JP3825623B2 - 溶接部の耐破壊特性に優れた高張力鋼 - Google Patents
溶接部の耐破壊特性に優れた高張力鋼Info
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、大きな塑性変形を受けた場合に、潜在欠陥や応力集中部の存在によって破壊の起点となる場合の多い溶接部、即ち、溶接熱影響部(Heat Affected Zone:HAZ)においては、断面収縮や脆性破壊による構造物の不安定崩壊や破壊に至るまでの延性破壊の発生伝播におけるエネルギー吸収が大きいため、該破壊を防ぐか、破壊のダメージを最小限にくい止めることができる溶接部の耐破壊特性に優れた高張力鋼に関するものであり、大地震時において、繰り返し大変形を受ける可能性のある建築構造物用鋼や衝突によって大きな塑性変形をともなう破壊を生じる可能性のある船舶用鋼として特に有用であるが、その他、溶接部の耐破壊性能を必要とする構造物用鋼として使用できる。またその形態としては、板厚が6mm以上の厚板、鋼管素材、あるいは形鋼に適用可能である。
【0002】
【従来の技術】
構造物において、溶接部は形状の不連続性から応力集中部を有しやすく、また溶接欠陥や残留応力の存在により、一般的に破壊の起点となる。溶接部において、最終の不安定破壊に至るまでの延性破壊の発生・伝播におけるエネルギー吸収を大きくすることが構造物全体の耐破壊性能を高めることになる。
【0003】
延性破壊の発生・伝播におけるエネルギー吸収量を増加させるためには、同一強度でみた場合、不均一変形、断面収縮が生じるまでのエネルギー吸収を高めることに対応する、通常の引張試験における最大荷重に至るまでの伸びで示される一様伸びを向上させるとともに、不均一変形、断面収縮後に生じる延性き裂の伝播抵抗をともに高める必要がある。加えて、該延性破壊過程の早期に脆性破壊に移行しないことも必須要件となる。
【0004】
なお、延性き裂の伝播抵抗の評価測定手段は様々あるが、実構造物におけるような、複雑な応力条件で、かつ歪速度も一定しないような場合には、2mVノッチシャルピー衝撃試験における上部棚エネルギーが良好な指標となる。
【0005】
一様伸びについては、従来から、母材における向上技術は種々提案されている。代表的な方法は、焼入れと焼戻しの間にフェライト(α)/オーステナイト(γ)二相域に加熱する中間熱処理を施す方法(QLT処理)、や加工熱処理法(TMCP)において、熱間圧延後、加速冷却をαが一定量生成するまで遅らせる方法(DLT法)、等により軟質のα相と硬質のマルテンサイト相からなる二相鋼とする方法である。しかしながら、二相鋼は硬質相のマルテンサイトが比較的粗大な形態で存在する故に、一般的に耐延性き裂伝播特性と靭性がともに劣るため、耐破壊特性としては必ずしも高くない。
【0006】
他に、高一様伸び鋼として、特開平7−233414号公報に開示されているような、αの延性向上に着目した方法があるが、TMCPにおける加速冷却を2段階の冷却速度で実施する必要がある等の問題があるとともに、本発明のように耐破壊特性向上を目指したものでなく、延性き裂の耐伝播特性は、本発明によりも劣るものと考えられる。
【0007】
ただし、上記の一様伸び向上手段は全て母材に関してのもので、加工熱処理や再加熱処理によって所望の組織を作り込むことを基本としている。しかしながら、融点近くの高温に加熱される溶接熱影響部(HAZ)においては、母材で作り込んだ組織はほぼ全面的に解消されてしまうため、前記一様伸び向上手段は溶接熱影響部には適用できない。また、母材の一様伸び向上に好ましい組織要件を、熱履歴を自由に制御できない溶接熱影響部において実現することはほぼ不可能であり、母材とは異なった、一様伸び向上指針が求められる。
【0008】
一方、延性き裂の耐伝播特性の向上技術については母材においてすら明確ではない。特に、一様伸びと同時に向上させて耐破壊特性を向上させる方法、さらには該延性特性と靭性とを同時に向上させる方法は母材、溶接熱影響部ともほとんど示されていない。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記従来技術に鑑み、耐破壊特性として、溶接熱影響部、特に組織の粗大化が著しく、耐破壊性能が劣化しやすい、溶接入熱が10kJ/mmを超えるような大入熱溶接における溶接熱影響部の高一様伸び、高延性き裂伝播特性(高シャルピー上部棚エネルギー)、高靭性の3特性を同時に満足する鋼を提供することを課題とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
一様伸びを極限的に高めるには、従来から示されてきたように、軟質相であるα主体組織に硬質相としてマルテンサイトあるいはマルテンサイト中に一部残留γを含む相を分散させることが好ましいが、溶接熱影響部において組織形態を実現することは困難であり、また、形成できたとしても組織は靭性や耐延性き裂伝播特性が劣るため、総合的に耐破壊特性を向上させる目的のためには最良とは言えない。
【0011】
そこで、本発明者らは、大入熱溶接の溶接熱影響部において形成が可能で、かつ、高一様伸び、高延性き裂伝播特性、高靭性がともに良好で、総合的に耐破壊特性が向上する組織形態とその達成手段とを研究した。その結果、溶接熱影響部の組織を微細化し、かつ硬さを一定以下にすることで一様伸びの劣化を抑制した上で、耐延性き裂伝播特性を向上させ、かつ延性き裂からの脆性破壊を抑制できることを見いだした。具体的な組織要件は詳細な実験により検討し、フュージョンライン(溶接金属と溶接熱影響部との境界)から3mm以内の溶接熱影響部組織が、下記の要件を満足する必要があることを明らかにした。
旧オーステナイト粒径:200μm以下、
ビッカース硬さ:240以下、
フェライト分率:30%以上
【0012】
ここで、旧オーステナイト粒とは、溶接によって一旦高温のオーステナイト域に加熱された段階でのオーステナイト単相状態での結晶粒のことを指す。冷却後は変態組織となって変態前のオーステナイト粒界は解消されるが、フェライトやベイナイト相は粒界から優先的に生成するため、変態組織の形態から変態前のオーステナイト粒界位置を推定することは十分可能である。
【0013】
また、大入熱溶接において、上記組織要件を達成するためには、高温に晒される溶接熱影響部において、加熱オーステナイト粒の成長を抑制できる強力なピン止め粒子が鋼中に高密度に分散していることが好ましく、特に、ピン止め粒子として、微細な酸化物を主体とする熱的に安定な粒子を高密度に分散させることが有効である。
【0014】
さらに、延性、靭性確保のためには、上記組織要件に加えて、個々の合金元素量も限定する必要があるとともに、溶接熱影響部において、ビッカース硬さ:240以下、フェライト分率:30%以上を確実に満足するためには、炭素当量も一定以下(0.4%以下)に限定すべきであることも見いだした。
【0015】
本発明は、上記知見に基づいて、発明するに至ったものであり、その要旨とするところは以下のとおりである。
【0016】
(1) 質量%で、
C:0.01〜0.18%、
Si:0.05〜0.5%、
Mn:0.1〜2%、
P:0.01%以下、
S:0.01%以下、
Al:0.005〜0.06%、
N:0.001〜0.01%、
Ti:0.005〜0.03%、
Ca:0.0005〜0.003%を含有し、
かつ、下記(1)式で示される炭素当量(Ceq.)が0.4%以下で、残部Fe及び不可避不純物からなる成分の鋼であって、
鋼中に円相当径で0.005〜2μmの酸化物粒子を単位面積当たりの個数で、100〜3000個/mm 2 含有し、該酸化物粒子の組成が少なくともCa、Al、O、Sを含み、Oを除いた元素が質量比で、
Ca:5%以上、
Al:5%以上、
S:0.2%以上、
であり、しかも、溶接部のフュージョンラインから3mm以内の溶接熱影響部組織が、
旧オーステナイト粒径:200μm以下、
ビッカース硬さ:240以下、
フェライト分率:30%以上、
であることを特徴とする溶接部の耐破壊特性に優れた高張力鋼。
Ceq.=C%+Mn%/6+(Cu%+Ni%)/15+(V%+Mo%+Cr%)/5 ・ ・ ・(1)
【0017】
(2) 前記酸化物粒子の組成が少なくともCa、Al、O、Sを含み、Oを除いた元素が質量比で、
Ca:5%以上、
Al:5%以上、
S:1%以上、
を含有することを特徴とする前記(1)に記載の溶接部の耐破壊特性に優れた高張力鋼。
【0018】
(3) 質量%で、さらに、
Ni:0.1〜2%、
Cu:0.05〜1.5%、
Cr:0.05〜1%、
Mo:0.05〜1%、
W:0.1〜2%、
V:0.01〜0.2%、
Nb:0.003〜0.05%、
Ta:0.01〜0.2%、
Zr:0.005〜0.1%、
B:0.0002〜0.005%、
の1種または2種以上を含有することを特徴とする前記(1)または(2)に記載の溶接部の耐破壊特性に優れた高張力鋼。
【0019】
(4) 質量%で、前記(1)または(3)に記載の鋼成分にさらに、
Mg:0.0001〜0.002%を含有し、かつ、下記(1)式で示される炭素当量(Ceq.)が0.4%以下で、鋼中に、円相当径で0.005〜2μmの酸化物粒子を単位面積当たりの個数で、100〜3000個/mm2含有し、該酸化物粒子の組成が、少なくともCa、Al、Mg、O、Sを含み、Oを除いた元素が質量比で、
Ca:5%以上、
Al:5%以上、
Mg:1%以上、
S:0.8%以上、
であり、しかも、溶接部のフュージョンラインから3mm以内の溶接熱影響部組織が、
旧オーステナイト粒径:200μm以下、
ビッカース硬さ:240以下、
フェライト分率:30%以上、
であることを特徴とする溶接部の耐破壊特性に優れた高張力鋼。
Ceq.=C%+Mn%/6+(Cu%+Ni%)/15+(V%+Mo%+Cr%)/5 ・ ・ ・(1)
【0020】
(5) 前記酸化物粒子の組成が少なくともCa、Al、Mg、O、Sを含み、Oを除いた元素が質量比で、
Ca:5%以上、
Al:5%以上、
Mg:1%以上、
S:1%以上、
を含有することを特徴とする前記(4)に記載の溶接部の耐破壊特性に優れた高張力鋼。
【0022】
(6)質量%で、さらに、
Y:0.001〜0.01%、
Ce:0.005〜0.1%、
のうち1種または2種を含有することを特徴とする、前記(1)〜(5)のいずれかに記載の、溶接部の耐破壊特性に優れた高張力鋼。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の実施の形態について詳細に述べる。本発明は、組織要件の限定と同時に化学組成の適正化も必須である。そこで、先ず、化学組成の限定理由とその作用を述べ、ついで、組織要件の限定理由、さらに、組織要件を満足するための手段の例として、加熱オーステナイト粒成長抑制のための鋼中へのピン止め粒子の分散に関する要件を述べる。
【0024】
Cは鋼の強度を向上させる有効な成分として含有するもので、0.01%未満では構造用鋼に必要な強度の確保が困難であるが、0.18%を超える過剰の含有は延性特性全般に有害であり、また母材及び溶接部の靭性や耐溶接割れ性を低下させるため、0.01〜0.18%の範囲とした。
【0025】
次に、Siは脱酸元素として、また、母材の強度確保に有効な元素である。また、同一強度で比較した場合に、一様伸びを高める効果がある。これらの効果が明確になるためには0.05%以上の添加が必要である。一方、0.5%を超える過剰の含有は粗大な酸化物を形成して延性や靭性の劣化を招く。そこで、Siの範囲は0.05〜0.5%とした。
【0026】
Mnは母材の強度、靭性の確保に必要な元素であり、最低限0.1%以上含有する必要があるが、過剰に含有すると、硬質相の生成や粒界脆化等により母材靱性や溶接部の靭性、さらに溶接割れ性など劣化させるため、材質上許容できる範囲で上限を2%とした。
【0027】
Pは不純物元素であり、鋼の特性に対して有害であるため、極力低減する方が好ましいが、本発明においては、実用上悪影響が許容できる量として、上限を0.01%とする。
【0028】
Sは延性特性に悪影響を及ぼす不純物元素であり、許容できる量として上限を0.01%とするが、0.005%以下に低減することが好ましい。ただし、酸化物粒子中に含まれて溶接熱影響部の加熱オーステナイト粒径微細化に効果を発揮させる場合には積極的に添加する。その場合、0.002〜0.005%の添加が好ましい。
【0029】
Alは脱酸、加熱γ粒径の細粒化等に有効な元素であるが、効果を発揮するためには0.005%以上含有する必要がある。一方、0.06%を超えて過剰に含有すると、溶接熱影響部の加熱オーステナイト微細化に有効な微細酸化物の分散に悪影響を及ぼし、かつ粗大な酸化物を形成して延性を劣化させるため、0.005%〜0.06%の範囲に限定する必要がある。
【0030】
Nは固溶状態では延性、靭性に悪影響を及ぼすため、本発明においては好ましくないが、V、AlやTiと結びついてγ粒微細化や析出強化に有効に働くため、微量であれば機械的特性向上に有効である。また、工業的に鋼中のNを完全に除去することは不可能であり、必要以上に低減することは製造工程に過大な負荷をかけるため好ましくない。そのため、延性、靭性への悪影響が許容できる範囲で、かつ、工業的に制御が可能で、製造工程への負荷が許容できる範囲として下限を0.001%とする。過剰に含有すると、固溶Nが増加し、延性や靭性に悪影響を及ぼす可能性があるため、許容できる範囲として上限を0.01%とする。
【0031】
Tiは溶接熱影響部の加熱オーステナイト粒径微細化を酸化物によるピンニングで行う場合には、適正に添加が必要である。詳細は後述するが、効果を発揮するためには0.005%以上必要である一方、0.03%を超えると粗大なTiNや酸化物を形成する恐れがあるため、本発明においてはTiは0.005〜0.03%に限定する。
【0032】
CaもTiと同様、酸化物の微細分散をHAZの加熱オーステナイト微細化に用いる場合には必須の元素である。加熱オーステナイト粒径微細化に効果を発揮するためには0.0005%以上必要である一方、0.003%を超えると粗大な硫化物や酸化物を形成する恐れがあるため、本発明においてはCaは0.0005〜0.003%に限定する。
【0033】
また、Mgも酸化物微細分散に有効であり、必要に応じて添加する。添加する場合は、0.0001〜0.002%の範囲とするが、これは0.0001%未満では効果が明確でなく、0.002%超では酸化物の粗大化が懸念されるためである。
【0034】
以上が、本発明において必須あるいは重要な元素及び不純物元素の限定理由であるが、本発明においては、強度・靭性の調整のために、必要に応じて、Ni、Cu、Cr、Mo、W、V、Nb、Ta、Zr、Bの1種または2種以上を含有することができる。
【0035】
Niは母材の強度と靭性を同時に向上でき、非常に有効な元素であるが、効果を発揮するためには0.1%以上の添加が必要である。Ni量は増加するほど母材の強度・靭性を向上させるが、2%を超えるような過剰な添加では、効果が飽和する一方で、焼入性が過剰となって、HAZにおいて所望のα分率が得られなくなるため、また、溶接性の劣化を生じる懸念もあり、さらには、高価な元素であるため、経済性も考慮して、本発明においてはNiの上限を2%とする。
【0036】
CuもNiとほぼ同様の効果を有する元素であるが、効果を発揮するるためには0.05%以上の添加が必要であり、1.5%超の添加では熱間加工性やHAZ靭性に問題を生じるため、本発明においては、0.05〜1.5%の範囲に限定する。
【0037】
Crは焼入性の向上、固溶強化により強度向上に有効な元素であり、効果を生じるためには0.05%以上必要であるが、Crは過剰に添加すると硬さの増加、粗大析出物の形成等を通して、母材やHAZの靭性に悪影響を及ぼすため、許容できる範囲として、上限を1%に限定する。
【0038】
MoもCrと同様の効果によって強度を高めるに有効な元素であるが、効果を発揮でき、他特性に悪影響を及ぼさない範囲として、0.05〜1%に限定する。
【0039】
WもCr、Moと同様の効果によって強度を高めるに有効な元素であるが、効果を発揮でき、他特性に悪影響を及ぼさない範囲として、0.1〜2%に限定する。
【0040】
Vは主として析出強化により高強度化に寄与する。効果を発揮するためには、0.01%以上は必要である。ただし、0.2%を超えて過剰に添加すると、延性、靭性を極端に劣化させるため、本発明においては、0.01〜0.2%の範囲に限定する。
【0041】
Nbは変態強化、析出強化により微量で高強度化に寄与する。また、γの加工・再結晶挙動に大きな影響を及ぼすため、母材靭性向上にも有効である。効果を発揮するためには、0.003%以上は必要である。ただし、0.05%を超えて過剰に添加すると、延性、靭性を極端に劣化させるため、本発明においては、0.003〜0.05%の範囲に限定する。
【0042】
TaもNbと同様の効果を有し、適正量の添加により強度、靭性の向上に寄与するが、0.01%未満では効果が明瞭には生ぜず、0.2%を超える過剰な添加では粗大な析出物に起因した靭性劣化が顕著となるため、範囲を0.01〜0.2%とする。
【0043】
Zrも強度向上に有効な元素であるが、効果を発揮するためには0.005%以上必要である。一方、0.1%を超えて過剰に添加すると粗大な析出物を形成して靭性に悪影響を及ぼすため、上限を0.1%とする。
【0044】
Bは極微量で焼入性を高める元素であり、高強度化に有効な元素である。Bは固溶状態でγ粒界に偏析することによって焼入性を高めるため、極微量でも有効であるが、0.0002%未満では粒界への偏析量を十分に確保できないため、焼入性向上効果が不十分となったり、効果にばらつきが生じたりしやすくなるため好ましくない。一方、0.005%を超えて添加すると、鋼片製造時や再加熱段階で粗大な析出物を形成する場合が多いため、焼入性向上効果が不十分となったり、鋼片の割れや析出物に起因した延性劣化、靭性劣化を生じる危険性も増加する。そのため、本発明においては、Bの範囲を0.0002〜0.005%とする。
【0045】
さらに、本発明においては、延性の向上、継手靭性の向上等のために、必要に応じて、Y、Ceの1種または2種を含有することができる。
【0046】
Y、Ceはいずれも酸化物を微細化させて母材、HAZの延性やHAZ靭性向上に有効に働く。その効果を発揮するための下限の含有量は、Yは0.001%、Ceは0.005%である。一方、過剰に含有すると、硫化物や酸化物の粗大化を生じ、延性、靭性の劣化を招くため、上限を各々、Yは0.01%、Ceは0.1%とする。
【0047】
本発明においてはさらに、炭素当量(Ceq.)を0.4%以下に限定する。これは、以下に示すHAZの組織要件のうち、硬さとフェライト分率を確実に所望の範囲とする上で重要である。すなわち、炭素当量が0.4%を超えると、焼入性が過大となって、フュージョンラインから3mm以内のHAZの硬さを240以下、あるいはフェライト分率を30%以下とすることが困難となる。
【0048】
以上が本発明における化学組成に関する限定理由である。本発明の目的としている耐破壊特性を満足するためには、上記化学組成の限定を前提とした上で、フュージョンラインから3mm以内のHAZの組織を、下記(1)〜(3)のようにする必要がある。
(1)旧オーステナイト粒径:200μm以下、
(2)ビッカース硬さ:240以下、
(3)フェライト分率:30%以上
【0049】
先ず、旧オーステナイト粒径を200μm以下に限定したのは、HAZにおいて、高一様伸び特性と耐延性き裂伝播特性とを両立させるためである。すなわち、両特性の向上のためには、組織の微細化が前提となるが、1層溶接となる入熱が10kJ/mm以上の大〜超大入熱溶接では、一旦形成された粗大な組織は後続のパスで解消されることはなく、従って、組織の微細さは第一義的には旧オーステナイト粒径で決定されるためである。旧オーステナイト粒径が微細になるにともなって、変態組織である粒界、粒内α、ベイナイト、パーライト等は微細となる。特に旧オーステナイト粒界に沿って粗大なフェライトが連続的存在すると、延性き裂が優先的に進展するため、延性き裂進展に対する抵抗が大きく劣化する。本発明においては、詳細な実験結果に基づき、他の組織因子を満足した上で図1に示す様に耐破壊特性が良好となる領域である旧オーステナイト粒径の上限を200μmとした。なお、旧オーステナイト粒径を微細化すればするほど、一様伸び特性を劣化させず、耐延性き裂伝播特性と靭性とを向上できる。
【0050】
また、ビッカース硬さを240以下と限定したのは、一様伸びが強度ないしは硬さの依存性が大きく、組織を微細化しても、硬さが過大であると、一様伸びの劣化が無視できなくなるためである。HAZのビッカース硬さが240以下であれば、図2に示す様に一様伸びは確実に10%以上確保でき、良好な耐延性き裂伝播特性と靭性とを併せ持つことで耐破壊特性が大きく改善される。
【0051】
さらに、HAZ組織中のフェライト分率を30%以上としたのは、硬質第二相は特に延性き裂の耐伝播特性に悪影響が大きく、同じ強度で比較した場合、フェライトが30%以上であると、図3に示す様に延性き裂の耐伝播特性の指標である上部棚エネルギーが大幅に向上するためである。なお、本発明におけるフェライトとは、旧オーステナイト粒界に板状あるいは塊状に生成する粒界フェライトと旧オーステナイト粒内に生成する塊状あるいは針状の粒内フェライトの両者を指している。
【0052】
以上が、本発明において、HAZの耐破壊特性を向上させるための組織要件である。本組織要件と化学組成要件を満足すれば、その達成手段は問わない。例えば、溶接方法として、入熱を制限する、あるいはTIG溶接のように比較的オーステナイト粒径が微細となる溶接方法とする、等、あるいは、オーステナイト粒径の微細化手段として、後述する本発明のごとく、酸化物をピンニング粒子とする方法以外に、Ti、N等の窒化物形成元素を多量に含有させる、等の方法が考えられる。ただし、これらの手段は溶接入熱が100kJ/mm程度以上の大〜超大入熱溶接まで溶接手段の制限が小さく、かつ、材質劣化をともなわずにHAZの旧オーステナイト粒径を微細化する手段としては必ずしも十分でない。一方、本発明では、材質劣化をともなわずにHAZの旧オーステナイト粒径を200μm以下とする具体的手段として、熱的に安定な酸化物を主体とするピンニング粒子の微細分散法を包含する。
【0053】
再加熱オーステナイト粒を細粒化するためには高温でのオーステナイト粒成長を抑制することが必要である。その手段として最も有効な方法は、分散粒子によりオーステナイトの粒界をピンニングし、粒界の移動を抑制する方法が考えられる。そのような作用をする分散粒子の一つとしては、従来、Ti窒化物が有効であると考えられていた。しかしながらTi窒化物は1400℃以上の高温では固溶する割合が大きくなるため、ピンニング効果が小さくなる。これに対し、高温で安定な酸化物と硫化物とを併せてピンニング粒子として活用することが有効である。
【0054】
また、分散粒子による結晶粒界のピンニング効果は、分散粒子の体積率が大きいほど、一個の粒子径が大きいほど大きい。ただし、分散粒子の体積率は鋼中に含まれる粒子を構成する元素の濃度によって上限があるので、体積率を一定と仮定した場合には、粒子径はある程度小さい方がピンニングには有効である。
【0055】
酸化物及び硫化物の体積分率を大きくする手段の一つとして、酸素量、硫黄量を増大させることがあるが、酸素量、硫黄量の増大は材質に有害な粗大介在物をも多数生成する原因となるため、有効な手段ではない。酸素量、硫黄量を増大させずに酸化物及び硫化物の体積分率を大きくするには、酸素及び硫黄との溶解度積が小さい元素を活用することが有効である。
【0056】
酸素との溶解度積が小さい、すなわち強脱酸元素として、一般的にはAlが用いられる。しかしながら、Alだけでは酸素を充分利用するには不充分で、さらにAlよりも強い脱酸元素が必要で、Ca、さらには必要に応じてMgを活用することが重要である。
【0057】
硫化物を生成しやすい元素として、Mnが挙げられる。しかしながら、Mnだけでは硫黄を活用するには不充分で、上記酸化物におけると同様に、硫黄との溶解度積が小さい、すなわち安定した硫化物を生成する元素であるCa、Mgの活用が重要である。
【0058】
Ca、Mgをはじめとした種々脱酸元素を用いた溶解実験結果から、鋼中に生成する酸化物粒子の組成として、Oを除いた元素が質量比で、Caが5%以上、Alが5%以上、かつSが0.2%以上含まれる場合、あるいは、Ca及びAlが5%以上、かつSが0.8%以上で、さらにMgが1%以上含まれることで、酸化物の体積分率すなわち酸化物量を大きくすることが可能となることを知見した。また、さらには、酸化物の周囲に、例えばCaS及びMgSといった硫化物が析出することで、酸化物と硫化物とを併せてより一層の体積分率の増加が可能となることを見出したのである。その場合、酸化物と硫化物とを併せて一つの粒子と見なしたときの組成が、Mgを含まない場合で、Oを除いた元素が質量比で、CaとAlが5%以上、Sが1%以上含まれる必要がある。また、粒子がMgを含む場合は、Oを除いた元素が質量比で、Ca及びAlが5%以上、Mgが及びSが1%以上含まれる必要がある。
【0059】
なお、酸化物中にSを含む場合、酸化物と硫化物とが複合化している場合、酸化物を核として硫化物が該酸化物の周囲に析出している場合、いずれもオーステナイトの成長抑制には同等の効果を有する。以降で、酸化物あるいはピンニング粒子としているものも、特に断らない限り、上記の粒子を包含することとする。
【0060】
次にHAZの加熱オーステナイト粒のピンニングに有効な粒子の大きさについて述べる。分散粒子による結晶粒界のピンニング効果は、分散粒子の体積率が大きいほど、一個の粒子径が大きいほど大きいが、粒子の体積率が一定のとき、一個の粒子の大きさが小さい方が粒子数が多くなりピンニング効果が大きくなるが、あまり小さくなると粒界に存在する粒子の割合が小さくなるため、その効果は低減する。粒子の大きさを種々変化させた試験片を用いて、高温に加熱したときのオーステナイト粒径を詳細に調査した結果、大〜超大入熱溶接に相当する温度・保持時間において安定的にオーステナイト粒径をピンニングするためには、前記の組成を有する安定な粒子の大きさとして、0.005〜2μmのものが有効であることをつきとめた。また0.005μmより小さい酸化物粒子はほとんど観察されなかった。この結果より、必要な粒子径を0.005〜2μmとした。
【0061】
次に必要なピンニング粒子の個数について検討した。粒子個数が多いほど組織単位は微細になり、そのため、粒子個数が多いほどHAZ組織は微細化する。本発明の目的とするフュージョンラインから3mm以内のHAZのオーステナイト粒径を確実に200μm以下とするためには、粒子径が0.005〜2μmの粒子が100個/mm2以上必要である。ただし、粒子数が多くなるほどピンニング力は大となるが、その効果は飽和し、かつ、必要以上に粒子個数を多くすることは、逆に延性や靭性に有害な粗大な粒子が生成する可能性を高めることにもなる、また現在の工業技術では限界もあることを考え、本発明においては粒子数の上限を3000個/mm2とした。
【0062】
該酸化物の大きさ及び個数の測定は、例えば以下の要領で行う。母材となる鋼板から抽出レプリカを作製し、それを電子顕微鏡にて10000倍で20視野以上、観察面積にして1000μm2以上を観察することで該酸化物の大きさ及び個数を測定する。このとき鋼板の表層部から中心部までどの部位から採取した抽出レプリカでもよい。また、粒子が適正に観察可能であれば、観察倍率を低くしてもかまわない。
【0063】
本発明では、化学組成の適正化と酸化物による加熱オーステナイト粒径の微細化とで、耐破壊特性に優れたHAZ組織を形成させる。フュージョンライン近傍のHAZは高温に晒されて母材組織はほぼ全面的に解消される。従って、本発明では鋼材を製造するプロセスは問わない。通常の熱間圧延まま、制御圧延、制御冷却、また、これらのプロセスと焼戻しの組み合わせ、さらには焼き均しや焼入・焼戻し等の再加熱処理で製造してもかまわない。
【0064】
【実施例】
以上が、本発明の要件についての説明であるが、さらに、実施例に基づいて本発明の効果を示す。
【0065】
実施例に用いた供試鋼の化学組成を表1に示す。表1に示した化学組成で板厚45mm鋼板を試作した。鋼材番号A1〜A10が本発明鋼B1〜B5が比較鋼である。試作鋼は真空溶解または転炉により溶製し、インゴットまたは鋳片を熱間圧延により板厚45mmの鋼板に製造した。鋼板の製造方法は全て加工熱処理(TMCP)によった。得られた鋼板を1パスのエレクトロガス溶接した。入熱は約20kJ/mmである。
【0066】
【表1】
【0067】
表2に鋼中酸化物粒子の組成、粒子径0.005〜2μmの粒子数の測定結果を示す。なお酸化物粒子とは既述したように、酸化物中にSを含む粒子、酸化物と硫化物とが複合化している粒子、酸化物を核として硫化物が該酸化物の周囲に析出している粒子を全て含んだものである。
【0068】
【表2】
【0069】
表3は溶接後のHAZ組織形態、HAZの機械的性質を調査した結果を示している。HAZ組織形態としては、旧オーステナイト粒径、ビッカース硬さ、フェライト分率を示す。旧オーステナイト粒径、フェライト分率については光学顕微鏡組織写真から測定したが、表3には、旧オーステナイト粒径はフュージョンラインからHAZ側3mmまでのHAZの中での最大径を示し、フェライト分率は概領域中でフェライト分率が少ない領域を得られんで撮影した倍率200倍の写真、5視野の平均で示した。ビッカース硬さは表面2mm及び、板厚の1/4位置について測定し、フュージョンラインからHAZ側3mm内のHAZの中での最大値を求めて表示した。
【0070】
機械的性質としては、引張特性及び2mmVノッチシャルピー衝撃特性を調査した。HAZを含むようにして板厚の1/4位置より試験片を採取して行った。引張試験片はHAZの特性評価ができるよう、平行部が6mmφ×24mmの平行部が比較的短い、小型の丸棒引張試験片とし、平行部の中心にフュージョンラインが合致するように採取した。シャルピー試験片はノッチ位置がフュージョンラインからHAZ側1mmとなる、試験片厚さ10mmの標準試験片とした。引張試験は室温で実施し、シャルピー試験は種々温度で試験を実施し、破面遷移温度(vTrs)と上部棚エネルギー(vEs)を求めた。
【0071】
【表3】
【0072】
鋼材番号A1〜A10は本発明により製造したものであり、鋼材番号B1〜B9は本発明のいずれかの要件を満足していないものである。図1〜図3に本実施例の結果について、各々の組織因子と最も関連性のある特性との関係を示すが、これらの図から、本発明による鋼材番号A1〜A10は、本発明の要件を全て満足しており、強度レベルとして様々なものを含んでいるが、全て、良好な一様伸び、シャルピー試験の上部棚エネルギー、破面遷移温度(vTrs)の組み合わせとなっており、HAZの耐破壊特性に優れていることが明らかである。具体的には、引張強度と一様伸びとの積で示した延性特性は7200超、シャルピー試験の上部棚エネルギーは290J超、破面遷移温度(vTrs)は−40℃以下、が同時に達成されており、超大入熱溶接のHAZとしては極めて良好な特性となっている。
【0073】
一方、鋼材番号B1〜B5の比較例の特性は、本発明の要件の一部または全てを満足していないため、上記の特性の一部または全部が本発明に比べて劣っている。
【0074】
すなわち、鋼材番号B1は、Cが過剰なため、HAZの組織要件は本発明を満足しているが、延性(一様伸び、破断伸び、引張強度x一様伸び)、靭性、耐延性き裂伝播特性(シャルピー試験の上部棚エネルギー)が本発明に比べて劣る。
【0075】
鋼材番号B2は、炭素当量が過剰なため、HAZのフェライト分率が過小で、かつHAZ硬さが過大となっており、延性、靭性、耐延性き裂伝播特性が本発明に比べて劣る。
【0076】
鋼材番号B3は、Sが過剰なため、HAZの組織要件は本発明を満足しているが、延性の劣化が著しい。
【0077】
鋼材番号B4、B5は、酸化物の個数が本発明に比べて極めて少ない。その結果、HAZの旧オーステナイト粒径が粗大なため、変態組織も粗大となり、特に靭性の劣化が大きい。
【0078】
以上の実施例から、本発明の鋼は、HAZの一様伸び、シャルピー試験の上部棚エネルギー、破面遷移温度が全て良好で、HAZにおける耐破壊特性に極めて優れた高張力鋼であることが明白である。
【0079】
【発明の効果】
本発明により、溶接入熱が10kJ/mmを超えるような大入熱溶接を行った溶接熱影響部において、良好な耐破壊特性を有し、構造物用鋼として安全性の高い高張力鋼の提供が可能となり、産業上の効果は極めて顕著である。
【図面の簡単な説明】
【図1】HAZ組織中のフェライトの割合とシャルピー試験の上部棚エネルギーとの関係を示した図である。
【図2】HAZ組織のビッカース硬さと一様伸びとの関係を示した図である。
【図3】HAZ組織の旧オーステナイト粒径とシャルピー試験の破面遷移温度(vTrs)との関係を示した図である。
Claims (6)
- 質量%で、
C:0.01〜0.18%、
Si:0.05〜0.5%、
Mn:0.1〜2%、
P:0.01%以下、
S:0.01%以下、
Al:0.005〜0.06%、
N:0.001〜0.01%、
Ti:0.005〜0.03%、
Ca:0.0005〜0.003%を含有し、
かつ、下記(1)式で示される炭素当量(Ceq.)が0.4%以下で、残部Fe及び不可避不純物からなる成分の鋼であって、
鋼中に円相当径で0.005〜2μmの酸化物粒子を単位面積当たりの個数で、100〜3000個/mm 2 含有し、該酸化物粒子の組成が少なくともCa、Al、O、Sを含み、Oを除いた元素が質量比で、
Ca:5%以上、
Al:5%以上、
S:0.2%以上、
であり、しかも、溶接部のフュージョンラインから3mm以内の溶接熱影響部組織が、
旧オーステナイト粒径:200μm以下、
ビッカース硬さ:240以下、
フェライト分率:30%以上、
であることを特徴とする溶接部の耐破壊特性に優れた高張力鋼。
Ceq.=C%+Mn%/6+(Cu%+Ni%)/15+(V%+Mo%+Cr%)/5 ・ ・ ・(1) - 前記酸化物粒子の組成が少なくともCa、Al、O、Sを含み、Oを除いた元素が質量比で、
Ca:5%以上、
Al:5%以上、
S:1%以上、
を含有することを特徴とする請求項1に記載の溶接部の耐破壊特性に優れた高張力鋼。 - 質量%で、さらに、
Ni:0.1〜2%、
Cu:0.05〜1.5%、
Cr:0.05〜1%、
Mo:0.05〜1%、
W:0.1〜2%、
V:0.01〜0.2%、
Nb:0.003〜0.05%、
Ta:0.01〜0.2%、
Zr:0.005〜0.1%、
B:0.0002〜0.005%、
の1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1または2に記載の溶接部の耐破壊特性に優れた高張力鋼。 - 質量%で、請求項1または3に記載の鋼成分にさらに、
Mg:0.0001〜0.002%を含有し、かつ、下記(1)式で示される炭素当量(Ceq.)が0.4%以下で、鋼中に、円相当径で0.005〜2μmの酸化物粒子を単位面積当たりの個数で、100〜3000個/mm2含有し、該酸化物粒子の組成が、少なくともCa、Al、Mg、O、Sを含み、Oを除いた元素が質量比で、
Ca:5%以上、
Al:5%以上、
Mg:1%以上、
S:0.8%以上、
であり、しかも、溶接部のフュージョンラインから3mm以内の溶接熱影響部組織が、
旧オーステナイト粒径:200μm以下、
ビッカース硬さ:240以下、
フェライト分率:30%以上、
であることを特徴とする溶接部の耐破壊特性に優れた高張力鋼。
Ceq.=C%+Mn%/6+(Cu%+Ni%)/15+(V%+Mo%+Cr%)/5 ・ ・ ・(1) - 前記酸化物粒子の組成が少なくともCa、Al、Mg、O、Sを含み、Oを除いた元素が質量比で、
Ca:5%以上、
Al:5%以上、
Mg:1%以上、
S:1%以上、
を含有することを特徴とする請求項4に記載の溶接部の耐破壊特性に優れた高張力鋼。 - 質量%で、さらに、
Y:0.001〜0.01%、
Ce:0.005〜0.1%、
のうち1種または2種を含有することを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の、溶接部の耐破壊特性に優れた高張力鋼。
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