JP3815193B2 - 公転式アクチュエータ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は可動部材に公転運動を行わせる公転式アクチュエータに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般のモータは、特公昭63−33382号公報に示されているステップモータのように可動部材に自転を行わせるものであるが、特開平8−205515号公報や特開平6−319251号公報に示された可変空隙型モータのように、可動部材に公転運動を行わせるものも存在している。磁界を移動させることで公転自在に支持されている可動部材に公転運動を行わせるものである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
このような公転式アクチュエータにおいては、可動部材の公転の動きに合わせて磁気力の作用方向が変わるように磁界を移動させるわけであるが、従来は可動部材の公転位置を検出して磁界を移動させる(励磁するコイルを切り換える)ための信号発生器等の電気回路を用いていたことから、部品点数が多くてコストが高くなっている。
【0004】
本発明はこのような点に鑑みなされたものであって、その目的とするところは低コストで製作することができる公転式アクチュエータを提供するにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
しかして本発明は、所定半径の公転が自在とされた可動部材と、自転が拘束されている上記可動部材に磁気力を作用させて可動部材の公転駆動を行う複数のコイルと、励磁するコイルもしくはコイルの励磁方向を切り換える通電制御部とを備えている公転式アクチュエータであって、上記通電制御部はブラシと該ブラシが接触する整流子とからなるとともに公転運動を行う上記可動部材の動きにて上記切り換え駆動がなされる整流子機構であることに特徴を有している。
【0006】
この場合、可動部材に整流子片を設けて可動部材そのものを整流子とすると、さらに部品数を削減することができる。
【0007】
この時、可動部材に各コイルに夫々電気的接続された複数の整流子片を設けるとともに、可動部材の支持部材側に、各コイル毎に用意した複数の給電用ブラシを設けたり、可動部材に設けた整流子片とコイルとの間の電気的接続をコイルに接続されて可動部材に接触するブラシで行ったりすることができ、さらにコイルに接続されたブラシは可動部材の外周面に接触させるようにしてもよい。また、コイルに接続されて可動部材に接触するブラシ及び電源に接続されて可動部材に接触するブラシは可動部材の軸方向に付勢されて配設されて可動部材の一面に接触させてもよい。
【0008】
このほか、可動部材の外周面に整流子片を設けるとともに、コイルに接続されて上記整流子片に接触するブラシと、このブラシの動きを規制するストッパーとを設けて、励磁するコイルもしくはコイルの励磁方向の切り換えをストッパーとブラシとで行うようにしてもよい。
【0009】
可動部材の表面に2つの同心円状の整流子片を設けるとともに各整流子片は夫々複数の突起パターン部と被給電用広面積パターン部とを備えたものとし、電源に接続されたブラシが被給電用広面積パターン部に常時接触し、コイルに接続されたブラシが上記突起パターン部に可動部材の公転運動に応じて接触するものであってもよい。
【0010】
複数の給電用ブラシを備えるものでは、これらブラシを一体に形成してもよい。
【0011】
また、ブラシを可動部材に設けて、可動部材の支持部材側に可動部材の公転に伴って円運動を行う上記ブラシが接触する平面状整流子を設けたものとしてもよい。
【0012】
このほか、可動部材の公転運動を受けて自転を行う整流子を設けたものとしてもよく、この場合の整流子は可動部材の公転軌道拘束部材を兼ねたものとすることができる。
【0013】
可動部材の公転運動を受けて自転を行う整流子を複数設けるとともに、これら整流子を可動部材の異なる位置に係合させるならば、可動部材の自転拘束機構も整流子に兼ねさせることができる。
【0014】
単一の整流子の外周面に各コイルに接続されたブラシが接触する正負各極用の整流子片を設けるようにしたり、単一の整流子の外周面に各コイルに接続されたブラシが接触する正負各極用の整流子片と、各コイルに接続されたブラシ間の短絡用整流子片とを設けてもよい。
【0015】
いずれにしても、ブラシは整流子との接触部分をスリット状に形成したものが好適である。
【0016】
そして本発明に係る公転式アクチュエータは、所定半径の公転が自在とされた可動部材と、自転が拘束されている上記可動部材に磁気力を作用させて可動部材の公転駆動を行わせる公転式アクチュエータであって、可動部材を支持する支持部材に配設されて可動部材の周縁部に磁束を通す磁石と、可動部材の周縁部に配設されているとともにブラシとの接触で電源に常時接続されている導体とを備えて、可動部材の公転の動きによる上記磁束と鎖交する上記導体の相対位置変化で上記磁気力を得ていることに他の特徴を有している。この場合も可動部材の公転の動きで磁気力の作用方向の切り換えを直接行うことになる。
【0017】
この時の可動部材は導体を周縁部に備えた薄板が積層されたものとして形成されたものを好適に用いることができる。
【0018】
また、可動部材はスクロールポンプの可動スクロール駆動用に好適に用いることができる。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下本発明を実施の形態の一例に基づいて詳述すると、図1〜図3に示す公転式アクチュエータは、上下一対のハウジング2,5と、下部ハウジング2上に固定したステータ4、そしてハウジング2,5に対して所定半径での公転を行うように駆動される円盤状の可動部材3とからなり、上記ステータ4は、同心円上に等間隔で配設された複数(図示例では8個)の固定鉄心40と、各固定鉄心40に夫々巻回されているコイル41〜48と、コイル41〜48への通電を切り換える通電制御手段とからなるもので、上記可動部材3はその公転に際して自転は行わないものとなっている。
【0020】
可動部材3の支持構造について説明すると、上記下部ハウジング2の中央部には軸20がその軸回りの回転が自在となるように配設されているとともに、この軸20が偏心した位置に備えている軸孔に、可動部材3の一面から突出する軸31が回転自在に遊嵌されており、これ故に、可動部材3は上記軸孔12の偏心量を半径とする旋回(公転)が自在となっている。軸20は可動部材3の公転半径拘束部材として機能しているものである。
【0021】
また、下部ハウジング2と可動部材3との間には、オルダムリング6が配設されている。可動部材3の一面に設けたキー溝にスライド自在に係合するキーをオルダムリング6が一面に備えているために、オルダムリング6に対して可動部材3が1自由度の移動が可能となっており、さらにオルダムリング6は他面に上記キーと直交するキーを備えて該キーを下部ハウジング2に設けたキー溝にスライド自在に係合させて、下部ハウジング2に対してオルダムリング6が1自由度の移動が可能となっている。このために、可動部材3は下部ハウジング2に対してオルダムリング6を介して2自由度の移動が可能な状態で保持されて自転について拘束されており、この結果、上記軸20による案内を受けて可動部材3が公転する時、可動部材3は自転を行うことがないものである。
【0022】
次に通電制御手段について説明すると、これは可動部材3の上面側に一体に設けた整流子7と、上部ハウジング5に配設した正電位供給用のブラシ81〜88及び負電位供給用(グランド接続用)のブラシ91〜98とからなるもので、上記整流子7は、可動部材3の上面側に放射状に並ぶ複数本(図示例では8本)の整流子片70を備えており、これら整流子片70は夫々隣接する位置にあるコイル41〜48の各一端に可撓リード線29によって接続されている。なお、該整流子7は、セラミックや樹脂等の絶縁材料と、銅、アルミニウム、銀等の整流子片70を構成する導電材料で形成してある。
【0023】
また、各コイル41〜48の他端は、対向する位置にあるコイル41〜48の他端に接続されており、このために図示例のものにおいては、コイル41はコイル45と、コイル42はコイル46と短絡しており、固定鉄心40は8極であるものの4相となっている。また、コイル41〜48の巻装方向は電流が流れた際に上記短絡されている2つのコイル(たとえばコイル41,45)のうちの一方が巻回された固定鉄心40の上歯がS極、下歯がN極となる時、他方が巻回された固定鉄心40の上歯がN極、下歯がS極となるようにしてある。
【0024】
上部ハウジング5に配設しているとともに直流電源Vに夫々接続してある正電位供給用ブラシ81〜88は、円環状に配設しているとともにばね89によって整流子7側へと付勢してあり、グランドに夫々接続してある負電位供給用ブラシ91〜98も、円環状に配設しているとともにばね99によって整流子7側へと付勢してあるが、これら8個のブラシ81〜88及び8個のブラシ91〜98は、隣接位置にある最大3個が上記整流子片70に接触するとともに、可動部材3の公転に伴って、整流子片70と接触するものが移行していくようにしてある。
【0025】
すなわち、図1に示す位置に可動部材3がある時、正電位供給用ブラシ88,81,82が整流子片70と接触し、負電位供給用ブラシ94,95,96が整流子片70と接触していることから、短絡されているコイル48,44と、コイル41,45と、コイル42,46に直流電源が供給される。この状態から可動部材3が45°公転すれば、図3に示すように、整流子片70には正電位供給用ブラシ81,82,83と、負電位供給用ブラシ95,96,97が接触して、短絡されているコイル41,45と、コイル42,46と、コイル43,47に直流電源が供給される。可動部材3の公転に伴い、直流電源が供給されるコイル41〜48が順次ずれていくものである。
【0026】
一方、固定鉄心40の上下に対向している上歯と下歯との間に周縁部を位置させる可動部材3は、その周縁部がたとえば上面側がS極、下面側がN極となるように着磁された永久磁石で形成されており、上記コイル41〜48への直流電源の供給による励磁に伴い、短絡されている対のコイルが巻回されているとともに対向位置にある2つの固定鉄心40,40との間には、一方側で吸引力、他方側で反発力が働くものであり、この磁気力により可動部材3は公転駆動され、そして該公転により、整流子7とブラシ81〜88,91〜98は励磁されるコイル41〜48を順次切り換えていく。図1中のばね28は、可動部材3(整流子7)をブラシ81〜88,91〜98側に向けて軸方向付勢することで可動部材3の軸方向位置を拘束するためのものである。
【0027】
ところで、上記のものでは、公転運動を行う可動部材3に設けた整流子7の整流子片70とコイル41〜48との間の接続を可撓リード線29によって行っていることから、可撓リード線29の曲げ破壊の点で耐久性に問題を有している。図4〜図7はこの点に鑑み、各コイル41〜48の一端に夫々2個ずつのブラシ51,51〜58,58を接続して、可動部材3の表面及び裏面の各全面に位置する整流子片71,72に可動部材3の外周面において接触させることができるようにするとともに、上部ハウジング5と下部ハウジング2には、整流子片71,72に直流電源Vを常時接続するブラシ80,90を配置し、さらには可動部材3の公転に伴って上面側のブラシ51〜58と整流子片71及び下面側のブラシ51〜58と整流子片72との間の接触が切りかわるように、図5(b)に示すように、ばね59による付勢でのブラシ51,51〜58,58の突出量を制限するストッパー27を設けている。
【0028】
なお、このものにおいても、対向位置にあるコイル同士(たとえばコイル41,45同士)を短絡していることから、コイル41の一端に接続した2個のブラシ51,51のうち、一方はコイル43と同位置に、他方は対向位置(コイル47の位置)に配設してある。そして、図6に示すように、電流がブラシ80から整流子片71とブラシ51とを通じてコイル41,45に流れる時、さらにブラシ55から整流子片72とブラシ90を通じてグランドへと流れるものである。図7は上記状態から可動部材3が45°公転した状態を示しており、コイル41〜48への電流供給が順次切りかわっていく点では、図1〜図3に示した例と同じである。
【0029】
図8に他例を示す。これは図1及び図2に示したものと同様に放射状に配した整流子片70を有している整流子7を備えたものにおいて、整流子片70を一端を整流子7の外周面に至らせるとともに、各コイル41〜48の一端に接続したブラシ51〜58を整流子7の外周面に常時接触させているもので、上部ハウジング5には、図1に示した配置のブラシ81〜88,91〜98を設けてある。ブラシ81から整流子片70とブラシ51を通じてコイル41に電流が流れる時、コイル41に短絡されたコイル45を経てブラシ55から整流子片70とブラシ95へとさらに電流が流れる。
【0030】
図9及び図10に別の例を示す。これは可動部材3に直流電源Vに接続されたブラシ80,90を設けるとともに、下部ハウジング2上に2組の整流子7,7を設けたもので、各整流子7は放射状に配された複数本(図示例では8本)の整流子片70を備えた平面状のものとなっている。そして、各コイル41〜48の一端がこれら2組の整流子7,7の整流子片70に接続され、コイル41〜48の他端は対向するコイル同士で短絡されており、さらに2組の整流子7,7において、コイル41〜48が接続された整流子70の配置が逆位置となるようにしてあることから、2つのブラシ40,50を有しているだけであるにもかかわらず、図10に示すように、コイル48,41,42及びこれらに短絡されたコイル44,45,46に電流が供給されている状態から、可動部材3が90°公転すれば、コイル42,43,44とコイル46,47,48に電流が供給される状態となり、可動部材3の公転に伴い、コイル41〜48への電流供給は順次切りかわっていく。
【0031】
図11に示すものでは、整流子7として、上部ハウジング5によって軸回り回転が自在とされた2つのものを用いている。これら整流子7,7は、可動部材3から突設された軸37,37を受ける偏心孔を備えているために、可動部材3が1回の公転を行う時に1回の自転を行うものであり、直流電源Vに接続されたブラシ80,90が常時接触するリング状の整流子片71(または72)と、この整流子片71(72)に接続された円弧状の整流子片70とを外周面に備えている。そしてこれら整流子7,7の各外周には、各コイル41〜48の一端に接続されているブラシ51〜58,51〜58が夫々等間隔で配設されている。なお、2つの整流子7,7では、整流子片70,70の配置位置を180°ずらしてある。(整流子片70,70の配置位置は同じとし、コイルの一端に接続した2つのブラシ51〜58,51〜58の配置位置を逆としてもよい。)
可動部材3の公転に伴って整流子7,7が自転を行うものであり、この自転により、整流子片70に接触するブラシ51〜58,51〜58が順次変化していくことから、コイル41〜48への電流供給が順次切りかわり、これによって可動部材3の公転駆動がなされるものである。この場合の整流子7は、信頼性の高い回転式アクチュエータで用いられている整流子機構とほぼ同じ構造となっていることから、高い信頼性及び寿命向上を容易に得ることができる。
【0032】
ここにおいて、可動部材3の公転を受けて整流子7に自転を行わせるための構成であるが、これは可動部材3の公転軌道の拘束を行うための前記軸20と可動部材3との間の構成と全く同じであり、このために、軸20が無くとも整流子7,7によって可動部材3の公転軌道拘束を行うことができる。図13はこの点に着目して、可動部材3の上下に夫々配した整流子7に公転軌道拘束部材としての役割も持たせることで、軸20を排除したものである。
【0033】
また、図11に示したもののように、可動部材3の異なるところに係合して可動部材3の公転で自転を行う2つの整流子7,7を配置する時、これら整流子7,7は可動部材3の自転を防ぐ機能も果たすことになる。このために、図14に示すように、軸20だけでなく、オルダムリング6も無くしたものとすることができる。
【0034】
図15及び図16に他例を示す。これは可動部材3の公転を受けて整流子7が自転を行うようにしている点で上記の例と同じであるが、ここでは整流子7を一つだけとし、該整流子7の外周面に、ブラシ80が常時接触するリング状の整流子片71と、ブラシ90が常時接触するリング状の整流子片72と、これら2つの整流子片71,72に夫々電気的に接続されているとともに、同一外周上で周方向位置をずらしたところに位置する2つの円弧状の整流子片70,70を設けて、各コイル41〜48の一端が接続されたブラシ51〜58を、整流子片70,70の外周位置に等間隔で配置してある。なお、各コイル41〜48の他端は対向位置にあるもの同士を接続してある。
【0035】
図16は、一方の整流子片70にブラシ52,53,54が接触するとともに他方の整流子片70にブラシ56,57,58が接触してコイル42,43,44とこれらの対向位置にあるコイル46,47,48とに夫々電流が流れている状態から、可動部材3が90°、180°及び270°公転した時の各コイル41〜48(ブラシ51〜58)と整流子片70,70の接触切換状態を示している。一つの整流子7だけで各コイル41〜48への電流供給を制御することができるために、部品点数を少なくすることができるものである。
【0036】
図17〜図19に示すものは、基本的構成は上記図15及び図16に示したものと同じであるが、ここでは整流子7として、整流子71,72と2つの円弧状整流子片70,70に加えて、整流子片70,70と同一円周上に位置する整流子片73を設けたもので、整流子片70は隣接位置にある2つのブラシ51〜58に同時に接触する長さを有し、整流子片73は隣接位置にある3つのブラシ51〜58に同時に接触する長さを有するものとして、ブラシ52,53に一方の整流子片70が接触している時、ブラシ57,58に他方の整流子片70が接触し、さらにブラシ54,55,56に整流子片73が接触してこれらブラシ54,55,56間を整流子片73が短絡するようにしてある。なお、この状態では、一方の整流子片70にブラシ52を介してコイル42とこれに短絡されたコイル46とに電流i1が流れるとともに、ブラシ56と整流子片73とブラシ54、そしてブラシ58と他方の整流子片70を通じて、コイル54とこれに短絡されたコイル58にも電流i1が流れ、一方の整流子片70にブラシ53を接触させたコイル43に流れる電流i2はコイル43に短絡されたコイル47にも流れる。
【0037】
コイル間の短絡用の整流子片73を設けることで、可動部材3の45°毎の公転につれて、直列に接続された4つのコイルに電流が流れる状態と、直列に接続された2つのコイルに電流が流れる状態、電流が流れない状態が漸次切りかわっていくようにしているとともに、この時、任意の1相のコイルに印加される電圧が、図18(b)に示すように、正弦波状にステップ変化するようにしていることから、高い効率を得ることができるものである。
【0038】
図20は、図8に示したものの他例を示すもので、各コイル41〜48の一端に接続されたブラシ51〜58と、直流電源Vに接続されたブラシ81〜88,91〜98のすべてを下部ハウジング2の上面側に配置して、可動部材3の下面側に設けた整流子7に摺動接触させている。上記の各ブラシを付勢するばね59,89,99が図1等に示したばね28を兼ねるようにしたものである。
【0039】
なお、整流子7における整流子片70は、ブラシ81〜88,91〜98との間で電路の開閉を行うことから、ここではブラシ51〜58が接触する付近を他の部分よりも大きくして、可動部材3の公転位置にかかわらず、整流子片70とブラシ51〜58とが常時接触するようにしている。ブラシ51〜58側を大きくすることで、常時接触状態を得るようにしてもよい。
【0040】
また、ここでのブラシ81〜88及びブラシ91〜98は、図21に示すように、夫々リング状導電部材から軸方向に突出する突部として設けることにより、複数のブラシ81〜88及びブラシ91〜98を夫々1部品として形成することができ、部品点数の削減を図ることができる。
【0041】
さらには、可動部材3上に設ける整流子7として、図22に示すように、リング状であって、外周側に複数本の突部を突出させた整流子片71と、該整流子片71の外周側に位置するリング状であって、内周側に複数本の突部を突出させた整流子片72とを備えたものとして、各整流子片71,72に直流電源Vに接続されたブラシ80,90が常時接触する広面積部75,76を設け、さらにコイル41〜48の各一端に接続されたブラシ51〜58と上記整流子片71,72の突部との接触状態が可動部材3の公転につれて切り換えられるようにすることでも、直流電源Vに接続したブラシに関する部品数を少なくすることができる。ちなみに、図22(a)に示す状態では、ブラシ58,51,52が整流子片71に接触し、ブラシ54,55,56が整流子片72に接触しており、この状態から可動部材3が45°公転した図22(b)に示す状態では、ブラシ51,52,53が整流子片71に接触し、ブラシ55,56,57が整流子片72に接触している。
【0042】
以上の各例では、可動部材3として、その周縁部に永久磁石を備えたものを用いたが、図23に示すように、ハウジング2,5側に永久磁石M1,M2を配置して、この永久磁石M1,M2間の磁束が可動部材3の周縁部を通るようにするとともに、可動部材3の表面に歯車状の導体パターンを有する電気回路33を設け、この電気回路33にブラシ80,90を通じて直流電源Vを常時供給するようにしてもよい。無端環状をなす電気回路33の対向する2箇所には、給電部34,34を設けて、ブラシ80,90は可動部材3の公転位置に拘わらず給電部34,34に接触しているようにしてある。
【0043】
ハウジング2,5に設けた永久磁石M1,M2はリング状であり、図24に示すように、周方向においてN極とS極とが交互に並ぶように着磁してあるとともに、導体のパターンが歯車状となっている電気回路33は、可動部材3の公転位置に応じて永久磁石M1,M2間の磁束を横切る部位の位置を相対変化させていくとともに、フレミングの左手の法則に従って発生する公転駆動力Fの方向を変化させて可動部材3を公転させるために、このものにおいても、可動部材3の公転動作自体によって駆動力Fの方向が切り換えられていく。
【0044】
この場合の可動部材3は、図25に示すように、夫々電気回路33を有している薄板35を積層したものとしておくとともに、各薄板35上の電気回路33を導電性のピン36で電気的に接続したものとしておくと、より効率の高いものを得ることができる。
【0045】
なお、上記の各例におけるブラシ51〜58またはブラシ80〜88またはブラシ90〜98は、図26に示すように、複数本のスリットを備えた多点接触型のものとしておくことで、接触抵抗を低減させることができる。
【0046】
図27は上記構成のアクチュエータをスクロールポンプの駆動源として用いた場合を示しており、ここでは上部ハウジング(固定スクロール)5に設けた渦巻き状のラップ26が形成された面に対向する可動部材3の表面に渦巻き状態のラップ34を形成して、可動部材3自体が可動スクロールを構成するものとし、両ラップ26,34が重なるように両者を組み合わせて、公転運動を所定の回転方向において可動部材3が行う時、上部ハウジング(固定スクロール)5のラップ26と可動部材3のラップ34とによって閉じられた空間が外周側から中心側へとその容積を漸次小さくしつつ移動させるために、上部ハウジング5の外周側に設けた吸い込み口(図示せず)から吸い込んだ流体を、中心部に設けた吐出口(図示せず)から吐出する。
【0047】
【発明の効果】
以上のように本発明においては、所定半径の公転が自在とされた可動部材と、自転が拘束されている上記可動部材に磁気力を作用させて可動部材の公転駆動を行う複数のコイルと、励磁するコイルもしくはコイルの励磁方向を切り換える通電制御部とを備えている公転式アクチュエータにおいて、上記通電制御部はブラシと該ブラシが接触する整流子とからなるとともに公転運動を行う上記可動部材の動きにて上記切り換え駆動がなされる整流子機構であるために、低コストで磁気力の作用方向を漸次切り換えて可動部材を公転させることができる。
【0048】
この場合、可動部材に整流子片を設けて可動部材そのものを整流子とすると、さらに部品数を削減することができる。
【0049】
この時、可動部材に各コイルに夫々電気的接続された複数の整流子片を設けるとともに、可動部材の支持部材側に、各コイル毎に用意した複数の給電用ブラシを設けることができる。
【0050】
また、可動部材に設けた整流子片とコイルとの間の電気的接続をコイルに接続されて可動部材に接触するブラシで行うと、公転を行う可動部材上の整流子片とコイルとの間の電気的接続について耐久性の高いものを得ることができる。
【0051】
さらにコイルに接続されたブラシは可動部材の外周面に接触させることで、ブラシと可動部材の整流子片との常時接触状態を簡便に得ることができるとともに、ブラシが可動部材から離れてしまうことによる放電現象を少なくすることができる。
【0052】
コイルに接続されて可動部材に接触するブラシ及び電源に接続されて可動部材に接触するブラシは可動部材の軸方向に付勢されて配設されて可動部材の一面に接触させると、可動部材を軸方向に付勢する軸方向拘束機構を代用させることができる。
【0053】
このほか、可動部材の外周面に整流子片を設けるとともに、コイルに接続されて上記整流子片に接触するブラシと、このブラシの動きを規制するストッパーとを設けて、励磁するコイルもしくはコイルの励磁方向の切り換えをストッパーとブラシとで行うようにしても、簡単に通電するコイルの切り換えを行うことができる。
【0054】
可動部材の表面に2つの同心円状の整流子片を設けるとともに各整流子片は夫々複数の突起パターン部と被給電用広面積パターン部とを備えたものとし、電源に接続されたブラシが被給電用広面積パターン部に常時接触し、コイルに接続されたブラシが上記突起パターン部に可動部材の公転運動に応じて接触するものであってもよい。電源に接続されたブラシの数を最小にすることができる。
【0055】
複数の給電用ブラシを備えるものでは、これらブラシを一体に形成することで、部品点数を減らすことができる。
【0056】
また、ブラシを可動部材に設けて、可動部材の支持部材側に可動部材の公転に伴って円運動を行う上記ブラシが接触する平面状整流子を設けたものとしても、ブラシの本数を少なくすることができ、低コストで磁気力の作用方向を漸次切り換えて可動部材を公転させることができる。
【0057】
このほか、可動部材の公転運動を受けて自転を行う整流子を設けたものとすれば、回転式アクチュエータで実績の高い整流子機構とほぼ同じ構造を用いることができるために、信頼性及び寿命を高めることができる。
【0058】
この場合の整流子は可動部材の公転軌道拘束部材を兼ねたものとすることで、さらに部品点数を少なくすることができる。
【0059】
可動部材の公転運動を受けて自転を行う整流子を複数設けるとともに、これら整流子を可動部材の異なる位置に係合させるならば、可動部材の自転拘束機構も整流子に兼ねさせることができるために、さらに部品点数を少なくすることができる。
【0060】
単一の整流子の外周面に各コイルに接続されたブラシが接触する正負各極用の整流子片を設けるならば、整流子の数を少なくすることができて、部品点数を削減することができ、さらに単一の整流子の外周面に各コイルに接続されたブラシが接触する正負各極用の整流子片と、各コイルに接続されたブラシ間の短絡用整流子片とを設ければ、コイルに負荷する電圧を多段に切り換えることが可能となり、正弦波状の電圧供給が可能となって効率を良くすることができる。
【0061】
いずれにしても、ブラシは整流子との接触部分をスリット状に形成したものが接触抵抗の軽減の点で好適である。
【0062】
そして本発明に係る公転式アクチュエータは、所定半径の公転が自在とされた可動部材と、自転が拘束されている上記可動部材に磁気力を作用させて可動部材の公転駆動を行わせる公転式アクチュエータであって、可動部材を支持する支持部材に配設されて可動部材の周縁部に磁束を通す磁石と、可動部材の周縁部に配設されているとともにブラシとの接触で電源に常時接続されている導体とを備えて、可動部材の公転の動きによる上記磁束と鎖交する上記導体の相対位置変化で上記磁気力を得ていることに他の特徴を有している。この場合も可動部材の公転の動きで磁気力の作用方向の切り換えを直接行うことができて、低コストで提供することができる。
【0063】
この時の可動部材は導体を周縁部に備えた薄板が積層されたものとして形成されたものを用いると、より効率の高いものを得ることができる。
【0064】
また、可動部材はスクロールポンプの可動スクロール駆動用に用いると、可動部材に可動スクロールを一体化させることができるために小型のスクロールポンプを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態の一例を示すもので、(a)は平面図、(b)は断面図である。
【図2】 (a)は同上の部分拡大断面図、(b)は整流子の平面図である。
【図3】同上の可動部材が45°公転した状態を示す平面図である。
【図4】他例の平面図である。
【図5】 (a)は同上の断面図、(b)は同上の部分拡大断面図である。
【図6】 (a)(b)は同上の動作を示す平面図と底面図である。
【図7】 (a)(b)は同上の45°公転した状態の動作を示す平面図と底面図である。
【図8】さらに他例の断面図である。
【図9】別の例を示すもので、(a)は断面図、(b)は部分拡大断面図である。
【図10】 (a)(b)は同上の整流子機構の動作を示す説明図である。
【図11】他の実施の形態の一例を示すもので、(a)は断面図、(b)は部分平面図、(c)は整流子片とブラシの配置を示す斜視図である。
【図12】 (a)(b)は同上の整流子機構の動作を示す説明図である。
【図13】同上の他例の断面図である。
【図14】同上の更に他例の断面図である。
【図15】同上の別の例を示すもので、(a)は断面図、(b)は整流子片とブラシの配置を示す斜視図である。
【図16】同上の整流子機構の動作を示す説明図である。
【図17】同上のさらに別の例を示すもので、(a)は整流子機構の水平断面図、(b)はA−A線断面図、(c)はB−B線断面図である。
【図18】 (a)は同上の整流子片とブラシの配置を示す斜視図、(b)はコイルに印加される電圧の変化を示すタイムチャートである。
【図19】同上の整流子機構の動作を示す説明図である。
【図20】他例を示すもので、(a)は断面図、(b)は底面図である。
【図21】 (a)(b)は夫々ブラシの他例の斜視図である。
【図22】更に他例を示すもので、(a)は可動部材上の整流子片とブラシとを示す底面図、(b)は同上の可動部材が45°公転した状態を示す底面図である。
【図23】さらに他の実施の形態の一例を示しており、(a)は断面図、(b)は可動部材上の電解回路を示す平面図である。
【図24】同上の動作説明図である。
【図25】同上の可動部材の他例の断面図である。
【図26】ブラシの具体構造の一例を示すもので、(a)は断面図、(b)は平面図である。
【図27】可動スクロールポンプの断面図である。
【符号の説明】
3 可動部材
7 整流子
81〜88 ブラシ
91〜98 ブラシ
Claims (19)
- 所定半径の公転が自在とされた可動部材と、自転が拘束されている上記可動部材に磁気力を作用させて可動部材の公転駆動を行う複数のコイルと、励磁するコイルもしくはコイルの励磁方向を切り換える通電制御部とを備えている公転式アクチュエータであって、上記通電制御部はブラシと該ブラシが接触する整流子とからなるとともに公転運動を行う上記可動部材の動きにて上記切り換え駆動がなされる整流子機構であることを特徴とする公転式アクチュエータ。
- 可動部材に整流子片を設けて可動部材そのものを整流子としていることを特徴とする請求項1記載の公転式アクチュエータ。
- 可動部材に各コイルに夫々電気的接続された複数の整流子片を設けるとともに、可動部材の支持部材側に、各コイル毎に用意した複数の給電用ブラシを設けていることを特徴とする請求項2記載の公転式アクチュエータ。
- 可動部材に設けた整流子片とコイルとの間の電気的接続をコイルに接続されて可動部材に接触するブラシで行っていることを特徴とする請求項2または3記載の公転式アクチュエータ。
- コイルに接続されたブラシは可動部材の外周面に接触していることを特徴とする請求項4記載の公転式アクチュエータ。
- コイルに接続されて可動部材に接触するブラシ及び電源に接続されて可動部材に接触するブラシが可動部材の軸方向に付勢されて配設されて可動部材の一面に接触していることを特徴とする請求項2〜4のいずれかの項に記載の公転式アクチュエータ。
- 可動部材の外周面に整流子片を設けるとともに、コイルに接続されて上記整流子片に接触するブラシと、このブラシの動きを規制するストッパーとを設けて、励磁するコイルもしくはコイルの励磁方向の切り換えをストッパーとブラシとで行っていることを特徴とする請求項2記載の公転式アクチュエータ。
- 可動部材はその表面に2つの同心円状の整流子片を備えるとともに各整流子片は夫々複数の突起パターン部と被給電用広面積パターン部とを備えて、電源に接続されたブラシが被給電用広面積パターン部に常時接触しており、コイルに接続されたブラシが上記突起パターン部に可動部材の公転運動に応じて接触していることを特徴とする請求項2記載の公転式アクチュエータ。
- 複数の給電用ブラシを一体に形成していることを特徴とする請求項3記載の公転式アクチュエータ。
- ブラシが可動部材に設けられており、可動部材の支持部材側に可動部材の公転に伴って円運動を行うブラシが接触する平面状整流子が設けられていることを特徴とする請求項1記載の公転式アクチュエータ。
- 整流子は可動部材の公転運動を受けて自転を行うものであることを特徴とする請求項1記載の公転式アクチュエータ。
- 整流子は可動部材の公転軌道拘束部材を兼ねていることを特徴とする請求項11記載の公転式アクチュエータ。
- 可動部材の公転運動を受けて自転を行う整流子が複数設けられており、これら整流子が可動部材の異なる位置に係合していることを特徴とする請求項11または12記載の公転式アクチュエータ。
- 単一の整流子の外周面に各コイルに接続されたブラシが接触する正負各極用の整流子片を設けていることを特徴とする請求項11または12記載の公転式アクチュエータ。
- 単一の整流子の外周面に各コイルに接続されたブラシが接触する正負各極用の整流子片と、各コイルに接続されたブラシ間の短絡用整流子片とを設けていることを特徴とする請求項11または12または14記載の公転式アクチュエータ。
- ブラシは整流子との接触部分がスリット状に形成されていることを特徴とする請求項1〜15のいずれかの項に記載の公転式アクチュエータ。
- 所定半径の公転が自在とされた可動部材と、自転が拘束されている上記可動部材に磁気力を作用させて可動部材の公転駆動を行わせる公転式アクチュエータであって、可動部材を支持する支持部材に配設されて可動部材の周縁部に磁束を通す磁石と、可動部材の周縁部に配設されているとともにブラシとの接触で電源に常時接続されている導体とを備えて、可動部材の公転の動きによる上記磁束と鎖交する上記導体の相対位置変化で上記磁気力を得ていることを特徴とする公転式アクチュエータ。
- 可動部材は導体を周縁部に備えた薄板が積層されたものとして形成されていることを特徴とする請求項17記載の公転式アクチュエータ。
- 可動部材がスクロールポンプの可動スクロール駆動用であることを特徴とする請求項1〜18のいずれかの項に記載の公転式アクチュエータ。
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