JP3818501B2 - 鋼板の表面温度測定方法およびその装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、熱延鋼板や厚板の製造工程における鋼板の表面温度測定方法及びその装置に関し、特に、冷却工程における高温の鋼板の表面温度を測定するのに好適な表面温度測定方法およびその装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
熱延鋼板や厚板を製造する上で必要となる、熱間圧延工程又はその後の冷却工程における鋼板の温度を放射測温するためには、鋼板からの熱放射光(以下、放射光という)の光路を安定的に確保する技術が不可欠とされている。特に、冷却工程では、鋼板周辺に多量の冷却水が飛散していたり、鋼板が冷却水で半ば水没している環境にあり、斯かる冷却水から受光すべき放射光の光路を安定的に確保する必要がある。このような課題を解決することを目的とした従来技術として、特開昭59−100224号公報や特開平9−316544号公報に開示された技術が知られている。
【0003】
特開昭59−100224号公報には、当該公報の第4図に示すように、ノズルヘッダーから清浄水を鋼板に向けて噴射することにより、鋼板とノズルヘッダー間に清浄水柱を形成し、当該清浄水柱(以下、水柱という)を介して鋼板表面からの放射光を受光し、測温する技術が開示されている。つまり、この水柱が光導波路の役割を果たしている。このように、多量の冷却水が存在する環境の中で、放射光の光路を安定的に確保するためには、水柱を用いることが一つの方法であるといえる。ここで、鋼板表面からの放射光は水の中で減衰することが知られている。その減衰率は、放射光が通過する水中距離(特開昭59−100224号公報における(1)式中の距離L)の関数で記述できるので、当該水中距離を超音波を用いて測定し、この測定結果に基づいて測温値を補正することが前記公報に開示されている。
【0004】
特開平9−316544号公報は、前記特開昭59−100224号公報に記載された技術の問題点である装置の大きさや、使用する清浄水の量を改善すべくなされたものであり、ノズルヘッダー等の装置構成に改良を施した技術が開示されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の発明者らは、鋭意研究した結果、従来技術における以下の問題点を見出した。
【0006】
つまり、上記従来技術における温度測定法(以下、従来法という)では、鋼板表面に水柱を衝突させることにより、鋼板表面が冷却され、この冷却された表面からの放射光を測定するために、測温値の代表性が損なわれることになるという問題がある。さらには、冷却された鋼板表面の温度低下の程度が変動することも問題である。
【0007】
より詳細に説明すれば、例えば、熱間仕上出側における鋼板温度は、通常600℃以上であるので、光導波路としての水柱は、鋼板を冷却する冷却水としても機能することになる。この際、鋼板温度が高温であるため、鋼板表面では冷却水が沸騰した状態となる。この沸騰状態として、膜沸騰状態と核沸騰状態(及び両者の移行状態である遷移沸騰状態)とが存在する。
【0008】
膜沸騰状態とは、鋼板表面と冷却水の間に蒸気膜が存在する状態であり、その蒸気膜の存在によって、熱流束(熱伝達率)が小さく、冷却能が低くなる。このため、膜沸騰状態では、水柱の冷却に起因した鋼板表面の温度低下は小さいものとなる。
【0009】
一方、核沸騰状態とは、鋼板表面に蒸気膜が存在しなくなり、鋼板表面に直接冷却水が接触するようになった状態であり、熱流束(熱伝達率)が大きく、冷却能が高くなる。このため、核沸騰状態では、水柱の冷却に起因した鋼板表面の温度低下は大きいものとなる。
【0010】
以上に説明したような原理により、周辺の鋼板表面の水が核沸騰状態で無い場合に、光導波路として用いる水柱と鋼板との界面が核沸騰状態であると、その水柱が衝突する鋼板表面のみが急激に冷却されてしまうため、鋼板表面の水柱と接触している部分(すなわち測温箇所)とそれ以外の部分との温度差、或いは、鋼板表面と鋼板内部との温度差が大きくなってしまう。従って、前述のように、測温値の代表性が損なわれることになるという問題が生じる。
【0011】
また、水柱と鋼板の接する界面が核沸騰状態及び遷移沸騰状態では、鋼板温度や搬送速度等の条件が少し変化しただけで熱伝達率が大きく変化するため、冷却された鋼板表面の温度低下の変動幅が大きくなり、水柱による冷却分を補正することも困難である。
【0012】
膜沸騰状態、遷移沸騰状態又は核沸騰状態のいずれの沸騰状態になるかは、鋼板温度、鋼板の表面性状や表面近傍の物性値、接触する水の温度や圧力、水との接触時間すなわち鋼板速度等に依存するものである。例えば、熱延鋼板を製造する際の熱間圧延工程における冷却帯では、鋼板温度は1000℃程度、鋼板速度は600mpmから1500mpm程度であるが、このような条件下で、常温の水を鋼板に衝突させると衝突箇所では核沸騰状態となることもあり、表面が急激に冷却され得る。本発明の発明者らが調査した結果では、約20℃〜30℃、或いはそれ以上に低下する場合がある。また、この低下の度合いは、鋼板速度や、水柱に到達する直前の鋼板温度にも依存する。上記従来法においては、水柱と接触する鋼板表面での沸騰状態がどのようになっているか何ら考慮されておらず、常温の水から形成された水柱を使用するのが一般的であるため、上記従来法で得られた測温値は、鋼板温度の代表性を大きく損なっている上に、再現性も悪いという問題がある。
【0013】
本発明は、斯かる従来技術の問題点を解決するべくなされたもので、測定値の代表性を損なわず、測定精度の高い、鋼板の表面温度測定方法及び測定装置を提供することを課題とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
斯かる課題を解決するべく、本発明は、請求項1に記載のように、被測温鋼板と放射温度計との間に、光導波路としての水柱を形成し、当該水柱を介して被測温鋼板表面からの放射光を前記放射温度計で受光することにより、被測温鋼板の表面温度を測定する方法であって、前記水柱を形成する温水の温度及び水圧を、被測温鋼板表面の測温箇所における沸騰状態が膜沸騰状態を維持する温度及び水圧に設定することを特徴とする鋼板の表面温度測定方法を提供するものである。
【0015】
請求項1に係る発明によれば、光導波路としての水柱を形成する温水の温度及び水圧が、被測温鋼板表面の測温箇所における沸騰状態が膜沸騰状態を維持する温度及び水圧に設定される。従って、膜沸騰状態では水柱による鋼板表面の温度低下が小さいため、測温箇所とそれ以外の部分との温度差が小さくなり、測定値の代表性を損なうことなく、測定精度を高めることが可能である。なお、被測温鋼板表面の測温箇所における沸騰状態は、鋼板の表面温度、鋼板と水柱との接触時間(鋼板と水柱との接触面積を一定にすると鋼板の搬送速度と同義)、水柱を形成する温水の温度、水圧と相関関係を有する。このうち、鋼板の表面温度と鋼板の搬送速度は、鋼板に要求される仕様(加工性や強度等)によって決まるパラメータであるので、本発明では、沸騰状態が膜沸騰状態を維持するように、水柱を形成する温水の温度及び水圧を制御している。
【0016】
好ましくは、請求項2に記載のように、前記温水の温度は70℃以上とされ、前記温水の水圧はゲージ圧で1気圧以下に設定される。以下、斯かるパラメータ値の設定理由について説明する。
【0017】
鋼板に水柱を接触させ、当該水柱を介して測温する際には、鋼板の極表面の温度が低下する。図2は、本発明の発明者らが本発明を完成させる過程において試験を行った結果を示すものであり、約1000℃、厚み11mmの固定(静止)した状態の鋼板の下面から水柱を接触させ、当該接触の直前・直後の鋼板表面(下面)及び鋼板表面から3mm内部の温度変化を示す。図2(a)は水柱を形成する水の温度を12℃に、図2(b)は80℃にそれぞれ設定した時の結果である。なお、図中、点線で示す鋼板表面の温度は、水柱を介して鋼板表面からの放射光を放射温度計で受光することにより測温した値を示す。また、図中、実線で示す鋼板表面から3mm内部の温度は、鋼板の下面から3mmまでの厚みを残して上面を穿孔し、当該孔に熱電対を埋め込んで溶接することにより測温した値を示す。
【0018】
図2の(a)及び(b)に示すように、鋼板表面より3mm内部の測温値の変化率は、水柱が接触した直後にも変化していないが、鋼板表面温度は急速に低下している。つまり、この表面温度低下は、水柱が接触した極表面に限られたものであるといえる。また、図2(a)に示すように、水温12℃の場合には、鋼板に水柱が接触すれば急激に表面温度が低下しているのに対して、図2(b)に示すように、水温80℃ではそれほど低下していないことが分かる。これは、水温12℃の水柱を接触させると接触箇所近傍は核沸騰状態となり鋼板表面が急激に冷却される一方、水温80℃では膜沸騰状態を維持するので鋼板表面の冷却が抑制されているからだと考えられる。
【0019】
図3は、前述した図2の結果が得られた試験条件と同様の方法で、約1000℃に加熱した鋼板について、水柱の水温を12℃、50℃、80℃にそれぞれ変更して鋼板表面温度を測定した結果を示す。図3の横軸は、鋼板表面(下面)と水柱との接触時間を鋼板の搬送速度に換算した値を、図3の縦軸は、水柱の接触直前の表面温度を基準とした表面温度の低下分を、それぞれ対数表示で示している。搬送速度への換算は、鋼板と水柱の接触面の径を100mmとし、その100mmを接触時間で除した値を搬送速度に置き換えて表示している。換言すれば、図2に示す測定結果(図2では12℃及び80℃の場合のみ表示したが、実際には50℃の場合等も試験している)を換算することで、図3の結果を算出している。
【0020】
図3に示すように、水温12℃の場合には、鋼板速度が1000mpmであっても約20℃表面温度が低下するが、水温を50℃以上にした場合には、鋼板速度が600mpm以上であれば、表面温度の低下を3℃以下に抑制することができる。このように、水柱の水温を50℃以上にすると、表面温度の低下を抑制することが可能である。これは、前述したように、水温12℃の水柱を接触させると接触箇所近傍は核沸騰状態となり鋼板表面が急激に冷却される一方、水温50℃以上では膜沸騰状態を維持するので鋼板表面の冷却が抑制されているからだと考えられる。
【0021】
また、前述のように、鋼板と水柱の接触箇所における沸騰状態は鋼板温度にも依存する。図4は、前述した図2の結果が得られた試験条件と同様の方法で、初期温度1000℃の鋼板について、膜沸騰状態から遷移沸騰状態を経て核沸騰状態に移行する際の鋼板温度(急冷点(クエンチ点)と称する)と水温との関係を調査した結果を示す。なお、図4における急冷点(クエンチ点)は、図2に示すような鋼板表面温度をプロットした曲線において勾配が急峻になる時の温度、つまり冷却速度が最も急速になる温度を読みとって急冷点の値とした。図4に示すように、水温が70℃以上であれば、急冷点が600℃未満、つまり鋼板温度が600℃以上で膜沸騰状態となり、鋼板表面の冷却速度が抑制できることが分かった。特に、鋼板組織を冷却によって制御するような鋼板においては、冷却途中の600℃〜800℃の測温が重要な場合があり、鋼板温度600℃以上で安定的に膜沸騰状態を実現するためには、水温70℃以上が必要であると言える。
【0022】
なお、図2〜図4に示した結果は、水柱の接触面での水圧をゲージ圧で1気圧以下に設定して試験した結果である。ここで、接触面での水圧が高くなると核沸騰に遷移し易くなるため、あまり水圧を高くするような条件は好ましくなく、本試験で設定した1気圧以下が好ましく、0.2気圧程度でも十分である。
【0023】
以上に説明した試験結果に基づき、本発明の発明者らは、鋼板温度600℃以上で、鋼板速度600mpm以上程度の被測温鋼板の場合、請求項2に記載のように、水柱を形成する温水の温度を70℃以上とし、前記温水の水圧を1気圧以下に設定することにより、膜沸騰状態を維持し、測定精度を高め得ることを見出した。
【0024】
好ましくは、本発明は、請求項3に記載のように、前記水柱と前記放射温度計との間に、前記放射温度計に接続された光ファイバを配置し、前記水柱及び前記光ファイバを介して被測温鋼板表面からの放射光を前記放射温度計で受光することにより、被測温鋼板の表面温度を測定するように構成される。
【0025】
熱間圧延ラインでは、振動や鋼板からの熱放射の影響によって、放射温度計から水を遮断する機構に故障が生じる可能性がある。水の遮断機構に故障が生じると、放射温度計が水に晒されるため、当然放射温度計の故障に通じることになる。このように、従来法のような装置構成では、放射温度計の故障が発生し易いという問題がある。請求項3に係る発明によれば、水柱と放射温度計との間に、放射温度計に接続された光ファイバを配置し、水柱及び光ファイバを介して被測温鋼板表面からの放射光を放射温度計で受光する構成であるため、放射温度計を熱間圧延ラインの振動や熱放射の影響から回避、抑制又は軽減し得る位置に設置することができる。また、光ファイバを介することで、放射温度計を、容易にメンテナンスできる位置に設置することも可能である。
【0026】
なお、本発明は、請求項4に記載のように、放射温度計と、被測温鋼板と対向する位置に先端が配置され、後端が前記放射温度計に接続された光ファイバと、被測温鋼板と前記光ファイバの先端との間に光導波路としての水柱を形成するべく、被測温鋼板表面に向けて温水を噴射するノズルと、前記ノズルに温水を供給するために水を昇温する昇温手段とを備え、前記水柱及び前記光ファイバを介して被測温鋼板表面からの放射光を前記放射温度計で受光することにより、被測温鋼板の表面温度を測定する表面温度測定装置であって、前記ノズルは、前記水柱を形成する温水の水圧を、被測温鋼板表面の測温箇所における沸騰状態が膜沸騰状態を維持する水圧にして噴射し、前記昇温手段は、前記水柱を形成する温水の温度を、被測温鋼板表面の測温箇所における沸騰状態が膜沸騰状態を維持する温度に昇温することを特徴とする鋼板の表面温度測定装置としても提供され得る。
【0027】
好ましくは、前記表面温度測定装置は、被測温鋼板表面と前記放射温度計との間に、0.9μmより長い波長の光を遮断する光学フィルタをさらに備える。
【0028】
斯かる発明によれば、被測温鋼板表面からの放射光が、0.9μmより長い波長の光を遮断する光学フィルタを介して放射温度計に受光されることになる。つまり、放射温度計における検出波長が0.9μmより短くなるため、後述するように水中での光路長変動の影響を受け難く、測温誤差を低減することが可能である。
【0029】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面を参照しつつ、本発明の一実施形態について説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る鋼板の表面温度測定装置の概略構成を示す。図1に示すように、表面温度測定装置1は、放射温度計11と、被測温鋼板Sと対向する位置に先端が配置され、後端が放射温度計11に接続された光ファイバ12と、被測温鋼板Sと光ファイバ12の先端との間に光導波路としての水柱Wを形成するべく、被測温鋼板Sの表面(本実施形態では下面)に向けて温水を噴射するノズル13と、ノズル13に温水を供給するための昇温槽14とを備えている。表面温度測定装置1は、水柱W、水路7内の温水の一部(図1の紙面上下方向に流れている温水)及び光ファイバ12を介して被測温鋼板Sの表面からの放射光を放射温度計11で受光し、被測温鋼板Sの表面温度を測定するように構成されている。
【0030】
ノズル13は、後述するポンプ2と協働して、水柱Wを形成する温水の水圧を、被測温鋼板Sの表面の測温箇所における沸騰状態が膜沸騰状態を維持する水圧にして噴射し、昇温槽14は、水柱Wを形成する温水の温度を、被測温鋼板Sの表面の測温箇所における沸騰状態が膜沸騰状態を維持する温度に昇温するように構成されている。
【0031】
まず、放射温度計11において検出すべき波長は以下のような観点で決定される。本発明の発明者らが水道水の分光透過率を調査した結果、水中での光路長Lが200mmの場合に、0.9μmより短い測定波長の放射光では、透過率が約30%以上であった。従って、0.9μmより短い波長を用いることにより、水中での光路長Lが200mm程度であれば、大きな測温誤差を生じずに測定可能となる。図5は、水柱の厚み(水中での光路長)が変動した際の透過率変化を示す。例えば、測定中心波長0.83μmを用いると、水中での光路長が200mm±25mm変動した際の透過率変化は±7%である。この値を測温誤差に換算すると、測定温度が600℃の際に±0.36%、すなわち±3.1℃となる。さらに、短い測定中心波長0.67μmを用いた場合には、光路長が200mm±25mm変動した際の透過率変化は±1%であり、この値を測温誤差に換算すると、測定温度が800℃の際に±0.051%、すなわち±0.55℃となる。いずれの測定中心波長を使用するかは、測定対象温度、すなわち鋼板Sの温度に依存するが、いずれにしても測定中心波長が0.9μmより短い場合には、大きな測温誤差が生ずることはない。なお、測定中心波長を0.9μmより短くするには、被測温鋼板Sの表面と放射温度計11との間(例えば、光ファイバ12の後端と放射温度計11との間)に、0.9μmより長い波長の光を遮断する光学フィルタ(図示せず)を設置すればよい。
【0032】
光ファイバ12は、前述のようにして決定した測定中心波長を十分透過する光ファイバである限りにおいて種々の形態のものを使用することができ、例えば、石英製の光ファイバとすることが可能である。また、単芯の光ファイバを使用することができる他、設置上の制約等により、水柱Wでの光路長を比較的長くする必要がある場合には、水による減衰の影響を緩和するべく、必要に応じて複数本の光ファイバを束ねたバンドルファイバーとすることも可能である。また、光ファイバのコア径に特に制約は無い。
【0033】
本実施形態に係る光ファイバ12の先端部には、光学窓81と、必要に応じて集光用レンズ82とを具備する先端光学系8が取付けられている。光学窓81及び集光用レンズ82としては、例えば石英製のものを適用することができる。
【0034】
ノズル13の先端は、鋼板Sの搬送ロール3のロール軸とほぼ同じ高さか、又は、ロール軸より若干下方に設置されるのが好ましい。例えば、搬送ロール2の直径が300mm程度の場合、鋼板Sからノズル13の先端まで150mm以上あれば、鋼板Sの先端に下反り等の形状不良が生じた場合であっても、鋼板Sとノズル13の衝突を回避することができる。
【0035】
本実施形態では、ノズル13と鋼板Sの衝突の回避に万全を期するため、ノズル13の先端近傍に保護板4を設置している。保護板4を設置することにより、鋼板Sとノズル13の先端との距離を10mm〜50mm程度に短縮することが可能である。
【0036】
ここで、ノズル13から鋼板Sに吐出する水は、蒸留水、水道水、或いは水道水を適当なフィルタ143で濾過したものを使用することが可能である。本実施形態では、水道5からフィルタ143を介して昇温槽14に水道水が供給され、昇温槽14に蒸気を送り込むことにより昇温されている。昇温槽14において水を昇温する方法に特段の制限は無い。但し、比較的低速の製造ラインで、水柱Wと鋼板Sとの接触面における冷却の効果が無視できない場合には、水温を略一定に保つような制御が必要である。一方、熱間圧延ラインのように、高速で鋼板Sが走行する場合には、前述した50℃以上、好ましくは、70℃以上の一定温度以上に水温を保てば良く、簡単な制御でこれを実現可能である。本実施形態では、昇温槽14内のレベルや水温が、レベル計141及び水温計142で測定した結果に基づき、一定値を下らないように制御されている。さらに、水柱用の水温は昇温槽14内の水温計142による管理でも良いが、必要に応じて、ノズル13直前の水路7内に設けた水温計71を使用し、昇温槽14からノズル13までの経路における温度低下分を加味した温度制御をすることにより、より一定温度の水柱Wを形成することが可能である。
【0037】
昇温槽14で昇温された水は脱気槽6に送られる。脱気槽6では、気泡の除去と、水の中に溶けている空気等のガスが脱気される。脱気槽6から送出された水は、ポンプ2及び水路7を経て、ノズル13に達し、水柱Wを形成するのに供される。このように、水柱Wを形成するために供給する水を脱気することは、放射光の散乱要因となる水柱Wにおける気泡の発生を抑制し、ひいては測温バラツキを抑制するのに有効である。
【0038】
ノズル13や、ノズル13の前段に位置する水路7は、気泡の発生を抑制するべく、その水路内での急激な口径や形状変化を極力避けるように設計するのが好ましい。また、ノズル13から吐出される水柱Wの所謂ポテンシャルコアが大きくなるように、ノズル13の形状等を決定するのが好ましい。
【0039】
なお、本実施形態では、図1に示すように、被測温鋼板Sの下面から測温する場合について説明したが、本発明はこれに限るものではなく、被測温鋼板Sの上面から測温することも無論可能である。
【0040】
【実施例】
以下、実施例を説明することにより、本発明の特徴をより一層明らかにする。前述した図1に示す装置構成と同様の表面温度測定装置によって測温試験を行った。以下、試験条件について説明する。ノズル13の先端近傍に保護板4を設置し、ノズル13の先端と鋼板Sとの距離を30mmに設定した。ノズル13の内径は18mmとし、ノズル13から吐出する温水の流量は15リッター/分とし、水温は80℃とした。光ファイバー12に取り付けられた先端光学系8は、その先端がノズル13の先端より180mm下方に位置するように設置した。なお、レンズ82は使用しなかった。放射温度計11の測定中心波長は0.85μmとした。光ファイバ12は、石英製でコア径0.1mmのものを7本バンドルにしたものを使用した。
【0041】
以上に説明した条件で測温した結果、短期的な測温バラツキはσ=5℃以下と安定していた。また、鋼板Sの厚み10mm、搬送速度100mpm、鋼板温度500℃〜1000℃で、鋼板Sの内部に埋め込んだ熱電対と、本実施例に係る測温値との差を比較したところ、その差は10℃以下であった。
【0042】
また、鋼板Sの厚み1.2mm、搬送速度600mpm、鋼板温度約700℃で、水温約80℃の水柱で測温した場合における、水柱による鋼板Sの表面温度の低下量は5℃以下であったが、水温約12℃の水柱で測温した場合には、鋼板Sの表面温度が35℃程度低下することもあった。
【0043】
なお、上述の測温結果は、いずれも鋼板Sを静止した状態での測温値を用いて、図3を参照して前述したのと同様の手法により、水柱の接触時間を搬送速度に換算した結果を示したものであるが、実際に搬送中の鋼板Sに対する測温についても同様の結果が期待できる。また、厚み40mmを超える厚板に対しても同様の結果が期待できる。
【0044】
【発明の効果】
本発明に係る鋼板の表面温度測定方法によれば、光導波路としての水柱を形成する温水の温度及び水圧が、被測温鋼板表面の測温箇所における沸騰状態が膜沸騰状態を維持する温度及び水圧に設定される。従って、膜沸騰状態では水柱による鋼板表面の温度低下が小さいため、測温箇所とそれ以外の部分との温度差が小さくなり、測定値の代表性を損なうことなく、測定精度を高めることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は、本発明の一実施形態に係る鋼板の表面温度測定装置の概略構成を示す。
【図2】 図2は、水柱が鋼板表面に接触する直前・直後の鋼板表面及び鋼板表面から3mm内部の温度変化例を示すグラフである。
【図3】 図3は、表面温度低下に対する鋼板の搬送速度の影響を示すグラフである。
【図4】 図4は、核沸騰状態に移行する際の鋼板温度と水温との関係を示すグラフである。
【図5】 図5は、水柱の厚みが変動した際の透過率変化を示すグラフである。
【符号の説明】
1 ・・・表面温度測定装置
11・・・放射温度計
12・・・光ファイバ
13・・・ノズル
14・・・昇温槽
S・・・鋼板
W・・・水柱
Claims (5)
- 被測温鋼板と放射温度計との間に、光導波路としての水柱を形成し、当該水柱を介して被測温鋼板表面からの放射光を前記放射温度計で受光することにより、被測温鋼板の表面温度を測定する方法であって、
前記水柱を形成する温水の温度及び水圧を、被測温鋼板表面の測温箇所における沸騰状態が膜沸騰状態を維持する温度及び水圧に設定することを特徴とする鋼板の表面温度測定方法。 - 前記温水の温度を70℃以上とし、前記温水の水圧をゲージ圧で1気圧以下に設定することを特徴とする請求項1に記載の鋼板の表面温度測定方法。
- 前記水柱と前記放射温度計との間に、前記放射温度計に接続された光ファイバを配置し、前記水柱及び前記光ファイバを介して被測温鋼板表面からの放射光を前記放射温度計で受光することにより、被測温鋼板の表面温度を測定することを特徴とする請求項1又は2に記載の鋼板の表面温度測定方法。
- 放射温度計と、
被測温鋼板と対向する位置に先端が配置され、後端が前記放射温度計に接続された光ファイバと、
被測温鋼板と前記光ファイバの先端との間に光導波路としての水柱を形成するべく、被測温鋼板表面に向けて温水を噴射するノズルと、
前記ノズルに温水を供給するために水を昇温する昇温手段とを備え、
前記水柱及び前記光ファイバを介して被測温鋼板表面からの放射光を前記放射温度計で受光することにより、被測温鋼板の表面温度を測定する表面温度測定装置であって、
前記ノズルは、前記水柱を形成する温水の水圧を、被測温鋼板表面の測温箇所における沸騰状態が膜沸騰状態を維持する水圧にして噴射し、
前記昇温手段は、前記水柱を形成する温水の温度を、被測温鋼板表面の測温箇所における沸騰状態が膜沸騰状態を維持する温度に昇温することを特徴とする鋼板の表面温度測定装置。 - 被測温鋼板表面と前記放射温度計との間に、0.9μmより長い波長の光を遮断する光学フィルタをさらに備えることを特徴とする請求項4に記載の鋼板の表面温度測定装置。
Priority Applications (1)
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JP2001380122A JP3818501B2 (ja) | 2001-12-13 | 2001-12-13 | 鋼板の表面温度測定方法およびその装置 |
Applications Claiming Priority (1)
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