本発明の実施形態について、図1を参照して説明する。図1は、本発明の実施形態に係るFL管点灯装置を示している。このFL管点灯装置1は、液晶表示装置(LCD)のバックライト用FL管点灯装置を構成している。
このFL管点灯装置1は、直流入力を交流出力に変換するインバータ2を備えるとともに、その交流出力が供給される負荷としてFL管4を備え、インバータ2には回路配線に発生する断線放電や絶縁破壊放電を検出する異常検出回路6が接続されている。
インバータ2において、直流入力を受ける直流入力端子8、10には、直流電源12が接続されて交流に変換すべき直流入力が加えられている。この直流電源12には、バッテリの他、AC−DCコンバータ等、各種直流電源が含まれる。また、直流入力端子8、10には、回路配線14、16が接続されて直流入力電流の電流ルートが形成されているとともに、入力平滑用コンデンサ18が接続されている。回路配線14、16は例えば、プリント配線基板上の導体パターンで構成され、また、入力平滑用コンデンサ18は、直流入力に含まれる電圧リップル等の変動成分を除去するフィルタを構成しており、変動する直流入力を平滑し、安定化させる。そして、インバータ制御部20には、直流入力端子8、10及び回路配線14、16を通して直流入力が供給されている。このインバータ制御部20は、図示しない例えば、スイッチング素子として複数のトランジスタからなるプッシュプル型インバータ回路部、ドライブ回路部、スイッチング制御部等を含んで構成され、インバータトランス22の一次巻線24等を帰還回路に含む発振回路を構成しており、この実施形態では、回路配線14の給電を切り換える手段としてスイッチ26が内蔵されている。このスイッチ26はインバータ制御部20の制御入力部としてのラッチ入力端子28に加えられる制御入力によって外部から動作を切り換えることができる。なお、このインバータ制御部20には、既に市販されている汎用制御IC(例えば、TI、TL5001等)等、公知のものを使用することができるので、その回路構成の詳細は省略する。
そして、このインバータ2において、動作異常を検出する異常検出回路6は、回路電流を検出する電流検出部30と、放電に起因して生ずる回路電流の変化を検出する電流変化検出部32と、検出した回路電流の変化レベルが異常であるか否かを判定する判定部としてコンパレータ34とを備えている。
電流検出部30は、インバータ2の回路配線16等から回路電流の変化により生じる磁束変化を媒介にし、回路電流の変化を検出する回路部であって、この実施形態では、低電位側の回路配線16側を電流検出部位に設定している。この電流検出部30には、回路配線16に生じる磁束変化Δφを媒介にして回路電流の変化を検出する検出導体として電流検出線36が設置されている。この場合、検出すべき回路電流の変化として直流入力電流id が検出対象である。電流検出線36は回路配線16に生じる磁束変化Δφを捕捉可能な間隔で回路配線16に併設された配線導体である。
次に、電流検出部30について、図2を参照して説明する。図2は電流検出部30の一例を示している。電流検出部30は、プリント配線基板38に設置された回路配線16と同様の配線パターンからなる電流検出線36で構成され、この実施形態では、回路配線16の配線パターンと電流検出線36の配線パターンは平行パターンを構成している。即ち、直線状の回路配線16に対して平行な直線状部分を持つ電流検出線36が設置され、直流入力電流id の変化によって回路配線16に生じる磁束変化Δφを電流検出線36に作用させている。この場合、aは電流検出線36の幅、bはその長さであり、電流検出線36と回路配線16との間には所定の絶縁間隔Dが設定されている。この絶縁間隔Dを狭小化すれば、磁束変化Δφの検出感度が高められる。
そして、電流検出線36には磁束変化Δφの作用で発生した電圧を取り出すための検出端子40、42が設けられ、これら検出端子40、42に得られる検出電圧が回路電流の変化を検出する電流変化検出部32に加えられている。この電流変化検出部32は、この実施形態の場合、検出電圧を整流して直流レベルに変換する変換部としてダイオード44を備えており、このダイオード44が検出端子40側に接続され、ダイオード44のカソード側と検出端子42との間には、フィルタ回路としてコンデンサ46が設置されているとともに、検出レベルの調整部を構成する抵抗48が接続されている。ダイオード44には、断線放電等による電流変化の検出に対応するため、例えば、逆回復時間が早いショットキーダイオードを使用する。斯かる構成により、電流変化検出部32は、回路電流の変化を直流電圧の変化に変換する電流・電圧変換部として構成され、コンデンサ46及び抵抗48には回路電流の変化に対応した直流電圧が得られ、この電圧レベルが回路電流の変化、この場合、直流入力電流id の変化を表す。
この電流変化検出部32の検出信号は検出信号出力部を構成するコンパレータ34に加えられている。コンパレータ34は、検出信号の増幅部を構成するとともに、回路電流の変化レベルから動作異常か否かを判定する判定部であって、検出信号と動作異常を表す所定レベルとの比較を行う。この場合、所定レベルとは、例えば、回路配線の断線放電や、回路配線の高圧部と低圧部との間の接近放電(絶縁破壊放電)等の動作異常を判定可能な基準レベルであり、正常動作時のレベル又は該レベルより僅かに高いレベルとする等、異常か正常かを判別できればどのようなレベル設定でもよい。そこで、コンパレータ34は、検出電圧と所定レベルとの比較により、例えば、検出電圧のレベルが所定レベル以下のとき、正常を表す低(L)レベル、検出電圧のレベルが所定レベルを超えたとき、動作異常を表す高(H)レベルとなる検出信号Vsを出力する。この検出信号Vsは、インバータ制御部20のラッチ入力端子28に加えられ、正常時、インバータ制御部20の動作維持、動作異常時、インバータ制御部20の動作停止に用いられる。この実施形態では、動作異常時、ラッチ入力端子28に加えられた検出信号Vsによってスイッチ26が開かれ、インバータ制御部20に対する給電が解除され、インバータ2の動作が停止状態に制御される。
また、インバータトランス22の二次巻線50には回路配線52、54が接続されて出力電流の電流ルートが構成されている。一方の回路配線52にはバラストコンデンサ56が介挿されて交流出力端子としての接続コネクタ58、他方の回路配線54には定電流検出抵抗60が介挿されて交流出力端子としての接続コネクタ62が接続され、各接続コネクタ58、62には負荷であるFL管4が接続され、このFL管4はLCD64のバックライトを構成している。バラストコンデンサ56はFL管4に流れる管電流を安定化する安定部を構成し、また、定電流検出抵抗60に検出された管電流はインバータ制御部20側に加えられ、管電流の定電流化に用いられる。従って、インバータ制御部20のスイッチング動作として、直交変換動作によって交流を発生させるとともに、インバータトランス22の昇圧により、インバータトランス22の二次巻線50に高周波の高圧出力が得られる。この高圧出力が回路配線52、54及び接続コネクタ58、62を通してFL管4に加えられる。この実施形態では、単一の二次巻線50に単一のFL管4を接続した場合を示しているが、複数のFL管を設置してもよく、その場合、バラストコンデンサ56は各FL管毎に設置される。
次に、このFL管点灯装置1の動作について、図3及び図4を参照して説明する。図3のAは正常時の動作波形、図3のBは異常時の動作波形を示し、図4は電流ルートに断線放電又は地絡放電が生じている場合を示している。
このようなインバータ2を用いてFL管4を定電流駆動すると、FL管4は一定の駆動電流によって点灯する。動作が正常な場合には、交流出力の動作波形は、図3のAに示す正弦波波形nwとなるが、例えば、図4に示すように、回路配線54に断線を生じると、その断線箇所66に放電が生じ、この放電によって電流ルートが維持される。このような動作異常時の動作波形は、図3のBに示すように、正常時の正弦波波形nwに放電波形dwが重畳された異常波形となる。放電波形dwは緩やかな交流出力の基本波より急激に変化し、高い周波数成分を持つノイズ(高周波)であるが、このような波形成分は回路電流の電流値を増加させることはなく、回路電流の変化量を増加させるにすぎない。そして、放電波形dwは、正常時の正弦波波形nwのレベル変化に対して周期的に発生する。このような現象は、電流波形だけではなく、電圧波形についても言えるが、電圧波形より電流波形の変化が大きいことが実験により確認されている。
このような放電によって電流ルートが維持されると、インバータトランス22の出力電流i2 、インバータトランス22の入力電流i1 、直流入力電流id 、インバータ制御部20内のドライブ電流等、回路電流が急変し、電流ルートを構成している回路配線14、16の周囲には回路電流の急激な変化を表す激しい磁束変化Δφを生じる。このとき、電流検出線36には急激な磁束変化Δφが検出され、その両端に回路電流の変化を表す高電圧が発生する。この高電圧はダイオード44で整流され、コンデンサ46によって平滑されるので、放電時には急激な電流変化を表すレベルを持つ直流電圧が得られる。この直流電圧はコンパレータ34に加えられて所定レベルと比較され、コンパレータ34には正常か動作異常かを表す検出信号Vsが得られる。
この検出信号Vsが動作停止出力としてインバータ制御部20のラッチ入力端子28に加えられると、インバータ制御部20は、スイッチ26がOFF状態となって、インバータ動作を停止して交流出力が解除され、FL管4が消灯状態になるとともに、放電の継続が遮断される。この結果、インバータ2及びFL管4は動作異常の継続から開放される。
また、図4中に破線で示すように、交流出力側の高圧部とシャーシ等の低圧部との間の接近による絶縁破壊等で放電68が発生すると、その動作波形は、図3のBに示すように、断線放電と同様、正常時の正弦波波形nwに放電波形dwが重畳された異常波形となる。
この場合にも、回路配線16の回路電流の急激な変化が磁束変化Δφを生じさせ、この磁束変化Δφが電流検出部30の電流検出線36に検出されるので、コンパレータ34には、動作異常を表す検出信号Vsが得られる。この結果、インバータ制御部20によるインバータ動作が停止され、交流出力の解除により、FL管4は消灯状態になるとともに、放電の継続が遮断される。同様に、インバータ2及びFL管4は動作異常の継続から開放される。
この実施形態について、作用、効果は次の通りである。
この実施形態では、インバータ制御部20の入力電流側に電流検出部30を設置したので、出力側の電流ルートの断線放電や絶縁破壊放電等の動作異常で生じた入力電流の急変を磁束変化Δφで捉え、検出端子40、42に動作異常を表す高電圧を発生させることができる。即ち、高圧側での動作異常の検出に比較して絶縁対策が容易であり、安全性に優れている。
磁束変化Δφを媒介にして回路電流の変化を検出するので、回路配線16に電流検出線36を平行に配置した極めて簡単な構成により、回路電流の急変を表す電圧を発生させ、しかも、回路電流の変化を高電圧で取り出すことができる。即ち、回路電流の変化の検出感度が高く、動作異常を高精度に検出することができる。
しかも、放電等の動作異常は電圧変化からも検出が可能であるが、磁束変化Δφを媒介にして回路電流の変化を検出するので、検出精度が高くなる。即ち、放電による波形変化は電圧波形より電流波形の変化が大きく、この電流変化により磁束変化Δφが生じるので、磁束変化Δφを媒介とした動作異常の検出は検出精度が高くなる。
磁束変化Δφを媒介にして回路電流の変化を検出する場合、回路配線16に平行に電流検出線36を配置した極めて簡単な構成で容易に磁束変化Δφを捉えることができ、また、電流検出線36の設置はインバータ2側の回路条件に何らの変更を加える必要がなく、しかも、電流変化検出部32及びコンパレータ34はインバータ側回路と無関係に、検出端子40、42に発生する高電圧に応じて回路を構成でき、回路設計が容易である。
また、電流変化検出部32には、検出端子40、42に得られた高電圧をダイオード44による整流、コンデンサ46による平滑等、簡単な回路構成及び処理で正常か、放電による動作異常かの判別に必要なレベルの直流電圧を得ることができる。即ち、正常か放電による動作異常かが明確にレベル差に現れる直流電圧を発生させることができる。従って、コンパレータ34では、正常か異常かを峻別する基準レベルの設定が容易であり、その結果、検出精度が高く、誤動作なく動作異常を検出することができる。
そして、コンパレータ34から得られた検出信号Vsをインバータ制御部20のラッチ入力端子28に加えることにより、動作異常時、インバータ制御部20の動作を停止させるので、異常動作の継続からインバータ2、FL管4、LCD64等の負荷を防護することができる。
ところで、電流検出線36に断線放電や絶縁破壊放電とは無関係な検出電圧の発生について、実験によれば、電流変化検出部32のダイオード44に例えば、逆回復時間が早いショットキーダイオードを使用し、抵抗48の抵抗値を例えば、0.1〔MΩ〕〜5〔MΩ〕の抵抗値、コンデンサ46に例えば、0.0015〔μF〕〜0.1 〔μF〕等の静電容量を用いる等の回路条件の設定により、微小放電による回路電流の変化による電圧変化を検出できることが確認されている。この結果、断線放電、絶縁破壊放電、地絡放電等の異常検出が可能であり、電源投入等による過渡電流による誤動作も容易に防止できる。この場合、ダイオード44、コンデンサ46及び抵抗48について、実験に用いた具体的な回路条件を示したが、これらの回路条件は任意に設定できるものであり、本発明は、斯かる回路条件に限定されるものではない。
次に、回路電流の変化を検出する電流検出部位について、図5を参照して説明する。図5の(A)は電流検出部位をインバータトランスの一次側に設定した場合を示し、図5の(B)は電流検出部位をインバータトランスの二次側に設定した場合を示している。
電流検出部位は、図1に示す回路配線16以外に、例えば、図5の(A)に示すように、インバータトランス22の一次巻線24に接続された回路配線70、72を電流検出部位として設定し、例えば、回路配線72に電流検出部30を設置し、電流検出線36を併設してもよく、また、図5の(B)に示すように、インバータトランス22の二次巻線50に接続された回路配線52、54を電流検出部位と設定し、例えば、回路配線54に電流検出部30を設置し、電流検出線36を併設してもよい。回路配線72に電流検出線36を併設した場合には、インバータトランス22の一次巻線24側の回路配線70、72に流れる一次電流、即ち、入力電流i1 の変化による磁束変化Δφを媒介にして動作異常を検出でき、インバータ動作を停止させることができる。
また、回路配線54に電流検出線36を併設すれば、回路配線54に流れるインバータトランス22の二次電流である出力電流i2 の変化により生じる磁束変化Δφを媒介にし、出力電流i2 の変化を検出でき、動作異常時、インバータ動作を停止させ、放電等の動作異常の継続からインバータ2、FL管4等を防護できる。この場合、インバータトランス22の出力側では、入力側に比較して波形変化が大きく、放電波形の変化値も大幅に増加するので、検出する回路電流の変化及び磁束変化が大きく、検出精度が高くなる。
次に、電流検出部30の他の実施形態について、図6を参照して説明する。図6の(A)はコアを用いて構成された電流検出部30、図6の(B)はコアに電流検出線を巻回して構成された電流検出部30、図6の(C)は回路配線16、54、72に電流検出線36を巻き付けて構成された電流検出部30を示している。
電流検出部30の実施形態について、例えば、図6の(A)に示すように、電流検出部30にリング状のコア74を設置し、このコア74に回路配線16、54又は72及び電流検出線36を通すことにより、コア74を以て回路配線16、54又は72とともに電流検出線36に磁束φを通す共通の磁路を構成してもよい。このようなコア74を用いれば、コア74を形成する磁性材料が持つ透磁率μによって磁束変化Δφを増大させることができ、検出端子40、42の検出電圧を高め、検出感度を高めることができる。
また、例えば、図6の(B)に示すように、電流検出線36をコア74に巻き付けてもよい。この場合、その巻数Nによって電流検出線36に作用する磁束変化Δφを増加させ、検出端子40、42に発生する検出電圧を昇圧させ、より高い検出電圧を取り出すことができる。この場合、回路配線16、54又は72側をコア74に巻き付けてもよい。また、コア74に棒状コアを用いてもよく、棒状コアでも同様に回路配線16、54又は72及び電流検出線36に共通の磁路を形成できる。
また、例えば、図6の(C)に示すように、回路配線16、54又は72に電流検出線36を数回巻き付け、回路配線16、54又は72に生じる磁束変化Δφを電流検出線36に作用させるようにしてもよい。このように構成すれば、電流検出線36の巻回数に応じた検出電圧を検出端子40、42の間に取り出すことができる。このようにコア74を用いない構成とすれば、部品点数が少なく、電流検出部30を安価に構成できる。コア74を用いていない例えば、図1、図4、図5に示すインバータ2の異常検出回路6でも同様の効果が得られる。
次に、電流検出部30の他の実施形態について、図7及び図8を参照して説明する。図7はインバータトランスに隣接して設置された電流検出部30を示し、図8は放電電流により生じた磁束変化の検出を示す。
インバータ2に用いられているインバータトランス22は、コア23にギャップ25が形成されており、このギャップ25をプリント配線基板38側にして設置されている。そこで、このギャップ25間のプリント配線基板38上に配線パターンによって電流検出線36が設置されている。換言すれば、コア23の間隔wより狭い幅aで長さbの電流検出線36がプリント配線基板38上に形成され、このプリント配線基板38を跨がってインバータトランス22のコア23が設置され、そのギャップ25間に電流検出線36が配置されている。電流検出線36の長さbは、コア23の幅dより大きく設定しているが、同等の長さ(b=d)に設定してもよい。そして、インバータトランス22には、一次巻線24、二次巻線50が設置され、一次巻線24の端子24a、24bにはインバータ制御部20、二次巻線50の端子50aにバラストコンデンサ56(図1)、その端子50bに定電流検出抵抗60が接続される。
斯かる構成とすれば、例えば、インバータトランス22の二次巻線50側の電流ルートに放電が生じると、その放電電流によりギャップ25には、図8に示すように、急激な磁束変化Δφが生じる。この磁束変化Δφはギャップ25及びその隣接部分の電流検出線36に作用して電流検出線36に検出され、回路電流(id )の変化を表すレベルの高い検出電圧が取り出される。この検出電圧は、電流変化検出部32(図1)に加えられ、インバータ制御等に用いられる。
次に、本発明に係る表示装置について、図9を参照して説明する。図9は、本発明に係るインバータの異常検出回路を用いた表示装置を示している。
この表示装置において、インバータ2及び異常検出回路6の構成、作用及び効果については、図1〜図8を参照して説明した通りである。
そして、この表示装置において、異常動作時、その異常を表示する表示部を構成するLCD64、インジケータ76が設置され、これらの表示制御部としてプロセッサ78が設置されている。プロセッサ78は、図示しない記憶部に格納された動作異常表示のための制御プログラムを実行する処理部を構成し、このプロセッサ78には、コンパレータ34に得られる検出信号Vsが加えられているとともに、キーボード80が接続されて動作異常確認の処理を実行するための指示入力が入力される。そして、プロセッサ78から表示制御出力を受けて所定の表示を行うため、LCD64には表示駆動部82、インジケータ76には表示駆動部84が設置されている。
この表示装置の動作について、図10を参照して説明する。図10は、動作異常確認処理を示すフローチャートである。動作異常の確認処理では、その処理開始により、動作異常確認モードか否かを判定する(ステップS1)。この場合、キーボード80の特定のキー又は複数のキーに割り当てられた指令をキー操作することにより、動作異常確認モードが設定される。この場合、電源投入時に斯かる動作異常確認モードを自動設定し、インバータ2の異常を確認可能としてもよい。そして、動作異常確認モードが確立すると、コンパレータ34からの検出信号Vsを受け入れ、動作異常を検出したか否かが判定される(ステップS2)。
正常時には、LCD64又はインジケータ76に動作異常がないこと、即ち、正常動作であることが表示される(ステップS3)。この正常動作の表示の開始から例えば、所定時間だけ経過し、又は管理者がキーボード80から動作表示解除を指令したとき、表示解除が行われ(ステップS4)、その後、ステップS1に戻る。
また、ステップS2で動作異常を検出したとき、LCD64又はインジケータ76に動作異常の表示、インバータ2の動作停止を表示する(ステップS5)。管理者はこれらの表示を確認し、必要な処理を行う。この動作異常表示の開始から例えば、所定時間が経過し、又は管理者がキーボード80から動作表示解除を指令したとき、表示解除が行われ(ステップS6)、その後、ステップS1に戻る。この場合、動作異常を表示したとき、管理者が所定の改善処理を行わない限り、表示解除を行えないようにしてもよい。
LCD64の光源であるFL管4が消灯すると、LCD64の表示内容が確認し難くなることが予想されるので、インジケータ76は、異常表示やインバータ2の動作停止時にその確認が容易になるが、LCD64を異常表示やインバータ2の動作停止の表示に用いることが可能であり、FL管4が消灯状態で、その表示が確認できる場合には、必ずしもインジケータ76は必要ではない。LCD64及びインジケータ76の双方を用いて斯かる表示を行えば、動作停止やその表示の信頼性を高めることができる。
次に、本発明に係る情報処理装置及び電子装置について、図11を参照して説明する。図11の(A)は実施形態に係る携帯電話機、図11の(B)は実施形態に係るノート型パーソナルコンピュータを示している。これら携帯電話機及びノート型パーソナルコンピュータは、本発明に係るインバータの異常検出回路又は表示装置を用いて構成された情報処理装置及び電子装置を構成する。
この情報処理装置又は電子装置として、携帯電話機86やノート型パーソナルコンピュータ88の筐体90には表示装置としてのLCD64のバックライトとしてFL管4が設置され、その駆動装置として図1〜図4に示すインバータ2や本発明に係るインバータ2の異常検出回路6とともに、演算・制御部としてプロセッサ78、キーボード80等が内蔵されている。この場合、表示素子としてのインジケータ76は、携帯電話機86やノート型パーソナルコンピュータ88の筐体90内部にメインテナンス用として設置し、又はその筐体90の外面部に設置してもよい。
このような構成とすれば、携帯電話機86やノート型パーソナルコンピュータ88等の情報処理装置において、インバータ2の回路配線14、16、回路配線52、54、回路配線70、72の断線放電や絶縁破壊放電等の動作異常を監視でき、その動作を停止することにより、動作異常の継続から情報処理装置を防護できる。また、動作異常や動作停止をLCD64やインジケータ76に表示するので、その表示から動作異常や動作停止を速やかに知ることができ、信頼性の高い情報処理装置を実現できる。しかも、その表示内容からインバータ2の回路配線14、16等の断線放電、絶縁破壊放電等の異常を容易に判別でき、必要な対策を即座に実行でき、安全性の高い情報処理装置又は電子装置を提供できる。
次に、本発明の試験方法及び試験装置の実施形態について、図12及び図13を参照して説明する。図12は実施形態に係る試験装置を示す図を示し、図13は試験の手順を示すフローチャートである。
試験対象として液晶表示ユニット92が用いられ、この場合、液晶表示ユニット92は、LCD64とFL管4とを備え、FL管4には接続コネクタ58、62、LCD64には接続コネクタ94が設けられている。
そして、この液晶表示ユニット92の試験装置96には図1を参照して既述した異常検出回路6を備えたインバータ2を備えるとともに、この実施形態では、図9を参照して既述したプロセッサ78、表示駆動部82、84が備えられている。表示駆動部84の出力は表示器98に加えられ、表示器98には試験結果が表示される。その他の構成は、図1及び図9に示した構成と同様である。
液晶表示ユニット92の試験に当たり、接続コネクタ58、62に試験装置96のインバータ2の交流出力部を接続し、接続コネクタ94に表示駆動部82の出力部を接続する。
そして、図13に示すフローチャートを参照すると、試験開始により、FL管4が接続されたか否かが判定され(ステップS11)、FL管4が接続されている場合にはインバータ2よりFL管4に給電を開始する(ステップS12)。この給電の結果、回路電流の変化が所定レベル以上か否かが判定され(ステップS13)、負荷であるFL管4側の電流ルートに断線放電、地絡放電が生じていなければ、その放電電流による回路電流の変化はなく、回路電流の変化は所定レベル未満となる。この回路電流の変化の検出は、既述の通りである。この場合、異常検出回路6の検出出力は、コンパレータ34からプロセッサ78に加えられて正常と判定され、その判定結果が表示器98に試験結果として正常であることが表示される(ステップS14)。また、負荷であるFL管4側の電流ルートに断線放電又は地絡放電が生じている場合には、その放電電流により回路電流に大きな変化が生じ、その変化は所定レベル以上となる。この回路電流の変化の検出は、既述の通りである。この場合、異常検出回路6の検出出力は、インバータ制御部20に加えられ、インバータ出力が停止される。同時に、その検出出力がコンパレータ34からプロセッサ78に加えられて異常と判定され、その判定結果が表示器98に試験結果として異常であることが表示される(ステップS15)。そして、給電停止(ステップS16)の後、試験装置96から試験済みの液晶表示ユニット92が外され、次の液晶表示ユニット92が試験装置96に接続され、同様の試験が実施される。
このような試験装置及び試験方法によれば、液晶表示ユニット92について、試験工数を増加させることなく、また、特別な準備をすることなく、しかも、液晶表示ユニット92の点灯条件を使用時のそれと同一に設定して試験を行い、断線放電や地絡放電の有無、接続コネクタ58、62、94の異常の有無までも迅速かつ高精度に試験することができ、しかも、製造ライン上での試験を実施することができ、信頼性の高い製品の提供に寄与することができる。
なお、この試験装置では、インバータ制御部20の入力側の回路配線16に電流検出部30を設置した場合について説明したが、インバータトランス22の二次側の回路配線52又は54に電流検出部30を設置し、回路電流の変化による磁束変化Δφを媒介にし、回路電流の変化を検出し、FL管4や電流ルートの放電等の異常を判定するようにしてもよい。インバータトランス22の二次側の回路電流の変化を検出することは、既述の通り、検出精度を高める上で有利である。
そして、本発明は、以上説明したインバータの電流検出方法、その電流検出回路、その異常検出方法、その異常検出回路、表示装置、情報処理装置、試験方法及び試験装置の他、各種の電子装置を包含するものである。そこで、本発明の各実施形態から技術的な事項を抽出し、その技術的な意義、変形例、その他、技術的な拡張事項等を以下に列挙する。
a 実施形態では、回路電流の変化が所定レベルを超えたとき、動作異常を表す検出信号を出力する検出信号出力部として、検出電圧と所定レベルとを比較して検出信号を出力するコンパレータ34を例示したが、検出信号のレベルを受けて導通又は遮断状態となるスイッチングトランジスタやスイッチ回路を用いて検出信号出力部としてもよい。
b 検出端子40、42に得られる検出電圧を整流又は特定の周波数成分を取り出した後、ディジタル信号に変換し、そのディジタル信号を図9に示すプロセッサ78に加え、このプロセッサ78を検出信号出力部として構成し、インバータ2に動作異常が生じているか否かを判定させ、その判定出力を制御入力としてインバータ制御部20のラッチ入力端子28に加え、インバータ2の動作停止を行うようにしてもよい。この場合、動作停止を行う際、放電等の動作異常やその状況をLCD64やインジケータ76に表示させてもよい。
c 図2に示す回路配線16及び電流検出線36はプリント配線基板の導体パターンで構成したが、導体パターン以外の線材によって構成してもよく、線材を用いた場合には、回路配線16及び電流検出線36を束ねて回路配線16側の磁束変化Δφを電流検出線36に作用させてもよい。
d 電流変化検出部32の電流変化検出は、実施形態のように、検出端子40、42の検出電圧をダイオード44、コンデンサ46及び抵抗48で整流、平滑して取り出す形態以外に、断線放電や絶縁破壊放電によって生じる回路電流の変化に含まれる放電特有の成分を検波して取り出す検波回路を用いてもよい。
e インバータ制御部20が動作停止部を備えていない場合には、インバータ制御部20の直流入力側にインバータ2の動作を解除する制御部として、動作異常時の検出信号Vsによりインバータ制御部20に対する給電解除をするスイッチ回路を備えてもよい。
f 制御部としてインバータ制御部20を例に取って説明したが、プロセッサ78を制御部に用いてインバータ制御部20に対する給電制御をし、動作異常時、インバータ動作を停止させてもよい。
g 本発明が解決しようとする課題に従来技術として定電流駆動や低電流出力のインバータ2を取り上げているが、本発明は、斯かるインバータに限定されるものではない。
h 実施形態では、説明を容易化するため、インバータトランス22の一次巻線24を単一巻線としたが、インバータ制御部20に内蔵されるプッシュプル型インバータ回路の各トランジスタに付与すべき帰還信号を取り出す巻線を排除するものではなく、本発明に係るインバータの異常検出回路には各種のインバータを含むものである。
次に、電流検出部30の実験結果について、図14を参照して説明する。検出導体である電流検出線36の配線パターンについて(図2)、幅a=10〔mm〕に設定し、長さbを変化させるとともに、回路配線16と電流検出線36との間隔D=0.1〔mm〕、0.2〔mm〕、0.3〔mm〕、0.5〔mm〕に設定した場合、図14に示す電圧が電流変化検出部32に得られた。この実験結果から明らかなように、幅a=10〔mm〕×長さb=10〔mm〕の電流検出線36を使用し、電流検出線36と回路配線16との間隔Dを0.5〔mm〕に設定すれば、放電電流で検出電圧2〔V〕が得られることが確認された。この検出電圧によれば、放電による回路電流の変化を高精度に検出することが可能であることが確認された。
次に、以上述べた本発明の実施形態から抽出される技術的思想を請求項の記載形式に準じて付記として列挙する。本発明に係る技術的思想は上位概念から下位概念まで、様々なレベルやバリエーションにより把握できるものであり、以下の付記に本発明が限定されるものではない。
(付記1) 直流入力を交流出力に変換し、該交流出力を負荷に供給するインバータの電流検出方法であって、
放電に起因して生ずる前記インバータの回路電流の変化による磁束変化を媒介にし、前記回路電流の変化を検出することを特徴とするインバータの電流検出方法。
(付記2) 直流入力を交流出力に変換し、該交流出力を負荷に供給するインバータの電流検出回路であって、
放電に起因して生ずる前記インバータの回路電流の変化による磁束変化を媒介にし、前記回路電流の変化を検出する電流検出部を備えたことを特徴とするインバータの電流検出回路。
(付記3) 前記電流検出部は、前記インバータの回路配線又はトランスのコアギャップ間に隣接して設置された検出導体により、前記回路配線又はトランスのコアギャップ間に生じる磁束変化を検出する構成としたことを特徴とする付記2記載のインバータの電流検出回路。
(付記4) 直流入力を交流出力に変換し、該交流出力を負荷に供給するインバータの異常検出方法であって、
放電に起因して生ずる前記インバータの回路電流の変化による磁束変化を媒介にして前記回路電流の変化を検出し、その検出結果に基づき、前記負荷を含む電流ルートに異常があるか否かを検出することを特徴とするインバータの異常検出方法。
(付記5) 直流入力を交流出力に変換し、該交流出力を負荷に供給するインバータの異常検出回路であって、
放電に起因して生ずる前記インバータの回路電流の変化による磁束変化を媒介にして前記回路電流の変化を検出する電流検出部と、
この電流検出部の検出結果により、前記負荷を含む電流ルートに異常があるか否かを表す検出信号を出力する検出信号出力部と、
を備えたことを特徴とするインバータの異常検出回路。
(付記6) 前記インバータは、動作異常時、前記検出信号を受けてインバータ動作を停止させる制御部を備えることを特徴とする付記5記載のインバータの異常検出回路。
(付記7) 付記2記載のインバータの電流検出回路、又は付記5記載のインバータの異常検出回路を備え、異常時、その異常又は前記インバータの動作停止を表示する構成としたことを特徴とする表示装置。
(付記8) 付記2記載のインバータの電流検出回路、付記5記載のインバータの異常検出回路、又は付記7記載の表示装置を備えたことを特徴とする情報処理装置。
(付記9) 直流入力を交流出力に変換し、該交流出力を負荷に供給するインバータを用いた試験方法であって、
放電に起因して生ずる前記インバータの回路電流の変化による磁束変化を媒介にし、前記回路電流の変化を検出し、その検出結果により前記負荷を含む電流ルートに異常があるか否かを判定することを特徴とする試験方法。
(付記10) 直流入力を交流出力に変換し、該交流出力を負荷に供給するインバータと、
放電に起因して生ずる前記インバータの回路電流の変化による磁束変化を媒介にし、前記回路電流の変化を検出する電流検出部と、
を備え、前記電流検出部の検出結果により、前記負荷を含む電流ルートに異常があるか否かを判定する構成としたことを特徴とする試験装置。
(付記11) 上記インバータの異常検出回路は電流変化検出部を備え、この電流変化検出部は、磁束変化によって得られる変動電圧を整流する整流部を備えるとともに、その整流電圧を平滑する平滑部を備えた構成としたことを特徴とするインバータの異常検出回路。このように構成すれば、検出導体には精度よく回路電流の変化に比例したレベルを持つ検出信号が得られるので、微小な放電による回路電流の変化等の検出も可能となり、検出精度を高めることができる。
(付記12) 上記インバータの異常検出回路において、前記電流変化検出部は、磁束変化によって得られる変動電圧を整流する整流部を備え、該整流部をショットキーダイオードで構成したことを特徴とするインバータの異常検出回路。ショットキーダイオードは、高速ダイオードに比較して逆回復時間が早いので、放電による回路電流の変化、放電によるノイズ成分を整流して直流成分として取り出すことができ、微小な放電による回路電流の変化を検出でき、検出精度を高め、誤動作を防止できる。
(付記13) 上記インバータの異常検出回路において、前記電流変化検出部が断線放電や絶縁破壊放電等の放電に起因する電流変化を抽出するフィルタを備えることを特徴とするインバータの異常検出回路。このように構成すれば、電源投入等の過渡的な電流変化を除き、放電に起因する回路電流の変化を精度よく検出でき、誤動作を防止できる。
(付記14) 上記インバータの電流検出回路において、前記電流検出部は回路配線14、16、52、54、70、72の一部分と検出導体(電流検出線36)とを独立したディスクリート素子として構成したことを特徴とするインバータの電流検出回路。このように構成すれば、インバータ2の回路配線、例えば、回路配線14、16、52、54、70、72の任意の箇所に設置して放電等の動作異常の継続からインバータ等を防護でき、信頼性を高めることができる。
(付記15) 上記インバータの電流検出回路において、前記電流検出部は、直流入力から負荷に至る回路配線の任意の部位、直流入力側、インバータトランス22の一次側又はその二次側の何れか又は複数箇所に設置したことを特徴とするインバータの電流検出回路。即ち、回路配線14、16、52、54、70、72の任意の箇所で放電等の動作異常を検出できる。
(付記16) 上記インバータの異常検出回路において、前記制御部に表示駆動部を内蔵し、その出力をインジケータに加えて動作異常を表示可能にしたことを特徴とするインバータの異常検出回路。即ち、インバータの動作異常や動作停止を表示することにより、容易に異常状態を把握できる。
(付記17) 上記インバータの異常検出回路において、インバータ制御部20、電流変化検出部32及びコンパレータ34を単一のICで構成したことを特徴とするインバータの異常検出回路。このように構成すれば、単一のICによってインバータの異常検出回路の信頼性を高めることができるとともに、インバータの構成部品である制御ICの商品価値を向上させることができ、同時に部品点数の削減を図ることができる。
(付記18) 上記インバータの異常検出回路において、回路配線14、16、52、54、70、72及び検出導体(電流検出線36)に共通の磁路を形成するコア74を備えたことを特徴とするインバータの異常検出回路。即ち、コア74を用いて例えば、回路配線16、54、72及び検出導体に共通の磁路を構成すれば、回路配線16、54、72側の磁束変化Δφを検出導体にコア74を通じて効率よく作用させることができ、この場合、コア74が持つ透磁率によって磁束を増強して検出導体(電流検出線36)に作用させることができるので、回路電流の変化の検出精度を高めることができ、異常時のインバータ2や負荷の防護機能をより高めることができる。磁束変化を共通の磁路であるコア74の磁性材料が持つ透磁率によって磁束を増大させることができ、電流変化の検出感度を高めることができる。
(付記19) 上記情報処理装置において、インバータを電源装置又はFL管点灯装置に用いたことを特徴とする情報処理装置。このように構成すれば、信頼性の高い情報処理装置を提供できる。
(付記20) 上記インバータの異常検出回路を備えたことを特徴とする照明装置。即ち、インバータ断線放電、絶縁破壊放電の検出、動作停止、それに伴う表示が行えるので、信頼性の高い照明装置を提供できる。
以上説明したように、本発明の最も好ましい実施の形態等について説明したが、本発明は、上記記載に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載され、又は発明を実施するための最良の形態に開示された発明の要旨に基づき、当業者において様々な変形や変更が可能であることは勿論であり、斯かる変形や変更が、本発明の範囲に含まれることは言うまでもない。