JP3820882B2 - 突起付き中空軸の製造方法 - Google Patents
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Description
本発明は、突起付き中空軸の製造方法に関し、例えば、4サイクルレシプロエンジンの吸気弁および排気弁を開閉するためのカム部材が取り付けられたカムシャフトのような突起付き中空軸の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、例えば、4サイクルレシプロエンジンの吸気弁および排気弁を駆動させるためのカムを有する回転軸であるカムシャフトは、中実材料を鋳造や鍛造にて粗形状に加工した後、機械加工により最終形状に仕上げられていた。しかし、上記のような加工方法にて製造されたカムシャフトは、中実材であるために重量が重いという問題があった。
【0003】
軽量化を図るために、耐摩耗性が要求されるカムを焼結合金により中空の部材として製造するとともに、回転軸を中空軸として製造し、これらを溶接、ろう付けまたは機械的固定により一体化して組み立てカムシャフトを製造する技術が開発された。しかし、溶接またはろう付けをおこなうには、カム部材および回転軸それぞれの材質が制限され、最適な材料を用いることができない。また、機械的固定は、その固定操作をカム部材の設置数だけ繰り返しおこなう必要があり、生産性が低いという問題があった。
【0004】
さらなる軽量化と高能率化を図るために、カム部をも金属素管より成形するようにした突起付き中空軸の製造方法および製造装置が、特開昭57−206530号公報、特開2000−192805号公報および特開2000−210726号公報に提案されている。
【0005】
すなわち、特開昭57−206530号公報に示される方法は、内面に所望形状の突起部の外形に対応する凹溝を切設したダイス型内に金属素管を収容し、この金属素管に液圧と軸圧縮によるバルジ加工を施すことにより、突起付き中空軸を成形する方法である。しかし、そこに示される方法は、バルジ加工による膨出加工のみにて突起部を形成する方法であるため、突起部の減肉が大きく、十分な製品強度が得難いのに加え、次の欠点を有している。
【0006】
すなわち、金属素管の肉厚をt0 、突起部先端の軸方向角部外面の曲率半径をR(後述する図4(c)参照)とした時、Rがt0 (いずれも、単位はmm)と同等の突起部を成形しようとした場合、Rに対応する内面角部の曲率半径がゼロとなり、係る形状の突起部を膨出加工のみで成形するには、理論上、無限大の大きさの内圧付与が必要になる。このため、R/t0 が1以下の突起付き中空軸は製造することができない。
【0007】
ここで、前記の曲率半径Rが小さい方がよいのは次の理由による。すなわち、突起部には、その先端に所定幅のフラット面を有することが要求されるが、Rが大きいとフラット面が狭くなるためである。なお、Rが大きくても、突起部全体の幅を大きくすれば所定幅のフラット面を確保することは可能である。しかし、このような中空軸は、例えば、エンジンなどの装置全体の小型化を阻害し、装置の軽量化の障害となる。
【0008】
特開2000−192805号公報に示される方法は、金属素管の一部を縮径加工した後に、膨出成形することにより突起付き中空軸を成形する方法である。しかし、この方法は、金属素管の縮径加工という別工程が必要である他、金属素管の内面に疵があった場合、縮径加工により疵が大きくなるおそれがあるので、素管内面を平滑に仕上げる必要があり、製造コストがかかるという欠点を有している。
【0009】
特開2000−210726号公報に示される方法は、軸方向に複数に分割され、所定の距離だけ離間させた状態でセットされた分割金型内に収容した金属素管に膨出加工を施した後、分割型を軸方向に型寄せして膨出部に軸圧縮を付加することにより、突起部の減肉を抑制しながら突起付き中空軸を成形する方法である。しかし、そこには、型寄せによる突起部の減肉抑制効果については記述されているものの、突起部先端の軸方向角部外面の曲率半径Rはできるだけ小さい方がよいことは勿論、Rを小さくすることは全く考慮されていない。
【0010】
本発明は、上述の事情に基づいてなされたもので、その目的とするところは、突起部先端の軸方向角部外面の曲率半径Rが金属素管の肉厚以下の突起部と軸部が一体型の突起付き中空軸を小さな成形内圧で内面疵を発生させることなく高能率に製造することが可能な突起付き中空軸の製造方法を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記の課題を達成するために、金属素管、具体的にはJIS G4051、同G 4052および同G 4805に規定される機械構造用炭素鋼とその相当鋼、焼入れ性を保証した構造用鋼とその相当鋼、および高炭素クロム軸受鋼とその相当鋼などからなる鋼管のバルジ加工について鋭意検討を重ねた。その結果、以下の知見(a)〜(c)を得た。
(a)小さな付与内圧で先端の軸方向角部外面の曲率半径Rが小さな突起部を成形するためには、第1工程のバルジ加工後の膨出部の軸方向外面線長をL1 (mm)、第2工程の型寄せバルジ加工後の突起部の軸方向外面線長をL2 (mm)とした場合、第1工程のバルジ加工においてL1 がL2 よりも大きい膨出部を形成させるのが有効である。
(b)また、第1工程のバルジ加工後の膨出部の軸方向中央位置における外周長をd1 (mm)、第2工程の型寄せバルジ加工後の突起部の軸方向中央位置における外周長をd2 (mm)とした場合、両者の比(d1/d2)と前記L1 とL2 との比(L1/L2)が、第2工程の型寄せバルジ加工時における曲率半径Rの大きさを左右する重要なパラメータとなっている。
(c)突起部の減肉は、第2工程の型寄せバルジ加工時のアプセット効果により抑制される。
【0012】
そこで、前記の比(d1/d2)と(L1 /L2 )に着目して、数多くの実験をおこなった。その結果、成形目標とする突起部先端の軸方向角部外面の曲率半径をR(mm)とした時、下式を満たす条件で第1工程のバルジ加工と第2工程の型寄せバルジ加工をおこなうと、小さな付与内圧にて突起部先端の軸方向角部外面の曲率半径Rが金属素管の肉厚t0 (mm)以下となり、しかも内面疵がない突起付き中空軸を製造可能なことが判明した。
【0013】
上記の知見に基づいて完成させた本発明の要旨は、下記の突起付き中空軸の製造方法にある。
金属素管の外形を所定の形状に成形する突起部成形用可動型と、この突起部成形用可動型に隣接する軸部成形用可動型とに分割されるとともに、各型間に所定の間隔が存在するようにセットされた金型内に金属素管を収容し、この金属素管の内部に液圧を付与して軸部成形用可動型と突起成形用可動型にて画成される空間部に金属素管の一部を膨出させる第1工程のバルジ加工、この第1工程のバルジ加工後、金属素管の内部に液圧を付与しながら軸部成形用可動型と突起成形用可動型と間の間隔を狭めて前記膨出部を所定の突起部形状に成形する第2工程の型寄せバルジ加工をおこなう突起付き中空軸の製造方法であって、第2工程の型寄せバルジ加工後における突起部先端の軸方向角部外面の目標曲率半径をR(mm)とした時、下式を満たす条件で第1工程のバルジ加工と第2工程の型寄せバルジ加工をおこなうことを特徴とする突起付き中空軸の製造方法。
1.2−0.2×(R/t0)≦(d1/d2)×(L1/L2)≦1.4
ただし、
t0 :金属素管の肉厚(mm)、
d1 :第1工程後の膨出部の軸方向中央位置における外周長(mm)、
d2 :第2工程後の突起部の軸方向中央位置における外周長(mm)、
L1 :第1工程後の膨出部の軸方向外面線長(mm)、
L2 :第2工程後の突起部の軸方向外面線長(mm)。
上記(2)の本発明の方法においては、第1工程のバルジ加工時または/および第1工程の型寄せバルジ加工時、金属素管に軸方向の圧縮力を付与するようにしてもよい。
【0014】
1.2−0.2×(R/t0)≦(d1/d2)×(L1/L2)≦1.4
ただし、
t0 :金属素管の肉厚(mm)、
d1 :第1工程後の膨出部の軸方向中央位置における外周長(mm)、
d2 :第2工程後の突起部の軸方向中央位置における外周長(mm)、
L1 :第1工程後の膨出部の軸方向外面線長(mm)、
L2 :第2工程後の突起部の軸方向外面線長(mm)。
【0015】
上記(2)の本発明の方法においては、第1工程のバルジ加工時または/および第1工程の型寄せバルジ加工時、金属素管に軸方向の圧縮力を付与するようにしてもよい。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の方法について、その一実施形態を示す添付図面を参照して詳細に説明する。なお、以降の実施形態の説明では、突起付き中空軸の突起部1個の成形を対象にして説明をおこなう。
【0017】
図1は、本発明の方法に用いる金型であるバルジ加工型1と、このバルジ加工型1内に収容されたバルジ加工前の金属素管Aを示す模式的縦断面図である。
【0018】
また、図2は、第1工程のバルジ加工後の状態を示す模式的縦断面図であり、図3は第2工程の型寄せバルジ加工後の状態を示す模式的縦断面図である。
【0019】
さらに、図4は、金属素管A、膨出加工品Bおよび突起付き中空軸Cの縦断面と軸方向中央位置における横断面を示す模式図で、同図(a)は金属素管Aの断面図、同図(b)は膨出加工品Bの断面図、同図(c)は突起付き中空軸Cの断面図である。
【0020】
ここで、金属素管Aとしては、前述したJIS G 4051、同G 4052および同G 4805に規定される機械構造用炭素鋼とその相当鋼、焼入れ性を保証した構造用鋼とその相当鋼、および高炭素クロム軸受鋼とその相当鋼などからなる鋼管に限らず、前記以外のFe基合金管やNi基合金管、さらにはアルミニウムとその合金に代表される非鉄管や非鉄合金管などを挙げることができる。
【0021】
図1〜図3に示すように、本実施形態では、上型2と下型3とに分割されたバルジ加工型1を用いる。このバルジ加工型1を構成する上型2と下型3の内面には、それぞれ、製造すべき突起付き中空軸Cの目標外形形状と同じ形状の孔型が刻設されている。
【0022】
そして、上型2と下型3は、いずれも、突起付き中空軸の軸部を形成する軸部成形用可動型2c、2eおよび3c、3eと、突起付き中空軸の突起部を所定の外形形状に成形する突起部成形用可動型2dおよび3dと、金属素管Aの両端部を所定の形状に成形する軸部成形用可動型2b、2fおよび3b、3fとに分割されている。
【0023】
また、突起部成形用可動型2dおよび3dと、軸部成形用可動型2b、2c、2e、2fおよび3b、3c、3e、3fは、それぞれ、取付け板2a、3aに対して、例えば、蟻溝機構等の適宜な手段により、図中の金属素管Aの軸方向に摺動可能なように装着されている。
【0024】
上記のように構成された上型2と下型3は、いずれも、バルジ加工時の内圧による分割力に耐えるために、上下から図示を省略したプレス機構により押さえられており、このプレス機構の上下動によって上型1と下型2のいずれか一方または両方が上下動し、これにより、金属素管Aの型内への搬入と、加工終了後の突起付き中空軸Cの型外への搬出とが行われる。
【0025】
さらに、上型2と下型3の間には、金属素管Aの両端部を気密保持し、バルジ加工時に図示しない油圧シリンダ等の適宜な押圧機構に接続されて金属素管Aの両端部より軸方向圧縮力を加える管端拘束治具7a、7bが配置されている。
【0026】
また更に、上型2と下型3の間には、突起部成形用可動型2dおよび3dと、軸部成形用可動型2b、2c、2e、2fおよび3b、3c、3e、3fとを、それぞれ、同時に、軸方向に移動させるとともに、必要に応じて所定の位置に固定支持する、例えば、油圧シリンダ等の適宜な押圧機構からなる型移動用治具8a、8bが配置されている。
【0027】
本発明の方法においては、上記のように構成された上型2と下型3とを、プレス機構を作動させて開き、突起付き中空軸の軸部を形成する軸部成形用可動型2c、2eおよび3c、3eとが、図1に示すように、それぞれ、突起部成形用可動型2dおよび3dに対して所定の間隔を隔てて初期セットされる。
【0028】
次いで、素材の金属素管Aをバルジ加工型1内に装入し、上型2と下型3とを閉じる。
【0029】
しかる後、本発明では、金属素管Aに、以下に述べる第1工程のバルジ加工と第2工程の型寄せバルジ加工をおこなう。
【0030】
すなわち、第1工程のバルジ加工では、突起部成形用可動型2dおよび3dと、軸部成形用可動型2b、2c、2e、2fおよび3b、3c、3e、3fの位置を、型移動用治具8a、8bによって図1に示す状態に固定保持する。
【0031】
そして、金属素管Aの内部に、管端拘束治具7a、7bの軸心に設けられた管路7c、7dから高圧のバルジ加工用液体を注入しつつ管端拘束治具7a、7bにより両側より軸方向圧縮力を加えて金属素管Aを拡管膨出変形させ、図2に示すような膨出加工品Bの成形をおこなう。
【0032】
その際、管端拘束治具7aまたは7bのみにて片側よりの軸方向圧縮力を加えた場合でも金属素管Aの拡管膨出変形は可能である。また、使用する金属素管Aの変形能が高い場合や拡管膨出加工量が小さな場合には、管端拘束治具7a、7bによる軸方向圧縮力はおこなわず、内圧付与のみにて金属素管Aを膨出加工品Bに加工することも可能である。
【0033】
次いで、第2工程の型寄せバルジ加工では、型移動用治具8a、8bを作動させ、軸部成形用可動型2b、2c、2e、2fおよび3b、3c、3e、3fを、それぞれ、突起部成形用可動型2dおよび3dに向けて両側より移動させながら、管端拘束治具7a、7bの軸心に設けられた管路7c、7dからの高圧バルジ加工用液体の注入および軸方向圧縮力付与を継続しておこない、膨出加工品Bをさらに拡管膨出変形させ、図3に示す状態になった時点で、型寄せバルジ加工を終了する。
【0034】
具体的には、突起部成形用可動型2dおよび3dに対して軸部成形用可動型2c、2eおよび3c、3eが当接し、かつこの突起部成形用可動型2dおよび3dに対して軸部成形用可動型2c、2eおよび3c、3eが当接して一体となったバルジ加工型1の孔型内面に、突起付き中空軸Cの突起部が充満した時点でバルジ加工を終了する。
【0035】
その際、管端拘束治具7a、7bによる軸方向圧縮力の付与は、第1工程のバルジ加工の場合と同様に、いずれか一方のみにて付与するようにしてもよいし、使用する金属素管Aの変形能が高い場合や拡管膨出加工量が小さな場合には省略し、単に金型の移動に追従移動させるようにしてもよい。
【0036】
また、金型の移動は、型移動用治具8aまたは8bのみを作動させ、軸部成形用可動型2b、2cおよび3b、3c、突起部成形用可動型2dおよび3dを、それぞれ、軸部成形用可動型2e、2fおよび3e、3fに向けて片側のみより移動させながら型寄せバルジ加工することも可能である。したがって、金型の分割態様は、図1〜図3に示す分割態様に代えて、例えば、突起部成形用可動型2dおよび3dを、軸部成形用可動型2eおよび3e、または2fおよび3fのいずれか一方と一体にした分割金型であってもよい。
【0037】
上記のように、金属素管Aに対するバルジ加工を2工程に分けておこなう場合には、第1工程のバルジ加工において成形される突起付き中空軸の突起部に対応する膨出部の金属素管軸方向の拡管膨出領域が、上下に分割されただけの従来のバルジ加工型を用いる場合に比べて長くなる。また、金属素管Aに付与する内圧が同じ場合、その膨出量と材料体積も大きくなる。
【0038】
そして、この管軸方向に長く、かつ膨出量と材料体積が大きくなった膨出加工品Bの拡管膨出領域は、第2工程の型寄せバルジ加工における軸部成形用可動型2c、3cおよび2e、3eの移動に伴い、その両側部分に管軸方向の曲げ加工を受けながら拡管膨出変形し、型相互が接触して一体となったバルジ加工型1の突起部成形用可動型2dおよび3dの内周面に突起付き中空軸Cの突起部が充満した時点でバルジ加工を終了する。
【0039】
このように、第1工程のバルジ加工で成形された膨出加工品Bの膨出部を、第2工程の型寄せバルジ加工時により、管軸方向の曲げを付与しながら、さらに拡管膨出変形させる場合には、拡管膨出変形が円滑に進行し、膨出加工品Bに破断が生じることがない。このため、偏心量が大きい突起部を有する突起付き中空軸Cでも成形可能となる。
【0040】
また、第2工程の型寄せバルジ加工時、膨出加工品Bの内部に付与する内圧は、突起部の外形形状や第1工程のバルジ加工後の膨出加工品Bの拡管膨出部の張出し形状等により決定されるが、第2工程の型寄せバルジ加工においては付与する内圧が高ければ高いほど成形後の形状は良好になる。このため、第2工程の型寄せバルジ加工おいて膨出加工品Bの内部に付与する内圧はできるだけ高くするのがよい。
【0041】
第2工程の型寄せバルジ加工終了後、プレスを作動させて上型2と下型3を開き、バルジ加工された突起付き中空軸Cをバルジ加工型1外に搬出する。
【0042】
本発明の方法は上記のようにして突起付き中空軸Cを成形するのであるが、突起付き中空軸Cの突起部先端の軸方向角部外面の目標曲率半径R(図4(c)参照)が、金属素管Aの肉厚t0 (図4(a)参照)以下のものを成形するには、下式を満たす条件で第1工程のバルジ加工と第2工程の型寄せバルジ加工をおこなう必要がある。
【0043】
このことは、図4に示すように、金属素管Aの肉厚をt0 、外周長をd0 、膨出加工品Bの膨出部の軸方向中央位置における外周長をd1 、軸方向外面線長をL1 、および突起付き中空軸Cの突起部の軸方向中央位置における外周長をd2 、軸方向外面線長をL2 とした場合、実験結果の一例を示す図5、図6および後述する実施例の結果からも明らかである。
【0044】
すなわち、図5は、突起部の拡管率が30%、換言すれば、比(d0/d2)が0.77で、かつ比(R/t0 )が0.6の突起付き中空軸Cを成形する際、前記のd1 、L1 、d2 およびL2 がRに及ぼす影響を整理して示した図で、縦軸に比(d1/d2)、横軸に比(L1/L2)を採り、目標通りのRを有する突起部が成形でき場合を○印、成形できなかった場合を△印、第2工程の型寄せバルジ加工時に、膨出部の根元部分の幅が先端部分の幅よりも小さくなったり、先端面が凹んだりする挫屈が発生した場合を×印で示した図である。
【0045】
また、図6は、突起部の拡管率が10%、換言すれば、比(d0/d2)が0.91で、かつ比(R/t0 )が0.6の突起付き中空軸Cを成形する際における上記d1 、L1 、d2 およびL2 がRに及ぼす影響を整理して示した上記の図5と同様の図である。
【0046】
なお、比(d1/d2)は、d1=d0の時に下限値(d0/d2)、d1=d2の時に最大値1となり、(d0/d2)≦(d1/d2)≦1となる。
【0047】
図5および図6に示す結果からわかるように、「(d1/d2)×(L1/L2)<1.2−(R/t0 )×0.2」の条件では△印であり、目標とする曲率半径Rを有する突起部は成形できない。また、「(d1/d2)×(L1/L2)>1.4」の条件では×印であり、第2工程の型寄せバルジ加工時、膨出部に挫屈が発生する。
【0048】
これに対し、「1.2−(R/t0 )×0.2≦(d1/d2)×(L1/L2)≦1.4」の範囲の条件では○印であり、目標とする曲率半径Rを有する突起部が得られている。よって、本発明では、第1工程のバルジ加工と第2工程の型寄せバルジ加工を下式を満たす条件でおこなうことと定めた。
【0049】
1.2−(R/t0 )×0.2≦(d1/d2)×(L1/L2)≦1.4
なお、以上に説明した本発明の実施形態は、突起付き中空軸の突起部1個の成形に着目して説明をおこなったが、突起部が2以上の複数個の場合でも、上記に詳述した成形方法を適用することにより、全ての突起部の先端角部外面の曲率半径Rが金属素管の肉厚t0 以下と小さい突起付き中空軸を成形できることはいうまでもない。
【0050】
【実施例】
図1〜図3に示す実施形態により、図7に示す4個の突起部を有する突起付き中空軸を、表1に示す種々の条件のもとに成形し、目標通りの曲率半径Rを有する突起部が成形できたか否かを調べ、その結果を、成形に要した付与内圧とともに、表1に併記して示した。
【0051】
【表1】
表1に示す結果からわかるように、第1工程のバルジ加工と第2の型寄せバルジ加工とを本発明で規定する条件のもとにおこなった試番1〜6では、低い内圧付与で、目標通りの曲率半径Rを有する突起部を備えた突起付き中空軸が得られた。
【0052】
これに対し、「(d1/d2)×(L1/L2)」値が本発明で規定する下限値「1.2−(R/t0 )×0.2」未満の条件で第1工程のバルジ加工と第2の型寄せバルジ加工とをおこなった試番7と8では、試番1〜6よりも高い内圧を付与したにもかかわらず、いずれも、目標通りの曲率半径Rを有する突起部を備えた突起付き中空軸は得られなかった。
【0053】
また、「(d1/d2)×(L1/L2)」値が本発明で規定する上限値1.4を超える条件で第1工程のバルジ加工と第2の型寄せバルジ加工とをおこなった試番9と10では、いずれも、第2の型寄せバルジ加工時、膨出部に挫屈が発生し、所定形状の突起部を備えた目標通りの突起付き中空軸を成形することができなかった。
【0054】
【発明の効果】
本発明の方法によれば、軸方向角部外面の曲率半径が金属素管の肉厚以下と小さい突起部を有する突起部と軸部が同一材料からなる一体型の軽量な突起付き中空軸を、小さい内圧付与で、内面疵を発生させることなく、確実かつ高能率に製造可能である。また、その製品は、突起部先端の軸方向角部外面の曲率半径が金属素管の肉厚以下と小さいため、突起部の軸方向幅を可及的に小さくでき、突起部ピッチの小さいものに適用すると好適である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態を示す模式的縦断面図で、第1工程のバルジ加工前におけるバルジ加工型の初期セット状態と金属素管との関係を示す図である。
【図2】本発明の一実施形態を示す模式的縦断面図で、第1工程のバルジ加工後におけるバルジ加工型と膨出部が成形された金属素管との関係を示す図である。
【図3】本発明の一実施形態を示す模式的縦断面図で、第2工程の型寄せバルジ加工後におけるバルジ加工型と所定形状の突起部が成形された突起付き中空軸との関係を示す図である。
【図4】金属素管、膨出加工品および突起付き中空軸の縦断面と軸方向中央位置における横断面を示す模式図で、同図(a)は金属素管の断面図、同図(b)は膨出加工品の断面図、同図(c)は突起付き中空軸の断面図である。
【図5】実験結果の一例を整理して示す図で、突起部の拡管率が30%の時における寸法d1 、L1 、d2 およびL2 が突起部先端の軸方向角部外面の曲率半径Rに及ぼす影響を示す図である。
【図6】図5と同様の図で、突起部の拡管率が10%の時における図である。
【図7】実施例で成形対象とした膨出加工品と突起付き中空軸の断面図と横断面を示す模式図で、同図(a)は膨出加工品の断面図、同図(b)は突起付き中空軸の断面図である。
【符号の説明】
A:金属素管
B:膨出加工品
C:突起付き中空軸
1:バルジ加工型(金型)、
2:上型、
3:下型、
2a、3a:取り付け板、
2d、3d:突起部成形用可動型、
2b、2c、2e、2f、3b、3c、3e、3f:軸部成形用可動型、
7a、7b:管端拘束治具、
7c、7d:管路、
8a、8b:型移動用治具。
Claims (2)
- 金属素管の外形を所定の形状に成形する突起部成形用可動型と、この突起部成形用可動型に隣接する軸部成形用可動型とに分割されるとともに、各型間に所定の間隔が存在するようにセットされた金型内に金属素管を収容し、この金属素管の内部に液圧を付与して軸部成形用可動型と突起成形用可動型にて画成される空間部に金属素管の一部を膨出させる第1工程のバルジ加工、この第1工程のバルジ加工後、金属素管の内部に液圧を付与しながら軸部成形用可動型と突起成形用可動型と間の間隔を狭めて前記膨出部を所定の突起部形状に成形する第2工程の型寄せバルジ加工をおこなう突起付き中空軸の製造方法であって、第2工程の型寄せバルジ加工後における突起部先端の軸方向角部外面の目標曲率半径をR(mm)とした時、下式を満たす条件で第1工程のバルジ加工と第2工程の型寄せバルジ加工をおこなうことを特徴とする突起付き中空軸の製造方法。
1.2−0.2×(R/t0)≦(d1/d2)×(L1/L2)≦1.4
ただし、
t0 :金属素管の肉厚(mm)、
d1 :第1工程後の膨出部の軸方向中央位置における外周長(mm)、
d2 :第2工程後の突起部の軸方向中央位置における外周長(mm)、
L1 :第1工程後の膨出部の軸方向外面線長(mm)、
L2 :第2工程後の突起部の軸方向外面線長(mm)。 - 第1工程のバルジ加工または/および第2工程の型寄せバルジ加工において、金属素管に軸方向の圧縮力を付与することを特徴とする請求項1に記載の突起付き中空軸の製造方法。
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