JP4924952B2 - 熱延鋼板の冷却方法及び冷却設備 - Google Patents

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Description

本発明は、熱延鋼板の冷却方法及び冷却設備に関する。特に、本発明は、巻取装置で巻き取られる際の熱延鋼板の温度(巻取温度)を精度良く目標温度(目標巻取温度)に制御することが可能な熱延鋼板の冷却方法及び冷却設備に関する。
熱延鋼板は、熱間圧延機で圧延された後、搬送テーブルによって巻取装置に向けて搬送され、巻取装置によってコイル状に巻き取られる。搬送テーブルには冷却装置が設置されている。この冷却装置により、熱延鋼板は巻取装置で巻き取られる前に冷却される。巻取装置で巻き取られる際の熱延鋼板の温度(巻取温度)は、熱延鋼板の機械的特性を所定の範囲内に収めて良好な品質の熱延鋼板を得る上で、重要な管理項目である。従って、熱延鋼板の巻取温度を精度良く目標温度(目標巻取温度)に制御することが望まれている。
図4は、従来の一般的な冷却設備の概略構成例を示す模式図である。
図4に示すように、従来の冷却設備100’は、熱間圧延機20で圧延され巻取装置30に向けて搬送テーブル40によって搬送される熱延鋼板Sの巻取温度が所定の温度となるように、熱間圧延機20と巻取装置30との間に配置され、水冷又は空冷の組み合わせからなる所定の冷却パターンで熱延鋼板Sを冷却するように構成されている。
具体的には、冷却設備100’は、熱延鋼板Sの搬送方向に沿ってそれぞれ配置され、水冷及び空冷の切り替えが可能な複数の冷却装置1(11〜1n)と、熱間圧延機20の出側(熱延鋼板Sの搬送方向最上流側に配置された冷却装置11の入側)に配置され、熱延鋼板Sの温度を測定する温度計(放射温度計)2と、各冷却装置1がそれぞれ水冷又は空冷の何れかを行う複数の冷却パターンを想定し、該複数の冷却パターンについて伝熱計算を行うことにより、各冷却パターンについての熱延鋼板Sの巻取温度を予測する巻取温度予測手段4と、前記想定した複数の冷却パターンのうち巻取温度予測手段4によって予測した熱延鋼板Sの巻取温度が所定の温度(目標巻取温度との差が所定値以下となる温度)となる冷却パターンを選択し、該選択した冷却パターンに従って各冷却装置1が行う水冷又は空冷を切り替える冷却制御手段5とを備える。
各冷却装置1は、上下一対の冷却ヘッダを具備し、各冷却ヘッダには、熱延鋼板Sに向けて冷却水を噴射する複数の水冷ノズルが設置されている。水冷ノズルに冷却水を供給するか否かは、各冷却装置1が具備するバルブの開閉によって制御される。換言すれば、冷却装置1が具備するバルブを開くと、当該冷却装置1が具備する各水冷ノズルに冷却水が供給され、各水冷ノズルから熱延鋼板Sに向けて冷却水が噴射される。すなわち、熱延鋼板Sが水冷される。一方、冷却装置1が具備するバルブを閉じると、当該冷却装置1が具備する各水冷ノズルへの冷却水の供給が停止し、各水冷ノズルから熱延鋼板Sに向けての冷却水の噴射が停止される。すなわち、熱延鋼板Sが空冷(放冷)される。
また、冷却設備100’は、熱間圧延機20の出側に配置され、熱延鋼板Sの厚みを測定する厚み計6と、熱間圧延機20の出側に配置され、熱延鋼板Sの速度を測定する速度計7とを備える。
さらに、冷却設備100’は、温度計2の視野内にある熱延鋼板S上に冷却装置1からの冷却水が飛散することによって、温度計2に測温誤差が生じることを低減するため、高圧パージ水を噴射する水切り装置8を備える。また、冷却設備100’は、巻取装置30の入側(熱延鋼板Sの搬送方向最下流側に配置された冷却装置1nの出側)に配置され、熱延鋼板Sの巻取温度を測定する温度計(放射温度計)9と、温度計9に測温誤差が生じることを低減するための水切り装置10とを備える。
上記の構成を有する冷却設備100’において、熱間圧延機20で圧延された熱延鋼板Sが温度計2の下方を通過する際、所定のサンプリング周期で、熱延鋼板Sの温度及び厚みが、それぞれ温度計2及び厚み計6によって測定される。温度計2と厚み計6とは近接しているため、温度を測定した熱延鋼板Sの部位と、厚みを測定した熱延鋼板Sの部位とは、同一の部位(以下、この部位をサンプリング点という)であると考えても問題はない。また、温度計2によって各サンプリング点の温度を測定する際、速度計7によって各サンプリング点の速度が測定される。これら各サンプリング点について測定した温度、厚み及び速度は、巻取温度予測手段4に入力される。
巻取温度予測手段4は、前述のようにして測定され入力された各サンプリング点についての温度、厚み及び速度の他、予め入力された熱延鋼板Sの比熱、密度、水冷時及び空冷時の熱伝達率、冷却装置1が水冷する場合の冷却水の水量密度、水温、並びに気温などのパラメータを用いて、複数の冷却パターン(各冷却装置1が具備するバルブの開閉状態が異なる複数のパターン)を想定してそれぞれ伝熱計算を行うことにより、各冷却パターンについての各サンプリング点の巻取温度を予測する。この巻取温度の予測は、各サンプリング点が熱延鋼板Sの搬送方向最上流側に配置された冷却装置11に到達する前に実行される。
冷却制御手段5は、前記想定した複数の冷却パターンのうち巻取温度予測手段4によって予測した各サンプリング点の巻取温度が所定の温度(目標巻取温度との差が所定値以下となる温度)となる冷却パターンを選択し、該選択した冷却パターンに従って各冷却装置1が実際に行う水冷又は空冷を切り替える。すなわち、冷却制御手段5は、前記選択した冷却パターンに従って、各冷却装置1が具備するバルブの開閉状態を切り替える。この冷却制御手段5によるバルブの切り替え動作は、各サンプリング点が各冷却装置11に到達する前に実行される。そして、各サンプリング点は、前記選択した冷却パターンに従って各冷却装置11により冷却される。
以上に説明した冷却設備100’は、伝熱計算によって予測した熱延鋼板Sの巻取温度が目標巻取温度乃至その近傍となるように、各冷却装置1が具備するバルブの開閉状態を切り替えるものであるため、熱延鋼板Sの実際の巻取温度が目標巻取温度乃至その近傍となるには、熱延鋼板Sの巻取温度を高精度に予測する必要がある。
しかしながら、熱延鋼板Sの巻取温度を高精度に予測するには、水冷時に熱延鋼板Sから奪われる熱量や空冷時に熱延鋼板Sから奪われる熱量を予測することに加え、鋼の相変態により発生する発熱量を予測する必要があるが、これらを全て正確に予測することは困難である。
換言すれば、水冷時及び空冷時の熱伝達率として、経験的に定めた固定値を用いたのでは、熱延鋼板Sの巻取温度を高精度に予測することは困難である。
このため、例えば、特許文献1に記載のように、熱延鋼板の実測温度を用いて熱伝達率を補正(学習)する方法が提案されている。特許文献1に記載の方法は、熱間圧延機の出側と巻取装置の入側で熱延鋼板の温度を測定し、その測定結果に基づいて逐次最小二乗法を用い、水冷時及び空冷時の熱伝達率を学習する方法である。
特開昭64−62206号公報
しかしながら、特許文献1に記載の方法では、水冷時及び空冷時の熱伝達率を学習するに際し、熱間圧延機の出側における熱延鋼板の実測温度と、熱間圧延機と巻取装置との間に位置する冷却設備での水冷及び空冷の双方の影響を受けた巻取装置の入側における熱延鋼板の実測温度しか用いておらず、冷却設備での冷却過程における熱延鋼板の実測温度については何ら考慮していない。従って、特許文献1に記載の方法では、冷却設備での水冷時及び空冷時の熱伝達率を分離して学習させることができず、学習精度が低い、すなわち、水冷時及び空冷時の実際の熱伝達率を精度良く算出することができない。この結果、熱延鋼板の巻取温度を精度良く予測できず、熱延鋼板の巻取温度を精度良く目標巻取温度に制御できないという問題がある。
本発明は、斯かる従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、熱延鋼板の巻取温度を精度良く目標巻取温度に制御することが可能な熱延鋼板の冷却方法及び冷却設備を提供することを課題とする。
前記課題を解決するため、本発明者らは鋭意検討した結果、熱間圧延機と巻取装置との間に位置する冷却帯(冷却設備)において、水冷前後と空冷前後の熱延鋼板の温度をそれぞれ実測し、この実測温度を用いて水冷時及び空冷時の熱伝達率を個別に算出すれば、水冷時及び空冷時の実際の熱伝達率を精度良く算出することができることを見出した。そして、この熱伝達率を用いれば、熱延鋼板の巻取温度を精度良く予測でき、ひいては熱延鋼板の巻取温度を精度良く目標巻取温度に制御できることに想到し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、熱間圧延機で圧延され巻取装置に向けて搬送される熱延鋼板の巻取温度が所定の温度となるように、前記熱間圧延機と前記巻取装置との間に位置し熱延鋼板の搬送方向に沿って複数の区間に分割された冷却帯において、前記各区間でそれぞれ行われる水冷又は空冷の組み合わせからなる所定の冷却パターンで熱延鋼板を冷却する方法であって、以下の(1)〜(4)の各ステップを含むことを特徴とする熱延鋼板の冷却方法を提供する。
(1)前記冷却帯のうち熱延鋼板が水冷される区間の入側と出側の熱延鋼板の温度をそれぞれ測定し、該測定した熱延鋼板の温度差に基づき、水冷時の熱伝達率(熱延鋼板から水への熱伝達率)を算出するステップ。
(2)前記冷却帯のうち熱延鋼板が空冷される区間の入側と出側の熱延鋼板の温度をそれぞれ測定し、該測定した熱延鋼板の温度差に基づき、空冷時の熱伝達率(熱延鋼板から空気への熱伝達率)を算出するステップ。
(3)前記冷却帯における複数の冷却パターンを想定し、該複数の冷却パターンについて、前記算出した水冷時及び空冷時の熱伝達率を用いてそれぞれ伝熱計算を行うことにより、各冷却パターンについての熱延鋼板の巻取温度を予測するステップ。
(4)前記想定した複数の冷却パターンのうち前記予測した熱延鋼板の巻取温度が所定の温度となる冷却パターンを選択し、該選択した冷却パターンにより熱延鋼板を冷却するステップ。
また、前記課題を解決するため、本発明は、熱間圧延機で圧延され巻取装置に向けて搬送される熱延鋼板の巻取温度が所定の温度となるように、前記熱間圧延機と前記巻取装置との間に配置され、水冷又は空冷の組み合わせからなる所定の冷却パターンで熱延鋼板を冷却する設備であって、熱延鋼板の搬送方向に沿ってそれぞれ配置され、水冷及び空冷の切り替えが可能な複数の冷却装置と、前記各冷却装置の入側及び出側にそれぞれ配置され、熱延鋼板の温度を測定する複数の温度計と、前記複数の冷却装置のうち熱延鋼板を水冷する冷却装置の入側と出側にそれぞれ配置された前記温度計によって測定した熱延鋼板の温度差に基づき、水冷時の熱伝達率(熱延鋼板から水への熱伝達率)を算出し、前記複数の冷却装置のうち熱延鋼板を空冷する冷却装置の入側と出側にそれぞれ配置された前記温度計によって測定した熱延鋼板の温度差に基づき、空冷時の熱伝達率(熱延鋼板から空気への熱伝達率)を算出する熱伝達率算出手段と、前記各冷却装置がそれぞれ水冷又は空冷の何れかを行う複数の冷却パターンを想定し、該複数の冷却パターンについて、前記熱伝達率算出手段によって算出した水冷時及び空冷時の熱伝達率を用いて伝熱計算を行うことにより、各冷却パターンについての熱延鋼板の巻取温度を予測する巻取温度予測手段と、前記想定した複数の冷却パターンのうち前記巻取温度予測手段によって予測した熱延鋼板の巻取温度が所定の温度となる冷却パターンを選択し、該選択した冷却パターンに従って前記各冷却装置が行う水冷又は空冷を切り替える冷却制御手段とを備えることを特徴とする熱延鋼板の冷却設備としても提供される。
なお、本発明において「熱伝達率を算出する」とは、変数として与えられる熱伝達率そのものを算出することの他、固定値として与えられる熱伝達率に乗算する補正係数を算出することをも含む概念である。
本発明によれば、水冷時及び空冷時の熱伝達率を精度良く算出することができるため、熱延鋼板の巻取温度を精度良く予測でき、ひいては熱延鋼板の巻取温度を精度良く目標巻取温度に制御することが可能である。
以下、添付図面を適宜参照しつつ、本発明の一実施形態について説明する。
<1.冷却設備の構成>
図1は、本発明の一実施形態に係る冷却設備の概略構成例を示す模式図である。
図1に示すように、本実施形態に係る冷却設備100は、熱間圧延機20で圧延され巻取装置30に向けて搬送テーブル40によって搬送される熱延鋼板Sの巻取温度が所定の温度となるように、熱間圧延機20と巻取装置30との間に配置され、水冷又は空冷の組み合わせからなる所定の冷却パターンで熱延鋼板Sを冷却するように構成されている。
具体的には、冷却設備100は、熱延鋼板Sの搬送方向に沿ってそれぞれ配置され、水冷及び空冷の切り替えが可能な複数の冷却装置1(11〜1n)と、各冷却装置1の入側及び出側にそれぞれ配置され、熱延鋼板Sの温度を測定する複数の温度計(放射温度計)2、2A(21〜2n)と、複数の冷却装置1のうち熱延鋼板Sを水冷する冷却装置1の入側と出側にそれぞれ配置された温度計によって測定した熱延鋼板Sの温度差に基づき、水冷時の熱伝達率(熱延鋼板から水への熱伝達率)を算出(具体的には熱伝達率の補正係数を算出)し、複数の冷却装置1のうち熱延鋼板Sを空冷する冷却装置1の入側と出側にそれぞれ配置された温度計によって測定した熱延鋼板Sの温度差に基づき、空冷時の熱伝達率(熱延鋼板から空気への熱伝達率)を算出(具体的には熱伝達率の補正係数を算出)する熱伝達率算出手段3と、各冷却装置1がそれぞれ水冷又は空冷の何れかを行う複数の冷却パターンを想定し、該複数の冷却パターンについて、熱伝達率算出手段3によって算出した水冷時及び空冷時の熱伝達率を用いて伝熱計算を行うことにより、各冷却パターンについての熱延鋼板Sの巻取温度を予測する巻取温度予測手段4と、前記想定した複数の冷却パターンのうち巻取温度予測手段4によって予測した熱延鋼板Sの巻取温度が所定の温度(目標巻取温度との差が所定値以下となる温度)となる冷却パターンを選択し、該選択した冷却パターンに従って各冷却装置1が行う水冷又は空冷を切り替える冷却制御手段5とを備える。
各冷却装置1は、上下一対の冷却ヘッダを具備し、各冷却ヘッダには、熱延鋼板Sに向けて冷却水を噴射する複数の水冷ノズルが設置されている。水冷ノズルに冷却水を供給するか否かは、各冷却装置1が具備するバルブの開閉によって制御される。換言すれば、冷却装置1が具備するバルブを開くと、当該冷却装置1が具備する各水冷ノズルに冷却水が供給され、各水冷ノズルから熱延鋼板Sに向けて冷却水が噴射される。すなわち、熱延鋼板Sが水冷される。一方、冷却装置1が具備するバルブを閉じると、当該冷却装置1が具備する各水冷ノズルへの冷却水の供給が停止し、各水冷ノズルから熱延鋼板Sに向けての冷却水の噴射が停止される。すなわち、熱延鋼板Sが空冷(放冷)される。
なお、図1では、図示の便宜上、熱延鋼板Sの搬送方向について、各冷却装置11〜1nの間に隙間が生じているが、実際には、各冷却装置11〜1nは隙間無く連続的に配置されている。
また、冷却装置11〜1nが配置されている全体の領域が、本発明における「冷却帯」に相当し、各冷却装置11〜1nがそれぞれ配置されている領域が、本発明における「区間」に相当する。
各温度計2Aは、各冷却装置1の出側に1台ずつ配置されている。例えば、温度計21は、冷却装置11の出側に配置された温度計であると同時に、冷却装置12の入側に配置された温度計にも相当する。冷却装置11の出側に配置される温度計と、冷却装置12の入側に配置される温度計とを、別個の温度計とすることも可能であるが、温度計を設置するスペースの確保や設備費用の観点より、1台の温度計21を、冷却装置11の出側に配置される温度計で且つ冷却装置12の入側に配置される温度計として使用することが望ましい。各冷却装置1の間に配置される他の温度計2Aについても同様である。
各温度計2Aとしては、搬送テーブル40を構成する搬送ロール41用の冷却水が飛散してきたり、水蒸気が籠もることによって、測温誤差が生じることを低減するため、いわゆる水柱温度計が用いられている。すなわち、熱延鋼板Sの裏面と放射温度計との間に、光導波路としての水柱を形成し、当該水柱を介して熱延鋼板S裏面からの放射光を前記放射温度計で受光することにより、熱延鋼板Sの温度を測定する構成とされている。温度計2Aのより詳しい構成については後述する。
また、冷却設備100は、熱間圧延機20の出側に配置され、熱延鋼板Sの厚みを測定する厚み計6と、熱間圧延機20の出側に配置され、熱延鋼板Sの速度を測定する速度計7とを備える。
さらに、冷却設備100は、温度計2の視野内にある熱延鋼板S上に冷却装置1からの冷却水が飛散することによって、温度計2に測温誤差が生じることを低減するため、高圧パージ水を噴射する水切り装置8を備える。また、冷却設備100は、巻取装置30の入側に配置され、熱延鋼板Sの巻取温度を測定する温度計(放射温度計)9と、温度計9に測温誤差が生じることを低減するための水切り装置10とを備える。
以下、上記の構成を有する冷却設備100の巻取温度予測手段4が行う巻取温度の予測方法、冷却手段5が行う水冷又は空冷の切り替え動作、及び、熱伝達率算出手段3が行う熱伝達率の算出(具体的には熱伝達率の補正係数の算出)方法について、具体的に説明する。
<2.巻取温度予測手段による巻取温度予測方法>
熱間圧延機20で圧延された熱延鋼板Sが温度計2の下方を通過する際、所定のサンプリング周期(例えば、0.4〜2.0秒周期)で、熱延鋼板Sの温度及び厚みが、それぞれ温度計2及び厚み計6によって測定される。温度計2と厚み計6とは近接しているため、温度を測定した熱延鋼板Sの部位と、厚みを測定した熱延鋼板Sの部位とは、同一の部位(以下、この部位をサンプリング点という)であると考えても問題はない。また、温度計2によって各サンプリング点の温度を測定する際、速度計7によって各サンプリング点の速度が測定される。これら各サンプリング点について測定した温度、厚み及び速度は、巻取温度予測手段4に入力される。
巻取温度予測手段4は、前述のようにして測定され入力された各サンプリング点についての温度、厚み及び速度の他、予め入力された熱延鋼板Sの比熱、密度、水冷時及び空冷時の熱伝達率、冷却装置1が水冷する場合の冷却水の水量密度、水温、並びに気温などのパラメータを用いて、複数の冷却パターン(各冷却装置1が具備するバルブの開閉状態が異なる複数のパターン)を想定してそれぞれ伝熱計算を行うことにより、各冷却パターンについての各サンプリング点の巻取温度を予測する。この巻取温度の予測は、各サンプリング点が熱延鋼板Sの搬送方向最上流側に配置された冷却装置11に到達する前に実行される。
具体的には、想定した冷却パターンにおいて、熱延鋼板Sの搬送方向上流側から数えてi番目の冷却装置1が水冷する(バルブを開状態とする)場合には、下記の式(1)によって、i番目の冷却装置による熱延鋼板Sの各サンプリング点の温度降下量ΔTWiを計算する。一方、想定した冷却パターンにおいて、i番目の冷却装置1が空冷する(バルブを閉状態とする)場合には、下記の式(2)によって、i番目の冷却装置による熱延鋼板Sの各サンプリング点の温度降下量ΔTaiを計算する。そして、下記の式(7)に示すように、熱間圧延機20の出側(熱延鋼板Sの搬送方向最上流側に配置された冷却装置11の入側)に配置された温度計2によって測定された各サンプリング点の温度Tから、全ての冷却装置1による温度降下量を減算し、各サンプリング点の巻取温度Tを予測する。
Figure 0004924952
なお、上記の式(1)〜(7)に示す各パラメータの意味は、下記の通りである。
i:熱延鋼板Sの搬送方向上流側から数えた冷却装置1の順番を表す添え字
ΔTWi:i番目の冷却装置1が水冷する場合の熱延鋼板Sの各サンプリング点の温度降下量(℃)
αLi:i番目の冷却装置1の水冷時の熱伝達率(kcal/mhr℃)
Li:i番目の冷却装置1の水冷時の熱伝達率の補正係数(無次元量)
c:熱延鋼板Sの比熱(kcal/kg℃)
ρ:熱延鋼板Sの密度(kg/m
h:熱延鋼板Sの厚み(m)
:i番目の冷却装置1の入側における熱延鋼板Sの各サンプリング点の温度(℃)
:冷却装置1の冷却水の水温(℃)
:i番目の冷却装置1を熱延鋼板Sの各サンプリング点が通過する時間(hr)
ΔTai:i番目の冷却装置1が空冷する場合の熱延鋼板Sの各サンプリング点の温度降下量(℃)
σ:ステファン・ボルツマン定数
ε:輻射率(無次元量)
:気温(℃)
αEi:i番目の冷却装置1の空冷時の熱伝達率(kcal/mhr℃)
Ei:i番目の冷却装置1の空冷時の熱伝達率の補正係数(無次元量)
a、b:定数(無次元量)
:i番目の冷却装置1が水冷する場合の冷却水の水量密度(m/mhr)
:i番目の冷却装置1の長さ(m)
:i番目の冷却装置1を熱延鋼板Sの各サンプリング点が通過する際の速度(m/sec)
:熱延鋼板Sの各サンプリング点の熱間圧延機20の出側温度(℃)
:熱延鋼板Sの各サンプリング点の巻取温度予測値(℃)
n:冷却装置1の数
上記の式(1)におけるi番目の冷却装置1の水冷時の熱伝達率αLiは、上記の式(3)によって算出される。
また、上記の式(1)及び(2)におけるi番目の冷却装置1を熱延鋼板Sの各サンプリング点が通過する時間tは、上記の式(4)によって算出される。なお、上記の式(4)におけるi番目の冷却装置1を熱延鋼板Sの各サンプリング点が通過する際の速度vとしては、巻取温度を予測する際には、実測値ではなく、速度計7によって測定された各サンプリング点の速度(各サンプリング点が温度計2の下方を通過する際の速度)に基づき計算された値が用いられる。例えば、前記速度計7によって測定された速度と、予め巻取温度予測手段4に入力された熱延鋼板Sの搬送加速度と、温度計2とi番目の冷却装置1との距離とに基づき、速度vは計算される。
さらに、上記の式(1)及び(2)におけるi番目の冷却装置1の入側における熱延鋼板Sの各サンプリング点の温度Tとしては、巻取温度を予測する際には、1番目の冷却装置11の入側における温度Tを除き、実測値ではなく、上記の式(5)及び(6)によって算出された値が用いられる。すなわち、1番目の冷却装置11の入側における温度Tとしては、冷却装置11の入側に配置された温度計2によって実測された温度Tが用いられる。また、2番目の冷却装置12の入側における温度Tは、1番目の冷却装置11が水冷する場合には、上記の式(1)にT=Tを代入することによって得られるΔTw1を上記の式(5)のΔTとして代入することにより算出される。また、1番目の冷却装置11が空冷する場合には、上記の式(2)にT=Tを代入することによって得られるΔTa1を上記の式(5)のΔTとして代入することにより、2番目の冷却装置12の入側における温度Tが算出される。以下、同様にして、3番目からn番目までの冷却装置1の入側における熱延鋼板Sの各サンプリング点の温度T〜Tnが算出される。
巻取温度予測手段4は、以上に説明した各サンプリング点の巻取温度の予測を、想定した複数の冷却パターンについて実行する。具体的には、例えば、まず最初に、各冷却装置1が具備するバルブが全て閉状態(すなわち、全ての冷却装置1が空冷する状態)である冷却パターンについて、各サンプリング点の巻取温度を予測する。この予測した巻取温度が所定の温度(目標巻取温度との差が所定値以下となる温度)よりも高い場合、巻取温度予測手段4は、予め決められた順番に従い、何れかの冷却装置1のバルブを開いた別の冷却パターンについて、各サンプリング点の巻取温度を予測する。上記の順番は、特に限定されるものではないが、冷却後の熱延鋼板Sの品質や、操業上の安定性等を考慮して、経験則的に決定される。巻取温度予測手段4は、予測した巻取温度が上記所定の温度になるまで、伝熱計算に用いる冷却パターンを変更して、巻取温度の予測を繰り返す。そして、予測した巻取温度が上記所定の温度になったときの冷却パターンを冷却制御手段5に送信する。
<3.冷却制御手段による水冷又は空冷の切り替え動作>
前述のように、冷却制御手段5は、想定した複数の冷却パターンのうち巻取温度予測手段4によって予測した各サンプリング点の巻取温度が所定の温度(目標巻取温度との差が所定値以下となる温度)となる冷却パターンを選択し、該選択した冷却パターンに従って各冷却装置1が実際に行う水冷又は空冷を切り替える。本実施形態では、前述のように、巻取温度予測手段4から、予測した巻取温度が上記所定の温度になったときの冷却パターンが冷却制御手段5に送信されるため、冷却制御手段5は、送信された冷却パターン(これが冷却制御手段5が選択した冷却パターンに相当する)に従って各冷却装置1が実際に行う水冷又は空冷を切り替えることになる。ただし、本発明はこれに限るものではなく、巻取温度予測手段4が想定した複数の冷却パターンの全てを、巻取温度予測手段4が予測した巻取温度と共に冷却制御手段5に送信し、冷却制御手段5が、送信された複数の冷却パターンのうち巻取温度が所定の温度となる冷却パターンを選択する構成を採用することも可能である。
具体的には、冷却制御手段5は、前記選択した(巻取温度予測手段4から送信された)冷却パターンに従って、各冷却装置1が具備するバルブの開閉状態を切り替える。この冷却制御手段5によるバルブの切り替え動作は、各サンプリング点が各冷却装置11に到達する前に実行される。そして、各サンプリング点は、前記選択した冷却パターンに従って各冷却装置11により冷却される。
<4.熱伝達率算出手段による熱伝達率の算出(熱伝達率の補正係数の算出)方法>
熱延鋼板Sの各サンプリング点が温度計2の下方を通過する際に、温度計2によって測定された各サンプリング点の温度と、厚み計6によって測定された各サンプリング点の厚みとが、熱伝達率算出手段3に入力される。
また、各サンプリング点が各冷却装置1を通過する際に、速度計7によって測定された各サンプリング点の速度と、各冷却装置1の出側で温度計2Aによって測定された各サンプリング点の温度と、各冷却装置1が具備するバルブの開閉状態とが、熱伝達率算出手段3に入力される。
熱伝達率算出手段3に入力される上記のパラメータは、必要に応じて適宜のバッファに蓄積された後、各サンプリング点の冷却が完了する(各サンプリング点が温度計2nの上方を通過する)毎に、或いは、熱延鋼板Sの全てのサンプリング点の冷却が完了した(最後のサンプリング点が温度計2nの上方を通過した)後に、熱伝達率算出手段3に入力される。
ここで、熱延鋼板Sの搬送方向上流側から数えてi番目の冷却装置1の出側で、温度計2Aによって測定された熱延鋼板Sの搬送方向下流側から数えてj番目のサンプリング点の温度をTmj,i(℃)とし、i番目の冷却装置1をj番目のサンプリング点が通過する時間をtj,i(hr)とする。ここで、時間tj,iは、前述した式(4)と同様に、i番目の冷却装置1の長さを、i番目の冷却装置1をj番目のサンプリング点が通過する際の速度で除することによって算出される。ただし、i番目の冷却装置1をj番目のサンプリング点が通過する際の速度としては、巻取温度を予測する際と異なり、速度計7によって測定された実測値が用いられる。
熱伝達率算出手段3は、j番目のサンプリング点がi番目の冷却装置1を通過する際、i番目の冷却装置1が水冷する状態(バルブが開状態)であったとすれば、前述した式(1)から導出される下記の式(8)に基づいて、j番目のサンプリング点についてのi番目の冷却装置1の水冷時の熱伝達率の補正係数ZLj,iを算出する。一方、j番目のサンプリング点がi番目の冷却装置1を通過する際、i番目の冷却装置1が空冷する状態(バルブが閉状態)であったとすれば、前述した式(2)から導出される下記の式(9)に基づいて、j番目のサンプリング点についてのi番目の冷却装置1の空冷時の熱伝達率の補正係数ZEj,iを算出する。
Figure 0004924952
なお、上記の式(8)及び(9)において、Tmj,0(Tmj,i−1のi=1の場合)は、温度計2によって測定されたj番目のサンプリング点の温度を意味する。
また、上記の式(8)及び(9)において、前述した式(1)〜(7)に示すパラメータと同じ記号で表されたパラメータについては、式(1)〜(7)について前述したのと同じ意味であるため、ここではその説明を省略する。
熱伝達率算出手段3は、全てのサンプリング点について上記の演算を繰り返し、各サンプリング点について得られた水冷時の熱伝達率の補正係数ZLj,iを、下記の式(10)に示すように平均化処理して、i番目の冷却装置1の水冷時の熱伝達率の補正係数の平均値ZLi を算出する。同様に、各サンプリング点について得られた空冷時の熱伝達率の補正係数ZEj,iを、下記の式(11)に示すように平均化処理して、i番目の冷却装置1の空冷時の熱伝達率の補正係数の平均値ZEi を算出する。
Figure 0004924952
なお、上記の式(10)及び(11)において、j番目のサンプリング点が、水冷する状態(バルブが開状態)のi番目の冷却装置1を通過する場合、uj,i=1、vj,i=0である。また、j番目のサンプリング点が、空冷する状態(バルブが閉状態)のi番目の冷却装置1を通過する場合、uj,i=0、vj,i=1である。mはサンプリング点の数を意味する。
以上のようにして熱伝達率算出手段3で算出したi番目の冷却装置1の水冷時の熱伝達率の補正係数の平均値ZLi を、そのまま前述した式(1)に示すi番目の冷却装置1の水冷時の熱伝達率の補正係数ZLiとして、次回搬送される熱延鋼板(上記のZLi を算出するために温度等を測定した熱延鋼板の次に搬送される熱延鋼板)Sについての巻取温度予測手段4による巻取温度の予測に用いることができる。同様に、熱伝達率算出手段3で算出したi番目の冷却装置1の空冷時の熱伝達率の補正係数の平均値ZEi を、そのまま前述した式(2)に示すi番目の冷却装置1の空冷時の熱伝達率の補正係数ZEiとして、次回搬送される熱延鋼板Sについての巻取温度予測手段4による巻取温度の予測に用いることができる。
なお、今回搬送された熱延鋼板Sについての巻取温度の予測に用いた水冷時の熱伝達率の補正係数(すなわち、前回搬送された熱延鋼板Sについて測定した温度等によって算出された水冷時の熱伝達率の補正係数)ZLiと、今回搬送された熱延鋼板Sについて測定した温度等によって算出された水冷時の熱伝達率の補正係数の平均値ZLi とを、下記の式(12)に示すように重み付け平均化処理して得られる水冷時の熱伝達率の補正係数の重み付け平均値ZLi AWを、前述した式(1)に示す水冷時の熱伝達率の補正係数ZLiとして、次回搬送される熱延鋼板Sについての巻取温度の予測に用いてもよい。同様に、今回搬送された熱延鋼板Sについての巻取温度の予測に用いた空冷時の熱伝達率の補正係数ZEiと、今回搬送された熱延鋼板Sについて測定した温度等によって算出された空冷時の熱伝達率の補正係数の平均値ZEi とを、下記の式(13)に示すように重み付け平均化処理して得られる空冷時の熱伝達率の補正係数の重み付け平均値ZEi AWを、前述した式(2)に示す空冷時の熱伝達率の補正係数ZEiとして、次回搬送される熱延鋼板Sについての巻取温度の予測に用いてもよい。なお、下記の式(12)及び(13)に示すβは、0<β<1の定数である。
Figure 0004924952
また、複数(例えば、100コイル程度)の熱延鋼板Sの各サンプリング点について得られた水冷時及び空冷時の熱伝達率の補正係数ZLj,i、ZEj,iの全てを纏めて、前述した式(10)、(11)に示すように平均化処理し、水冷時及び空冷時の熱伝達率の補正係数の平均値ZLi 、ZEi を算出して、次回以降に搬送される熱延鋼板Sについての巻取温度の予測に用いても良い。
また、一の熱延鋼板Sにおいて冷却が完了したサンプリング点についてのパラメータを用いて水冷時及び空冷時の熱伝達率の補正係数ZLj,i、ZEj,iを逐次算出し、これを同じ熱延鋼板Sであって且つ未だ巻取温度の予測をしていない後続のサンプリング点についての巻取温度の予測に用いることも可能である。
以上に説明したように、本実施形態に係る冷却設備100及びこれを用いた冷却方法によれば、水冷前後と空冷前後の熱延鋼板Sの温度をそれぞれ実測し、この実測温度を用いて水冷時及び空冷時の熱伝達率(熱伝達率の補正係数)を個別に算出するため、水冷時及び空冷時の実際の熱伝達率を精度良く算出することができる。そして、この熱伝達率を用いれば、熱延鋼板Sの巻取温度を精度良く予測でき、ひいては熱延鋼板Sの巻取温度を精度良く目標巻取温度に制御することが可能である。
<5.水柱温度計の好ましい構成>
以下、温度計2Aとして用いられる水柱温度計の好ましい構成について説明する。
図2は、図1に示す冷却設備100が備える温度計2Aの概略構成例を示す図である。
図2に示すように、温度計2Aは、放射温度計61と、熱延鋼板Sと対向する位置に先端が配置され、後端が放射温度計61に接続された光ファイバ62と、熱延鋼板Sと光ファイバ62の先端との間に光導波路としての水柱Wを形成するべく、熱延鋼板Sの下面に向けて水を噴射するノズル63と、ノズル63に水を供給するための水供給配管64とを備えている。温度計2Aは、水柱W、水供給配管647内の水の一部及び光ファイバ62を介して熱延鋼板Sの下面からの熱放射光を放射温度計61で受光し、熱延鋼板Sの温度を測定するように構成されている。
光ファイバ62の先端部には、光学窓81と、必要に応じて集光用レンズ82とを具備する先端光学系80が取付けられている。光学窓81及び集光用レンズ82としては、例えば石英製のものを適用することができる。
次に、放射温度計61によって検出すべき熱放射光の波長について説明する。
温度計2Aを用いて熱延鋼板Sの温度を測定する際には、水柱W及び外乱水(搬送ロール41用の冷却水等)による熱放射光の吸収・減衰に起因する測温誤差を抑制する必要がある。この測温誤差は、冷却水の条件や、熱延鋼板Sのパスライン変動(熱延鋼板S下面の上下方向の位置変動)、周囲温度・湿度の変化に伴う湯気の発生有無等により、熱延鋼板Sと放射温度計61との間に存在する水柱Wや外乱水の厚みが変化し、これに伴って水柱Wや外乱水による熱放射光の吸収・減衰の程度が変化し、検出される熱放射光の光量が変動することによって生じる。
本発明者らは、熱延鋼板Sと放射温度計61との間に形成した水柱Wを介して熱放射光を検出する場合を想定し、水の分光透過率を調査した。図5は、黒体炉と放射温度計との間に介在させた水柱の厚みを3、11、50、100mmとした場合における、約0.7〜1.9μmの波長帯域における水の分光透過率を示すグラフである。図5に示すように、0.85μm以下の波長帯域で最も水の透過率が高くなり、次いで1.00〜1.20μmの波長帯域で水の透過率が高くなることが分かった。
一方、黒体からの熱放射光は、長波長で極端に熱放射光の強度が高く、波長0.9μmよりも短い波長に比べ、長い波長で強く放射されている。従って、放射温度計で検出される光エネルギーは、そもそも長波長の光の寄与が大きく、水の吸収による影響を強く受けるため、できるだけ短波長の熱放射光を検出する方が好ましい。
図6は、約700℃の熱延鋼板において、放射温度計と熱延鋼板との間に存在する水の実効的厚みが30mm変動した場合の測温値の変動(測温誤差)を測定した結果を示す。なお、熱延鋼板Sの冷却設備100において、定常の搬送状態では、熱延鋼板Sのパスライン変動(熱延鋼板S下面の上下方向の位置変動)は最大で30mm程度を考えればよい。
ここで、図6の横軸は放射温度計と熱延鋼板との間に存在する水の厚みをプロットし、縦軸は測温誤差をプロットした。図6に示すように、「フィルタ無し」の場合(長波長成分を遮断せずに全波長帯域の熱放射光を検出する場合)には、例えば、基準となる水の厚み200mmに対して30mmだけ厚みが変動すると、約14℃の測温誤差が生じる(測温値が約14℃変化する)。また、長波長成分を遮断しない場合、基準となる水の厚みを大きくすると、測温誤差が小さくなるものの、例えば10℃以下の測温誤差とするためには、400mm以上の水の厚みが必要となる。なお、熱延鋼板の温度が高くなると、この測温誤差は大きくなり、さらに水の厚みを大きくする必要がある。しかしながら、水の厚みを厚くするための装置は、むやみに大きくなってしまうので、設置条件を大きく制限することが問題となる。
一方、図6に示すように、「遮断波長0.85μm」の場合(波長0.85μmよりも長い波長の光を遮断して検出する場合)には、基準となる水の厚みに関わらず、厚みが30mm変動しても6℃程度の測温誤差に抑えることが可能である。
しかしながら、図7に示すように、測定温度が600℃以下では測温値の変動が大きくなり、精度良く温度を測定することができないことが分かった。これは、測定対象が低温になると、放射される熱放射光の長波長成分が増大することが原因であると考えられる。従って、600℃以下の低温域の温度を放射測温するには、検出する熱放射光の波長を長波長側にシフトする必要のあることが分かった。
そこで、本発明者らは、2番目に水の透過率が高い1.00〜1.20μmの波長帯域の熱放射光を検出する放射温度計を試作し、その温度特性を黒体炉を用いて評価した。図8は、評価結果の一例を示すグラフである。図8に示すように、検出する熱放射光の波長帯域が1.00〜1.20μmである放射温度計の場合、測温値のバラツキ(3σ)が3℃になるまでを許容範囲とすると、310℃まで測定可能であることが分かった。
以上の試験結果より、熱延鋼板Sの温度が600℃以上となる高温域では、放射温度計61で検出する熱放射光の波長帯域を0.85μm以下とし、熱延鋼板Sの温度が600℃以下となる低温域では、放射温度計61で検出する熱放射光の波長帯域を1.00μm以上1.20μm以下とすることが望ましい。
なお、光ファイバ62は、前述のようにして決定した波長帯域の熱放射光を十分透過させる光ファイバである限りにおいて種々の形態のものを使用することができ、例えば、石英製の光ファイバとすることが可能である。また、単芯の光ファイバを使用することができる他、設置上の制約等により、水中での光路長(図2参照)を比較的長くする必要がある場合には、水による減衰の影響を緩和するべく、必要に応じて複数本の光ファイバを束ねたバンドルファイバとすることも可能である。また、光ファイバのコア径に特に制約は無い。
また、ノズル63やノズル63の前段に位置する水供給配管64は、気泡の発生を抑制するべく、その水路内での急激な口径や形状変化を極力避けるように設計するのが好ましい。また、ノズル63から吐出される水柱Wの所謂ポテンシャルコアが大きくなるように、ノズル63の形状等を決定するのが好ましい。
以下、実施例及び比較例を説明することにより、本発明の特徴をより一層明らかにする。
<実施例>
図1に概略構成を示す冷却設備100を用いて 下記の(1)〜(8)の条件で、熱延鋼板Sを冷却する試験を行った。
(1)鋼種:440MPa級高強度熱延鋼板
(2)厚み:3.5mm
(3)目標巻取温度:500℃
(4)搬送速度:570mpm〜650mpm(加速圧延)
(5)冷却装置の数:20
(6)各冷却装置の長さ:5m
(7)各冷却装置の冷却水の水量密度:1.0m/mhr
(8)温度計(水柱温度計)2Aの検出波長帯域:
0.85μm以下(1〜10番目の冷却装置出側)
1.00〜1.20μm(11〜20番目の冷却装置出側)
<比較例>
図4に概略構成を示す冷却設備100’を用いて、前述した実施例の(1)〜(7)の条件、及び、水冷時及び空冷時の熱伝達率の補正を行わない条件(熱伝達率は固定)で、熱延鋼板Sを冷却する試験を行った。
<試験結果>
図3(a)は、上記実施例の試験結果(熱間圧延機出側温度、巻取温度予測値、及び、巻取温度実績値)を示すグラフである。図3(b)は、上記比較例の試験結果(熱間圧延機出側温度、巻取温度予測値、及び、巻取温度実績値)を示すグラフである。
図3に示すように、実施例及び比較例の何れについても、巻取温度予測値が目標巻取温度である500℃に近づくように冷却装置が制御されていることが分かる。
しかしながら、図3(a)に示すように、実施例では、巻取温度実績値が目標巻取温度とほぼ同等になるように冷却されているのに対し、図3(b)に示すように、比較例では、巻取温度実績値が目標巻取温度に対して偏差を生じている。これは、実施例では、比較例に比べて、巻取温度の予測精度が高いことが原因である。
図1は、本発明の一実施形態に係る冷却設備の概略構成例を示す模式図である。 図2は、図1に示す冷却設備100が備える温度計(水柱温度計)2Aの概略構成例を示す図である。 図3は、実施例及び比較例の試験結果を示すグラフである。 図4は、従来の一般的な冷却設備の概略構成例を示す模式図である。 図5は、約0.7〜1.9μmの波長帯域における水の分光透過率を示すグラフである。 図6は、水の厚みと測温誤差との関係を示すグラフである。 図7は、検出する熱放射光の波長帯域を0.85μm以下とした放射温度計の測温値バラツキを評価した結果の一例を示すグラフである。 図8は、検出する熱放射光の波長帯域を1.00〜1.20μmとした放射温度計の測温値バラツキを評価した結果の一例を示すグラフである。
符号の説明
1(11〜1n)・・・冷却装置
2・・・温度計
2A(21〜2n)・・・温度計
3・・・熱伝達率算出手段
4・・・巻取温度予測手段
5・・・冷却制御手段
6・・・厚み計
7・・・速度計
8・・・水切り装置
9・・・温度計
10・・・水切り装置
20・・・熱間圧延機
30・・・巻取装置
100・・・冷却設備
S・・・熱延鋼板

Claims (2)

  1. 熱間圧延機で圧延され巻取装置に向けて搬送される熱延鋼板の巻取温度が所定の温度となるように、前記熱間圧延機と前記巻取装置との間に位置し熱延鋼板の搬送方向に沿って複数の区間に分割された冷却帯において、前記各区間でそれぞれ行われる水冷又は空冷の組み合わせからなる所定の冷却パターンで熱延鋼板を冷却する方法であって、
    前記冷却帯のうち熱延鋼板が水冷される区間の入側と出側の熱延鋼板の温度をそれぞれ測定し、該測定した熱延鋼板の温度差に基づき、水冷時の熱伝達率を算出するステップと、
    前記冷却帯のうち熱延鋼板が空冷される区間の入側と出側の熱延鋼板の温度をそれぞれ測定し、該測定した熱延鋼板の温度差に基づき、空冷時の熱伝達率を算出するステップと、
    前記冷却帯における複数の冷却パターンを想定し、該複数の冷却パターンについて、前記算出した水冷時及び空冷時の熱伝達率を用いてそれぞれ伝熱計算を行うことにより、各冷却パターンについての熱延鋼板の巻取温度を予測するステップと、
    前記想定した複数の冷却パターンのうち前記予測した熱延鋼板の巻取温度が所定の温度となる冷却パターンを選択し、該選択した冷却パターンにより熱延鋼板を冷却するステップとを含むことを特徴とする熱延鋼板の冷却方法。
  2. 熱間圧延機で圧延され巻取装置に向けて搬送される熱延鋼板の巻取温度が所定の温度となるように、前記熱間圧延機と前記巻取装置との間に配置され、水冷又は空冷の組み合わせからなる所定の冷却パターンで熱延鋼板を冷却する設備であって、
    熱延鋼板の搬送方向に沿ってそれぞれ配置され、水冷及び空冷の切り替えが可能な複数の冷却装置と、
    前記各冷却装置の入側及び出側にそれぞれ配置され、熱延鋼板の温度を測定する複数の温度計と、
    前記複数の冷却装置のうち熱延鋼板を水冷する冷却装置の入側と出側にそれぞれ配置された前記温度計によって測定した熱延鋼板の温度差に基づき、水冷時の熱伝達率を算出し、前記複数の冷却装置のうち熱延鋼板を空冷する冷却装置の入側と出側にそれぞれ配置された前記温度計によって測定した熱延鋼板の温度差に基づき、空冷時の熱伝達率を算出する熱伝達率算出手段と、
    前記各冷却装置がそれぞれ水冷又は空冷の何れかを行う複数の冷却パターンを想定し、該複数の冷却パターンについて、前記熱伝達率算出手段によって算出した水冷時及び空冷時の熱伝達率を用いて伝熱計算を行うことにより、各冷却パターンについての熱延鋼板の巻取温度を予測する巻取温度予測手段と、
    前記想定した複数の冷却パターンのうち前記巻取温度予測手段によって予測した熱延鋼板の巻取温度が所定の温度となる冷却パターンを選択し、該選択した冷却パターンに従って前記各冷却装置が行う水冷又は空冷を切り替える冷却制御手段とを備えることを特徴とする熱延鋼板の冷却設備。
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