JP3824827B2 - 圧延ロール用外層及び圧延ロール - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、熱間又は冷間圧延用複合ロールにおける外層に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
熱間又は冷間圧延ロールは、外面側に耐摩耗性、内部側に強靱性が要求されることから、耐摩耗性にすぐれるハイス系鋳鉄材を遠心力鋳造により形成した外層と、強靱性にすぐれる鋳鉄若しくは鋳鋼又は合金鋼の内層(又はコア)を、冶金的又は機械的に一体化した複合構造のロールが従来より使用されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
このハイス系鋳鉄材は、Cr、Mo、W、V等の炭化物形成元素を相当量含んでおり、溶湯の凝固過程で炭化物を晶出する。この晶出炭化物が耐摩耗性の向上に大きく寄与する。
ところで、このハイス径材料を用いて、遠心力鋳造によりロール外層を作製した場合、炭化物は、均一に分布して晶出するのではなく、炭化物量の多い層と少ない層とが交互に同心円状に形成されることが、横断面のミクロ組織観察によって認められる。この炭化物の濃淡層は、一般に年輪状偏析(又はバンド状偏析)と称されている。
【0004】
この年輪状偏析は、同じハイス系鋳鉄材でも、横型遠心力鋳造の場合に特に発生し易いことがわかっている。
この理由について検討したところ、横型遠心力鋳造の場合、溶湯に対して、上昇時に重力による減速力、下降時に重力による加速力が働くため、上部の流速は小さく、下部の流速は大きくなっている。このため、遠心力鋳造時における年輪状偏析の発生原因の1つとして、凝固途中の溶湯の回転速度が変化していることが考えられる。
【0005】
ロールの外層に生ずる年輪状偏析は、完全な同心円ではないため、ロールの外層表面には炭化物の多い高硬度領域と炭化物の少ない低硬度領域が存在する。それゆえ、実際の圧延作業において、ロール外表面は、炭化物の多い領域では摩耗が生じ難く、一方炭化物の少ない領域では摩耗を生じ易いことから、ロールの外表面に摩耗差を生じ、それが圧延製品に転写されて品質に影響を及ぼす。
圧延製品への転写模様を回避するには、圧延に供されるロール表面の研磨をより頻繁に行なわねばならず、ロールの表面研磨1回当たりの圧延量が低下し、またロールの低寿命化を招く。
【0006】
上述のように、年輪状偏析の発生原因は、凝固途中における溶湯の回転速度の変化にあることから、発明者らは、外層の遠心力鋳造時における金型の回転速度を速くすれば、重力の影響が小さくなり、年輪状偏析の出現を防止できると考えた。
そこで、外周部分における重力倍数Gナンバーを150G以上とする条件で金型を高速回転させて遠心力鋳造を行なうことにより、年輪状偏析の発生を抑えることができた。しかしながら、Gナンバーがさらに大きな条件で遠心力鋳造を行なって作製されたロールの場合、圧延後、圧延材に多数の凹凸が出現することがあった。
この凹凸もロール外層からの転写により生じたものである。その原因を解明するために、ロール外層の金属組織を観察したところ、共晶組織中に初晶のデンドライト(樹枝状晶)が多数存在しており、その中には長さ約4mmを越える粗大なものが多数散在していることが認められた。
デンドライトは、炭化物等からなる共晶組織に比べて、硬度が低く摩耗を生じ易いことから、年輪状偏析の場合と同じ様に、ロールの外周面に摩耗差を生じており、それが圧延製品に転写されたものであることがわかった。
【0007】
この場合、圧延製品の転写模様を回避するには、年輪状偏析の場合と同様、圧延に供されるロール表面の研磨をより頻繁に行わねばならず、また、ロール表面の凹凸が大きいほど研磨1回当たりの研磨量も多くなるなどの不都合があった。
【0008】
本発明の目的は、粗大なデンドライトが殆んど存在せず、しかも年輪状偏析が殆んど存在しない略均質な金属組織を有する圧延ロールの外層及び圧延ロールを提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の圧延用複合ロールの外層は、遠心力鋳造により作製され、重量%にて、Cを1.0〜4.0%、Siを0.2〜3.0%、Mnを0.2〜2.0%、Crを3.0〜12.0%、Mo又はWの少なくとも一種を合計量で1.0〜16.0%、Vを1.0〜8.0%及び/又はNbを3.0%以下、Coを5.0%以下、Niを4.0%以下、残部実質的にFeからなるハイス系鋳鉄材からなり、圧延に供される面における金属組織中のデンドライト、長さ4mm以下のものが90%以上占めるようにしたものである。
【0010】
請求項に記載の圧延用複合ロールの外層は、遠心力鋳造により作製され、重量%にて、Cを1.0〜4.0%、Siを0.2〜3.0%、Mnを0.2〜2.0%、Crを3.0〜12.0%、Mo又はWの少なくとも一種を合計量で1.0〜16.0%、Vを1.0〜8.0%及び/又はNbを3.0%以下、Coを5.0%以下、Niを4.0%以下、残部実質的にFeからなるハイス系鋳鉄材からなり、圧延に供される面内の任意の10mm×10mmの領域における金属組織中の共晶組織の面積率を測定して、測定された共晶組織の面積率をαとし、前記領域に存在するどれか1つのデンドライトについて、該デンドライトの長手方向に2mm、該デンドライトと直交する方向に1mmの矩形範囲における金属組織中の共晶組織の面積率を測定して、測定された共晶組織の面積率をβとしたとき、β/α≧0.80となるようにしたものである。
【0011】
請求項7に記載の圧延用複合ロールの外層は、Cのバラツキ度S1が12%以下であって、炭化物がほぼ均一に分布した組織を有している。
ここで、Cのバラツキ度S1は、外層断面を、EPMA(X線マイクロアナライザー)により径方向に1mm以下のピッチで夫々複数箇所を走査し、各ピッチにおけるCの測定数(cps)の平均値を算出することにより求められ、該平均値の最大値をγ1max、最小値をγ1minとし、Cの全測定数(cps)の平均値をδ1としたとき、バラツキ度S1は、S1=[(γ1max−γ1min)/δ1]×100%で表わされる。
【0012】
請求項8に記載の圧延用複合ロールの外層は、炭化物のバラツキ度S2が20%以下であって、炭化物がほぼ均一に分布した組織を有している。
ここで、炭化物のバラツキ度S2は、外層断面の炭化物面積率を、径方向に5mm以下のピッチでそれぞれ複数箇所について測定し、各ピッチにおける炭化物面積率の平均値を算出することにより求められ、該平均値の最大値をγ2max、最小値をγ2minとし、炭化物面積率の全測定値の平均値をδ2としたとき、バラツキ度S2は、S2=[(γ2max−γ2min)/δ2]×100%で表される。
【0013】
請求項9に記載の圧延用複合ロールの外層は、硬さのバラツキ度S3が10%以下であって、炭化物がほぼ均一に分布した組織を有している。
ここで、硬さのバラツキ度S3は、外層断面の硬さを、径方向に5mm以下のピッチでそれぞれ複数箇所について測定し、各ピッチにおける硬さの平均値を算出することにより求められ、該平均値の最大値をγ3max、最小値をγ3minとし、硬さの全測定値の平均値をδ3としたとき、バラツキ度S3は、S3=[(γ3max−γ3min)/δ3]×100%で表される。
【0014】
【作用及び効果】
請求項1に記載の外層は、圧延に供される面に存在するデンドライトのうち、90%以上のデンドライトが長さ4 mm 以下であるから、周面全体に亘って極端な硬度のバラツキはなく、圧延の際に、外層表面に摩耗差が生じ難く、圧延材にデンドライト模様が転写されることは殆んどない。外層表面に摩耗差が生じ難いため、ロール表面の研磨回数を少なくすることができ、研磨1回当たりの圧延量を増すことができる。
【0015】
請求項に記載の外層は、共晶組織の面積率を規定することによって、粗大なデンドライトのない外層を提供できるから、周面全体に亘って極端な硬度バラツキはなく、圧延の際に、外層表面に摩耗差が生じ難く、圧延材にデンドライト模様が転写されることは殆んどない。従って、請求項1の外層と同様、ロール表面の研磨回数を少なくすることができ、研磨1回当たりの圧延量は増すことができる。
【0016】
請求項7乃至請求項9に記載の外層は、年輪状偏析が実質的に存在することなく、炭化物がほぼ均一に分布した組織を有しているから、周面全体に亘ってほぼ均一な硬度を有しており、圧延の際、外周の周面に摩耗差が生じ難く、圧延製品の品質が確保される。また、ロール表面の研磨頻度及び研磨量を少なくすることができるので、表面研磨一回当たりの圧延量を多くすることができ、生産効率の向上を達成できる。
【0017】
【発明の実施の形態】
本発明の圧延ロール用外層は、例えば、横型遠心力鋳造用金型の中に所定成分の鋳鉄材溶湯を鋳込んで中空状に形成される。なお、横型遠心力鋳造は、遠心力鋳造金型の軸心がほぼ水平の状態で回転するものであるが、本発明は、横型遠心力鋳造装置に限定されず、遠心力鋳造金型の軸心が約35°以下の傾きである傾斜型遠心力鋳造装置を用いても、実質的に同じ条件で遠心力鋳造を行なうことができる。
【0018】
鋳鉄材溶湯を鋳込んだ後、金型の回転を停止し、金型を直立させて、ロール軸部となる鋳型をセットし、次に内層溶湯を鋳込むことにより、外層と内層(ロール軸部)が冶金的に一体化された圧延用複合ロールが形成される。
なお、必要に応じて、外層の鋳造時、金型の回転を停止させる前に、外層の凝固後直ちに中間層溶湯を鋳込んで外層と中間層を冶金的に一体化させておくこともできる。この中間層は、外層材と内層材の中間成分の材質を有し、外層と内層との溶着性改善のために設けられるものであり、本願明細書では、広義の内層という概念に含まれるものとする。
また、圧延用複合ロールについては、遠心力鋳造により形成された中空状外層を、ロール軸部となる内層に対して焼嵌め等を行なうことにより、外層と内層(ロール軸部)を機械的に一体化することもできる。
【0019】
形成された外層について、圧延に供される面におけるデンドライトの長さは、4mm以下である。デンドライト長さの測定は、例えば、圧延に供される面の長手方向の中央部における10mm×10mmの領域で行なうことができる。
デンドライトの長さを4mm以下と規定したのは、次の理由による。
初晶のデンドライトが形成されている部分は、デンドライトが形成されていない共晶よりも、硬度が低い。このため、圧延に供される面に長さが4mmを越える粗大なデンドライトが存在すると、圧延を行なったときに、ロール表面に摩耗差を生じ易く、デンドライトの模様が圧延材に転写され、圧延材の品質が劣化する。なお、圧延に供される面に存在するデンドライトは、ほぼすべてが4mm以下であることが望ましいが、圧延に供される面に存在するデンドライトのうち、90%以上のデンドライトが長さ4mm以下であれば、圧延性能上殆んど問題が生ずることはない。
なお、デンドライトの長さは2mm以下がより望ましい。
【0020】
また、金属組織は共晶組織と初晶デンドライト組織とから構成されることから、ある領域(第1の領域)における共晶組織の面積率と、その第1の領域内にあって任意の1つのデンドライトを含む領域(第2の領域)における共晶組織の面積率を比較し、その比が所定の値を越えるか否かにより、粗大なデンドライトの存在の有無を推測することができる。即ち、第1の領域における共晶組織の面積率からは、第1の領域中に散在するデンドライトが占める割合を知ることができ、一方、第2の領域に含まれる任意の1つのデンドライトが粗大であるほど、第2の領域における共晶組織の面積率は、第1の領域における共晶組織の面積率よりも小さくなる傾向にあるからである。
【0021】
具体的には、圧延に供される面内の任意の10mm×10mmの領域(第1の領域)における金属組織中の共晶組織の面積率を測定して、測定された共晶組織の面積率をαとし、前記領域に存在する任意の1つのデンドライトについて、該デンドライトの長手方向に2mm、該デンドライトと直交する方向に1mmの矩形範囲(第2の領域)における金属組織中の共晶組織の面積率を測定して、測定された共晶組織の面積率をβとしたとき、β/α≧0.80とする。
β/α<0.80の場合には、βの測定された領域に粗大なデンドライトが存在していることが推定され、上記と同様に、圧延材に転写模様が出現し、圧延材の品質が劣化するためである。なお、β/αは、0.90以上がより望ましい。
上記炭化物面積率α及びβの測定は、外層の圧延に供される面を粒度120、240、500のサンドペーパーで順に研磨を行なった後、6μmのダイヤモンド粒子でバフ研磨し、メチルアルコールで5%に希釈した硝酸腐食液(ナイタール)によりエッチングを行ない、顕微鏡観察により行なう。この際、ロール表面組織をレプリカフィルムによって転写した後、顕微鏡写真を撮影してもよい。なお、顕微鏡写真の倍率は10〜100倍が望ましい。
【0022】
上述のように規定される粗大なデンドライトのないロール外層を作製するには、例えば、横型の遠心力鋳造装置を使用し、外層の鋳造外径寸法に応じて、次の遠心力鋳造条件で鋳込むことができる。なお、横型遠心力鋳造は、遠心力鋳造金型の軸心がほぼ水平の状態で回転するものであるが、本発明は、横型遠心力鋳造装置に限定されず、遠心力鋳造金型の軸心が約35°以下の傾きである傾斜型遠心力鋳造装置を用いても、実質的に同じ条件で遠心力鋳造を行なうことができる。
【0023】
外層の鋳造外径寸法が250mm以上350mm未満のときは、金型の回転数を1500rpm以下とする条件で、外層の鋳造外径寸法が350mm以上500mm未満のときは金型の回転数を1250rpm以下とする条件で、外層の鋳造外径寸法が500mm以上700mm未満のときは、金型の回転数を1050rpm以下とする条件で、外層の鋳造外径寸法が700mm以上900mm未満のときは、金型の回転数を900rpm以下とする条件で、外層の鋳造外径寸法が900mm以上のときは、金型の回転数を800rpm以下とする条件で鋳込む。
外層の鋳造外形寸法に応じて金型の回転数の上限を上述のように設定し、又は重力倍数の上限を上述のように設定することにより、溶湯が金型に対して静止した状態で一体に回転するのを防ぐことができるから、粗大なデンドライトの成長を抑制できる。
【0024】
また、外層の遠心鋳造に際しては、粗大なデンドライトの出現を抑制するための鋳造条件として、外層の外周部分における重力倍数を450G以下としてもよい。
【0025】
溶湯の凝固が進行すると、溶湯部の回転半径が次第に小さくなり、重力作用の影響も変動するが、鋳込み終了時における金型の回転数を、鋳込み開始時における金型の回転数よりも大きくすることによって、その変動をより小さくすることもできる。
【0026】
なお、外層の遠心力鋳造時に、デンドライトが成長して粗大化しないように、金型の回転数又は重力倍数Gナンバーの上限を規定したが、金型の回転数又は金型のGナンバーをあまり低くしすぎると年輪状偏析が出現し易くなる。そこで、このような偏析の出現を抑えるために、金型の回転数又は金型の重力倍数Gナンバーの下限は、以下のように規定することが望ましい。
外層の鋳造外径寸法が250mm以上350mm未満のときは、金型の回転数を1030rpm以上とする条件で、外層の鋳造外径寸法が350mm以上500mm未満のときは金型の回転数を870rpm以上とする条件で、外層の鋳造外径寸法が500mm以上700mm未満のときは、金型の回転数を710rpm以上とする条件で、外層の鋳造外径寸法が700mm以上900mm未満のときは、金型の回転数を610rpm以上とする条件で、外層の鋳造外径寸法が900mm以上のときは、金型の回転数を550rpm以上とする条件で鋳込む。
なお、鋳込み終了時における金型の回転数は、鋳込み開始時における金型の回転数よりも大きくすることが望ましい。具体的には、鋳込み厚さが約50mmのとき、10〜20%大きくすることが望ましい。
また、外層の遠心力鋳造に際し、年輪状偏析の発生を抑制するための鋳造条件として、外周部分における重力倍数を150G以上としてもよい。
【0027】
外層の遠心力鋳造時の金型の回転数及び重力倍数Gナンバーの下限を上記のとおり設定することにより、年輪状偏析が殆んど存在せず、炭化物がほぼ均一に分布した組織を有する圧延ロール用外層が形成される。
この外層は、圧延に供される部分をEPMA(X線マイクロアナライザー)で測定したときのCのバラツキ度S1が12%以下である。Cのバラツキ度S1が、12%以下であれば、炭化物の偏析は少なく、圧延に使用した際、外層表面に摩耗ムラを生じ難い。バラツキ度S1が12%を越えると、高さ方向(ロール外層の径方向)での炭化物の偏析が多くなり、圧延に使用した際、外層表面に摩耗ムラが生じ易くなるためである。なお、Cのバラツキ度S1は10%以下がより望ましい。
ここで、EPMAによるCのバラツキ度S1は、外層断面を、EPMAにより径方向に1mm以下のピッチで夫々複数箇所操作し、各ピッチにおけるCの測定数(cps)の平均値を算出して、該平均値の最大値をγ1max、最小値をγ1minとし、Cの全測定数(cps)の平均値をδ1としたとき、バラツキ度S1は、S1=[(γ1max−γ1min)/δ1]×100%で表わされる。
【0028】
或いはまた、外層は、圧延に供される部分での炭化物のバラツキ度S2が20%以下である。炭化物面積率のバラツキ度S2は、20%以下であれば、炭化物の偏析が少なく、圧延に使用した際、外層表面に摩耗ムラを生じ難い。一方、バラツキ度S2が20%を越えると、高さ方向(ロール外層の径方向)での炭化物の偏析が多く、圧延に使用した際、ロール外層表面に摩耗ムラが生じ易くなるためである。なお、炭化物のバラツキ度S2は15%以下がより望ましい。
ここで、炭化物のバラツキ度S2は、外層断面の炭化物面積率を、径方向に5mm以下のピッチで夫々複数箇所について測定し、各ピッチにおける炭化物面積率の平均値を算出して、該平均値の最大値をγ2max、最小値をγ2minとし、炭化物面積率の全測定値の平均値をδ2としたとき、バラツキ度S2は、S2=[(γ2max−γ2min)/δ2]×100%で表される。
【0029】
さらにまた、外層は、圧延に供される部分での硬さのバラツキ度S3が10%以下である。硬さのバラツキ度S3は、10%以下であれば、炭化物の偏析が少なく、圧延に使用した際、外層表面に摩耗ムラを生じ難い。バラツキ度S3が10%を越えると、高さ方向(ロール外層の径方向)での炭化物の偏析が多く、圧延に使用した際、ロール外層表面に摩耗ムラが生じ易くなるためである。なお、硬さのバラツキ度S3は5%以下がより望ましい。
ここで、硬さのバラツキ度S3は、外層断面の硬さを、径方向に5mm以下のピッチでそれぞれ複数箇所について測定し、各ピッチにおける硬さの平均値を算出して、該平均値の最大値をγ3max、最小値をγ3minとし、硬さの全測定値の平均値をδ3としたとき、バラツキ度S3は、S3=[(γ3max−γ3min)/δ3]×100%で表される。
【0030】
なお、Cのバラツキ度S1、炭化物のバラツキ度S2、硬さのバラツキ度S3の測定は、外層の端面で行なうことができる。即ち、「外層断面」とは、外層の端面を含む意味と解されるべきである。
また、硬さの測定器具については、ロックウエル、マイクロビッカース、ショアなどの種々の硬度計の他にも、先端に超硬球が埋め込まれたハンマを試料表面に衝突させて、その反発量によって硬度を判定するエコーチップ硬度計を使用することもできる。
【0031】
形成された外層は、重量%にて、少なくとも、Cを1.0〜4.0%、Mo及び/又はWを合計量で1.0〜16.0%含有している。
Cを1.0〜4.0%とするのは、Cの含有量が1.0%に満たないと、Mo、W等の炭化物の晶出量が不足し、耐摩耗性が不十分となるためであり、Cの含有量が4.0%を越えると、内層を形成するための鋳鉄又は鋳鋼材との凝固点差が過大となり、溶着不良が発生しやすくなるためである。
また、Mo及び/又はWの合計量が1.0%に満たないと、炭化物の晶出量が不足し、16.0%を越えると、靱性の劣化を招く。
【0032】
前記材料として、より具体的には、重量%にて、Cを1.0〜4.0%、Siを0.2〜3.0%、Mnを0.2〜2.0%、Crを3.0〜12.0%、Mo又はWの少なくとも一種を合計量で1.0〜16.0%、Vを1.0〜8.0%及び/又はNbを3.0%以下、Coを5.0%以下、Niを4.0%以下、残部実質的にFeからなるハイス系鋳鉄材を示すことができる。
Siは湯流れ性の確保、あるいは場合によっては黒鉛を晶出させるため、0.2〜3.0%含有させる。
Mnは硬化能を増し、Sによる劣化を防ぐために、0.2〜2.0%含有させる。
Cr、Mo、W及び、V又はNbは、Cと結合して炭化物を晶出し、耐摩耗性の向上を図るために含有させる。特に、Nbは極めて硬いM11型の炭化物を形成し、耐摩耗性を改善させると共に、基地中に入って基地の強化に寄与する。
Coは基地中に固溶されて基地の強化に寄与するため、5.0%以下含有させる。
Niは基地組織を改良するために4.0%以下含有させる。
上記ハイス系鋳鉄材には、さらに、重量%にて、Al:0.5%以下、Ti:1.0%以下、Zr:1.0%以下、B:0.5%以下、Ta:0.5%以下、N:0.05%以下からなる群より選択される少なくとも一種を必要に応じて含むことができる。
Al、Ti、Zr及びBは、溶湯中で酸化物あるいは窒化物を生成して、溶湯中の酸素含有量、窒素含有量を低下させ、製品の健全性を向上させる。生成した酸化物、あるいは窒化物が結晶核として作用するために微細化に効果があり、耐摩耗性も改善される。これは、ハイス系鋳鉄材の耐摩耗性が、非常に硬いM11型炭化物に負うところが大きいためである。
Taは、V又はNbと同様、主としてCと結合し、M11型炭化物を形成し、耐摩耗性の向上に寄与する。
Nは、介在物となって溶湯の清浄度を低下させ、含有量が多くなると鋳造割れ等を生ずる虞れがある。
上記理由により、これら元素は、上記範囲内で、夫々必要に応じて含有させることが望ましい。
【0033】
内層材として、高級鋳鉄、ダクタイル鋳鉄、黒鉛鋼、鋳鋼等の強靱性を有する材料などが好適に使用される。
内層材の高級鋳鉄の好適な組成例として、C:2.5〜4.0%(重量%、以下同じ)、Si:0.8〜2.5%、Mn:0.2〜1.5%、P:0.2%以下、S:0.2%以下、Ni:3.0%以下、Cr:2.0%以下、Mo:2.0%以下、W、V、Nbを総計で4%以下、残部実質的にFeからなるものを示すことができる。
内層材のダクタイル鋳鉄の好適な組成例として、C:2.5〜4.0%(重量%、以下同じ)、Si:1.3〜3.5%、Mn:0.2〜1.5%、P:0.2%以下、S:0.2%以下、Ni:3.0%以下、Cr:2.0%以下、Mo:2.0%以下、W、V、Nbを総計で4%以下、Mg:0.02〜0.1%、残部実質的にFeからなるものを示すことができる。
内層材の黒鉛鋼の好適な組成例として、C:1.0〜2.3%(重量%、以下同じ)、Si:0.5〜3.0%、Mn:0.2〜1.5%、P:0.2%以下、S:0.2%以下、Ni:3.0%以下、Cr:2.0%以下、Mo:2.0%以下、W、V、Nbを総計で4%以下、残部実質的にFeからなるものを示すことができる。
【0034】
内層と外層との溶着性を改善するために、中間層を設ける場合、中間層はアダマイト材あるいは黒鉛鋼等が好適に用いられる。
中間層のアダマイト材の好適な組成として、重量%にてC:1.0〜2.5%、Si:0.2〜3.0%、Mn:0.2〜1.5%、P:0.2%以下、S:0.2%以下、Ni:4.0%以下、Cr:4.0%以下、Mo:4.0%以下、W、V、Nbを総計で12%以下、残部実質的にFeからなるものを示すことができる。中間層の黒鉛鋼の好適な組成として、重量%にて、C:1.0〜2.3%、Si:0.5〜3.0%、Mn:0.2〜1.5%、P:0.2%以下、S:0.2%以下、Ni:4.0%以下、Cr:4.0%以下、Mo:4.0%以下、W、V、Nbを総計で12%以下、残部実質的にFeからなるものを示すことができる。
【0035】
鋳造された外層は、通常、表面に鋳造欠陥等を含んでいるため、外周面から5mm〜40mmの部分が機械加工によって取り除いて使用され、その面より数mm〜数十mmの厚さ部分が圧延に供される。
この機械加工は、外層の鋳造完了後に実施してもよいし、内層を一体化した後に実施してもよい。
【0036】
【実施例】
横型遠心力鋳造により、各種鋳鉄材の溶湯を、80mmの厚さになるまで鋳込んで供試用外層ロール(発明例1〜発明例5,比較例1〜比較例4)を作製した。溶湯の鋳込み温度は1385℃である。凝固完了後、常温まで冷却して、700℃で10時間軟化熱処理を実施した。
金型の回転数、重力倍数及び外層の組成を表1に記載している。なお、遠心力鋳造用金型は、内面に耐火材(塗型)が塗布されており、内径587mm、長さ1150mmの鋼製のものを使用した。
この供試用ロール外層について、粗大デンドライト及び年輪状偏析の有無と、金型の回転数及び重力倍数との関係を調べた。
【0037】
【表1】
Figure 0003824827
【0038】
粗大デンドライトの調査
発明例1〜発明例5及び比較例1及び比較例2について、デンドライトの長さと、共晶組織の面積率を測定した。測定領域は、ロール外層の軸方向中央部を、鋳造外径から径方向に30mm削り取った面上の10mm×10mmの領域とした。
前記測定領域には、粒度240と500のサンドペーパーで順に研磨を行ない、6μmのダイヤモンド粒子でバフ研磨し、メチルアルコールによって5%に希釈した硝酸腐食液(ナイタール腐食液)でミクロ観察できるように腐食を行なった。
【0039】
〔デンドライトの長さ測定〕
顕微鏡にて、上記領域のミクロ組織写真(倍率50倍、写真の大きさ200mm×280mm)を撮影した。なお、撮影は、この方法に限定されず、例えば、ロールの組織を転写したレプリカフィルムを用いてミクロ組織写真を撮ってもよい。
得られたミクロ組織写真(図1参照)について、同一結晶粒内に成長したデンドライトの長さを測定し、測定されたデンドライトの90%以上の長さが4mm以下、即ち4mmを越えるデンドライトが10%未満であれば「粗大デンドライトなし」、4mmを越えるデンドライトが10%以上存在していれば「粗大デンドライトあり」と判定した。その結果を表2に示す。
【0040】
【表2】
Figure 0003824827
【0041】
表2を参照すると、発明例1〜発明例5については、何れも長さ4mmを越える粗大なデンドライトの出現率が10%未満であることがわかる。これは、外層の遠心力鋳造時における金型の回転数及び重力倍数Gナンバーを、前記の範囲内に設定したためである。なお、発明例1乃至4については、長さ4mmを越えるデンドライトが全く観察されず、特に、発明例1と発明例2については、長さ2mmを越えるデンドライトも観察されなかった。
一方、比較例1及び比較例2については、約4.5mm以上の粗大なデンドライトの存在が観察され、デンドライトの10%以上が長さ4mmを越えるものであった。これは、金型の回転数及び重力倍数Gナンバーを発明例に比べて高く設定したためであり、その結果、溶湯が金型に対して静止した状態で凝固し、デンドライトが成長して粗大になったためと考えられる。
【0042】
〔共晶組織の面積率の測定〕
前述の測定領域について、同じ要領で腐食を行なった後、共晶組織の面積率を測定した。
図2に示すように、測定領域(10mm×10mm)の共晶組織の面積率をαとし、前記領域に存する任意のデンドライトに対し、デンドライトの長手方向に2mm、組織と直交する方向に1mmの範囲における共晶組織の面積率をβとして、β/αを算出した。その結果を表2に示す。
【0043】
表2を参照すると、発明例1〜発明例5は、β/αの値がすべて0.80を越えており、共晶組織の分布はほぼ均一なものと考えられる。これはまた、βの測定領域におけるデンドライトと、αの測定領域におけるデンドライトとの差が小さいことを表しており、粗大なデンドライトが認められないことを示している。
一方、比較例1及び比較例2については、β/αの値が0.8よりも小さく、共晶組織の分布はあまり均一とはいえず、粗大なデンドライトの存在が伺える。これは、上記と同様、金型の回転数及び重力倍数Gナンバーを発明例に比べて高く設定したためであり、その結果、溶湯が金型に対して静止した状態で凝固し、デンドライトが成長して粗大になったと考えられる。
【0044】
年輪状偏析の調査
次に、発明例1〜発明例5及び比較例1〜比較例4の供試用ロール外層について、年輪状偏析を調べた。具体的には、EPMA(X線マイクロアナライザー)による炭素(C)の分布状態、面積率及び硬さによる炭化物の分布状態を測定した。図3に示すように、供試用ロール外層(10)の長手方向に20mm(試験片については「幅方向」という)、周方向に10mm(試験片については「奥行方向」)という)、径方向に80mm(試験片については「高さ方向」という)の試験片(20)を切り出した。
試験片は、1150℃で30分間オーステナイト化温度に加熱した後焼入れする熱処理を行ない、550℃で10時間の焼戻し熱処理を2回実施した。熱処理終了後、各試験片を粒径6μmのダイヤモンド粒子でバフ研磨した。
なお、炭素又は炭化物の分布状態は、削り代分を考慮して、図3に斜線で示すように、外周面から高さ方向に10〜50mmの部分(以下「被測定部分」という)について調べた。
【0045】
〔EPMAによる測定〕
EPMAを用いて、試験片の炭素の分布状態を測定した。
各試験片の被測定部分の幅14.98mmの範囲に対し、EPMA装置を用いて、加速電圧15kV、ビーム径50μmの電子線を、高さ方向に70μm、幅方向に70μmのピッチで走査した。
炭素の分布状態は、Kα線の波長分散分析による測定数(cps:Count Per Second)で評価した。
【0046】
測定終了後、各ピッチ毎における測定数(cps)の平均値を算出した。さらに算出された平均値について、その最大値をγ1max、最小値をγ1minとし、全測定数の平均値をδ1としたときに、S1=[(γ1max−γ1min)/δ1]×100を、EPMAによるCのバラツキ度(%)と規定した。
バラツキ度S1が大きいほど、炭素の分布が不均一で炭化物の偏析が多く存在することを意味し、年輪状偏析が認められる。一方、バラツキ度S1が小さければ、炭素の分布が均一で炭化物の偏析が少ないことを意味し、年輪状偏析は殆んど認められない。
結果を表3に示す。
【0047】
【表3】
Figure 0003824827
【0048】
表3を参照すると、発明例1〜発明例5は、比較例3及び比較例4に比べて、Cのバラツキ度S1が小さく、炭素がほぼ均一に分布していることがわかる。比較例3及び比較例4のバラツキ度S1が大きいのは、炭化物が年輪状に偏析しているためである。
また、発明例どうしを比較すると、同一組成材では金型の回転数と重力倍数が大きいほど、Cのバラツキ度S1が小さくなっており、炭素の分布がより均一となることを示している。これは、金型の回転数と重力倍数が大きくなるにつれて、ロール外層鋳込み時の重力作用の影響がより小さくなったためと考えられる。なお、比較例1及び比較例2は、金型の回転数と重力倍数が大きいため、Cのバラツキ度S1は小さいが、表2に示したように、粗大なデンドライトが存在しており、ロール用外層として不適当である。
【0049】
〔炭化物面積率による評価〕
炭化物の分布状態を調べるために、外層断面における炭化物が占める面積の割合を測定した。
各試験片には、5%濃度のナイタール液を用いてエッチング処理を施し、光学顕微鏡を用いて被測定部分の100倍の組織写真を撮影した。撮影は、試験片の高さ方向に5mmピッチで行ない、各ピッチ毎に、幅方向にずらして7枚の組織写真を撮影した。
各ピッチ毎に、画像解析手法によって組織写真の50mm×100mm(試験片における実寸0.5mm×1mm)の範囲の全炭化物の面積率(以下「炭化物面積率」)を測定し、異常値を削除するために最大と最小を除いた5つのデータについて、その平均値を算出した。さらに、算出された各ピッチ毎の炭化物面積率の平均値のうち、最大値をγ2max、最小値をγ2min、すべての炭化物面積率の平均δ2としたときに、S2=[(γ2max−γ2min)/δ2]×100を炭化物面積率のバラツキ度(%)と規定した。バラツキ度S2が大きいほど、炭化物面積率の変動が大きく、炭化物量に偏りが生じていることを意味する。
【0050】
結果を表3に示す。
表3を参照すると、発明例1〜発明例5は、比較例3及び比較例4に比べて炭化物面積率のバラツキ度S2が小さく、炭化物が均一に分布していることがわかる。比較例3及び比較例4のバラツキ度S2が大きな値となっているのは、炭化物が年輪状に偏析しているためである。
また、発明例どうしを比較すると、同一組成材では金型の回転数と重力倍数が大きいほど、バラツキ度S2が小さくなっており、炭化物の分布がより均一となることを示している。これは、金型の回転数と重力倍数が大きくなると、ロール外層鋳込み時の重力作用の影響が小さくなるためと考えられる。
なお、比較例1及び比較例2は、金型の回転数と重力倍数が大きいため、炭化物面積率のバラツキ度S2は小さいが、表2に示したように、粗大なデンドライトが存在しており、ロール用外層として不適当である。
【0051】
〔硬さによる評価〕
ハイス系鋳鉄材のミクロ組織は、M11型炭化物、M73型炭化物、M61型炭化物、M2C型炭化物などの各種晶出炭化物と基地からなる。これら晶出炭化物の硬さは、基地の硬さに比べて硬く、また、炭化物量の多い部分は炭化物の少ない部分に比べて硬い。そこで、試験片の硬さを測定することによって、炭化物の分布状態を評価した。なお、この実施例での測定は、ロックウェル硬さ試験法(Cスケール)を用いた。
試験片の被測定部分を高さ方向に5mmピッチで測定し、各ピッチについて、幅方向にずらして7回ずつロックウェル硬さを測定した。異常値を削除するために測定結果の最大と最小を除く5回の測定値から平均値を算出した。さらに算出された平均値のうち、その最大値をγ3max、最小値をγ3minとし、すべての硬さの平均値δ3としたとき、S3=[(γ3max−γ3min)/δ3]×100を硬さのバラツキ度(%)と規定した。バラツキ度S3が大きいほど、硬度の変動が大きく、炭化物量の偏りが大きい。
【0052】
結果を表3に示す。
表3を参照すると、発明例1〜発明例5は、比較例3及び比較例4に比べて、硬さのバラツキ度S3が小さく、炭化物の分布が均一であることがわかる。比較例3及び比較例4のバラツキ度S3が大きな値となっているのは、炭化物が年輪状に偏析しているためである。
また、発明例どうしを比較すると、同一組成材では、金型の回転数と重力倍数が大きいほど、バラツキ度S3が小さくなっており、炭化物の分布がより均一となることを示している。これは、金型の回転数と重力倍数が大きくなると、ロール外層鋳込み時の重力作用の影響が小さくなるためと考えられる。
なお、比較例1及び比較例2は、金型の回転数と重力倍数が大きいため、硬さのバラツキ度S2は小さいが、表2に示したように、粗大なデンドライトが存在しており、ロール用外層として不適当である。
【0053】
発明例1〜発明例5と同じ条件で作製したロール外層を有する圧延用複合ロールを、実際の圧延作業に用いたところ、ロール外層表面に摩耗ムラを生じ難く、従来のロールよりも外層の研磨頻度を少なくすることができた。また、得られた圧延材は、粗大なデンドライトの転写もなく良好な製品であった。
【図面の簡単な説明】
【図1】デンドライトの長さの測定に用いた金属組織の図面代用写真である。
【図2】共晶組織の面積率の測定に用いた金属組織の図面代用写真である。
【図3】試験片の説明図である。

Claims (11)

  1. 圧延用複合ロールの外層であって、遠心力鋳造により作製され、重量%にて、Cを1.0〜4.0%、Siを0.2〜3.0%、Mnを0.2〜2.0%、Crを3.0〜12.0%、Mo又はWの少なくとも一種を合計量で1.0〜16.0%、Vを1.0〜8.0%及び/又はNbを3.0%以下、Coを5.0%以下、Niを4.0%以下、残部実質的にFeからなるハイス系鋳鉄材からなるものにおいて、
    圧延に供される面における金属組織中のデンドライトは、長さ4mm以下のものが90%以上占めていることを特徴とする圧延ロール用外層。
  2. 圧延用複合ロールの外層であって、遠心力鋳造により作製され、重量%にて、Cを1.0〜4.0%、Siを0.2〜3.0%、Mnを0.2〜2.0%、Crを3.0〜12.0%、Mo又はWの少なくとも一種を合計量で1.0〜16.0%、Vを1.0〜8.0%及び/又はNbを3.0%以下、Coを5.0%以下、Niを4.0%以下、残部実質的にFeからなるハイス系鋳鉄材からなるものにおいて、
    圧延に供される面内の任意の10mm×10mmの領域における金属組織中の共晶組織の面積率を測定して、測定された共晶組織の面積率をαとし、
    前記領域に存在する任意の1つのデンドライトについて、該デンドライトの長手方向に2mm、該デンドライトと直交する方向に1mmの矩形範囲における金属組織中の共晶組織の面積率を測定して、測定された共晶組織の面積率をβとしたとき、
    β/α≧0.80であることを特徴とする圧延ロール用外層。
  3. ハイス系鋳鉄材は、重量%にて、Al:0 . 5%以下、Ti:1 . 0%以下、Zr:1 . 0%以下及びB:0 . 5%以下からなる群より選択される少なくとも一種を含有する請求項1又は請求項2に記載の圧延用ロール外層。
  4. ハイス系鋳鉄材は、重量%にて、Ta:0 . 5%以下を含有する請求項1、請求項2又は請求項3に記載の圧延用ロール外層。
  5. ハイス系鋳鉄材は、重量%にて、N:0 . 05%以下を含有する請求項1、請求項2、請求項3又は請求項4に記載の圧延用ロール外層。
  6. 遠心力鋳造は、外周部分における重力倍数Gナンバーを150G以上とする条件で行われる請求項1乃至請求項5の何れかに記載の圧延ロール用外層。
  7. Cのバラツキ度S1が12%以下であって、炭化物がほぼ均一に分布した組織を有する請求項1乃至請求項6の何れかに記載の圧延ロール用外層。
    但し、Cのバラツキ度S1は、外層断面を、EPMA(X線マイクロアナライザー)により径方向に1mm以下のピッチで夫々複数箇所を走査し、各ピッチにおけるCの測定数(cps)の平均値を算出することにより求められ、該平均値の最大値をγ1max、最小値をγ1minとし、Cの全測定数(cps)の平均値をδ1としたとき、バラツキ度S1は、S1=[(γ1max−γ1min)/δ1]×100%で表わされる。
  8. 炭化物のバラツキ度S2が20%以下であって、炭化物がほぼ均一に分布した組織を有する請求項1乃至請求項6の何れかに記載の圧延ロール用外層。
    但し、炭化物のバラツキ度S2は、外層断面の炭化物面積率を、径方向に5mm以下のピッチで夫々複数箇所について測定し、各ピッチにおける炭化物面積率の平均値を算出することにより求められ、該平均値の最大値をγ2max、最小値をγ2minとし、炭化物面積率の全測定値の平均値をδ2としたとき、バラツキ度S2は、S2=[(γ2max−γ2min)/δ2]×100%で表わされる。
  9. 硬さのバラツキ度S3が10%以下であって、炭化物がほぼ均一に分布した組織を有する請求項1乃至請求項6の何れかに記載の圧延ロール用外層。
    但し、硬さのバラツキ度S3は、外層断面の硬さを、径方向に5mm以下のピッチでそれぞれ複数箇所について測定し、各ピッチにおける硬さの平均値を算出することにより求められ、該平均値の最大値をγ3max、最小値をγ3minとし、硬さの全測定値の平均値をδ3としたとき、バラツキ度S3は、S3=[(γ3max−γ3min)/δ3]×100%で表される。
  10. バラツキ度は、外層の端面での測定により求められた値である請求項7乃至請求項9の何れかに記載の圧延ロール用外層。
  11. 請求項1乃至請求項10の何れかに記載の外層を、内層と冶金的又は機械的に一体化することにより形成される圧延ロール。
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