JP3814038B2 - 高速自動油圧プレス機 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明が属する技術分野】
本発明は例えば製瓦用、または壁材、サイディング材、床材等の建築用材、さらにはベニア合板製作用、自動車のスクラップ圧縮用として最適な高速自動油圧プレス機に関し、油圧力の超高圧によるピストンの小径化によりピストン動作の高速化を可能とし、しかも高頻度の使用に対して耐久性の向上をはかるものである。
【0002】
【従来の技術】
高圧の油圧プレスを高速度で作動するのには、ピストン面積に比例した量の油を大量にシリンダ内に流入しなければならないので、通常、大馬力にして大容量の油圧ポンプを必要とし、しかも油圧回路の方向を切換えるための方向切換弁等の各種の弁類の口径により油の流入量が制約される。ところが弁類を大口径化するのは、各種装置の耐久力に関係し、また油圧ポンプを大容量にして高出力化をもたらすのにも許容限度があった。
また製瓦用の高速自動油圧プレス機としては、プレス機の成形物に対する初期駆動時には駆動ピストンが高速低圧のプレス送り工程となり、その後駆動ピストンは比較的長いストロークの圧縮工程を経てさらに最終圧縮工程においては高圧力にて成形物や工作物を圧縮することが、成形物の均質な密度を保証し、圧縮、引張、剛性等の観点から構造的に堅牢であり、しかも表面の仕上がりが滑らかな高品質の屋根瓦を成形する条件となっていた。
そこで本出願人は、駆動ピストンに対する油圧力の高圧化と、ピストン動作の高速度化とをはかるものとして既に特公平2−52600号として図に示すような発明を出願済である。
この発明は、機枠に取付けた大シリンダa内を上昇または降下する大ピストンbの中央に小シリンダcを内蔵せしめ、前記大シリンダaに設けた小ピストンdを前記小シリンダc内に摺動可能に挿入し、前記大ピストンbによって前記大シリンダa内を降下用の上部シリンダ室eと上昇用の下部シリンダ室fに隔離して設け、前記小シリンダcと前記大シリンダaの下部シリンダ室fとを方向切換弁gを介して油圧ポンプhに連通し、前記小シリンダcを前記油圧ポンプhに連通する経路K″より分岐した経路K″により第1のシーケンス・バルブiおよび第2のシーケンス・バルブjと増圧器kとを介して前記大シリンダaの上部シリンダ室eに経路K″を通じて連通せしめ、前記シーケンス・バルブiの出力端側の経路K″の1点lを前記増圧器kの出力端と前記上部シリンダ室eとを連結する経路K″の1点mにバイパス経路K″で連結したものである。
nは油圧ポンプhに接続された油タンクである。oはバイパス経路K″に設けた逆止弁、pはパイロット式操作路K″に設けた逆止弁である。qは経路K″に設けた流量制限形の逆止弁である。rは増圧器kの大シリンダs内に上下動可能に設けられた増圧ピストンであり、この増圧ピストンrのフランジtにより大シリンダs内は増圧ピストンrの降下用の上部シリンダ室uと増圧ピストンの上昇用の下部シリンダ室vとに隔離される。
【0003】
そして、図において不作動位置にある方向切換弁gのスプールを左方に移動すると、経路K″を通って油タンクnから油が小ピストンdの軸孔より小シリンダc内に送られるので、駆動ピストンとしての大ピストンbは低圧早送りで降下される。従ってラムの下端に設けた上型(図には示していない)あるいは押圧体が下降することによって成形品の材料や工作物wに当接すると、経路K″の内圧力が高くなる。そして経路K″の内圧が一定圧を越えると、分岐された経路K″にある第1のシーケンス・バルブiが開いて経路K″,バイパス経路K″を通って比較的高圧の油圧が大シリンダaのピストン降下用の上部シリンダ室eに送られ、ラムの押圧力が高められる。こうして第1段階の成形品の圧縮動作が行われてピストンの降下を行う。
【0004】
その後、加圧が高くなって経路K″内が所定の設定圧を越えると、第2のシーケンス・バルブjが開き、油が増圧器kのピストン上昇用の下部シリンダ室vに送り込まれ、増圧ピストンrを上方に押圧移動する。増圧ピストンrが上方に移動されると、増圧ピストンr内の最高圧の圧油を経路K″よりプレスの大シリンダaのピストン降下用の上部シリンダ室eに高圧を送り、最終の最高圧の圧縮を大ピストンbに伝達する。
【0005】
加工品に最高圧の仕上げを停止してプレスの戻り動作を行うのには、方向切換弁gのスプールを右方に戻すと、大シリンダaの大ピストンbの上昇用の下部シリンダ室fに経路K′を通って圧油が送られる。またパイロット操作経路K″を通じて逆止弁pにパイロット圧が働き、逆止弁pを開き、大シリンダaの上部シリンダ室eの内部の油が油タンクnに戻るので、大ピストンbが上昇する。同時に逆止弁qを制限された油が流れて増圧器k中の増圧ピストンrを大ピストンbの上昇と同期した状態で下降させる。こうして大ピストンbと増圧ピストンrが迅速且つ同時に復帰すると、圧力スイッチXに加圧力が作用して方向切換弁gをもとの中立位置に戻して1サイクルを終了する。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
に示す従来の上記発明は、小シリンダcと大シリンダaに対して方向切換弁gを直列に接続して油圧ポンプhに連通し、また小シリンダcを油圧ポンプhに連結する経路K″より分岐した経路K″に設けられたシーケンス・バルブiと増圧器kとを油圧ポンプh、大シリンダa、小ピストンdに対して直列に接続し、さらにはシーケンス・バルブiの出力端側の経路の1点と増圧器kの出力端と上部シリンダ室eとを連結するためのバイパス経路K″をシーケンス・バルブiと上部シリンダ室eに対して直列に接続している。
【0007】
上記プレス機で駆動ピストンの一層の高速化をはかるには多くの油量を移送しなければならない。そのためには配管の口径や方向切換弁、逆止弁等の使用部品や器具類の大口径化が必要である。その結果として配管や方向切換弁、逆止弁等の使用部品や器具類等の破損や磨耗の発生が考えられる。従って超高圧の使用もできず、超高圧力の使用と超高速との同時達成は困難であった。
またピストンを高速度に駆動するためには多くの油量を必要とするので、ピストン等の使用部品や器具類の小口径化をはたすことができず、装置の小型化は達成されずに大型な装置にならざるを得なかった。この際、油圧ポンプを駆動するための消費電力エネルギーも、多大になり、効率化が低かった。
【0008】
本発明は上記従来の不都合を解決し、配管や方向切換弁、逆止弁等の使用部品や器具類の並列化をはかり、倍率の多い油量をシリンダへ送って駆動ピストンの超高圧化と超高速化を可能とすると同時に配管や方向切換弁、逆止弁等の使用部品や器具類の油圧力に対する耐久力の増大を可能とし、また増圧器の設置手前側の油圧力の制御で工作物の形状や成形材料に応じて右側および左側の増圧器がある場合には、同時に作動させたり、または、右側または左側の一方の増圧器を作動させ、一方の増圧器が動作されている間は、他方の増圧器を休止させ、その後に他方の増圧器を継続して作動させるように何れかの増圧器のみを選択使用するように制御できるとともに、そして、高頻度使用の耐久性が向上して破損や故障が少なく長命化がはかれ、また増圧器の使用による超高圧力に対してシリンダの小径化を可能とし、駆動ピストン速度の超高速化とシリンダ等の装置の小型化をはたし、しかも加圧時に高圧油量の効率的使用に伴う消費電力エネルギーの高効率化がはかれ、また駆動ピストンに対する加圧速度の可変制御を可能とするとともに運転速度を緩急自在に制御可能とし、さらには製造コストが低廉な高速自動油圧プレス機を提供するのにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明の請求項1は、機枠に取付けた大シリンダ内を上昇または降下する大ピストンを設け、前記大シリンダに対して小ピストンを降下用の小シリンダ内に摺動可能に挿入し、前記小シリンダの降下用のシリンダ室と前記大ピストンまたは小シリンダの上昇用のシリンダ室とを方向切換弁を介して油圧ポンプに連通し、前記小シリンダを前記油圧ポンプに連結する経路より分岐した経路によりシーケンス・バルブと増圧器とを介して前記大シリンダの降下用のシリンダ室に連通せしめ、前記シーケンス・バルブの出力端側の経路の1点を前記増圧器の出力端と降下用の前記シリンダ室とを連結する経路の1点にバイパス経路で連結した構造の高速自動油圧プレスにおいて、前記方向切換弁を前記小シリンダおよび大シリンダに対して2個並列に設けて前記油圧ポンプに並列に接続して連通し、前記シーケンス・バルブは、小シリンダを油圧ポンプに連通する経路より分岐した並列の経路に設けられた第1のシーケンス・バルブと、該第1のシーケンス・バルブの出力端側と増圧器の入力端との間を連結するバイパス経路に対する分岐点との該増圧器の入力端間に設けられた第2のシーケンス・バルブ、または該第2のシーケンス・バルブに代えて大径の前記増圧器の入力端との間に配したバイパス経路の分岐点との間に設けた油圧の方向切換用の弁体とが設けられ、前記第1のシーケンス・バルブ、および第2のシーケンス・バルブ、前記方向切換用の弁体を、前記油圧ポンプ、および前記大シリンダ、前記小ピストンに対して並列に接続し、前記バイパス経路を該シーケンス・バルブと降下用のシリンダ室に対して並列に設けたことを特徴とするという手段を採用した。
【0010】
また本発明の請求項2は、請求項1において前記小シリンダは大シリンダ内を上昇または降下する大ピストンの中央に内蔵され、前記小ピストンは前記大ピストンに設けた小シリンダ内に摺動可能に挿入し、前記大ピストンにより前記大シリンダ内を降下用のシリンダ室と上昇用のシリンダ室とに隔離して設けるという手段を採用した。
【0011】
また本発明の請求項は、請求項1または2の何れかにおいて増圧器は、小シリンダを油圧ポンプに連通する経路より分岐した並列の経路に複数個が並列に設けられるということを特徴とするという手段を採用した。
【0012】
また本発明の請求項は、請求項1において複数個の前記増圧器は、略同径であり、油圧の出力が略等しいことを特徴とするという手段を採用した。
【0013】
また本発明の請求項は、請求項1において複数個の前記増圧器は、大小異径であり、油圧の出力が大小差があることを特徴とするという手段を採用した
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、図面に従って本発明の実施の形態の具体例を説明する。
図1は本発明の高速自動油圧プレス機の第1実施例を示す油圧回路図である。
このプレス機は、機枠に取付けた大シリンダ1と、該大シリンダ1内を上昇または降下し、大シリンダ1内を降下用の上部シリンダ室3と上昇用の下部シリンダ室4に隔離する大ピストン2と、該大ピストン2の中央に内蔵された小シリンダ5と、前記大シリンダ1の略中央下面に設けられ、前記小シリンダ5に摺動可能に挿入された小ピストン6とから形成される。
【0015】
また、前記小シリンダ5と前記大シリンダ1内の下部シリンダ室4とを連通するように2個が並列に設けられた電磁弁等よりなる2個の方向切換弁7と、該方向切換弁7, 7に並列な経路K 、K を介して接続された油圧ポンプ8と、前記小シリンダ5を前記油圧ポンプ8に連結する並列な前記経路Kより分岐した経路Kには、大シリンダ1の上部シリンダ室3に連通せしめられる経路Kとの間に第1のシーケンス・バルブ9、および同じく第2のシーケンス・バルブ10、さらには増圧器11をそれぞれ設けている。また、第1の前記シーケンス・バルブ9の出力端の経路の1点12を前記増圧器11の出力端と前記上部シリンダ室3とを連結する経路Kの1点13に連結するバイパス経路Kを設けている。
【0016】
そして前記増圧器11は、大シリンダ14と、該大シリンダ14内に上下動可能に挿入され、大シリンダ14内に設けたフランジ15により降下用の上部シリンダ室16と上昇用の下部シリンダ室17とに隔離する増圧ピストン18と、前記大シリンダ14の上面略中央に設けられ、前記増圧ピストン18の小シリンダ室19内に挿入された小ピストン20とから形成される。
【0017】
21はリリーフバルブであり、21′は前記バイパス経路Kに設けられた逆止弁であり、逆流を防止する。22は大シリンダ1の下部シリンダ室4と増圧器11の上部シリンダ室16とを接続する経路Kに設けられた圧力スイッチであり、23は流量制限形の逆止弁である。この逆止弁23は増圧ピストン18の戻り工程をプレスピストンとしての大ピストン2の戻り工程と調和させるものであり、増圧器11の上流側または下流側に設けられる。Kは大シリンダ1の上部シリンダ室3と方向切換弁7とを経路Kを介して接続するパイロット式操作路である。そして25はこのパイロット式操作路Kに設けられ、制限信号により開かれるパイロット式の逆止弁である。また26はプレス機の駆動ピストンの下部シリンダ27の下方に設けた作業台であり、28は作業台26の上面に設けた工作物であり、29はポンプ8に接続された油タンクである。30は経路K上に設けられた圧力計であり、プレス機の駆動ピストンの始動時の圧力調整をなすためのものであり、これらの構成は図に示す従来の発明と同様である。
【0018】
しかしながら本発明の第1実施例は、2個の方向切換弁7,7を図1において略中央に位置する前記小シリンダ5および大シリンダ1に対して2つの並列な経路K,Kを介して油圧ポンプ8に並列に接続している。また第1のシーケンス・バルブ9、第2のシーケンス・バルブ10を前記油圧ポンプ8、および前記大シリンダ1と前記小ピストン6に対して経路K,K;K,Kを介して並列に接続している。またバイパス経路K,Kを該シーケンス・バルブ9,10;9,10とプレス機における大シリンダ1の降下用の上部シリンダ室3に対して並列に設けている。さらに略同径をなし、油圧の出力が略等しい2個の増圧器11,11が小シリンダ5を油圧ポンプ8に連通する並列な経路K,Kより分岐した経路K,Kに並列に設けられている。そのほか、パイロット式操作路K,Kに逆止弁25,25を大シリンダ1の上部シリンダ室3に対して並列に設けている。
【0019】
そして本実施例では、2つの方向切換弁7,7のスプールを左方に移動し、油圧ポンプ8を駆動すると、油タンク29内の油は油圧ポンプ8に接続される並列の経路K,Kを通って大シリンダ1の下面略中央に設けた小ピストン6を介して大ピストン2に内蔵した小シリンダ5内に圧送されることによりプレス機の初期駆動時に低圧の給油にて大ピストン2を早送りで降下させる点では図に示す従来の発明と彼れ此れ同様である。そして大ピストン2のラムの下端に設けた図には示さない上型あるいは押圧体が下降して工作物28や成形品に当接する。
【0020】
また、本実施例では油圧ポンプ8に接続された2個の方向切換弁7,7が、2つの経路K,Kを介して小ピストン6から小シリンダ5に対し、また大ピストン2の下部シリンダ27に対して並列に接続されているので、油タンク29内の油は1台の油圧ポンプ8が駆動されることにより2つの経路K,Kに少量づつが分担されて大シリンダ1の下面略中央に設けた小ピストン6から大ピストン2に内蔵した小シリンダ5内に給油される。従って、使用部品としての油圧ポンプ8や2つの方向切換弁7,7に対する油圧の負担が軽減され、高頻度に使用されても耐久性が保証され、破損や故障が少なくなる。しかも経路K,Kに用いる管類の口径を小径化することができるので、経路K,Kに分担されて流れる油量がおのおの少量になり、小シリンダ5、大ピストン2に対しては、経路K,Kを油量が加算されて結果的に大容量の油を給油できる。このため、図に示す従来の油圧プレス機よりも高速度に大ピストン2を早送りして降下することができる。
【0021】
その後、2つの経路K,Kの内圧が高くなって一定の設定圧を越えると、経路K,Kに対して分岐する経路K,Kに設けた第1のシーケンス・バルブ9,9が開くので、この経路K,Kに接続される経路K,K、バイパス経路K,Kを通ってプレス機の上部シリンダ室3内や小ピストン6を介して小シリンダ5内へと圧油が給油されることにより駆動ピストンとしての大ピストン2におけるラムの押圧力が高められて第1段階の工作物28等に対する圧縮動作が行われる。
【0022】
この際、小シリンダ5に対して経路K,K、経路K,K、バイパス経路K,Kはそれぞれ並列に接続されることにより、それぞれ分担されて少量の油が移送されて小シリンダ5や上部シリンダ室3内に一緒に給油されるので、使用部品としてのシーケンス・バルブ9,9に対する油圧の負担が軽減されるため、高頻度に使用されても耐久性が保証され、破損や故障が少なくなる。また並列な経路K,K;K,Kおよびバイパス経路K,Kに用いる管類の口径を小径化することができるので、これらの経路K,K,K,Kおよびバイパス経路K,Kに各々分担されて流れる油量が少量であっても、小シリンダ5、大シリンダ1の上部シリンダ室3内には結果的に大容量の給油が行え、工作物28に対する駆動ピストンとしての大ピストン2の第1段階の圧縮動作を高出力にて行えるとともにピストン駆動を高速化にできる。
【0023】
そして加圧力が高くなって経路K,Kから分岐されている経路K,Kが第2の設定圧に至ると、今度は第2のシーケンス・バルブ10,10が開く。こうして、この経路K,K上に並列に設けられた2つの増圧器11,11のピストン上昇用の下部シリンダ室17,17に圧油が給油されるので、増圧ピストン18,18が上昇する。このため、増圧ピストン18,18内の小シリンダ室19,19内の油が経路K,Kを介して大シリンダ1の上部シリンダ室3内に給油され、最高圧の圧縮力を大ピストン2に伝達させる。このように、経路K,Kの内圧が第2のシーケンス・バルブ10,10の設定圧を越えるとはじめて増圧器11,11を経由する圧油が降下用の上部シリンダ室3内に流れ、ストロークの短い高圧縮力を工作物28等に与えて充分な圧縮が行える。
【0024】
この際、経路K,Kが油圧ポンプ8やプレス機の大シリンダ1に対して並列に接続され、しかもこの経路K,Kには第2のシーケンス・バルブ10,10や増圧器11,11が並列に接続され、そして分担された少量の油が経路K,Kを介して上部シリンダ室3内に給油されるので、使用部品としてのシーケンス・バルブ10,10や増圧器11,11に対する油圧の負担が軽減される。このため、シーケンス・バルブ10,10や増圧器11,11は、高頻度に使用されても耐久性が保証され、破損や故障が少なくなる。また経路K,K;K,Kに用いる管類の口径を小径化することができるので、これらの経路K,K;K,Kに分担されて流れる油量が少量であっても大シリンダ1の上部シリンダ室3には結果的に大容量の給油が行え、圧縮工程の最終段にて図に示す従来の油圧プレス機よりも高圧縮力をプレス機のプレスラムに伝達して発揮できるとともにピストン駆動の高速化がはかれる。
【0025】
そしプレスの戻り動作を行うのには、2つの方向切換弁7,7のスプールを右方に移動させることにより行われるが、並列に設けた2つの経路K′,K′を通って少量に分担された圧油が大シリンダ1のピストン上昇用の下部シリンダ室4に高速度に給油がなされる。また大シリンダ1の上部シリンダ室3等に並列に設けたパイロット式操作路K,Kを通じて逆止弁25,25には、パイロット圧が働いて開くので、大シリンダ1の上部シリンダ室3内の油が2つのパイロット式操作路K,Kに分担されて油タンク29内に迅速に戻り、大ピストン2は上昇する。このように大シリンダ1の上部シリンダ室3等にパイロット式操作路K,Kは並列に設けられているので、分担された少量の油がパイロット式操作路K,Kを通じて油タンク29に迅速に戻される。また、パイロット式操作路K,Kに用いる管類の口径を小径化することができ、使用部品としての逆止弁25,25に対する油圧の負担が軽減され、高頻度に使用されても耐久性は保証され、破損や故障が少なくなる。
【0026】
そして大ピストン2が上昇すると同時に、大シリンダ1の下部シリンダ室4に並列に接続した経路K,Kに設けられる流量制限形の逆止弁23,23に制限された油が流れ、2つの増圧器11,11中の増圧ピストン18,18を大ピストン2の上昇と同期して降下させる。この際、プレス機の下部シリンダ室4内の油は経路K,Kを通じて分担された少量の油が流れるので、経路K,Kに用いる管類の口径を小径化し、使用部品としての流量制限形の逆止弁23,23に対する油圧の負担が軽減され、高頻度の使用に対して耐久性を保証し、破損や故障が少なくすることができる。
こうして大ピストン2と増圧ピストン18,18とが迅速且つ確実に復帰すると、圧力スイッチ22に加圧力が作用し、方向切換弁7,7が中立位置に戻って1サイクルを終了する。
【0027】
なお、上記説明では、成形物や工作物28等に対する最終の圧縮工程で左右2つの略同径の増圧器11,11を同時に同期して作動させて増圧器11,11を経由する圧油が降下用の上部シリンダ室3内に流れ、ストロークの短い高圧縮力を工作物28等に与えて充分な圧縮が行えるとともに、2つの増圧器11,11中の増圧ピストン18,18を大ピストン2の上昇と同期して降下させて戻り動作を行うようにしているが、本実施例1はこれに限ることなく、工作物28等の形状や成形材料に応じて右側または左側の一方の増圧器11を増圧器11の設置手前側の油圧力、例えば油圧ポンプPを作動させ、方向切換弁7 , 7のスプールを移動させることにより開閉させることにより、並列な経路K ,K に連通する油圧ポンプPを駆動して油圧ポンプPの弁を個別に開閉制御させたり、油圧ポンプPに連通して並列にされている方向切換弁7 , 7を個別も開閉させて制御することで、一方の増圧器11が作動している間は他方の増圧器11を休止させ、その後に他方の増圧器11を継続して作動させるように何れかの増圧器11のみを選択使用することもできる。
【0028】
また、本実施例では、上記説明のように、大シリンダ1や大ピストン2等を中心として左右に2個の増圧器11,11をそれぞれ設けているが、これに限ることなく左右に複数個の増圧器を並列に接続してその何れかを選択使用したり、または複数個の増圧器の出力を合算して大出力にすることも可能である。
【0029】
図2は本発明の第2実施例を示す油圧回路図である。
この実施例では、プレス機におけるピストン降下用の上部シリンダ室3とピストン上昇用の下部シリンダ室4とを有する大シリンダ1と、小ピストン6が挿入される小シリンダ5を有する大ピストン2とを中心として経路Kと、経路Kと、経路Kとに入力端と出力端とが接続される増圧器11を図2において右側にのみ設け、左側は省略された並列の油圧回路を形成しているほかは、前記第1実施例と同様の構成、同様の作用がある。
すなわちこの実施例では、2つの方向切換弁7,7の左方への切換操作により、油圧ポンプ8を駆動させると、この油圧ポンプ8に接続されている2つの並列な経路K,Kを介してプレス機の小シリンダ5内に圧油が給油されることにより大ピストン2は早送りに降下される。そして経路K,Kの内圧の高まりにより2つの第1のシーケンス・バルブ9,9が開かれると、並列に設けられたバイパス経路K,Kと経路K,Kとを通じて大シリンダ1の上部シリンダ室3内に圧油が給油されることにより、大ピストン2を比較的長いラムの降下により第1段階の圧縮を高速且つ高圧にて行える点は前記第1実施例と同様である。
【0030】
それから並列な経路K,Kの内圧が一層高まって所定の設定圧を越えると、図2において右側に設けた第2のシーケンス・バルブ10が開かれ、増圧器11の下部シリンダ室17内に圧油が給油され、増圧ピストン18が上昇し、経路Kから大シリンダ1の上部シリンダ室3内に給油がなされる。このため、降下中の大ピストン2がさらに降下されて成形物や工作物28に対して最高の圧縮力により第2段階の圧縮が高速且つ確実に行える利点があるほかは前記第1実施例と同様の作用である。
【0031】
図3は本発明の第3実施例を示す油圧回路図である。
本実施例では、プレス機のピストン降下用の上部シリンダ室3とピストン上昇用の下部シリンダ室4とを有する大シリンダ1、小ピストン6が挿入される小シリンダ5を有する大ピストン2を中心として2つの方向切換弁7,7を前記小シリンダ5および大シリンダ1に対して並列に設けて油圧ポンプ8に並列に接続し、第1のシーケンス・バルブ9,9を油圧ポンプ8、および前記大シリンダ1、前記小ピストン6に対して並列に接続し、前記バイパス経路K,Kを該シーケンス・バルブ9,9と大シリンダ1の上部シリンダ室3に対して並列に設け、小シリンダ5を油圧ポンプ8に連通する経路K,Kより分岐した経路K,Kに、シーケンス・バルブ9,9を介して増圧器11,11′を設けた点は前記第1実施例と同様の構成である。
【0032】
しかしながら、本実施例では図3において右側および左側に設けた2個の増圧器11,11′は油圧の出力を異にする大小異径に形成されている。
すなわち左側の増圧器11′が右側の増圧器11よりも大径に形成されたものが用いられるとともに大径の増圧器11′の入力端とバイパス経路Kの分岐点12との間に油圧の方向切換用の弁体31を設けた構成となしている。増圧器11′は、大シリンダ14′内にフランジ15′によって上部シリンダ室16′と下部シリンダ室17′とに隔離される増圧ピストン18′を摺動可能に設け、増圧ピストン18′の小シリンダ室19′内に小ピストン20′を挿入している。なお説明の便宜から図3では左側の増圧器11′を右側の増圧器11よりも大径に形成しているが、これに限らず左右逆の配置であっても本発明は逸脱されない。
【0033】
そして第3実施例においては、方向切換弁7を左方に切換えて油圧ポンプ8を駆動すると、経路Kを介してプレス機の駆動ピストンの小シリンダ5内に圧油が給油され、比較的少量の油量にて大ピストン2は早送り降下する。その後、経路Kから分岐する経路K,Kの内圧が高まって第1のシーケンス・バルブ9,9が開かれることにより経路K,Kとバイバス経路K,Kとを通じて大シリンダ1の上部シリンダ室3内に圧油が給油されて大ピストン2が降下し、第1段階の圧縮が行われる。
【0034】
それから経路Kの内圧がさらに高まって所定の設定圧を越えると、図3において右側の第2のシーケンス・バルブ10が開かれて小径の増圧器11の下部シリンダ室17内に圧油が給油され、増圧ピストン18が上昇する。そして大シリンダ1内の上部シリンダ室3に圧油が給油され、さらに大ピストン2が降下して成形物や工作物28への圧縮が行われる点は前記第1実施例と同様の作用である。
【0035】
ところが、本実施例では例えば最終の圧縮工程において、並列の経路K,Kの内圧が第2段階の圧縮工程よりもさらに高まって所定の設定圧を越えた場合に、図3において左側に示されている大径の増圧器11′に対して経路K上に設けた弁体31が開かれるので、この大径の増圧器11′の下部シリンダ室17′内に圧油が給油され、増圧ピストン18′が上昇し、小シリンダ室19′内の圧油が経路Kを介して大シリンダ1の上部シリンダ室3内に給油される。こうしてさらに大ピストン2が降下されて成形物や工作物28に対して超高圧の圧縮力にて最終段の充分な圧縮を行える点が前記第1実施例とは異なり、そのほかは、前記第1実施例と同様の作用がある。
【0036】
なお図示の各実施例では上昇または降下する大ピストン2を内部に備えた1個の大シリンダ1を設置したものが示されているが、これは例示であり、必要個数の大シリンダ1を並列に中心部分に設ける場合にも本発明の範囲を逸脱されない。
また図示の各実施例では機枠に取付けられる大シリンダ1内に大ピストン2を下方から摺動可能に挿入しているが、図示するものとは上下逆に開口部を上向きに大シリンダ1を配置し、そして大シリンダ1の上方より大ピストン2を摺動可能に挿入する形式のものでも本発明の範囲を逸脱しない。
【0037】
【発明の効果】
以上のように本発明は、方向切換弁をプレス機の小シリンダおよび大シリンダに対して並列に設けて油圧ポンプに並列に接続し、シーケンス・バルブを油圧ポンプ、および大シリンダ、小ピストンに対して並列に接続し、そしてバイパス経路をシーケンス・バルブとピストン降下用のシリンダ室に対して並列に設ける等、使用部品や器具類の並列化をはかったので、倍率の多い油量をシリンダへ送って駆動ピストンの超高圧化と超高速化を可能とすると同時に配管や方向切換弁、逆止弁等の使用部品や器具類の小口径化を達成し、油圧力に対する耐久力の増大がはかれる。
また増圧器の設置手前側の油圧力を油圧ポンプ、配管、方向切換弁等の使用部品や器具を用いて制御することにより、工作物等の形状や成形材料に応じて右側および左側の増圧器がある場合には同時に作動させたり、または、右側または左側の一方の増圧器を作動させ、一方の増圧器が作動されている間は他方の増圧器を休止させ、その後に他方の増圧器を継続して作動させるように何れかの増圧器のみを選択使用するように制御することもできる。
そのうえ、大シリンダや大ピストン等を中心として左右に2個の増圧器をそれぞれ設けているが、これに限ることなく左右何れか片側に複数個の増圧器を並列に接続してその何れかを選択使用したり、または複数個の増圧器の出力を合算して大出力にするように制御することも可能である。
そして、使用部品等の高頻度使用の耐久性を向上して破損や故障が少なく長命化がはかれる。また増圧器使用による超高圧力に対してシリンダの小径化を可能とし、駆動ピストンの上昇または降下の速度の超高速化とシリンダ等の装置の小型化がはたせる。しかも加圧時において高圧油量の高率的使用に伴う消費電力エネルギーの高効率化がはかれるとともに駆動ピストンに対する加圧速度の可変制御を可能とするとともに運転速度を緩急自在に制御することができ、製造コストは低廉になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の高圧自動油圧プレス機の第1実施例を示す油圧回路図である。
【図2】 同じく本発明の第2実施例を示す油圧回路図である。
【図3】 同じく本発明の第3実施例を示す油圧回路図である。
【図4】 従来のこの種の高圧自動油圧プレス機の油圧回路図である。
【符号の説明】
1 大シリンダ
2 大ピストン
3 上部シリンダ室
4 下部シリンダ室
5 小シリンダ
6 小ピストン
7 方向切換弁
8 油圧ポンプ
9 シーケンス・バルブ
10 シーケンス・バルブ
11 増圧器
11′ 増圧器
12 経路の1点
13 経路の1点
31 弁体
経路
K′ 経路
経路
経路
バイパス経路
経路
パイロット式操作路

Claims (5)

  1. 機枠に取付けた大シリンダ内を上昇または降下する大ピストンを設け、前記大シリンダに対して小ピストンを降下用の小シリンダ内に摺動可能に挿入し、前記小シリンダの降下用のシリンダ室と前記大ピストンまたは小シリンダの上昇用のシリンダ室とを方向切換弁を介して油圧ポンプに連通し、前記小シリンダを前記油圧ポンプに連結する経路より分岐した経路によりシーケンス・バルブと増圧器とを介して前記大シリンダの降下用のシリンダ室に連通せしめ、前記シーケンス・バルブの出力端側の経路の1点を前記増圧器の出力端と降下用の前記シリンダ室とを連結する経路の1点にバイパス経路で連結した構造の高速自動油圧プレス機において、
    前記方向切換弁を前記小シリンダおよび大シリンダに対して2個並列に設けて前記油圧ポンプに並列に接続して連通し、
    前記シーケンス・バルブは、小シリンダを油圧ポンプに連通する経路より分岐した並列の経路に設けられた第1のシーケンス・バルブと、該第1のシーケンス・バルブの出力端側と増圧器の入力端との間を連結するバイパス経路に対する分岐点との該増圧器の入力端間に設けられた第2のシーケンス・バルブ、または該第2のシーケンス・バルブに代えて大径の前記増圧器の入力端との間に配したバイパス経路の分岐点との間に設けた油圧の方向切換用の弁体とが設けられ、前記第1のシーケンス・バルブ、および第2のシーケンス・バルブ、前記方向切換用の弁体を、前記油圧ポンプ、および前記大シリンダ、前記小ピストンに対して並列に接続し、前記バイパス経路を該シーケンス・バルブと降下用のシリンダ室に対して並列に設けたことを特徴とする高速自動油圧プレス機。
  2. 前記小シリンダは大シリンダ内を上昇または降下する大ピストンの中央に内蔵され、前記小ピストンは前記大ピストンに設けた小シリンダ内に摺動可能に挿入し、前記大ピストンにより前記大シリンダ内を降下用のシリンダ室と上昇用のシリンダ室とに隔離して設けたことを特徴とする請求項1に記載の高速自動油圧プレス機。
  3. 増圧器は、小シリンダを油圧ポンプに連通する経路より分岐した並列の経路に複数個が並列に設けられたことを特徴とする請求項1、または2の何れかに記載の高速自動油圧プレス機。
  4. 複数個の前記増圧器は、略同径であり、油圧の出力が略等しいことを特徴とする請求項1に記載の高速自動油圧プレス機
  5. 複数個の前記増圧器は、大小異径であり、油圧の出力が大小差があることを特徴とする請求項1に記載の高速自動油圧プレス機。
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