JP3813473B2 - パケット廃棄装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は通信網に収容される各コネクションの最低帯域の保証を行う装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、インターネットやLANの急速な普及から、IPトラヒック等のデータ系トラヒックが指数関数的に増加している。これにともないネットワーク上で輻輳発生頻度が増加しており、ユーザに対するサービス品質の低下が問題となっている。例えば、従来のインターネットでは転送品質を保証しないベストエフォートサービスが主流であったが、ベストエフォートサービスのみでは十分なスループットが得られないケースが増えており、ISP(Internet Service Provider)間や企業間を高速回線で接続する場合に回線毎に最低帯域や遅延品質を保証するようなサービスの要求が今後ますます増加すると考えられる。
【0003】
ユーザ毎に契約している最低帯域を保証するサービスとしてはGFR(Guaranteed Frame Rate)サービスがある。非輻輳時には各ユーザは互いに利用可能帯域(残余帯域)を共有して利用できる。
【0004】
GFRサービスを実現する方式に関しては数多くの提案がなされているが、その一つにWRR(Weighted Round Robin)方式がある。図16はWRR方式の概略を表す図である。WRR方式はコネクション毎にキューを持ち、コネクション毎に重みが付けられており、重みに応じた読出制御を各キューに対して行うことでコネクション間に帯域を分配する。
【0005】
WRRに、帯域を共有する全てのコネクションを収容することによって、収容コネクションの重みに応じて帯域を分配することができる。WRR方式により、最低帯域を保証しつつ、余剰帯域をある規則にしたがってコネクション間に公平に分配することが可能である。
【0006】
しかし、WRR方式のハードウェアの複雑さは収容するコネクション数に比例し、高速化のボトルネックとなる。また、コネクション毎にキューを持つ必要があるため、バッファ部のハード量も問題となる。つまり、WRR方式は高速になり、収容されるコネクション数が増加すると、経済的にGFRサービスを実現することが困難である。したがって、簡易なハードウェア構成でGFRサービスを実現する方式が求められている。
【0007】
簡易なハードウェア構成でGFRサービスを実現する方式として、FIFO−Tagging方式が知られている。この方式では、バッファはコネクション毎に持つ必要はなく、回線毎に一つあればよい。FIFO−Tagging方式ではコネクション毎に網の入り口で網への入力レートを観測し、計測されたレートがMCR(Minimum Cell Rate)以下であれば、そのコネクションのパケットはそのまま通過し、MCRを超えていればパケットのヘッダ部にTagが付けられる。ここで、MCRとは網がコネクションに対して転送を保証する帯域のことである。
【0008】
FIFOバッファには閾値が設けられており、キュー長が閾値を超えているか否か常に観測している。仮にキュー長が設定された閾値を超えている場合には、ヘッダ部にTagが付けられているパケットはFIFOバッファに入る前に廃棄され、FIFOバッファにはTagが付いていないパケット、つまり網への入力レートがMCR以下のコネクションのパケットのみ通過する。
【0009】
FIFO−Tagging方式では、FIFOバッファの出力速度を収容するコネクションのMCRの合計以上にすることで、輻輳時におけるMCRの保証が可能である。また、非輻輳時、各コネクションのMCRの和を超えた部分の帯域、余剰帯域がある場合には、その帯域は複数コネクションでシェアされる。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、この方式では複数コネクションでバッファを共用するので、各コネクションのMCRの和を超えた部分の帯域、余剰帯域に関しては、FIFOバッファへの入力レートに比例するかたちで各コネクション間に分配されるため、「公平性」という面で問題があった。FIFO−Tagging方式では余剰帯域が生じた場合にその帯域をどのようにコネクション間で分配するかという規定がないため、極端な場合では余剰帯域を一つのコネクションが占有してしまうという不公平な状況が生じるという問題があった。
【0011】
本発明は、このような背景に行われたものであって、通信網内に設置することにより、通信網に収容されている各コネクションに対し、輻輳時においても契約している最低帯域を保証しつつ、通常時(非輻輳時)には、余剰帯域をコネクション間で公平に分配し、より効率的な網資源の利用を可能にすることができるパケット廃棄装置を提供することを目的とする。本発明は、高速回線においても経済的に実現可能なパケット廃棄装置を提供することを目的とする。さらに、パケット交換スイッチ等のノード内に設置することにより、簡単なハードウェア構成を実現し、効率の良いノード内の輻輳回避を実現することができるパケット廃棄装置を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明は、到着するパケットの受付可否を判定する手段と、この判定により受付拒否されたパケットについてはこれを廃棄する手段とを備えたパケット廃棄装置である。
【0013】
ここで、本発明の特徴とするところは、前記廃棄する手段は、前記判定する手段が受付拒否と判定したコネクションのパケットに一定時間の遅延を与える手段を備えたところにある。
【0014】
これにより、パケットの廃棄を行わなくともRTT(Round Trip Time)が大きくなり、パケット送出元に対して送出レートを下げさせる効果が期待できるため、パケットを廃棄してしまう場合と比較してトラヒックを有効に利用することができる。なお、パケットは固定長パケットであるセルであっても同様に説明することができる。
【0015】
これにより、通信網内に設置することにより、通信網に収容されている各コネクションに対し、輻輳時においても契約している最低帯域を保証しつつ、通常時(非輻輳時)には、余剰帯域をコネクション間で公平に分配し、より効率的な網資源の利用を可能にすることができ、高速回線においても経済的に実現可能なパケット廃棄装置を実現することができる。さらに、パケット交換スイッチ等のノード内に設置することにより、簡単なハードウェア構成を実現し、効率の良いノード内の輻輳回避を実現することができる。
【0016】
【発明の実施の形態】
(第一実施例)
本発明のパケット廃棄装置が適用される本発明第一実施例の多重化装置を図1および図12を参照して説明する。図1は多重化装置のブロック構成図である。図12はモニタリングパケットを用いるキュー長検出を説明するための図である。
【0017】
本発明のパケット廃棄装置5が適用される多重化装置は、図1に示すように、到着するパケットの属するコネクション1〜kを識別するコネクション識別部1と、当該パケットの受付可否を判定するパケット廃棄装置5と、このパケット廃棄装置5の判定結果にしたがってパケットを一時蓄積するFIFO型のバッファ6と、複数コネクションのパケットがバッファ6に蓄積されている中からコネクションi毎のバッファ6のキュー長Xiを検出するキュー長監視部7および仮想キュー管理部3と、コネクションi毎にあらかじめ定められた重みWiの値を保持するコネクション情報格納部2とを備え、バッファ6にはあらかじめ閾値となる最大キュー長Qmaxが設定され、当該最大キュー長Qmaxを超えるとほぼゼロとなる前記キュー長Xiの総和ΣXiの連続関数をα(ΣXi)とし、バッファ6に1以上のパケットが蓄積されているコネクションiの前記重みの和をWactとし、許可キュー長計算部4は、許可キュー長AQiを
AQi=α(ΣXi)・Wi/Wact
として計算し、パケット廃棄装置5は、コネクション毎のキュー長Xiが当該許可キュー長AQi以下のコネクションに属するパケットについてはこれを受付許可と判定する。
【0018】
本実施例では、複数コネクションが混在して一つのバッファ6に蓄積されている状況下における実際のバッファ6のキュー長に対してキュー長監視部7および仮想キュー管理部3によりコネクションi毎にバッファ6のキュー長Xiを検出したものを仮想キュー長という。以下では、説明を簡単にするために、仮想キュー長を単にキュー長XiまたはXjということにする。
【0019】
パケット廃棄装置5は、受付拒否したコネクションjのキュー長Xjが前記許可キュー長AQjを超えている割合を算出し、この算出された割合に応じた確率で受付拒否と判定したコネクションjのパケットについてもその一部を受付許可と判定されたパケットとみなしてバッファ6に蓄積することもできる。
【0020】
また、パケット廃棄装置5は、受付拒否と判定すべきコネクションjのパケットがバッファ6に存在しないときにはこの受付拒否と判定すべきパケットを受付許可と判定することもできる。
【0021】
最低保証帯域を超えてネットワークに到着するパケットについてはこれにタグが付与され、パケット廃棄装置5は、受付拒否と判定すべきパケットに前記タグが付与されているときにはこの受付拒否と判定すべきパケットを受付許可と判定する。
【0022】
本発明の特徴として、パケット廃棄装置5は、受付拒否したコネクションjのキュー長Xjが前記許可キュー長AQjを超えている割合を算出し、受付拒否と判定したコネクションjのパケットに算出された割合に応じて一定時間の遅延を与えた後にバッファ6に蓄積する。
【0023】
キュー長監視部7は、キュー長Xiの所定の変化周期以下の変化周期についてキュー長Xiを検出する。あるいは、キュー長監視部7は、単位時間内のキュー長Xの最大値をキュー長Xiの検出結果として当該単位時間毎に出力する。
【0024】
また、図12に示すように、バッファ6にモニタリングパケットを送出するモニタリングパケット挿入部18を備え、キュー長監視部7は、このモニタリングパケット挿入部18から送出されたモニタリングパケットがバッファ6に入力された時刻と当該モニタリングパケットがバッファ6から出力された時刻との時間差にしたがってキュー長Xiを検出することもできる。
【0025】
また、複数のサービスクラスが設けられ、コネクション識別部1では、到着するパケットのコネクションと共にそのパケットが属する前記サービスクラスも同時に識別し、仮想キュー管理部3では、コネクションi毎のバッファ6の前記サービスクラス毎のキュー長Xiを検出し、コネクション情報格納部2では、コネクションi毎にあらかじめ定められた前記サービスクラス毎の重みWiの値を保持し、パケット廃棄装置5は、前記サービスクラス毎の許可キュー長AQiを
AQi=α(ΣXi)・Wi/Wact
として計算し、コネクションi毎の前記サービスクラス毎のキュー長Xiがサービスクラス毎の当該許可キュー長AQi以下のコネクションに属するパケットについてはこれを受付許可と判定することもできる。
【0026】
以下では、本発明第一実施例をさらに詳細に説明する。
【0027】
図14は本発明を適用して最低帯域保証サービスの提供を行うネットワークの構成図である。発側ユーザは着側ユーザへとネットワークを通してパケットを送出する。ネットワークはユーザに対して契約している最低帯域までの転送レートの保証を行う。ネットワークの各リンクには複数ユーザが収容されており、余剰帯域に関しては料金や最低保証帯域などに基づいて決められる重みにしたがってユーザ間に分配される。
【0028】
このように、本発明のパケット廃棄装置を備えた多重化装置は、図14に示すように、ネットワークに設けることにより、帯域制御装置(UPC:Usage Parameter Control)として用いることができる。また、パケット交換スイッチ内に設けることにより、当該スイッチ内のバッファの輻輳の回避にも利用できる。
【0029】
まず、発側ユーザがネットワークにパケットを送出すると、ネットワークの入側エッジに位置するレート観測装置でユーザのネットワークへのパケット送出レートが計測される。パケットの送出レートが最低保証帯域を超えていれば、パケットのヘッダにTagが付けられ、最低保証帯域以下で送出されるパケットに関してはそのままネットワークへと送出される。Tagが付けられていないパケットをネットワーク内で廃棄することなく着側ユーザまで転送することで最低帯域の保証を行う。本発明の多重化装置は中継ノード内に位置し、複数ユーザで共用しているリンク帯域を各ユーザに重みにしたがって分配するという処理を行う。
【0030】
多重化装置は、図1に示すように、コネクション識別部1、帯域制御部10、バッファ部11から構成されている。コネクション識別部1では到着したパケットのヘッダからコネクションを識別する。帯域制御部10では、そのコネクション情報をもとに帯域制御に関する処理を行う。バッファ部11は単純なFIFO型のバッファ6でリンクに収容されている全ユーザ間で共用されている。
【0031】
バッファ6にはキュー長監視部7が接続されており、バッファ6のキュー長とパケット入出力時に入出力パケットに関する情報を前段の仮想キュー管理部3に伝達する。ここで、入出力パケットに関する情報とは、バッファ6に入力またはバッファ6から出力されるパケットのパケット長およびそのパケットが属しているコネクションの識別番号を含む。
【0032】
入力回線側からパケットが到着すると、コネクション識別部1でパケットのコネクション識別が行われ、後段の帯域制御部10に送られ、バッファ6に入力するか否かの判定を行い、廃棄と判定されたパケットはその場で廃棄され、廃棄と判定されなかったパケットは後段のバッファ部11へと入力されFIFO規範にしたがって出力回線へと出力される。
【0033】
本発明では帯域制御部10でのパケット廃棄に基づく帯域制御が重要な役割を果たす。したがって、帯域制御部10の処理について詳細に説明する。帯域制御部10は、仮想キュー管理部3、許可キュー長計算部4、コネクション情報格納部2、パケット廃棄装置5により構成されている。
【0034】
仮想キュー管理部3では、キュー長監視部7からの情報をもとにバッファ6のキュー長とコネクション毎のキュー長とを算出する。仮想キュー管理部3はコネクション情報格納部2と接続されており、算出されたコネクション毎の仮想的なキュー長はコネクション情報格納部2に記録される。
【0035】
各キュー長の算出方法について説明する。まず、バッファ6のキュー長の算出に関しては、キュー長監視部7から伝達されるキュー長情報をそのまま仮想キュー管理部3に保持するだけである。次にコネクション毎の仮想キュー長の算出方法であるが、初期状態ではバッファ6は空であるため、各コネクションの仮想キュー長はゼロである。バッファ6にパケットが入力されると、そのパケットのパケット長とコネクション識別番号とがキュー長監視部7を通して伝達される。その情報をもとに仮想キュー管理部3はコネクション識別部1にアクセスし、該当コネクションの仮想キュー長に送られてきたパケット長を足し込むという処理を行う。パケット出力時にはこれとは逆に仮想キュー長から伝達されたパケット長を減算するという処理を行う。
【0036】
図2はコネクション情報格納部2の一例で、仮想キュー管理部3で算出されたコネクション毎の仮想キュー長に関する情報、コネクションの重みに関する情報が格納されている。
【0037】
次に、許可キュー長計算部4は、仮想キュー管理部3およびコネクション情報格納部2からバッファ6のキュー長に関する情報と、コネクション毎の仮想キュー長、重みに関する情報を受け取り、それらをもとに許可キュー長を計算する機能を持つ。ここでコネクションの許可キュー長とはバッファ6への入力が認められる最大キュー長を表す。
【0038】
コネクションiの許可キュー長AQiの計算方法について具体的に説明する。コネクションの重みをWi、現在のバッファ6のキュー長をΣXiとすると、
AQi=α(ΣXi)・Wi/Wact
で計算される。α(ΣXi)はある連続関数で、図3ないし図9のグラフはキュー長の関数α(ΣXi)の一例である。横軸にキュー長ΣXiをとり、縦軸に関数α(ΣXi)の値をとる。Wactはアクティブなコネクションの重みの和である。ここでアクティブなコネクションとは仮想キュー長がゼロより大きなコネクション、つまり少なくとも一つ以上のパケットがバッファ6に入っているコネクションのことである。
【0039】
関数α(ΣXi)はキュー長がある閾値(図ではQmax)を超えるとゼロとなる。つまりキュー長がある閾値を超えた場合には、輻輳であると判定され、各コネクションの許可キュー長はゼロとなる。
【0040】
例えば、図3の例では閾値Qmaxを超えない範囲では、関数α(ΣXi)は一定の値をとり、閾値Qmaxを超えたときには関数α(ΣXi)はゼロとなる。すなわち、閾値Qmaxを超えない範囲で許可キュー長AQiはコネクションの重みに比例して分配される。
【0041】
図4の例では、キュー長ΣXiがゼロから閾値Qmax未満の所定の値までの間で、途中までは関数α(ΣXi)は緩やかに減少し、閾値Qmaxに近付くにつれて急に減少し、閾値Qmaxではゼロとなる。すなわち、許可キュー長AQiはキュー長ΣXiが小さいときには、コネクションiの重み以上に分配されるが、キュー長ΣXiが所定の値を超えると急峻に許可キュー長AQiの分配率が低下する。
【0042】
図5の例では、キュー長ΣXiと関数α(ΣXi)の値とがリニアに反比例する。すなわち、許可キュー長AQiはキュー長ΣXiにリニアに反比例する。最も単純かつ基本的な制御例である。
【0043】
図6の例では、キュー長ΣXiと関数α(ΣXi)の値とが二次関数にしたがって反比例する。すなわち、許可キュー長AQiはキュー長ΣXiが小さいときには大きいが、キュー長ΣXiが増加するとともに急に減少を始め、キュー長ΣXiが閾値Qmaxに近付くにつれて減少が緩やかになる。これにより、キュー長ΣXiが増え始めた時点でトラヒックの増加を強く抑えることができる。
【0044】
図7の例では、キュー長ΣXiと関数α(ΣXi)の値とが図6に示す二次関数とは逆転した二次関数にしたがって反比例する。すなわち、許可キュー長AQiはキュー長ΣXiが小さいときには大きいが、キュー長ΣXiが増加するとともに徐々に減り始め、キュー長ΣXiが閾値Qmaxに近付くにつれて減少が急になる。これにより、キュー長ΣXiが閾値Qmaxに近付くにつれてトラヒックの増加を強く抑えることができる。
【0045】
図8の例では、キュー長ΣXiと関数α(ΣXi)の値とが段階的に反比例する。すなわち、許可キュー長AQiはキュー長ΣXiが小さいときには大きいが、キュー長ΣXiが増加するとともに徐々に減り始め、所定のキュー長ΣXiから急に減り始め、キュー長ΣXiが閾値Qmaxに近付くにつれて再び減少が緩やかになる。これにより、キュー長ΣXiがゼロと閾値Qmaxとの中間付近にあるときにトラヒックの増加を強く抑えることができる。
【0046】
図9の例では、キュー長ΣXiと関数α(ΣXi)の値とが図8の例とは逆転して段階的に反比例する。すなわち、許可キュー長AQiはキュー長ΣXiが小さいときには大きいが、キュー長ΣXiが増加するとともに急に減り始め、所定のキュー長ΣXiから緩やかに減り始め、キュー長ΣXiが閾値Qmaxに近付くにつれて再び急に減り始める。これにより、キュー長ΣXiがゼロから増え始めた時点と閾値Qmaxに近付いた時点とでトラヒックの増加を強く抑えることができる。
【0047】
また、キュー長ΣXiとしては現在のキュー長(パケット到着時のキュー長の瞬間値)を用いるとしているが、キュー長ΣXiとして一定時間内のキュー長の平均値を採用してもよい。
【0048】
パケット廃棄装置5は許可キュー長とコネクション毎の仮想キュー長から到着したパケットをバッファ6へ入力するか廃棄するかの判定をする。図10は確定的な廃棄処理を行うパケット到着時の処理フローを示すフローチャートであるが、図10に示すように、仮想キュー長Xiが許可キュー長AQi以下であればバッファ6に入力し、許可キュー長AQiを超えていれば、Tagが付けられているパケットは廃棄し、Tagが付けられていないパケットはバッファ6へ入力することにより、常に各コネクションの最低帯域は保証しつつ、バッファ6の占有率が公平になるように制御する。
【0049】
また、仮想キュー長が許可キュー長を超えていた場合には、上記のように確定的にパケット廃棄するのではなく、確率的にパケット廃棄することも可能である。図11は確率的な廃棄処理を行うパケット到着時の処理フローを示すフローチャートであるが、図11に示すように、許可キュー長をAQi、仮想キュー長をXiとすると、廃棄確率Pは、
P=(Xi−AQi)/Xi
で与えられる。つまり、仮想キュー長が許可キュー長を超えた場合には、超えた割合だけ落すというものである。確率的な廃棄によって帯域制御することで、一つのコネクションに注目した場合には、仮想キュー長が許可キュー長を超えたときでも、連続してパケットが廃棄される現象が、確定的にパケット廃棄する場合よりも減少するため、TCPのレート制御との親和性が高くなるといえる。バッファ6へと入力されたパケットはFIFO規範にしたがって出力回線へと出力される。
【0050】
図11における擬似乱数Randの生成は、パケット到着毎に行われ、廃棄確率Pと擬似乱数Randとを比較した結果に基づき廃棄を実行することにより、実際に廃棄確率Pによる廃棄を実現することができる。例えば、廃棄確率Pが0.5であるときに、擬似乱数Randが0.5よりも大きい値をとる確率もまた0.5であり、擬似乱数Randが0.5よりも大きい場合に廃棄を実行することにより、廃棄確率Pにしたがった廃棄が行われる。
【0051】
本発明の多重化装置はキュー長をもとに網の輻輳状態を推定し、輻輳であると判定されれば許可キュー長はゼロに等しくなり、最低保証帯域以下のレートで網に送出されているパケットのみを網は転送する。キュー長がある閾値以下のときは、余剰帯域が存在すると判断され、各コネクションは重みに比例したバッファの占有によって、帯域をコネクション間に公平に配分される。
【0052】
また、ハードウェア構成が簡易なFIFOバッファでGFRサービスを実現しつつ、WRR方式等のようなコネクション毎に個別にバッファを持ってパケットの読出制御を行う方法と同様に余剰帯域を公平にコネクション間の分配することが可能である。また、一つのバッファを多数のコネクションで共用するため、コネクション毎に個別にバッファを持つ方式に比べて、統計多重効果により必要なバッファ量を削減できるという利点もある。
【0053】
また、パケット廃棄装置5の機能として、受付拒否と判定すべきコネクションjのパケットがバッファ6に存在しないときにはこの受付拒否と判定すべきパケットを受付許可と判定する。
【0054】
すなわち、バッファ6にコネクションjのパケットが存在しないということは、コネクションjのパケットは散発的であることを示している。このような散発的なパケットを受付拒否して廃棄しても連続的なパケットを廃棄する場合と比較して輻輳回避の効果はきわめて低い。したがって、このような散発的なパケットを無意味に廃棄しないようにする。
【0055】
また、本発明のパケット廃棄装置5の特徴として、受付拒否と判定したコネクションjのパケットに一定時間の遅延を与えた後にバッファ6に蓄積する。この一定時間は、キュー長Xjが許可キュー長AQjを超えた割合に応じて可変する。
【0056】
これにより、パケットの廃棄を行わなくともRTT(Round Trip Time)が大きくなり、パケット送出元に対して送出レートを下げさせる効果が期待できるため、パケットを廃棄してしまう場合と比較してトラヒックを有効に利用することができる。
【0057】
キュー長監視部7の機能として、キュー長Xiの所定の変化周期以下の変化周期についてキュー長Xiを検出する。これにより、瞬間的なキュー長Xiの変化を吸収し、外乱によるトラヒック制御の誤動作を回避することができる。
【0058】
また、キュー長監視部7の機能として、単位時間内のキュー長Xiの最大値をキュー長Xiの検出結果として当該単位時間毎に出力する。これにより、瞬間的なキュー長Xiの変化を吸収し、外乱によるトラヒック制御の誤動作を回避することができる。
【0059】
また、図12に示すように、バッファ6にモニタリングパケットを送出するモニタリングパケット挿入部18を備え、キュー長監視部7は、このモニタリングパケット挿入部18から送出されたモニタリングパケットがバッファ6に入力された時刻と当該モニタリングパケットがバッファ6から出力された時刻との時間差にしたがってキュー長Xを検出する。
【0060】
これにより、単にパケット蓄積数に基づくキュー長Xiの検出と比較すると、実際の遅延時間等のパラメータを含めた実効的なキュー長Xiを検出することができる。
【0061】
また、一つのコネクションに属するパケットをさらに二つのサービスクラスに分類して取り扱う例である。一つのサービスクラスは、リアルタイム性を重要視するパケットに対するリアルタイム(R)クラスであり、もう一つのサービスクラスは、リアルタイム性を重要視しないパケットに対するノンリアルタイム(NR)クラスである。
【0062】
図1に示すコネクション識別部1において、到着するパケットのコネクションを識別すると共にそのパケットのサービスクラスを識別する。また、仮想キュー管理部3では、バッファ6に蓄積されたパケットのコネクションの情報と共にサービスクラスの情報も取得する。これにより、コネクション情報格納部2には、図13に示すようなテーブルを設けることができる。
【0063】
例えば、コネクション#1についてみると、仮想キュー長としてリアルタイムクラスに属するX1(R)およびノンリアルタイムクラスに属するX1(NR)が記録されている。また、重みとしてリアルタイムクラスの重みW1(R)およびノンリアルタイムクラスの重みW1(NR)が記録されている。重みW1(R)はW1(NR)よりも重く設定されており、リアルタイムクラスに属するパケットをノンリアルタイムクラスに属するパケットに優先して読出すことができる。
【0064】
これにより、リアルタイム性を重要視するパケットの遅延を少なくすることができるため、ユーザに対するQoSを向上させることができる。
【0065】
(第二実施例)
本発明のパケット廃棄装置が適用される本発明第二実施例の多重化装置を図15を参照して説明する。図15は本発明第二実施例の多重化装置のブロック構成図である。
【0066】
多重化装置は、図15に示すように、到着する固定長パケットであるセルの属するコネクション1〜kを識別するコネクション識別部1と、当該セルの受付可否を判定する受付判定部15と、この受付判定部15の判定結果にしたがってセルを一時蓄積するFIFO型のバッファ6と、コネクションi毎にセルの到着レートRiを検出するレート検出部8と、コネクションi毎にあらかじめ定められた重みWiの値を保持するコネクション情報格納部2とを備え、セルの到着レートRiにはあらかじめ閾値となる最大レートが設定され、当該最大レートを超えるとほぼゼロになる前記セルの到着レートRiの総和ΣRiの連続関数をβ(ΣRi)とし、バッファ部11のバッファ6に1以上のセルが蓄積されているコネクションiの前記重みの和をWactとし、許可到着レート計算部14は、許可到着レートACRiを
ACRi=β(ΣRi)・Wi/Wact
として計算し、受付判定部15は、コネクションi毎のセルの到着レートRiが当該許可到着レートACRi以下のコネクションに属するセルについてはこれを受付許可と判定する。
【0067】
本実施例では、複数コネクションが混在して一つのバッファ6に蓄積されている状況下における実際のバッファ6のキュー長に対してキュー長監視部7および仮想キュー管理部3によりコネクションi毎にバッファ6のキュー長Xiを検出したものを仮想キュー長という。
【0068】
図14は本発明を適用して最低帯域保証サービスの提供を行うネットワークの構成図である。発側ユーザは着側ユーザへとネットワークを通してパケットを送出する。ネットワークはユーザに対して契約している最低帯域までの転送レートの保証を行う。ネットワークの各リンクには複数ユーザが収容されており、余剰帯域に関しては料金や最低保証帯域などに基づいて決められる重みにしたがってユーザ間に分配される。
【0069】
このように、本発明のパケット廃棄装置を備えた多重化装置は、図14に示すように、ネットワークに設けることにより、帯域制御装置(UPC:Usage Parameter Control)として用いることができる。また、パケット交換スイッチ内に設けることにより、当該スイッチ内のバッファの輻輳の回避にも利用できる。
【0070】
まず、発側ユーザがネットワークにパケットを送出すると、ネットワークの入側エッジに位置するレート観測装置でユーザのネットワークへのパケット送出レートが計測される。パケットの送出レートが最低保証帯域を超えていれば、パケットのヘッダにTagが付けられ、最低保証帯域以下で送出されるパケットに関してはそのままネットワークへと送出される。Tagが付けられていないパケットをネットワーク内で廃棄することなく着側ユーザまで転送することで最低帯域の保証を行う。本発明の多重化装置は中継ノード内に位置し、複数ユーザで共用しているリンク帯域を各ユーザに重みにしたがって分配するという処理を行う。
【0071】
本発明第二実施例は受付判定部15の機能として、受付拒否と判定したコネクションjのパケットに一定時間の遅延を与えた後にバッファ6に蓄積する。この一定時間は、到着レートRjが許可到着レートACRjを超えた割合に応じて可変する。
【0072】
これにより、パケットの廃棄を行わなくともRTT(Round Trip Time)が大きくなり、パケット送出元に対して送出レートを下げさせる効果が期待できるため、パケットを廃棄してしまう場合と比較してトラヒックを有効に利用することができる。
【0073】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、通信網内に設置することにより、通信網に収容されている各コネクションに対し、輻輳時においても契約している最低帯域を保証しつつ、通常時(非輻輳時)には、余剰帯域をコネクション間で公平に分配し、より効率的な網資源の利用を可能にすることができる。また、高速回線においても経済的に実現可能なパケット廃棄装置を実現することができる。さらに、パケット交換スイッチ等のノード内に設置することにより、簡単なハードウェア構成を実現し、効率の良いノード内の輻輳回避を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明第一実施例の多重化装置のブロック構成図。
【図2】コネクション情報格納部のテーブル例を示す図。
【図3】関数α(ΣXi)の例を示す図。
【図4】関数α(ΣXi)の例を示す図。
【図5】関数α(ΣXi)の例を示す図。
【図6】関数α(ΣXi)の例を示す図。
【図7】関数α(ΣXi)の例を示す図。
【図8】関数α(ΣXi)の例を示す図。
【図9】関数α(ΣXi)の例を示す図。
【図10】確定的な廃棄処理を行うパケット到着時の処理フローを示すフローチャート。
【図11】確率的な廃棄処理を行うパケット到着時の処理フローを示すフローチャート。
【図12】モニタリングパケットを用いるキュー長検出を説明するための図。
【図13】本発明第一実施例のコネクション情報格納部のテーブル例を示す図。
【図14】本発明を適用したネットワーク構成の一例を示す図。
【図15】本発明第二実施例の多重化装置のブロック構成図。
【図16】従来のWRR方式の概要を説明するための図。
【符号の説明】
1 コネクション識別部
2 コネクション情報格納部
3 仮想キュー管理部
4 許可キュー長計算部
5 パケット廃棄装置
6 バッファ
7 キュー長監視部
8 レート検出部
10 帯域制御部
11 バッファ部
14 許可到着レート計算部
15 受付判定部
18 モニタリングパケット挿入部

Claims (1)

  1. 到着するパケットの受付可否を判定する手段と、この判定により受付拒否されたパケットについてはこれを廃棄する手段と、パケット蓄積手段とを備えたパケット廃棄装置において、
    前記受付可否を判定する手段は、当該パケットのコネクションと同一のパケットが前記パケット蓄積手段に存在しないときは当該パケットを受付許可と判定し、存在するときには当該パケットを受付拒否と判定する手段を含み、
    前記廃棄する手段は、前記判定する手段が受付拒否と判定したコネクションのパケットに一定時間の遅延を与えて前記パケット蓄積装置に入力する手段を備えた
    ことを特徴とするパケット廃棄装置。
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