JP3824660B2 - 熱可塑性ポリエステル樹脂発泡成形品の製造方法 - Google Patents

熱可塑性ポリエステル樹脂発泡成形品の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、改善された熱可塑性ポリエステル樹脂発泡成形品の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、熱可塑性ポリエステル樹脂発泡成形品を製造するには、種々の公知の方法、(例えば、特開平4−224923号公報に記載のサーキュラーダイスを使用して微細な気泡を持った縞のない熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡シートを製造する方法など)にて発泡体シートを作製した後、発泡体シートが軟化するまで予備加熱し、真空成形機の加熱金型にて成形すると同時に、熱による結晶化を起こさせて耐熱性を付与し、その後、冷却用金型にて外観形状を均一にする方法(プラスチックス、Vol・43、No.6、P121〜126、1992)が知られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、この方法によると、予め作製した発泡体シートを使用し、この発泡体シートを加熱、軟化させた後、真空成形を行っているため、カップ等の成形品を作製する場合、カップの側面部分のシートが成形時に延伸され、気泡が楕円形状に歪み、得られる成形品の機械的強度が部分によって不均一になってしまうという問題点があった。
また、既製発泡体シートは伸びが小さいため、深絞り品を成形しようとすると、発泡体シートが成形時の延伸に耐えきれなくなり、発泡体シートが破れてしまうと言った恐れがあった。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明は、かかる問題点に鑑み、鋭意検討を重ねた結果、熱可塑性ポリエステル樹脂シートに不活性ガスを発泡剤として含有させた未発泡樹脂シートを、加熱軟化させ発泡させると同時に真空成形を行う(つまり、一工程にて)ことにより、発泡体シートの成形時の伸びに加え、発泡時の気泡成長に伴う伸びが加味されるため、深絞り品の成形が可能であり、しかも、真空成形時に発泡体シートに無理な変形力が加わらないため、気泡変形のほとんどない機械的強度の均一な発泡体製品が得られることを見出し、本発明に至ったものである。
即ち、本発明の熱可塑性ポリエステル樹脂発泡深絞り成形品の製造方法は、活性ガスを発泡剤として含有させた熱可塑性ポリエステル樹脂シートを真空成形機中に保持し、可動式の加熱ヒーターを前記樹脂シート上面に接することなく移動させて樹脂シートを上面より加熱して発泡させつつ、前記真空成形機の深絞り金型を前記樹脂シート下面に当接させ、真空引きして深絞り成形した後、真空引きを継続したまま、前記可動式の加熱ヒーターを深絞り成形品上面より離して冷却し、その後真空引きを停止して、真空成形用金型を深絞り成形品より離すことを特徴とするものである。
【0005】
本発明において、不活性ガスを発泡剤として含有する熱可塑性ポリエステル樹脂シートを調製する方法としては、例えば、USP−4473665号に記載されている押出機により均一な厚みに制御されてシート状に成形された熱可塑性ポリエステル樹脂シートをロール状に巻きし、これを高圧容器内に収納して不活性ガスを高圧力下で含浸させる方法がある。
また、特開平4−268345号に開示されているような、押出機中にて、溶融状態にある熱可塑性ポリエステル樹脂に発泡剤として不活性ガスを注入し、樹脂の発泡を完全に抑制しながら冷却することにより不活性ガスを含有する熱可塑性ポリエステル樹脂シートを調製する方法もある。
【0006】
また、本発明にて用いる熱可塑性ポリエステル樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートあるいはこれらの樹脂をベースとした、例えば、ポリカーボネート等との各種のポリマーアロイなどが挙げられるが、中でもポリエチレンテレフタレートが好ましい。
なお、本発明にて用いる熱可塑性ポリエステル樹脂には、樹脂本来の特性を損なわない範囲で、結晶化核剤、結晶化促進剤、気泡化核剤、抗酸化剤、帯電防止剤、紫外線防止剤、顔料、染料、滑剤などの各種添加剤を配合してもよい。
また、本発明にて熱可塑性ポリエステル樹脂シートに発泡剤として含有させる不活性ガスとしては、ヘリウム、窒素、二酸化炭素、アルゴン等が挙げられるが、中でも含有量を多くできる二酸化炭素が好ましい。
【0007】
本発明において、不活性ガスを含有させた熱可塑性ポリエステル樹脂シートを加熱し発泡させるための前記加熱用ヒーターによる加熱温度、および加熱時間などは、目的の成形品の深絞りの度合いに応じて適宣、選択する必要がある。
そして真空成形用金型の温度は70℃以下であれば問題ないが、成形回数が増加してくると温度が上昇してくるため、常にこの温度以下になるように冷媒等を用いて冷却しておくことが必要である。
また、成形品の冷却に関しては、加熱ヒーターを樹脂シート上面より離すだけでも十分であるが、成形後に冷却専用金型を用意し、この金型にてさらに冷却を行っても良い。
なお、成形の際に、気泡が潰れない程度にシートの上部より、金型あるいは加圧気体による圧縮を加える方法を用いても構わない。
【0008】
【作用】
本発明方法は、発泡剤としての不活性ガスを含有させた熱可塑性ポリエステル樹脂シートを発泡させながら同時に真空成形するといった方法であるため、発泡体シートの成形時の伸びに加えて、発泡時の気泡成長に伴う伸びが加味されるため、発泡体シート内部の気泡が変形したり、潰れたりすることがない。
また、真空成形時に発泡体シートに無理な変形力が加わらないため、気泡変形のほとんどない機械的強度が均一な発泡体製品が得られる。
しかも発泡時には、不活性ガスを含有させた熱可塑性ポリエステル樹脂シートが大きく伸長するため、深絞り成形に適している。
【0009】
【実施例】
以下、本発明を実施例を挙げて説明する。
(実施例1)
除湿乾燥機にて140℃で5時間乾燥させたポリエチレンテレフタレート樹脂(ユニチカ(株)社製、SA−1206)と、結晶核剤として、0. 5重量%のタルクとを押出機に供給して溶融混練した後、0. 5mm厚のシート状に押出成形してポリエチレンテレフタレート樹脂シートを巻き取った。
次に、作製したポリエチレンテレフタレート樹脂シート巻体を高圧容器内に収納し、該容器内に発泡剤として60kg/cm2 の炭酸ガスを充填し、8時間含浸させた。
8時間経過後、高圧容器から前記シート巻体を取り出し、これを図1に示した如き真空成形機にセットした。
なお、図中、1は炭酸ガスを含有させたポリエチレンテレフタレート樹脂シート、2は真空成形機の水平方向に可動の加熱ヒーター、3は成形用金型の冷却水注入口、4は成形用金型の冷却水排出口、5は成形用金型、6は上下方向に可動の成形用金型保持台、7は真空成形機の成形用金型を真空引きする真空ポンプ、8はカップ状成形品である。
【0010】
しかる後、加熱ヒーターを前記ポリエチレンテレフタレート樹脂シートの上面に接することなく移動させ、樹脂シートの表面温度が220℃になるような加熱条件にて加熱して発泡させると同時に、これを50℃に設定した真空成形用金型5に当接させ、この状態で真空ポンプ7を介して真空引きして金型形状に成形しながら、そのまま加熱ヒーターを樹脂シートより離して冷却を行った後、真空引きを停止し、樹脂シートから金型を離すことにより、開孔部の直径と深さの比が1:1のカップ状成形品8を成形した。
成形後、得られた成形品8の側面部、および底面部を走査電子顕微鏡(SEM)により観察したところ、いずれの部分においても気泡形状に変化は認められなかった。
また、側面部および底面部から、ダンベル形状の試料を打ち抜き引張り強度を測定したところ、両者の強度にはほとんど差は認められなかった。
【0011】
(実施例2)
除湿乾燥機にて140℃で5時間乾燥させたポリブチレンテレフタレート樹脂(東レ(株)社製、1401−X04)を押出機に供給して溶融混練した後、0. 5mm厚のシート状に押出成形してポリブチレンテレフタレート樹脂シートを巻き取った。
次に、作製したポリブチレンテレフタレート樹脂シート巻体を高圧容器内に収納し、該容器内に発泡剤として60kg/cm2 の炭酸ガスを充填し、10時間含浸させた。
10時間経過後、高圧容器から炭酸ガスを含有させたポリブチレンテレフタレート樹脂シート巻体を取り出し、これを実施例1で用いた真空成形機にセットし、加熱ヒーターを前記ポリブチレンテレフタレート樹脂シートの上面に接することなく移動させ、樹脂シートの表面温度が200℃になるような加熱条件にて加熱して発泡させると同時に、これを50℃に設定した真空成形用金型5に当接させ、この状態で真空ポンプ7を介して真空引きして金型形状に成形しながら、そのまま加熱ヒーターを樹脂シートより離して冷却を行った後、真空引きを停止し、樹脂シートから金型を離すことにより、開孔部の直径と深さの比が1:1のカップ状成形品8を成形した。
成形後、得られた成形品8の側面部および底面部をSEMにより観察したところ、いずれの部分においても気泡形状に変化は認められなかった。
また、側面部および底面部から、ダンベル形状の試料を打ち抜き引張り強度を測定したところ、両者の強度にはほとんど差は認められなかった。
【0012】
(比較例1)
除湿乾燥機にて140℃で5時間乾燥させたポリエチレンテレフタレート樹脂(ユニチカ(株)社製、SA−1206)と結晶核剤として、0. 5重量%のタルクとを押出機に供給して溶融混練した後、0. 5mm厚のシート状に押出成形してポリエチレンテレフタレート樹脂シートを巻き取った。
次に、作製したポリエチレンテレフタレート樹脂シート巻体を高圧容器内に収納し、該容器内に発泡剤として60kg/cm2 の炭酸ガスを充填し、8時間含浸させた。
8時間経過後、高圧容器から炭酸ガスを含有させたポリエチレンテレフタレート樹脂シート巻体を取り出し、該シートをシートの表面温度が220℃になるような加熱条件にセットされた熱風循環式の発泡炉中を通すことにより、均一微細に発泡したポリエチレンテレフタレート樹脂発泡シートを作製した。
得られたポリエチレンテレフタレート樹脂発泡シートを真空成形機にセットし、加熱ヒーターを前記ポリエチレンテレフタレート樹脂シートの上面に接することなく移動させ、樹脂シートの表面温度が150〜200℃になるような加熱条件にて予備加熱して、前記発泡シートを軟化させた後、これを50℃に設定した真空成形用金型5に当接させ、この状態で真空ポンプ7を介して真空引きして金型形状に成形しながら、そのまま加熱ヒーターを樹脂シートより離して冷却を行った後、真空引きを停止し、樹脂シートから金型を離すことにより、開孔部の直径と深さの比が1:1のカップ状成形品8を成形した。
成形後、得られたカップ状成形品の側面部および底面部をSEMにより観察したところ、側面部の気泡形状は偏平に引き延ばされた楕円形を呈していた。また、側面部の厚みも底面部に比べると1/3以下となっていた。
したがって側面部と底面部の機械的強度を比較しても、側面部の強度は底面部に比べて1/4以下と非常に低いものであった。
【0013】
【発明の効果】
本発明方法によれば、発泡体シートの成形時の伸びに加え、発泡時の気泡成長に伴う伸びが加味されるため、深絞り品の成形が可能であり、しかも、真空成形時に発泡体シートに無理な変形力が加わらないため、気泡変形のほとんどない機械的強度の均一な熱可塑性ポリエステル樹脂発泡成形品が製造できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明方法にて用いた真空成形機の断面概略説明図である。
【符号の説明】
1・・・・不活性ガスが含有させた熱可塑性ポリエステル樹脂シート
2・・・・真空成形機の加熱用ヒーター(水平方向に可動)
3・・・・成形用金型の冷却水注入口
4・・・・成形用金型の冷却水排出口
5・・・・成形用金型
6・・・・成形用金型保持台(上下方向に可動)
7・・・・真空成形機の真空ポンプ
8・・・・熱可塑性ポリエステル樹脂発泡シート製カップ状成形品

Claims (1)

  1. 活性ガスを発泡剤として含有させた熱可塑性ポリエステル樹脂シートを真空成形機中に保持し、可動式の加熱ヒーターを前記樹脂シート上面に接することなく移動させて樹脂シートを上面より加熱して発泡させつつ、前記真空成形機の深絞り金型を前記樹脂シート下面に当接させ、真空引きして深絞り成形した後、真空引きを継続したまま、前記可動式の加熱ヒーターを深絞り成形品上面より離して冷却し、その後真空引きを停止して、真空成形用金型を深絞り成形品より離すことを特徴とする熱可塑性ポリエステル樹脂発泡深絞り成形品の製造方法。
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