JP3814855B2 - 有機性排液の嫌気処理方法 - Google Patents

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  • Treatment Of Sludge (AREA)

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は有機性排液を嫌気処理し、生成する汚泥を加熱処理により減容化するようにした有機性排液の嫌気処理方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
有機性排液を活性汚泥の存在下に好気的に生物処理する方法では、難脱水性の余剰活性汚泥が大量に生成する。また有機性排液を嫌気性汚泥の存在下に嫌気的に処理する方法でも、大量の余剰消化汚泥が生成する。このような余剰汚泥の減容化のために、余剰汚泥を好気的または嫌気的に消化する方法が行われている。このうち好気的消化では、余剰汚泥を消化槽で単純に曝気して消化し、曝気汚泥を固液分離して分離汚泥を消化槽に返送している。また嫌気性消化では、余剰汚泥を消化槽に投入し、嫌気性細菌の作用で消化している。
【0003】
このような消化方法は、好気性または嫌気性生物の作用を利用して消化するものであるが、余剰汚泥自体生物処理を経て生物学的に安定した汚泥であるため、汚泥の減容化には限度があり、通常余剰汚泥の30〜40%が減容化されるにすぎない。
【0004】
このような点を改善するために、特公平5−61994号には、余剰汚泥をpH2.5以下、温度50℃以上で可溶化したのち曝気槽に返送する有機性汚水の処理方法が記載されている。
また特開平1−224100号には、嫌気性消化した汚泥を100〜180℃で加熱処理した後、この加熱処理汚泥を嫌気消化槽に返送する有機性汚泥の処理方法が記載されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、このような従来の方法では汚泥の減容化は可能であるが、可溶化処理の条件が高温で厳しいため、難生物分解性の有機物が生成して処理液の色度やCODが上昇して処理水質が悪化し、しかも耐熱性、耐圧性の高い装置を必要とし、エネルギー消費量が多く、コスト高になるという問題点がある。
【0006】
本発明の目的は、上記問題点を解決するため、処理水質の悪化を抑制し、しかも低温の加熱により、低コストで汚泥の減容化を行うことができる有機性排液の嫌気処理方法を提案することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、有機性排液を嫌気処理槽において嫌気性微生物を含む生物汚泥の存在下に嫌気処理する嫌気処理工程と、
1日あたり嫌気処理槽に導入する有機性排液中の汚泥の2倍以上の量(固形分重量)であって、かつ1日あたり嫌気処理槽の全保有汚泥量の1/15以下の量(固形分重量)に相当する嫌気処理槽内の混合液または濃縮液を引抜き、この引抜汚泥を60〜100℃未満の温度で30分間以上加熱処理した後、嫌気処理槽に移送する加熱処理工程と
を含むことを特徴とする有機性排液の嫌気処理方法である。
【0008】
本発明において処理の対象となる有機性排液は、嫌気処理によって処理される有機物を含有する排液(汚泥を含む)であるが、難生物分解性の有機物、無機物、セルロース、紙、綿、ウール布、し尿中の固形物などが含有されていてもよい。このような有機性排液としては下水、下水初沈汚泥、し尿、浄化槽汚泥、食品工場排水、ビール廃酵母その他の産業排液、これらの排液を処理した際に生じる余剰汚泥等の汚泥などがあげられる。
【0009】
このような有機性排液を嫌気処理する嫌気処理工程としては、嫌気性消化法、高負荷嫌気性処理法などがあげられる。
嫌気処理の処理条件は特に制限されず、通常の嫌気性生物処理の条件が採用できる。例えば、嫌気処理槽内のMLSS濃度5,000〜100,000mg/l、好ましくは30,000〜60,000mg/l、嫌気処理温度30〜38℃または45〜60℃の条件で嫌気処理することができる。本発明は、加熱処理工程を含んでいるので、嫌気処理槽の保温を十分に行えば、特に加熱しなくても45〜60℃の温度を維持することができる。
【0010】
本発明では、このような嫌気処理における処理系から生物汚泥の一部を引抜き、この引抜汚泥を加熱処理する。生物汚泥を引抜く場合、濃縮装置で濃縮された濃縮液を引抜いてもよいし、嫌気処理槽から混合液の状態で引抜いてもよいが、加熱処理が小さい容量の処理槽で行うことができ、しかも加熱エネルギーが少なくてもよいので前者の方が好ましい。濃縮装置としては、沈殿装置、遠心分離装置、膜分離装置などの公知の装置が使用できる。これらの中では、汚泥を高濃縮でき、加熱処理する汚泥量を前記の2倍以上、1/15以下の所定量に容易に調整できるので、遠心分離装置、膜分離装置が好ましい。
【0011】
加熱処理する引抜汚泥の量は、1日あたり嫌気処理槽に導入する有機性排液中の汚泥(以下、投入汚泥という場合がある)の2倍以上、好ましくは2.5〜4倍の量(固形分重量)であって、かつ1日あたり嫌気処理槽の全保有汚泥量の1/15以下、好ましくは1/15〜1/50の量(固形分重量)に相当する量である。上記の加熱処理する引抜汚泥の量は1日あたりの量である。加熱処理する汚泥の量を投入汚泥の2倍以上の量とすることにより、処理系全体としての汚泥の減容化を高くすることができる。また嫌気処理槽の全保有汚泥量の1/15以下とすることにより、嫌気処理槽全体としての汚泥活性を高く維持した状態で嫌気処理することができる。
【0012】
加熱処理の条件は、処理温度が60〜100℃未満、好ましくは90〜95℃である。処理時間は処理温度と関連し、処理温度が90℃以上100℃未満の場合は30分間以上、好ましくは40〜60分間、処理温度が60℃以上90℃未満の場合は30分間以上、好ましくは60〜120分間である。加熱処理は連続式で行うこともできるし、バッチ式で行うこともできる。連続式で行う場合、上記処理時間は滞留時間である。
【0013】
汚泥中の生きている生物は他の生物に資化されないため減容化は困難であるが、加熱処理により死亡すると、他の生きている生物により資化されて減容化が可能となる。この場合、加熱処理により汚泥を完全に可溶化する必要はない。このように加熱処理することにより汚泥は改質され、この改質汚泥をさらに嫌気処理することにより、消化が促進されて汚泥の固形分は分解、液化し、これにより余剰汚泥が減容化する。加熱処理した汚泥の嫌気処理は、汚泥を引抜いた処理系の嫌気処理槽に返送(循環)して行うこともできるし、別の処理系の嫌気処理槽に導入して行うこともできる。
【0014】
本発明における加熱処理温度は60〜100℃未満であり、従来の可溶化処理するための加熱温度に比べると低温であるが、このような比較的低温で加熱処理した場合でも生物が死滅するため、嫌気処理槽における消化作用は促進される。例えば投入汚泥量と同程度の汚泥を加熱処理した場合は消化率は70%程度である。この70%の消化率は100℃以上の温度で可溶化処理した場合に比べると小さいが、本発明の方法では加熱処理する汚泥の量を多くし、投入汚泥量の2倍以上としているので、ほぼ100%の消化率を達成することができる。ここで消化率とは、投入汚泥の有機固形分が嫌気処理(消化)により分解された率であり、消化率が100%ということは嫌気処理系から余剰汚泥が発生しないことを意味する。
【0015】
本発明の方法では、60〜100℃未満の低温で加熱処理しているので、難生物分解成分の生成を抑制することができる。しかも従来に比べて低い耐熱性、耐圧性の装置を使用することができるとともに、エネルギー消費量を少なくすることもでき、かつ臭気も抑制することができる。
【0016】
【発明の実施の形態】
次に本発明の実施の形態を図面により説明する。図1および図2はそれぞれ別の実施の形態の嫌気処理装置を示す系統図であり、図1は嫌気処理液を濃縮装置により濃縮した濃縮汚泥を加熱処理する例、図2は嫌気処理槽内の混合液を加熱処理する例を示している。
【0017】
図1において、1は嫌気処理槽、2は膜分離装置、3は加熱処理槽である。
図1の処理装置による処理方法は、被処理液路4から有機性の排液または汚泥を嫌気処理槽1に導入し、返送汚泥路5を通して返送される返送汚泥および嫌気処理槽1内の生物汚泥と混合し、攪拌器6により緩やかに攪拌しながら嫌気処理を行う。これにより、被処理液中の有機物は酸生成菌およびメタン発酵菌により分解される。生成するメタンガスを含む消化ガスは排ガス路7から排出する。
【0018】
嫌気処理槽1内の混合液の一部は連絡路11から取出し、ポンプ12で加圧して膜分離装置2に導いて、分離膜13により膜分離する。これにより透過液14と濃縮液15とに分離する。透過液14は処理液として処理液路16から系外に排出する。濃縮液15の一部は濃縮液取出路17から取出して加熱処理槽3に導入し、残部の一部または全部は返送汚泥路5から嫌気処理槽1に返送する。余剰汚泥が生じる場合は余剰汚泥排出路18から系外へ排出する。
【0019】
加熱処理槽3では、濃縮液15を加熱器21により加熱し、攪拌器22により緩やかに攪拌しながら加熱処理する。これにより汚泥が改質される。加熱処理汚泥は加熱処理汚泥路23から嫌気処理槽1に戻し、嫌気処理する。これにより、加熱処理により改質された固形分が消化され、処理系から生じる余剰汚泥が減容化する。
【0020】
図2の装置による処理方法は、嫌気処理槽1内の混合液の一部を引抜汚泥として汚泥引抜路24から引抜き、この引抜汚泥を加熱処理槽3に導入して加熱処理を行う。他の操作は図1の場合と同様である。
【0021】
図1および図2では、濃縮装置として膜分離装置2を使用しているが、沈殿装置、遠心分離装置などの他の濃縮装置を採用することもできる。また図1では、返送汚泥路5からの汚泥の返送を省略することもできる。
【0022】
【実施例】
比較例1
6 literの嫌気処理槽を37℃に加温し、下水嫌気消化汚泥を20,000mg/lに濃縮して3 liter添加した。次に下水の余剰汚泥および初沈汚泥の余剰汚泥:初沈汚泥=1:1の混合汚泥を100ml毎日添加し、嫌気処理した。このMLSS濃度は12,000〜17,000mg/lであった。なお、土曜日分については金曜日、日曜日分については月曜日に添加した。また流入水量に相当する嫌気処理液を排出したが、濃縮装置からの汚泥の返送は行わなかった。
1か月経過後、嫌気処理槽内のMLSS濃度は8,200mg/lであった。処理条件および結果を表1にまとめる。
【0023】
比較例2
比較例1に続いて、嫌気処理槽内の混合液を1日200ml引抜き、加熱処理槽において95℃で30分間加熱処理した後、嫌気処理槽へ戻した。濃縮装置からの汚泥の返送は行わなかった。この操作を1か月間続けたところ、嫌気処理槽内のMLSS濃度は5,500mg/lに低下し、安定した。処理条件および結果を表1にまとめる。
【0024】
実施例1
比較例2に続いて、1日当り嫌気処理液200mlを遠心分離して上澄み100mlを捨て、残部の全量を嫌気処理槽へ返送した。他の操作は比較例2と同様に行った。この操作を6か月続けたところ、嫌気処理槽内のMLSS濃度は28,000〜32,000mg/lで安定し、汚泥の系外への排出は不要となった。処理条件および結果を表1にまとめる。
【0025】
実施例2
加熱処理する混合液の量を200ml/日から60ml/日に変更した以外は実施例1と同様にして行った。嫌気処理槽内のMLSS濃度は48,000〜52,000mg/lとなった。この状態で3か月間安定していた。また汚泥の系外への排出は不要であった。処理条件および結果を表1にまとめる。
【0026】
比較例3
加熱処理する混合液の量を200ml/日から40ml/日に変更した以外は実施例1と同様にして行った。その結果、嫌気処理槽内のMLSS濃度は徐々に上昇し、一定値にはならなかった。処理条件および結果を表1にまとめる。
【0027】
比較例4
比較例3において、嫌気処理槽内のMLSS濃度が50,000mg/lとなるように、遠心分離装置から汚泥を嫌気処理槽に返送した。その結果、1日当り0.2gの余剰汚泥(乾燥重量)が発生した。処理条件および結果を表1にまとめる。
【0028】
比較例5
加熱処理する混合液の量を300ml/日に変更し、嫌気処理槽内のMLSS濃度が10,000mg/lとなるように遠心分離装置から汚泥を返送した。その他は比較例3と同様にして行った。その結果、1日当り0.3gの余剰汚泥(乾燥重量)が発生した。処理条件および結果を表1にまとめる。
【0029】
【表1】
Figure 0003814855
【0030】
表1の結果から、加熱温度が100℃未満の低温である場合でも、投入汚泥量に対する加熱処理汚泥量が2以上であり、かつ嫌気処理槽の全保有汚泥に対する加熱処理汚泥量が1/15以下の場合には、消化率100%を達成することができることがわかる。これに対して、加熱処理する汚泥の量が上記範囲外にある場合は、消化率が低いことがわかる。
【0031】
【発明の効果】
本発明の有機性排液の処理方法は、汚泥の加熱処理を低温で行い、かつ特定の条件で行っているので、色度やCODが上昇するなどの処理水質の悪化を抑制し、かつ汚泥の減容化を行うことができる。また、加熱処理を低温で行っているので、エネルギー消費量を少なくすることができ、かつ耐熱性および耐圧性の高い装置を使用する必要がなくなり、このため低コストでの処理が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態の嫌気処理装置を示す系統図である。
【図2】本発明の他の実施形態の嫌気処理装置を示す系統図である。
【符号の説明】
1 嫌気処理槽
2 膜分離装置
3 加熱処理槽
4 被処理液路
5 返送汚泥路
6、22 攪拌器
7 排ガス路
11 連絡路
12 ポンプ
13 分離膜
14 透過液
15 濃縮液
16 処理液路
17 濃縮液取出路
18 余剰汚泥取出路
21 加熱器
23 加熱処理汚泥路
24 汚泥引抜路

Claims (1)

  1. 有機性排液を嫌気処理槽において嫌気性微生物を含む生物汚泥の存在下に嫌気処理する嫌気処理工程と、
    1日あたり嫌気処理槽に導入する有機性排液中の汚泥の2倍以上の量(固形分重量)であって、かつ1日あたり嫌気処理槽の全保有汚泥量の1/15以下の量(固形分重量)に相当する嫌気処理槽内の混合液または濃縮液を引抜き、この引抜汚泥を60〜100℃未満の温度で30分間以上加熱処理した後、嫌気処理槽に移送する加熱処理工程と
    を含むことを特徴とする有機性排液の嫌気処理方法。
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