JP3825561B2 - リング状ワークの板厚測定装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば、金属材料で構成されるリング状ワークの板厚を測定するためのリング状ワークの板厚測定装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
通常、スチール等の金属材料で形成されたエンドレスベルトが、種々の用途に広く採用されている。例えば、その伝動特性から、連続的に変速比を変える無段変速機(CVT)のベルトに組み込まれている。このベルトは金属ベルトと複数の金属コマとを備えており、前記ベルトは、薄板材のリング(リング状ワーク)が径方向に複数枚積層された2本の金属ベルトが前記金属コマの溝に両側から差し込まれることにより構成されている。
【0003】
上記のように、複数枚のリングが径方向に積層されるため、各リングの板厚が、それぞれ所定の寸法に高精度に設定されている必要がある。このため、製作されたリングの板厚を測定する作業が行われており、通常、この種の作業は、計測器、例えば、マイクロメータを用いた作業者の手作業に依存している。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、この種のリングには、圧縮残留応力が付与されており、前記リングの断面形状がクラウニング形状を有している。このため、リングの測定面(測定部位)に対して測定子を垂直状態で確実に当接させることが困難となり、測定誤差が発生して前記リングの板厚を高精度に計測することができないという問題が指摘されている。
【0005】
さらに、リングには、前工程で圧延処理が施されるとともに、周長補正等のための塑性加工が施されている場合が多い。従って、リング全体として均一の塑性加工量が付与されずに、前記リングの形状が部分的に変形しているおそれがある。これにより、リングの測定値にばらつきが発生してしまい、前記リングの測定精度が著しく低下するという問題がある。
【0006】
本発明は、この種の問題を解決するものであり、リング状ワークの板厚を簡単な構成で容易かつ高精度に測定することが可能なリング状ワークの板厚測定装置を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明に係るリング状ワークの板厚測定装置では、ベース部材にリング状ワークが配置された状態で、このリング状ワークの内周側に固定された板厚測定器と前記リング状ワークの外周側に固定された押圧部材とで該リング状ワークの測定部位が挟持される。その際、リング状ワークに放射状に形成された2以上の溝部に支持部材が装着され、この支持部材がリング状ワークの非測定部位を内周側から押圧して前記リング状ワークを矯正しかつ支持している。
【0008】
このため、リング状ワークの測定部位に対して測定子を確実に垂直状態で当接させることができ、測定誤差を可及的に削減して前記リング状ワークの板厚を容易かつ高精度に測定することが可能になる。しかも、板厚測定装置全体の構成を有効に簡素化することができる。
【0009】
また、リング状ワークの測定部位の両側に最も近接する支持部材の位置を設定することにより、このリング状ワークの非測定部位から測定部位に渡って略水平に配置させることが可能になる。従って、リング状ワークの測定部位が略直線状に支持されることになり、この測定部位での板厚測定作業が一層高精度に遂行される。
【0010】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明の第1の実施形態に係るリング状ワークの板厚測定装置10の概略斜視説明図である。
【0011】
板厚測定装置10は、略リング状を有するベース部材12を備え、このベース部材12の上面12aには、放射方向に延在する2以上、例えば、3本の溝部14a〜14cが所定の幅寸法Hを有し、かつ所定の深さにわたって形成される(図1および図2参照)。1つの溝部14aを基準にして、この溝部14aの両側にそれぞれ所定の角度α°ずつ離間して他の溝部14b、14cが設けられている。
【0012】
ベース部材12の中央開口部16には、板厚測定器として、変位センサ18が配置される。変位センサ18は、固定具20を介してベース部材12に固定されるとともに、この変位センサ18が表示器21に接続されている。変位センサ18から測定子22が突出しており、この測定子22は、溝部14aに沿ってベース部材12に配置される金属製リング(リング状ワーク)26の内周面26aを押圧する。
【0013】
このリング26の外周面26bは、溝部14aに固定された押圧部材28により保持される。押圧部材28は、ベース部材12にねじ止め等により固定されるものであり、溝部14a内で放射方向に沿った位置が設定可能である。この押圧部材28は、リング26の外周面26bに接触する先端側にR面30を設けている。
【0014】
溝部14b、14cには、リング26の非測定部位を内周面26aから押圧してこのリング26を矯正しかつ支持する支持部材32a、32bが位置調整自在に装着される。支持部材32a、32bは、溝部14b、14cにねじ止め等により固定されており、それぞれリング26の内周面26aに接する先端側にR面34a、34bが形成される。
【0015】
このように構成される板厚測定装置10の動作について、以下に説明する。
【0016】
先ず、溝部14a内の所定の位置に押圧部材28がねじ止め固定されるとともに、溝部14b、14c内の所定の位置に支持部材32a、32bが位置決めされてねじ止め固定される。その際、押圧部材28のR面30と支持部材32a、32bのR面34a、34bとは、リング26の基準となる(設計上の)曲率に対応して配置される。
【0017】
そこで、ベース部材12上にリング26が配置され、このリング26の測定部位が押圧部材28に支持される一方、このリング26の前記測定部位に近接する非測定部位が支持部材32a、32bに支持される。これにより、リング26は、測定部位の外周面26bに当接する押圧部材28と非測定部位の内周面26aに当接する支持部材32a、32bとを介して所望の円弧形状に強制的に矯正された状態で支持される。
【0018】
従って、変位センサ18の測定子22は、リング26の測定部位に対して垂直状態で確実に当接し、前記リング26の板厚を高精度に測定することが可能になるという効果が得られる。特に、リング26に圧縮残留応力が付与されてこのリング26がクラウニング形状を有していたり、圧延や周長補正等のための塑性加工が施されることによって局部的な変形等が生じていても、前記リング26の測定部位を所望の形状に強制的に矯正しかつ支持することができ、測定誤差のない高精度な板厚測定作業が効率的に遂行可能になる。
【0019】
しかも、変位センサ18と押圧部材28とでリング26の測定部位を押圧する際に、この測定部位の両側に位置して前記リング26の内周面26aを支持部材32a、32bで保持するだけでよい。これにより、板厚測定装置10全体の構成が一挙に簡素化し、この板厚測定装置10を経済的に製造することができるという利点がある。
【0020】
図3は、本発明の第2の実施形態に係るリング状ワークの板厚測定装置60の概略平面説明図である。なお、第1の実施形態に係る板厚測定装置10と同一の構成要素には同一の参照符号を付して、その詳細な説明は省略する。
【0021】
この板厚測定装置60を構成するベース部材62は、溝部14a〜14cの他に、この溝部14aの延長上に対してそれぞれ角度β°ずつ離間して溝部14d、14eを有している。溝部14d、14eには、それぞれ支持部材32c、32dが位置調整自在に固定される。
【0022】
このように構成される板厚測定装置60では、リング26の内周面26a側に位置して溝部14b〜14eに支持部材32a〜32dが位置調整されてねじ止め固定される。その際、支持部材32a〜32dは、リング26の規定円周上に対応して配置されており、この支持部材32a〜32dが前記リング26の内周面26aに当接して前記リング26の非測定部位を所定の形状に強制的に矯正しかつ支持している。
【0023】
これにより、第2の実施形態では、変位センサ18と押圧部材28とによりリング26の板厚を測定する際、測定子22をこのリング26の測定部位に対し正確に垂直状態で当接させることができる。従って、リング26の板厚測定作業が円滑かつ高精度に遂行される等、第1の実施形態と同様の効果が得られる。
【0024】
ところで、変位センサ18と押圧部材28のみでリング26の板厚を測定した場合(フリー状態)、第1の実施形態に係る板厚測定装置10により前記リング26の板厚を測定した場合(二点支持)、および第2の実施形態に係る板厚測定装置60により該リング26の板厚を測定した場合(四点支持)について、50回の測定実験を行ったところ、図4〜図6に示す結果が得られた。
【0025】
これにより、フリー状態でリング26を測定した場合(図4参照)、このリング26の板厚の測定誤差が大きく、繰り返し精度が1μm以上となって測定誤差のばらつきが非常に大きかった。これに対して、二点支持および四点支持では、図5および図6に示すように、それぞれ繰り返し精度が0.216μmおよび0.154μmと非常に小さなものになり、リング26の板厚測定が高精度に行われるという結果が得られた。
【0026】
なお、二点支持および四点支持の他、三点支持あるいは五点支持以上を採用することができるが、少なくともリング26の非測定部位を所望の形状に矯正しかつ支持する2つの支持部材32a、32bを備えていればよい。
【0027】
また、支持部材32a、32bは溝部14b、14cに移動自在であり、この支持部材32a、32bでリング26の内周面26aを外方に押圧して、前記リング26の非測定部位を該リング26の測定部位と略水平に配置させることができる。これにより、リング26は、測定部位が略直線状に支持されるため、測定子22が前記リング26の測定部位に対して垂直にかつ正確に当接し、このリング26の板厚測定作業が高品質に行われるという効果がある。
【0028】
【発明の効果】
本発明に係るリング状ワークの板厚測定装置では、ベース部材に配置されたリング状ワークの内周側に固定された板厚測定器と、このリング状ワークの外周側に固定された押圧部材とで前記リング状ワークの測定部位が挟持される。その際、ベース部材に放射方向に延在して設けられた溝部にそれぞれ支持部材が配置され、この支持部材がリング状ワークの非測定部位を内周側から押圧し、前記リング状ワークを所定の形状に矯正しかつ支持している。このため、リング状ワークの測定部位に湾曲形状や変形が発生していても、この測定部位を確実に矯正して支持することができ、測定子により該測定部位の板厚測定作業が容易かつ高精度に遂行される。しかも、装置全体の構成が簡素化され、この装置を経済的に製造することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る板厚測定装置の概略斜視説明図である。
【図2】前記板厚測定装置の概略平面説明図である。
【図3】本発明の第2の実施形態に係る板厚測定装置の概略平面説明図である。
【図4】フリー状態でのリングの板厚測定結果の説明図である。
【図5】二点支持でのリングの板厚測定結果の説明図である。
【図6】四点支持でのリングの板厚測定結果の説明図である。
【符号の説明】
10、60…板厚測定装置 12、62…ベース部材
14a〜14e…溝部 18…変位センサ
20…固定具 22…測定子
26…リング 26a…内周面
26b…外周面 28…押圧部材
32a〜32d…支持部材

Claims (2)

  1. 放射方向に延在する2以上の溝部を有し、リング状ワークを配置するベース部材と、
    前記リング状ワークの内周側に位置して前記ベース部材に固定される板厚測定器と、
    前記ベース部材上で前記板厚測定器の測定子に対向して前記リング状ワークの外周側に固定され、前記測定子と該リング状ワークの測定部位を挟持する押圧部材と、
    前記溝部に移動自在に装着され、前記リング状ワークの非測定部位を内周側から押圧して該リング状ワークを矯正しかつ支持する2以上の支持部材と、
    を備えることを特徴とするリング状ワークの板厚測定装置。
  2. 請求項1記載の板厚測定装置において、前記リング状ワークの測定部位の両側に最も近接する前記支持部材は、前記リング状ワークの非測定部位を該リング状ワークの測定部位と略水平に配置させることを特徴とするリング状ワークの板厚測定装置。
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