JP3814028B2 - 粉体塗料用共重合ポリアミド樹脂および樹脂組成物 - Google Patents

粉体塗料用共重合ポリアミド樹脂および樹脂組成物 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、粉体塗料の樹脂成分として有用な共重合ポリアミド樹脂、この共重合ポリアミド樹脂を含む粉体塗料用樹脂組成物および粉体塗料に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、環境への配慮から粉体塗装が広く利用されている。特に、ポリアミド樹脂を含有する粉体塗料は、耐薬品性,耐候性の点から、屋外など厳しい環境下で使用されることが多い。
ポリアミド樹脂を用いた粉体塗料は、被塗布物(基材)の平坦部では非常に優れた耐久性や光沢を有する塗膜を形成するものの、被塗布物の鋭利な部位では、ポリアミド樹脂の結晶性に起因すると思われるエッジ部の塗膜不良(以下、単に、エッジ切れという)がしばしば認められる。
【0003】
エッジ切れに対する対策として、樹脂の末端カルボキシル基とエポキシ樹脂との反応を利用する方法(特公平7−10958号公報)、末端カルボキシル基と末端アミノ基による重合を利用する方法(特公昭58−53028号公報)、120℃以下の融点を有するナイロン共重合体を、ナイロン11,ナイロン12などのポリアミド樹脂に添加する方法(特開昭55−66969号公報)、分岐ポリエステル樹脂とブロック化イソシアネート又はエポキシ樹脂とを含む粉体塗料用樹脂組成物(特公昭59−2149号公報,特公昭56−5470号公報)、エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸エステル系重合体微粒子とを含む粉体塗料用樹脂組成物(特開平6−329955号公報)などが提案されている。これらの多くは、いずれも樹脂の反応を利用してエッジ切れを改善している。
【0004】
一方、塗料用ポリアミド樹脂粉体は、(1)機械的粉砕法、(2)化学的粉砕法、(3)乳化重合法、(4)噴霧造粒法、およびこれらを組み合わせた方法で製造されている。これらの方法の中で、機械的粉砕法は実用的な方法であり、広い範囲で使用されている。この機械的粉砕法では、ポリアミド樹脂を化学的に安定な構造とし、各種添加剤(耐熱安定剤,耐候安定剤,着色剤など)を混練し、冷凍粉砕しており、得られるポリアミド樹脂粉体は、形状が不均一であるだけでなく、添加剤による結晶化速度の上昇が観察される。このことがエッジ切れをより生じやすくしている。
エッジ切れを防止するため、粉体に添加剤を混合する多くの提案がある。特に、末端基を利用して塗膜形成時の化学反応により分子量を増大させてエッジ切れを防止する提案が多い。しかし、このような方法では、粉体の保存中に反応が生じ、長期間に亘って粉体を安定かつ有効に利用することができなくなる。
【0005】
なお、特開平2−296824号公報には、ラウリルラクタム及び/又は12−アミノドデカン酸99〜60モル%と水添ダイマー酸1〜40モル%および水添ダイマー酸と実質的に等モルの炭素数4〜50のジアミンからなる共重合ポリアミドで形成された高分子感温体が開示されている。しかし、粉体塗料やエッジ切れについては言及されていない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の目的は、粉体塗料のエッジ切れを防止するのに有効な塗料用共重合ポリアミド樹脂および樹脂組成物を提供することにある。
本発明の他の目的は、ポリアミド樹脂の反応を利用することなく、エッジ切れを有効に防止できるとともに、長期間に亘り安定な塗料用共重合ポリアミド樹脂および樹脂組成物を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記目的を達成するため鋭意検討の結果、ポリアミド樹脂として水添ダイマー酸の単位を導入した共重合ポリアミド樹脂を用いると、化学的反応を利用することなくエッジ切れを長期に亘り防止できることを見いだし、本発明を完成した。
すなわち、本発明の粉体塗料用共重合ポリアミド樹脂は、水添ダイマー酸単位を含む共重合ポリアミド樹脂(以下、単に水添ダイマー酸含有ポリアミド樹脂という場合がある)で構成されている。水添ダイマー酸の含有量は、ポリアミド樹脂の構成成分全体の1〜20モル%程度であり、平均粒径は10〜300μmである。共重合ポリアミド樹脂は、水添ダイマー酸単位と、ポリアミド11およびポリアミド12から選ばれた少なくとも一方の構成単位とを含み、他のポリアミド樹脂の構成単位を含んでいてもよい。
さらに、前記共重合ポリアミド樹脂は、他のポリアミド樹脂、例えば、ポリアミド11およびポリアミド12のうち少なくともいずれか一方の構成単位を含むポリアミド樹脂と併用し、粉体塗料用ポリアミド樹脂組成物を構成してもよい。この樹脂組成物において、共重合ポリアミド樹脂の含有量は、ポリアミド樹脂全体の5〜100重量%程度である。
さらに本発明は、前記共重合ポリアミド樹脂を含む粉体塗料も提供する。
また本発明は、前記共重合ポリアミド樹脂を粉体塗装に用いる塗膜のエッジ切れ防止方法も提供する。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明の共重合ポリアミド樹脂は、粉体塗料用樹脂として有用であり、水添ダイマー酸の単位を含んでいる。水添ダイマー酸は、不飽和脂肪酸の二量体を水添した化合物である。水添ダイマー酸としては、通常、純度(含有量)90重量%以上、好ましくは95重量%以上、さらに好ましくは重量98%以上、ヨウ素価20以下(好ましくは10以下)の水添ダイマー酸が使用できる。
【0009】
[水添ダイマー酸含有ポリアミド樹脂]
水添ダイマー酸含有ポリアミド樹脂は、(1)少なくとも水添ダイマー酸と他のジカルボン酸で構成されたジカルボン酸成分と、ジアミン成分との反応により生成する共重合ポリアミド樹脂であってもよく、(2)少なくとも水添ダイマー酸で構成されたジカルボン酸成分とジアミン成分と、ラクタム及び/又はアミノカルボン酸との反応により生成する共重合ポリアミド樹脂であってもよい。好ましい共重合ポリアミド樹脂は、後者の共重合ポリアミド樹脂(2)である。共重合ポリアミド樹脂(2)において、ジカルボン酸成分は、水添ダイマー酸単独であってもよく、水添ダイマー酸と他のジカルボン酸との組み合わせで構成してもよい。水添ダイマー酸単位は、通常、主に共重合ポリアミド樹脂の主鎖に導入されている。
【0010】
水添ダイマー酸以外のジカルボン酸としては、例えば、アジピン酸、アゼライン酸,セバシン酸,ドデカン二酸などの脂肪族C6-20ジカルボン酸又はその無水物が例示できる。これらのジカルボン酸は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。好ましいジカルボン酸は、脂肪族C6-16ジカルボン酸、特に脂肪族C6-12ジカルボン酸である。なお、前記脂肪族ジカルボン酸は、必要であれば芳香族ジカルボン酸(フタル酸,イソフタル酸,テレフタル酸など)と組み合わせて使用してもよい。
【0011】
ジアミン成分としては、例えば、テトラメチレンジアミン,トリメチルペンタジアミン,ヘキサメチレンジアミン,トリメチルヘキサメチレンジアミン,ノナメチレンジアミン,デカメチレンジアミン,ウンデカメチレンジアミン,ドデカメチレンジアミンなどの脂肪族C4-20ジアミンが例示できる。これらのジアミン成分も単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。好ましいジアミン成分は、脂肪族C6-16ジアミン、特に脂肪族C6-12ジアミンである。脂肪族ジアミン成分は、必要に応じて,フェニレンジアミン,キシリレンジアミンなどの芳香族ジアミン、シクロヘキサンジアミン,イソホロンジアミンなどの脂環族ジアミン、ポリエーテルジアミンなどの他のジアミンと併用してもよい。
【0012】
ラクタムとしては、例えば、ε−カプロラクタム、ヘプトラクタム,ω−ラウロラクタムなどのC6-20ラクタムが例示できる。これらのラクタムも単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。好ましいラクタムは、C6-16ラクタム、特にC6-12ラクタムである。
アミノカルボン酸としては、例えば、アミノカプロン酸,7−アミノヘプタン酸,9−アミノノナン酸,11−アミノウンデカン酸,12−アミノドデカン酸などの脂肪族C6-20アミノカルボン酸、特に脂肪族C6-16アミノカルボン酸、中でも脂肪族C6-12アミノカルボン酸が含まれる。これらのアミノカルボン酸も単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。脂肪族アミノカルボン酸は、必要であれば、p−アミノ安息香酸などの芳香族アミノカルボン酸と組み合わせて使用してもよい。
【0013】
好ましい共重合ポリアミド樹脂には、少なくとも水添ダイマー酸で構成されたジカルボン酸成分と、脂肪族C6-12ジアミン成分と、C6-12ラクタム及び/又は脂肪族C6-12アミノカルボン酸との反応により生成する共重合ポリアミド樹脂が含まれ、ジカルボン酸成分は、水添ダイマー酸と脂肪族C6-12ジカルボン酸とで構成してもよい。水添ダイマー酸と脂肪族C6-12ジカルボン酸との割合は、エッジ切れを抑制できる範囲で選択でき、例えば、10/90〜100/0(モル%)、好ましくは25/75〜100/0(モル%)、さらに好ましくは50/50〜100/0(モル%)程度の範囲から選択できる。
より具体的には、水添ダイマー酸単位が導入されるベースポリアミド樹脂は、脂肪族ポリアミド、例えば、ポリアミド6、ポリアミド9、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド4−6、ポリアミド4−10、ポリアミド6−6、ポリアミド6−10、ポリアミド6−11、ポリアミド6−12、ポリアミド11−12、これらのポリアミド原料を共重合させたコポリアミドなどで構成できる。好ましいベースポリアミド樹脂は、ポリアミド6、ポリアミド6−6、ポリアミド6−10、ポリアミド6−11、ポリアミド6−12、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド11−12などである。
特に、水添ダイマー酸単位と、ポリアミド11及び/又はポリアミド12の構成単位を含む共重合ポリアミド樹脂であるのが好ましい。
なお、共重合ポリアミド樹脂は、N−アルコキシメチル化ポリアミドなどの変性共重合ポリアミド樹脂であってもよい。
【0014】
水添ダイマー酸の含有量は、ベースポリアミド樹脂の種類に応じてエッジ切れを抑制できる範囲で選択でき、例えば、共重合ポリアミド樹脂の構成成分全体の1〜20モル%、好ましくは2〜17モル%、さらに好ましくは5〜15モル%程度である。
【0015】
これらの共重合ポリアミド樹脂の数平均分子量は、例えば、0.5×104 〜100×104 程度、好ましくは1×104 以上(例えば、2×104 〜50×104 程度)である。共重合ポリアミド樹脂の融点は、ベースポリアミド樹脂の種類や水添ダイマー酸の導入量に応じて、例えば、130〜200℃、好ましくは150〜180℃程度の範囲から選択できる。
このような水添ダイマー酸含有ポリアミド樹脂を用いると、良好な耐候性,高い耐熱性,耐磨耗性,強靭性,被膜の光沢などを高いレベルに維持しつつ、エッジ部のカバー性を改善できる。特にポリアミド11及び/又はポリアミド12の構成単位を含む水添ダイマー酸含有ポリアミド樹脂は、上記特性に加えて、柔軟性及び低吸湿性を向上させつつ、エッジカバー性を改善できる。
【0016】
これらの共重合ポリアミド樹脂は、慣用の方法、例えば、水添ダイマー酸を含むジカルボン酸成分とジアミン成分と、ラクタム及び/又はアミノカルボン酸との共重合により製造することができる。
【0017】
[ポリアミド樹脂組成物]
粉体塗料の樹脂成分として、水添ダイマー酸含有ポリアミド樹脂は単独で使用してもよく、水添ダイマー酸単位を含まない他のポリアミド樹脂と組み合わせて使用してもよい。
水添ダイマー酸含有ポリアミド樹脂と組み合わせ可能なポリアミド樹脂には、前記ベースポリアミド樹脂、例えば、脂肪族ポリアミド(ポリアミド6、ポリアミド9、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド4−6、ポリアミド4−10、ポリアミド6−6、ポリアミド6−10、ポリアミド6−11、ポリアミド6−12、ポリアミド11−12、これらのポリアミド原料を共重合させたコポリアミドなど)の他、変性ポリアミド樹脂(ダイマー酸を酸成分とするポリアミド,N−アルコキシメチル化ポリアミドなど)、ポリアミドエラストマー(変性ポリオレフィンをグラフと共重合させた耐衝撃性ポリアミド,ポリエーテルをソフトセグメントとするポリアミドなど)などが挙げられる。これらのポリアミド樹脂は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0018】
好ましい脂肪族ポリアミド樹脂は、粉体塗装性,密着性、耐久性,耐薬品性や耐水性などの点で優れるポリアミド11およびポリアミド12のうち少なくとも一方の構成単位を含むポリアミド樹脂(例えば、ポリアミド6−10、ポリアミド6−11、ポリアミド6−12、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド11−12)、特にポリアミド11及び/又はポリアミド12である。水添ダイマー酸含有ポリアミド樹脂と、ポリアミド11及び/又はポリアミド12の単位を含むポリアミド樹脂と組み合わせると、耐候性,耐熱性,耐磨耗性,強靭性や被膜の光沢などに加えて、柔軟性及び低吸湿性を向上させつつ、エッジカバー性を改善できる。
【0019】
これらのポリアミド樹脂の数平均分子量も、例えば、0.5×104 〜100×104 程度、好ましくは1×104 以上(例えば、2×104 〜50×104 程度)である。ポリアミド樹脂の融点は、例えば、150〜200℃、好ましくは160〜190℃程度である。
ポリアミド樹脂全体に対する水添ダイマー酸含有ポリアミド樹脂の割合は、エッジ切れを抑制でき、かつ塗膜の表面状態(光沢,色相など)や塗膜の特性を損なわない広い範囲、例えば、5〜100重量%程、好ましくは10〜100重量%、さらに好ましくは20〜100重量%(例えば、20〜75重量%)、特に30〜100重量%(例えば、30〜70重量%)程度である。水添ダイマー酸含有ポリアミド樹脂の割合が40〜100(重量%)、特に50〜100(重量%)程度のポリアミド樹脂を用いると、被塗布物(基材)の鋭角部であっても均一な厚みで被膜を形成でき、確実にエッジ切れを防止できる。
【0020】
[粉体塗料]
本発明における粉体塗料は、樹脂成分として前記水添ダイマー酸含有ポリアミド樹脂又はポリアミド樹脂組成物(水添ダイマー酸含有ポリアミド樹脂と他のポリアミド樹脂との組み合わせで構成された樹脂組成物)を含んでおり、着色剤は含んでいてもよい。
粉体塗料を構成する前記水添ダイマー酸含有ポリアミド樹脂やポリアミド樹脂組成物には、必要により他の熱可塑性樹脂を配合してもよく、粉体塗料の種類に応じて、慣用の成分、例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、耐熱安定剤などの安定剤、難燃剤、強化剤、可塑剤、帯電防止剤、充填剤、着色剤などを使用してもよい。
【0021】
前記ポリアミド樹脂で構成された粉体塗料の形状は、特に制限されず、例えば、球形,楕円形などや、破砕物などの不定形であってもよい。粉体塗料の平均粒径は、塗装方法などに応じて適当に選択でき、通常、10〜300μm、好ましくは20〜250μm(例えば、50〜250μm)程度の範囲から適当に選択できる。
【0022】
粉体塗料は、種々の方法、例えば、静電塗装、溶射、流動浸漬などにより被塗装物(基材)を塗装できる。前記水添ダイマー酸含有ポリアミド樹脂を含む粉体塗料は、溶射又は流動浸漬(特に流動浸漬)により基材を被覆するのに有用である。特に鋭利な角度のエッジ部を有する基材を均一に被覆する上で有用である。エッジ部の角度は特に制限されず、例えば、10〜90°、特に10〜50°程度であってもよい。流動浸漬において、基材としては、例えば、金属、セラミックス、プラスチック、木材などの種々の基材が使用可能であるが、通常、金属などの耐熱性基材が使用される。基材の表面は、必要に応じてプライマーなどにより表面処理してもよい。流動浸漬は、ポリアミド樹脂の種類などに応じて、例えば、基材の温度80〜350℃(例えば、100〜350℃)、好ましくは150〜300℃、さらに好ましくは220〜280℃程度で行うことができる。
【0023】
粉体塗料は、慣用の方法、例えば、前記水添ダイマー酸含有ポリアミド樹脂又はポリアミド樹脂組成物を含む組成物を調製し、冷凍粉砕する機械的粉砕法、溶媒に溶解して析出させる化学的粉砕法、噴霧造粒法などにより粉粒体とすることにより得ることができる。前記水添ダイマー酸含有ポリアミド樹脂又はポリアミド樹脂組成物で構成された粉粒体は、形状が不均一又は不定形であっても、エッジ切れを有効に抑制できる。そのため、本発明の粉体塗料は、少なくとも共重合ポリアミド樹脂又はポリアミド樹脂組成物と、必要により各種添加剤を溶融混練し、冷却して粉砕する機械的粉砕法によっても、エッジ切れを有効に防止できる。
【0024】
【発明の効果】
本発明では、塗料用共重合ポリアミド樹脂が水添ダイマー酸単位を含んでいるため、粉体塗料のエッジ切れを有効に防止できる。特に、ポリアミド樹脂の反応を利用することなく、長期間に亘り安定かつ有効にエッジ切れを防止できる。
【0025】
【実施例】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
なお、実施例及び比較例では下記のポリアミド樹脂を用いた。
[水添ダイマー酸含有共重合ポリアミド樹脂1の調製]
ラウリルラクタム100重量部に対して、ヘキサメチレンジアミン3.6重量部、水添ダイマー酸22.8重量部を重合釜に仕込み、水2重量部を添加して加熱し、加圧下で9時間反応させた。重合物を取り出し、ペレット状に切断した。得られた共重合ポリアミド樹脂は、融点167℃、相対粘度1.93(m−クレゾール,5mg/ml,25℃)の半透明樹脂であった。
[水添ダイマー酸含有共重合ポリアミド樹脂2の調製]
ラウリルラクタム100重量部に対して、ヘキサメチレンジアミン4.8重量部、水添ダイマー酸34重量部を用いる以外、上記調製例1と同様にして共重合ポリアミド樹脂を調製した。得られた共重合ポリアミド樹脂は、融点164℃、相対粘度1.91(m−クレゾール,5mg/ml,25℃)の半透明樹脂であった。
[ポリアミド12(A)]
ヒュルス社製,ベスタメルト1640(融点178℃,相対粘度1.60の半透明樹脂)を用いた。
[ポリアミド12(B)]
ヒュルス社製,ベスタメルト1740(融点178℃,相対粘度1.73の半透明樹脂)を用いた。
【0026】
実施例1〜7および比較例1〜2
上記樹脂を表に示す割合で溶融混合し、液体窒素で−90℃に冷却した樹脂を、ピン型ミル中に導入して粉砕し、平均粒径150μmの粉体を得た。
そして、エッジ部(端部)に約30°の鋭角部を有する鉄板(厚み3mm,7cm×9cm)を表面温度280℃になるまで加熱し、加熱した鉄板を揺すりながら、空気を用いて流動させた粉体(流動層)中に約7秒間浸漬した後、室温で徐々に冷却した。塗装した鉄板を室温で1日静置した後、4つのエッジ部のうち剥離が生じたエッジ部の数をカウントすることにより、エッジ切れを評価した。結果を表に示す。なお、表において、「X/4」は、4つのエッジ部のうち剥離が生じたエッジ部の数Xを示す。
【0027】
【表1】
Figure 0003814028
表より明らかなように、比較例に比べて実施例では、エッジ切れを有効に防止でき、鋭角なエッジ部であっても欠陥のない均一な塗膜で被覆できた。

Claims (5)

  1. 水添ダイマー酸単位と、ポリアミド11およびポリアミド12から選ばれた少なくとも一方の構成単位とを含有する共重合ポリアミド樹脂で構成されている粉体塗料用共重合ポリアミド樹脂であって、水添ダイマー酸の含有量がポリアミド樹脂の構成成分全体の1〜20モル%であり、平均粒径が10〜300μmである粉体塗料用共重合ポリアミド樹脂
  2. 請求項1記載の共重合ポリアミド樹脂と、ポリアミド11およびポリアミド12のうち少なくともいずれか一方の構成単位を含むポリアミド樹脂とで構成されている粉体塗料用ポリアミド樹脂組成物。
  3. 請求項1記載の共重合ポリアミド樹脂の含有量が、ポリアミド樹脂全体の5〜100重量%である請求項記載のポリアミド樹脂組成物。
  4. 請求項1記載の共重合ポリアミド樹脂を含む粉体塗料。
  5. 請求項1記載の共重合ポリアミド樹脂を粉体塗装に用いる塗膜のエッジ切れ防止方法。
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