JP3820679B2 - 恒温鍛造用潤滑剤組成物および加工方法 - Google Patents

恒温鍛造用潤滑剤組成物および加工方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、たとえばチタン合金を恒温鍛造加工する際に、金型および材料に塗布することにより、摩擦係数を軽減させ、加工を容易にすると同時に、焼付きを防止し、金型との離型を容易にすることができる、恒温鍛造用潤滑組成物と、その潤滑剤組成物を用いた恒温鍛造による加工方法とに関する。
【0002】
【従来の技術】
恒温鍛造加工とは、金型と被加工材料とを同じ温度に保持しながら行う型鍛造加工であり、チタン合金、ニッケル基合金といった難加工材の成形に利用されている。金型の加圧は液圧手段により一定の高圧を長時間加えることにより行うのが普通である。
【0003】
例えば、β型チタン合金の恒温鍛造加工では、金型と被加工材料を 700〜950 ℃の範囲の同じ温度に加熱しておき、被加工材料を入れた金型を30〜60分間加圧することにより成形を行う。
【0004】
恒温鍛造においては、金型と材料間の摩擦係数を軽減させると同時に、金型からの離型を容易にするために、通常は金型と被加工材料の両者に潤滑剤を適用する。従来の潤滑方法として、金型と被加工材料を所定の鍛造加工温度に加熱する前に、これらに予め潤滑剤組成物を塗布し、潤滑皮膜を形成する、いわゆるプレコート法が採用されている。
【0005】
このプレコート法に用いられる潤滑剤は、特開昭54−111056号公報に開示されているように、鍛造加工温度で溶融するガラス成分と鍛造加工温度で溶融しない高硬度 (モース硬度5.5 以上) の無機研磨材成分との混合物からなる。無機研磨材成分としては、炭化物、酸化物、窒化物などの合成材料および天然鉱物が使用できる。無機研磨材の代わりに、窒化ホウ素や黒鉛といった固形潤滑剤をガラス成分と一緒に使用することも知られている。
【0006】
この混合物を用いて潤滑皮膜を形成するため、ガラス成分と研磨材成分の各粉末を有機ポリマーの有機溶媒溶液中に分散させた塗布液を調製する。この塗布液を金型と被加工材料に塗布し、必要に応じて加熱して乾燥 (溶媒除去) を行うと、有機ポリマー中にガラス成分と研磨材成分の各粉末を含有している潤滑皮膜が形成される。
【0007】
鍛造加工の際には、この潤滑皮膜を形成した金型と被加工材料をまず予熱して、有機ポリマーを熱分解により消失させる。その後、金型と被加工材料を液圧プレス装置内にセットし、所定の鍛造温度に加熱してから、加圧を開始する。鍛造温度でガラス成分は溶融状態にあり、ガラス溶融液中に無機研磨材成分が分散した液状の潤滑膜が金型と被加工材料の間に介在することで潤滑効果 (摩擦係数低減効果) が発揮される。離型および冷却後、成形体に付着したガラスは、ショットブラストや酸洗により除去する。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
このプレコート法による潤滑を採用して恒温鍛造を行うと、金型は一回使用するごとに冷却しなければならず、作業効率が大幅に低下する。また、塗布した潤滑剤組成物の乾燥工程や、鍛造加工前の有機ポリマー消失のための予熱工程が必要となり、工程数が増える。その上、プレコート法により予め潤滑皮膜を形成した被加工材料を鍛造設備に搬送する間に潤滑皮膜が剥離し、潤滑効果が十分に得られないことがある。この最後の問題は、特に形状が大きく、加工度が大きな場合に顕著であった。
【0009】
本発明の目的は、形状が大きく、加工度の大きな恒温鍛造においても確実に潤滑(摩擦係数低減)および離型効果を発揮することができ、かつプレコート法によらずに潤滑処理が可能で、連続鍛造を可能にする恒温鍛造用潤滑剤組成物と、それを用いた恒温鍛造方法とを提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記目的を達成するために検討を重ねた結果、ニッケル粉とある種のホウ酸塩との混合物を水と混合して噴霧することが有効であることを知り、本発明を完成するに至った。
【0011】
ここに、本発明は、ニッケル粉と、ホウ酸のアンモニウム塩およびアミン塩から選ばれた少なくとも1種のホウ酸塩とを、ニッケル粉:ホウ酸塩の重量比が10:90〜90:10となる割合で含み、さらに界面活性剤および/または増粘剤を、合計で組成物全体の5重量%以下の量で含有していてもよい、恒温鍛造用潤滑剤組成物である。
【0012】
本発明によればまた、この潤滑剤組成物20〜80重量部を水80〜20重量部と混合した混合液を、 500〜1000℃に加熱された被加工材料および金型の少なくとも一方に噴霧してから恒温鍛造を行うことを特徴とする、恒温鍛造による加工方法も提供される。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明にかかる恒温鍛造用潤滑剤組成物の必須成分は、ニッケル粉と、ホウ酸のアンモニウム塩およびアミン塩から選ばれた1種または2種以上のホウ酸塩である。
【0014】
ニッケル粉は、恒温鍛造温度でも溶融せず、その粉末形状を保持して、固形潤滑剤として機能する。従来、ニッケル粉を潤滑剤として使用した試みはなかったが、本発明者らはニッケル粉が恒温鍛造加工において安定で、固形潤滑剤として十分に機能しうることを見出した。
【0015】
一方、ホウ酸塩は、 500〜1000℃の温度に加熱されると分解して、溶融した酸化ホウ素(B2O3)を生ずる。この溶融 (流体) 状態の酸化ホウ素が固体状態のニッケル粉を包み込み、この粉末を潤滑面 (高温の金型および被加工材料の界面) に円滑に供給する作用を果たすと共に、酸化ホウ素の溶融液それ自体も流体潤滑効果を発揮する。ホウ酸をアンモニウム塩またはアミン塩とすることで、ホウ酸を水に可溶化させることができ、それによりホウ酸 (イオン) を潤滑面に均一に付着させる作用を果たす。この付着したホウ酸イオンは、高温の金型または被加工材料と接触すると直ちに分解し、上記の流体潤滑剤として機能する溶融した酸化ホウ素となる。
【0016】
即ち、本発明の潤滑剤組成物において、ニッケル粉は固形潤滑剤として、ホウ酸塩は流体潤滑剤の供給源としてそれぞれ機能し、この2種類の潤滑剤の潤滑効果があいまって高い潤滑効果を発揮することができる。
【0017】
ニッケル粉としては、平均粒径50μm以下、純度98%以上のものが好ましい。ニッケル粉の平均粒径が50μmを超えると、分散性が悪くなり、水と混合してスラリー化して使用する際に均一にニッケル粉を供給することが困難となり、スラリー状態での貯蔵安定性も低下する。ニッケル粉の純度が98%より低いと、夾雑物として存在する無機物を主体とする不純物により潤滑性が阻害される。
【0018】
ホウ酸塩としては、アンモニウム塩またはアミン塩を使用する。ホウ酸を水に可溶化できるホウ酸塩としては、ホウ酸アルカリ金属塩 (例、ホウ酸ナトリウム、ホウ酸カリウム等) もあるが、ホウ酸アルカリ金属塩は、その成分であるアルカリ金属酸化物 (例、Na2O, K2O)が恒温鍛造温度で金型と反応して、金型を損傷するので、不適当である。その他のホウ酸金属塩は一般に水不溶性であり、ホウ酸を水に可溶化させることはできない。
【0019】
ホウ酸アンモニウム塩は、ホウ酸水溶液とアンモニア水とを混合することにより析出したものを使用することができ、(NH4)2O とB2O3との各種のモル比の塩が知られている。これらのいずれも使用でき、また、上記モル比の異なる2種以上のホウ酸アンモニウムの混合物でもよい。また、ホウ酸アンモニウムは一般に結晶水を持っているが、結晶水を含有していても、無水でも構わない。
【0020】
ホウ酸塩アミン塩としては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、エチルモノエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、エチルジエタノールアミン、モノイソプロパノールアミンといったアルカノールアミンとの塩が好ましい。しかし、モノメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノメチルジエチルアミンといったアルキルアミンとホウ酸との塩も使用できる。
【0021】
本発明の恒温鍛造用潤滑剤組成物におけるニッケル粉とホウ酸塩との配合割合は、ニッケル粉:ホウ酸塩の重量比が10:90〜90:10となる割合とする。この重量比の範囲外では、固体潤滑剤と流体潤滑剤のバランスが悪く、本発明の潤滑効果を十分に発揮できない。好ましい配合割合は、ニッケル粉:ホウ酸塩の重量比が20:80〜80:20、特に30:70〜70:30の範囲内である。
【0022】
本発明の恒温鍛造用潤滑剤組成物は、必須成分のニッケル粉とホウ酸塩以外に、これらの必須成分の作用に悪影響を及ぼさない限り、少量の任意成分を含有しうる。任意成分の量は、合計で、潤滑剤組成物全体の5重量%以下の量とすることが好ましい。適当な任意成分の例には、界面活性剤および増粘剤がある。
【0023】
界面活性剤はニッケル粉の水中での分散安定性を高める作用がある。界面活性剤としては、ノニオン型、アニオン型、カチオン型のいずれのものも使用できる。適当な界面活性剤の例には、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、脂肪酸のアルカノールアミド、スルホン酸ナフタレン縮合物のナトリウムまたはアンモニウム塩等があるが、これらに制限されるものではない。界面活性剤の添加量は、通常は組成物の全重量の2.5 重量%以内で十分である。
【0024】
増粘剤を添加すると、本発明の潤滑剤組成物を水と混合した時の混合液の粘度が増大し、ニッケル粉の混合液中での分散安定性が高まる。適当な増粘剤の例には、カルボキシメチルセルロースのアンモニウム塩またはアルカリ金属塩(例、ナトリウム塩)等が挙げられる。増粘剤の使用量も通常は組成物の全重量の2.5 重量%以内で十分である。
【0025】
本発明の潤滑剤組成物を用いた恒温鍛造加工は次に説明するようにして実施することができる。
まず、本発明の潤滑剤組成物を水と混合して、ホウ酸塩を水に溶解させ、ニッケル粉は水中に分散させる。この水との混合は、使用直前に実施してもよく、或いは予め水と混合した混合液を貯蔵しておくこともできる。混合液を貯蔵する場合には、特に上記の界面活性剤を添加することが好ましい。
【0026】
この混合液における潤滑剤組成物:水の混合割合は、重量比で20:80〜80:20の範囲内とする。この重量比は好ましくは25:77〜75:25、さらに好ましくは30:70〜70:30である。水が少なすぎると混合液の粘度が高く、噴霧に支障を来たし、潤滑剤組成物の付着にムラを生ずることがある。一方、水が多すぎると混合液の粘度が低すぎ、ポッピング (ハジキ) 現象により高温の金型や被加工材料に付着しにくくなり、付着効率が非常に悪くなる。
【0027】
この水との混合液を 500〜1000℃、好ましくは 500〜950 ℃に加熱された被加工材料および金型の少なくとも一方に噴霧してからして恒温鍛造を行う。金型と被加工材料の両方に混合液を噴霧する方が好ましいが、加工度、金型の材質、混合液の粘度によっては、金型と被加工材料の一方に噴霧するだけでも、十分な潤滑効果と離型性を得ることができる場合もある。
【0028】
金型は、恒温鍛造条件下で機械的強度を保持できる優れた耐熱性を有し、かつこの条件下で被加工材料と合金形成または反応しないものを使用する。βチタン合金の恒温鍛造には、一般の超合金 (例、IN 100) 製の金型が使用される。
【0029】
被加工材料および金型の加熱温度を 500〜1000℃の範囲としたのは、ニッケル粉の潤滑性能が有効である温度がこの温度範囲であるからである。この加熱温度は、被加工材料の鍛造加工温度に応じて、上記温度範囲内で設定すればよい。例えば、β型チタン合金の恒温鍛造加工温度は 700〜950 ℃であるので、加熱温度はこの範囲内になる。
【0030】
従って、βチタン合金の恒温鍛造加工を行う場合には、鍛造加工の温度まで金型および/または被加工材料を加熱してから、本発明の潤滑剤組成物の水との混合液を噴霧すればよい。この噴霧によって温度が低下した場合には、所定温度まで再加熱する。別の方法として、500 ℃より高く、鍛造加工温度より低い温度まで金型および/または被加工材料を加熱し、上記の混合液を噴霧し、再び加熱を続けて所定の鍛造加工温度まで昇温させることもできる。
【0031】
混合液の噴霧量は、混合液の水の割合や液の粘度によっても異なるが、付着量がニッケル粉の量として30〜150 g/m2となるような量が好ましい。混合液を高温の金型および/または被加工材料に噴霧することにより、混合液中の水は蒸発し、ホウ酸塩のアンモニア成分やアミン成分も蒸発ないし分解し、溶融した酸化ホウ素中にニッケル粉が分散した液状 (流体状) の潤滑膜が噴霧表面に形成される。噴霧後、必要であれば所定の加工温度に加熱し、被加工材料を金型内にセットして液圧プレス装置により加圧することにより恒温鍛造加工を行う。この加工条件は、従来の恒温鍛造と同様に設定すればよい。
【0032】
恒温鍛造加工が終了したら、従来と同様に熱間で金型から成形体を取り出す。500 ℃より高温であれば本発明の潤滑剤組成物はなお流体状態にあるので、成形体を容易に金型から取り出すことができる。成形体に付着した潤滑剤成分は、ショットブラスト等により簡単に除去できる。
【0033】
金型の方は、離型後に直ちに次回の恒温鍛造作業に使用することができる。金型を必要であれば加熱して、本発明の潤滑剤組成物の塗布に適した温度または恒温鍛造加工温度に昇温させ、上記の混合液を噴霧し、上記と同様に恒温鍛造加工を行う。プレコート法ではなく、鍛造加工前の加熱された金型に対して噴霧することで潤滑処理が行われるため、金型を連続的に使用することができる。また、前回の潤滑膜が金型に残っている場合には、金型の潤滑処理を省略するか、噴霧量を減らすこともできる。
【0034】
【実施例】
(実施例1〜8)
次の表1に示す割合でフレーク状ニッケル粉 (平均粒径25μm) または球形ニッケル粉 (平均粒径25μm) を、ホウ酸のモノエタノールアミン塩および/またはアンモニウム塩と混合して、固形混合物A〜Fを調製した。
【0035】
【表1】
Figure 0003820679
【0036】
上記固形混合物を表2に示す割合でアニオン型界面活性剤 (スルホン酸ナフタレン縮合物のナトリウム塩) 、増粘剤 (カルボキシメチルセルロースナトリウム塩) および水と混合して、実施例1〜8の混合液を調製した。
【0037】
これらの各混合液を、図1に示す成形体の恒温鍛造加工試験 (金型はIN 100製、被加工材料はβチタン合金<Ti-10Al-2Fe-3V>) に使用したが、どの混合液も噴霧時の付着性が良好で、鍛造加工時の潤滑性、離型性、金型の損耗のいずれにも問題がなかった。また、いずれの場合も、金型は連続使用 (即ち、熱間で離型した後、冷却せずに直ちに同じ混合液を噴霧して次回の鍛造加工を実施) することができた。
【0038】
なお、恒温鍛造加工試験は、温度750 ℃、液圧プレスによる加圧力3500 Ton、加圧時間60分間という条件で行った。混合液の噴霧は、金型と被加工材料の両者を750 ℃に加熱した時点で行い、噴霧量はニッケル粉の付着量として50 g/m2 であった。
【0039】
【表2】
Figure 0003820679
【0040】
(比較例1〜5)
比較のために、表3に示す配合割合の比較例1〜5の混合液を調製し、これらを用いて実施例1〜8と同様に恒温鍛造加工試験を行った。但し、比較例1の混合液は、プレコート法により潤滑皮膜を形成した。使用したフレーク状ニッケル粉および増粘剤は実施例1〜8で使用したものと同じであった。
【0041】
比較例1の混合液は、従来技術である特開昭54−111056号公報に開示されている潤滑剤組成物に相当するものである。ガラス粉末の組成は、重量%で、SiO2: 43.4%、B2O3: 27.6%、Na2O: 19.8%、CaO: 6.0%、MgO: 1.3%、Al2O3: 1.1%、K2O: 0.7%、Fe2O3: 0.1%であった。このガラスが鍛造加工温度で溶融することによる流体潤滑と、研磨材であるSiCによる固体潤滑により潤滑機能を発揮する。しかし、この混合液を金型と被加工材料の両方に塗布し、加熱乾燥して潤滑皮膜を形成してから、上記と同様の条件で恒温鍛造加工を行ったところ、ガラス中のアルカリ金属酸化物と金型が反応し、金型の損耗を来した。また、離型性にも問題を生じた。さらに、この混合液はプレコート法で適用するため、連続鍛造には使用できない。
【0042】
比較例2と比較例3は、本発明のホウ酸塩と同様に、鍛造加工温度では酸化ホウ素の溶融液 (即ち、流体潤滑剤) となるホウ酸を、固形潤滑剤として機能しうる窒化ホウ素またはフッ素金マイカと組合わせた例である。
【0043】
しかし、比較例2では、型温度が高い場合には、噴霧しても金型に付着させることが困難であった。また、連続操業時には噴霧ノズルが目詰まりすることがあり、連続操業への使用も困難であった。
比較例3の混合液は、ホウ酸から生成した酸化ホウ素の溶融液がフッ素金マイカを溶融するため、離型性に問題があった。
【0044】
比較例4および比較例5は、固形潤滑剤として本発明と同様にニッケル粉を使用し、これを鍛造加工温度で溶融状態になるガラスまたは硼砂と組合わせた例である。
【0045】
比較例4では、硼砂の成分であるNa2Oが金型と反応したため、比較例1と同様に金型の損耗を生ずると同時に、離型性にも問題があった。
比較例5でも、アルカリ金属酸化物を含有するガラスを使用したため、同様に金型の損耗を生じ、離型性にも問題があった。
【0046】
比較例6は、ホウ酸にニッケル粉を組合わせた例であるが、ホウ酸のアンモニウム塩またはアミン塩に代えてホウ酸を使用すると、ホウ酸の水への溶解度が小さく、気温変化によって析出する再結晶粒が粗大であるため、噴霧時の作業性に劣る。
【0047】
比較例7は、ホウ酸アミン塩に固形潤滑剤としてニッケル粉ではなく、研磨剤粒子 (SiC) を組合わせた例であるが、SiCに潤滑性がなく、成形性に問題があった。
【0048】
【表3】
Figure 0003820679
【0049】
【発明の効果】
本発明にかかる恒温鍛造用潤滑剤組成物および加工方法により、プレコート法によらずに、恒温鍛造に用いる金型と被加工材料に十分な潤滑効果 (摩擦係数の軽減) と離型性を付与することができる。その結果、形状が大きく、加工度の大きな恒温鍛造に対しても潤滑が可能になる。また、高温時の金型および被加工材料に噴霧することにより潤滑膜を形成することができるので、プレコート法のように離型ごとに金型を冷却する必要がなく、離型直後の高温の金型を潤滑処理することができるため、連続鍛造が可能となる。これにより、βチタン合金などの恒温鍛造加工の能率が大幅に向上する。
【0050】
本発明の潤滑剤組成物および加工方法は、特にβチタン合金の恒温鍛造に適しているが、加工温度が 500〜1000℃の範囲内にある他の金属材料の恒温鍛造にも同様に適用しうることは当然である。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例および比較例で実施した恒温鍛造試験における成形体の形状を示し、図1(a) は斜視図、図1(b) は図1(a) のA−A線における断面図である。

Claims (3)

  1. ニッケル粉と、ホウ酸のアンモニウム塩およびアミン塩から選ばれた少なくとも1種のホウ酸塩とを、ニッケル粉:ホウ酸塩の重量比が10:90〜90:10となる割合で含む、恒温鍛造用潤滑剤組成物。
  2. さらに、界面活性剤および/または増粘剤を、合計で組成物全体の5重量%以下の量で含有する、請求項1に記載の潤滑剤組成物。
  3. 請求項1または2に記載の潤滑剤組成物20〜80重量部を水80〜20重量部と混合した混合液を、 500〜1000℃に加熱された被加工材料および金型の少なくとも一方に噴霧してから恒温鍛造を行うことを特徴とする、恒温鍛造による加工方法。
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