JPH08120448A - 絶縁基材上にめっきする方法及びその方法にて得られるめっき付与物 - Google Patents

絶縁基材上にめっきする方法及びその方法にて得られるめっき付与物

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JPH08120448A
JPH08120448A JP19890495A JP19890495A JPH08120448A JP H08120448 A JPH08120448 A JP H08120448A JP 19890495 A JP19890495 A JP 19890495A JP 19890495 A JP19890495 A JP 19890495A JP H08120448 A JPH08120448 A JP H08120448A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 本発明は、表面が平滑な絶縁基材上に基材と
の密着性が良い金属の薄層を、容易に低コストで生産で
きる方法及びその方法にて得られるめっき付与物を提供
することを課題とする。 【構成】 本発明は、絶縁基材上にめっきする方法であ
って、酸化物を含む導電膜を絶縁基材上に形成する過程
1と、前記の導電膜表層を還元処理して該導電膜表層に
還元層を形成する過程2と、前記の還元層に触媒作用を
有する金属のイオンを含む処理液を作用させて該還元層
の表面に触媒層を形成する過程3と、前記の触媒層を有
する導電膜の上に金属をめっきする過程4を有すること
を特徴とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ガラス、プラスチ
ック、セラミックス等の絶縁基材上に導電性の高い金属
層を形成する方法並びにその方法にて得られるめっき付
与物、例えば微細なパタ−ン幅の金属配線を有する回路
基板やカラ−フィルタ−に関する。
【0002】
【従来の技術】ガラス、プラスチック、セラミックス等
のような導電性を持たない絶縁基材上に導電性を有する
皮膜を形成する方法として、一般に物理蒸着法や化学気
相法が利用されている。この中で物理蒸着法として真空
蒸着法やスパッタリング等の方法が一般的である。導電
薄膜に用いられる材料としてはクロム、アルミニウム、
金、炭素、白金、銅、パラジウム等がある。現在良く用
いられるのはクロムとアルミニウムである。また、表示
素子等の透明導電膜として広く用いられるITO(イン
ジウムとスズの酸化物)を成膜する方法としてもこれら
の方法が用いられている。化学気相法は高温でガスを反
応させて基板上に成膜する方法である。ネサ膜等の成膜
にこの方法が用いられている。絶縁基材上に導電性の薄
膜を形成する別の方法として、無電解めっきで絶縁基材
表面を金属化する方法がある。この場合には、最初に基
材表面にパラジウムあるいは白金などの触媒を吸着させ
た後金属めっきを行うが、基材との強固な結合を得るた
めに予め被めっき表面の粗化を行うのが一般的である。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】物理蒸着法にて金属薄
膜を成膜する方法は処理温度が高い上に金属の種類によ
っては成膜に時間がかかるなどの理由から、実際に使用
される金属の種類は限定され、汎用性が少ない。現在良
く用いられるクロムやアルミニウムの場合でも、装置コ
スト、ターゲットの寿命やそのメンテナンス等の理由か
ら生産性や製造コスト面に問題がある。更に、金属薄膜
をLCD(液晶ディスプレ−)のカラ−フィルタ−用ブ
ラックマトリックスとして利用する場合(該金属として
一般的にはクロムが用いられる)、ピンホ−ル等の存在
による光洩れをなくすると共に低反射率の膜とすること
が要求されるが、これらの要求に応えるには重層的な蒸
着や黒化処理を必要とし、製造コストの増大を招くと共
に得られる反射率とて必ずしも満足し得るものではな
い。透明導電膜として広く用いられるITO膜をスパッ
タリング法で製造する方法は、成膜スピードが速く均一
な成膜技術が確立され、大量に生産されて製造コスト面
でも有利であるが、成膜された導電層は金属に比べて導
電性が低く、金属並の高導電性を必要とする目的には不
充分である。化学気相法での成膜も、実用になる材料が
限られており、金属並の高導電性を必要とする目的には
不充分である。
【0004】無電解めっきで高導電性金属膜を得る方法
では、銅やニッケル等のめっきが可能であり、高導電性
を必要とする目的には有効である。しかし、この場合、
めっき金属膜と基材表面との密着性を得る必要から、何
らかの方法で基材表面を粗化しなければならず、この基
材表面の粗化は、ガラス等の透明性が要求される目的の
場合、あるいは表面の平滑性を要求される目的の場合に
は適していない。尚、表面粗化を行ったとしても得られ
る密着強度は充分とは言えない。また、最近のように基
材表面に微細な導電性の配線パターン等を形成する目的
に対しては、パターンの要求精度により基材表面の粗化
が不適当な場合がある。本発明は、表面が平滑な絶縁基
材上に基材との密着性が良い金属の薄層を、容易に低コ
ストで生産できる方法及びその方法にて得られるめっき
付与物を提供するものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明の方法は、酸化物
を含む導電膜、例えばITO導電膜を絶縁基材(表面形
状は問わない。立体的な形状であってもよい)の上に形
成する過程1と、前記の導電膜表層を還元処理して該導
電膜表層に還元層を形成する過程2と、前記の還元層に
触媒作用を有する金属イオンを含む処理液を作用させて
該還元層の表面に触媒層を形成する過程3と、前記の触
媒層を有する導電膜の上に金属をめっきする過程4を有
することを特徴とする。
【0006】本発明は、絶縁基材上に金属めっきを行う
前に、過程2と3を実施した点が大きな特徴である。
【0007】本発明の方法によれば、先ず過程1におい
て、酸化物を含む導電膜が絶縁基材上に強く付けられ
る。
【0008】次に、過程2でもって、導電膜の表層部分
の酸化物が還元される。例えば、導電膜がITOの場
合、該膜表層のスズとインジウムは還元され、スズは0
価から4価、インジウムは0価から3価の間の酸化数の
混合物の層が形成される。この還元された層(還元層)
は過程1で形成される導電層の組成、厚さ、及び成膜条
件と過程2の還元条件により、その厚さと組成をコント
ロールでき、該導電膜の表面改質(これはめっき膜の密
着強度、絶縁基材側から見た場合の色調及び反射率に関
係する)を容易に実施できる。この過程2を実施せずに
導電膜表面を粗化処理(例えば、該導電膜を溶解可能な
ホウフッ化水素酸、塩酸、臭化水素酸等の薬液による処
理)し、その上にめっきしても、得られるめっき膜と絶
縁基材間の密着性は充分ではない。
【0009】更に、過程3でもって、前記の還元層と触
媒作用を有する金属イオンを含む処理液とが接触せしめ
られると、還元層に含まれる還元状態の化合物あるいは
元素によって金属イオンが金属あるいは金属を含む化合
物にまで還元され(例えば、触媒作用を有する金属のイ
オンを含む処理液を塩化パラジウム水溶液とした場合、
金属パラジウムの微粒子となる)、それが、還元層が形
成された表面だけに選択的に微粒子状に析出する。こう
してできた触媒作用を有する微粒子は、残存する導電膜
表層と強い結合を持っていると考えられる。
【0010】過程2と過程3を経た導電膜表面に、過程
4のめっき処理により金属膜を析出させると、この金属
膜は絶縁基材表面に強く密着することになる。これは、
過程1から過程3を経る絶縁基材表面への触媒作用粒子
の付与法によれば、スパッタリング等により分子レベル
で基材表面に形成された導電膜の一部が還元され、その
還元された部分と、処理液中の触媒作用を有する金属の
イオンとが固液接触反応で直接反応するので、処理液か
ら生成した触媒作用を有する微粒子と、それを還元する
ために使われた残存する還元層とが分子レベルで接合す
ると共に、還元層自体もその下層の導電膜層と連続的に
分子レベルで結合しているためと考えられる。一方、従
来法による絶縁基材表面のめっき法で一般的に使用され
ている、パラジウム/スズコロイド触媒やパラジウム化
合物触媒の基材表面への結合は物理的な吸着力によるの
で、結合力が弱く、相応のめっき膜の接着を得るには表
面粗化処理によるアンカー効果を利用しなければならな
い(それとて結合は充分ではない)。
【0011】以下、本発明の方法の一実施態様を工程順
に示す図1〜図4を参照しつつ、本発明をより詳細に説
明する。
【0012】本発明の方法では、先ず、表面が平滑な絶
縁基材1の一面に導電膜2を形成する(図1(a))。
この導電膜2の形成は、スパッタリングや蒸着法等が利
用でき、それらによれば導電膜2と絶縁基材1とは強い
密着性が得られると共に、従来のめっき法のように基材
表面の粗化を必要としないので30μm以下の微細な線
幅のパタ−ニングにも充分対応し得る。
【0013】ここで、基板1としては、ガラス、プラス
チック、セラミック等が利用できる(めっき付与物をカ
ラ−フィルタ−として利用する場合には基板自身透明で
あることが更に必要である)。導電膜2としては、導電
膜2の上に後で金属のめっき膜が形成されることにより
最終的な導電性が確保されるので、従来の金属スパッタ
法による導電膜形成の場合と異なり、導電性の高い材料
から選定する必要はない。過程2において還元を電解液
中での電解処理によって行う場合には、電解処理が可能
な程度の導電性を有すれば充分である。従って、導電膜
形成材料を選ぶに当たっては、生産性、作業性の良い低
コストな材料を選べばよい。最も代表的な材料はITO
である。
【0014】過程2では、導電膜表層を還元する。その
方法としては、例えば、導電膜を還元できる元素もしく
は化合物を含むイオンプラズマ雰囲気又は高温雰囲気の
中で乾式還元する方法も挙げられるが、電解液中での電
解処理による方法が好ましい。電解処理の場合、還元の
程度を電解条件によって調整できる。前記の電解処理に
おける電解液には、電導度を調整するための任意の電解
質を少なくとも1種類含む。その例としては、乳酸、グ
リコール酸、メトキシ酢酸、酢酸、クロロ酢酸、クエン
酸、酒石酸等が挙げられる。
【0015】そして、実用的に好ましくは、この電解液
に、電解処理を均一にするためのインヒビターを配合す
る。この場合には、導電膜2上には還元層4の他に電解
液成分(主にインヒビター成分)に基づく層(インヒビ
タ−層)3が形成される(図1(b))。
【0016】このインヒビターとして、通常の電着塗装
などに利用される極性基をもつポリマーコロイドを用い
ることができる。この場合、電解により結果的にポリマ
ーコロイドが還元層4の表面に沈着し、ポリマー膜3
(上記電解液に基づく層の代表例)が形成される。また
この場合、ポリマーコロイドに光重合開始剤等を配合し
た電着フォトレジストを使用すれば、形成された膜は写
真法によりパターン形成を行うことができる。結果的
に、所望部分(めっきを望む部分)のインヒビター層3
は除去されるので、次の過程でのインヒビター層3の除
去(図1(c))は不要となる。インヒビターの例とし
ては、カチオン基をもつアクリル樹脂を含むものや、カ
チオン基をもつエポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ポリアミ
ド樹脂等が挙げられる。
【0017】次に、電解液に含まれる成分に基づく層、
例えばインヒビター層3が存在するならば、その層を溶
解除去可能な溶液(剥離液)、例えば有機溶剤や酸/ア
ルカリ溶液等により除去した後(図1(c))、触媒作
用をもつ金属のイオンを含む処理液を還元層4に作用さ
せる[過程3]。この処理によって、導電膜2表層の還
元層4(例えば還元されたスズを含む)が、前記の金属
イオンを還元して、触媒層5を導電膜2の上に析出させ
る(図1(d))。
【0018】触媒作用をもつ金属のイオンを含む処理液
としては、還元層4によって還元されて、めっき触媒と
なる金属又はそれを含む化合物を析出可能なものであれ
ば任意のものが使用できる。例えば、0価ではない酸化
された状態の金属(パラジウム、白金、ロジウム等)を
含む化合物の水溶液が利用できる。金属イオンがパラジ
ウムの場合、より具体的には、塩化パラジウムやパラジ
ウム配位化合物(例えばパラジウムアンミン錯体)等の
単分子化合物、その多量体、クラスター化合物の水溶液
が利用できる。
【0019】また、処理液の濃度や処理時間は適宜選定
すればよいが、塩化パラジウム水溶液の場合、パラジウ
ム30mg/l〜80mg/l程度であり、処理時間は、30秒
〜5分程度である。
【0020】更に、必須の過程3と4との間で、通常の
パターニング法、つまり、触媒層5を有する導電膜2の
上にエッチングレジストを塗布してその層7を形成し
(図1(e))、露光・現像によるレジストイメージン
グ(図1(f))、による導電膜のエッチング(図1
(g))、残存するレジストの剥離(図1(h))を実
施すれば、次の必須過程4で所望部分のみにめっきを施
すこと(図1(i))ができる。
【0021】過程4では、銅、ニッケル等の金属をめっ
き(好ましくは無電解めっき)により、触媒層5上に析
出させ、金属めっき膜6を形成する(図4。ここで、高
い導電性を必要とする回路基板の金属配線の場合には銅
が、低反射率が要求されるLCDのカラ−フィルタ用ブ
ラックマトリックスの場合にはニッケルが好ましい)。
目的によっては単一金属や複数金属を析出させる。
【0022】本発明の方法では、過程3でもって導電膜
2の表面に触媒層5が形成されるが、この触媒層5と導
電膜2との(還元層を介した又は直接の)結合は強固で
あり、また、触媒層5とめっきによる金属めっき膜6と
の結合も強固であるため、全体としての金属めっき膜の
密着性は著しく高い。従来の無電解めっきにおける成膜
後の密着性が低いという欠点も本発明方法によれば解消
できる。
【0023】また、従来のLCDのカラ−フィルタ用ブ
ラックマトリックスの場合に問題とされたピンホール等
による光洩れは、金属めっき膜の析出状態が非常に良い
こともあり認められない。更に、導電膜としてITO膜
を、めっきとして無電解Niめっきを利用する場合は、
従来のCrのスパッタリング膜では達成できなかった低
反射率のめっき付与物が得られる。更に、導電膜形成材
料としてITOを利用すれば、従来法、すなわちCrの
スパッタリングに比べて材料コストが安価で済み、スパ
ッタリングも簡単なので、導電膜形成コストは従来法に
比しはるかに低い。
【0024】尚、本発明の方法によれば、過程1で形成
する導電膜の厚さを変えることにより、絶縁基材面側の
色調を調節することができる(黒色あるいは黒紫色に色
調を調整すれば、視認性の良いコントラストの高い画像
が得られる)。また、過程2の還元処理条件を調節する
ことにより、あるいは還元処理液中にアルカリ金属イオ
ンあるいはアルカリ土類金属イオン等を添加することに
より、絶縁基材面側の色調と反射率とを調節することが
できる。従って、本発明の方法により得られためっき付
与物は、低い反射率、すなわち画面の反射が抑えられ
た、そして高い視認性を有するLCDのカラ−フィルタ
用ブラックマトリックスとして利用し得る。
【0025】また、前記のメッキ付与物をLCDのカラ
−フィルタ用ブラックマトリックスとして利用する場合
には、予め各着色部(R,G,B)を形成し、その後で
該ブラックマトリックスとなる部分を形成することもで
きる。すなわち、導電膜が形成された基板(図1
(a))上に予め赤(R)、緑(G)、青(B)のカラ
ーレジストのパターニングを行い(図2及び図3)、そ
の後、図1に示した操作(b)〜(d)及び(i)をこ
の順序で施す。尚、この方法では還元層4やインヒビタ
−層3は勿論のこと触媒層5も各着色部(R,G,B)
上には形成されずブラックマトリックス形成部(A)に
露出した導電膜2の上にのみ形成されるので、図1に示
した操作(e)〜(h)は不要となり、工程が簡略化さ
れる。この方法では、ブラックマトリックス形成部の寸
法精度を高めるためには、各着色部(R,G,B)の形
成の際予めブラックマトリックス形成部(A)との境界
を精度良く定めておくことが必要である。
【0026】また別の方法として、過程2において導電
膜に還元処理を施す際に、ブラックマトリックス形成部
を残してそれ以外の部分の導電膜を除去しておく手法が
挙げられる。この手法では、導電膜付き基板の全面に感
光性樹脂皮膜(感光性樹脂、この場合には電着レジス
ト、はインヒビタ−として電解液に配合しておく)を電
着法で形成した後、露光、現像パターニングを行ってブ
ラックマトリックス形成部分以外の部分のレジスト皮膜
を除去する(図4(a))。更にエッチングによってこ
の部分の還元層付き導電膜を取り去ってから(図4
(b))ブラックマトリックス形成部分のレジスト皮膜
を取り去る(図4(c))。その後、図1に示した操作
(d)、すなわち触媒層5の形成及び(i)、すなわち
金属めっきをこの順序で施す。この方法では、触媒層5
の形成を行う時点においてはブラックマトリックス形成
部分以外の部分には還元層4は勿論のこと導電膜2もな
いので、触媒層5が形成されるのは還元層付き導電膜が
残存しているブラックマトリックス形成部分だけであ
る。尚、この方法においては、前記の方法のように金属
めっきを行う前にエッチングレジストの塗布(図1
(e))、フォトリソグラフィ−によるパタ−ニング
(図1(f))及びエッチング(図1(g))並びにレ
ジストの剥離・除去をあらためて行う必要がなくなる点
において利点を有するが、酸に弱い還元層4が存在する
中でエッチングが行われるので横方向への侵食がある。
従って、微細なパタ−ンの形成を要求される場合には適
さない。
【0027】更にまた別の方法として、一旦、金属めっ
きを付与する段階まで処理を行った後、すなわち図1に
示した操作(a)〜(d)及び(i)をこの順序で施し
た後で(図5)、金属めっきの層上に感光性樹脂(エッ
チングレジスト)皮膜を形成した後、露光、現像パター
ニングを行って遮光層形成箇所以外の箇所を露出させ、
次いで該金属めっき及び該導電膜のエッチング液と接触
させて前記の露出させた箇所の金属めっき及び導電膜を
除去し、更に残ったレジスト皮膜を剥離することもでき
る。従来の方法(Crのスパッタリング)においても、
クロムの皮膜形成後、エッチングレジスト皮膜の形成〜
エッチングの各操作が行われるが、従来法ではエッチン
グの結果排出される廃液中に有害なクロムが含まれるの
に対し、本発明方法ではそれが有害重金属に指定されて
いない金属、例えばニッケルである点において利点を有
する。
【0028】
【発明の実施の形態】絶縁基材として表面の平滑なガラ
ス基板(400mm×320mm)を用いた。このガラス基
板1の片面にITO導電膜2(比抵抗2×10-4Ωcm)
をスパッタリング法により形成した(図1(a))。I
TO導電膜2の膜厚は1,500Åとした。次に、IT
O導電膜2を陰極として電解液中にて電解処理を行うこ
とにより、該導電膜表層の還元処理を実施した。電解液
には乳酸とインヒビターとして乳酸で中和されたアミノ
基をもつアクリル樹脂をコロイド状に分散させたものを
用いた。そのアクリル樹脂としては、次工程でのインヒ
ビター層3の剥離・除去を考慮して、電着フォトレジス
ト(シプレイ・ファーイースト社製の商品名:EAGL
E ED−2100を使用)を用いた。すなわち、アミ
ノ基をもつアクリル樹脂として、メチルメタアクリレー
ト、エチルアクリレート及びジメチルアミノエチルメタ
アクリレートの共重合物とジペンタエリスリトールペン
タアクリレートとを含有する組成物(重量比でメチルメ
タアクリレート:エチルアクリレート:ジメチルアミノ
エチルメタアクリレート=75:17:8、共重合物:
ジペンタエリスリトールペンタアクリレート=2:1)
を用いた。この電解液の電気伝導度は400μS/cmで、
電解条件は40℃、100ボルト、60秒とした。
【0029】電解処理をすることによってITO導電膜
2の表層が電解還元される(結果として形成されたもの
が符号4で指示された "還元層" である)と共に電解液
に含有されたインヒビター成分であるポリマーの析出物
3によって被覆された(図1(b))。その後、現像液
(シプレイ・ファーイースト社製の商品名:EAGLE
REJIST DEVELOPER ED−2005
を使用)により前記のポリマ−析出物(インヒビタ−層
3)を除去した(図1(C))。ITO導電膜2の表面
は、前記の電解処理によって褐色に着色され、ITO導
電膜表層のスズ成分の一部及びインジウム成分の一部が
還元されているのが認められた。この還元層4を表層に
もつITO導電膜2を、塩化パラジウム水溶液(シプレ
イ・ファーイースト社製の商品名:OMNISHIEL
D−1572を濃度1.0容量%で使用)に3分間浸漬
し、パラジウム触媒層5をITO導電膜表面に形成した
(図1(d))。次いで、パラジウム触媒層5に残存す
るスズ成分を除去するために、パラジウム触媒層を表層
にもつ該導電膜を硫酸酸性水溶液(シプレイ・ファーイ
ースト社製の商品名:ACCELRATOR−240を
使用)中に浸漬した。その後、無電解Niめっき液(3
0℃)中に7分間浸漬し、2,000ÅのNi薄膜を析
出させた(図5)。
【0030】以上のようにして得られためっき膜を主体
とするめっき付与物は高い導電性を有し、しかも基材と
の密着性も優れていた。このめっき付与物の碁盤目剥離
テスト(JIS K 5400)の結果、全く剥離が見
られず、高い密着強度をもつことが確認された。
【0031】尚、導電膜の還元処理を実施しなかったも
の(その他の処理は本実施例と同じ)は、過程4で金属
めっきがうまく形成されなかった。また、導電膜の還元
処理の代わりにITO導電膜の表面粗化を行ったもの
(その他の処理は本実施例と同じ)は、過程4で金属め
っきの薄膜は形成されるものの、碁盤目剥離テスト(J
IS K 5400)では該薄膜はITO膜から簡単に
剥離してしまった。
【0032】カラ−フィルタ−用ブラックマトリックス
に要求される低反射率ということに関しては、Crのス
パッタリングの場合そのままでは約60%の反射率であ
り、要求性能を充分に満たすことはできない。Crのス
パッタリングのみで低反射率の遮光層を得るためにはC
rO/Cr又はCrO/Cr/Crの2層又は3層Cr
のスパッタリングを行わなければならず、コスト高にな
る。また、これにより10%程度の反射率のものが得ら
れているが、反射色が赤又は青っぽい黒色である。これ
に対し、本発明の方法によれば、過程3の処理を実施し
た後のITO膜の膜厚を500Åから1,500Åとす
ることで30%以下という低反射率の黒色膜を得ること
が可能であり(該膜厚を800〜1,000Åにすると
反射率が20%以下のものが得られる)、更に、過程2
(導電膜の還元処理)においてITO膜中のインジウム
還元量を調整する、すなわち還元処理液にアルカリ金属
イオンあるいはアルカリ土類金属イオンを加えて還元処
理における極部電流値を増加させれば反射率5%以下の
ものを得ることができる。
【0033】また、過程3と4との間において、触媒層
5の上にエッチングレジスト7を塗布し(図1
(e))、フォトリソグラフィーにより触媒層5及び還
元層付きITO導電膜2を微細パターンにエッチングし
加工した(図1(f)〜(h))後、めっき液に投入
し、所定のパターンにのみめっき膜を析出させ種々の線
幅のめっき付与物を作成した(図1(i))が、5μm
の線幅の微細パターンのものまで得られた。
【0034】
【発明の効果】上記の通り、本発明によれば、平滑な絶
縁基材上に基材の表面粗化を実施することなく、密着強
度が高く、且つ電気伝導度の高い金属薄膜の形成がめっ
き法で可能となる。しかも、現在広く利用されているC
rのスパッタリングによる方法にて問題となるクロムの
公害処理を伴わず、安価なメッキ付与物を提供し得る。
更に、本発明方法で得られるメッキ付与物は、ピンホ−
ルがなく、高い遮光率と低い反射率を有するので、LC
Dのカラ−フィルタ−用ブラックマトリックスとして充
分に使用し得るものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の製造方法の一態様を工程順に示した断
面図である。
【図2】カラーフィルタの平面パターン図である。
【図3】本発明の製造方法の他の例の一工程を示した断
面図である。
【図4】本発明の製造方法の更に他の例の一工程を示し
た断面図である。
【図5】本発明の製造方法のまた更に他の例の一工程を
示した断面図である。
【符号の説明】
1 絶縁基板 2 透明導電膜(ITO膜) 3 インヒビター層 4 還元層 5 触媒層 6 金属めっき膜 7 エッチングレジスト皮膜 8 電着レジスト皮膜 R 赤色着色層 G 緑色着色層 B 青色着色層
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 小林 健 新潟県北蒲原郡笹神村大字女堂字金屋原 300 シプレイ・ファーイースト株式会社 新潟工場内 (72)発明者 須藤 幹夫 新潟県北蒲原郡笹神村大字女堂字金屋原 300 シプレイ・ファーイースト株式会社 新潟工場内 (72)発明者 屋城 正行 東京都板橋区高島平1丁目83番1号 シプ レイ・ファーイースト株式会社内

Claims (15)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 酸化物を含む導電膜を絶縁基材上に形成
    する過程1と、前記の導電膜表層を還元処理して該導電
    膜表層に還元層を形成する過程2と、前記の還元層に触
    媒作用を有する金属のイオンを含む処理液を作用させて
    該還元層の表面に触媒層を形成する過程3と、前記の触
    媒層を有する導電膜の上に金属をめっきする過程4を有
    する絶縁基材上にめっきする方法。
  2. 【請求項2】 前記の過程3にて形成された触媒層上に
    エッチングレジスト皮膜によるパターンを形成し、不要
    部分の触媒層付き導電膜をエッチングにより除去した後
    残存する該エッチングレジスト皮膜を剥離し、残存する
    パターン化された触媒層付き導電膜上に過程4の処理を
    施す請求項1に記載の方法。
  3. 【請求項3】 前記の過程2の処理において、還元層の
    形成を電着レジストを配合した電解液中での電解処理に
    て行うと共に該還元層上に形成された該レジスト感光性
    樹脂の皮膜に、露光、現像パタ−ニングを行って不要部
    分の還元層を露出させ、次いで該不要部分の還元層付き
    導電膜をエッチングにより除去した後残存する該電着レ
    ジスト皮膜を剥離する請求項1に記載の方法。
  4. 【請求項4】 前記の過程4にて形成された金属めっき
    の層上にエッチングレジスト皮膜によるパタ−ンを形成
    し、不要部分の金属めっき及び導電膜をエッチングによ
    り除去した後残存する該エッチングレジスト皮膜を剥離
    する請求項1に記載の方法。
  5. 【請求項5】 前記の過程2の処理に先立ち、予め基板
    上の着色すべき箇所に着色皮膜を形成する請求項1に記
    載の方法。
  6. 【請求項6】 前記の導電膜として、インジウムの酸化
    物、スズの酸化物又はITOの膜を用いる請求項1乃至
    5のいずれか一に記載の方法。
  7. 【請求項7】 還元層の形成を電解液中での電解処理に
    て行う請求項1乃至2及び4乃至5のいずれか一に記載
    の方法。
  8. 【請求項8】 還元層の形成を導電膜表面を還元できる
    元素もしくは化合物を含むイオンプラズマ雰囲気中で、
    又は高温雰囲気中で、乾式還元することによって行う請
    求項1乃至2及び4乃至5のいずれか一に記載の方法。
  9. 【請求項9】 金属めっきを無電解めっきにて行う請求
    項1乃至5のいずれか一に記載の方法。
  10. 【請求項10】 無電解めっきがNiの無電解めっきで
    ある請求項9に記載の方法。
  11. 【請求項11】 透明な絶縁基板と、該絶縁基板上に被
    着せしめられた膜であってその表層に少なくとも還元さ
    れた金属又は金属化合物を有するITO膜と、該ITO
    膜の表面に被着せしめられた金属めっき膜と、からなる
    絶縁基板のめっき付与物。
  12. 【請求項12】 前記のITO膜の膜厚が800〜10
    00Åである請求項11に記載のめっき付与物。
  13. 【請求項13】 前記の金属めっき膜がNiである請求
    項11に記載のめっき付与物。
  14. 【請求項14】 前記の金属めっき膜の反射率が20%
    以下である請求項11に記載のめっき付与物。
  15. 【請求項15】 前記の金属めっき膜の反射率が5%以
    下である請求項11に記載のめっき付与物。
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