JP4924952B2 - 熱延鋼板の冷却方法及び冷却設備 - Google Patents
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Description
図4に示すように、従来の冷却設備100’は、熱間圧延機20で圧延され巻取装置30に向けて搬送テーブル40によって搬送される熱延鋼板Sの巻取温度が所定の温度となるように、熱間圧延機20と巻取装置30との間に配置され、水冷又は空冷の組み合わせからなる所定の冷却パターンで熱延鋼板Sを冷却するように構成されている。
さらに、冷却設備100’は、温度計2の視野内にある熱延鋼板S上に冷却装置1からの冷却水が飛散することによって、温度計2に測温誤差が生じることを低減するため、高圧パージ水を噴射する水切り装置8を備える。また、冷却設備100’は、巻取装置30の入側(熱延鋼板Sの搬送方向最下流側に配置された冷却装置1nの出側)に配置され、熱延鋼板Sの巻取温度を測定する温度計(放射温度計)9と、温度計9に測温誤差が生じることを低減するための水切り装置10とを備える。
しかしながら、熱延鋼板Sの巻取温度を高精度に予測するには、水冷時に熱延鋼板Sから奪われる熱量や空冷時に熱延鋼板Sから奪われる熱量を予測することに加え、鋼の相変態により発生する発熱量を予測する必要があるが、これらを全て正確に予測することは困難である。
換言すれば、水冷時及び空冷時の熱伝達率として、経験的に定めた固定値を用いたのでは、熱延鋼板Sの巻取温度を高精度に予測することは困難である。
(1)前記冷却帯のうち熱延鋼板が水冷される区間の入側と出側の熱延鋼板の温度をそれぞれ測定し、該測定した熱延鋼板の温度差に基づき、水冷時の熱伝達率(熱延鋼板から水への熱伝達率)を算出するステップ。
(2)前記冷却帯のうち熱延鋼板が空冷される区間の入側と出側の熱延鋼板の温度をそれぞれ測定し、該測定した熱延鋼板の温度差に基づき、空冷時の熱伝達率(熱延鋼板から空気への熱伝達率)を算出するステップ。
(3)前記冷却帯における複数の冷却パターンを想定し、該複数の冷却パターンについて、前記算出した水冷時及び空冷時の熱伝達率を用いてそれぞれ伝熱計算を行うことにより、各冷却パターンについての熱延鋼板の巻取温度を予測するステップ。
(4)前記想定した複数の冷却パターンのうち前記予測した熱延鋼板の巻取温度が所定の温度となる冷却パターンを選択し、該選択した冷却パターンにより熱延鋼板を冷却するステップ。
図1は、本発明の一実施形態に係る冷却設備の概略構成例を示す模式図である。
図1に示すように、本実施形態に係る冷却設備100は、熱間圧延機20で圧延され巻取装置30に向けて搬送テーブル40によって搬送される熱延鋼板Sの巻取温度が所定の温度となるように、熱間圧延機20と巻取装置30との間に配置され、水冷又は空冷の組み合わせからなる所定の冷却パターンで熱延鋼板Sを冷却するように構成されている。
なお、図1では、図示の便宜上、熱延鋼板Sの搬送方向について、各冷却装置11〜1nの間に隙間が生じているが、実際には、各冷却装置11〜1nは隙間無く連続的に配置されている。
また、冷却装置11〜1nが配置されている全体の領域が、本発明における「冷却帯」に相当し、各冷却装置11〜1nがそれぞれ配置されている領域が、本発明における「区間」に相当する。
各温度計2Aとしては、搬送テーブル40を構成する搬送ロール41用の冷却水が飛散してきたり、水蒸気が籠もることによって、測温誤差が生じることを低減するため、いわゆる水柱温度計が用いられている。すなわち、熱延鋼板Sの裏面と放射温度計との間に、光導波路としての水柱を形成し、当該水柱を介して熱延鋼板S裏面からの放射光を前記放射温度計で受光することにより、熱延鋼板Sの温度を測定する構成とされている。温度計2Aのより詳しい構成については後述する。
さらに、冷却設備100は、温度計2の視野内にある熱延鋼板S上に冷却装置1からの冷却水が飛散することによって、温度計2に測温誤差が生じることを低減するため、高圧パージ水を噴射する水切り装置8を備える。また、冷却設備100は、巻取装置30の入側に配置され、熱延鋼板Sの巻取温度を測定する温度計(放射温度計)9と、温度計9に測温誤差が生じることを低減するための水切り装置10とを備える。
熱間圧延機20で圧延された熱延鋼板Sが温度計2の下方を通過する際、所定のサンプリング周期(例えば、0.4〜2.0秒周期)で、熱延鋼板Sの温度及び厚みが、それぞれ温度計2及び厚み計6によって測定される。温度計2と厚み計6とは近接しているため、温度を測定した熱延鋼板Sの部位と、厚みを測定した熱延鋼板Sの部位とは、同一の部位(以下、この部位をサンプリング点という)であると考えても問題はない。また、温度計2によって各サンプリング点の温度を測定する際、速度計7によって各サンプリング点の速度が測定される。これら各サンプリング点について測定した温度、厚み及び速度は、巻取温度予測手段4に入力される。
i:熱延鋼板Sの搬送方向上流側から数えた冷却装置1の順番を表す添え字
ΔTWi:i番目の冷却装置1が水冷する場合の熱延鋼板Sの各サンプリング点の温度降下量(℃)
αLi:i番目の冷却装置1の水冷時の熱伝達率(kcal/m2hr℃)
ZLi:i番目の冷却装置1の水冷時の熱伝達率の補正係数(無次元量)
c:熱延鋼板Sの比熱(kcal/kg℃)
ρ:熱延鋼板Sの密度(kg/m3)
h:熱延鋼板Sの厚み(m)
Ti:i番目の冷却装置1の入側における熱延鋼板Sの各サンプリング点の温度(℃)
TL:冷却装置1の冷却水の水温(℃)
ti:i番目の冷却装置1を熱延鋼板Sの各サンプリング点が通過する時間(hr)
ΔTai:i番目の冷却装置1が空冷する場合の熱延鋼板Sの各サンプリング点の温度降下量(℃)
σ:ステファン・ボルツマン定数
ε:輻射率(無次元量)
TE:気温(℃)
αEi:i番目の冷却装置1の空冷時の熱伝達率(kcal/m2hr℃)
ZEi:i番目の冷却装置1の空冷時の熱伝達率の補正係数(無次元量)
a、b:定数(無次元量)
Wi:i番目の冷却装置1が水冷する場合の冷却水の水量密度(m3/m2hr)
Li:i番目の冷却装置1の長さ(m)
vi:i番目の冷却装置1を熱延鋼板Sの各サンプリング点が通過する際の速度(m/sec)
TF:熱延鋼板Sの各サンプリング点の熱間圧延機20の出側温度(℃)
TC:熱延鋼板Sの各サンプリング点の巻取温度予測値(℃)
n:冷却装置1の数
また、上記の式(1)及び(2)におけるi番目の冷却装置1を熱延鋼板Sの各サンプリング点が通過する時間tiは、上記の式(4)によって算出される。なお、上記の式(4)におけるi番目の冷却装置1を熱延鋼板Sの各サンプリング点が通過する際の速度viとしては、巻取温度を予測する際には、実測値ではなく、速度計7によって測定された各サンプリング点の速度(各サンプリング点が温度計2の下方を通過する際の速度)に基づき計算された値が用いられる。例えば、前記速度計7によって測定された速度と、予め巻取温度予測手段4に入力された熱延鋼板Sの搬送加速度と、温度計2とi番目の冷却装置1との距離とに基づき、速度viは計算される。
さらに、上記の式(1)及び(2)におけるi番目の冷却装置1の入側における熱延鋼板Sの各サンプリング点の温度Tiとしては、巻取温度を予測する際には、1番目の冷却装置11の入側における温度T1を除き、実測値ではなく、上記の式(5)及び(6)によって算出された値が用いられる。すなわち、1番目の冷却装置11の入側における温度T1としては、冷却装置11の入側に配置された温度計2によって実測された温度TFが用いられる。また、2番目の冷却装置12の入側における温度T2は、1番目の冷却装置11が水冷する場合には、上記の式(1)にT1=TFを代入することによって得られるΔTw1を上記の式(5)のΔT1として代入することにより算出される。また、1番目の冷却装置11が空冷する場合には、上記の式(2)にT1=TFを代入することによって得られるΔTa1を上記の式(5)のΔT1として代入することにより、2番目の冷却装置12の入側における温度T2が算出される。以下、同様にして、3番目からn番目までの冷却装置1の入側における熱延鋼板Sの各サンプリング点の温度T3〜Tnが算出される。
前述のように、冷却制御手段5は、想定した複数の冷却パターンのうち巻取温度予測手段4によって予測した各サンプリング点の巻取温度が所定の温度(目標巻取温度との差が所定値以下となる温度)となる冷却パターンを選択し、該選択した冷却パターンに従って各冷却装置1が実際に行う水冷又は空冷を切り替える。本実施形態では、前述のように、巻取温度予測手段4から、予測した巻取温度が上記所定の温度になったときの冷却パターンが冷却制御手段5に送信されるため、冷却制御手段5は、送信された冷却パターン(これが冷却制御手段5が選択した冷却パターンに相当する)に従って各冷却装置1が実際に行う水冷又は空冷を切り替えることになる。ただし、本発明はこれに限るものではなく、巻取温度予測手段4が想定した複数の冷却パターンの全てを、巻取温度予測手段4が予測した巻取温度と共に冷却制御手段5に送信し、冷却制御手段5が、送信された複数の冷却パターンのうち巻取温度が所定の温度となる冷却パターンを選択する構成を採用することも可能である。
熱延鋼板Sの各サンプリング点が温度計2の下方を通過する際に、温度計2によって測定された各サンプリング点の温度と、厚み計6によって測定された各サンプリング点の厚みとが、熱伝達率算出手段3に入力される。
また、各サンプリング点が各冷却装置1を通過する際に、速度計7によって測定された各サンプリング点の速度と、各冷却装置1の出側で温度計2Aによって測定された各サンプリング点の温度と、各冷却装置1が具備するバルブの開閉状態とが、熱伝達率算出手段3に入力される。
熱伝達率算出手段3に入力される上記のパラメータは、必要に応じて適宜のバッファに蓄積された後、各サンプリング点の冷却が完了する(各サンプリング点が温度計2nの上方を通過する)毎に、或いは、熱延鋼板Sの全てのサンプリング点の冷却が完了した(最後のサンプリング点が温度計2nの上方を通過した)後に、熱伝達率算出手段3に入力される。
また、上記の式(8)及び(9)において、前述した式(1)〜(7)に示すパラメータと同じ記号で表されたパラメータについては、式(1)〜(7)について前述したのと同じ意味であるため、ここではその説明を省略する。
以下、温度計2Aとして用いられる水柱温度計の好ましい構成について説明する。
図2は、図1に示す冷却設備100が備える温度計2Aの概略構成例を示す図である。
図2に示すように、温度計2Aは、放射温度計61と、熱延鋼板Sと対向する位置に先端が配置され、後端が放射温度計61に接続された光ファイバ62と、熱延鋼板Sと光ファイバ62の先端との間に光導波路としての水柱Wを形成するべく、熱延鋼板Sの下面に向けて水を噴射するノズル63と、ノズル63に水を供給するための水供給配管64とを備えている。温度計2Aは、水柱W、水供給配管647内の水の一部及び光ファイバ62を介して熱延鋼板Sの下面からの熱放射光を放射温度計61で受光し、熱延鋼板Sの温度を測定するように構成されている。
温度計2Aを用いて熱延鋼板Sの温度を測定する際には、水柱W及び外乱水(搬送ロール41用の冷却水等)による熱放射光の吸収・減衰に起因する測温誤差を抑制する必要がある。この測温誤差は、冷却水の条件や、熱延鋼板Sのパスライン変動(熱延鋼板S下面の上下方向の位置変動)、周囲温度・湿度の変化に伴う湯気の発生有無等により、熱延鋼板Sと放射温度計61との間に存在する水柱Wや外乱水の厚みが変化し、これに伴って水柱Wや外乱水による熱放射光の吸収・減衰の程度が変化し、検出される熱放射光の光量が変動することによって生じる。
図1に概略構成を示す冷却設備100を用いて 下記の(1)〜(8)の条件で、熱延鋼板Sを冷却する試験を行った。
(1)鋼種:440MPa級高強度熱延鋼板
(2)厚み:3.5mm
(3)目標巻取温度:500℃
(4)搬送速度:570mpm〜650mpm(加速圧延)
(5)冷却装置の数:20
(6)各冷却装置の長さ:5m
(7)各冷却装置の冷却水の水量密度:1.0m3/m2hr
(8)温度計(水柱温度計)2Aの検出波長帯域:
0.85μm以下(1〜10番目の冷却装置出側)
1.00〜1.20μm(11〜20番目の冷却装置出側)
図4に概略構成を示す冷却設備100’を用いて、前述した実施例の(1)〜(7)の条件、及び、水冷時及び空冷時の熱伝達率の補正を行わない条件(熱伝達率は固定)で、熱延鋼板Sを冷却する試験を行った。
図3(a)は、上記実施例の試験結果(熱間圧延機出側温度、巻取温度予測値、及び、巻取温度実績値)を示すグラフである。図3(b)は、上記比較例の試験結果(熱間圧延機出側温度、巻取温度予測値、及び、巻取温度実績値)を示すグラフである。
図3に示すように、実施例及び比較例の何れについても、巻取温度予測値が目標巻取温度である500℃に近づくように冷却装置が制御されていることが分かる。
しかしながら、図3(a)に示すように、実施例では、巻取温度実績値が目標巻取温度とほぼ同等になるように冷却されているのに対し、図3(b)に示すように、比較例では、巻取温度実績値が目標巻取温度に対して偏差を生じている。これは、実施例では、比較例に比べて、巻取温度の予測精度が高いことが原因である。
2・・・温度計
2A(21〜2n)・・・温度計
3・・・熱伝達率算出手段
4・・・巻取温度予測手段
5・・・冷却制御手段
6・・・厚み計
7・・・速度計
8・・・水切り装置
9・・・温度計
10・・・水切り装置
20・・・熱間圧延機
30・・・巻取装置
100・・・冷却設備
S・・・熱延鋼板
Claims (2)
- 熱間圧延機で圧延され巻取装置に向けて搬送される熱延鋼板の巻取温度が所定の温度となるように、前記熱間圧延機と前記巻取装置との間に位置し熱延鋼板の搬送方向に沿って複数の区間に分割された冷却帯において、前記各区間でそれぞれ行われる水冷又は空冷の組み合わせからなる所定の冷却パターンで熱延鋼板を冷却する方法であって、
前記冷却帯のうち熱延鋼板が水冷される区間の入側と出側の熱延鋼板の温度をそれぞれ測定し、該測定した熱延鋼板の温度差に基づき、水冷時の熱伝達率を算出するステップと、
前記冷却帯のうち熱延鋼板が空冷される区間の入側と出側の熱延鋼板の温度をそれぞれ測定し、該測定した熱延鋼板の温度差に基づき、空冷時の熱伝達率を算出するステップと、
前記冷却帯における複数の冷却パターンを想定し、該複数の冷却パターンについて、前記算出した水冷時及び空冷時の熱伝達率を用いてそれぞれ伝熱計算を行うことにより、各冷却パターンについての熱延鋼板の巻取温度を予測するステップと、
前記想定した複数の冷却パターンのうち前記予測した熱延鋼板の巻取温度が所定の温度となる冷却パターンを選択し、該選択した冷却パターンにより熱延鋼板を冷却するステップとを含むことを特徴とする熱延鋼板の冷却方法。 - 熱間圧延機で圧延され巻取装置に向けて搬送される熱延鋼板の巻取温度が所定の温度となるように、前記熱間圧延機と前記巻取装置との間に配置され、水冷又は空冷の組み合わせからなる所定の冷却パターンで熱延鋼板を冷却する設備であって、
熱延鋼板の搬送方向に沿ってそれぞれ配置され、水冷及び空冷の切り替えが可能な複数の冷却装置と、
前記各冷却装置の入側及び出側にそれぞれ配置され、熱延鋼板の温度を測定する複数の温度計と、
前記複数の冷却装置のうち熱延鋼板を水冷する冷却装置の入側と出側にそれぞれ配置された前記温度計によって測定した熱延鋼板の温度差に基づき、水冷時の熱伝達率を算出し、前記複数の冷却装置のうち熱延鋼板を空冷する冷却装置の入側と出側にそれぞれ配置された前記温度計によって測定した熱延鋼板の温度差に基づき、空冷時の熱伝達率を算出する熱伝達率算出手段と、
前記各冷却装置がそれぞれ水冷又は空冷の何れかを行う複数の冷却パターンを想定し、該複数の冷却パターンについて、前記熱伝達率算出手段によって算出した水冷時及び空冷時の熱伝達率を用いて伝熱計算を行うことにより、各冷却パターンについての熱延鋼板の巻取温度を予測する巻取温度予測手段と、
前記想定した複数の冷却パターンのうち前記巻取温度予測手段によって予測した熱延鋼板の巻取温度が所定の温度となる冷却パターンを選択し、該選択した冷却パターンに従って前記各冷却装置が行う水冷又は空冷を切り替える冷却制御手段とを備えることを特徴とする熱延鋼板の冷却設備。
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