JP3820175B2 - ガラス繊維巻取りチューブ及びその製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ガラス繊維ストランド等のガラス繊維を巻き取るためのガラス繊維巻取りチューブに関する。
【0002】
【従来の技術】
ガラス繊維巻取りチューブは、ガラス繊維製品の製造工程において、ガラス繊維フィラメントを集束剤で複数本集束したガラス繊維束(ガラス繊維ストランド等)を巻取るために、巻き取りコレットに装着して使用されるものである。ガラス繊維巻取りチューブは巻取り終了後抜き取られ、ガラス繊維束が円筒状に巻き取られた巻取り体が得られる。そして、この巻取り体の内面からガラス繊維束を解舒して、ガラス繊維チョップドストランドやガラス繊維ロービング等のガラス繊維製品が製造され、抜き取られたガラス繊維巻取りチューブは、新たなガラス繊維束を巻取るために再使用される。
【0003】
上記の用途に使用されるガラス繊維巻取りチューブとしては、紙製の巻取りチューブが広く用いられており、近年では合成繊維不織布の巻取りチューブ(実公平2−40051号公報)も考案されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述したような公知のガラス繊維巻取りチューブは以下のような問題点を有していた。
【0005】
すなわち、ガラス繊維束がガラス繊維巻取りチューブに巻き取られる時点では、集束剤の乾燥が完全に終了していないのが通常であるために、紙製の巻取りチューブにおいては、集束剤に含まれる水や有機溶剤により巻取りチューブが傷んで破断したり、巻取りチューブとガラス繊維が集束剤で接着して巻取りチューブの抜き取り時に表面荒れを生じることがあった。したがって、巻取りチューブの再使用可能な回数が少なくなるという問題があった。また、破断した巻取りチューブは廃棄が必要となるため、廃棄物の減量を図ることが困難であった。
【0006】
更に、紙製の巻取りチューブは板紙等の未漂白の紙からなるものが多いために、集束剤中の水や有機溶剤により紙の有色成分が抽出され、ガラス繊維束を汚染することがあった。
【0007】
一方、合成繊維不織布からなる巻取りチューブは、実公平2−40051号公報で提案されている2層化を行った場合であってもチューブとしての強度が不足し、充分な強度でガラス繊維束を巻取ることが困難であった。したがって、巻取りチューブを引抜いた後の巻取り体の型崩れが生じていた。
【0008】
本発明は上記従来技術の問題点を鑑みてなされたものであり、強度が高く、抜き取り後のガラス繊維巻取り体の型崩れを抑制することが可能で、集束剤に含まれる水や有機溶剤によっても破断や着色が発生し難く、再使用回数を増加させて廃棄物の減量を図ることも可能なガラス繊維巻取りチューブ及びその製造方法を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、筒状体の内面にロール状のシートを設けた多層構造の巻取りチューブにより、上記問題点が解決可能であることを見出し、本発明を完成させた。
【0010】
すなわち、本発明のガラス繊維巻取りチューブは、第1の合成繊維不織布筒状体と、該第1の合成繊維不織布筒状体の内面側に配置された第2の合成繊維不織布筒状体と、該第1の合成繊維不織布筒状体と該第2の合成繊維不織布筒状体との間に、ロール状に挿入されると共に、周方向の一端が他端と接着されていない紙製シートと、該紙製シートの該一端を、該第1の合成繊維不織布筒状体及び該第2の合成繊維不織布筒状体の軸方向端部に固定する1又は2以上の接合部材と、を備えるガラス繊維巻取りチューブであって、該第1の合成繊維不織布筒状体は、シート状合成繊維不織布を円筒状にして両端を重ね合わせ、重ね合わせ部を部分的に接着して得られる筒状体であると共に、切断して外面が内面になるように裏返すことでガラス繊維巻取りチューブを再生させるために、切断により生じた切断端と接着される未接着部分を内面側の末端に有する筒状体であることを特徴とするものである。
【0011】
本発明のガラス繊維巻取りチューブは、また、合成繊維不織布筒状体と、該筒状体の内面に1又は2以上の接合部材により一端が固定された紙製シートと、を備えるガラス繊維巻取りチューブであって、上記紙製シートは、上記合成繊維不織布筒状体の内面を沿うようにしてロール状に巻かれており、上記紙製シートの他端は前記一端と上記合成繊維不織布筒状体との間隙に挿入されていることを特徴とするものである。
【0012】
本発明のガラス繊維巻取りチューブは、合成繊維不織布筒状体の内面にロール状の紙製シートが形成されていることから、巻取りチューブ全体としての強度を高めることができ、抜き取り後のガラス繊維巻取り体の型崩れを抑制することが可能になる。また、ガラス繊維を巻取る場合において、未乾燥の集束剤の付着したガラス繊維は合成繊維不織布筒状体と接触し、紙製シートとは直接接触しないことから、集束剤に含まれる水や有機溶剤によって巻取りチューブの破断や着色が発生し難くなる。そして、未乾燥の集束剤で合成繊維不織布筒状体との接着が生じた場合であっても、紙製シートに比べて合成繊維不織布筒状体に対する集束剤の接着力は低いために、巻取りチューブの抜き取り時に合成繊維不織布筒状体の表面荒れが防止される。
【0013】
更に、合成繊維不織布筒状体に破断等の不都合が生じた場合に、接合部材を脱着し、不都合が生じた筒状体を交換して再使用することが可能であるため、再使用回数を増加させて廃棄物の減量を図ることが可能になる。
【0014】
また、第1の合成繊維不織布筒状体を上記構成にすることにより、第1の合成繊維不織布筒状体におけるガラス繊維との接触面に汚れや毛羽立ち等が生じてきた場合に、第1の合成繊維不織布筒状体を切断して裏返し、ガラス繊維との非接触面が外面になるようにして、切断により生じた一端と未接着部分とを接着することにより、外面が清浄な筒状体を再生することができる。このようにして合成繊維不織布筒状体の内面及び外面の両面を使用することにより、再使用可能回数を増加させることができ、廃棄物の減量を図ることも可能になる。さらに、紙製シートの内面に第2の合成繊維不織布筒状体が設置され、接合部材により接合されていることにより、合成繊維不織布筒状体に比べて耐久性に劣る紙製シートに破断等が生じても、2つの合成繊維不織布筒状体に挟まれて保持されることから、紙製シートを交換することなくガラス繊維巻取りチューブを使用し続けることができる。したがって、再使用可能回数を顕著に増加させることが可能になり、廃棄物の発生が特に効率的に抑制される。
【0015】
また、本発明のガラス繊維巻取りチューブにおいては、上記接合部材は、上記ガラス繊維巻取りチューブの端部(すなわち、合成繊維不織布筒状体の軸方向端部)に設けられている。係る構成により、接合部材とガラス繊維の接触を防止できるので、ガラス繊維を傷めることが少なくなるとともに、接合部材を通して集束剤の水や有機溶剤成分が紙製シートに到達し難くなり、着色が防止される。
【0016】
本発明のガラス繊維巻取りチューブにおいては、上記紙製シートは、上記他端に切欠きを備えることが好ましい。
【0017】
また、上記第2の合成繊維不織布筒状体は、シート状合成繊維不織布を円筒状にして両端を重ね合わせ、重ね合わせ部を部分的に接着して得られる筒状体であると共に、切断して外面が内面になるように裏返すことでガラス繊維巻取りチューブを再生させるために、切断により生じた切断端と接着される未接着部分を外面側の末端に有する筒状体であることが好ましい。かかる構成により、紙製シートの内面に固定された合成繊維不織布筒状体の内面に汚れや毛羽立ち等が生じてきた場合に、これを切断して裏返し、紙製シートとの接触面が内面になるようにして、切断により生じた一端と未接着部分とを接着することにより、筒状体を再生することができる。このようにして合成繊維不織布筒状体の内面及び外面の両面を使用することが可能になり、再使用可能回数を増加させることができ、廃棄物の減量を図ることも可能になる。
【0018】
また、本発明のガラス繊維巻取りチューブは、第1の合成繊維不織布筒状体と、該第1の合成繊維不織布筒状体の内面を沿うようにしてロール状に巻かれた紙製シートと、該紙製シートの該一端を、該第1の合成繊維不織布筒状体の軸方向端部に固定する1又は2以上の接合部材と、を備えるガラス繊維巻取りチューブであって、該第1の合成繊維不織布筒状体は、シート状合成繊維不織布を円筒状にして両端を重ね合わせ、重ね合わせ部を部分的に接着して得られる筒状体であると共に、切断して外面が内面になるように裏返すことでガラス繊維巻取りチューブを再生させるために、切断により生じた切断端と接着される未接着部分を内面側の末端に有する筒状体であり、該紙製シートの該他端は、切り欠いて軸方向の幅を狭くされていると共に、該一端と該第1の合成繊維不織布筒状体との間隙に挿入されていることを特徴とするものである。
【0019】
本発明において、上記第1の合成繊維不織布筒状体は、外面及び/又は内面がエンボス加工された筒状体であることが好ましい。係る加工がなされていることによりガラス繊維の型崩れを効果的に防止することができるため、ガラス繊維巻取りチューブを不良品のために無駄に使用することがなくなり、全体としてガラス繊維巻取りチューブの使用回数を向上させることができる。
【0020】
本発明においては、また、上記第1の合成繊維不織布筒状体と上記紙製シートとの間に、耐水性フィルムを備えることが好ましい。かかる構成により紙製シートと集束剤中の水や有機溶剤との接触が防止されるために、ガラス繊維巻取りチューブの再使用可能回数を増加することができ、廃棄物の減量を図ることが可能になる。なお、耐水性フィルムとしては、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルムが挙げられる。
【0021】
また、本発明のガラス繊維巻取りチューブの製造方法は、シート状合成繊維不織布を円筒状にして両端を重ね合わせ、重ね合わせ部を部分的に接着することで得られた未接着部分を有する第1の合成繊維不織布筒状体を得る工程と、シート状合成繊維不織布を円筒状にすることで第2の合成繊維不織布筒状体を得る工程と、該第1の合成繊維不織布筒状体の内面側に、該第2の合成繊維不織布筒状体を配置する工程と、該第1の合成繊維不織布筒状体と該第2の合成繊維不織布筒状体との間に、ロール状になるように紙製シートを挿入する工程と、ロール状にされた該紙製シートにおける周方向の一端と該第1の合成繊維不織布筒状体と該第2の合成繊維不織布筒状体とを接合部材で固定する工程と、を備えるガラス繊維巻取りチューブの製造方法であって、該第1の合成繊維不織布筒状体の未接着部分は、切断して外面が内面になるように裏返すことでガラス繊維巻取りチューブを再生させるために、切断により生じた切断端と接着される部分であることを特徴とする。
【0022】
本発明のガラス繊維巻取りチューブの製造方法においては、該紙製シートは、周方向の他端に切欠きを備えることが好ましい。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面を参照して、本発明に係るガラス繊維巻取りチューブの好適な実施形態(第1〜第5実施形態)について詳細に説明する。
【0024】
先ず、第1実施形態について説明する。図1(a)は、本発明のガラス繊維巻取りチューブの第1実施形態を示す斜視図であり、図1(b)は当該第1実施形態の側面図である。両図に示すガラス繊維巻取りチューブ1は、合成繊維不織布筒状体14と、該筒状体の内面に接合部材16により一端が固定された紙製シート12とを備えており、紙製シート12は、合成繊維不織布筒状体14の内面を沿うようにしてロール状に巻かれており、紙製シート12の他端は上記一端に内接している。また、接合部材16はガラス繊維巻取りチューブ1の端部の2箇所に設けられ、紙製シート12及び合成繊維不織布筒状体14を固定している。かかるガラス繊維巻取りチューブ1においては、ガラス繊維は2つの接合部材16の間で巻き取られるために、巻き取られるガラス繊維と接合部材16とは接触しないようになっている。
【0025】
第1実施形態において紙製シート12は、合成繊維不織布筒状体14よりも剛性が高い筒状体である。紙製シートは、板紙等の強度の高い紙からなるものであることが好ましく、紙は未漂白であっても漂白されていてもよい。また、紙の厚さは0.4〜1.2mmであることが好ましく、0.5〜0.9mmであることがより好ましい。紙の厚さが0.4mm未満であるときは、剛性が不充分で上記試験で円筒形状を保てなくなる傾向があり、ガラス繊維巻取りチューブを抜き取った後の巻取り体の型崩れが生ずる場合がある。
【0026】
紙製シートとしては、例えば王子製紙社製 スーパーKライナーなどの板紙が挙げられる。
【0027】
なお、通常のガラス繊維製品の生産工程を考慮すると、紙製シート12をロール状にしたときの内径は、巻取りコレットの外径より1.0〜2.0mm程度大きくすることが好ましい。
【0028】
第1実施形態において合成繊維不織布筒状体14は紙製シート12よりも剛性が低い筒状体である。合成繊維不織布筒状体を構成する樹脂の種類は任意であるが、熱可塑性樹脂であることが好ましい。また、軟化点が130℃以上の樹脂が好ましい。このような樹脂としては、ポリエステル、ポリアミド、ビニロン、レーヨンが例示可能である。また、合成繊維不織布筒状体は、密度200〜400g/m3(更には220〜350g/m3)、厚さ0.5〜2.0mm(更には0.6〜1.5mm)が好ましい。合成繊維不織布筒状体を構成する合成繊維不織布としては、例えばポリエステルスパンボンド不織布であるユニチカ社製 マリックスが挙げられる。
【0029】
そして、通常のガラス繊維製品の生産工程を考慮すると、合成繊維不織布筒状体14の内径は、ロール状の紙製シート12の外径より1.0〜2.0mm程度大きくすることが好ましい。
【0030】
第1実施形態に係るガラス繊維巻取りチューブ1で用いられる結合部材16は紙製シート12と合成繊維不織布筒状体14とを接合可能なものであればよく、その種類は問わない。結合部材16としては、ハトメ、ステイプル、クリップ、接着剤、両面粘着テープ等が挙げられ、これらの中では、ハトメ、ステイプル、クリップ等の物理的な接合が可能な接合部材が好ましい。第1実施形態では、ガラス繊維の巻取り性の観点から接合部材はガラス繊維巻取りチューブの端部に対になるように2個設けられているが、接合部材16の数は1でもよく2以上でもよい。
【0031】
第1実施形態に係るガラス繊維巻取りチューブ1は、例えば、シート状合成繊維不織布を円筒状にして両端を重ね合わせ、重ね合わせ部の全面を接着して合成繊維不織布筒状体14を得、この合成繊維不織布筒状体14の内面に接合部材16で紙製シート12を固定して、紙製シート12が合成繊維不織布筒状体14の内面を沿うようにロール状にすることにより製造することができる。
【0032】
重ね合わせ部の接着には、公知の接着剤及び粘着剤を使用することが可能であるが、熱可塑性樹脂からなる合成繊維不織布を用いて、不織布同士を熱融着(ヒートシール)することが好ましい。
【0033】
次に、本発明に係るガラス繊維巻取りチューブの第2実施形態について説明する。図2(a)は、本発明のガラス繊維巻取りチューブの第2実施形態を示す斜視図であり、図2(b)は当該第2実施形態の側面図である。両図に示すガラス繊維巻取りチューブ1は、合成繊維不織布筒状体14と、該筒状体の内面に接合部材16により一端が固定された紙製シート12とを備えており、紙製シート12は、合成繊維不織布筒状体14の内面を沿うようにしてロール状に巻かれており、紙製シート12の他端は上記一端と合成繊維不織布筒状体14との間隙に挿入されている。なお、紙製シート12の他端は挿入のため切り欠いて幅を狭くしている。また、接合部材16は合成繊維不織布筒状体14の端部の2箇所に設置され、紙製シート12及び合成繊維不織布筒状体14を固定している。かかるガラス繊維巻取りチューブ1においては、ガラス繊維は2つの接合部材16の間で巻き取られるために、巻き取られるガラス繊維と接合部材16とは接触しないようになっている。
【0034】
第2実施形態においても紙製シート12は、合成繊維不織布筒状体14より剛性が高い筒状体である。また、紙製シート12、合成繊維不織布筒状体14及び結合部材16の種類、剛性及び好適条件、並びに第2実施形態に係るガラス繊維巻取りチューブの製造方法等は、第1実施形態におけるのと同様である。また、巻取り性向上の観点から、合成繊維不織布筒状体14の外面及び/又は内面に公知の手法でエンボス加工を施すことが好ましい。
【0035】
次に、本発明に係るガラス繊維巻取りチューブの第3実施形態について説明する。図3(a)は、本発明のガラス繊維巻取りチューブの第3実施形態を示す斜視図であり、図3(b)は当該第3実施形態の側面図である。両図に示すガラス繊維巻取りチューブ1は、合成繊維不織布筒状体14と、該筒状体の内面に接合部材16により一端が固定された紙製シート12とを備えており、紙製シート12は、合成繊維不織布筒状体14の内面を沿うようにしてロール状に巻かれており、紙製シート12の他端は上記一端と合成繊維不織布筒状体14との間隙に挿入されている。なお、紙製シート12の他端は挿入のため切り欠いて幅を狭くしている。また、接合部材16は合成繊維不織布筒状体14の端部の2箇所に設置され、紙製シート12及び合成繊維不織布筒状体14を固定している。かかるガラス繊維巻取りチューブ1においては、ガラス繊維は2つの接合部材16の間で巻き取られるために、巻き取られるガラス繊維と接合部材16とは接触しないようになっている。
【0036】
第3実施形態においても紙製シート12は、合成繊維不織布筒状体14より剛性が高い筒状体である。また、合成繊維不織布筒状体14は、シート状合成繊維不織布を円筒状にして両端を重ね合わせ、重ね合わせ部(図3(b)におけるA)を部分的に接着して得られる筒状体(接着部分は図3(b)におけるB)であって、内面側の末端に未接着部分18を有する筒状体である。
【0037】
なお、第3実施形態における紙製シート12、合成繊維不織布筒状体14及び結合部材16の種類、剛性及び好適条件等は、第1実施形態におけるのと同様である。また、巻取り性向上の観点から、合成繊維不織布筒状体14の外面及び/又は内面に公知の手法でエンボス加工を施すことが好ましい。
【0038】
第3実施形態に係るガラス繊維巻取りチューブ1は、例えば、以下の方法で製造が可能である。すなわち、シート状合成繊維不織布を円筒状にして両端を重ね合わせ、重ね合わせ部を接着して合成繊維不織布筒状体14を得る。なお、重ね合わせ部を接着するにあたり、内面側の末端に未接着部分18が形成されるように、接着剤や粘着剤、好適には熱融着(ヒートシール)により、部分的に接着を行う。そして、得られた合成繊維不織布筒状体14の内面に接合部材16で紙製シート12を固定して、紙製シート12が合成繊維不織布筒状体14の内面を沿うようにロール状にすればよい。
【0039】
第3実施形態は、合成繊維不織布筒状体14に未接着部分18が形成されているために、合成繊維不織布筒状体14におけるガラス繊維との接触面(外面)に汚れ等の不都合が生じてきた場合に、これを切断して裏返し、ガラス繊維との非接触面が外面になるようにして、切断により生じた一端と未接着部分18とを接着することができ、外面が清浄なガラス繊維巻取りチューブを再生することが可能となる。
【0040】
図4(a)〜(f)は、第3実施形態においてガラス繊維巻取りチューブ1を再生させる過程を示す斜視図である。再生のためには、先ず、紙製シート12と合成繊維不織布筒状体14と接合部材16とを備えたガラス繊維巻取りチューブ1(図4(a))から、接合部材16を脱着して紙製シート12を除去する(図4(b))。そして、切断具24により合成繊維不織布筒状体14を切断して(図4(c))、切断した合成繊維不織布筒状体14を開き(図4(d))、外面が内面になるように裏返して未接着部分18と切断により生じた一端とを接着(好ましくは熱融着)する(図4(e))。次いで、紙製シート12を挿入して、紙製シート12と新たに得られた合成繊維不織布筒状体14とを接合部材16で接合することにより、外面が清浄なガラス繊維巻取りチューブ1が再生される。
【0041】
このように合成繊維不織布筒状体の再生を行うことにより、ガラス繊維巻取りチューブの再使用可能回数を増加させることができ、廃棄物の減量を図ることが可能になる。
【0042】
次に、本発明に係るガラス繊維巻取りチューブの第4実施形態について説明する。図5(a)は、本発明のガラス繊維巻取りチューブの第4実施形態を示す斜視図であり、図5(b)は当該第4実施形態の側面図である。両図に示すガラス繊維巻取りチューブ1は、合成繊維不織布筒状体14と、紙製シート12と、合成繊維不織布筒状体20と、これらを固定する2個の接合部材16(固定位置はガラス繊維巻取りチューブの端部)と、を備えている。そして、紙製シート12は、同心円状になるように配置された合成繊維不織布筒状体14と合成繊維不織布筒状体20との間でロール状に巻かれており、その一端は合成繊維不織布筒状体14及び合成繊維不織布筒状体20に接合部材16で固定され、他端は上記一端と合成繊維不織布筒状体14との間隙に挿入されている。なお、紙製シート12の他端は挿入のため切り欠いて幅を狭くしている。
【0043】
第4実施形態における紙製シート12は、合成繊維不織布筒状体14及び合成繊維不織布筒状体20よりも剛性が高い筒状体である。そして、紙製シート12、合成繊維不織布筒状体14及び結合部材16の種類、剛性及び好適条件等は、第1実施形態におけるのと同様である。また、巻取り性向上の観点から、合成繊維不織布筒状体14の外面及び/又は内面に公知の手法でエンボス加工を施すことが好ましい。
【0044】
合成繊維不織布筒状体20を構成する樹脂の種類は任意であるが、合成繊維不織布筒状体14と同様に熱可塑性樹脂であることが好ましい。また、軟化点が130℃以上の樹脂が好ましい。このような樹脂としては、ポリエステル、ポリアミド、ビニロン、レーヨンが例示可能である。合成繊維不織布筒状体20の構成樹脂及びその軟化点並びに密度及び厚さは、合成繊維不織布筒状体14と同一でも異なっていてもよいが、製造工程における混同防止やコストの観点から同一であることが好ましい。
【0045】
また、通常のガラス繊維製品の生産工程を考慮すると、合成繊維不織布筒状体20の外径は、ロール状の紙製シート12の内径より1.0〜2.0mm程度小さくすることが好ましい。
【0046】
第4実施形態に係るガラス繊維巻取りチューブ1は、以下の方法で製造することができる。すなわち、シート状合成繊維不織布を円筒状にして両端を重ね合わせ、重ね合わせ部の全面を接着(熱融着が好ましい)して合成繊維不織布筒状体14を得、更に同様の方法により合成繊維不織布筒状体20を得る。次いで、同心円状に配置した合成繊維不織布筒状体14と合成繊維不織布筒状体20との間に、ロール状になるように紙製シート12を挿入し、紙製シート12の一端と合成繊維不織布筒状体14と合成繊維不織布筒状体20とを接合部材16で固定して、紙製シート12の他端を、合成繊維不織布筒状体14と紙製シート12の間隙に挿入すればよい。
【0047】
第4実施形態においては、紙製シートが使用途中に破断した場合であっても、2つの合成繊維不織布筒状体に挟まれて保持されることから、紙製シートを交換することなくガラス繊維巻取りチューブを使用し続けることができ、再使用可能回数を顕著に増加させることが可能になり、廃棄物の発生も特に効率的に抑制される。
【0048】
次に、本発明に係るガラス繊維巻取りチューブの第5実施形態について説明する。図6(a)は、本発明のガラス繊維巻取りチューブの第5実施形態を示す斜視図であり、図6(b)は当該第5実施形態の側面図である。両図に示すガラス繊維巻取りチューブ1は、合成繊維不織布筒状体14と、紙製シート12と、合成繊維不織布筒状体20と、これらを固定する2個の接合部材16(固定位置はガラス繊維巻取りチューブの端部)と、を備えている。そして、紙製シート12は、同心円状になるように配置された合成繊維不織布筒状体14と合成繊維不織布筒状体20との間でロール状に巻かれており、その一端は合成繊維不織布筒状体14及び合成繊維不織布筒状体20に接合部材16で固定され、他端は上記一端と合成繊維不織布筒状体14との間隙に挿入されている。なお、紙製シート12の他端は挿入のため切り欠いて幅を狭くしている。
【0049】
なお、合成繊維不織布筒状体14は、シート状合成繊維不織布を円筒状にして両端を重ね合わせ、重ね合わせ部(図6(b)におけるA)を部分的に接着して得られる筒状体(接着部分は図6(b)におけるB)であって、内面側の末端に未接着部分18を有する筒状体である。また、合成繊維不織布筒状体20は、シート状合成繊維不織布を円筒状にして両端を重ね合わせ、重ね合わせ部(図6(b)におけるC)を部分的に接着して得られる筒状体(接着部分は図6(b)におけるD)であって、外面側の末端に未接着部分22を有する筒状体である。
【0050】
第5実施形態における紙製シート12は、合成繊維不織布筒状体14及び合成繊維不織布筒状体20よりも剛性が高い筒状体である。そして、紙製シート12、合成繊維不織布筒状体14及び結合部材16の種類、剛性及び好適条件等は、第4実施形態におけるのと同様である。また、巻取り性向上の観点から、合成繊維不織布筒状体14の外面及び/又は内面に公知の手法でエンボス加工を施すことが好ましい。
【0051】
第5実施形態に係るガラス繊維巻取りチューブ1は、以下の方法で製造することができる。すなわち、シート状合成繊維不織布を円筒状にして両端を重ね合わせ、重ね合わせ部を部分的に接着(熱融着が好ましい)して合成繊維不織布筒状体14を得、更に同様の方法により合成繊維不織布筒状体20を得る。なお、合成繊維不織布筒状体14及び合成繊維不織布筒状体20の重ね合わせ部を接着するにあたり、それぞれ、内面側の末端に未接着部分18が、外面側の末端に未接着部分22が形成されるように、接着剤や粘着剤、好適には熱融着(ヒートシール)により、部分的に接着を行う。次いで、同心円状に配置した合成繊維不織布筒状体14と合成繊維不織布筒状体20との間に、ロール状になるように紙製シート12を挿入し、紙製シート12の一端と合成繊維不織布筒状体14と合成繊維不織布筒状体20とを接合部材16で固定して、紙製シート12の他端を、合成繊維不織布筒状体14と紙製シート12の間隙に挿入すればよい。
【0052】
第5実施形態に係るガラス繊維巻取りチューブは合成繊維不織布筒状体14及び合成繊維不織布筒状体20に未接着部分がある他は、第4実施形態にかかるガラス繊維巻取りチューブと同様であるため、第4実施形態と同様の効果が得られる。すなわち、耐久性に劣る紙製シート12が使用途中に破断した場合であっても、合成繊維不織布筒状体14及び合成繊維不織布筒状体20に挟まれて保持されることから、紙製シート12を交換することなくガラス繊維巻取りチューブを使用し続けることができ、再使用可能回数を顕著に増加させることが可能になり、廃棄物の発生も特に効率的に抑制される。
【0053】
また、図4に示す方法と同様にして合成繊維不織布筒状体14及び合成繊維不織布筒状体20を再生することができることから、ガラス繊維巻取りチューブの再使用可能回数を増加させることができ、廃棄物の減量を図ることが可能になる。なお、合成繊維不織布筒状体14を再生してなる筒状体を合成繊維不織布筒状体20として用いてもよく、合成繊維不織布筒状体20を再生してなる筒状体を合成繊維不織布筒状体14として用いてもよい。
【0054】
以上説明した第1〜第5実施形態に係るガラス繊維巻取りチューブは、ガラス繊維束を巻取るために用いられるが、実際の生産工程では、例えば、ガラス繊維巻取りチューブをガラス繊維製造装置における巻取りコレットに装着して、巻取りコレットを所定の回転数で回転させ、綾振り装置で所定の幅に綾振られたガラス繊維束をガラス繊維巻取りチューブに巻きつける。巻取り終了後は、ガラス繊維巻取りチューブが抜き取られて再使用されるが、上述したように本発明のガラス繊維巻取りチューブは耐久性が向上しているために、従来に比べて再使用可能な回数が顕著に増加する。
【0055】
そして、第1及び第2実施形態においては、紙製シートが合成繊維不織布筒状体より先に破断した場合であっても紙製シートを交換することができる。第3実施形態においては、合成繊維不織布筒状体の内面及び外面の両面使用が容易であるために、ガラス繊維巻取りチューブの再使用可能な回数を更に増加させることができる。
【0056】
第4実施形態においては、紙製シートが2つの合成繊維不織布筒状体より先に破断した場合であっても、2つの合成繊維不織布筒状体により保持されることから、ガラス繊維巻取りチューブの再使用可能な回数を増加させることが可能になる。そして、第5実施形態においては、上記に加え、2つの合成繊維不織布筒状体の内面及び外面の両面使用ができることから、ガラス繊維巻取りチューブの再使用可能回数を特に顕著に増加させることができる。なお、第1及び第4実施形態における合成繊維不織布筒状体は未接着部分を有していないが、その表面に不都合が生じた場合には、切断することなく裏返して再使用することもできる。
【0057】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、強度が高く、抜き取り後のガラス繊維巻取り体の型崩れを抑制することが可能で、集束剤に含まれる水や有機溶剤によっても破断や着色が発生し難く、再使用回数を増加させて廃棄物の減量を図ることも可能なガラス繊維巻取りチューブを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)は、本発明のガラス繊維巻取りチューブの第1実施形態を示す斜視図であり、(b)は当該第1実施形態の側面図である。
【図2】(a)は、本発明のガラス繊維巻取りチューブの第2実施形態を示す斜視図であり、(b)は当該第2実施形態の側面図である。
【図3】(a)は、本発明のガラス繊維巻取りチューブの第3実施形態を示す斜視図であり、(b)は当該第3実施形態の側面図である。
【図4】ガラス繊維巻取りチューブを再生させる過程を示す斜視図である。
【図5】(a)は、本発明のガラス繊維巻取りチューブの第4実施形態を示す斜視図であり、(b)は当該第4実施形態の側面図である。
【図6】(a)は、本発明のガラス繊維巻取りチューブの第5実施形態を示す斜視図であり、(b)は当該第5実施形態の側面図である。
【符号の説明】
1・・・ガラス繊維巻取りチューブ、12・・・紙製シート、14・・・合成繊維不織布筒状体、16・・・接合部材、18・・・未接着部分、20・・合成繊維不織布筒状体、22・・・未接着部分、24・・・切断具。

Claims (8)

  1. 第1の合成繊維不織布筒状体と、
    前記第1の合成繊維不織布筒状体の内面側に配置された第2の合成繊維不織布筒状体と、
    前記第1の合成繊維不織布筒状体と前記第2の合成繊維不織布筒状体との間に、ロール状に挿入されると共に、周方向の一端が他端と接着されていない紙製シートと、
    前記紙製シートの前記一端を、前記第1の合成繊維不織布筒状体及び前記第2の合成繊維不織布筒状体の軸方向端部に固定する1又は2以上の接合部材と、を備えるガラス繊維巻取りチューブであって、
    前記第1の合成繊維不織布筒状体は、シート状合成繊維不織布を円筒状にして両端を重ね合わせ、重ね合わせ部を部分的に接着して得られる筒状体であると共に、切断して外面が内面になるように裏返すことでガラス繊維巻取りチューブを再生させるために、切断により生じた切断端と接着される未接着部分を内面側の末端に有する筒状体であることを特徴とするガラス繊維巻取りチューブ。
  2. 前記紙製シートは、前記他端に切欠きを備えることを特徴とする請求項1記載のガラス繊維巻取りチューブ。
  3. 前記第2の合成繊維不織布筒状体は、シート状合成繊維不織布を円筒状にして両端を重ね合わせ、重ね合わせ部を部分的に接着して得られる筒状体であると共に、切断して外面が内面になるように裏返すことでガラス繊維巻取りチューブを再生させるために、切断により生じた切断端と接着される未接着部分を外面側の末端に有する筒状体であることを特徴とする請求項1又は2記載のガラス繊維巻取りチューブ。
  4. 第1の合成繊維不織布筒状体と、
    前記第1の合成繊維不織布筒状体の内面を沿うようにしてロール状に巻かれた紙製シートと、
    前記紙製シートの前記一端を、前記第1の合成繊維不織布筒状体の軸方向端部に固定する1又は2以上の接合部材と、を備えるガラス繊維巻取りチューブであって、
    前記第1の合成繊維不織布筒状体は、シート状合成繊維不織布を円筒状にして両端を重ね合わせ、重ね合わせ部を部分的に接着して得られる筒状体であると共に、切断して外面が内面になるように裏返すことでガラス繊維巻取りチューブを再生させるために、切断により生じた切断端と接着される未接着部分を内面側の末端に有する筒状体であり、
    前記紙製シートの前記他端は、切り欠いて軸方向の幅を狭くされていると共に、前記一端と前記第1の合成繊維不織布筒状体との間隙に挿入されていることを特徴とするガラス繊維巻取りチューブ。
  5. 前記第1の合成繊維不織布筒状体は、外面及び/又は内面がエンボス加工された筒状体であることを特徴とする請求項1〜のいずれか一項に記載のガラス繊維巻取りチューブ。
  6. 前記第1の合成繊維不織布筒状体と前記紙製シートとの間に、耐水性フィルムを備えることを特徴とする請求項1〜のいずれか一項に記載のガラス繊維巻取りチューブ。
  7. シート状合成繊維不織布を円筒状にして両端を重ね合わせ、重ね合わせ部を部分的に接着することで得られた未接着部分を有する第1の合成繊維不織布筒状体を得る工程と、
    シート状合成繊維不織布を円筒状にすることで第2の合成繊維不織布筒状体を得る工程と、
    前記第1の合成繊維不織布筒状体の内面側に、前記第2の合成繊維不織布筒状体を配置する工程と、
    前記第1の合成繊維不織布筒状体と前記第2の合成繊維不織布筒状体との間に、ロール状になるように紙製シートを挿入する工程と、
    ロール状にされた前記紙製シートにおける周方向の一端と前記第1の合成繊維不織布筒状体と前記第2の合成繊維不織布筒状体とを接合部材で固定する工程と、
    を備えるガラス繊維巻取りチューブの製造方法であって、
    前記第1の合成繊維不織布筒状体の未接着部分は、切断して外面が内面になるように裏返すことでガラス繊維巻取りチューブを再生させるために、切断により生じた切断端と接着される部分であることを特徴とするガラス繊維巻取りチューブの製造方法。
  8. 前記紙製シートは、周方向の他端に切欠きを備えることを特徴とする請求項7記載のガラス繊維巻取りチューブの製造方法。
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