JP3820444B2 - トンネル接合素子を用いた同調回路および超伝導集積回路 - Google Patents

トンネル接合素子を用いた同調回路および超伝導集積回路 Download PDF

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  • Superconductor Devices And Manufacturing Methods Thereof (AREA)
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はトンネル接合素子を用いた同調回路およびその超伝導集積回路に関するものである。電波望遠鏡等においてサブミリ波帯域で,周波数帯域が広い同調回路が求められている。本発明は,広い周波数帯域で反射係数の小さい周波数特性をもつトンネル接合を用いた同調回路に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来,超伝導を利用した同調回路は,信号源に通過する信号の1/4波長の長さのマイクロストリップ線路を接続してインピーダンス整合し,その先に半波長または1波長のSIS接合素子を接続した回路が知られている。
【0003】
図6はSIS接合素子を使用した従来の同調回路の例を示す。図6において,1は信号入力部であって,信号源である。2は四分の一波長マイクロストリップ線路であり,入力信号の1/4波長の長さのマイクロストリップ線路である。10は一波長SIS接合素子であり,超伝導体の電極をもつトンネル接合素子である。11は接地である。Z0 は信号入力部の内部インピーダンスである。
【0004】
図7(a)は図6の構成の信号入力部を含む平面図であり,図7(b)は断面図である。図7(a)において,アンテナ1とアンテナ2により信号入力部を構成する。2は四分の一波長マイクロストリップ線路であり,10は一波長SIS接合素子である。
【0005】
図7(b)において,40は基板である。41はSIS接合素子の上部電極,51はマイクロストリップ線路(上部線路),71はアンテナ1,72はアンテナ2であって,アンテナ1はマイクロストリップ線路51と一体であり,アンテナ2は下部電極43と一体である。アンテナ1およびアンテナ2は超伝導体(ニオブ(Nb))で構成される。42はSIS接合素子のトンネル接合であり,AlOxの薄い絶縁層である。43は下部電極であって,超伝導体(Nb)で構成され,マイクロストリップ線路,SIS接合素子に共通の下部電極である。下部電極43は接地電極になるものである。
【0006】
図7(b)において,SIS接合素子の幅は,0.6μmであり,長さは8.68μm(1波長)である。マイクロストリップ線路の幅は3.5μmであり,長さは44.2μm(四分の一波長)である。
【0007】
図8(a),(b)は図7(a),(b)の同調回路の特性を示す。図8(a)はスミスチャートであり,入力信号の周波数を変化させた時の軌跡を示す。図8(b)は周波数とパワーに対する反射率の関係を示す。図8(b)の反射率の−10dBが図8(a)の反射係数0.3の円に相当する。信号入力部の内部インピーダンスZ0 は40Ωとした。
【0008】
反射係数で−10dB以下の反射係数の同調回路が必要とされる。図8(b)に示されるように,−10dB以下の周波数帯域は約650GHzから675GHzである。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
図6に示す従来のものは,SIS接合素子のQファクタでのみ帯域幅がきまり,Qの高いものほど帯域は狭かった。また,一般に,SIS接合素子は流す電流密度が大きければQが小さくなり,電流密度が小さければQは大きくなる。電流密度を大きくしてQを低くすれば,広帯域化できるが,SIS接合素子の電流密度を大きくとることは困難なことである。そのため,従来のSIS接合素子を使用した同調回路は周波数帯域を広帯域化することが難しかった。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は,半波長のSIS接合素子を半波長のマイクロストリップ線路に接続し,この接続の組合せを多段接続にする。開放端における半波長SIS接合素子を負荷とみなし,これに,高インピーダンス部をマイクロストリップ線路で構成し,低インピーダンス部をSIS接合素子で構成した半波長分布定数バンドパスフィルタ回路を付加した構成とした。そして,信号入力部(信号源)には,四分の一波長マイクロストリップ線路を介してインピーダンス整合するように接続した。
【0011】
バンドパスフィルタの特性インピーダンスを変化させることにより負荷への通過帯域特性を制御すると同時にバンドパスフィルタを構成しているSIS接合素子でも電力を消費させるようにした。そのため,広帯域に渡りインピーダンス軌跡をコントロールすることができ,スミスチャートの中心部付近で所望の反射係数を持たせることが可能になる。
【0012】
【発明の実施の形態】
図1(a)は本発明の実施の形態1を示し,m個の半波長トンネル接合素子とm−1個の半波長マイクロストリップ線路および一個の四分の一波長マイクロストリップ線路が接続されている場合を示す。四分の一波長マイクロストリップ線路2は信号入力部1に接続され信号源と後段の回路の入力インピーダンスとの整合をとる。図1(b)は,図1(a)の構成を超伝導集積回路とした場合の断面図を示し,m=2の場合である。
【0013】
図1(a)において,1は信号入力部であって,信号源であり,図7(a),(b)のアンテナ1とアンテナ2に対応する部分である。2は四分の一波長マイクロストリップ線路である。信号入力部の内部インピーダンスと入力側のトンネル接合素子から出力側をみた入力インピーダンスが異なるので,インピーダンス整合をとるものである。3,5,7および9は半波長トンネル接合素子である。4,6および8は半波長マイクロストリップ線路である。11は接地である。12は半波長トンネル接合素子の開放端である。なお,マイクロストリップ線路とSIS接合素子では通過する信号の位相速度が異なるため,両者の半波長の長さは異なる。
【0014】
図1(b)において,3,7はそれぞれ半波長トンネル接合素子を示す。2は四分の一波長マイクロストリップ線路であり,4は半波長マイクロストリップ線路である。40は基板である。42,42’はトンネル接合,52,52’,52”は絶縁層である。
【0015】
図1(a),(b)の構成をミキサとして使用する場合には,図1(b)に示すように,信号入力部に,例えば,ローカル周波数として700GHzのサブミリ波を照射してアンテナ(図7(a),(b)参照)で受信し,信号として701GHzのサブミリ波を照射してアンテナで受信する。半波長トンネル接合素子7の開放端よりミキサされた信号(1GHz)を取り出す。
【0016】
図2はトンネル接合素子の構造を示し,SIS接合素子である。図1の半波長トンネル接合素子3,5,7,9として使用されるものである。図2において,41は上部電極であり,43は下部電極である。上部電極41と下部電極43は,超伝導体であり,例えばNbで作られる。42はトンネル接合であり,例えばAlOxで作られる。WJ は上部電極の幅である。dn は長さである。dSUは上部電極の厚さである。dSLは下部電極の厚さである。Sはトンネル接合の厚さである。
【0017】
図3は,マイクロストリップ線路の構成を示し,図1の四分の一波長マイクロストリップ線路2および半波長マイクロストリップ線路4,6,8として使用されるものである。図3において,51はマイクロストリップ線路であって,超伝導体であり,例えばNbである。52は絶縁層であって,例えばSiOである。43はマイクロストリップ線路の下部電極であって,接地導体となるものである。下部電極43は超伝導体であり,例えばNbである。下部電極43は図2のSIS接合素子の下部電極43と共通である。wはマイクロストリップ線路の幅であり,dn は長さである。t1 はマイクロストリップ線路の厚さ,hは絶縁層の厚さであり,t2 は下部電極(接地電極)の厚さである。
【0018】
次に図1の構成の動作を解析する。以下において,トンネル接合素子はSIS素子であるとして説明する。
【0019】
開放端12からn番目の素子(nが奇数の素子はSIS接合素子,nが偶数の素子はマイクロストリップ線路)の特性インピーダンス,伝搬定数,長さをそれぞれZn ,γn ,dn とする。開放端から1番目のSIS接合素子(図1の半波長トンネル接合素子9)の入力インピーダンスは,
【0020】
【数1】
Figure 0003820444
【0021】
である。
【0022】
開放端のSIS接合素子に接続される半波長マイクロストリップ線路の入力インピーダンスは,
【0023】
【数2】
Figure 0003820444
【0024】
開放端からn番目の素子の入力インピーダンスは,
【0025】
【数3】
Figure 0003820444
【0026】
N番目(Nは偶数)に四分の一波長マイクロストリップ線路がくるものとし,出力側をみた入力インピーダンスは同様に
【0027】
【数4】
Figure 0003820444
【0028】
このとき信号源の内部インピーダンスをZ0 とすると入力端における反射係数は,次のようになる。
【0029】
【数5】
Figure 0003820444
【0030】
次に,SIS接合素子の特性インピーダンス,伝搬定数(nが奇数時のZn ,γn )を求める。図3のようなトンネル接合伝送路を考えたとき,その単位長さあたりのインピーダンスとアドミッタンスは以下の式で与えられる。
【0031】
【数6】
Figure 0003820444
【0032】
【数7】
Figure 0003820444
【0033】
ここで,Rrfは単位面積当たりのトンネル接合抵抗(=IC N /JC ), CS は単位面積当たりのトンネル接合容量,σは電極に用いられている超伝導体の複素導電率である。η0 は自由空間インピーダンスであって377オームである。これから,SIS接合素子のZn ,γn (nは奇数)は次のようになる。
【0034】
【数8】
Figure 0003820444
【0035】
【数9】
Figure 0003820444
【0036】
超伝導マイクロストリップ線路の特性インピーダンスと伝搬定数(nが偶数時のZn ,γn )に関しては次の式を用いた。
【0037】
【数10】
Figure 0003820444
【0038】
【数11】
Figure 0003820444
【0039】
但しZp ,εp は完全導体での特性インピーダンス,実効誘電率である。k0 は自由空間での波数である。図3に示すマイクロストリップ線路の形状定数g2
【0040】
【数12】
Figure 0003820444
【0041】
である。
【0042】
但し
【0043】
【数13】
Figure 0003820444
【0044】
であり,eは自然対数の底である。
【0045】
s1,Zs2は超伝導体の複素導電率から求めた表面インピーダンスである。
【0046】
図4(a),(b)は本発明の実施の形態2を示す。図1の実施の形態1において,N=4(図1の説明におけるmがm=2)の場合を示す。図4(b)は図4(a)の断面図である。図4(a)において,1は信号入力部である。2は四分の一波長マイクロストリップ線路である。13は半波長SIS接合素子である。4は半波長マイクロストリップ線路である。15は半波長SIS接合素子である。
【0047】
図4(b)において,40は基板である。41は半波長SIS接合素子13の上部電極であり,超伝導体であって例えばNbである。42は半波長SIS接合素子13のトンネル接合であって,絶縁層であり,例えばAlOxである。43は下部電極である。
【0048】
41’は半波長SIS接合素子15の上部電極であり,超伝導体であって例えばNbである。42’は半波長SIS接合素子15のトンネル接合であって,絶縁層であり,例えばAlOxである。43’は下部電極である。
【0049】
51はマイクロストリップ線路であって,四分の一波長マイクロストリップ線路2の上部線路である。51’は,マイクロストリップ線路であって,半波長マイクロストリップ線路4の上部線路である。マイクロストリップ線路51,51’は超伝導体であり,例えば,Nbである。52,52’,52”は絶縁層であって,例えばSiOである。71はアンテナ1の部分である。72はアンテナ2の部分である。
【0050】
マイクロストリップ線路51,51’,SIS接合素子の上部電極41,41’は超伝導体により一体に構成される。例えばNbにより作られる。アンテナ1は超伝導体によりマイクロストリップ線路51と一体に構成される。また,マイクロストリップ線路51,51’の下部電極およびSIS接合素子の下部電極43,43’はそれぞれ共通の接地電極であって,超伝導体により一体に構成される。例えばNbである。またアンテナ2は下部電極43’と一体に構成され,超伝導体である。
【0051】
図4(a),(b)の半波長SIS接合素子13の幅は1.2μm,長さは4.34μm(半波長)である。半波長SIS接合素子15の幅は1.2μmであり,長さは4.34μm(半波長)である。半波長マイクロストリップ線路4の幅は1.8μmであり,長さは92.9μm(半波長)である。四分の一波長マイクロストリップ線路2の幅は5.5μm,長さは42.9μmである。
【0052】
図5(a),(b)は,前述の計算式に従って求めた図4の構成の特性を示す。計算に使用したSIS接合素子,超伝導材料(Nb)の定数は次のとおりである。
【0053】
ギャップ周波数(Nbのエネルギーバンドギャップに対応する周波数)は700GHz,超伝導が壊れる最低温度における導電率は1.2×107 Ω-1-1,上部電極の厚さ500nm,下部電極の厚さ200nm,トンネル接合の厚さ1nm,電流密度はJC =5kA/cm2 (超伝導を維持する最大電流密度),IC N =1.9mV,特性容量100fF/μm2 である。
反射係数Γを許容出来る範囲(−10dB)以下になるようにZn ,γn ,dn を選択した。
【0054】
図5(a)はスミスチャートであり,81は周波数を変化させた時の軌跡を示す。図5(b)は反射率の入力信号周波数に対する関係を示す。−10dB以下の反射率を示す周波数帯域は,約600GHzから775GHzであり,前述の従来のものより大幅に広くなることが示されている。また,スミスチャートの中心部付近に軌跡が集まり所望の反射係数(−10dB以下)の特性を得ることが容易になる。
【0055】
【発明の効果】
本発明は,上記のように,超伝導体のマイクロストリップ線路とSIS接合素子を多段接続することにより,一つずつのSIS素子に流れる電流密度が小さくても反射係数の小さい周波数帯域を広くすることができる。このように,本発明によれば,反射係数は小さいがQの高い同調回路を作成できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態1を示す図である。
【図2】SIS接合素子を示す図である。
【図3】マイクロストリップ線路を示す図である。
【図4】本発明の実施の形態2を示す図である。
【図5】本発明の実施の形態2の特性の例を示す図である。
【図6】トンネル接合を使用した従来の同調回路を示す図である。
【図7】トンネル接合を使用した従来の同調回路を示す図である。
【図8】トンネル接合を使用した従来の同調回路の特性を示す図である。
【符号の説明】
1:信号入力部
2:四分の一波長マイクロストリップ線路
3:半波長トンネル接合素子
4:半波長マイクロストリップ線路
5:半波長トンネル接合素子
6:半波長マイクロストリップ線路
7:半波長トンネル接合素子
8:半波長マイクロストリップ線路
9:半波長トンネル接合素子

Claims (4)

  1. 上部線路と下部電極により構成されるマイクロストリップ線路および上部電極とトンネル接合と下部電極により構成されるトンネル接合素子を備え,それぞれの下部電極を共通接続するとともに,マイクロストリップ線路とトンネル接合素子の上部電極を接続したマイクロストリップ線路とトンネル接合素子との接続を多段接続し,最上位のマイクロストリップ線路を信号源に対するインピーダンス整合素子とし,該最上位のマイクロストリップ線路に信号入力することを特徴とするトンネル接合素子を用いた同調回路。
  2. 該最上位のマイクロストリップ線路の長さは四分の一波長であり,最上位のマイクロストリップ線路より下位のマイクロストリップ線路およびトンネル接合素子の長さは半波長であることを特徴とする請求項1に記載のトンネル接合素子を用いた同調回路。
  3. 超伝導体の上部線路と下部電極により構成される超伝導体のマイクロストリップ線路,および超伝導体の上部電極とトンネル接合と超伝導体の下部電極により構成されるトンネル接合素子を備え,それぞれの下部電極を共通接続し,該マイクロストリップ線路とトンネル接合素子の上部電極を接続したマイクロストリップ線路とトンネル接合素子の接続を多段接続し,最上位のマイクロストリップ線路は信号源に対するインピーダンス整合素子とし,該最上位のマイクロストリップ線路に信号入力することを特徴とする超伝導集積回路。
  4. 該最上位のマイクロストリップ線路の長さは四分の一波長であり,該四分の一波長マイクロストリップ線路より下段のマイクロストリップ線路およびトンネル接合素子の長さは半波長であることを特徴とする請求項3に記載の超伝導集積回路。
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