JP3824896B2 - 燃料電池自動車 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、燃料電池自動車の車両補機を好適に制御する燃料電池自動車に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、図6に示したように、車両の走行動力源として、燃料電池(FC)2と電気二重層キャパシタ(蓄電装置)3とを組み合わせたハイブリッド型の燃料電池自動車1が知られている。
このハイブリッド型の燃料電池自動車1は、走行用のモータ4の負荷の過渡変動時に燃料電池2の応答遅れによって生じる発電不足分を前記電気二重層キャパシタ(以下、単にキャパシタと称する)3に蓄えられたエネルギーによって補い、必要電力を供給するものである。
【0003】
上述したように、燃料電池2は過渡変動時において要求負荷に対する反応ガス供給源6、7からの反応ガス供給量(空気量、及び燃料ガス量)に応答遅れが生じるため、負荷変動直後に要求負荷出力を出力しようとすると、キャパシタ3の補助限度を超えると、反応ガス供給量が不足するいわゆるガス欠状態に陥ってしまう。
【0004】
従って、従来においては、燃料電池2とキャパシタ3との間に燃料電池2の出力を制限するDC/DCコンバータ等からなる出力変換制限装置8を設け、この出力変換制限装置8によって燃料電池2の出力を、燃料電池2に供給される反応ガス量に見合った量に制御していた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述の燃料電池の出力を制限する方式は出力を要求されているにも関わらず出力しないという状態が短時間継続し、自動車としての走行性能を悪化させる事になる。
特に、車両補機に電動式の車載用空調装置のような間欠的に作動する大容量の負荷を含んでいるときには、負荷変動が他の車両補機に比べて大きいため、駆動用モータの出力を制限する(低下させる)必要性が生ずる事もある。
【0006】
これに対し、車両補機の作動等による負荷変動に対応できるように、予め燃料電池に過剰の反応ガスを供給しておくという手法もある。この手法によれば、上述したガス欠の問題は解決することができ、車両補機の負荷変動に対応できる点で優れているものの、常に余剰の反応ガスを供給するため、車両補機があまり作動しない場合などには過剰供給分の大部分は無駄となってしまい、経済的に好ましくない。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、燃料電池自動車の車両補機を好適に制御することのできるエネルギー効率の良い燃料電池自動車を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、請求項1に記載した発明は、駆動用モータ(例えば、実施の形態におけるモータ58)と共に、燃料電池(例えば、実施形態における燃料電池40)を備えた電源部(例えば、実施の形態における電源装置22)を共有する少なくとも一つ以上の車両補機(例えば、実施の形態におけるエアコン30)に、該車両補機の作動予告信号を出力する作動予告信号出力手段(例えば、実施の形態における作動予告出力手段32a)と、前記作動予告信号出力手段から出力された作動予告信号に基づいて作動が予告された車両補機の作動予定出力(例えば、実施の形態におけるPACREQ)と、他の車両補機の消費電力(例えば、実施の形態におけるPOTHRREQ)と、加速要求に基づき決定された駆動用モータへの要求電力(例えば、実施の形態におけるPDREQ)と、に基づいて前記電源部での要求総発電量を算出する総発電量算出手段(例えば、実施の形態における総発電量算出手段44)と、前記要求総発電量に基づき燃料電池目標発電量を算出する燃料電池目標発電量算出手段(例えば、実施の形態における要求電力量算出手段34)と、前記作動が予告された車両補機に供給する燃料電池からの電力を制御する燃料電池出力制御装置(例えば、実施の形態における出力配分算出手段28)と、を備え、前記一つ以上の車両補機には出力制限値入力手段(例えば、実施の形態における出力限界値入力手段32c)が設けられ、前記燃料電池出力制御装置には出力制限値出力手段(例えば、実施の形態における出力限界値出力手段28b)が設けられ、前記燃料電池が燃料電池目標発電量を供給可能になるまでの間、前記出力制限値出力手段から、前記作動が予告された車両補機の作動電力を制限値以内に維持するための、出力制限値信号(例えば、実施の形態におけるPLDAC)を前記出力制限値入力手段へ送信可能とすることを特徴とする燃料電池自動車である。
【0009】
このように構成することで、作動予定の車両補機は直ちに作動せず、この車両補機の作動予告信号が作動予告信号出力手段から送信され、この予告信号などに基づいて燃料電池の目標発電量が算出される。この目標発電量に見合った反応ガスが燃料電池に供給されるため、前記作動予定の車両補機の作動時には、好適な出力を行うことができるように燃料電池を準備させることができる。また、作動予定の車両補機が無い場合には、作動予告信号は送信されず、上記目標発電量も変動しないため、必要な場合だけ反応ガスの供給量を増やせばよく、効率が良い。このように、電源装置に過度な負担をかけることなく、好適に車両補機の制御をすることができる。
また、燃料電池が目標発電量の電力を供給可能になるまでの間、燃料電池の供給可能な電力値以内で車両補機を作動するため、燃料電池の過度な負担を抑えつつ、より早く車両補機を作動させることができる。
【0011】
請求項2に記載した発明は、駆動用モータと共に、燃料電池を備えた電源部を共有する少なくとも一つ以上の車両補機に、該車両補機の作動予告信号を出力する作動予告信号出力手段と、前記作動予告信号出力手段から出力された作動予告信号に基づいて作動が予告された車両補機の作動予定出力と、他の車両補機の消費電力と、加速要求に基づき決定された駆動用モータへの要求電力と、に基づいて前記電源部での要求総発電量を算出する総発電量算出手段と、前記要求総発電量に基づき燃料電池目標発電量を算出する燃料電池目標発電量算出手段と、前記作動が予告された車両補機に供給する燃料電池からの電力を制御する燃料電池出力制御装置と、を備え、前記一つ以上の車両補機には作動待機信号入力手段(例えば、実施の形態における作動待機入力手段32b)が設けられ、該燃料電池出力制御装置には作動待機信号出力手段(例えば、実施の形態における作動待機出力手段28a)が設けられ、前記作動待機信号出力手段から前記作動待機信号入力手段に作動待機信号(例えば、実施の形態におけるACSTB)を送信可能とし、前記作動待機入力手段は、前記作動待機信号を受信した後、前記作動が予告された車両補機に前記燃料電池が前記目標発電量の電力を供給可能になるまでの間、前記作動が予告された車両補機の作動を待機状態に維持する待機指令を、該車両補機に送信可能とすることを特徴とする燃料電池自動車である。
【0012】
このように構成することで、燃料電池が目標発電量の電力を供給可能になるまでの間、作動予定の車両補機を作動させずに待機させているため、燃料電池に過度な負担を与えることがなく、ガス欠を防止することができる。
【0013】
請求項3に記載した発明は、前記作動予定出力は、前記作動が予告された車両補機の作動予定電力値であることを特徴とする燃料電池自動車である。
このように構成することで、作動予定出力を電流値や電圧値にした場合に比べて燃料電池の制御が容易となる。すなわち、燃料電池は、電流と電圧との間に一意的な関係特性(いわゆるI−V特性)を備えているため、作動予定出力を電流値または電圧値とすると、これにより燃料電池の電圧値または電流値が決まってしまい、車両補機側の電圧値または電流値と異なってしまうため、この差を補正する必要が生じるが、電力値で指令を出した場合には上述した補正の必要がないため、制御が容易となり好ましい。
【0015】
請求項4に記載した発明は、前記一つ以上の車両補機のうち、少なくとも一つは電動式空調装置であることを特徴とする燃料電池自動車である。
このように構成することで、電動式空調装置により要求負荷変動が発生した場合であっても、駆動モータ出力を制御しつつ、車両補機を好適に制御することができる。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態における燃料電池自動車を図面と共に説明する。まず、本発明の実施形態における燃料電池自動車の全体構成について説明する。
図5は本発明の実施形態に係る燃料電池自動車20の全体構成図である。本実施形態に係る燃料電池自動車20は、例えば燃料電池40と蓄電装置である電気二重層キャパシタ(以下、単に「キャパシタ」という)42とから構成されたハイブリッド型の電源装置22(図3参照)を備えている。
【0017】
これらの電源装置22は走行用モータ58に接続していて、この走行用モータ58に前記電源装置22から電力が供給され、この電力が走行用モータ58の駆動力となる。そして、この駆動力は、リダクション或いはトランスミッションT/Mを介して駆動輪Wに伝達され、これにより、燃料電池自動車20が走行するのである。また、燃料電池自動車20の減速時に駆動輪W側から走行用モータ58側に駆動力が伝達されると、走行用モータ58は発電機として機能し、いわゆる回生制動力を発生する。これにより、車体の運動エネルギーを電気エネルギーとして回収する。走行用モータ58は、例えば界磁として永久磁石を利用する永久磁石式の3相交流同期モータとされており、PDU(Power DriveUnit)70から供給される3相交流電力により駆動制御される。
【0018】
前記PDU70は、例えばIGBT等のスイッチング素子から構成されるPWMインバータを備えており、詳細を後述するEV−ECU(図3のMOTOR Control ECUに対応、以下単に「モータ制御ユニット」という)24から出力されるトルク指令に基づいて、燃料電池40および蓄電装置42から出力される直流電力を、3相交流電力に変換して走行用モータ58へ供給する。
【0019】
また、前記モータ制御ユニット24は、Energy ManagementECU(以下単に「エネルギー制御ユニット」という)26に接続し、このエネルギー制御ユニット26に要求電力量(PDREQ)を送信するとともに、このエネルギー制御ユニット26からの制限電力量(PLDM)を受信する(詳細は後述する)。そして、エネルギー制御ユニット26は、FC−ECU(図3のFC Control ECUに対応、以下単に「FC制御ユニット」という)52に接続し、このFC制御ユニット52に要求電力量(PFCREQ)を送信するとともに、このFC制御ユニットからの制限電力量(PFCLMT)を受信する(詳細は後述する)。
【0020】
前記FC制御ユニット52には、燃料電池40が接続されている。燃料電池40は、固体高分子膜をアノード側拡散電極とカソード側拡散電極とで挟持してなる燃料電池セルを、複数積層させて一体化させた構造となっている。前記燃料電池40には、反応ガス(水素、エア)を供給する反応ガス供給装置35(35a、35b)が接続してあり、この反応ガス供給装置35が前記燃料電池40に各反応ガス(水素、エア)を供給するのである。
【0021】
燃料電池40は、アノード側拡散電極の反応面に水素が供給されると、ここで水素がイオン化され、固体高分子電解質膜を介してカソード側拡散電極の方に移動する。この間に生じた電子が外部回路に取り出され、直流の電気エネルギーとして利用される。カソード側拡散電極には酸素が供給されているため、水素イオン、電子、及び酸素が反応して水が生成される。発電後の水素及び酸素は、燃料電池40外部に排出される。
【0022】
前記燃料電池40には、上記したFC制御ユニット52が接続してある。このFC制御ユニット52には、前記燃料電池40の発電時のデータ、例えば、各燃料電池セルごとの電流値や電圧値、燃料電池40全体での電流値や電圧値が入力される。さらに、水素圧力やエア圧力、燃料電池40の温度等も前記FC制御ユニット52に入力されるのである。
【0023】
なお、燃料電池自動車20の各種制御装置および補機類を駆動する12Vの補助バッテリ82には、例えばDC−DCコンバータ84が備えられており、DC−DCコンバータ84は、燃料電池40から供給される直流電圧を降圧して補助バッテリ82を充電する。
【0024】
また、空調装置(エアコン)30は燃料電池40に接続され、燃料電池40およびキャパシタ42から出力される直流電力を交流電力に変換してモータ86へ供給し、このモータ86により駆動されるのである。
【0025】
以下、より詳細に説明する。図1は本発明の実施形態における燃料電池自動車を示す概略構成図である。そして、図3は図1の一部をより詳細にしたブロック図である。なお、図示都合上、図3においては出力配分算出手段28を省略している。図1に示すように、車両補機を構成するエアコン(ACユニット)30にはエアコン制御ユニット(AC−ECU)32が接続してあり、このエアコン制御ユニット32によりエアコン30の制御を行っている。
【0026】
前記エアコン制御ユニット32は作動予定電力量算出手段(総発電量算出手段)44に接続してある。また、この総発電量算出手段44は、図5に示したようにDC−DCコンバータ84といった前記エアコン30以外の車両補機にも接続してあり、この総発電量算出手段44がエアコン30を含む車両補機の作動に必要な総発電量(PAREQ)を算出するのである。
【0027】
前記総発電量算出手段44は要求電力量算出手段34に接続してあり、この要求電力量算出手段34が前記総発電量に基づく要求電力量(PFCREQ)を算出する。また、前記要求電力量算出手段34は電源装置22の燃料電池駆動用補機(FC制御ユニット)52にも接続してあり、前記要求電力量算出手段34が前記要求電力量を電源装置22に伝達する。電源装置22は、上記したように、燃料電池(FC)40(図3参照)を備えており、前記要求電力に基づき燃料電池40が発電を行う。
【0028】
前記電源装置22のFC制御ユニット52は出力限界値算出手段38に接続してあり、この出力限界値算出手段38が電源装置22の出力に基づいて出力限界値(PLD)を算出する。出力限界値算出手段38は出力配分算出手段28に接続してあり、この出力配分算出手段28が前記出力限界値に基づいて車両補機(エアコン30やDC−DCコンバータ84など)に電力量を算出するのである。なお、上記した総発電量算出手段44と、要求電力量算出手段34と、出力限界値算出手段38、出力配分算出手段28は、エネルギー制御ユニット26を構成している。
【0029】
さらに具体的に説明する。前記総発電量算出手段44はモータ制御ユニット24が接続してあり、このモータ制御ユニット24は、要求電力算出部23と、モータ駆動電力算出部25とを備えている。アクセルペダルの踏み込み量(Ap)や、車両駆動用のモータの回転数(Nm)や電流(Im)、電圧(Vm)といったデータが要求電力算出部23に入力され、この要求電力算出部23がこれらのデータに基づいて要求電力を算出する。要求電力算出部23はモータ駆動電力算出部25に接続してあり、このモータ駆動電力算出部25に前記要求電力を伝達する。
【0030】
また、前記要求電力算出部23は、算出した電力量(PDREQ)を総発電量算出手段44に入力する。また、総発電量算出手段44には、エアコン(AC)での必要電力量(PACREQ)や、DC−DCコンバータでの必要電力量(PDCREQ)や、その他の補機類での必要電力量(POTHREQ)が入力される。前記総発電量算出手段44は、これらの必要電力量に基づいて電源装置22での総発電量(PAREQ)を算出し、この総発電量を要求電力量算出手段34に伝達する。加えて、前記総発電量算出手段44は、作動予告入力手段44aを備えており、前記エアコン制御ユニット32に設けられた作動予告出力手段32aに接続している。これについては詳細を後述する。
【0031】
また、前記エネルギー制御ユニット26は、キャパシタ42の電圧値(Vcap)と電流値(Icap)とが入力されるキャパシタ出力可能量算出部(Vcap−o、蓄電装置の補助電力算出手段)36を備えている。このキャパシタ出力可能量算出部36がキャパシタ42での出力可能量を算出するのである。
【0032】
前記要求電力量算出手段34は、燃料電池目標発電量算出部46と、燃料電池発電量算出部48と、比較演算部50とを備えている。前記燃料電池目標発電量算出部46は、前記総発電量算出手段44から伝達された総発電量と、前記キャパシタ出力可能量算出部36からのキャパシタ42出力可能量とに基づき、燃料電池40での目標発電量を算出する。また、燃料電池発電量算出部48には燃料電池40での電流値(Ifc)が入力され、この電流値に基づいて燃料電池発電量算出部48が燃料電池40での実発電量を算出する。前記比較判定部50は、前記燃料電池目標発電量算出部46と前記燃料電池発電量算出部48からそれぞれ入力される目標発電量と実際の発電量のうち大きい方を要求電力値(PFCREQ)として選択し、電源装置22にこの要求電力値を送信する。なお、燃料電池40の場合には、電圧値(Vfc)は電流値(Ifc)から求めることができる(いわゆるI−V特性)ため、燃料電池発電量算出部48に前記電圧値を入力しなくても発電量を算出することができる。
【0033】
前記電源装置22について説明する。電源装置22には、燃料電池40やキャパシタ42が、車輪駆動用のモータ58に接続したインバータ56に対して並列に設けてあり、このインバータ56を介してモータ58に電力を供給する。また、前記燃料電池40やキャパシタ42は、VCU(チョッパ)60に並列接続し、当該VCU60により出力の制限が行われる。
【0034】
このように構成した前記電源装置22において、前記FC制御ユニット52は、前記比較判定部50から送信された要求電力値に基づき、反応ガス供給装置35に信号を送り、反応ガスを燃料電池40に供給させる。燃料電池40には、上記した発電時のデータを検出する図示しないセンサが設けてあり、このセンサにより検出したデータをFC制御ユニット52に入力する。
【0035】
前記出力限界値算出手段38は、VCU出力制限値算出部62と、モータ駆動電力制限値算出部(モータ制限値算出部)64と、キャパシタアシスト量算出・加算部(CAP補助量算出部)66とを備えている。前記CAP補助量算出部66は、前記キャパシタ出力可能量算出部36とFC制御ユニット52とに接続してあり、これらからのデータに基づきキャパシタ42でのアシスト量を算出または加算する。また、VCU出力制限値算出部62は、前記CAP補助量算出部66とFC制御ユニット52とに接続してあり、キャパシタ42でのアシスト量を加味した出力制限値を算出するとともに、この出力制限値をVCU60に伝達し、燃料電池40の出力を制限できるようにしている。また、モータ制限値算出部64は、前記CAP補助量算出部66とFC制御ユニット52とに接続してあり、キャパシタ42でのアシスト量を加味するとともに、モータ駆動電力算出部25に指令を送って、インバータ56を介してモータ58での回生による電力を制限できるように、出力制限信号(Power Limit Drive)を送信している。
【0036】
そして、前記VCU出力制限値算出部62と、モータ制限値算出部64とは、出力配分算出手段28に接続してあり、この出力配分算出手段28にそれぞれの算出部で算出した電力量(PLD)を入力する。出力配分算出手段28は、この入力された電力量に基づき、各車両補機に応じた電力量(出力配分値)を算出して、各車両補機にこの電力量を送信する。この配分値は、各車両補機に応じてそれぞれ設定されたレートリミット(比率)を出力限界値に掛けることで算出する。図1に示したように、車両補機がエアコン30の場合にはエアコン制御ユニット32にエアコン出力制限値(PLDAC)を、車両補機がDC−DCコンバータの場合にはその制御機器にコンバータ出力制限値(PLDDC)をそれぞれ送信し、モータ58に対してはモータ出力制限値(PLDM)を送信する。また、出力配分算出手段28からは、各車両補機が作動してよいかどうかの許可信号も各車両補機の制御機器に送信する。例えば、車両補機がエアコン30の場合にはエアコン作動許可信号(ACSTB)、DC−DCコンバータの場合にはDC−DCコンバータ作動許可信号(DCSTB)がそれぞれ入力される。
【0037】
図2はエアコン制御ユニット32とエネルギー制御ユニット26との信号の送受信を示す説明図である。また、図4はエアコン制御ユニット32とエネルギー制御ユニット26における制御フローである。まず、ステップS102に示すように、エアコン制御ユニット32が、エアコン30が作動できる状態であるかどうか判定する。この判定は、図示しない各センサによりエアコンの状態を検知することにより行う。ステップS102において、エアコン30が作動できない状態の場合(NOの場合)には、エアコン制御ユニット32はエアコン30の作動を許可せず、エアコン30での消費電力制限値を0にして一連の処理を終了する。このときには、図2の矢印Aに示したように、エアコン制御ユニット32からエネルギー制御ユニット26に対して予想消費電力値(この場合は0)が送信される。
【0038】
エアコン30が作動できる状態の場合(YESの場合)には、ステップS104の処理に進む。このときには、図2の矢印Aに示したように、エアコン制御ユニット32からエネルギー制御ユニット26に指令が行き、予想消費電力値を入力する。ステップS104では、エネルギー制御ユニット26が、燃料電池40の出力状態の判定を行う。この出力状態の判定は、燃料電池40を構成する各燃料電池セルごとの電圧を検出し、この検出した電圧が規定値よりも低下しているかどうか比較することにより行う。前記燃料電池セルの電圧が低下しているときに急激な負荷変動をかけると燃料電池40に大きな負担がかかってしまい、これを防止するために上記判定を行う。燃料電池セルにおいて電圧低下が検出された場合には(YESの場合)、上記したステップS106の処理に進んで、一連の処理を終了する。
【0039】
ステップS104において、燃料電池セルで電圧低下が検出されなかった場合(NOの場合)には、エネルギー制御ユニット26が燃料電池40に対して発電指令を行う。そして、エネルギー制御ユニット26は、燃料電池40からの出力に基づいて、ステップS108に示したように、予想消費電力値にレートリミットを掛けて、消費電力制限値を算出する。図2に示したように、エネルギー制御ユニット26はエアコン制御ユニットに対して、消費電力制限値(矢印C)とエアコン作動許可信号(矢印B)を送信して、処理を終了する。エアコン制御ユニット32は、この送信された信号に基づいて、エアコン30に対して作動信号(矢印D)を送信する。
【0040】
このように構成することで、車両補機の負荷変動が大きい場合であっても、実際の電源装置での出力に合わせて車両補機の制御をすることができるため、電源装置に過度な負担をかけることなく、好適に車両補機の制御をすることができる。電動式の車載用空調装置による要求負荷変動に対しても、駆動モータ出力を維持しつつ好適に制御をすることができる。
【0041】
また、車両補機からの負荷変動に対応できるように、車両補機からの消費電力を一定電力値とみなし、燃料電池に通常発電量を予め上乗せして指令する手法も考えられる。この手法は、常に燃料電池の出力に余裕をもたせているため、車両補機の負荷変動に対応することができるという点で優れている。しかし、常に過剰なガス量を供給する必要があるため、コスト的な面で好ましくない。また、車両補機にエアコンを含んでいる場合には、負荷変動が特に急激であるため、これを満たすためには大幅なガス量が必要になってしまう。
本実施形態においては、燃料電池に過大な負担をかけることなく、車両補機の制御をすることができるため、コスト的にも好ましい。
【0042】
以上、本発明の実施形態を図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
例えば、上述した実施形態においては、電源装置22に対して、要求電力量(PECREQ)で説明したが、要求電流量(IFCREQ)としてもよい。
【0043】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1に記載した発明によれば、前記作動予定の車両補機の作動時には、好適な出力を行うことができるように燃料電池を準備させることができるため、燃料電池に過度な負担をかけることなく、好適に車両補機の制御をすることができる。また、燃料電池の過度な負担を抑えつつ、より早く車両補機を作動させることができる。
請求項2に記載した発明によれば、燃料電池に過度な負担を与えることがなく、ガス欠を防止することができる。
請求項3に記載した発明によれば、作動予定出力を電流値や電圧値にした場合に比べて燃料電池の制御が容易となる。
請求項4に記載した発明によれば、電動式空調装置により要求負荷変動が発生した場合であっても、駆動モータ出力を維持しつつ、車両補機を好適に制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は本発明の実施形態における燃料電池自動車を示す概略構成図である。
【図2】 図2はエアコン制御ユニットとエネルギー制御ユニットとの信号の送受信を示す説明図である。
【図3】 図3は同実施形態における燃料電池自動車を示す概略構成図である。
【図4】 図4はエアコン制御ユニットとエネルギー制御ユニットにおける制御フローである。
【図5】 図5は本発明の実施形態における燃料電池自動車の全体構成を示す説明図である。
【図6】 図6は従来における燃料電池自動車の全体構成を示す説明図である。
【符号の説明】
20 燃料電池自動車
22 電源装置
28 出力配分算出手段
30 エアコン
32 エアコン制御ユニット
34 要求電力量算出手段
44 作動予定出力手段(総発電量算出手段)
Claims (4)
- 駆動用モータと共に、燃料電池を備えた電源部を共有する少なくとも一つ以上の車両補機に、該車両補機の作動予告信号を出力する作動予告信号出力手段と、
前記作動予告信号出力手段から出力された作動予告信号に基づいて作動が予告された車両補機の作動予定出力と、他の車両補機の消費電力と、加速要求に基づき決定された駆動用モータへの要求電力と、に基づいて前記電源部での要求総発電量を算出する総発電量算出手段と、
前記要求総発電量に基づき燃料電池目標発電量を算出する燃料電池目標発電量算出手段と、
前記作動が予告された車両補機に供給する燃料電池からの電力を制御する燃料電池出力制御装置と、を備え、
前記一つ以上の車両補機には出力制限値入力手段が設けられ、
前記燃料電池出力制御装置には出力制限値出力手段が設けられ、
前記燃料電池が燃料電池目標発電量を供給可能になるまでの間、前記出力制限値出力手段から、前記作動が予告された車両補機の作動電力を制限値以内に維持するための、出力制限値信号を前記出力制限値入力手段へ送信可能とすることを特徴とする燃料電池自動車。 - 駆動用モータと共に、燃料電池を備えた電源部を共有する少なくとも一つ以上の車両補機に、該車両補機の作動予告信号を出力する作動予告信号出力手段と、
前記作動予告信号出力手段から出力された作動予告信号に基づいて作動が予告された車両補機の作動予定出力と、他の車両補機の消費電力と、加速要求に基づき決定された駆動用モータへの要求電力と、に基づいて前記電源部での要求総発電量を算出する総発電量算出手段と、
前記要求総発電量に基づき燃料電池目標発電量を算出する燃料電池目標発電量算出手段と、
前記作動が予告された車両補機に供給する燃料電池からの電力を制御する燃料電池出力制御装置と、を備え、
前記一つ以上の車両補機には作動待機信号入力手段が設けられ、
該燃料電池出力制御装置には作動待機信号出力手段が設けられ、
前記作動待機信号出力手段から前記作動待機信号入力手段に作動待機信号を送信可能とし、
前記作動待機入力手段は、前記作動待機信号を受信した後、前記作動が予告された車両補機に前記燃料電池が前記目標発電量の電力を供給可能になるまでの間、前記作動が予告された車両補機の作動を待機状態に維持する待機指令を、該車両補機に送信可能とすることを特徴とする燃料電池自動車。 - 前記作動予定出力は、前記作動が予告された車両補機の作動予定電力値であることを特徴とする請求項1または2に記載の燃料電池自動車。
- 前記一つ以上の車両補機のうち、少なくとも一つは電動式空調装置であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の燃料電池自動車。
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