JP3821868B2 - 絶縁基材上にめっきする方法及びその方法にて得られるめっき付与物 - Google Patents

絶縁基材上にめっきする方法及びその方法にて得られるめっき付与物 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ガラス、プラスチック、セラミックス等の絶縁基材上に導電性の高い金属層を形成する方法並びにその方法にて得られるめっき付与物、例えば微細なパタ−ン幅の金属配線を有する回路基板やカラ−フィルタ−に関する。
【0002】
【従来の技術】
ガラス、プラスチック、セラミックス等のような導電性を持たない絶縁基材上に導電性を有する皮膜を形成する方法として、一般に物理蒸着法や化学気相法が利用されている。この中で物理蒸着法として真空蒸着法やスパッタリング等の方法が一般的である。導電薄膜に用いられる材料としてはクロム、アルミニウム、金、炭素、白金、銅、パラジウム等がある。現在良く用いられるのはクロムとアルミニウムである。また、表示素子等の透明導電膜として広く用いられるITO(インジウムとスズの酸化物)を成膜する方法としてもこれらの方法が用いられている。化学気相法は高温でガスを反応させて基板上に成膜する方法である。ネサ膜等の成膜にこの方法が用いられている。絶縁基材上に導電性の薄膜を形成する別の方法として、無電解めっきで絶縁基材表面を金属化する方法がある。この場合には、最初に基材表面にパラジウムあるいは白金などの触媒を吸着させた後金属めっきを行うが、基材との強固な結合を得るために予め被めっき表面の粗化を行うのが一般的である。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
物理蒸着法にて金属薄膜を成膜する方法は処理温度が高い上に金属の種類によっては成膜に時間がかかるなどの理由から、実際に使用される金属の種類は限定され、汎用性が少ない。現在良く用いられるクロムやアルミニウムの場合でも、装置コスト、ターゲットの寿命やそのメンテナンス等の理由から生産性や製造コスト面に問題がある。更に、金属薄膜をLCD(液晶ディスプレ−)のカラ−フィルタ−用ブラックマトリックスとして利用する場合(該金属として一般的にはクロムが用いられる)、ピンホ−ル等の存在による光洩れをなくすると共に低反射率の膜とすることが要求されるが、これらの要求に応えるには重層的な蒸着や黒化処理を必要とし、製造コストの増大を招くと共に得られる反射率とて必ずしも満足し得るものではない。透明導電膜として広く用いられるITO膜をスパッタリング法で製造する方法は、成膜スピードが速く均一な成膜技術が確立され、大量に生産されて製造コスト面でも有利であるが、成膜された導電層は金属に比べて導電性が低く、金属並の高導電性を必要とする目的には不充分である。化学気相法での成膜も、実用になる材料が限られており、金属並の高導電性を必要とする目的には不充分である。
【0004】
無電解めっきで高導電性金属膜を得る方法では、銅やニッケル等のめっきが可能であり、高導電性を必要とする目的には有効である。しかし、この場合、めっき金属膜と基材表面との密着性を得る必要から、何らかの方法で基材表面を粗化しなければならず、この基材表面の粗化は、ガラス等の透明性が要求される目的の場合、あるいは表面の平滑性を要求される目的の場合には適していない。尚、表面粗化を行ったとしても得られる密着強度は充分とは言えない。また、最近のように基材表面に微細な導電性の配線パターン等を形成する目的に対しては、パターンの要求精度により基材表面の粗化が不適当な場合がある。本発明は、表面が平滑な絶縁基材上に基材との密着性が良い金属の薄層を、容易に低コストで生産できる方法及びその方法にて得られるめっき付与物を提供するものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明の方法は、酸化物を含む導電膜、例えばITO導電膜を絶縁基材(表面形状は問わない。立体的な形状であってもよい)の上に形成する過程1と、前記の導電膜表層を還元処理して該導電膜表層に還元層を形成する過程2と、前記の還元層に触媒作用を有する金属イオンを含む処理液を作用させて該還元層の表面に触媒層を形成する過程3と、前記の触媒層を有する導電膜の上に金属をめっきする過程4を有することを特徴とする。
【0006】
本発明は、絶縁基材上に金属めっきを行う前に、過程2と3を実施した点が大きな特徴である。
【0007】
本発明の方法によれば、先ず過程1において、酸化物を含む導電膜が絶縁基材上に強く付けられる。
【0008】
次に、過程2でもって、導電膜の表層部分の酸化物が還元される。例えば、導電膜がITOの場合、該膜表層のスズとインジウムは還元され、スズは0価から4価、インジウムは0価から3価の間の酸化数の混合物の層が形成される。この還元された層(還元層)は過程1で形成される導電層の組成、厚さ、及び成膜条件と過程2の還元条件により、その厚さと組成をコントロールでき、該導電膜の表面改質(これはめっき膜の密着強度、絶縁基材側から見た場合の色調及び反射率に関係する)を容易に実施できる。この過程2を実施せずに導電膜表面を粗化処理(例えば、該導電膜を溶解可能なホウフッ化水素酸、塩酸、臭化水素酸等の薬液による処理)し、その上にめっきしても、得られるめっき膜と絶縁基材間の密着性は充分ではない。
【0009】
更に、過程3でもって、前記の還元層と触媒作用を有する金属イオンを含む処理液とが接触せしめられると、還元層に含まれる還元状態の化合物あるいは元素によって金属イオンが金属あるいは金属を含む化合物にまで還元され(例えば、触媒作用を有する金属のイオンを含む処理液を塩化パラジウム水溶液とした場合、金属パラジウムの微粒子となる)、それが、還元層が形成された表面だけに選択的に微粒子状に析出する。こうしてできた触媒作用を有する微粒子は、残存する導電膜表層と強い結合を持っていると考えられる。
【0010】
過程2と過程3を経た導電膜表面に、過程4のめっき処理により金属膜を析出させると、この金属膜は絶縁基材表面に強く密着することになる。これは、過程1から過程3を経る絶縁基材表面への触媒作用粒子の付与法によれば、スパッタリング等により分子レベルで基材表面に形成された導電膜の一部が還元され、その還元された部分と、処理液中の触媒作用を有する金属のイオンとが固液接触反応で直接反応するので、処理液から生成した触媒作用を有する微粒子と、それを還元するために使われた残存する還元層とが分子レベルで接合すると共に、還元層自体もその下層の導電膜層と連続的に分子レベルで結合しているためと考えられる。一方、従来法による絶縁基材表面のめっき法で一般的に使用されている、パラジウム/スズコロイド触媒やパラジウム化合物触媒の基材表面への結合は物理的な吸着力によるので、結合力が弱く、相応のめっき膜の接着を得るには表面粗化処理によるアンカー効果を利用しなければならない(それとて結合は充分ではない)。
【0011】
以下、本発明の方法の一実施態様を工程順に示す図1〜図4を参照しつつ、本発明をより詳細に説明する。
【0012】
本発明の方法では、先ず、表面が平滑な絶縁基材1の一面に導電膜2を形成する(図1(a))。この導電膜2の形成は、スパッタリングや蒸着法等が利用でき、それらによれば導電膜2と絶縁基材1とは強い密着性が得られると共に、従来のめっき法のように基材表面の粗化を必要としないので30μm以下の微細な線幅のパタ−ニングにも充分対応し得る。
【0013】
ここで、基板1としては、ガラス、プラスチック、セラミック等が利用できる(めっき付与物をカラ−フィルタ−として利用する場合には基板自身透明であることが更に必要である)。導電膜2としては、導電膜2の上に後で金属のめっき膜が形成されることにより最終的な導電性が確保されるので、従来の金属スパッタ法による導電膜形成の場合と異なり、導電性の高い材料から選定する必要はない。過程2において還元を電解液中での電解処理によって行う場合には、電解処理が可能な程度の導電性を有すれば充分である。従って、導電膜形成材料を選ぶに当たっては、生産性、作業性の良い低コストな材料を選べばよい。最も代表的な材料はITOである。
【0014】
過程2では、導電膜表層を還元する。その方法としては、例えば、導電膜を還元できる元素もしくは化合物を含むイオンプラズマ雰囲気又は高温雰囲気の中で乾式還元する方法も挙げられるが、電解液中での電解処理による方法が好ましい。電解処理の場合、還元の程度を電解条件によって調整できる。前記の電解処理における電解液には、電導度を調整するための任意の電解質を少なくとも1種類含む。その例としては、乳酸、グリコール酸、メトキシ酢酸、酢酸、クロロ酢酸、クエン酸、酒石酸等が挙げられる。
【0015】
そして、実用的に好ましくは、この電解液に、電解処理を均一にするためのインヒビターを配合する。この場合には、導電膜2上には還元層4の他に電解液成分(主にインヒビター成分)に基づく層(インヒビタ−層)3が形成される(図1(b))。
【0016】
このインヒビターとして、通常の電着塗装などに利用される極性基をもつポリマーコロイドを用いることができる。この場合、電解により結果的にポリマーコロイドが還元層4の表面に沈着し、ポリマー膜3(上記電解液に基づく層の代表例)が形成される。またこの場合、ポリマーコロイドに光重合開始剤等を配合した電着フォトレジストを使用すれば、形成された膜は写真法によりパターン形成を行うことができる。結果的に、所望部分(めっきを望む部分)のインヒビター層3は除去されるので、次の過程でのインヒビター層3の除去(図1(c))は不要となる。インヒビターの例としては、カチオン基をもつアクリル樹脂を含むものや、カチオン基をもつエポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ポリアミド樹脂等が挙げられる。
【0017】
次に、電解液に含まれる成分に基づく層、例えばインヒビター層3が存在するならば、その層を溶解除去可能な溶液(剥離液)、例えば有機溶剤や酸/アルカリ溶液等により除去した後(図1(c))、触媒作用をもつ金属のイオンを含む処理液を還元層4に作用させる[過程3]。この処理によって、導電膜2表層の還元層4(例えば還元されたスズを含む)が、前記の金属イオンを還元して、触媒層5を導電膜2の上に析出させる(図1(d))。
【0018】
触媒作用をもつ金属のイオンを含む処理液としては、還元層4によって還元されて、めっき触媒となる金属又はそれを含む化合物を析出可能なものであれば任意のものが使用できる。例えば、0価ではない酸化された状態の金属(パラジウム、白金、ロジウム等)を含む化合物の水溶液が利用できる。金属イオンがパラジウムの場合、より具体的には、塩化パラジウムやパラジウム配位化合物(例えばパラジウムアンミン錯体)等の単分子化合物、その多量体、クラスター化合物の水溶液が利用できる。
【0019】
また、処理液の濃度や処理時間は適宜選定すればよいが、塩化パラジウム水溶液の場合、パラジウム30mg/l〜80mg/l程度であり、処理時間は、30秒〜5分程度である。
【0020】
更に、必須の過程3と4との間で、通常のパターニング法、つまり、触媒層5を有する導電膜2の上にエッチングレジストを塗布してその層7を形成し(図1(e))、露光・現像によるレジストイメージング(図1(f))、による導電膜のエッチング(図1(g))、残存するレジストの剥離(図1(h))を実施すれば、次の必須過程4で所望部分のみにめっきを施すこと(図1(i))ができる。
【0021】
過程4では、銅、ニッケル等の金属をめっき(好ましくは無電解めっき)により、触媒層5上に析出させ、金属めっき膜6を形成する(図4。ここで、高い導電性を必要とする回路基板の金属配線の場合には銅が、低反射率が要求されるLCDのカラ−フィルタ用ブラックマトリックスの場合にはニッケルが好ましい)。目的によっては単一金属や複数金属を析出させる。
【0022】
本発明の方法では、過程3でもって導電膜2の表面に触媒層5が形成されるが、この触媒層5と導電膜2との(還元層を介した又は直接の)結合は強固であり、また、触媒層5とめっきによる金属めっき膜6との結合も強固であるため、全体としての金属めっき膜の密着性は著しく高い。従来の無電解めっきにおける成膜後の密着性が低いという欠点も本発明方法によれば解消できる。
【0023】
また、従来のLCDのカラ−フィルタ用ブラックマトリックスの場合に問題とされたピンホール等による光洩れは、金属めっき膜の析出状態が非常に良いこともあり認められない。更に、導電膜としてITO膜を、めっきとして無電解Niめっきを利用する場合は、従来のCrのスパッタリング膜では達成できなかった低反射率のめっき付与物が得られる。更に、導電膜形成材料としてITOを利用すれば、従来法、すなわちCrのスパッタリングに比べて材料コストが安価で済み、スパッタリングも簡単なので、導電膜形成コストは従来法に比しはるかに低い。
【0024】
尚、本発明の方法によれば、過程1で形成する導電膜の厚さを変えることにより、絶縁基材面側の色調を調節することができる(黒色あるいは黒紫色に色調を調整すれば、視認性の良いコントラストの高い画像が得られる)。また、過程2の還元処理条件を調節することにより、あるいは還元処理液中にアルカリ金属イオンあるいはアルカリ土類金属イオン等を添加することにより、絶縁基材面側の色調と反射率とを調節することができる。従って、本発明の方法により得られためっき付与物は、低い反射率、すなわち画面の反射が抑えられた、そして高い視認性を有するLCDのカラ−フィルタ用ブラックマトリックスとして利用し得る。
【0025】
また、前記のメッキ付与物をLCDのカラ−フィルタ用ブラックマトリックスとして利用する場合には、予め各着色部(R,G,B)を形成し、その後で該ブラックマトリックスとなる部分を形成することもできる。すなわち、導電膜が形成された基板(図1(a))上に予め赤(R)、緑(G)、青(B)のカラーレジストのパターニングを行い(図2及び図3)、その後、図1に示した操作(b)〜(d)及び(i)をこの順序で施す。尚、この方法では還元層4やインヒビタ−層3は勿論のこと触媒層5も各着色部(R,G,B)上には形成されずブラックマトリックス形成部(A)に露出した導電膜2の上にのみ形成されるので、図1に示した操作(e)〜(h)は不要となり、工程が簡略化される。この方法では、ブラックマトリックス形成部の寸法精度を高めるためには、各着色部(R,G,B)の形成の際予めブラックマトリックス形成部(A)との境界を精度良く定めておくことが必要である。
【0026】
また別の方法として、過程2において導電膜に還元処理を施す際に、ブラックマトリックス形成部を残してそれ以外の部分の導電膜を除去しておく手法が挙げられる。この手法では、導電膜付き基板の全面に感光性樹脂皮膜(感光性樹脂、この場合には電着レジスト、はインヒビタ−として電解液に配合しておく)を電着法で形成した後、露光、現像パターニングを行ってブラックマトリックス形成部分以外の部分のレジスト皮膜を除去する(図4(a))。更にエッチングによってこの部分の還元層付き導電膜を取り去ってから(図4(b))ブラックマトリックス形成部分のレジスト皮膜を取り去る(図4(c))。その後、図1に示した操作(d)、すなわち触媒層5の形成及び(i)、すなわち金属めっきをこの順序で施す。この方法では、触媒層5の形成を行う時点においてはブラックマトリックス形成部分以外の部分には還元層4は勿論のこと導電膜2もないので、触媒層5が形成されるのは還元層付き導電膜が残存しているブラックマトリックス形成部分だけである。尚、この方法においては、前記の方法のように金属めっきを行う前にエッチングレジストの塗布(図1(e))、フォトリソグラフィ−によるパタ−ニング(図1(f))及びエッチング(図1(g))並びにレジストの剥離・除去をあらためて行う必要がなくなる点において利点を有するが、酸に弱い還元層4が存在する中でエッチングが行われるので横方向への侵食がある。従って、微細なパタ−ンの形成を要求される場合には適さない。
【0027】
更にまた別の方法として、一旦、金属めっきを付与する段階まで処理を行った後、すなわち図1に示した操作(a)〜(d)及び(i)をこの順序で施した後で(図5)、金属めっきの層上に感光性樹脂(エッチングレジスト)皮膜を形成した後、露光、現像パターニングを行って遮光層形成箇所以外の箇所を露出させ、次いで該金属めっき及び該導電膜のエッチング液と接触させて前記の露出させた箇所の金属めっき及び導電膜を除去し、更に残ったレジスト皮膜を剥離することもできる。従来の方法(Crのスパッタリング)においても、クロムの皮膜形成後、エッチングレジスト皮膜の形成〜エッチングの各操作が行われるが、従来法ではエッチングの結果排出される廃液中に有害なクロムが含まれるのに対し、本発明方法ではそれが有害重金属に指定されていない金属、例えばニッケルである点において利点を有する。
【0028】
【発明の実施の形態】
絶縁基材として表面の平滑なガラス基板(400mm×320mm)を用いた。このガラス基板1の片面にITO導電膜2(比抵抗2×10-4Ωcm)をスパッタリング法により形成した(図1(a))。ITO導電膜2の膜厚は1,500Åとした。次に、ITO導電膜2を陰極として電解液中にて電解処理を行うことにより、該導電膜表層の還元処理を実施した。電解液には乳酸とインヒビターとして乳酸で中和されたアミノ基をもつアクリル樹脂をコロイド状に分散させたものを用いた。そのアクリル樹脂としては、次工程でのインヒビター層3の剥離・除去を考慮して、電着フォトレジスト(シプレイ・ファーイースト社製の商品名:EAGLE ED−2100を使用)を用いた。すなわち、アミノ基をもつアクリル樹脂として、メチルメタアクリレート、エチルアクリレート及びジメチルアミノエチルメタアクリレートの共重合物とジペンタエリスリトールペンタアクリレートとを含有する組成物(重量比でメチルメタアクリレート:エチルアクリレート:ジメチルアミノエチルメタアクリレート=75:17:8、共重合物:ジペンタエリスリトールペンタアクリレート=2:1)を用いた。この電解液の電気伝導度は400μS/cmで、電解条件は40℃、100ボルト、60秒とした。
【0029】
電解処理をすることによってITO導電膜2の表層が電解還元される(結果として形成されたものが符号4で指示された "還元層" である)と共に電解液に含有されたインヒビター成分であるポリマーの析出物3によって被覆された(図1(b))。その後、現像液(シプレイ・ファーイースト社製の商品名:EAGLE REJIST DEVELOPER ED−2005を使用)により前記のポリマ−析出物(インヒビタ−層3)を除去した(図1(C))。ITO導電膜2の表面は、前記の電解処理によって褐色に着色され、ITO導電膜表層のスズ成分の一部及びインジウム成分の一部が還元されているのが認められた。この還元層4を表層にもつITO導電膜2を、塩化パラジウム水溶液(シプレイ・ファーイースト社製の商品名:OMNISHIELD−1572を濃度1.0容量%で使用)に3分間浸漬し、パラジウム触媒層5をITO導電膜表面に形成した(図1(d))。次いで、パラジウム触媒層5に残存するスズ成分を除去するために、パラジウム触媒層を表層にもつ該導電膜を硫酸酸性水溶液(シプレイ・ファーイースト社製の商品名:ACCELRATOR−240を使用)中に浸漬した。その後、無電解Niめっき液(30℃)中に7分間浸漬し、2,000ÅのNi薄膜を析出させた(図5)。
【0030】
以上のようにして得られためっき膜を主体とするめっき付与物は高い導電性を有し、しかも基材との密着性も優れていた。このめっき付与物の碁盤目剥離テスト(JIS K 5400)の結果、全く剥離が見られず、高い密着強度をもつことが確認された。
【0031】
尚、導電膜の還元処理を実施しなかったもの(その他の処理は本実施例と同じ)は、過程4で金属めっきがうまく形成されなかった。また、導電膜の還元処理の代わりにITO導電膜の表面粗化を行ったもの(その他の処理は本実施例と同じ)は、過程4で金属めっきの薄膜は形成されるものの、碁盤目剥離テスト(JIS K 5400)では該薄膜はITO膜から簡単に剥離してしまった。
【0032】
カラ−フィルタ−用ブラックマトリックスに要求される低反射率ということに関しては、Crのスパッタリングの場合そのままでは約60%の反射率であり、要求性能を充分に満たすことはできない。Crのスパッタリングのみで低反射率の遮光層を得るためにはCrO/Cr又はCrO/Cr/Crの2層又は3層Crのスパッタリングを行わなければならず、コスト高になる。また、これにより10%程度の反射率のものが得られているが、反射色が赤又は青っぽい黒色である。これに対し、本発明の方法によれば、過程3の処理を実施した後のITO膜の膜厚を500Åから1,500Åとすることで30%以下という低反射率の黒色膜を得ることが可能であり(該膜厚を800〜1,000Åにすると反射率が20%以下のものが得られる)、更に、過程2(導電膜の還元処理)においてITO膜中のインジウム還元量を調整する、すなわち還元処理液にアルカリ金属イオンあるいはアルカリ土類金属イオンを加えて還元処理における極部電流値を増加させれば反射率5%以下のものを得ることができる。
【0033】
また、過程3と4との間において、触媒層5の上にエッチングレジスト7を塗布し(図1(e))、フォトリソグラフィーにより触媒層5及び還元層付きITO導電膜2を微細パターンにエッチングし加工した(図1(f)〜(h))後、めっき液に投入し、所定のパターンにのみめっき膜を析出させ種々の線幅のめっき付与物を作成した(図1(i))が、5μm の線幅の微細パターンのものまで得られた。
【0034】
【発明の効果】
上記の通り、本発明によれば、平滑な絶縁基材上に基材の表面粗化を実施することなく、密着強度が高く、且つ電気伝導度の高い金属薄膜の形成がめっき法で可能となる。しかも、現在広く利用されているCrのスパッタリングによる方法にて問題となるクロムの公害処理を伴わず、安価なメッキ付与物を提供し得る。更に、本発明方法で得られるメッキ付与物は、ピンホ−ルがなく、高い遮光率と低い反射率を有するので、LCDのカラ−フィルタ−用ブラックマトリックスとして充分に使用し得るものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の製造方法の一態様を工程順に示した断面図である。
【図2】カラーフィルタの平面パターン図である。
【図3】本発明の製造方法の他の例の一工程を示した断面図である。
【図4】本発明の製造方法の更に他の例の一工程を示した断面図である。
【図5】本発明の製造方法のまた更に他の例の一工程を示した断面図である。
【符号の説明】
1 絶縁基板
2 透明導電膜(ITO膜)
3 インヒビター層
4 還元層
5 触媒層
6 金属めっき膜
7 エッチングレジスト皮膜
8 電着レジスト皮膜
R 赤色着色層
G 緑色着色層
B 青色着色層

Claims (8)

  1. 酸化物を含む導電膜を絶縁基材上に形成する過程1と、前記の導電膜表層を、極性基をもつポリマーコロイドよりなるインヒビター成分を含む電解液を用いて電解処理することにより還元処理して該導電膜表層上に還元層を、および該還元層上にインヒビター層を形成し、その後インヒビター層を除去する過程2と、前記の還元層に触媒作用を有する金属のイオンを含む処理液を作用させて該還元層の表面に触媒層を形成する過程3と、前記の触媒層を有する導電膜の上に金属を無電解めっきする過程4を有する絶縁基材上にめっきする方法。
  2. 酸化物を含む導電膜を絶縁基材上に形成する過程1と、前記の導電膜表層を還元処理して該導電膜表層上に還元層を形成する過程2と、前記の還元層に触媒作用を有する金属のイオンを含む処理液を作用させて該還元層の表面に触媒層を形成する過程3と、前記の過程3にて形成された触媒層上にエッチングレジスト皮膜によるパターンを形成し、不要部分の触媒層付き導電膜をエッチングにより除去した後残存する該エッチングレジスト皮膜を剥離し、残存するパターン化された触媒層付き導電膜上に金属を無電解めっきする過程4を有する絶縁基材上にめっきする方法。
  3. 酸化物を含む導電膜を絶縁基材上に形成する過程1と、前記の導電膜表層を、電着レジストを含む電解液を用いて電解処理することにより還元処理して該導電膜表層上に還元層を、および該還元層上に電着レジスト感光性樹脂の皮膜を形成し、当該レジスト感光性樹脂の皮膜に、露光、現像パタ−ニングを行って不要部分の還元層を露出させ、次いで該不要部分の還元層付き導電膜をエッチングにより除去した後残存する該電着レジスト皮膜を剥離する過程2と、前記の還元層に触媒作用を有する金属のイオンを含む処理液を作用させて該還元層の表面に触媒層を形成する過程3と、前記の触媒層を有する導電膜の上に金属を無電解めっきする過程4を有する絶縁基材上にめっきする方法。
  4. 前記の過程4にて形成された金属めっきの層上にエッチングレジスト皮膜によるパタ−ンを形成し、不要部分の金属めっき及び導電膜をエッチングにより除去した後残存する該エッチングレジスト皮膜を剥離する請求項1〜3のいずれか1項記載の方法。
  5. 前記の過程2の処理に先立ち、予め基板上の着色すべき箇所に着色皮膜を形成する請求項1〜3のいずれか1項記載の方法。
  6. 前記の導電膜として、インジウムの酸化物、スズの酸化物又はITOの膜を用いる請求項1乃至5のいずれか一に記載の方法。
  7. 透明な絶縁基板上に被着せしめられた膜であってその表層に、ITO膜に由来し、かつ還元された金属又は金属化合物を有するITO膜の表面に金属めっきの層を形成する、めっき付与物の製造方法であって、請求項1〜3のいずれか1項記載の方法によるめっき付与物の製造方法。
  8. 請求項1〜3のいずれか1項記載の方法により被着せしめられた金属めっき層を形成することを含む、めっき付与物を有する絶縁基板の製造方法。
JP19890495A 1994-08-23 1995-08-04 絶縁基材上にめっきする方法及びその方法にて得られるめっき付与物 Expired - Fee Related JP3821868B2 (ja)

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