JP3825151B2 - 磁気記録媒体 - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
強磁性微粉末と結合剤とを分散させてなる磁性層を非磁性支持体上に設けた磁気記録媒体において、極めて優れた電磁変換特性及び耐久性、保存性をもつ磁気記録媒体に関する。
【0002】
【従来の技術】
録音用テープ、ビデオテープ、あるいはフロッピーディスク等の磁気記録媒体として、強磁性粉末を結合剤中に分散させた磁性層を非磁性支持体上に設けた磁気記録媒体が用いられている。
磁気記録媒体は、電磁変換特性、走行耐久性および走行性能などの諸特性が優れていることが要求されている。
このような優れた電磁変換特性を有すると同時に、磁気記録媒体は良好な走行耐久性を持つことが要求されている。そして、良好な走行耐久性を得るために、一般には研磨剤および潤滑剤が磁性層中に添加されている。
【0003】
磁気記録媒体の使用機器において媒体と磁気ヘッドが摺動接触するために、磁気記録媒体の結合剤中の低分子成分が磁性層表面付近に浮上して磁気ヘッドに付着する磁気ヘッド汚れが生じるという問題があった。
磁気ヘッド汚れは電磁変換特性の劣化の原因となっている。とくに、高密度記録用の機器では、磁気ヘッド回転数が上昇しており、家庭用のデジタルビデオテープレコーダにあっても、磁気ヘッドの回転数が9600回転/分と、アナログビデオテープレコーダの民生用の1800回転/分、業務用の5000回転/分に比べて格段に高速回転数であり、磁気記録媒体と磁気ヘッドとの摺動する速度が大きくなり、また磁気ヘッドも薄膜ヘッド等のように小型のものが用いられており、磁気記録媒体から生じる成分による磁気ヘッド汚れの改善が求められている。また、フロッピーディスクに代えて用いられる高密度記録用の磁気記録媒体にあっても、同様に強度が大きく信頼性の高い磁気記録媒体が要求されている。
【0004】
このような問題を改善する方法として、硬い結合剤を用いて磁性層の硬度を上げる方法が行われており、耐磨耗性が良好で分散性も高いポリウレタン樹脂を結合剤とすることが行われている。
【0005】
例えば、特開昭61−148626号公報には、長鎖ジオール成分のうち、少なくとも20重量%がビスフェノール類あるいはその誘導体と芳香族二塩基酸あるいはその誘導体から得られたポリエステルジオールを用いたポリウレタン樹脂を用いた磁気記録媒体が記載されているが、分散性が不十分であるとともに、エステル結合の加水分解による保存性の劣化が問題であった。
【0006】
また、特開平1−267829号公報には、環状構造を有するポリエーテルポリオールを全ポリオール成分の80重量%以上を含むポリエーテルポリオールポリウレタン樹脂を用いた磁気記録媒体が記載されているが、分散性あるいは耐久性の点で不充分であった。また、特開平4−324110号公報には、水添ダイマー酸を含むポリエステルポリオールを用いたポリウレタン樹脂を用いた磁気記録媒体が記載されているが、水添ダイマー酸をポリエステルポリオールの骨格に導入しており、分散性が不十分であるとともに、エステル結合の加水分解の面でも不十分であり、特に強磁性金属粉末を磁性体に用いた磁気記録媒体では保存性が不十分であった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、優れた分散性、塗膜平滑性、電磁変換特性を有する磁気記録媒体を得ることを課題とするものであり、走行耐久性および長期保存性に優れた磁気記録媒体を提供することを課題とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、非磁性支持体上に強磁性微粉末と結合剤を分散した磁性層を有する磁気記録媒体において、前記結合剤が下記の化学式1で示されるダイマージオールをジオール成分として含むポリウレタン樹脂を含有する磁気記録媒体である。
【化3】
Figure 0003825151
【0009】
また、非磁性支持体上に非磁性粉体又は強磁性微粉末と結合剤を分散した非磁性層又は磁性層を塗設しこの上に強磁性微粉末と結合剤を分散した少なくとも一層以上の磁性層を有する磁気記録媒体において、前記磁性層または前記非磁性層の少なくとも一層以上に前記の化学式1で示されるダイマージオールをジオール成分として含むポリウレタン樹脂を含有する磁気記録媒体である。
【0010】
また、前記ポリウレタン樹脂のジオール成分としてダイマージオールを20重量%以上含む前記の磁気記録媒体である。
【0011】
また、前記ポリウレタン樹脂が−SO3M、−SO4M、−COOM、−PO32、−PO42(ただし、Mは水素原子またはアルカリ金属、アンモニウムから選ばれる)から選ばれる少なくとも1種以上の極性基を1×10-6〜2×10-4eq/g含有する磁気記録媒体である。
【0012】
【発明の実施の形態】
すなわち、本発明の磁気記録媒体は、磁性層、もしくは非磁性下層に用いる結合剤として、ダイマージオールをジオール成分として含むポリウレタン樹脂を含有する結合剤を用いたものであり、これによって走行耐久性および長期保存性に優れた磁気記録媒体を作製したものである。
ダイマージオールは、ダイマー酸から得られたもので、下記の化学構造を有している。
【0013】
【化1】
Figure 0003825151
【0014】
本発明のポリウレタン樹脂において、ダイマージオールは、ポリウレタン樹脂中に20重量%以上含まれるのが好ましく、更に好ましくは40重量%である。
【0015】
また、ダイマージオールを含有するポリウレタン樹脂には、少なくとも1種のジオールを併用することができる。併用することができるジオールは、分子量500以下の低分子ジオールが好ましく、300以下のものがより好ましい。
【0016】
具体的には、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール(NPG)、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール等の脂肪族グリコール、シクロヘキサンジメタノール(CHDM)、シクロヘキサンジオール(CHD)、水素化ビスフェノールA(H−BPA)等の脂環族グリコール、またビスフェノールA(BPA)、ビスフェノールS、ビスフェノールP、ビスフェノールFなどの芳香族グリコールを挙げることができるが、ポリエステルジオール、ポリエーテルジオールは好ましくない。また、分子量500を越える長鎖ジオールはウレタン結合濃度が低下するため磁性層の力学的な強度が低下し好ましくない。ジオールをダイマージオールと併用する場合には、ポリウレタン樹脂中に50重量%までの量を混合することが好ましい。
【0017】
また、本発明の磁気記録媒体の結合剤中には、極性基を含有することが好ましく、極性基は具体的には、−SO3M、−SO4M、−COOM、−PO32、−PO42、から選ばれる少なくとも1種以上の極性基を1×10-6〜2×10-4eq/g含有することが好ましく、Mは水素原子またはアルカリ金属、アンモニウムから選ばれる。Mは、好ましくはNa、Kであり、さらに好ましくはKである。Mが少ないと分散性、耐久性が低下し、多いと平滑性が低下し電磁変換特性が低下する。
【0018】
極性基のポリウレタンへの導入は極性基を持つジオール化合物を上記のジオールとともにジイソシアネート化合物で重合してウレタン主鎖に組み込むことができる。極性基含有ジオールは重合時の溶剤への溶解性を高めるためにエチレンオキシド、プロピレンオキシドなどのアルキレンオキシドを付加して鎖長をのばしても良いが、エーテル、エステルセグメントの量はできるだけ少なくするのが好ましく、多すぎると保存性が低下する。
【0019】
また、ポリイソシアネート成分としては、ジイソシアネート成分が好ましく、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、p−フェニレンジイソシアネート、o−フェニレンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水素化キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどが好ましい。
【0020】
本発明のポリウレタン樹脂の分子量は、重量平均分子量(Mw)が2万〜10万が好ましい。さらに好ましくは3万〜6万である。2万未満であると、磁性層の塗膜強度が低下し、耐久性が低下する。また、10万以上であると溶剤への溶解性が低下し、分散性が低下する。
【0021】
また、ポリウレタン樹脂のガラス転移温度は、−20℃〜200℃が好ましく、更に好ましくは30℃〜150℃である。−20℃未満であると高温での塗膜強度が低下するので耐久性、保存性が低下する。また、200℃以上であるとカレンダー成型性が低下し、電磁変換特性が低下する。
【0022】
ポリウレタン樹脂中のOH基は、3個/分子〜20個/分子が好ましい。更に好ましくは4個/分子〜15個/分子である。3個/分子未満であるとイソシアネート硬化剤との反応性が低いので塗膜強度が低く、耐久性が低くなる傾向がある。15個/分子以上であると溶剤への溶解性が低下するので分散性が低下する。
【0023】
分枝OH基を付与するために用いる化合物としては、OH基が3官能以上の化合物を用いることができる。具体的には、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、無水トリメリット酸、グリセリン、ペンタエリスリトール、ヘキサントリオール、3官能以上のOH基をもつ分枝ポリエステルあるいはポリエーテルエステルを挙げることができる。好ましくは、3官能のものであり、4官能以上になると硬化剤との反応が速くポットライフが短くなる傾向がある。
【0024】
また、ウレタン基濃度は、1.0〜6.0mmol/gが好ましい。さらに好ましくは1.5〜4.5mmol/gである。ウレタン基濃度が小さいと力学強度が小さくなり、多すぎると分散性が低下する。
【0025】
また、本発明の磁気記録媒体は、非磁性層上に単層磁性層を形成したもの、複数の磁性層を形成したもの、あるいは磁性層と非磁性層から形成したもののいずれの磁性層を有するものであっても良い。単層磁性層を有する場合には、磁性層厚みは4μm以下であり、好ましくは3μm以下である。更に好ましくは2.5μm以下である。また、複数の磁性層または磁性層と非磁性層から構成されたものの場合には、複数層の合計の厚さが4μm以下であることことが好ましく、最上層の磁性層厚みは0.1〜0.5μmであることが好ましい。
【0026】
さらに、本発明における結合剤として、ダイマージオールを含有したポリウレタン樹脂とともに等量以下の量で、その他の結合剤を併用しても良い。併用できるその他の樹脂としては、従来、磁気記録媒体用の結合剤として使用されている公知の熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、反応型樹脂およびこれらの混合物を使用することができる。具体的には、熱可塑性樹脂としては、ガラス転移温度が−100〜150℃、数平均分子量が1000〜200000、好ましくは10000〜100000、重合度が50〜1000程度のものである。
【0027】
このようなものとしては、アクリル酸、アクリル酸エステル、塩化ビニリデン、アクリロニトリル、メタクリル酸、メタクリル酸エステル、スチレン、ブタジエン、エチレン、ビニルブチラール、ビニルアセタール、ビニルエーテル等を構成単位として含む重合体、共重合体、ポリウレタン樹脂、各種ゴム系樹脂がある。 また、熱硬化性樹脂または反応型樹脂としては、フェノール樹脂、フェノキシ樹脂、エポキシ樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、アルキド樹脂、アクリル系反応樹脂、ホルムアルデヒド樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ−ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂とイソシアネートプレポリマーの混合物等が挙げられる。
【0028】
また、本発明の磁気記録媒体において、非磁性下層に使用される非磁性粉体は、無機物質でも有機物質でもよい。また、カーボンブラック等も使用できる。非磁性粉体は、例えば金属、金属酸化物、金属炭酸塩、金属硫酸塩、金属窒化物、金属炭化物、金属硫化物等が挙げられる。具体的にはTiO2、TiOX、酸化セリウム、酸化スズ、酸化タングステン、酸化亜鉛、ジルコニア、酸化ケイ素、酸化クロム、α化率90%以上のα−アルミナ、β−アルミナ、γ−アルミナ、針状α−酸化鉄、ゲータイト、コランダム、窒化ケイ素、酸化マグネシウム、窒化ホウ素、二硫化モリブデン、酸化銅、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、炭酸ストロンチウム、硫酸バリウム、炭化ケイ素、炭化チタン等が単独あるいは2種類以上の組み合わせで使用される。
好ましいのは、針状α−酸化鉄、酸化チタンであり、これらのなかでも特に好ましいのは針状α−酸化鉄である。
【0029】
また、これらの非磁性粉末をアルカリ性懸濁液とし、例えば60〜200℃において加熱したり、無機物で表面処理すること、あるいは両者を併用してpHを調整することができる。非磁性粉末のpHは、8〜11の範囲が好ましい。pHが8未満では高温・高湿下でのμ値が上昇し、走行性が劣化し、また表面バインダー量の減少量が大きくなる傾向がある。
pHが11を超えると脂肪酸の遊離量が減少するので摩擦係数が高くなり走行性が劣化し、また表面バインダー量の減少量が大きくなる。これらのpHは、JIS−A法で測定した。
【0030】
これらの微粉末の粒子サイズは、0.01〜2μmが好ましい。また、タップ密度は、0.05〜2g/cm3 、好ましくは0.2〜1.5g/cm3 、含水率は、0.1〜5%、好ましくは0.2〜3%である。
比表面積は、1〜100m2/g 、好ましくは5〜50m2/g であり、さらに好ましくは、7〜40m2/g である。DBP吸油量は5〜100ml/100g、好ましくは10〜80ml/100gであり、さらに好ましくは20〜60ml/100gである。比重は、1〜12、好ましくは2〜8である。形状は、針状、球状、さいころ状、板状のいずれでもよい。
また、微粉末は、表面をアルミナで処理をした酸化チタン粉末のように、アルミニウム、ケイ素、チタン、ジルコニウム、スズ、アンチモン、亜鉛等の金属を含有する化合物で処理をしたものであってよい。表面を処理をする場合には、純度は70重量%以上であれば、効果を得ることができ、強熱減量が20重量%以下であることが好ましい。
これらの、無機微粉末のモース硬度は4以上のものが好ましい。
【0031】
本発明に用いるカーボンブラックとしては、ゴム用ファーネスブラック、ゴム用サーマルブラック、カラー用ブラック、アセチレンブラック等を用いることができる。カーボンブラックの比表面積は、100〜500m2/g 、好ましくは150〜400m2/g であり、DBP吸油量は、20〜400ml/100g、好ましくは30〜200ml/100g、さらに好ましくは10〜40ml/100gである。pHは、2〜10、含水率は0.1〜10%、タップ密度は0.1〜1g/cm3 が好ましい。
【0032】
カーボンブラックを分散剤などで表面処理したり、樹脂でグラフト化して使用してもよい。また、カーボンブラックを非磁性塗料を添加する前にあらかじめ結合剤で分散しても良い。これらのカーボンブラックは、無機微粉末に対して50重量%を超えない範囲で使用することができる。また、これらのカーボンブラックは、単独、または組み合わせて使用することができる。
本発明において使用することができる非磁性有機微粉末には、アクリルスチレン系樹脂粉末、ベンゾグアナミン樹脂粉末、メラミン系樹脂粉末、フタロシアニン系顔料粉末が挙げられるが、ポリオレフィン系樹脂粉末、ポリエステル系樹脂粉末、ポリアミド樹脂粉末、フッ素樹脂粉末が挙げられ、特開昭62−18564号公報、同60−25582号公報に記載されている方法によって製造することができる。
【0033】
本発明の磁気記録媒体に使用される強磁性粉末は、強磁性酸化鉄、コバルト含有強磁性酸化鉄又は強磁性合金粉末でSBET 比表面積が40〜80m2 /g、好ましくは50〜70m2 /gである。結晶子サイズは12〜25nm、好ましくは13〜22nmであり、特に好ましくは14〜20nmである。長軸長は0.05〜0.25μmであり、好ましくは0.07〜0.2μmであり、特に好ましくは0.08〜0.15μmである。強磁性金属粉末としてはFe、Ni、Fe−Co、Fe−Ni、Co−Ni、Co−Ni−Fe等が挙げられ、金属成分の20重量%以下の範囲内で、アルミニウム、ケイ素、硫黄、スカンジウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、銅、亜鉛、イットリウム、モリブデン、ロジウム、パラジウム、金、錫、アンチモン、ホウ素、バリウム、タンタル、タングステン、レニウム、銀、鉛、リン、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、テルル、ビスマスを含む合金を挙げることができる。また、強磁性金属粉末が少量の水、水酸化物または酸化物を含むものなどであってもよい。これらの強磁性粉末の製法は既に公知であり、本発明で用いる強磁性粉末についても公知の方法に従って製造することができる。
強磁性粉末の形状に特に制限はないが、通常は針状、粒状、サイコロ状、米粒状および板状のものなどが使用される。とくに針状の強磁性粉末を使用することが好ましい。
【0034】
上記の樹脂成分、硬化剤および強磁性粉末を、通常磁性塗料の調製の際に使用されているメチルエチルケトン、ジオキサン、シクロヘキサノン、酢酸エチル等の溶剤と共に混練分散して磁性塗料とする。混練分散は通常の方法に従って行うことができる。
なお、磁性塗料中には、上記成分以外に、α−Al23 、Cr23 等の研磨材、カーボンブラック等の帯電防止剤、脂肪酸、脂肪酸エステル、シリコーンオイル等の潤滑剤、分散材など通常使用されている添加剤あるいは充填剤を含むものであってもよい。
上層磁性層または下層非磁性層の潤滑剤、分散剤、添加剤、溶剤、分散方法その他はそれぞれ磁性層に関する公知技術が適用できる。
【0035】
以上の材料により調製した上層磁性層用磁性塗料、下層非磁性層用非磁性塗料を非磁性支持体上に塗布して磁性層を形成する。
本発明に用いることのできる非磁性支持体としては二軸延伸を行ったポリエチレンナフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、芳香族ポリアミド、ポリベンズオキシダゾール等の公知のものが使用できる。好ましくはポリエチレンナフタレート、芳香族ポリアミドである。これらの非磁性支持体はあらかじめコロナ放電、プラズマ処理、易接着処理、熱処理、などを行っても良い。また本発明に用いることのできる非磁性支持体は中心線平均表面粗さがカットオフ値0.25mmにおいて0.1〜20nm、好ましくは1〜10nmの範囲という優れた平滑性を有する表面であることが好ましい。また、これらの非磁性支持体は中心線平均表面粗さが小さいだけでなく1μm以上の粗大突起がないことが好ましい。
【0036】
本発明の磁気記録媒体の製造方法は例えば、走行下にある非磁性支持体の表面に磁性塗料、非磁性塗料を逐次あるいは同時に重層塗布する。具体的には、
(1)磁性層の塗布で一般的に適用されるグラビア、ロール、ブレード、エクストルージョン等の塗布装置により、まず下層を塗布し、下層が未乾燥の状態のうちに特公平1-46186号公報、特開昭60-238179号公報、特開平2-265672号公報等に開示されているような支持体加圧型エクストルージョン塗布装置により、上層を塗布する。
(2)特開昭63-88080号公報、特開平2-17971号公報、特開平2-265672号公報に開示されているような塗布液通液スリットを2個有する一つの塗布ヘッドにより上下層をほぼ同時に塗布する。
(3)特開平2-174965号公報に開示されているようなバックアップロール付きのエクストルージョン塗布装置により、上下層をほぼ同時に塗布する。
【0037】
本発明で用いる非磁性支持体の磁性層が塗布されていない面にバックコート層が設けられていてもよい。バックコート層は、非磁性支持体の磁性塗料が塗布されていない面に、研磨材、帯電防止剤などの粒状成分と結合剤とを有機溶剤に分散したバックコート層形成塗料を塗布して設けられた層である。粒状成分として各種の無機顔料やカーボンブラックを使用することができ、また結合剤としてはニトロセルロース、フェノキシ樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリウレタン等の樹脂を単独またはこれらを混合して使用することができる。
なお、非磁性支持体の磁性層形成面およびバックコート層形成面に接着剤層が設けられいてもよい。
【0038】
塗布された磁性塗料の塗布層は、磁性層塗布液の塗布層中に含まれる強磁性粉末を磁場配向処理を施した後に乾燥される。
このようにして乾燥された後、塗布層に表面平滑化処理を施す。表面平滑化処理には、たとえばスーパーカレンダーロールなどが利用される。表面平滑化処理を行うことにより、乾燥時の溶剤の除去によって生じた空孔が消滅し磁性層中の強磁性粉末の充填率が向上するので、電磁変換特性の高い磁気記録媒体を得ることができる。
カレンダー処理ロールとしてはエポキシ、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド等の耐熱性プラスチックロールを使用する。また金属ロールで処理することもできる。
【0039】
本発明の磁気記録媒体は、表面の中心線平均粗さが、カットオフ値0.25mmにおいて0.1〜4nm、好ましくは1〜3nmの範囲という極めて優れた平滑性を有する表面であることが好ましい。その方法として、例えば上述したように特定の強磁性粉末と結合剤を選んで形成した磁性層を上記カレンダー処理を施すことにより行われる。カレンダー処理条件としては、カレンダーロールの温度を60〜100℃の範囲、好ましくは70〜100℃の範囲、特に好ましくは80〜100℃の範囲であり、圧力は100〜500kg/cmの範囲であり、好ましくは200〜450kg/cmの範囲であり、特に好ましくは300〜400kg/cmの範囲の条件で作動させることによって行われることが好ましい。
得られた磁気記録媒体は、裁断機などを使用して所望の大きさに裁断して使用することができる。
【0040】
本発明の磁気記録媒体のポリウレタン樹脂は、分子量2000程度のポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオールなどの長鎖ポリオールとジイソシアネート化合物を反応させて重合し、必要に応じて分子量100前後の短鎖ジオールを鎖延長剤として使用されていた従来のポリウレタンバインダーとはその特性が大きく異なっている。
【0041】
本発明の、ポリウレタン樹脂のジオール成分に含まれるダイマージオールは分子量が537であり従来のポリウレタン樹脂で用いられていた長鎖ポリオールと短鎖ジオールの中間的な範囲に当たる。このことから長鎖ポリオールを使うポリウレタンに比べてジイソシアネート成分の重量分率を増やし、ウレタン結合を増やすことができる。これによりウレタン結合の分子間相互作用が増大しポリウレタン樹脂の力学強度を高めることが可能となる。
またダイマージオールには環状構造であるシクロヘキサン環を持つことからも力学強度を高めることができる。
【0042】
ダイマージオールは、飽和炭化水素であり、不飽和結合を持たず、また分子の中間にエステル結合、エーテル結合などの連結基を持たない。このジオールとジイソシアネート化合物からなるポリウレタン樹脂ではエステル結合、エーテル結合を持たない。このことは高温、高湿環境下での劣化、分解を受けにくくし、磁気記録媒体の長期保存性を大きく向上させる。特に従来のポリエステルポリオールを用いたポリウレタンではエステル結合部分の加水分解やポリエーテルウレタンのエーテル結合の熱分解が問題となっていたが、本件発明のポリウレタン樹脂では本質的にこの問題を解決することができた。
【0043】
また、先に挙げた先行技術である、特開平4−324110号公報には、ポリエステルポリオールの酸成分に水添ダイマー酸を使用してポリマー全体の疎水性を高めて耐加水分解性を向上させてはいるものの、エステル結合を含有するポリエステル系のポリウレタン樹脂であるために本質的にこの問題を解決することはできなかった。とくに、最近の金属微粒子磁性体を用いた磁気記録媒体では磁性体の表面の触媒活性は高くバインダーの分解反応も促進されるため耐加水分解性を高めることは重要な問題であった。
【0044】
またダイマージオールには、炭素数が6個あるいは8個の長いアルキル分枝側鎖を2本有しており、屈曲した分子構造をとるため溶剤溶解性が高い。このことは磁性体をバインダー、溶剤中で分散するときに、磁性体に吸着したバインダー分子鎖の広がりを大きくするような構造を取りやすいため分散性を向上することができ、これによって磁気記録媒体の電磁変換特性を向上させることができた。
【0045】
また、ダイマージオールの屈曲した構造によりポリマー鎖の絡み合いを増加し、これとウレタン基間の分子間水素結合による相互作用で高い力学強度、すなわち高い弾性率と大きな破断伸びを両立させることができる。磁気記録媒体の磁性塗膜の強度を大きくし耐久性を大きく向上することができる。
さらに予期せぬ効果として磁気記録媒体のカレンダー工程においてカレンダーロール表面に磁性層が削れて付着するカレンダーロール汚れが本発明のポリウレタン樹脂を用いると極めて良好となることがわかった。これは磁性塗膜表面にダイマージオールの長いアルキル側鎖が出てカレンダーロールの金属表面との摩擦が小さくなったものによることが考えられる。
【0046】
【実施例】
以下に本発明の実施例を示し、本発明を説明する。実施例中の「部」の表示は「重量部」を示す。
実施例1〜4および比較例1
(ポリウレタン樹脂の合成)
表1にその配合量とともに原料を、シクロヘキサノン:トルエン=1/1混合溶媒中で仕込み、ワンショット法でポリウレタンを重合した。得られた重合体のガラス転移温度、重量平均分子量(Mw)を表1に示す。
【0047】
【表1】
Figure 0003825151
【0048】
ただし表1において、
DD:ダイマージオール
CHM:シクロヘキサンジメタノール
NPG:ネオペンチルグリコール
HBPA:水素化ビスフェノールA
PES:ポリエステルポリオール(水添ダイマー酸/イソフタル酸/1,6−ヘキサンジオール=1.8/2.7/5.4mol、MW=2020)
DEIS:ビス(ヒドロキシエチル)5−スルホイソフタレートナトリウム塩
MDI:ジフェニルメタンジイソシアネート
TDI:トリレンジイソシアネート
をそれぞれ表す。
【0049】
(磁気記録媒体の作製)
強磁性合金粉末(組成:Fe 92%、Zn 4%、Ni 4%、Hc 2000Oe、結晶子サイズ15nm、BET比表面積59m2/g、長軸径0.12μm,針状比7、σs140emu/g)100部をオープンニーダーで10分間粉砕し、次いでフェニルリン酸1部、メチルエチルケトン10部、シクロヘキサノン3部、トルエン3部を添加してさらに30分間混合、混練した。
【0050】
次に塩化ビニル系バインダー(日本ゼオン製MR110)5重量部および表1のポリウレタン樹脂5部、およびメチルエチルケトン15部、メチルイソブチルケトン10部を加えて60分間混練し、次いで
研磨剤 (Al23 粒子サイズ0.3μm ) 2部
カーボンブラック (粒子サイズ 0.1μm) 2部
メチルエチルケトン 250部
を加えてサンドミルで120分間分散した。これに
ポリイソシアネート 5部(固形分)
(日本ポリウレタン製 コロネート3041)
イソアミルステレート 2部
ステアリン酸 1部
メチルエチルケトン 50部
を加え、さらに20分間攪拌混合したあと、1μmの平均孔径を有するフィルターを用いて濾過し、磁性塗料を調製した。
得られた磁性塗料を乾燥後の厚さが2.0μmになるように、厚さ6μmのアラミド支持体の表面にリバースロールを用いて塗布した。磁性塗料が塗布された非磁性支持体を、磁性塗料が未乾燥の状態で3000ガウスの磁石で磁場配向を行ない、さらに乾燥後、金属ロール−金属ロール−金属ロール−金属ロール−金属ロール−金属ロール−金属ロールの組み合せによるカレンダー処理を、速度100m/分、線圧300kg/cm、温度90℃の条件で行なった後に6.35mm幅に裁断しデジタルビデオテープレコーダ用のビデオテープを作製した。
【0051】
実施例5〜7および比較例2
(上層用磁性液の調製)
実施例1と同様に表2の素材を用いて磁性塗布液を調整して用いた。
(下層用非磁性液の調製)
酸化チタン(平均粒径0.035μm、結晶型ルチル、TiO2 含有量90%以上、表面処理層;アルミナ、SBET35〜42m2/g 、真比重4.1、pH6.5〜8.0)85部とフェニルリン酸1部をオープンニーダーで10分間粉砕混合し、次いで塩化ビニル系バインダー(日本ゼオン製MR110)5重量部及び表2のポリウレタン樹脂、メチルエチルケトン10部、シクロヘキサノン3部、トルエン3部を添加してさらに30分間混合、混練した。次に、及びメチルエチルケトン15部、メチルイソブチルケトン10部を加えて60分間混練し
次いで カーボンブラック(粒子サイズ0.1μm) 2部
メチルエチルケトン 200部
を加えてサンドミルで120分間分散した。これに
ブチルステアレート 2部
ステアリン酸 1部
メチルエチルケトン 50部
を加え、さらに20分間攪拌混合したあと、1μmの平均孔径を有するフィルターを用いて濾過し、非磁性塗料を調製した。得られた非磁性塗料を乾燥後の厚さが2.0μmとなるように、さらにその直後に磁性塗料を乾燥後の厚さが0.1μmになるように、厚さ6μmのアラミド支持体の表面にリバースロールを用いて同時重層塗布した。 磁性塗料が塗布された非磁性支持体を、磁性塗料が未乾燥の状態で3000ガウスの磁石で磁場配向を行ない、さらに乾燥後、金属ロール−金属ロール−金属ロール−金属ロール−金属 ロール−金属ロール−金属ロールの組み合せによるカレンダー処理を速度100m/分、線圧300kg/cm、温度90℃で行なった後6.35mm幅に裁断した。
実施例および比較例で得られた磁気テープを下記の測定方法によって測定し、その結果を表2、表3に示す。
【0052】
〔測定方法〕
(1)電磁変換特性:試料テープにドラムテスターを用いて記録波長0.5μm、ヘッド速度10m/秒の条件で記録し、再生した。基準テープ(比較例1)C/Nを0dBとしたときのテープの相対的なC/Nを評価した。
【0053】
(2)磁性層表面粗さRa:デジタルオプチカルプロフィメ−タ−(WYKO製)を用いたる光干渉法により、カットオフ0.25mmの条件で中心線平均粗さをRaとした。
(3)耐久性:ヘッド汚れ、出力低下:60分長のテープをデジタルビデオテープレコーダ(松下電器製 NV−BJ1)を用いて40℃10%RH環境下で100回連続繰り返し走行させ、ビデオヘッドの汚れを観察し、またビデオ出力を連続して記録し、1回目の出力を0dBとして出力低下を測定した。
ビデオヘッド汚れ
汚れが目視で観察されなかったもの:優
汚れが目視で観察されたもの :不良
(4)保存性:テープ試料を60℃90%RH環境で1ヶ月保存した後、(3)と同様の評価を行った。
【0054】
【表2】
Figure 0003825151
【0055】
【表3】
Figure 0003825151
【0056】
【発明の効果】
磁性層、もしくは非磁性下層に用いる結合剤として、ダイマージオールをジオール成分として含むポリウレタン樹脂を含有する結合剤を用いたことによって、走行耐久性および長期保存性に優れた磁気記録媒体を得ることができた。

Claims (4)

  1. 非磁性支持体上に強磁性微粉末と結合剤を分散した磁性層を有する磁気記録媒体において、前記結合剤が下記の化学式1で示されるダイマージオールをジオール成分として含むポリウレタン樹脂を含有することを特徴とする磁気記録媒体。
    Figure 0003825151
  2. 非磁性支持体上に非磁性粉体又は強磁性微粉末と結合剤を分散した非磁性層又は磁性層を塗設しこの上に強磁性微粉末と結合剤を分散した少なくとも一層以上の磁性層を有する磁気記録媒体において、前記磁性層または前記非磁性層の少なくとも一層以上に下記の化学式1で示されるダイマージオールをジオール成分として含むポリウレタン樹脂を含有することを特徴とする磁気記録媒体。
    Figure 0003825151
  3. 前記ポリウレタン樹脂のジオール成分としてダイマージオールを20重量%以上含むことを特徴とする請求項1または請求項2記載の磁気記録媒体。
  4. 前記ポリウレタン樹脂が−SO3M、−SO4M、−COOM、−PO32、−PO42(ただし、Mは水素原子またはアルカリ金属、アンモニウムから選ばれる)から選ばれる少なくとも1種以上の極性基を1×10-6〜2×10-4eq/g含有することを特徴とする請求項1または請求項2記載の磁気記録媒体。
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