JP3821582B2 - 光変調素子及び露光素子及び表示装置 - Google Patents
光変調素子及び露光素子及び表示装置 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、光変調素子に関し、特に赤外乃至可視波長領域の光に対する変調,露光,表示が可能な光変調素子に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、光の変調及び光の変調による感光材料への露光、又は表示を司る素子には、液晶素子や、ポッケルス効果を利用したLN(ニオブ酸リチウム:LiNbO3)、KDP(りん酸カリ:KH2PO4)、ADP(りん酸アンモン:NH4H2PO4)等の電気光学結晶、主にカー効果を利用したPLZT等の電気光学結晶が使用されている。
しかし、上記の液晶素子は低電圧駆動が可能な素子であるが、応答速度が遅く、温度等の環境依存性が大きい。さらに、液晶素子の主な方式であるTN型(ねじれネマティック型)、複屈折型等は偏光板を必要とし、偏光板による光の吸収が発生する問題点がある。
【0003】
上記問題を解決する新しい光変調素子としては、図11に示すように、ガラス基板111と112との間でPZTやPLZT等の誘電性物質113を透明電極114,115で挟んで電圧を印加し、光変調を行う技術が特開平9−179082号公報に開示されている。これは、両透明電極間に電圧を印加しないときは光が透過し、電圧を印加するときは、透明電極の陰電極側に電子が充填されて電子濃度が増加することで、金属の自由電子に対する光特性と同様に、陰電極側の透明電極で光が反射するという原理を利用して光変調を行うものである。これによると、偏光板を使用せずに光変調が可能となる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上記の光変調においては、対象とする光の波長が短い程、光変調に必要となる電子濃度が増大する。このため、光変調素子の電子濃度の増加を誘起するために、充填する電子数を増加させる必要がある。そして、低い電圧で駆動させるためには電極間の静電容量を高くする必要があり、上記の誘電性物質は誘電率の非常に高い、例えばセラミック系の高誘電性物質であるPZT、PLZT等の材料とする必要がある。しかし、上記の高誘電率の材料では、安定した誘電率の薄膜を形成することが困難であり、また、そのために、透明電極の電子濃度を安定に制御することが困難であるという問題点がある。
また近年、半導体の電界光学効果や、p−n接合におけるキャリア濃度制御による光変調素子が開発されているが、何れもバンドキャップエネルギーによる吸収端波長近傍の光変調方式であり、可視光域での光変調や光反射率を変化させるものは無い。
さらに、電気光学結晶では液晶素子と比べ高速応答が可能であり、環境依存性も小さいが、ポッケルス効果を利用した電気光学結晶では駆動電圧が高い。カー効果を利用した電気光学結晶では比較的低い電圧で駆動可能であるが、液晶素子と比べると非常に高い駆動電圧を必要とする。また、電気光学結晶では高精細アレイ化が困難である。また、偏光板を必要とし、偏光板による光の吸収が発生する問題点がある。
【0005】
本発明は、以上のような従来の光変調素子における問題点に鑑みてなされたものであり、簡単な構成により、低電圧駆動で高速且つ安定に動作することができる可視光から赤外光を対象とした光変調素子及び露光素子及び表示装置を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記の目的達成のため、本発明に係る請求項1の光変調素子は、下部透明電極の上面に半導体層を設けると共に、該半導体層の上面に絶縁層を介して上部透明電極を設け、前記上部透明電極と下部透明電極との間に前記半導体層のキャリアを空乏化する電界を印加し、前記半導体層での光反射率、光吸収率の少なくとも一方を直接変化させることで、入射光に対して光変調する光変調素子であって、前記半導体のバンドギャップエネルギE g が、変調される光の波長をλ 0 、真空中の光速をc、プランク定数をhとしたとき、 E g >hc/λ 0 [eV]であることを特徴としている。
【0007】
この光変調素子では、上部透明電極と下部透明電極との間に、半導体層のキャリアを空乏化する電界を印加し、半導体層での光の吸収率、反射率の少なくとも一方を直接低下させる。従って、電界が印加されたときは光変調素子は入射光を透過させ、電界が印加されていないときは入射光を吸収又は反射させて透過させない光変調特性を呈することになる。また、この光変調素子では、変調される光の波長λ 0 は、光の吸収端波長λ g より長波長となる。従って、吸収率が常に高くなるバンドギャップによる吸収端波長以下の領域は使用されることなく、安定した光変調を行うことができる。
【0010】
請求項2の光変調素子は、前記半導体のバンドギャップエネルギEgは、2[eV]以上であることを特徴としている。
【0011】
この光変調素子では、半導体のバンドギャップエネルギEgを2[eV]とすることにより、可視光から赤外光までの光を安定して変調することができる。
【0012】
請求項3の光変調素子は、前記変調される光の波長λ0は、前記半導体層のプラズマ波長λpより小さいことを特徴としている。
【0013】
この光変調素子では、変調される光の波長λ0が無電界時の半導体層のプラズマ波長λpよりも短波長のとき、反射率は低くなるが半導体層の自由キャリア吸収等による吸収率が大きくなり光透過性が低くなる。また、電界印加することで半導体層を空乏化してキャリア濃度を低下させると、吸収率が小さくなり、光透過率が高くなる。これにより光透過率を変化させることができる。
【0014】
請求項4の光変調素子は、前記変調される光の波長λ0は、前記半導体層のプラズマ波長λpより大きいことを特徴としている。
【0015】
この光変調素子では、変調される光の波長λ0が無電界時の半導体層のプラズマ波長λpよりも長波長のとき、反射率は高く光透過率が低くなる。電界印加することで半導体層を空乏化させキャリア濃度を低下させると、反射率は低くなり光透過性が高くなる。これにより、光透過率を変化させることができる。
【0016】
請求項5の光変調素子は、前記空乏化された層の厚みが、半導体層の厚みに略等しくなるように逆バイアス電圧を印加することを特徴としている。
【0017】
この光変調素子では、半導体層内の空乏層を該半導体層の略全体に亘って生成することで、半導体層内で空乏層の占める割合が増大し、光変調効果を略最大限に発揮することができる。
【0018】
請求項6の光変調素子は、前記下部透明電極の上面に、前記半導体層と絶縁層からなる光変調層を複数段積層し、最上層の光変調層の上面に前記上部透明電極を設けたことを特徴としている。
【0019】
この光変調素子では、電極間に電圧を印加したときに複数層の半導体層にそれぞれ空乏層が生成するため空乏層領域が拡大し、光変調能力がより向上する。
【0020】
請求項7の光変調素子は、前記上部及び下部透明電極の間に少なくとも1層の中間透明電極を設け、前記各電極間に前記光変調層を介装すると共に、前記半導体層が接続された前記中間透明電極と絶縁層に接する中間透明電極との間に該半導体層のキャリアを空乏化する電界を印加することを特徴としている。
【0021】
この光変調素子では、各半導体層の空乏層化がより確実になると共に、各半導体層の空乏化を層内の全領域においてより均一化される。
【0022】
請求項8の光変調素子は、前記半導体層はn型半導体層であることを特徴としている。
【0023】
この光変調素子では、n型半導体層のキャリア、即ち電子の空乏化、注入による光変調が可能となる。
【0024】
請求項9の光変調素子は、前記上部及び下部透明電極の間に、不純物を高濃度に拡散したp型半導体層を少なくとも1層設けたことを特徴としている。
【0025】
この光変調素子では、電圧印加で移動するn型半導体層の電子キャリアは、p型半導体層の界面で再結合する。従って、n型半導体層を全体的に空乏化することができる。
【0026】
請求項10の露光素子は、請求項1〜請求項9のいずれか1項記載の光変調素子を一次元又は二次元に配列して形成したことを特徴としている。
【0027】
この露光装置では、前記光変調素子を一次元又は二次元に配列して形成することで露光装置として機能させることができる。
【0028】
請求項11の表示装置は、請求項1〜請求項9のいずれか1項記載の光変調素子を一次元又は二次元に配列して形成すると共に、該配列された光変調素子に対向して平面光源を設けたことを特徴としている。
【0029】
この表示装置では、前記光変調素子を一次元又は二次元に配列して形成すると共に、該配列された光変調素子に対向して平面光源を設けることで、表示装置として機能させることができる。
【0030】
【発明の実施の形態】
最初に、本発明の光変調素子の動作原理を説明する。
一般に、金属、半金属、高濃度不純物半導体等の自由電子が豊富な材料は、そのプラズマ波長より長い波長の入射光を反射する性質がある。これはプラズマ反射と呼ばれている。上記プラズマ波長は、下記の(2)式により、プラズマ周波数として算出される。
【数1】
【0031】
(1)、(2)式において、ωp はプラズマ周波数、Nはキャリア濃度、eは電子の電荷、ε0 は真空の誘電率、ε0pは光学的誘電率、m0pは電子の光学的有効質量、λp はプラズマ波長を示す。
上式からは、キャリア濃度Nを変化させると、プラズマ波長λp も変化することが理解される。即ち、キャリア濃度Nを高くすると、プラズマ波長λp は短波長側にシフトし、これとは逆に、キャリア濃度Nを低くすると、プラズマ波長λp は長波長側にシフトする。
【0032】
図1(a)は、上記の材料において、キャリア濃度を高く設定した場合と低く設定した場合における入射光の波長λと反射率との関係を示すグラフである。
図1(a)において、波長λ0 の入射光に対しては、前述のプラズマ波長λp の性質により、キャリア濃度を高く設定した場合は反射率が高くなり、入射光は材料表面で反射する。一方、キャリア濃度を低く設定した場合は反射率が低くなり、入射光は材料内に導入することになる。
【0033】
また、図1(b)は、半導体材料における入射光の波長λと吸収率との関係を示すグラフである。従来の半導体光変調器においては、バンドギャップによる吸収端波長λg前後で光の吸収率が変化する領域を用いて光変調を行っているが、本発明は、赤外光から可視光域の波長で光変調を行う点を特徴としている。
一般に、半導体のバンドギャップエネルギをEg[eV]、真空中の光速をc[m/s]、プランク定数をh[Js]としたとき、光の吸収端波長λg[m]は、
【0034】
【数2】
で表される。本実施形態においては、変調される光の波長λ0はλgより長波長となるため、半導体材料としては(4)式の条件を満たす半導体が好ましい。
【数3】
【0035】
変調する光を可視光から赤外光とする場合は、半導体のバンドギャップエネルギEgが2[eV]以上であることが好ましく、このような半導体材料の好適な具体例としては、C、ZnO、SiC、CdS、GaP、AlAs、InN、AlN等が挙げられる。
図1(b)において、波長λ0 の入射光に対しては、キャリア濃度を高く設定した場合は吸収率が高くなり、材料内に導入された入射光は吸収され透過しない。一方、キャリア濃度を低く設定した場合は吸収率が低くなり、導入された入射光は殆ど吸収されずに透過する。
【0036】
上記の材料特性により、材料に電圧を印加してキャリア濃度を変化させることで、所定の入射光、即ち波長λ0 の入射光に対して、光の透過又は非透過(反射・吸収)の光変調を行うことができる。
【0037】
ただし、前記反射率による光変調と透過率による光変調との組み合わせを考慮すると、電子を空乏化させ光の反射率を低くしたときには、入射光を材料内で吸収することなく透過させるため透過率も低くする必要がある。そこで、図2及び図3に示すように、入射光の波長に対する反射率と吸収率との特性を組み合わせて考える。
【0038】
まず、変調される光の波長λ0が無電界時のn型半導体層のプラズマ波長λpよりも短波長である場合は、反射率はキャリア濃度の大小によらずに低くなり、吸収率変化を支配的とした光変調となる。電界非印加時には半導体層の自由キャリア吸収等による吸収率が大きくなり、光透過性が低くなる。また、電界印加時には、n型半導体層が空乏化しキャリア濃度が低下して吸収率が小さくなり、光透過率が高くなる。これにより反射されることなく材料内に導入された入射光は、材料内の光透過率の変化により光変調される。
尚、十分な透過率変化を得るためには、半導体層の厚み、キャリア濃度、変化させる空乏領域の幅と適宜選択すれば良い。特に、無電界時の吸収率向上のためにはキャリア濃度に応じて半導体層を十分厚くすることが好ましい。
【0039】
次に、変調される光の波長λ0が無電界時のn型半導体層のプラズマ波長λpよりも長波長の場合は、反射率変化を支配的とした光変調となる。電界を印加しない時は半導体層のキャリア濃度が高い状態となり反射率が高くなる。また、電界印加時は、n型半導体層が空乏化しキャリア濃度の低下して反射率が小さくなる。反射率が小さいときの吸収率は、半導体層を薄くすることで吸収率の増加を抑制している。これにより入射光は材料表面で反射率の変化により光変調される。尚、十分な透過率変化を得るためには、半導体の厚み、キャリア濃度、変化させる空乏領域の幅を適宜選択すれば良い。特に、空乏化時の透過率向上のためにはキャリア濃度の応じて半導体層を十分薄くすることが好ましい。
【0040】
本発明は、上記の原理をキャリア濃度の制御が容易であるMOS型半導体構造に代表されるような透明電極、絶縁体、n型半導体を順次積層した構造に対して適用し、この積層構造体を光学的な変調素子として直接的に機能させる構成としたことに大きな特徴を有している。
この積層型構造体によれば、透明電極及び絶縁体が対象とする光に透明であり、n型半導体層の電子キャリア濃度のみが透過率の変化を与え、単純な構造で安定な光変調が可能となる。
尚、n型半導体の具体的な不純物濃度としては、1018〜1022[cm-3]が好ましい。
【0041】
以下、本発明の各実施形態を図面を参照して説明する。
図4は、本発明の第1の実施形態に係る光変調素子の断面構造を示す図である。
本実施形態に係る光変調素子は、図4(a)において、透明基板1の上面に下部透明電極2を形成し、該下部透明電極2の上面に不純物ドープした半導体としてn型半導体層3を形成し、該n型半導体5の上面に絶縁層4を配し、且つ該絶縁層の上面に上部透明電極5を形成してなるMIS型半導体の構造を有する。以降、n型半導体層3と絶縁層4の組を光変調層aと称することにする。
【0042】
図4(a)の状態においては、n型半導体層3内はドナー不純物イオンと電子がそれぞれ均一に分散されており、キャリア濃度の低下がない状態となっている。光の波長λ0が半導体のプラズマ波長λpよりも長い場合は、入射光は主に表面で反射され、プラズマ波長λpよりも短い場合は主に吸収が大きくなる。その結果、入射光は透明基板1の下方には出射されない。
【0043】
一方、図4(b)は、図2(a)の光変調素子の透明電極2,5に逆バイアスの電圧を印加した様子を示している。即ち、下部透明電極2側に対して上部透明電極に−Vの負電位を印加している。これにより、n型半導体層3内の電子キャリアが下部透明電極2に移動して、電子キャリアが欠乏した空乏層が生じる。このため、半導体層3のプラズマ波長λpが長波長側にシフトし、半導体層3の表面反射率、又は半導体層3内の吸収率が低下して光透過率が高くなり、上方から導入された入射光は、n型半導体層3を透過して透明基板1の下方から出射される。 尚、図4(b)においては、空乏層の厚みxdを短縮して描いているが、実際にはn型半導体層3の厚みと略等しくなるように設定することができ、この場合は、n型半導体層3全体が空乏化され、光変調特性が向上する。
また、n型半導体層3が完全に空乏化されなくても、吸収率は低下する。また、非空乏化領域(n型領域)が非常に薄いときは、表面での反射も低下する。従って、光透過率の制御が可能となる。
【0044】
このときn型半導体層3に生じる空乏層の厚みxd は(5)式に示す関係で表される。
【数4】
(5)式において、εsは空乏層の誘電率、Vsは空乏層の電位差、Ndはn型半導体層の不純物濃度である。印加する電圧を高くすると空乏層の電位差Vsは高くなり、空乏層幅xdが広がる。この特性は、絶縁体と半導体の界面において反転状態、即ち界面に正孔キャリアが注入されるまで得られる。
このとき、空乏層幅xdが、n型半導体層の厚み程度に広がるように電圧を印加すると、n型半導体層は殆どが空乏化され、電子キャリアが空間的に存在しなくなるので入射光の透過率はさらに高くなる。
【0045】
上記の空乏層の発生又は消滅によって生じるキャリア濃度の変化は、例えばコンデンサにおけるチャージ/ディスチャージに類似した現象と考えて良い。
また、上部透明電極5の上部に透明基板を配置した構成としても良い。これにより、光変調素子を透明基板間に封入することができ、取扱いを容易にすることができる。
【0046】
ここにおいて、上記光変調層aは、各層に接続される電極の極性をそのままとし全体を上下逆転させた構成、即ち、下部透明電極2の上面に絶縁層4、n型半導体層3の順で積層した構成としても良い。
【0047】
尚、上部及び下部透明電極、並びに後述する中間透明電極は、一般的には微粒子化により透明になされた金属或いは導電性を有する金属化合物で構成される。または、これらの金属の非常に薄い半透明な膜で構成することも可能である。この金属としては、金、銀、パラジウム、亜鉛、アルミニウム等を用いることができ、金属化合物としては、酸化インジウム、酸化亜鉛、アルミニウム添加酸化亜鉛(通称;AZO)等を用いることができる。具体的には、SnO2膜(ネサ膜)、ITO膜等を挙げることができる。
【0048】
上記のような透明電極上に半導体を形成する場合は、半導体は非晶質、又は多結晶となる。この場合、透明電極も一般のアモルファス系ガラス基板が使用できる。
また、下部透明電極を省略し、n型半導体層の下部面を電極としても良い。
【0049】
また、透明基板にサファイア等の絶縁体、或いは、光変調層と同類又は格子定数の近い半導体基板を使用しても良い。さらにこの場合、透明電極と透明基板を兼用しても良い。上記基板によれば、電極、光変調層に結晶半導体をエピタピシャル形成することが可能であり、より安定した動作が得られる。
具体的な一例としては、正極の基板側透明電極としてp型の高濃度不純物半導体をエピタピシャル成長させる。その上にn型の半導体層をエピタピシャル成長、又はn型不純物の拡散、或いはイオン注入により形成する。そして、n型半導体層の上に、絶縁層を形成する。最後に負極の上部透明電極として金属化合物系の透明電極を形成する。
絶縁層としては、酸化膜、窒化膜等を使用することができる。また、強誘電体等のセラミックも使用可能である。
この他、各種の材料、形成方法等が考えられるが、本発明の主旨に添うものであれば何れであっても良い。
【0050】
次に、本発明の第2実施形態を図5を参照して説明する。図5は、本実施形態に係る積層型光変調素子の断面構造を示す図である。
光変調素子は、透明基板1の上面に下部透明電極2を形成し、該下部透明電極2の上面にn型半導体層3と絶縁層4からなる光変調層a1〜amを積層し、その最上層amの絶縁層4の上面に上部透明電極5を形成している。
上記光変調層の積層数を、本実施形態では合計5層としているが、一般には任意の層数を積層することが可能である。
上記構成の積層型光変調素子に対し、下部透明電極2と上部透明電極5との間に逆バイアスの電圧(−V)を印加すると、各光変調層aはそれぞれ分極化され、各n型半導体層内には図4(b)に示すように空乏層が発生する。その結果、上方から導入された入射光は、反射率又は吸収率の低下により光変調層を透過して透明基板1から出射される。
【0051】
また、印加電圧を0[V]とすると、各半導体層の空乏層は無くなり、n型半導体層3の吸収率又は反射率が増加するため、上方から導入された入射光は透明基板1の下方からは出射されなくなる。尚、入射光の方向は逆方向であっても良い。
本実施形態によれば、光変調層を多層化することで、各光変調層を薄くでき、効率的に空乏化が可能となる。そのため低い印加電圧で素子全体の空乏層領域を長くすることができ、光変調能力をより向上させることができる。
【0052】
次に、本発明の第3実施形態を図6を参照して説明する。図6は、本実施形態に係る積層型光変調素子の断面構造を示す図である。
この光変調素子は、n型半導体層に接続される電極が全て電源の正極に接続され、絶縁層に接続される電極が全て電源の負極に接続される。従って、何れのn型半導体層も電圧印加によって電子キャリアが引き抜かれて空乏化される構成である。
この場合、電極は透明な金属化合物、又はp型半導体等でもよく、また、n型半導体層を電極として兼用することで電極を省略しても良い。
このような構成では、電圧印加によって入射光の反射率又は吸収率が低くなり、透過率が高くなる。
【0053】
次に、本発明の第4実施形態を図7を参照して説明する。図7は本実施形態に係る光変調素子の断面構造とその層間配線を示す図である。
この光変調素子は、n型半導体層3、絶縁層4、中間透明電極7の順で下部透明電極2上に複数段積層し、最上層の電極を上部透明電極5として構成し、各変調層aの電極間に電源(−V)が接続されている。従って、何れのn型半導体層も電圧印加によって電子キャリアが引き抜かれて空乏化される構成である。
このような構成により、第3実施形態と同様に電圧印加に応じて光変調を行うことができる。
【0054】
次に、本発明の第5実施形態を図8を参照して説明する。図8は本実施形態に係る光変調素子の断面構造とその層間配線を示す図である。
この光変調素子は、前記第4実施形態における中間透明電極の代わりに、不純物を高濃度に拡散させたp型半導体層8を設けている。p型半導体層8は電気伝導度が非常に高いため電極同様に作用し、層内が均一に導電される。そして、下部透明電極2を電源の正極に接続し、上部透明電極5を電源の負極に接続している。
上記構成により、電圧印加で移動するn型半導体層の電子キャリアはp型半導体層8の界面で再結合する。従って、n型半導体層3を全体的に空乏化することが可能となる。
【0055】
このようにp型半導体層8を設けた構成とすることで、各n型半導体層3の空乏層化をより確実にすると共に、各n型半導体層3の空乏化を層内の全領域においてより均一化することができる。
【0056】
次に、本発明の第6実施形態を図9を参照して説明する。図9は光変調素子を一次元又は二次元に配列することで構成した光変調部90を示している。本実施形態では、該光変調部90の各光変調素子を駆動部91により一斉に、又は所定数のブロック毎に、若しくはそれぞれ独立に駆動制御可能にしている。これにより、光変調素子を一次元又は二次元の光変調が可能な露光素子92として機能させることができる。
【0057】
また、各光変調素子をブロック毎、又は独立して駆動制御する方式にあっては、面積階調により多階調表示を行うことが可能となる。
さらに、光変調素子を二次元に配列した場合の駆動部91の駆動方式としては、単純マトリクス駆動としてもアクティブマトリクス駆動としても良い。単純マトリクス駆動の場合は構成を簡単にすることができ、アクティブマトリクス駆動の場合は大きなコントラスト比を得ることができる。
【0058】
上記構成によれば、一次元又は二次元に配列された光変調素子の反射率及び吸収率を電圧の印加状態に応じて設定することができ、高速動作可能な露光素子を簡単な構成で提供することができる。
【0059】
次に、本発明の第7実施形態を図10を参照して説明する。図10は第6実施形態における露光素子92の構成に、平面光源93を対向配置させた表示装置94の構成を示している。
本実施形態における表示装置94は、前記露光素子92の光変調部90に対向して平面光源93を配設し、該平面光源93からの光を一次元又は二次元配列された光変調部90を介して表示させるものである。尚、光変調部90が一次元配列として形成されている場合は、平面光源93は線光源であっても良い。
【0060】
平面光源93は、光源となる例えば赤外線源93aと導光板93bから構成される。赤外線源93aからの光は導光板93bの表面へ導かれ、導光板93aから面放射される光は露光素子90に入射される。そして、各露光素子の電極間電圧の印加状態に応じて、選択的に光が光変調部を透過又は非透過(反射・吸収)状態となることで任意のパターンを表示することができる。
以上説明したように、複数の光変調素子を結合した光変調部により露光素子を形成し、この露光素子の片側に平面光源を配することで表示装置として機能させることができる。
【0061】
表示装置とした場合は、各光変調素子に導入する光を白色光源からの光とし、電極間電圧を適宜調整することで、任意の波長成分の光のみを選択的に透過させる構成としても良い。これにより、簡単な構成で高速なカラー表示が可能となる。
また、特定波長の光を導入し、電極間電圧のレベル調整又は電圧印加をデューティ制御することで、半導体層内の空乏層厚み又は単位時間当たりの光の透過量を変化させ、多階調制御を行うことも可能である。
【0062】
以上説明した各実施形態では、電圧無印加時で光透過率が低くなり、逆バイアスの電圧を印加すると光透過率が高くなるという制御であるが、順バイアスの電圧を印加して空乏層幅をより狭くし、さらにキャリアを注入して光透過率を低くすることも可能である。
また、前記各実施形態では、入射光を光変調素子内で透過・非透過(反射・吸収)させることで光透過率の変化により光変調する場合を説明したが、入射光を光変調素子表面で反射させることで光反射率の変化により光変調する素子であってもよく、これにより反射光の変化を利用した素子システムを組むことも可能である。
以上説明した各実施形態においては、主にn型半導体層のキャリア制御による光変調であるが、p型半導体層のキャリア、即ち正孔の空乏化、注入による光変調も可能である。
【0063】
【発明の効果】
本発明の光変調素子及び露光素子及び表示装置によれば、半導体のキャリア濃度変化に応じた反射率変化及び吸収率変化を利用しているため、低い動作電圧で安定して光変調を行うことができ、液晶と比較してより高速な動作が可能となる。また、変調される光の波長λ 0 が、光の吸収端波長λ g より長波長であるため、吸収率が常に高くなるバンドギャップによる吸収端波長以下の領域は使用されることなく、安定した光変調を行うことができる。そして、面型光変調が可能であるため、均一な光変調を簡便にして実現することができ、さらに、構造が単純であるため、量産に適した安価な製品として提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】キャリア濃度の高低に対する入射光の波長λと反射率及び吸収率との関係を示すグラフである。
【図2】n型半導体層のプラズマ波長に対して変調される光の波長が短波長である場合のキャリア濃度の高低に対する反射率及び吸収率との関係を示すグラフである。
【図3】n型半導体層のプラズマ波長に対して変調される光の波長が長波長である場合のキャリア濃度の高低に対する反射率及び吸収率との関係を示すグラフである。
【図4】本発明の実施形態に係る光変調素子の動作原理を説明する図である。
【図5】本発明の第2実施形態に係る積層型光変調素子の断面構造とその層間配線を示す図である。
【図6】本発明の第3実施形態に係る光変調素子の断面構造とその層間配線を示す図である。
【図7】本発明の第4実施形態に係る光変調素子の断面構造とその層間配線を示す図である。
【図8】本発明の第5実施形態に係る光変調素子の断面構造とその層間配線を示す図である。
【図9】本発明の第6実施形態に係る露光素子の構成を示す図である。
【図10】本発明の第7実施形態に係る表示装置の構成を示す図である。
【図11】従来の光の変調装置の一実施形態を示す図である。
【符号の説明】
1 透明基板
2 下部透明電極
3 n型半導体層
4 絶縁層
5 上部透明電極
7 中間透明電極
90 光変調部
92 露光素子
93 平面光源
94 表示装置
a 光変調層
Claims (11)
- 下部透明電極の上面に半導体層を設けると共に、該半導体層の上面に絶縁層を介して上部透明電極を設け、前記上部透明電極と下部透明電極との間に前記半導体層のキャリアを空乏化する電界を印加し、前記半導体層での光反射率、光吸収率の少なくとも一方を直接変化させることで、入射光に対して光変調する光変調素子であって、
前記半導体のバンドギャップエネルギE g が、変調される光の波長をλ 0 、真空中の光速をc、プランク定数をhとしたとき、
E g >hc/λ 0 [eV]
であることを特徴とする光変調素子。 - 前記半導体のバンドギャップエネルギE g は、2[eV]以上であることを特徴とする請求項1記載の光変調素子。
- 前記変調される光の波長λ 0 は、前記半導体層のプラズマ波長λ p より小さいことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の光変調素子。
- 前記変調される光の波長λ 0 は、前記半導体層のプラズマ波長λ p より大きいことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の光変調素子。
- 前記空乏化された層の厚みが、前記半導体層の厚みに略等しくなるように逆バイアス電圧を印加することを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項記載の光変調素子。
- 前記下部透明電極の上面に、前記半導体層と絶縁層からなる光変調層を複数段積層し、最上層の光変調層の上面に前記上部透明電極を設けたことを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか1項記載の光変調素子。
- 前記上部及び下部透明電極の間に少なくとも1層の中間透明電極を設け、前記各電極間に前記光変調層を介装すると共に、前記半導体層に接続された中間透明電極と絶縁層に接する中間透明電極との間に、該半導体層のキャリアを空乏化する電界を印加することを特徴とする請求項6記載の光変調素子。
- 前記半導体層はn型半導体層であることを特徴とする請求項1〜請求項7記載のいずれか1項記載の光変調素子。
- 前記上部及び下部透明電極の間に、不純物を高濃度に拡散したp型半導体層を少なくとも1層設けたことを特徴とする請求項6又は請求項7記載の光変調素子。
- 請求項1〜請求項9のいずれか1項記載の光変調素子を一次元又は二次元に配列して形成したことを特徴とする露光素子。
- 請求項1〜請求項9のいずれか1項記載の光変調素子を一次元又は二次元に配列して形成すると共に、該配列された光変調素子に対向して平面光源を設けたことを特徴とする表示装置。
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