場合、スランプ値が3cmのものでも吐出効率は94%であり、スランプ値が2〜6cmのものであれば吐出効率は80%以上を安定して確保できて、湿式材料の脈動が少なく安定した吹付けを行うことができ、急結剤の使用量を少なくでき、作業環境を改善し、コストを低減できる。
【0056】
本発明で開示したようにスランプ値が1〜6cm以下で粘性と流動性の少ない湿式材料を用いてポンプ圧送吹付け施工を行うことにより、エア搬送距離を長くとることができるとともに圧送配管の段取り替えが少なくてすみ、各種工事における施工性を高めることができる。
【0057】
また、吹付け材料のエア圧力による移動が少なくなって仕上げ易く、材料の脈動も少なくて作業員による吹付け操作が容易になる。法枠などの枠の材料は開口率の大きいクリンプ金網でも使用可能であり、枠の設置が容易となる。更に急結剤又は急硬剤を使用しなくても施工できる工事が大幅に多くなり、又急峻な場所や湧水している所でも急結剤や急硬剤の使用量を少なくすることができる。
【0058】
更に従来は岩石を粉砕して人工的に作った砕砂、砕石が天然の砂及び砂利に比べてポンプ圧送性が著しく劣るため、水、セメントの微粉末、混和剤などを入れてスランプ値を大きくし、流動性を増加させているのに対して、本発明によればそのような低スランプ材料であっても安定した圧送ができ、かつ、ポンプ内または配管内での閉塞を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明にかかる湿式材料の圧送吹付け工法を法面とか擁壁に適用した概要図。
【図2】本発明にかかる湿式材料の圧送吹付け工法をトンネルとか地下構造物に適用した概要図。
【図3】本発明に使用する圧送ポンプの構造を示す説明図。
【図4】本発明に使用する圧送ポンプの構造を示す説明図。
【図5】従来の圧送ポンプとエアを併用した圧送吹付け工法を法面、擁壁に適用した概要図。
【図6】従来の圧送ポンプとエアを併用した圧送吹付け工法をトンネル、地下構造物に適用した概要図。
【符号の説明】
1…(ピストン式)圧送ポンプ
6…エアホース接続口
7…急結剤ホース接続口
9…ゴムホース又はポリホース
10…吹付けノズル
11…圧送配管
11a…曲管部分
12…エア・急結剤合流管
13…急結剤合流管
17,17a…吸込み管
18…吐出管
整理番号 P3357
Claims (3)
- モルタル又はコンクリートを主体とした湿式材料をエアによる搬送が可能となる地点まで圧送ポンプを使用して所定長さの圧送配管内を圧送し、圧送配管先端に接続した合流管を介してエアを合流させるとともに、該合流管の先端に吹付け作業に適した内径のホースを接続し、ホースの先端に取り付けた吹付けノズルから吹付けるようにした湿式材料の圧送吹付け工法であって、
圧送ポンプとしてピストン式圧送ポンプを使用するとともに、該ピストン式圧送ポンプのシリンダ内径と概ね同径以上の内径を有し、かつ、圧送方向に向けて概ね縮径することのない吐出管及び圧送配管を使用することにより、スランプ値が1〜27cmのモルタル又はコンクリートを主体とした湿式材料を圧送可能としたことを特徴とする湿式材料の圧送吹付け工法。 - 圧送配管先端又はエアを合流させた後において急結剤を添加して、湿式材料中にエアと急結剤を合流させて吹付けを行う請求項1に記載の湿式材料の圧送吹付け工法。
- ピストン式圧送ポンプのバルブ構造を平行摺動式とした請求項1又は2に記載の湿式材料の圧送吹付け工法。
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