JP3813156B2 - オピオイド受容体と、その組成物および製造方法 - Google Patents

オピオイド受容体と、その組成物および製造方法 Download PDF

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Description

本発明はエプシロンオピオイド(epsilon opioid) 受容体(モルヒネ受容体)の組成物と、その製造方法に関するものである。
本発明はさらに、εオピオイド受容体をコードするDNA配列と、このDNA配列を含む組み換えベクターと、上記DNA配列またはベクターを含む組み換え宿主細胞と、組み換えεオピオイド受容体ポリペプチドとにも関するものである。
本発明はさらに、単離された組換え受容体ポリペプチドの診断、医薬開発および治療用途で用いられるεオピオイド受容体およびポリペプチドの作動薬・拮抗材の候補物質の選択・改良試験での利用法にも関するものである。
発明の背景
オピオイド薬は痛みの知覚、意識、運動制御、気分および自律神経機能に作用し、また身体依存症 (physical dependence) を誘導する(Koob達、1992)。内因性オピオイド系は内分泌機能、心臓血管機能、呼吸器系機能、消化機能および免疫機能の調節に重要な役割を果たしている(Olson達、1989) 。オピオイドは中枢神経および末梢神経系全体に存在する特異な膜関連受容体と結合してその作用を発揮する(Pert達、1973) 。これらオピオイド受容体の内因性リガンドはプロオピオメラノコルチン、プロエンケファリンおよびプロジノルフィンの3つの前駆体蛋白から得られる20以上のオピオイドペプチド群として同定される(Hughes達、1975、Akil達、1984) 。オピオイドペプチドはオピオイドアルカロイドとは別の分子のクラスに属するが、両者は受容体との相互作用に必要な芳香族環の平行正電荷を有する点で共通の構造的特性を有している。
薬理学的研究から、オピオイド受容体にはδ、κ、μおよびεで表されるものを含めて多くの種類が存在することが示唆されている(Simon, 1991、Lutz達、1992) 。各クラスは各種オピオイドリガンドに対する親和性と、細胞上での分布の点で異なっている。クラスの異なるオピオイド受容体はそれぞれ異なる身体機能に作用すると考えられている(Olson達、1989、Simon,1991、Lutz/Pfister、1992) 。しかし、機能および分布の点でかなりの重なりが見られる。多くのグループのオピオイド受容体の生化学的特徴付けの研究から、3つのサブタイプ全ての分子量は約60,000 Daと報告されており、それらが関連のある分子であることを示唆している(Loh達、1990)。3種類の受容体サブタイプ間の類似性は (i)μおよびδリガンドと競合してκリガンドとは競合しない抗イディオタイプのモノクロナル抗体(Gransch達、1988; Coscia達、1991)と、(ii)μおよびκ受容体の両方と相互作用する精製μ受容体に対するモノクロナル抗体 (Bero達、1988)との単離によって証明されている。
モルヒネは原則としてμ受容体と相互作用し、このオピオイドを末端投与するとエンケファリンの放出が誘導される(Bertolucci達、1992) 。δ受容体は最も強い親和性でエンケファリンと結合し、μまたはκ受容体に比べて脳内により多く分散しており、脳幹神経節および大脳周縁領域での濃度が高い。すなわち、エンケファリンは、おそらくδ受容体と相互作用することによって、モルフォリンに対する生理的応答の一部を媒介していると考えられる。薬理学的および生理学的不均一性にも係わらず、少なくとも幾つかのポピオイド受容体はアデニレートサイクラーゼを阻害し、K+コンダクタンスを増加させ、さらに百日咳菌毒性感受性機構を介してCa+チャネルを不活性化する(Puttfarcken達、1988; Attali達、1989; Hsia達、1984)。
上記およびその他の結果は、オピオイド受容体はG蛋白を介して信号を出す大きな細胞表面受容体群に属するということを示唆している(Di Chiara達、1992,; Loh達、1990)。
エチルケトシクラゾシンのような 6,7ベンゾモルファンは脳内でμオピオイドが結合しない部位とδオピオイドが結合しない部位 (κ部位およびε部位) との2つの集団に分ける(Chang達、1981) 。ベネゼンカクタアミドU-69,593はこれら2種類の6, 7ベンゾモルファン部位の一方のκオピオイド受容体部位に相当する部位を選択的に分ける。他方のベンゾモルファン部位は選択的リガンドは有していない(Nock 達、1988)。U-69,593に対して感受性でないベンゾモルファン部位の性質と名称についてはこの部位がある種のκオピオイドリガンドと高い親和性で相互作用することからκオピオイド受容体のサブタイではないかということを含めて論議が行われてきた。しかし、κオピオイド受容体の内因性リガンドであるといわれるダイノルフィン、その他のプロディモルフィン由来のペプチドはこの部位に対する親和性が非常に低い。この部位はβエンドルフィンに対して高い親和性を有する (Nock達、1993)。この薬理学的な選択性はダイノルフィンに対して非感受性でμ、δオピオイド結合部位でないという特徴を有するエプシロン(ε)オピオイド受容体の選択性に相当する。ε受容体は、当初、ラット導管のdeferensを含むバイオアッセイおよび脳内放射性リガンド結合実験からその存在の仮説が立てられたが、その後この受容体は脳内に最も多く見られるオピオイド結合部位であることが判明した(Nock 達1993)。
オピオイド受容体をコードするcDNAをクローニングする試みは幾つか行われてきた。μ選択性を有するオピオイド結合蛋白(OBCAM)をコードするcDNAが単離されたが、予想された蛋白質は信号変換に必要とされるトランスメンブレン領域を持たない(Schofield達、1989) 。最近、発現クローニングによって得られた別のcDNAの単離が報告された(Xie達、1992) 。取り出した蛋白配列は7種類の推定トランスメンブレン領域を有し、人間のニューロメディンK受容体に非常に類似している。しかし、COS細胞で表されるこの受容体に対するオピオイドリガンドの親和性は期待値よりも2段階低く、サブタイプ選択性も示さない。
多くの細胞表面受容体/トランスメンブレン系は膜に結合した少なくとも3種類のポリペプチド成分すなわち (a)細胞表面の受容体と、(b)効果器、例えばイオンチャネルまたはアデニレートサイクラーゼ酵素と、(c)グアニンヌクレオチド結合性調節ポリペプチドまたはG蛋白(受容体およびその効果器の両方に結合されている)で構成されている。
G蛋白が結合した受容体は光、臭気物質、ペプチドホルモンおよび神経伝達物質等のさまざまな細胞外部からの信号の作用を媒介する。これらの受容体は人間と酵母のように進化論上異なる生物でも確認されている。G蛋白が結合した受容体はほとんど全て互いに類似な配列を有し、それらは全て脂質二重層の両側に渡る7種類の疎水性(そしておそらくはα−ヘリックス構造の)断片より成る類似の位相幾何学的単位を共有するといわれている(Dohlman達、1987; Dohlman 達、1991) 。
G蛋白質は堅く結合した3つのサブユニットすなわち質量の大きい順にα、βおよびγ(1:1:1)で構成されている。受容体に作動剤が結合すると、構造の変化がG蛋白質に伝えられてGα−サブユニットが結合されたGDPをGTPと交換し、βγ−サブユニットから分離する。GTP結合型のα−サブユニットは一般に効果器調節部分である。信号増幅は、単一受容体が多数のG蛋白質分子を活性化できる能力とGα−GTPによる多数の効果器の触媒サイクルの刺激とによって行われる。 調節G蛋白グループは多数の異なるα−サブユニットで構成され(人間では20以上)、それがより小さいプールのβ−およびγ−サブユニット(それぞれ4以上)と結合する(StrothmanとSimon, 1991)。従って、各種α−サブユニットの標的または機能はそれらが結合するβγサブユニットにも依存するが、α−サブユニットにおける相違点が各種のG蛋白オリゴマーを区別すると考えられている(StrathmanとSimon, 1991)。
細胞培養および薬理学的手法が向上し、最近では分子クローニングおよび遺伝子発現技術が用いられることによって、既に同定されている受容体の新たなサブタイプおよびサブ−サブタイプを含めた7つのトランスメンブレン断片を有する受容体が多数同定されている。α1およびα2−アドレナリン作動性の受容体はそれぞれ単一の受容体種によって構成されているといわれてきたが、現在では各々が少なくとも3つの別個の遺伝子にコードされることが分かっている(Kobilka達、1987; Regan達、1988; Cotecchia 達、1988; Lomasney, 1990)。おぼろげな光の中での視覚を媒介する桿状細胞内のロドプシンの他に、色覚を媒介する非常に似通った3種類の錐状色素がクローニングされている(Nathans達、1986A; Nathans達、1986B)。G蛋白結合受容体のグループは全てG蛋白結合受容体のグループに属するその他の受容体と類似し(ドーパミン作動性、ムルカリン性、セロトニン作動性およびタッキーキニン等)、しかも、れぞれ特徴的な7つのトランスメンブレン断片のトポロジーを共有することが分かっている。
7つのトランスメンブレン断片を有する受容体を互いに比較すると、保存されているアミノ酸配列の分離可能なパターンが観察される。大抵の場合、トランスメンブレン領域は最も類似性が高く、アミノ基およびカルボキシル基末端領域およびトランスメンブレン断片VとVIとを連結する細胞質ループはかなり異なることがある(Dohlman達、1987)。
細胞質ポリペプチド、例えばキナーゼとG蛋白との相互作用には受容体のトランスメンブレン領域を連結する疎水性ループが含まれると予測されていた。7つのトランスメンブレン断片を有する受容体の中で機能の保持のためにいずれの特徴が保存され、どの特徴が新たな機能に対する構造的適応性を表しているかを決定する試みも行われた。これらのアイデアを試すために、置換、欠損による変異体やハイブリッドまたはキメラ受容体を作る組み換えDNAや遺伝子発現技術を使用する方法を含めて多くの方法が用いられてきた(Dohlman達、1991)。
受容体サブタイプ、G蛋白サブユニットおよび効果器の数が増大するにつれて、これらの受容体のリガンド結合性とG蛋白認識性との特徴付けが重要な研究分野になっている。多数の受容体が1つのG蛋白質に結合でき、β2およびα2−アドレナリン作動性の受容体に結合するエピネフリンの場合のように、1つのリガンドが機能の異なる複数の受容体サブタイプに結合可能であることはかなり以前から知られている。さらに、受容体および効果器結合特異性が似ているG蛋白質も同定されている。例えば3種類の人間のGiがクローニングされ(Itoh達、1988) 、交互mRNAスプライシングによって多数のG5変形型が生じることが示されている (Kazasa達、1988)。ムスカリンおよびα2−アドレナリン作動性の受容体をクローニングして過剰生産することによって、単一の受容体サブタイプは細胞内で高レベルで発現された時に一種以上のG蛋白に結合するということが分かっている。
オピオイド受容体は還元剤に対して感受性であることが知られており、リガンドの結合にはジスルフィド結合が必須であると考えられている(Gioannini達、1989)。ロドプシン、ムスカリンおよびβ−アドレナリン作動性の受容体の場合、機能に関する蛋白質構造を安定化させるためには2種類の第1細胞外ループのそれぞれに存在する2つの保持されたシステイン残基が重要であるということが分かっており、ジスルフィド結合を形成することによって安定化が行われるといわれている。オピオイドリガンドの構造/機能に関する研究の結果、高い親和性で受容体に結合するにはプロトン付加されたアミン基が重要であるということが分かっている。従って、受容体の結合部位は大きくマイナスに荷電された対応部分を有する可能性がある。カテコールアミン受容体はその配列中に保存されたアスパルテート残基を有し、この残基はリガンド中のプラスに荷電されたアミン基を結合するのに必要であることが分かっている。
各種のオピオイド受容体の機能は複雑且つ縮重(degeneracy)しているので、基本的に重要な問題はどのような状況下でどのようにして、適当な刺激リガンドの存在下で、各サブタイプおよびサブ−サブ−タイプ受容体がそれらの生理学的効果を発揮するかという点にある。この問題を解くための従来の方法はインビトロで純粋な受容体およびG蛋白成分を再構成することであった。しかし、残念ながら、精製スキームに成功したのは極めて限られた数の受容体サブ−タイプとその同族G蛋白質のみであった。また、ヘテロ発現システムはクローニングされた受容体の特徴付けおよび受容体とG蛋白との結合特異性の説明により有効な別の一般的方法である (Mrullo達1988; Payette達、1990; King 達、1990)。
この系は最近酵母細胞で開発され、この系では哺乳類のβ2−アドレナリン作動性受容体とGSα−サブユニットの遺伝子とが同時に発現される (King達、1990) 。β2−アドレナリン作動性受容体はヒトの任意組織内でのレベルの数百倍のレベルで発現され、リガンドの結合には適切な親和性、特異性および立体選択性があることが分かった。さらに、成長阻止の印加、形態学的変化および Escherichi a coli のLac Z 遺伝子(ベータガラクトシダーゼをコードする)と融合したフェロモン応答プロモータ(FUS1)の誘導を含む複数の評価基準から、β2−アドレナリン作動性受容体によって媒介されるフェロモン信号変換経路の活性化も分かった (King達、1990)。
また、他の関連するサブタイプが存在しないと、単離した非組み換え体の哺乳類の細胞中でも受容体の発現は不可能であることが多い。従って、オピオイド受容体の研究では従来の遺伝学の標準的方法は使えず、分子生物学の強力な手法を適用するのも極めて難しい。特に、個々のオピオイド受容体をコードするDNA配列を同定する手段が必要であり、逆に、単離された組み換え配列があれば、イソフルム特異的なオピオイド受容体の作動剤および拮抗剤の設計およびテストでの従来困難であった問題に取り組むことが可能になる。オピオイド受容体をコードするcDNASが使用可能になれば、信号変換機構の詳細な研究が可能になり、受容体のmRNAの解剖学的分布が明らかになり、神経系でのその発現パターンに関する情報が得られることになる。この情報は最終的には痛覚消失症でのオピオイド系の理解を助け、より特異的な治療薬の設計が可能になる。
オピオイド受容体をコードするポリヌクレオチド配列と、コードされた受容体のポリペプチド配列が入手できれば、機能特異性の強い鎮痛剤等の医薬組成物の設計可能性が大幅に増加する。さらに、こうしたポリペプチド配列が入手可能になれば、候補組成物のスクリーニングを効果的に行うことができ、スクリーニング操作での操作原理が簡単になり、天然の作動剤および拮抗剤が細胞表面の受容体およびチャンネルに結合して生理学的作用を生じれば、一定の他の分子も受容体およびチャンネルに結合して生理学的な効果を生じ、治療剤として機能する可能性がある。すなわち、候補薬のオピオイド受容体への結合能が所望機能に効果のある医薬組成物の選択に極めて効果的なスクリーニング基準となる。
細胞表面受容体への優先結合能に基づいて薬品組成物の候補をスクリーニングする従来の方法は細胞組織を基にした方法に限定される。すなわち、従来法では目的とする受容体を多く含む動物組織を調製し、調製した組織に候補薬を作用させ、受容体との結合が見られたものを選択して次の検討へ進む。しかし、こうした細胞組織を用いるスクリーニング法には重大な欠点がある。先ず、受容体セル組織源すなわち実験動物が高価で、コストがかかる。次に、スクリーンに多大な技術情報が必要になる。さらに、単一の受容体サブタイプのみが排他的に発現される組織は存在しないので、スクリーン結果が混乱することがある。すなわち、従来のスクリーン法は基本的に間違った相互作用を見ているか、良くても、所望でない相互作用が混入した状態の相互作用を見ているに過ぎない。動物組織を用いたスクリーニングの別の基本的な欠陥は動物の受容体を含む点である。これは動物用医薬の開発には理想的であるが、ヒトの治療薬では価値が疑わしい。
こうした従来法の欠点は、オピオイド受容体に相当するポリペプチド配列の発現が可能な適当な宿主細胞に形質転換されたポリヌクレオチドを大量かつ比較的簡単な実験操作で提供することによって解決することができる。そうすことによって、細胞組織を用いたスクリーニングで見られた好ましくない競合する相互作用がない状態での極めて特異的な受容体−医薬相互作用を利用することができる。また、こした内因性受容体が全く存在しない微生物(例えば酵母細胞または突然変異の哺乳類細胞系)中での発現は、サブ−タイプ選択的医薬のスクリーニングとその評価にとって有用である(Marullo達、1988; Payette達、1990; King 達、1990)。
本発明はエプシロンオピオイド受容体ポリペプチドをコードする単離・精製されたポリヌクレオチドを提供する。本発明の好ましいポリヌクレオチドはDNA分子であり、さらに好ましくは、本発明のポリヌクレオチドは配列 No.2または配列 No.4のアミノ酸残基配列を含むポリペプチドであり、最も好ましくは、単離・精製された本発明ポリヌクレオチドは配列 No.1または配列 No.3のヌクレオチド塩基配列を含む。
本発明の他の対は配列 No.1または配列 No.3の少なくとも10個の隣接する塩基からなる断片と同一またはそれと相補な塩基配列を含む単離・精製された、エプシロンオピオイド受容体ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドにハイブリッド化されたポリヌクレオチドにある。この単離・精製されたポリヌクレオチドは配列 No.1または配列 No.3の少なくとも25〜70個の隣接する塩基より成る断片と同一またはそれと相補な塩基配列を含むのが好ましい。本発明のポリヌクレオチドは例えば開示されたヌクレオチド配列の40〜55個の隣接する塩基と同一またはそれと相補な塩基の断片を含むことができる。
本発明の別の実施例では配列 No.1または配列 No.3のうち少なくとも10個の隣接する塩基より成る断片と同一またはそれに対して相補的な塩基配列を含む単離・精製されたポリヌクレオチドが提供される。本発明のこのポリクレオチドは配列 No.1または配列 No.3あるいは配列 No.1または配列 No.3の相補体にハイブリッド化されている。単離・精製されたポリヌクレオチドは配列 No.1または配列 No.3の少なくとも25〜70個の隣接する塩基より成る断片と同一またはそれに相補な塩基配列を含むのが好ましい。本発明のポリヌクレオチドは例えば配列 No.1または配列 No.3の40〜55個の隣接する塩基と同一またはそれに相補な塩基の断片を含むことができる。
本発明の別の対象は単離・精製されたエプシロンオピオイド受容体ポリペプチドにある。本発明のポリペプチドは組換えポリペプチドであるのが好ましい。さらに好ましくは本発明のエプシロンオピオイド受容体ポリペプチドは配列 No.2または配列 No.4のアミノ酸残基配列を含んでいる。
本発明の別の実施例では、エプシロンオピオイド受容体ポリペプチドをコードしたポリヌクレオチドを含む発現ベクタが提供される。好ましくは、本発明の発現ベクターは配列 No.2または配列 No.4のアミノ酸残基配列を含むポリペプチドをコードする。より好ましくは、本発明の発現ベクターは配列 No.1または配列 No.3のヌクレオチド塩基配列を含むポリヌクレオチドを含む。さらに好ましくは、本発明の発現ベクターはエンハンサ−プロモータに機能連結されたポリヌクレオチドを含んでいる。さらに好ましくは、本発明の発現ベクターは原核生物プロモータに機能連結されたポリヌクレオチドを含んでいる。あるいは、本発明の発現ベクターは真核生物プロモータであるエンハンサ−プロモータに機能連結されたポリヌクレオチドを含み、この発現ベクターはカルボキシル末端アミノ酸の 3' 位置にあり且つポリペプチドの転写ユニット内にあるポリアデニレーション信号を含んでいる。
本発明のさらに別の実施例では、イプシロンオピオイド受容体ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドをトランスフェクションした組換え宿主細胞が提供される。好ましくは、本発明の組換え宿主細胞には配列 No.1または配列 No.3のポリヌクレオチドがトランスフェクションされる。本発明の宿主細胞は真核生物の宿主細胞であるのが好ましい。さらに、本発明の組み換え宿主細胞は酵母細胞であるのが好ましく、あるいは本発明の組み換え宿主細胞はCOS、CHOまたはBHK細胞である。本発明のさらに別の特徴では、本発明の組み換え宿主細胞は原核生物の宿主細胞である。別の実施例では、本発明の組み換え宿主細胞は Escherichia coli のDH5α株のバクテリア細胞である。より好ましくは、組み換え宿主細胞は組み換え宿主細胞内で機能する調節信号の転写制御下にあるポリヌクレオチドで構成され、この調節信号はエプシロンオピオイド受容体ポリペプチドの発現を適当に制御して、必要な全ての転写および転写後の変性を可能にする。
本発明はさらに、エプシロンオピオイドポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを細胞にトランスフェクションして形質転換された宿主細胞を作り、この形質転換された宿主細胞をポリペプチドの発現に十分な生物学的条件下に維持する操作を含む、エプシロンオピオイド受容体ポリペプチドの調製方法を提供する。形質転換される宿主細胞は真核細胞であるのが好ましい。この真核細胞はCOS、CHOまたはBHK細胞であるのが好ましく、あるいは、宿主細胞を原核細胞にすることもできる。好ましい原核細胞は Escherichia coli のDH5α株のバクテリア細胞である。さらに好ましくは、被形質転換細胞にトランスフェクションされるポリヌクレオチドは配列 No.1または配列 No.3のヌクレオチド塩基配列で構成される。
本発明はさらに、エプシロンオピオイド受容体ポリペプチドと免疫反応する抗体を提供する。発明抗体はモノクロナル抗体であるのが好ましい。エプシロンオピオイド受容体ポリペプチドは配列 No.2または配列 No.4のアミノ酸残基配列を含むのが好ましい。
本発明はさらに、(a)エプシロンオピオイド受容体ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを組み換え宿主細胞にトランスフェクションし、 (b)この宿主細胞をポリペプチドの発現に十分な条件下で培養し、 (c)ポリペプチドを回収し、 (d)このポリペプチドに対する抗体を作る操作を含むエプシロンオピオイド受容体ポリペプチドと免疫反応する抗体の製造方法を提供する。宿主細胞は配列 No.1または配列 No.3のポリヌクレオチドを用いてトランスフェクションするのが好ましい。あるいは、合成ポリペプチドを用いて (a)、(b) および(c) 段階を省略することもできる。本発明の他の対象は上記の方法に従って調製された抗体にある。
本発明はエプシロンオピオイド受容体ポリペプチドを検出する方法を提供する。本発明方法はポリペプチドを上記方法で調節した抗体と免疫反応させて抗体−ポリペプチド結合体を作り、この結合体を検出する。
本発明のさらに別の実施例では、本発明はエプシロンオピオイド受容体ポリペプチドをコードするメッセンジャーRNA転写物の検出方法を提供する。本発明方法では (a)エプシロンオピオイド受容体ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列とメッセンジャーRNAの転写物とをハイブッド化させて二本鎖分子(duplex)を作り、(b) この二本鎖分子を検出する。本発明はさらに、エプシロンオピオイド受容体ポリペプチドをコードするDNA分子の検出方法を提供する。この方法では(a)エプシロンオピオイド受容体をコードするポリヌクレオチドとDNA分子とをハイブリッド化させて二本鎖分子を作り、(b)この二本鎖分子を検出する。
本発明の別の観点から、本発明は生物試料中のエプシロンオピオイド受容体ポリペプチドの存在を検出するための診断用検査キットを提供する。この検査キットは少なくとも1回の検査を行うのに十分な量のエプシロンオピオイド受容体ポリペプチドと免疫反応する第1の抗体を収容した第1容器を含み、さらに、第1の抗体と免疫反応する第2の抗体を収容した第2の容器を有しているのが好ましい。本発明の検査キットで用いられる抗体はモノクロナル抗体であるのが好ましく、また、第1の抗体は固体担体に固定されているのが好ましい。さらに好ましくは第1および第2の抗体はインジケータを構成し、このインジケータは放射化ラベルまたは酵素であるのが好ましい。
本発明の別の観点から、本発明は生物試料中のエプシロンオピオイド受容体ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの存在を検出するための診断用検査キットを提供する。この検査キットは配列 No.1または配列 No.3の少なくとも10個の隣接するヌクレオチド塩基より成る断片と同一またはそれに相補な第2のポリヌクレオチドを含む第1の容器を備えている。
本発明の別の観点から、本発明は生物学試料中のエプシロンオピオイド受容体ポリペプチドと免疫反応する抗体の存在を検出するための診断用検査キットを提供する。この検査キットは少なくとも1回の検査を行うのに十分な量の、抗体と免疫反応するエプシロンオピオイド受容体ポリペプチドを含む第1の容器を備えている。
本発明の別の観点から、本発明はエプシロンオピオイド受容体ポリペプチドと相互作用する能力を有する物質のスクリーニング方法を提供する。この方法ではエプシロンオピオイド受容体ポリペプチドを加えて、選択された物質のオピオイド受容体ポリペプチドとの相互作用能力を調べる。
本発明の好ましい具体例では、エプシロンオピオイド受容体ポリペプチドは、エプシロンオピオイド受容体ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを宿主細胞をトランスフェクションして形質転換細胞を作り、得られた形質転換された細胞をオピオイド受容体ポリペプチドの発現に十分な生物学的条件下に維持する。宿主細胞のトランスフェクションで使用するポリヌクレオチドは配列 No.1または No.3のヌクレオチド配列を含むのが好ましい。
I.本発明
本発明はDNA断片と、精製ポリペプチドと、抗体の製造方法と、宿主細胞のクローニングおよびそれを用いた組換えによって組み換えエプシロンオピオイド受容体を得る方法とを提供する。すなわち、従来の標準的な遺伝学手法や公知の分子生物学的手法をエプシロンオピオイド受容体に適用した場合の問題点が解決される。従って、本発明はエプシロンオピオイド受容体の組成物と、その調製および利用方法に関するものである。 本発明の受容体は6,7-ベンゾモルファンとβ−エンドルフィンとに対して高い親和性を有するが、μ、δおよびκオピオイド受容体リガンドに対する親和性は低く、エプシロン(ε)受容体の親和性プロフィールに一致している。このε受容体遺伝子はコーディング領域にイントロンを持たず、クロモソーム10上のq11.2−q21.1に位置し、μ、δおよびκ受容体のcDNAクローンとの間に相同性を有する。ε受容体をコードするmRNAは大脳皮質、前頭皮質、視床下部および下垂体で検出される。in-situ ハイブリダイゼーション組織化学によって、下垂体前葉腺の側方周辺部分 (lateral wings of the anterior pituitary gland)に選択的な局在化を示す下垂体内のmRNA転写物が明らかになった。ヒトのε受容体のクローニングおよび特徴付けによって、オピオイドの作用、特にこの受容体によって媒介されると考えられている脊椎痛覚消失(analgesia) の研究が大きく前進する。
II.ポリヌクレオチド
A.エプシロンオピオイド受容体ポリペプチドをコードする単離・精製されたポリヌクレオチド
本発明の一つの観点から、本発明はエプシロンオピオイド受容体ポリペプチドをコードする単離・精製されたポリヌクレオチドを提供する。
「エプシロンオピオイド受容体」という用語はオピオイドおよびその類似物に結合する受容体を意味する。受容体の分類・命名は主として結合の研究に基づいて行われるために、新規な医薬が開発される時に、特定の受容体に与えられた分類または名前が変更され場合があるということは理解できよう。すなわち、エプシロンオピオイド受容体という名前はここで開示したポリペプチドの薬学的挙動を類別するために便宜的に使用したに過ぎない。
本発明の好ましい実施例では、本発明のポリヌクレオチドはDNA分子である。さらに好ましくは、本発明のポリヌクレオチドは配列 No.2または配列 No.4のアミノ酸残基配列を含むポリペプチドをコードする。最も好ましくは、本発明の単離・精製されたポリヌクレオチドは配列 No.1または配列 No.3のヌクレオチド塩基配列を含む。
数種類の齧歯類のオピオイド受容体(OR)、δ、κおよびμがクローニングされている(Yasuda 達、1993; Chen達、1993) 。マウスのδオピオイド受容体の3番目および7番目のトランスメンブレン(TM)領域をコードするヌクレオチド配列に基づいた2つの変性オリゴヌクレオチドが調製された。このORをコードする遺伝子構造はこれまで報告されていない。過去にクローニングされた多くのG蛋白結合受容体は単一のエキソン上にコードされているので、それらのオリゴヌクレオチドは、ポリメラーゼチェーンリアクション(PCR)によってヒトゲノムDNAを増幅するために利用された(Hazum達、1979) 。増幅されたDNA(サイズは 500〜1000bp)をブルースクリプトプラスミドにサブクローニングし、得られた150 個のクローンについて配列決定を行った。得られたヌクレオチド配列からPCRによるゲノムのクローンはいずれも齧歯類のORのヒトのオルソローグをコードしていないことが明らかになった。1つのクローン# 12がδ、μおよびκORと同一性があった。このPCRによって得られる断片(540bp) によってコードされた遺伝子の全長を得るために、ヒトゲノムライブラリーをスクリーニングし、このスクリーニングによって18個の陽性クローンを得た。オリジナルのPCRオリゴヌクレオチドを用いてこれらのファージクローンについて高速PCR分析を行った結果、クローン#12 の配列を含む1つのファージを同定することに成功した。このファージを精製し、クローン由来の断片(4.5kb) をブルースクリプトプラスミドにサブクローニングして配列を決定した。
HG-12 と名付けられたこのゲノムクローンは、327 アミノ酸の蛋白質をコードするイントロンを持たない981 ヌクレオチドのリーディングフレームを含んでいた(図1参照)。クローン#12 の配列に特異的な2つのオリゴヌクレオチドを用いたPCR分析によって、チンパンジー、サル、ラットおよびマウスのゲノムDNAに同じ寸法を有するDNA断片が確認された。 「ポリヌクレオチド」という用語はホスホジエステル結合によって連結されたヌクレオチド配列を意味する。ここではポリヌクレオチドは5’から3’の方向に表される。本発明のポリヌクレオチドは約 680から約数十万塩基対で構成できるが、約680 から約150,000 の塩基対を含むのが好ましい。特定のポリヌクレオチドの好ましい長さは以下で示す。
本発明のポリヌクレオチドはデオキシリボ核酸(DNA)分子でもリボ核酸(RNA)分子でもよい。ポリヌクレオチドがDNA分子の場合には、その分子は遺伝子またはcDNA分子でよい。なお、ヌクレオチド塩基は一文字のコード:アデニン(A)、グアニン(G)、チミン(T)、シトシン(C)、イノシン(I)およびウラシル(U)で表してある。
本発明のポリヌクレオチドは、当業者に周知の標準的な方法を用いて調製することができる。本発明のエプシロンオピオイド受容体ポリペプチドをコードするcDNA分子の調製法は実施例1と実施例2に記載してある。ポリヌクレオチドはラムダファージ法を用いてゲノムDNAラブラリーから調製することもできる。
本発明の別の観点から、本発明はエプシロンオピオイド受容体ポリペプチドをコードする単離・精製されたポリヌクレオチドを提供する。このポリヌクレオチドはポリペプチドを発現する細胞からcDNAクローンのライブラリを作り、ポリペプチドをコードするRNAより調製されるラベルされたcDNAを用いてライブラリをスクリーニングし、プローブにハイブッド化したクローンを選択する方法によって調製できる。本発明のポリヌクレオチドは上記の方法で調製するのが好ましい。さらに好ましくは、本発明のポリヌクレオチドは配列 No.2または配列 No.4のアミノ酸残基配列を有するポリペプチドをコードする。ポリペプチドは配列 No.1または配列 No.3のヌクレオチド配列を含むのがさらに好ましい。
B.プローブおよびプライマー
本発明の別の観点から、本発明のDNAの配列情報から、本発明開示の選択されたポリヌクレオチドの遺伝子配列と特異的にハイブリッド化可能な相対的に短いDNA(またはRNA)配列を調製することができる。この観点から、例えば配列 No.1または配列 No.3等の選択したヌクレオチド配列に基づいて適当な長さの核酸プローブを調製する。エプシロンオピオイド受容体をコードするポリヌクレオチドと特異的にハイブリッド化可能なこれら核酸プローブを用いることは各実施例で特に有用である。特に、各種の検査において試料中の相補的配列の存在の検出にこのプローブを用いることができる点は重要である。 特定の実施例ではオリゴヌクレオチドプライマーを使用するのが有利である。このようなプライマー配列はPCR法を用いて哺乳類細胞からエプシロンオピオイド受容体ポリペプチドをコードする所定遺伝子断片またはポリヌクレオチドを検出、増幅または変異する際に本発明のポリヌクレオチドを用いるために設定される。
本発明の利点を得るために、ハイブリッド化試験または検査で用いる好ましい核酸配列はエプシロンオピオイド受容体ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの少なくとも10〜70程度の長さのヌクレオチド、例えば配列 No.1または配列 No.3に相補的なプローブ分子を含む。長さが少なくとも10個のヌクレオチドは断片が安定かつ選択的な二本鎖分子を構成するのに十分な長さの寸法である。ハイブリッドの安定性および選択性を増して生成したハイブリッド分子の質および程度を良くするためには、一般に長さが10以上の塩基範にわって相補な配列を有する分子が好ましい。一般には遺伝子相補性が25〜40ヌクレオチド、55〜70ヌクレオチド、必要な場合にはそれ以上の長さの核酸分子を設計するのが好ましい。そうした断片は例えば化学的方法または本明細書の一部を成す米国特許第 4,603,102号に記載のPCR法等の核酸再生法を用いて直接合成するか、適当な挿入部位と制限酵素部位とを有する組み換えプラスミドから所定DNA断片を切り出すことによって容易に調製することができる。
本発明の別の観点から、本発明は配列 No.1または配列 No.3の少なくとも10個の隣接する塩基より成る断片と同一またはそれと相補な塩基配列を含む単離・精製されたポリヌクレオチドを提供する。このポリヌクレオチドはエプシロンオピオイド受容体ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドにハイブリッド化する。単離・精製されたポリヌクレオチドは配列 No.1または配列 No.3の少なくとも25〜70個の隣接する塩基より成る断片と同一またはそれに相補な塩基配列を含むのが好ましい。例えば、本発明のポリヌクレオチドは本発明のヌクレオチド配列の40〜55個の隣接する塩基と同一またはそれと相補な塩基の断片を含むことができる。
従って、本発明ポリヌクレオチドプローブ分子は相補な遺伝子範囲を有する二本鎖分子を選択的に形成する能力を利用する。用途に応じて標的配列に対するプローブの選択性を達成するための各種ハイブリッド化条件を使用することが必要になるが、高い選択性が要求される用途の場合には一般にハイブリッドを生成するために比較的厳しい条件が用い、例えば、比較的低い塩および/または高温条件、例えば温度50℃〜70℃、0.02M〜0.15MNaClで得られるような条件を選択する。これらの条件は選択的があり、プローブと鋳型または標的ストランドとの間に許される不一致は極めて小さい。
いくつかの用途、例えば、基礎となる鋳型にハイブリダイズされた変異プライマーストランドを用いて変異体を調製する場合あるいは機能的に同等な別の細胞からエプシロンオピオイド受容体ポリペプチドをコードする配列を単離する場合などではヘテロ二本鎖分子の生成を可能にするためにより緩いハイブリッド化条件が当然必要になる。これらの状況では塩濃度を0.15M〜0.9 M、温度を20℃〜70℃にした条件を用いること望ましい。そして、クロスハイブリッド化する種は対照ハイブリッド化に対するプラスのハイブリッド化信号として容易に同定される。いずれの場合も一般に、温度上昇と同様にハイブリッド二本鎖分子を不安定化させるホルムアミドの添加量を増加させて条件をより厳しくできる。すなわち、ハイブリッド化条件は容易に操作でき、従って、所望結果に応じて選択できる。
本発明の他の実施例では、配列 No.1または配列 No.3の少なくとも10個の隣接する塩基の断片と同一またはそれに相補な塩基配列を含む単離・精製されたポリヌクレオチドが提供される。本発明のポリヌクレオチドは、配列 No.1または No.3、あるいは配列 No.1または No.3の相補体とハイブリダイズする。単離・精製されたポリヌクレオチドは配列 No.1または配列 No.3の少なくとも25〜70個の隣接する塩基の断片と同一またはそれに相補な塩基配列を含む。例えば本発明のポリヌクレオチドは配列 No.1または配列 No.3の40〜55個の隣接する塩基と同一またはそれ相補な断片を含む。
本発明の他の実施例では、本発明のポリヌクレオチドがハイブリッド生成を検出するための適当な標識物質と組み合わせて用いられる。標識物質としては放射性リガンド、酵素リガンドまたは検出信号を与えることの可能な他のリガンド、例えばアビジン/ビオチンなどの種々のものが公知である。
一般に、本発明のハイブリッド化プローブは溶液および固相を用いたハイブリッド化の両方で利用できる。固相を用いた実施例では試験DNA(またはRNA)を所定のマトリクスまたは表面に吸着・固定させる。次いで、固定した核酸を所定プローブを用いて所望の条件下で特異的ハイブリッド化する。選択条件は公知方法と同様に特定環境および必要な基準(例えばG+C含有量、標的核酸の種類、核酸の供給源、ハイブリッド化プローブの寸法など)に依存する。マトリクスを洗浄して特異的に結合しないプローブ分子を除いた後、標識物質を用いて特異的ハイブリダイゼーションを検出、定量する。
III.エプシロンオピオイド受容体
本発明の1つの実施例では、本発明は単離・精製したエプシロンオピオイド受容体ポリペプチドを提供する。本発明のエプシロンオピオイド受容体ポリペプチドは組み換えポリペプチドであるのが好ましく、さらに配列 No.2または配列 No.4のアミノ酸残基配列を含むのが好ましい。エプシロンオピオイド受容体ポリペプチドは約 500以下のアミノ酸残基を含むのが好ましく、さらに約 400以下のアミノ酸残基を含むのが好ましい。
図1はヒトのクローン12から得られたアミノ酸残基を示している。このアミノ酸配列の疎水性分析から、G蛋白質が結合する受容体遺伝子に特徴的な7つのトランスメンブレン(TM)領域が示され、全体的にはこの蛋白質配列はORに最も近い。HG−12によってコードされているアミノ酸配列を予めクローニングされたORと比較することによって、同一のアミノ酸および保守的に置換されたアミノ酸はほとんどが7つの推定されたTM領域内にあることが示された。トランスメンブレン領域内および蛋白質全体で包括的に見た場合の、HG−12によってコードされるアミノ酸と同一のアミノ酸のパーセンテージはδ40%および37%、κ43%および35%(図3参照)である。HG−12によってコードされる蛋白質は、アミノ基末端に推定のグリコシレーション部位を3箇所含み、プロテインキナーゼCおよびプロテインキナーゼAによるリン酸化のためのコンセンサス配列を含む。3番目のTM領域のアスパラギン酸(これは他のOR中にも存在する)およびカテコールアミン受容体はリガンド結合部位の一部を構成することができる。
ポリペプチドはアミノ酸残基配列として記載した。この配列は左から右へアミノ末端からカルボキシル末端の方向を表している。標準的命名法ではアミノ酸残基配列は下記に示すように1文字または3文字コードで表現される:
アミノ酸残基 3文字コード 1文字コード
アラニン Ala A
アルギニン Arg R
アスパラギン Asn N
アスパラギン酸 Asp D
システイン Cys C
グルタミン Gln Q
グルタミン酸 Glu E
グリシン Gly G
ヒスチジン His H
イソロイシン Ile I
ロイシン Leu L
リジン Lys K
メチオニン Met M
フェニルアラニン Phe F
プロリン Pro P
セリン Ser S
スレオニン Thr T
トリプトファン Trp W
チロシン Tyr Y
バリン Val V
本発明のポリペプチドは構造を変化、変更することができ、それでもなおオピオイド受容体に類似の特性を有する分子を得ることができる。例えば、受容体活性を大きく損なうことなく特定のアミノ酸を別のアミノ酸で置換することができる。このポリペプチドの生物学的機能活性を決めるのは相互作用能力とポリペプチドの性質であるので、ポリペプチド配列(または、その基礎となるDNAコード配列)中の特定アミノ酸を置換でき、類似の特性を有するポリペプチドを得ることができる。
変更時には、アミノ酸のハイドロパシック指数(hydropathicindex)を考慮することができる。ポリペプチドに生物学的な相互作用機能を付与する上でのハイドロパシックアミノ酸インデックスの重要性は従来法で一般に知られている(Kyte, J. 、R.F. Doolittle, 1982) 。ある種のアミノ酸は類似のハイドロパシックインデックスまたはスコアを有する他のアミノ酸で置換することができ、類似の生物学的活性を有するポリペプチドが得られることが分かっている。各アミノ酸にはその疎水性および電荷特性に基づいて下記ハイドロパシック指数が割当てられる:
イソロイシン(+4.5);バリン(+4.2);ロイシン(+3.8);フェニルアラニン(+2.8);システイン/シスチン(+2.5);メチオニン(+1.9);アラニン(+1.8);グリシン(-0.4);スレオニン(-0.7);セリン(-0.8);トリプトファン(-0.9);チロシン(-1.3);プロリン(-1.6);ヒスチジン(-3.2);グルタメート(-3.5);グルタミン(-3.5);アスパルテート(-3.5);アスパラギン(-3.5);リジン(-3.9);アルギニン(-4.5) アミノ酸の相対的なハイドロパシック特性が生成するポリペプチドの2次構造を決定し、この2次構造はポリペプチドと他の分子、例えば酵素、基質、受容体、抗体、抗原等との相互作用を規定すると考えられている。アミノ酸を類似のハイドロパシック指数を有する別のアミノ酸で置換しても機能的に同等なポリペプチドが得られることは知られている。この変更はハイドロパシック指数が±2以内、特に±1以内、さらに好ましく±0.5 以内のアミノ酸と置換するのが好ましい。
類似アミノ酸との置換は親水性を基礎に行うことができる。これは生成した生物学的に同等な機能を有するポリペプチドまたはペプチドを免疫学的な用途で用いる場合に特にいえる。本明細書の一部を成す米国特許第 4,554,101号には、隣接するアミノ酸の親水性に支配されるポリペプチドの局部平均親水性の最大値は免疫原性と抗原性すなわちポリペプチドの生物学的特性に関連するということが記載されている。
米国特許第 4,554,101号に記載のように、アミノ酸残基には下記親水性値が割当てられている:アルギニン(+3.0);リジン(+3.0);アスパルテート(+3.1 ±1) ;グルタメート (+3.0±1);セリン(+0.3);アスパラギン(+0.2);グルタミン(+0.2);グリシン(0) ;プロリン(-0.5 ±1);スレオニン(-0.4);アラニン(-0.5);ヒスチジン(-0.5);システイン(-0.1);メチオニン(-1.3);バリン(-1.5);ロイシン(-1.8);イソロイシン(-1.8);チロシン(-2.3);フェニルアラニン(-2.5);トリプトファン(-3.4)。アミノ酸は類似の親水性を有する別のアミノ酸で置換することができ、置換しても生物学的に同等で、特に免疫学的に同等なポリペプチドが得られることは知られている。この変更時には、親水性値が±2以内、好ましくは±1以内、さらに好ましくは±0.5 以内のアミノ酸で置換するの好ましい。
以上、要点を説明したように、アミノ酸の置換は一般にアミノ酸側鎖の置換基の類似性、例えば疎水性、親水性、電荷、寸法等の相対的類似性を基礎に行う。上記各特性を考慮した置換例は当業者には周知であり、例えばアルギニンとリジン;グルタミンとアスパルテート;セリンとスレオニン;グルタミンとアスパラギンおよびバリン、ロイシンおよびイソロイシンが知られている(表1参照)。従って、本発明の他の対象はエプシロンオピオイド受容体ポリペプチドの機能・生物学的均等物にある。
[表1]
元の残基 置換例
Ala Gly;Ser
Arg Lys
Asn Gln;His
Asp Glu
Cys Ser
Gln Asn
Glu Asp
Gly Ala
His Asn;Gln
Ile Leu;Val
Leu Ile;Val
Lys Arg
Met Met;Leu ;Tyr
Ser Thr
Thr Ser
Trp Tyr
Tyr Trp;Phe
Val Ile;Leu
生物学的均等物または機能的に同等のポリペプチドは部位特異的変異処理を用いて調製することもできる。部位特異的変異処理は基本のDNAの部位特異的変異によって第2世代のポリペプチドまたはその配列より得られる生物学的に均等な機能を有するポリペプチドまたはペプチドの調製に有用である。上記の場合と同様に、この変更もアミノ酸の置換が望ましい場合に望ましい。この方法は変形配列の調製および試験のための容易な手段を提供する。例えば上記の点を考慮してDNAにヌクレオチド配列の変化を導入することができる。部位特異的変異処理を用いると所望変異体のDNA配列をコードした特定のオリゴヌクレオチド配列と、十分な数の隣接するヌクレオチドとを用いて変異体を調製することができ、欠失接合点の両側に跨がった状態で安定な二本鎖分子を形成するのに十分な長さと配列の複雑さを有するプライマー配列を作ることができる。典型的には、配列の接合点の両側の約5〜10残基が変化した長さが約17〜25ヌクレオチドのプライマーが好ましい。
一般に、部位特異的変異処理法は(Adelman達、1983)に代表されるように従来法として周知である。この方法では通常一本鎖および二本鎖のいずれの状態で存在可能なファージベクターを用いる。部位特異的変異処理で一般に有用なベクターには例えばM13ファージ(Messing達、1981) 等が含まれ、これらのファージは市販されており、その使用法は当業者に周知である。
一般に、部位特異的変異処理では先ず最初に所定のエプシロンオピオイド受容体ポリペプチド配列の一部または全部をコードするDNA配列を有する一本鎖ベクターを作製する。所望の変異配列を含むオリゴヌクレオチドプライマーを一般には例えばクレアの方法(Crea 達1978) を用いて合成する。次いでこのプライマーを一本鎖ベクターにアニールし、E. coli ポリメラーゼIのクレノー断片等の酵素を用いて抽出して、変異を含むストランドの合成を完了する。従って、一方の鎖が変異していない元の配列をコードし、第2の鎖が所望の変異を含んだヘテロ二本鎖分子(heteroduplex)ができる。次いで、このヘテロ二本鎖ベクターを用いて E. coli細胞等の適当な細胞を形質転換して変異を有する組換えベクターを含むクローンを選択する。市販のキットにはオリゴヌクレオチドプライマーを除く全ての必要な試薬が入っている。
エプシロンオピオイド受容体ポリペプチドにアミノ酸残基を添加したり欠損させたりすることは、標準的な分子生物学的手法を用いて、受容体の機能を変えずに行うことができる。例えば、切断によってエプシロンオピオイド受容体のいくつかの部分を除去して短いオピオイド受容体を作ることができる。切断によって短くされた受容体もリガンド結合性や他の蛋白質(G蛋白質、アデニリルサイクラーゼ等)との相互作用能力等のエプシロンオピオイド受容体の特性を保持している。切断によって短くした機能性蛋白質のホスホジエステラーゼ、イオンチャンネルおよび膜伝達が報告されている。切断によって短くした受容体とは、より短い受容体またはその部分を作製するために野性型の受容体からアミノ酸を取り除いた受容体を意味する。キメラ受容体とは、受容体にアミノ酸を追加した受容体を意味する。キメラ受容体は野性型の受容体より短いか、長いか、同じ長さを有している。
切断によって短くした受容体およびキメラ受容体の機能活性は多くの受容体系で示されている。特に、切断によって短くしたアドレナリン作動性受容体およびキメラのアドレナリン作動性受容体(構造的にはオピオイド受容体に類似)が野性型のアドレナリン作動性受容体の機能特性を保持するということは分かっている。
鳥類のβアドレナリン作動性受容体の長いカルボキシル末端のほとんどの部分は、受容体のリガンド結合特性および調節特性を変えずに欠損または蛋白分解によって除去することができる。切断によって短くした5種類のβアドレナリン作動性受容体の作動剤および拮抗剤の両方に対するリガンド結合特性は野性型受容体の結合特性と類似していることは知られている。さらに、切断によって短くしたアドレナリン作用性受容体はアデニリルサイクラーゼ活性を活性化する。すなわち、切断によって短くしたβアドレナリン作動性受容体は作用剤の存在下で野性型受容体によって活性化される刺激よりも大きくアデニリルサクラーゼ活性を刺激する(Parker 達、1991)。
αアドレナリン作動性受容体についても類似の結果が得られた。切断によって短くしたαアドレナリン作動性受容体は野性型αアドレナリン作動性受容体と同じ程度にホスファチジルイノシトール加水分解を活性化する(Cotecchia達、1990)。
さらに、機能的キメラ受容体は多くの研究者によって作製されている。機能的アドレナリン作動性キメラ受容体はα2およびβ2アドレナリン作動性受容体の断片とスプライシングすることによって作製されている(Kobilka達、1988)。機能的キメラは以下のような受容体についても作製されている:β1受容体とβ2受容体との間(Frielle達、1988; Marullo達、1990); m2ムルカリン受容体とm3ムスカリン受容体との間(Wess 達1990);m1ムスカリン受容体とベータアドレナリン作動性受容体との間(Wong 達、1990); D2ドーパミン受容体とm1ムスカリン受容体との間(England達、1991) ;黄体形成ホルモンとβアドレナリン作用性受容体との間(Moyle達、1991); NK1サブスタンスP受容体と NK3サブスタンスP受容体との間 (Gether達; 1993)および血小板由来成長因子受容体と上皮成長因子受容体との間(Seedorf達、1991) 。
キメラのエプシロンオピオイド受容体は第2の受容体の断片をエプシロン受容体にスプライシングすることによって作ることができる。2つの受容体は互いに類似していてもよい。キメラのエプシロンオピオイド受容体を作る際の理想的なヌクレオチド配列ソースは他のオピオイド受容体、例えばσ、δ、κおよびμオピオイド受容体である。例えば、エプシロンオピオイド受容体のトランスメンブレン領域はσ、δまたはκオピオイド受容体由来の類似のトランスメンブレン領域で置き換えることができる。第2の受容体のヌクレオチドソースはオピオイド受容体に限定されるものでない。キメラ受容体はエプシロンオピオイド受容体と他類似の受容体、例えばアセチルコリン、アデノシン、アドレナリン性、アンギオテンシン、ボンバジン、ブラジキニン、カナビノイド、ドーパミン、エンドセリン、ヒスタミン、インターロイキン、黄体形成ホルモン、ニューロメディンK、ニューロペプチドY、オドランド、プロスタグランジン、パラチロイドホルモン、セロトニン、ソマトスタチン、サブスタンスK、サブスタンスP、トロンビン、トロンボキサンA2、チロトロピン放出ホルモンおよびバソプレッシン受容体から作ることができる。
本発明のエプシロンオピオイド受容体ポリペプチドは特定のソースに限定されるものではない。すなわち本発明は各種ソースからエプシロンオピオイド受容体ポリペプチドの遺伝子を一般に検出・単離するものである。エプシロンオピオイド受容体ポリペプチドグループの多くの種が本発明の組成物および方法を用いた検出・単離に適していると思われる。
本発明のポリペプチドは、当業者に周知の標準的な手法によって調製される。すなわち、そのポリペプチドを含むことが分かっている組織から単離・精製し、さらに形質転換細胞を用いてそのポリペプチドをコードするクローニングされたDNAからの発現を行う方法で調製できるが、この方法に限定されるものではない。
オピオイド受容体ポリペプチドはヒトを含むほとんど全ての哺乳類に見られる。他の受容体の場合と同様に各種でオピオイド受容体の構造および機能にはほとんど差はないものと思われる。種間で違いがある場合にの相違点の確認は当業者が行い得ることである。従って、本発明の他の対象は哺乳類由来のエプシロンオピオイド受容体ポリペプチドにある。好ましい哺乳類は齧歯類またはヒトである。
IV.発現ベクター
本発明の別の実施例で本発明はエプシロンオピオイド受容体ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクターを提供する。本発明の発現ベクターは、配列 No.2または配列 No.4のアミノ酸残基配列を含むポリペプチドをコードしたポリヌクレオチドを含んでいるのが好ましい。さらに好ましくは本発明の発現ベクターは配列 No.1または配列 No.3のヌクレオチド塩基配列を含むポリヌクレオチドを含んでいる。さらに、本発明の発現ベクターはエンハンサ−プロモータに連結されたポリヌクレオチドを含むのが好ましい。さらに、本発明の発現ベクターは原核生物のプロモータに連結されたポリヌクレオチドを含むのが好ましい。あるいは、本発明の発現ベクターは真核生物のプロモータであるエンハンサ−プロモータに連結されたポリヌクレオチドを含む。発現ベクターはさらに、カルボキシル基末端のアミノ酸の3’の位置にあってコードされたポリペプチドの転写ユニット内にあるポリアデニレーション信号を含む。
プロモータは、転写の開始される地点(すなわち転写開始部位)の前(上流側)の通常約 100個のヌクレオチド対内にあるDNA分子領域である。その領域は異なる遺伝子間でも類似の相対的位置にある複数のDNA配列要素を含んでいる。「プロモータ」という用語は従来上流プロモータ領域、プロモータ領域または一般化された真核生物のRNAポリメラーゼII転写ユニットのプロモータとよばれるものを含む。
他の形式のディスクリートな転写調節配列要素はエンハンサである。エンハンサは特定のコード化領域(例えば遺伝子)に時間、位置および発現レベルの特異性を与える。エンハンサの主たる機能は、そのエンハンサに結合した転写因子を含む細胞内でコード配列の転写レベルを増加させることにある。プロモータとは異なり、エンハンサはプロモータが存在する限り転写開始部位から違った距離にある時に機能することができる。
「エンハンサ−プロモータ」という用語はエンハンサ要素とプロモータ要素とを両方含む複合単位を意味する。エンハンサ−プロモータは、少なくとも1つの遺伝子生成物をコードするコード配列に連結されている。「連結されている」という用語はエンハンサ−プロモータが、あるコード配列の転写がこのエンハンサ−プロモータによって制御・調節されるような状態でそのコード配列に作動(operatively) 接続されていることを意味する。エンハンサ−プロモータをコード配列に連結する手段も周知である。さらに、周知のように、転写が制御されるコード配列に対する正確な向きと位置はエンハンサ−プロモータの特異性に依存する。すなわち、TATAボックスミニマルプロモータは、通常、転写開始部位から約25〜約30塩基対上流に位置し、上流のプロモータ要素は、通常、転写開始部位から約 100〜約200 塩基対上流に位置する。これに対してエンハンサは開始部位よりも下流に位置することができ、その部位からかなり離れて位置することができる。
本発明のベクター作製に用いられるエンハンサ−プロモータは形質転換すべき細胞内で発現をさせることが可能な任意のエンハンサ−プロモータでよい。特性の良く知られたエンハンサ−プロモータを用いることによって、遺伝子産物の発現レベルとパターンを最適化することができる。
発現ベクターのコード配列は転写終結領域に連結されている。RNAポリメラーゼは、ポリアデニル化が起こる部位を介してコード化DNA配列を転写する。一般に、ポリアデニル化部位から数百塩基対下流に位置するDNA配列が転写を終らせる働きをする。このDNA配列は転写終結領域とよばれる。この領域は転写されたメッセンジャーRNA(RNA)を効率良くポリアデニル化するのに必要である。転写終結領域も周知である。好ましい転写終結領域は牛成長ホルモン遺伝子由来のものである。
発現ベクターはエプシロンオピオイド受容体ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む。このポリペプチドは、エプシロンオピオイド受容体ポリペプチドをコードするヌクレオチド塩基の配列を、上記断片をオピオイド受容体ポリペプチド以外のものをコードするポリヌクレオチド断片と区別するのに十分な長さで含有する。本発明のポリペプチドはさらに、変異したアミノ酸配列(例えば相対的ハイドロパシック値を交換した時を考えて選択した変異を有するアミノ酸配列) を有する生物学的かつ機能的に同等なポリペプチドまたはペプチドをコードすることができる。これら変異配列は天然ソースから単離されたものか、部位特異的変異処理等の変異処理法を用いて上記配列内に誘導される。
本発明の発現ベクターは配列 No.2または配列 No.4のアミノ酸残基配列を含むポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含むのが好ましい。発現ベクターは上記の任意のエプシロンオピオイド受容体ポリペプチドのエプシロンオピオイド受容体ポリペプチドコード領域そのものを含むか、そのようなエプシロンオピオイド受容体ポリペプチドの基本コード領域に所定の変更または変異を加えたコード領域を含むことができる。あるいは、本発明ベクターまたは断片は同様に基本コード領域を含むより大きなポリペプチドまたはポリペプチドをコードすることができる。いずれの場合も、コドンの冗長性および生物学的機能の同等性から、本発明は上記ポリペプチド配列に相当する特定のDNA分子に限定されるものではないということは理解できよう。
ベクターの例としてはpCMV6bおよびpCMV6c (ChironCorp., Emeryville CA) とpRc/CMV (Invitrogen, San Diego, CA)を含むpCMVファミリーの哺乳類の発現ベクタを挙げることができる。いくつかのケース、特に個々の哺乳類発現ベクターの場合、得られる構造物はpSV2neo 等の選択マーカを含むベクターを用いた同時形質転換を必要とすることがある。発現ベクターに組み込まれたDNAによってオピオイドポリペプチドを発現するクローンはジヒドロホレートリダクターゼを欠損しているチャイニーズハムスター卵巣の細胞系、例えばDG44への同時形質転換によって検出することができる。 本発明のDNA分子は周知の多くの方法を用いてベクターに組み込むことができる。例えば、ベクターpUC18が特に有用である。また、関連するベクターM13mp18およびM13mp19は本発明のいくつかの実施例でジデオキシシーケンシングを行う時に使用できる。
本発明の発現ベクターは、エプシロンオピオイド受容体ポリペプチドをコードしたDNAそのものを大量製造する手段およびコードされたポリペプチドの調製手段の両方で有用である。本発明のエプシロンオピオイド受容体ポリペプチドを組み換え手法で作る場合には、シャトルシステムとして原核生物または真核生物の発現ベクターを使用することが考えられるが、原核生物系では一般に前駆体ポリペプチドを正しく処理することができず、特に膜関連の真核生物のポリペプチドを正しく処理することができないので、本発明配列は真核生物の宿主中に発現させるのが好ましい。真核生物のエプシロンオピオイド受容体ポリペプチドは本発明を用いて前処理することができる。しかし、DNA断片が真核生物のエプシロンオピオイド受容体ポリペプチドをコードしている場合でも、原核生物による発現にも適用できると考えられる。従って、本発明は真核細胞と原核細胞との間を連絡可能なベクターと組み合わせて使用される。細菌性の宿主細胞と真核生物の宿主細胞とを使用可能にするそうした系は本明細書に記載してある。
真核生物の宿主で本発明の組み換えポリペプチドを発現させる場合には、真核生物の複製源を組み込んだプラスミドのようなベクターを使用するのが最も好ましい。さらに、真核生物系内で発現させるために、オピオイド受容体をコードする配列を効果的な真核生物のプロモータ、例えばチャイニーズハムスター卵巣細胞と組み合わせて使用されるプロモータと隣接させてその影響下に置くのが望ましい。コード配列をプロモータの制御下に位置させるには、真核生物または原核生物いずれのプロモータであっても、一般に必要なことは、ポリペプチドの適切な翻訳用リーディングフレームの翻訳開始部位の5’末端を、3’の約1から約50までのヌクレオチドの間または選択されたプロモータよりも下流に位置させることである。さらに、真核生物の発現を望む場合には、一般に、エプシロンオピオイド受容体ポリペプチドを含む転写ユニットに適当なポリアデニル化部位を導入するのが望ましい。
pRc/CMVベクター(Invitrogen社より入手可能)は、エプシロンオピオイド受容体ポリペプチドを哺乳類細胞中、特にCOS、CHOおよびBHK細胞中で発現させるためのベクターの例である。CMVプロモータの制御下にある本発明のポリペプチドは、哺乳類細胞中で効果的に発現される。
もう1つのベクターの例はpCMVベクターである。pCMVプラスミドは本発明で特に有用な哺乳類発現ベクターのシリーズである。これらのベクターはほぼ全ての培養細胞で用いるように設計されており、SV−40で形質転換されたサルのCOS細胞系で非常に有効に機能する。pCMV1、2、3および5ベクターは各プラスミドのポリリンカー領域にあるいくつかの特有の制限酵素部位について互いに異なっている。pCMV4ベクターはポリリンカーの前の配列に翻訳エンハンサを含むという点でこれら4つのプラスミドと異なっている。pCMV1〜5シリーズのベクターに直接由来するものではないが、機能的に類似のpCMV6bおよびcベクターがシロン社(Chiron Corp., Emeryville, CA)より市販されており、反転されたポリリンカー領域の向き以外は同一である。
pCMVプラスミドの一般成分は以下の通りである。ベクターの中心はpTZ18R(ファルマシア社製)であり、一本鎖DNAを生成するためのバクテリオファージf1の複製起源とアンピシリン耐性の遺伝子を含む。CMV領域はヒトのサイトメガロウィルス(Towne株)の主要蛋白質合成前(immediate early)遺伝子の強力なプロモータ調節領域の−760 から+3までのヌクレオチドで構成されている(Thomsen et al., 1984; Boshart達、1985) 。ヒト成長ホルモン断片(hGH)は、この遺伝子の1533から2157までの配列を占める転写終結信号およびポリアデニル化信号を含む(Seeburg, 1982) 。この断片にはAlu 中間繰り返しDNA配列がある。SV40の複製起源およびpcD−Xプラスミド由来の初期領域プロモータ−エンハンサ(Hind IIからPstI断片)はオカヤマたち(Okayama et al., 1983)によって報告されている。この断片中のプロモータは、転写がCMV/hGH発現カセットから離れる方向に進行するように配向している。
pCMVプラスミドは、ポリリンカー領域の相違および翻訳エンハンサが存在するか否かによって区別することができる。最初のpCMV1プラスミドは、ポリリンカー領域により多くの独特な制限酵素部位を設けるために次第に変更されてきた。pCMV2を作るにはpCMV1の2つのEcoRI 部位の一方を破壊する。pCMV3を作るには、pCMV1は変異させてSV40領域(StuI からEcoRI)から短い断片を欠失させ、それによってポリリンカー内に独特のPstI、SalIおよびBamHI 部位が作る。pCMV4を作るには、CMVプロモータから転写されたmRNAの5’−未翻訳領域に相当する合成DNA断片を加える。この配列は、ポリペプチド合成における開始ファクタに対する必要性を減じることによって翻訳エンハンサーとして機能する(Jobling達、1987; Browning達、1988) 。pCMV5を作るには、pCMV1のSV40起源領域からDNAの断片 (HpaIからEcoRI)を欠損させて、開始ポリリンカー内の部位を全て独特なものにする。
pCMVベクターは、サルのCOS細胞、マウスのL細胞、CHO細胞およびHeLa細胞中での発現に成功している。数種類のサイトバイサイト比較でこれらせCOS細胞内でSV−40ベースのベクターよりも5〜10倍高い発現レベルを達成した。pCMVベクターは、LDL受容体、核ファクター1、Gs アルファポリペプチド、ポリペプチドホスファターゼ、シナプトフィジン、シナプシン、インスリン受容体、インフルエンザヘマグルチニン、アンドロゲン受容体、ステロール26ヒドロキシラーゼ、ステロイド17および21ヒドロキシラーゼ、シトクロームP-450オキシドリダクターゼ、ベータ−アドレナリン作動性受容体、フォラート受容体、コレステロール側鎖開裂酵素およびその他のcDNAの宿主を発現させるのに使用した。これらのプラスミド中のSV40プロモータは、優性選択マーカー等の他の遺伝子を発現させるためにも使用できるという点に注意されたい。最後に、pCMVのHindII部位とPstI部位との間のポリリンカーには翻訳開始させることが可能なATG配列が存在する。発現プラスミドではできればこのコドンは避けるべきである。腸管外のpCMVIおよびpCMV4ベクターの製造および使用報告がある(Andersson達1989) 。
V.トランスフェクションされた細胞
本発明のさらに別の実施例で、本発明はエプシロンオピオイド受容体ポリペプチドをコードしたポリヌクレオチドを用いて形質転換またはトランスフェクションされた組み換え宿主細胞と、形質転換またはトランスフェクションされた細胞に由来するトランスジェニック細胞が提供される。本発明の組み換え宿主細胞は配列 No.1または配列 No.3のポリヌクレオチドを用いて形質転換されるのが好ましい。DNA分子のような外因性のポリヌクレオチドを用いて細胞を形質転換またはトランスフェクションする手段は周知であり、リン酸カルシウム−またはDEAE−デキストランによって媒介されるトランスフェクション、プロトプラストフュージョン、エレクトロポレーション、リポソームによって媒介される形質転換、直接マイクロインジェクションおよびアデノウィルス感染(Sambrook, Fritsch andManiatis, 1989) などが含まれる。
最も広く用いられている方法は、リン酸カルシウムまたはDEAEデキストランによって媒介されるトランスフェクションである。機構は依然として明らかではないが、トランスフェクションされたDNAがエンドシトシスによって細胞の細胞質に入り込み、核に送られるといわれている。細胞の種類によって最大で90%の培養細胞がトランスフェクションされる。その高い効率のために、リン酸カルシウムまたはDEAEデキストランによって媒介される形質転換は、外来DNAを多数の細胞中で一時的に発現させる必要のある実験で選択される方法である。リン酸カルシウムによって媒介されるトランスフェクションはさらに、外来DNAのコピーを組み込む細胞系を作製するためにも使用され、この外来DNAは通常、宿主細胞のゲノム内に縦一列に並んだ状態で配置される。
プロトプラストフュージョン法では、対象となるプラスミドのコピーを多数含む細菌より得られたプロトプラストを、培養した哺乳類の細胞と直接混合する。細胞膜を融解させた後(通常はポリエチレングリコールを用いて行う)、細菌の中身が哺乳類の細胞の細胞質中に運ばれて、プラスミドDNAが核へ送される。プロトプラストフュージョンは一時的(transient) な発現試験に一般的に使用される細胞系の多くについてはトランスフェクションほど効率的ではないが、DNAのエンドシトシスが効率良く起こらない細胞系に対しては有用である。プロトプラストフュージョンではしばしば宿主のクロモソームに縦に並んで組込まれたプラスミドDNAのコピーが多数生ずる。
高電圧の短い電気パルスを各種の哺乳類および植物細胞に印加して形質膜にナノメートルサイズの孔を形成し、DNAをこの孔を介して、あるいは膜の構成成分の再分配によって孔を閉じて、細胞の原形質に直接取り込まれる。エレクトロポレーションは非常に効果的で、クローニングされた遺伝子の一時的な発現と、対象となる遺伝子のコピーを組み込んだ細胞系の作製の両方に使用することができる。エレクトロポレーションは、リン酸カルシウムによって媒介される形質転換やプロトプラストフュージョンとは異なり、組み込まれた外来DNAのコピーを1個、多くても数個含む細胞系を生じる。
リポソームによるトランスフェクションではDNAおよびRNAをリポソーム内に包み込んだ後、リポソームを細胞膜と融合させる。DNAがどのようにして細胞内に運ばれるかの機構は不明だが、トランスフェクションの効率は90%に達する。
DNA分子を直接核にマイクロインジェクションする方法はDNAが低pHのエンドソームのような細胞内コンパートメントに曝されることがないという利点を有する。従って、マイクロインジェクションは主として対象となるDNAのコピーを組み込んだ細胞系を作製するための方法として使用される。
細胞のトランスフェクションにベクターとしてアデノウィルスを使用する方法は周知である。アデノウィルスベクターによって媒介される細胞のトランスフェクションは各種細胞について報告されている(Stratford-Perricaudet達、1992) 。
トランスフェクションされる細胞は原核細胞でも真核細胞でもよい。本発明の宿主細胞は真核生物の宿主細胞であるのが好ましい。さらに好ましくは、本発明の組み換え宿主細胞はCOC細胞である。ヒトのエプシロンオピオイド受容体ポリペプチドを生産する場合には、培養された哺乳類またはヒトの細胞が特に有利である。
本発明の他の観点では、本発明の組み換え宿主細胞は原核生物の宿主細胞である。本発明の組換え宿主細胞は EscherichiacoliDH5α株のバクテリア細胞であるのが好ましい。一般にDNA配列の最初のクローニングと本発明で有用なベクターの作製には原核生物が好ましく、例えば E.Coli K12株は特に有用である。使用可能な他の微生物株には E. coliBやE.coliX1776( ATCC No.31537)が含まれる。これらの例は当然ながら単なる例示であって、限定的なものではない。
原核生物を発現にも使用することができ、上記の株の他に、E. coli W3110 (F-、λ−、プロトトロフィック(原栄養体)ATCC No.273325)、Bacillus subtilus 等のバチルス類や他の腸内細菌類、例えばSalmonell typhimurium や Serratus marcesans および各種シュードモナス種が使用できる。
一般に、これらの宿主としては宿主細胞と適合性のある種から得られるレプリコンおよび制御配列を含むプラスミドベクターが使用される。ベクターは通常、複製部位と形質転換細胞中に表現型の選択肢を与えることができるマーキング配列とを含む。例えば、E. coli は E. Coli種に由来するプラスミドであるpBR322 を用いて形質転換することができる(Bolivar達、1977) 。pBR322 はアンピシリンおよびテトラサイクリン耐性の遺伝子を含み、従って、形質転換された細胞を簡単に同定する手段となる。pBRプラスミドやその他の微生物プラスミドあるいはファージはそれ自身のポリペプチドの発現のために微生物によって使用されるプロモータを含むか、含むように変える必要がある。
組み換えDNAの作製で最も一般的に使用されているプロモータにはβ−ラクタマーゼ(ぺニシリナーゼ)およびラクトースプロモータシステム(Chang達、 1978; Itakura達、 1977; Goeddel 達、 1979; Goeddel達、 980) およびトリプトファン(TRP)プロモータシステム(EPO Appl. Publ. No.0036776;Siebwenlist 達、1980) が含まれる。これらが最も一般的にいられるが、他の微生物プロモータも発見され、利用されている。それらのヌクレオチド配列に関する詳細も公開されているので当業者にはプラスミドベクターに機能性プロモータを導入することが可能である(Siebwenlist達、1980) 。
原核生物の他に真核生物の微生物、例えば酵母を用いることができる。Saccharomyces cerevisiaeすなわち一般パン酵母は真核生物の微生物の中で最も一般的に使用されているが、他に一般に入手可能な株は多数存在している。上記 Saccharomycescerevisiaeを用いて発現を行う場合には、例えばプラスミドYRp7が一般に用いられる(Stinchcomb 達、1979; Kingsman達、1979; Tschemper 達、1980) 。このプラスミドはトリプトファン中で増殖できない酵母の変異株、例えばATCC No. 44076またはPEP4-1 に対する選択マーカとなるtrpl遺伝子を既に含んでいる(Jones, 1977) 。従って、酵母の宿主細胞ゲノムのtrpl障害の特徴が存在することはトリプトファンのない状態での増殖による形質転換の効果的な検出環境となる。酵母ベクター中の適当なプロモータ配列には3-ホスホグリセラートキナーゼ(Hitzeman 達、1980) または他のグリコライト酵素(Hess 達1968; Holland 達、1978) 、例えばエノラーゼ、グリセルアルデヒド-3- ホスフェートデヒドロゲナーゼ、ヘキソキナーゼ、ピルベートデカルボキシラーゼ、ホスホフルクトシダーゼ、グルコース-6- ホスフェートイソメラーゼ、3-ホスホグリセレートミューターゼ、ピルベートキナーゼ、トリオースホスフェートイソメラーゼ、ホスホグルコースイソメラーゼおよびグルコキナーゼのプロモータが含まれる。適当な発現プラスミドを作製する場合には、これらの遺伝子に対応する終結配列を発現ベクター内の発現されるべき配列の下流側に導入してmRNAのポリアデニル化と終結を行う。転写が成育条件によって制御される利点を有する他のプロモータはアルコールデヒドロゲナーゼ2、イソシトクロームC、アシドホスファターゼ、窒素代謝に関係する分解性酵素、上記グリセルアルデヒド-3- ホスフェートデヒドロゲナーゼ、マルトースおよびガラクトースの利用に関与する酵素のプロモータ領域である。酵母適合性プロモータ、複製源および終結配列を含む任意のプラスミドベクターが好適である。
微生物の他に、多細胞生物由来の細胞培養を宿主として使用することもできる。原則として、脊椎動物でも無脊椎動物でも任意の細胞培養が使用可能であるが、脊椎動物の細胞が最も有利である。最近では培養(組織培養)中で脊椎動物細胞を増殖させることがルーチン操作になっている(Kruse and Peterson,1973)。有用な宿主細胞系はAtT-20 、VEROおよびHela細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞系、W 138、BHK、COSM6、COS-1、COS-7、293 およびMDCK細胞系などである。これらの細胞用発現ベクターは一般に必要に応じて複製源、発現させるべき遺伝子の上流に位置するプロモータを含み、同時に必要な任意のリボソーム結合部位、RNAスプライシング部位、ポリアデニル化部位および転写終結配列を含んでいる。
哺乳類細胞で使用する場合には、発現ベクターに関する制御機能はウィルス材料から得られることが多い。例えば、一般に使用されるプロモータはポリオーマ、アデノウィルス2、サイトメガロウィルスに由来し、大抵はサルのウィルス40 (SV40) に由来する。SV40ウィルスの初期および後期プロモータは両方ともSV40ウィルスの複製源を含む断片としてウィルスから容易に得られるので、特に有用である(Fiers達、1978) 。HindII部位からウィルスの複製源内にあるBglI部位へ延びている約250bp の配列が含まれるならば、それより小さいか、大きいSV40断片を用いることもできる。さらに、プロモータまたは制御配列が宿主細胞系と適合する限り、所望の遺伝子配列と組み合わされた制御配列を使用することができ、多くの場合、それが望ましい。
複製源は、例えばSV40または他のウィルス(例えばポリオーマ、アデノ、VSV、BPV、CMV)源から得られるもののように外来起源を含むベクターを作って得るか、宿主細胞のクロモソーム複製機構で作ることができる。ベクターが宿主細胞のクロモソームに組み込まれるならば、後者で十分である。
VI.組換えエプシロンオピオイド受容体ポリペプチドの調製
本発明のさらに別の実施例で、本発明はエプシロンオピオイド受容体ポリペプチドの調製方法を提供する。この方法では、エプシロンオピオイド受容体ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを用いて細胞をトランスフェクションして形質転換した宿主細胞を作り、形質転換された宿主細胞をポリペプチドの発現にとって生物学的に十分な条件下に保持する。形質転換される宿主細胞は真核生物の細胞であるのが好ましく、さらに好ましく、真核生物の細胞はCOSまたはBHK細胞であるのが好ましい。宿主細胞は原核生物の細胞でもよい。好ましい原核生物の細胞は Escherichia coli のDH5α株の細菌細胞である。形質転換される細胞にトランスフェクションされるポリヌクレオイドは配列 No.1または配列 No.3のヌクレオチド塩基配列を含むのが好ましく、上記発現ベクターを用いて行うのが最も好ましい。
この操作で用いる宿主細胞は機能的な組み換えエプシロンオピオイド受容体ポリペプチドを発現させることができる。好ましい宿主細胞はチャイニーズハムスター卵巣細胞または赤ん坊ハムスターの腎臓細胞である。しかし、種々の細胞、例えば酵母細胞、ヒトの細胞系および当業者に周知のその他の真核生物細胞系を本発明方法で用いることができる。
トランスフェクション後、エプシロンオピオイド受容体ポリペプチドを発現させるのに十分な時間、細胞を培養条件下に維持する。イオン組成、濃度、温度、pH等を含む培養条件は周知である。一般に、トランスフェクションされた細胞を培養培地中で培養条件下に維持する。各細胞型に適した培地は周知である。好ましい具体例では温度は約20℃〜約50℃、好ましくは約30℃〜約40℃、さらに好ましくは約37℃にする。
pH値は約 6.0〜8.0 、より好ましくは約 6.8〜7.8 、最も好ましくは約 7.4にする。浸透度は1リットル当たり約 200ミリオスモル(mosm/L)〜約400mosm/L であるのが好ましく、さらに好ましくは約290mosm/L 〜約310mosm/L にする。トランスフェクションおよびコードされた蛋白質の発現に必要なその他の生物学的条件は周知である。
トランスフェクションされた細胞はエプシロンオピオイド受容体ポリペプチドを発現させるのに十分な時間保持する。この時間は使用する細胞の種類に依存し、当業者はそれを容易に決めることができる。一般に保持時間は約2〜約14日間である。 トランスフェクションされた細胞または細胞を培養している培地のいずれかから組み換えエプシロンオピオイド受容体ポリペプチドを回収・収集する。回収は組み換えポリペプチドの単離・精製操作を含む。ポリペプチドの単離・精製法は周知であり、沈降、濾過、クロマトグラフィー、電気泳動などの操作を含む。
VII.抗体
本発明のさらに別の具体例では、本発明は本発明のポリペプチドと免疫反応する抗体を提供する。本発明の抗体はモノクロナル抗体であるのが好ましい。ポリペプチドは配列 No.2または配列 No.4のアミノ酸残基配列を含むのが好ましい。抗体の調製法および特徴付け手段は周知である (例えばHarlow E andD. Lane 、1988参照)。
すなわち、ポリクロナル抗体は本発明のポリペプチドまたはポリヌクレオチドを含む免疫原で動物を免疫し、免疫された動物から抗血清を回収して調製される。抗血清の生産には種々の動物種を使用することができる。一般に、抗−抗血清の生産に使用される動物はウサギ、マウス、ラット、ハムスターまたはモルモットである。ウサギは血液量が比較的多いので、ポリクロナル抗体の生産にはウサギが選択されることが多い。
周知のように、ポリペプチドまたはポリヌクレオチドは免疫原性にばらつきがある。従って、免疫原(例えば本発明のポリペプチドまたはポリヌクレオチド)を担体と組み合わせる必要が多い。好ましい担体の例はキーホールリンペットヘモシアニン(KLH)および牛血清アルブミン(BSA)である。他のアルブミン、例えばオボアルブミン、マウス血清アルブミンまたはウサギの血清アルブミンも担体として使用できる。
ポリペプチドまたはポリヌクレオチドを担体蛋白質に結合させる手段は周知であり、グルタルアルデヒド、m-マレイミドベンゾイル-N- ヒドロキシスクシンイミドエステル、カルボジイミドおよびビス−バイアゾタイズドベンジジンが含まれる。
同様に、特定の免疫原に対する免疫原性はアジュバントとして知られる非特異的な免疫応答刺激物質を用いて増強させることができるというこは周知である。好ましいアジュバントの例はフロイントの完全アジュバント、フロイントの不完全アジュバントおよび水酸化アルミニウムアジュバントである。
ポリクロナル抗体を生産するのに使用される免疫原の量は、免疫原の種類と免疫処置に使用される動物によって変化する。免疫原投与には種々の経路(皮下注射、筋肉注射、皮内注射、静脈注射および腹膜注射)が用いられる。ポリクロナル抗体の生産時には免疫処置された動物の血液を免疫処置後に種々の地点でサンプリングしてモニターする。所望の免疫原性が得られたならば、免疫処置された動物から採血し、血清を単離し、保存する。
本発明の別の観点から、本発明はエプシロンオピオイド受容体ポリペプチドと免疫反応をする抗体の製造方法を提供する。この方法は、 (a)エプシロンオピオイド受容体ポリペプチドをコードしたポリヌクレオチドを用いて組み換え宿主細胞をトランスフェクションし、 (b)ポリペプチドの発現に十分な条件下で宿主細胞を培養し、 (c)ポリペプチドを回収し、 (d)ポリペプチドに対する抗体を製造する操作を含んでいる。宿主細胞は配列 No.1または配列 No.3のポリヌクレオチドを用いてトランスフェクションするのが好ましい。本発明は上記の方法で製造される抗体にも関するものである。
本発明のモノクロナル抗体は本明細書の一部を成す米国特許第 4,196,265号に開示の方法のような周知の方法で容易に製造することができる。本発明方法では先ず最初に選択した抗原(例えば本発明のポリペプチドまたはポリヌクレオチド)を用いて免疫応答が得られるような方法で適当な動物を免疫処置する。好ましい動物はマウスやラットなどの齧歯類である。次いで、免疫処置した動物の脾臓細胞を不死(immortal)のミエローマ細胞の細胞と融合させる。免疫処置した動物がマウスの場合、好ましいミエローマ細胞はネズミのNS-1ミエローマ細胞である。
融合した脾臓/ミエローマ細胞を選択培地中で培養して融合した脾臓/ミエローマ細胞を親細胞から選択する。例えば、新たなヌクレオチドの合成をブロックする物質を組織培養培地に添加して、融合した細胞を融合していない親細胞の混合物から分離する。好ましい物質の例はアミノプテリン、メトトレキセートおよびアザセリンである。アミノプテリンおよびメトトレキセートは、プリンとピリミジン両方の新たな合成をブロックし、一方、アザセリンはプリン合成のみをブロックする。アミノプテリンまたはメトトレキセートを使用する場合は、培地にヌクレオチドのソースとしてヒポキサンチンおよびチミジンを添加する。アザセリンを使用する場合は培地にヒポキサンチンを添加する。
この培養によってハイブリドーマの集団が得られ、この集団から特定のハイブリドーマを選択する。一般に、ハイブリドーマの選択は細胞をマイクロリットルプレートを用いたシングルクローン希釈培養した後、個々のクローンの上澄みの抗原ポリペプチドとの反応性をテストして行う。次いで、選択したクローンを無限増殖させてモノクロナル抗体を作る。
特殊例では、本発明抗体を作るために、マウスに本発明のポリペプチドを含む約1〜200 μgの抗原を腹膜内注射する。フロイントの完全アジュバント(結核死菌を含む免疫応答の非特異的刺激剤)のようなアジュバントと組み合わせた抗原を注射することによってBリンパ球細胞の増殖を刺激する。最初の注射からいくらか後 (例えば少なくとも2週間後)に、マウスにフロイントの不完全アジュバントと混合した2度目の抗原量を注射して追加免疫する。
2度目の注射から数週間後に、マウスの尾から採血して、放射性物質でラベルされた抗原に対する免疫沈降によって血清の力価を測定する。適当な力価が得られるまで追加免疫および力価測定の操作を繰り返すのが好ましい。最も高い力価を有するマウスの脾臓を取り、シリンジで脾臓をホモジナイズして脾臓のリンパ球を得る。一般に、免疫処置されたマウスの脾臓には約5×107〜2×108のリンパ球が含まれる。
ミエローマ細胞として周知の変異リンパ球細胞は周知の種々の方法で細胞増殖を誘導した実験動物から得られる。ミエローマ細胞はヌクレオチド生合成のサルベージ経路を持たない。ミエローマ細胞は癌細胞であるので組織培養中で無限に増殖することがき、従って、不死であると言われている。マウスおよびラット由来の多数のミエローマ細胞の培養細胞系、例えばネズミのNS−1ミエローマ細胞などが作られている。
ミエローマ細胞は育成融合(foster fusion) に適した条件下で、本発明の抗原/ポリペプチドを注射したマウスまたはラットの脾臓から得られる正常な抗体生産細胞と組み合わされる。融合条件は例えばポリエチレングリコールの存在等である。得られる融合細胞はハイブリドーマ細胞である。ミエローマ細胞と同様にハイブリドーマ細胞も培養中で無限増殖する。
HAT培地(ヒポキサンチン、アミノプテリン、チミジン)等の選択培地で培養することによって融合していないミエローマ細胞からハイブリドーマ細胞を分離する。融合していないミエローマ細胞はアミノプテリン、メトトレキサートまたはアザセリンの存在下で死亡するため、サルベージ経路からヌクレオチドを合成するのに必要な酵素を持ない。融合していないリンパ球も組織培養中で増殖を続けない。すなわち、融合に成功した細胞(ハイブリドーマ細胞)のみが選択培地で増殖することができる。
生き残ったハイブリドーマ細胞は単一の抗体を生産する。次いで、この細胞を本発明の抗原/ポリペプチドと免疫反応する特異的抗体を生産するためにスクリーニングする。単細胞ハイブリドーマをハイブリドーマ限界希釈法で単離する。ハイブリドーマを何度も希釈して希釈物を増殖させた後、上澄みをとってモノクロナル抗体の存在をテストする。続いてその抗体を生成するクローンを大量に培養し、好適な量の本発明抗体を作る。
本発明のモノクロナル抗体を用いて本発明のポリペプチドおよびポリヌクレオチドを抗原として認識することができ、従って同定することができる。同定ができたら、抗体アフィニティークロマトグラフィー等の方法でそのポリペプチドおよびポリヌクレオチドを単離・精製する。抗体アフィニティークロマトグラフィーではモノクロナル抗体を固体の基質に結合し、所望の抗原を含む溶液に曝す。抗原は結合している抗体との特異的免疫応答反応によって溶液から取り除かれる。その後はポリペプチドまたはポリヌクレオチドを基質から容易に取り、精製することができる。
VIII.医薬品組成物
本発明の好ましい具体例では、本発明はエプシロンオピオイド受容体ポリペプチドと、生理学的に使用可能な担体とを含む医薬組成物を提供する。この医薬組成物は配列 No.2または配列 No.4のアミノ酸残基配列を有するエプシロンオピオイド受容体ポリペプチドを含むのが好ましく、さらに、エプシロンオピオイド受容体ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドと生理学的許容される担体とを含むのが好ましい。本発明の医薬組成物は配列 No.2または配列 No.4のアミノ酸残基配列を含むか、配列 No.1または配列 No.3のヌクレオチド配列を含むのが好ましい。
本発明組成物は一般に単位投与量の製剤として非経口投与され、必要に応じて無毒で生理学的に使用可能な周知の標準的な担体、アジュバントおよびベヒクルを含むことができる。非経口は静脈注射、筋肉注射、動脈注射または点滴法を含む。
適当な分散剤または湿潤剤および懸濁剤を用いて周知の方法で注射可能な調製物、例えば滅菌した注射可能な水性または油性の懸濁液を作ることができる。滅菌された注射可能な調製物は無毒で非経口で使用可能な希釈剤または溶媒を用いた注射可能な無菌の溶液または懸濁液、例えば1,3-ブタンジオールの溶液にすることもできる。
使用可能なベヒクルおよび溶媒としては水、リンガー液および等張性塩化ナトリウム溶液を使用することができる。溶媒または懸濁用媒体としては滅菌した油が一般に用いられる。そのためには合成モノグリセリドまたはジグリセリドを含む任意配合の油を使用することができる。さらに、オレイン酸などの脂肪酸を注射可能物質の調製で使用することもできる。
好ましい担体にはリン酸塩、乳酸塩、トリスなどで緩衝された中性の生理食塩水溶液が含まれる。当然、ベクターはそれが望ましくない不純物、例えば欠陥アデノウィルス粒子または内毒素、その他の発熱物質をほとんど含まなくなるまで精製してベクター構成物を投与下個体で都合の悪い反応を起こさないようにする。ベクターの好ましい精製手段には塩化セシウム濃度勾配遠心分離等の密度勾配法が含まれる。
担体はリポソームでもよい。移送用ベヒクルとしてリポソームを用いる方法自体は周知である(例えば Gabizon達、1990; Ferruti 達、1986; Ranade, V.V.、1989参照)。
トランスフェクションされた細胞を担体として用いることもできる。例えば、生物体から肝臓細胞を取り、上記方法を用いて本発明のポリヌクレオチドでトランスフェクションし、その後、トランスフェクションされた細胞を生物体に戻す(例えば血管注射で)。
IX.コード化したポリヌクレオチド及びポリペプチドの検出法
本発明はさらに本発明のポリペプチドの検出方法を提供する。本発明方法は、ポリペプチドを上記方法で調製した抗体と免疫反応させて抗体−ポリペプチド結合体を作り、この結合体を検出する。
本発明のさらに別の実施例では、本発明はエプシロンオピオイド受容体ポリペプチドをコードするメッセンジャーRNA転写物を検出する方法を提供する。この方法では (a)メッセンジャーRNAの転写物をポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列とハイブリダイズさせて二本鎖分子を作り、 (b)この二本鎖分子を検出する。本発明はさらにエプシロンオピオイド受容体ポリペプチドをコードするDNA分子の検出方法を提供する。この方法では (a)DNA分子をエプシロンオピオイド受容体ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドとハイブリッド化させて二本鎖分子を作り、 (b)この二本鎖分子を検出する。
. スクリーニング検査
本発明のさらに別の観点から、本発明はエプシロンオピオイド受容体ポリペプチドと相互作用する能力を有する物質のスクリーニング方法を提供する。この方法では本発明のポリペプチドを作り、所定物質のポリペプチドと相互作用する能力をテストする。
すなわち、エプシロンオピオイド受容体の作動剤および拮抗剤の候補物質をテストするためのスクリーニング検査を本発明方法および組成物を用いて行うことができる。この候補物質は結合、その他の分子間相互作用によってエプシロンオピオイド受容体ポリペプチドと相互作用するか、それを調節可能な物質である。場合によってはこの候補物質は受容体の作動剤であり、別の例では受容体ポリペプチドと相互作用した時に拮抗剤としての特性を示すものである。さらに別の例では候補物質が作動剤兼拮抗剤としての特性を併せ持つか、別の方法で受容体を調節することができる。あるいは、候補物質がエプシロンオピオイド受容体の転写を可能にするか、阻害する。
本発明による組み換え受容体の発現システムは組織に基づくシステムに比べて明確に有利な点がある。本発明方法ではスクリーニング検査用に大量のエプシロンオピオイド受容体を生産することができる。それより重要な点は、本発明で得られる受容体ポリペプチドの純度である。すなわち、蛋白質間の相互作用を検査するためのポリペプチド調製物が純粋であれば競合する邪魔な副反応を引き起こさずにテストを実施することができる。
本発明の発現システムのようなクローニングされた発現システムは特定の受容体を満足に表現する組織を得ることが難しい場合にも有効である。少なくとも本発明の微生物を用いた発現システムのもう1つの非常に現実的な利点はそのコストである。本発明の微生物を用いた発現システムは一次スクリーニングでの拮抗剤として従来法の組織スクリーニング法に比べてコストが安くなる。
従来はスクリーニング検査には未精製の受容体調製物が用いられてきた。一般には対象となる受容体を多く含むと思われる動物の組織断片が受容体のソースであった。あるいは、研究者は組織をホモジナイズした未精製のホモジネートを受容体ソースとして用いていた。こうした方法の主たる問題点は単一の受容体型を表現する組織が存在しないという点にある。従って、得られたデータを特定の受容体と明確に関連付けることはできなかった。この問題点は最近の受容体サブタイプおよびサブ−サブタイプのクローニングにおいて強調されている。従来法の第2の基本的問題点は、可能性のある薬剤のスクリーニングでヒトの組織を用いることができないという点にある。従来法はほとんど必ず動物の受容体を用いており、ヒトの受容体をクローニングするには人間の受容体を用いたスクリーニング検査が必要になる。
組み換え受容体スクリーニング方式はクローニングされた受容体が使用できる点で組織を基礎とする方式に比べて多くの利点がある。主たる利点は、実験者がスクリーニング検査で用いる受容体の種類を制御できる点にある。従って、特定の受容体サブタイプおよびサブ−サブタイプを優先的に発現させることができ、リガンドとの相互作用を識別することができる。その他の利点には大量の受容体が使用可能であること、従来の組織サンプルでは使用できなかった受容体が使用可能であること、生きた動物の保守管理にコストがかからないこと等が挙げられる。
本発明のスクリーニング検査では一般に候補物質が受容体に結合して受容体の活性に作用する能力を判定する、例えば受容体の機能を阻害するか変調させる物質を識別するために候補物質をスクリーニングする。一般に、この方法では組み換え受容体ポリペプチドを作った後、候補物質を用いて組み換えポリペプチドまたはポリペプチドを発現させる細胞を試験して、候補物質がその生理学的機能に作用する能力を有するか否かを判定する。好ましい実施例では、本発明はヒトの受容体の酵素活性に影響を与える物質すなわちヒトでの使用に適した物質の同定用候補物質のスクリーニング法を提供する。
周知のように、スクリーニング検査では受容体を試薬が受容体に結合するのに適した条件下にする。この条件としてはpH、温度、トニシティ(tonicity)、関連共同因子の存在および関連するポリペプチドの変化、例えばグリコシレーションまたはプレニレーションなどが含まれが、これらに限定されるものではない。受容体は原核生物または真核生物の細胞中で発現、利用できるようにする。受容体を発現する宿主細胞全体を利用するか、受容体を宿主細胞から分離することができる。受容体は宿主細胞の膜内で膜に結合されるか、宿主細胞のサイトソル中で遊離状態にあってもよい。宿主細胞は受容体が存在するさらに小さい細胞成分(sub-cellular components) に分けることがもきる。例えば、受容体を発現させる細胞を核、小胞体、小胞または細胞の膜表面に分けることもできる。
pHは約6.0 〜8.0 にするのが好ましく、さらに好ましくは約6.8 〜7.8 、最も好ましくは約 7.4にする。好ましい実施例では、温度は約20〜50℃、さらに好ましくは約30〜40℃であり、さらに好ましくは約37℃である。浸透度は1リットル当たり約5milliosmols(mosm/l)〜400mosm/l にするのが好ましく、より好ましくは約200mosm/l〜約400mosm/l 、さらに好ましくは約290mosm/l 〜約310mosm/l である。受容体が正しく機能するために共同因子の存在が必要な場合がある。典型的な共同因子はナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムおよび塩素である。さらにプロステチックグループ(prosthetic group)として知られている小さい非ペプチド分子が必要な場合もある。受容体の機能に必要なその他の生物学的条件は周知である。
人工膜、小胞またはリポソーム中で蛋白質を再構成できるということは周知である。本発明では受容体を人工膜、小胞またはリポソーム中に組み込むことができる。再構成された受容体はスクリーニング検査で使用することができる。
本発明の受容体は固体担体と組み合わせることができる。固体担体はアガロースビーズ、ポアクリルアミドビーズ、ポリアクリルビーズまたは蛋白質と結合可能な他の固体マトリクスにすることができる。よく知られた結合剤にはシアノーゲンブロミド、カルボニルジイミダゾール、トシルクロリドおよびグルタルアルデヒドがある。
本発明は本発明の受容体と結合して機能可能な第2のポリペプチドを提供する。例えば、本発明の受容体はG蛋白およびエフェクターポリペプチドと結合してその生理作用を発揮する。 候補物質を同定するための典型的なスクリーニング検査では一般に未精製ホモジネートの状態で調製される受容体ポリペプチドを得るための出発材料と同じ組み換え発現宿主を用する。受容体を発現させる組み換え細胞を上記好ましいバッファーを用いて洗浄、ホモジナイズして、未精製のポリペプチドホモジネートを調製する。典型的な検査では、細胞ホモジネートより得られる一定量のポリペプチドを適当なpHで少量の適当な検査用バッファーに入れる。作動剤および拮抗剤等の候補物質を好適な濃度で上記混合物に添加し、候補物質と受容体ポリペプチドとの間の相互作用をモニターする。
受容体に対する適当な公知の基材を用いると、組み換えで作製した受容体に対するベースライン活性を上記方法で得ることができる。そして、受容体機能の阻害剤または調節剤をテストするために上記混合物に受容体に対する作用が未知の候補物質を添加する。候補物質がある状態またはない状態での反応を比較することによって、候補物質が受容体の正常な機能に与える影響に関する情報が得られる。
本発明のこの特徴によって、当業者にはオピオイド受容体ポリペプチドの機能を変化させることが可能な候補物質を一通りまたは二通り以上の方法で同定するための方法が提供される。 本発明の1つの実施例では、上記検査は好ましいオピオイド特性を有するが好ましくないオピオイド特性を持たないような候補物質を区別するように設計される。別の実施例では、エプシロンオピオイド受容体の作動剤および拮抗剤のような候補物質をテストするためのスクリーニング検査を用いて、他のオピオイド受容体と重なり合う活性をほとんど持たないような一種または複数のオピオイド受容体ポリペプチドと相互作用する選択的な能力を有する候補物質の同定する。
候補物質をテストするためのスクリーニング検査を用いて、オピオイドとエプシロン受容体との構造活性の関係の研究、例えば天然ホルモンまたはエプシロン受容体と相互作用する、またはそれを調節する他の物質との結合の研究や、そのような分子がエプシロン受容体に結合して生じる活性の研究が可能になる。本発明の特殊実施例では、本発明のポリペプチドを結晶化し、X線を用いて候補物質または他の分子とオピオイド受容体ポリペプチドとの相互作用を評価する結晶学的研究を行う。例えば、本発明の精製した組み換えポリペプチドは適当な形に結晶化するとX線結晶学を用いて分子内相互作用を調べることができる。
本発明の一つの重要な観点は、組み換えによって作られたエプシロンオピオイド受容体を用いてスクリーニング検査することによって受容体の機能を阻害、調節あるいは変化させる物質を同定することにある。天然に生じる受容体の存在量がごくわずかで精製が困難であることが分かっているので、組み換えによって作った受容体を用いることは特に有利である。また、これまで入手不可能であった受容体ソースが簡単に提供される。
既に述べたように、受容体は第2の分子を介して生理学的作用を行うことがある。好ましい実施例では、本発明のスクリーニング検査でエプシロンオピオイド受容体ポリペプチドを生産する組み換え宿主より直接得られるエプシロンオピオイド受容体ポリペプチドを使用することができる。これは単に所定のポリペプチドを組み換え宿主(一般には真核細胞宿主)中で発現させ、ポリペプチドを含む未精製のホモジネートを調製することで行うのが最も好ましい。未精製ホモジネートの一部をテストすべき候補物質と供に適当なエプシロン受容体のエフェクターと混合する。所定のエフェクタの受容体への結合を候補物質がある場合とない場合とで比較して、候補物質の生理学的特性に関する情報を得る。
受容体は原核細胞または真核細胞中で発現される。受容体はE. coli(Bertin達、 1992)、酵母(King 達、1990) および哺乳類細胞(Bouvier達、1988) で発現している。
受容体を発現する細胞はその全体を物質のスクリーニングに使用できる。例えば、本発明の受容体を発現する細胞を放射性標識した物質と接触させ、放射性標識した物質が細胞に結合した量を測定する。
受容体を発現する細胞は本発明の受容体を含むさらに細かい細胞成分に分画することができる。さらに細かい細胞画分(sub-cellular fraction) を精製する方法は周知である。この細かい細胞画分としては細胞質、細胞膜、その他の膜画分、例えば小胞体、ゴルジ体、小胞および核が含まれるが、これらに限定されるものではない。細かい細胞画分として単離された受容体は細胞膜と組み合わせることができる。例えば、受容体を発現する細胞から細胞膜の小胞を単離した場合、受容体分子は膜に結合していてもよい。さらに、本発明の受容体は受容体を発現する細胞から容易に精製可能である。精製方法は周知である。精製受容体はスクリーニング検査で使用することができる。
本発明のスクリーニング検査のほとんどはオピオイドの好ましい面を有すると同時にホルモンの好ましくない面を無くすのに有効な物質を同定するように設計されている。好ましい検査ではオピオイドを正常な作動剤として使用する。
本発明のエプシロンオピオイド受容体ポリペプチドに対する候補物質の作用を決定するには種々の方法が使用でき、本発明はその幾つかに限定されるものではないが、特定の物質の存在下で受容体ポリペプチドの結合能力および/または使用するエフェクターによって調節される能力が測定可能な系を使用するのが一般に望ましい。
試薬と受容体との間の相互作用の検出は周知方法で行うことができる。この方法には遠心分離、クロマトグラフィー、電気泳動および分光器の使用が含まれるが、これらに限定されるものではない。放射性同位元素で標識した試薬を上記方法と組み合わせるか単独で用いることもできる。一般に使用される放射性同位元素には3H、14C、22Na、32P、35S、45Ca、60Co、125Iおよび131Iが含まれる。一般に使用される安定な放射性同位元素は2H、13C、15N、18Oである。
例えば、ある試薬が本発明の受容体に結合可能な場合、放射ラベル化した物質または放射化ラベルした受容体を用いて結合を検出することができる。すなわち、放射化ラベルした物質または放射化ラベルした受容体を用い、試薬−受容体複合体を液体シンチレーションまたはX線フィルムに曝して検出する。
ある試薬が受容体を変化させる場合には、変性された受容体と変性されていない受容体との移動性の違いによって、変化した受容体をクロマトグラフィー、電気泳動または遠心分離で検出することができる。遠心分離法を使用する場合の移動度の差は沈降係数として知られている。また、変性された受容体と変性されていない受容体との分光学的特性の違いによって検出することもできる。特定の例では、ある物質が受容体に共有結合して変性する。この場合には変性された受容体と変性されていない受容体とを高速液体クロマトグラフィー(HPLC)カラムでの保持時間の差で容易に検出することができる。
試薬が受容体に共有結合して変性する例では、変性された受容体と変性されていない受容体とをNMRスペクトルでの差で検出するか、試薬に着目して遊離試薬と受容体を変性させた後の試薬との分光学的特性の差を検出するか、移動度の差を検出することができる。
第2のポリペプチドを用いる場合には、試薬−受容体−第2のポリペプチド複合体または受容体−第2のポリペプチド複合体を検出することができる。上記の移動度の差や分光学的特性の差を検出することもできる。
第2のポリペプチドを用いる場合には、エフェクターポリペプチドの酵素活性を検出することもできる。例えば、多くの受容体はアデニルサイクラーゼの阻害または刺激によって生理学的作用を行う。ある試薬の存在下でのアデニルサイクラーゼの酵素活性を検出することができる。
試薬と受容体との間の相互作用を指示遺伝子を用いて検出することもできる。良く知られた指示遺伝子にはβ−ガラクトシダーゼ(β−Gal)、クロラムフェニコールトランスフェラーゼ(CAT)およびルシフェラーゼが含まれる。指示遺伝子は宿主によって発現され、指示遺伝子の生成物の酵素反応を検出することができる。
好ましい検査では、ポリペプチド、エフェクターおよび候補物質を含む混合物を所定時間培養し、得られた培養混合物を分離手段で混合物中に残る結合していないエフェクターから生成エフェクター/受容体複合体を分離し、簡単にそれぞれの量を測定する(候補物質を添加していない対照に対して)。この測定は速度データが必要な場合には経時的に行うことができ、それによって、候補物質が受容体の機能を変化または変性させる能力を測定することができる。
エフェクター/受容体複合体からエフェクターを分離する方法としては種々の方法が知られており、本発明ではそれらの方法を全て利用できる。薄層クロマトグラフィー法(TLC)、HPLC分析、分光光度分析、ガスクロマトグラフ/質量分光光度分析またはNMR分析を用いることができる。エフェクターと複合体とを区別することが可能であれば、任意の方法を使用することができ、さらに基質と生成物とを同定または定量して酵素機能を測定することもできる。
エフェクター/受容体複合体をさらにX線結晶分析等の方法で分析するさともできる。候補物質が医薬作用としてオピオイド分子を置換する場合、置換および受容体に対する影響をモニターするように設計された実験が特に有利である。
A.エプシロンオピオイド受容体ポリペプチドについてのスクリーニング検査
本発明は、生物試料についてエプシロンオピオイド受容体ポリペプチドの存在をスクリーニングする方法を提供する。スクリーニングすべき生物試料は細胞外または細胞内の体液あるいは細胞または組織抽出物またはホモジネートにすることができる。生物学的試料はさらに単離された細胞(例えば培養中)または例えば組織サンプルまたは組織学サンプルなどの細胞集合体であってもよい。
組織サンプルは液体中に懸濁するか、顕微鏡スライドなの固体支持体上に固定する。
スクリーニング検査方法では、生物試料をその存在が検査対象であるエプシロンオピオイド受容体ポリペプチドと免疫反応する抗体に接触させる。通常この接触は液体を用いて候補となるオピオイド受容体ポリペプチドと抗体とを両方含む混合物を作って行う。抗体またオピオイド受容体ポリペプチドを含むサンプルのいずれかを固体支持体(例えばカラムまたはマイクロプレート)に固定することもできる。
生物試料は生物学的反応条件下で抗体−ポリペプチド結合体を生成させるのに十分な時間だけ抗体と接触させる。生物学的反応条件にはイオン組成、濃度、温度、pHなどが含まれる。
イオン組成および濃度は、蒸留水の値から塩化ナトリウムの2molal(溶媒100 gにつき2グラム分子の溶質を含む)溶液の値の範囲にすることができる。浸透度は約 100〜400mosmols/lであるのが好ましく、さらに好ましくは約 200〜300mosmol/lである。温度は約4〜100 ℃が好ましく、さらに好ましくは約15〜50℃、さらに好ましくは約25〜40℃である。pHは約 4.0〜9.0 の値が好ましく、さらに好ましくは約 6.5〜8.5 であり、さらに好ましくは約 7.0〜7.5 の値である。生物学的反応条件に関する唯一の制限は、選択された条件によって抗体−ポリペプチドの結合体が生成し、その条件が抗原またはオピオイド受容体ポリペプチドのいずれに対しても悪影響を与えないということである。
接触時間は特に使用する生物学的条件、抗体およびポリペプチドの濃度およびサンプルの種類(例えば体液サンプルであるか、組織サンプルであるか)に依存する。接触時間を決定する方法は周知である。サンプルが体液で、ポリペプチド濃度が約10-10Mの場合の通常の接触時間は約10〜200分である。
試料中のエプシロンオピオイド受容体ポリペプチドの存在は抗体−エプシロンオピオイド受容体ポリペプチド結合体の生成および存在を検出することで検出できる。このような抗体−抗原(例えば受容体ポリペプチド)結合体または複合体の検出手段は周知であり、遠心分離、アフィニティクロマトグラフィーなど抗体−候補受容体複合体に第2の抗体を結合させる方法が含まれる。
1つの実施例では抗体に固定したインジケータを検出する。周知のインジケータの例としては放射化ラベル(例えば32P、125I、14C)、ホースラディッシュペロキシダーゼのような第2抗体または酵素がある。抗体にインジケータを固定する手段は周知であり、市販のキットを用いることもできる。
B.抗エプシロンオピオイド受容体抗体のスクリーニング検査
本発明のさらに他の観点から、本発明は生物試料をエプシロンオピオイド受容体ポリペプチドと免疫反応する抗体(抗エプシロンオピオイド受容体抗体)の存在に関してスクリーニングする方法を提供する。本発明方法では、生物試料を生物学的条件下で、抗体−ポリペプチド結合体が生成するのに十分な時間だけエプシロンオピオイド受容体ポリペプチドと接触させ、生成した結合体を検出する。
C.エプシロンオピオイド受容体ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドのスクリーニング検査
DNA分子、特にプローブ分子を用いてオリゴヌクレオチドプローブとしてエプシロンオピオイド受容体ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドまたは遺伝子を含むと思われるDNAソースにハイブリッド化させることができる。プロービンクは通常オリゴヌクレオチドを受容体遺伝子を有すると思われるDNAソースにハイブリッド化させることによって行われる。プローブは単一のプローブで構成するか、特定のアミノ酸配列またはオピオイド受容体ポリペプチド配列をベースとするプローブの集まりで構成される。その多様性は遺伝子コードに固有な冗長性を説明している。
このようにプロービングに適したDNAソースはエプシロンオピオイド受容体ポリペプチドを発現でき、対象となる細胞系の遺伝子ライブラーリーであもよい。あるいは、DNAソースは対象となる細胞系より得られるDNAの全てを含むことがもきる。本発明のハイブリッド化法で候補DNA断片が同定されたら、ハイブリダイゼーション、制限酵素マッピング、シーケンシングおよび/または発現およびテストを行って陽性のクローンが得られたことが確認する。
あるいは、このようなDNA分子を下記 (1)〜(4)を含む多くの方法で使用することができる: (1)患者細胞に由来するDNA中の正常および異常DNA配列を検出する診断道具、(2)オピオイド受容体グループの他のファミリーおよびその関連ポリペプチドをそのような配列を含む可能性のあるDNAライブラリーから検出・単離するための手段、(3)関連する配列を増幅させるためにその配列にハイブリッド化させるためのプライマー、(4)本来のオピオイド受容体DNA配列を変化させるためのプライマー。さらに、DNA配列がここに開示のオピオイド受容体DNA断片の配列に類似していることを利用するその他の方法で使用することができる。
既に述べたように、本発明によって提供されるDNAの配列情報によって所定のオピオイド受容体遺伝子をコードする配列と特異的にハイブリッド化する比較的短いDNA(またはRNA)配列(例えばプローブ)を調製することができる。この場合、所定のオピオイド受容体配列を考慮して適当な長さの核酸プローブ(例えば配列 No.1または配列 No.3に示すような配列)が調製される。これらの核酸プローブがエプシロンオピオイド受容体をコードする配列に特異的にハイブリッド化可能であることは種々の実施例で特に有用である。最も重要なことはプローブが種々の検査で所定サンプル中に相補配列が存在することを検出するために使用可能であるという点にある。しかし、配列情報を用いて変異種のプライマーを調製したり、他の遺伝子構造を調製する際に用いられるプライマーの調製で使用することもできる。
ハイブリダイゼーション実験または検査に用いられる好ましい核酸配列では、配列 No.1または配列 No.3に示すエプシロンオピオイド受容体をコードする配列の少なくとも14〜40個程度の長さのヌクレオチド範囲に対して相補なプローブ配列を含んでいる。これも本発明の利点を示す。断片が安定且つ選択的に二本鎖分子を形成するのに十分な長さを持つためには、少なくとも14ヌクレオチドの長さにするのがよいが、ハイブリッドの安定性および選択性を向上させて、得られるハイブリッド分子の品質および程度を向上させるには、一般に14塩基以上の長さの範囲に渡って相補な配列を有する分子が好ましい。一般には遺伝子の相補な範囲が14〜20ヌクレオチドが好ましく、必要な場合にはそれよりも長い核酸分子が設計される。このような断片は例えば化学的手段で直接合成するか、本明細書の一部を成す例えば米国特許第 4,603,102号に記載のPCR法のような核酸再構成技術を用いて、あるいは組み換え用の組み換えベクターに所定配列を導入することによって容易に調製することができる。
本発明のヌクレオチド配列は、相補的な遺伝子範囲と選択的に二本鎖分子を形成する能力が利用される。所望の用途に応じて、標的配列に対するプローブの選択度の度合いを種々に設定するように種々のハイブリッド化条件が用いられる。高い選択性が要求される用途では通常はハイブリットを生成するために比較的厳しい条件が用いられる。例えば、比較的低い塩濃度および/または高い温度条件、例えば温度50℃〜70℃と0.02M−0.15MのNaClを用いて得られるような条件が選択される。これらの条件は特に選択的であって、プローブと鋳型または標的ストランドとの間に許される不一致は合っても極くわずかである。
当然、いくつかの用途、例えば基本となる鋳型にハイブリッド化した変異プライマーストランドを用いて変異体を調製する場合あるいは機能的に同等な関連する種からオピオイド受容体をコードする配列を単離する場合などは、一般にヘテロ二本鎖分子を形成させるためにより緩やかなハイブリッド化条件が必要になる。この場合には20℃〜70℃の温度範囲で0.15M〜0.9Mの塩濃度等の条件が用いられる。そうすることによって、クロスハイブリッド化した種が対照ハイブリッド化に対するプラスのハイブリッド化信号として容易に同定される。いずれの場合も、一般にホルムアミド(温度の上昇と同じようにハイブリッド二本鎖分子を不安定化させる)の添加量を増加させることによって条件をより厳しくすることが可能である。すなわち、ハイブリッド化条件は容易に変更でき、従って、一般に所望の結果に応じて選択可能な手段である。
ある種の具体例では、本発明の核酸配列をハイブリッド化を検出するための適当な手段、例えばラベルなどと組み合わせて用いるのが有利である。放射性リガンド、酵素リガンドまたはその他のリガンド、例えばアビジン/ビオチンなどの検出信号を与えるものを含めて、各種の好適な標識物質が周知である。好ましい具体例では、放射能、その他環境にとって好ましくない試薬の代わりに酵素タグ、例えばウレアーゼ、アルカリホスファターゼまたはペロキシダーゼを使用することが多い。酵素タグの場合には熱量測定によるインジケータ基質を用いてヒトが目視するか、分光光度法で可視化して相補な核酸を含むサンプルとの特異的ハイブリッド化を同定することができる。
一般に、上記のハイブリッド化プローブは溶液ハイブリッド化の試薬として、また、固体相を用いる実施例の両方で有用である。固体相を含む実施例ではテストDNA(またはRNA)を含むサンプルを所定のマトリクスまたは表面に吸着させるか、固定させる。次いで、固定された一本鎖の核酸を所定プローブを用いて所望条件下に特異的ハイブリッド化する。選択される条件は要求される特定の基準(例えばG+C含有量、標的となる核酸の種類、核酸のソース、ハイブリッド化プローブのサイズなどに依存) に基づいて各状況に応じて決定される。ハイブリッド化した表面を洗浄して特異的に結合していないプローブ分子を除き、ラベルを用いて特定のハイブリッド化を検出し、さらには定量する。
D.作動剤および拮抗剤のスクリーニング
エプシロン受容体はオピオイド受容体の主要なサブタイプの1つである。従って、選択性の高いエプシロンオピオイド受容体作動剤が臨床的に利用できる。
選択性の高い臨床的に有用なエプシロンオピオイド受容体作動剤の開発は作動剤の結合に必要なエプシロン受容体中の特異的部位の理解で促進される。最近のエプシロンオピオイド受容体cDNAのクローニングにより、この受容体の機能に関与するサブタイプの構造分野の研究に可能性が開かれた。
XI.検査キット
本発明の他の観点から、本発明は、生物学的サンプル中にエプシロンオピオイド受容体ポリペプチドが存在することを検出するための診断用検査キットを対象にする。このキットはエプシロンオピオイド受容体ポリペプチドと免疫反応可能な第1の抗体を含む第1の容器を備え、第1の抗体は少なくとも1回の検査を行うのに十分な量で存在する。本発明の検査キットはさらに第1の抗体と免疫反応可能な第2の抗体を含む第2の容器を備えているのが好ましい。さらに本発明の検査キットに用いられる抗体はモノクロナル抗体であるのが好ましく、第1の抗体は固体支持体に固定されているのが好ましい。さらに、第1および第2の抗体がインジケータを含み、好ましくはこのインジケータが放射性ラベルまたは酵素であるのが好ましい。
本発明はさらに他の対象は試薬をスクリーニングするための診断用キットにある。このキットは本発明のエプシロンオピオイド受容体を含む。このキットはさらに試薬と本発明受容体との間の相互作用を検出するための試薬を含んでいる。本発明の試薬は放射ラベル化されていてもよい。このキットは本発明の受容体と結合または相互作用可能な周知の放射ラベル化された試薬を含むことができる。
本発明キットは第2のポリペプチドを含むことができる。この第2のポリペプチドはG−蛋白質にすることができる。第2のポリペプチドはエフェクター蛋白質でもよい。第2のポリペプチドがキットを含む場合、受容体と第2のポリペプチドとの間の相互作用を検出するための試薬を含むこともできる。特定例として受容体/G−蛋白質複合体を検出可能な抗体が提供される。もう1つの特異的な例としては、G−蛋白質/エフェクター複合体を検出可能な抗体が提供される。エフェクター検出用の試薬にすることもできる。例えば、エフェクターがアデニリルサイクラーゼの場合、アデニリルサイクラーゼの活性を検出するための試薬が提供される。これら試薬の同定法は当業者には周知である。
本発明のさらに別の観点から、本発明は生物試料中にエプシロンオピオイド受容体ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドが存在することを検出するための診断用検査キットを提供する。本発明のキットは配列 No.1または配列 No.3の少なくとも10個の隣接するヌクレオチド塩基の断片と同一またはそれに対して相補な第2のポリヌクレオチドを含む第1の容器を備えている。
本発明の他の実施例では、本発明は生物試料中にエプシロンオピオイド受容体ポリペプチドと免疫反応可能な抗体の存在を検出するための診断用検査キットを提供する。このキットは抗体と免疫反応するエプシロンオピオイド受容体ポリペプチドを含む第1の容器を備えている。このポリペプチドは少なくとも1回の検査を行うための十分な量ふくんでいる。このキットの試薬は溶液状態、固体支持体に付着した状態、あるいは乾燥粉末状態で提供される。試薬が溶液として提供される場合には水溶液であるのが好ましい。提供される試薬が固体支持体に付着している場合には固体支持体はクロマトグラフ用の媒体または顕微鏡用のスライドであるのが好ましい。提供される試薬が乾燥粉末の場合には、粉末を適当な溶媒を用いて再調製するのが好ましい。溶媒を用いてもよい。
以下、本発明の好ましい態様を示すために実施例を示す。下記実施例には本発明者達が見出し、あるいは考案した本発明を実施する上で役立つ方法および操作が記載してある。これらの実施例は標準的な実験手法を用いて行われた。本明細書の開示および従来技術の一般的な技術レベルから、当業者には以下の実施例は単なる例示であって本発明の範囲を逸脱することなく多くの変更、修正および追加が可能であるということは理解できよう。
実施例1
一般的な方法
A.クローニングと増幅
ヒトゲノムDNAを一組の退化プライマーOR−1およびOR−2を用いたPCRで増幅した。
OR−1
5'CCTCACCA/GTGATG/CAGCG/A/TTC/GGAC/TCGA/CTA3'
(配列 No.5)
OR−2
5'GAAGGCG/ATAG/T/CAGA/GAC/TA/G/CGGA/GTT3'
(配列 No.6)
これらの退化オリゴヌクレオチドは、マウスのδオピオイドの第3番目と第7番目のTM領域(TM3とTM7)および関係するソマトスタチン受容体に対応する配列の蓄積から得られた (Breder達、1992) 。プライマーはそれぞれ多くの縮重を含むオリゴヌクレオチドの混合物で構成されている。
PCRの時間は93℃で1.5 分、55℃で2分、72℃で4分とした(Hemmick and Bidlack 、1987) 。30サイクル後、このDNAをフェノール/クロロホルムで抽出し、エタノールで沈澱させた。DNAをT4ポリヌクレオチドキナーゼでリン酸化し、クレノー酵素を用いて末端を揃えた。
この増幅されたDNAを下記の要領でブルースクリプトプラスミドのEcoRV部位にサブクローニングした。すなわち、DNAをソフトアガロースで電気泳動し、150bp 〜3kbのサイズに相当する連続した6つのゲル断片を切断し、室温で一夜、ゲル中でブルースクリプト(SK−)プラスミド(ストラタジーン社)とリゲーションさせた。それぞれの画分のリゲーション混合物を、青色による選択を可能にするためにDH5αF’バクテリア(BRL)に形質転換させ、アムピシリンを含むLBプレートにまいた。下記と同じプレハイブリッド化溶液およびハイブリッド化溶液を用い、クローン#12 の0.45kbの断片を用いてヒトのλEMBLゲノムライブラリー(クローンテック社)をスクリーニングした。18個の陽性のデュプリケートクローンを取り出し、次いで、第2および第3のスクリーニングによって精製した。精製したプラークよりDNAを調製し、さらにPCR分析で確認した。
このファージを種々の酵素で切断してプローブの結合インサートを切り出した。1%のアガロースゲルで泳動し、減圧によってナイロン膜(ゲルマンサイエンス社) に移し、紫外線で結合させて、バックグラウンドを低下させるために1%のSDSを加えること以外は下記と同じプレハイブリッド化溶液およびハイブリッド化溶液を用いて、ニックトランスレーションされた32Pで標識されたクローン#12 の 0.45kb のBamHI/XhoI断片6.5 ×106cpm/ml にハイブリッドさせた。BamHI でプローブがが結合したバンド(4.5kb断片) が1つ得られた。この4.5kb のバンドをブルースクリプトにサブクローニングし、核酸配列の両DNA鎖を決定した。
B.εmRNAの位置決定
クローン#12 から1つの断片を精製し、[α-35S]d CTPを用い、ランダムプライマー法によって高比活性(109dmp/ug)まで放射標識化した。厚さ8μmのクリオスタット切片を0.1Mのリン酸緩衝液中で4%のパラホルムアルデヒドに固定し、0.1 Mのリン酸緩衝液の15%ショ糖溶液に浸漬させた。切片を2XSSC中で10分間すすぎ、0.5 %のトリチオンX-100を含む同じ緩衝液中に15分間浸透させ、2XSSCで二度すすぎ、下記緩衝液中で42℃で1時間プレハイブリッド化させた:5Xのデンハルドの溶液(0.2%のフィコール/0.2 %のウシ血清アルブミン/0.02%のポリビニルピロリジン)を含む5XSSC、1mlあたり200 μg の酵母tRNA、1mlあたり200 μg の変性させたサケの精子DNA50%のホルムアミド。
ハイブリッド化は4%のデキストランホスフェートと切片1つに付き106cpmの熱変性され、35Sラベルされたクローン#12とを含むプレハイブリッド化緩衝液中で42℃で24時間行った。ハイブリッド化に次いで、切片をを、2XSSCで室温で2時間、1XSSCで1時間、0.5 XSSCで1時間および0.5XSSCで42℃で1時間洗浄した。この切片をエタノール中で脱水し、乾燥させた。X線オートラジオグラムを用い、蒸留水で1:1に希釈したコダック(Kodak )NTB2感光乳剤に切片を浸漬させて、ハイブリッドのオートラジオグラフ分析を行った。切片を1時間風乾させ、40℃のデシケータ内に7日間おいた。その後コダックのD-19 現像液で4分間現像し、水で1分間洗浄し、コダックの定着液で5分間定着させた。1時間洗浄後、ヘマトキシリンおよびコジン(cosin)(HおよびE)で染色し、カバーグラスで覆った。対照は脳下垂体組織を300 μg/mlのリボヌクレアーゼ(シグマ社)を用いて37℃で45分間予め処理したもので構成した。リボヌクレアーゼの対照は全てのサンプル上で流した。
C.蛍光in situハイブリッド化
プローブをBRLバイオニックラベル用キットを用いて dATPでビオチン化した。
In situ ハイブリッド化およびFISH検出
リンパ球を10%の牛胎児血清およびフィトヘマグルチニン(PHA)を補充した最小必須培地(MEM)中、37℃で68〜72時間培養した。リンパ球培養物をさらに16時間BrdU(18mg/ml シグマ社)で処理して細胞集団を同期化させた。この同調細胞を血清を含まない培地で3度洗浄し、チミジン(2.5ug/ml: シグマ社)を用いてα- MEM中で37℃で6時間培養した。細胞を回収した後busing法でスライドを作った。蛍光 in situハイブリッド化操作(FISH)はハング達の方法(Heng 達、1992; Heng and Tsui, 1993) に従って行った。すなわち、7日間熟成させたスライドを55℃で1時間焼いた。リボヌクレアーゼAで処理した後、このスライドを70%のホルムアミドを含む2xSSC中、70℃で1分間変性させ、次いで、70℃のエタノールで脱水した。プローブは50%のホルムアミドと10%のデキストランサルフェートより成るハイブリッド化混合液中で75℃で5分間変性させた。ハイブリッド化、検出および増幅の後、FISHシグナルとDAPIのバンドパターンを顕微鏡のフィルターを交換することによって1度の操作で視覚化した(Heng and Tsui、1993)。
実施例2
cDNAクローンの単離
齧歯動物のオピオイド受容体(OR)のいくつか(δ、κおよびμ)はクローニングされている(Yasuda達、 1993; Chen達、1993)。マウスのδオピオイド受容体の第3番目と第7番目のトランスメンブレン(TM)領域をコードするヌクレチド配列に基づいた2つの退化オリゴヌクレオチドを調製した。過去にクローニングされたG蛋白結合受容体の多くが1つのエキソンにコード化されていることから、これらのヌクレオチドを用いてPCR法でヒトゲノムDNAを増幅させた(Hazum 達、1979) 。増幅されたDNA(500〜1000bpのサイズ)をブルースクリプトプラスミドにサブクローニングし、得られた150 のクローンについて配列決定を行った。
得られたヌクレオチド配列より、ゲノムのPCRクローンのうち齧歯類のORのヒトのオルソローグをコードするものはないことが明らかになった。2つのクローン、#11 と#12 はδ、κおよびμORとの同一性を共有している。これらPCR由来の断片(540bp)によってコードされている遺伝子の全長を得るために、ヒトゲノムライブラリーをスクリーニングして、このスクリーニングから18個の陽性クローンを得た。これらのファージクローンを元のPCRオリゴヌクレオチドを用いて高速PCR分析したところ、クローン#11 または#12 の配列を含むそれぞれ一つずつのファージの確認に成功した。これらのファージを精製し、クローン#11 および#12 からの断片(4.5kb)をブルースクリプトプラスミドにサブクローニングして配列決定した。
HG-11 およびHG-12とよばれるこれらのゲノムクローンは、333 または327 アミノ酸の蛋白質をコードしたイントロンロンを持たない約 980〜約1000のヌクレオチドのリーディングフレームを含む(図1および図2参照)。クローン#12 の配列に対して特異的な2つのオリゴヌクレオチドを用いたPCR分析からチンパンジー、サル、ネズミおよびマウスのゲノムDNA中に同一のサイズのDNAの断片が確認された。
実施例3
イプシロンレセプターポリペプチドの薬理学
このオピオイド受容体をコードするHG-12 を確立するために、遺伝子の5'の翻訳されていない部分から2kbの断片を除去し、次いで、短くした挿入部(2.5kb)を真核生物の発現ベクター(pRC/CMV)の多重クローニング位置にサブクローニングした。選択的なオピオイド受容体作動剤および拮抗剤の、トランスフェクションされたCOSおよびBHK細胞の膜への結合能力を評価した。この構成物でトランスフェクションされた細胞は[3H]ブレマゾシンすなわち全ての周知のオピオイド受容体サブタイプに対して高い親和性を有するベンゾモルファンリガンドをKd=10nMで結合した。特異的な[3H]ブレマゾシン結合はアヘン剤のアルカロイドレボルファノールの存在下で明らかになり、図4、図5に示されるように、β−フナルトレキサミンによって効果的に交換された(IC50100 nMおよびIC501000nM)。トランスフェクションされていない対照細胞から作られた膜は交換可能な[3H]ブレマゾシン結合を示さなかった。[3H]ブレマゾシン結合は(Leu5)β−エンドルフィンによって交換され、それよりは弱くDADLEによって交換されるが、μ、δまたはκオピオイド受容体について選択的なリガンド、DAMGO、DPDPEおよびU-50,488では交換されない。
実施例4
サザンブロッティング分析とノーザンブロッティング分析
ヒトゲノムDNAを種々の制限酵素で処理し、HG-12 のコーディング領域より単離されたDNAプローブを用いてサザンハイブリッド化分析したところ、それぞれの酵素について唯一のハイブリッド化したバンドが観察された。HG-12 は他の関連する遺伝子とはクロスハイブリッド化せず、観察された唯一のハイブリッド化バンドはイントロンのない遺伝子構造と一致していた。いくつかのヒトの脳領域および組織に関するノーザンブロット分析の結果、小脳および前頭皮質では唯一のmRNA転写物が明らかとなり、一方、下垂体および視床下部では2つの転写物が見られた。腎臓および肝臓には特異的なmRNAは検出されなかった。下垂体におけるIn situ ハイブリッド化組織化学によって、細胞の副次集団内にHG-12 の限定された分布を示す強い信号が明らかとなった。信号の分布は腺の側方周辺部分により多く局在しており、中央部分および後方の下垂体にはラベルは全く見られなかった。サザンブロットおよびノーザンブロットのデータをそれぞれ図6、図7に示す。
実施例5
蛍光in situハイブリッド化
蛍光in situ ハイブリダイゼーション(FISH)を用いてクロモソーム上のHG-12 遺伝子の特異的な局在化を確認した。60個の分裂染色体構造を調べて、そのうち42個(70%) がバンドになった染色体10上に(2つの姉妹染色分体のそれぞれに1つずつ) 二重のハイブリッド化信号を示した。合計11の分裂の形状が撮影され、データは図8にまとめてある。詳細な位置決定のために種々濃度に濃縮した染色体を使用した。得られた信号は全て10q11.2 〜10q21.1 のバンドに位置していた(図8) 。使用したFISH検出条件下ではヒトゲノムの他の遺伝子座からのクロスハイブリッド化は起こらなかった。
我々がクローニングしたオピオイド受容体は、典型的なG蛋白質結合受容体の構造を有し、6,7-ベンゾモルファン医薬および内因性のβ−エンドルフィンと特異的に相互作用するが、選択的なμ、δおよびκオピオイドリガンドとは相互作用しない。これらのデータはヒトの脳からのεオピオイド受容体のクローニングと同定に関する直接的な証明を提供している。
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クローン#12 とよばれるヒトのε受容体のヌクレオチド配列と、それから得られたアミノ酸配列とを示す図(配列 No.1および No.2)。 図1−1のつづき 図1−2のつづき クローン#22 とよばれるヒトのε受容体のヌクレオチド配列と、それから得られたアミノ酸配列とを示す図(配列 No.3および No.4)。 図2−1のつづき 図2−2のつづき 図2−3のつづき クローニングされた受容体(上から下へ):ε、δ、μ、κオピエートとソマトスタチン受容体(SSTR3)との整合性を示す図。ε受容体と他の受容体との間で一致するアミノ酸は大文字で表記してある。トランスメンブレン領域の上にはオーバーラインが示してあり、整合を最大にするためにギャップ(-) が導入してある。 図3Aのつづき 図3Bのつづき BHKセルで発現されたεオピオイド受容体へのブレマゾシン飽和アイソターム・競合結合を示す図。 ε受容体を発現するBHK細胞中のレボルファノールによるcAMP生成阻害を示す図。 ヒトのDNAのサザンブロット分析図。ヒトゲノムDNAをHindII、PstIおよびSacIで切断し、1%のアガロースゲルで電気泳動し、DNAプローブのクローン#12 とハイブリッド化した。ヒトDNAは血液サンプルから単離した。 選択されたヒトおよびラットの組織についてのノーザンブロット分析図。ストリアタム(striatum)、下垂体、視床下部、前頭皮質および小脳からヒトおよびラットのmRNAを抽出し、ホルムアルデヒドアガロースゲル上で泳動し、ナイロン上でブロッティングした。次いでブロットをPラベルした断片で検出し、2×SSC、 0.1%SDSで50℃で20分間洗浄し、0.1 ×SSC、0.1 %SDSで洗浄し、倍増スクリーンを用いて−70°で一夜、X線フィルムと密着させた。 ヒトのクローン12のクロモソーム10について行ったFISHデータの要約。各点がDAPIでバンドされたクロモソーム上での二重蛍光信号を示す。

Claims (3)

  1. 配列番号2または配列番号4のアミノ酸残基配列を含むエプシロンオピオイド受容体ポリペプチドと免疫反応する抗体、ただし、σオピオイド、κオピオイド、μオピオイド受容体と免疫反応する抗体を除く。
  2. モノクローナル抗体である請求項1に記載の抗体。
  3. ポリペプチドを請求項1または2に記載の抗体と免疫反応させて抗体−ポリペプチド結合体を形成し、得られた結合体を検出することを特徴とする、エプシロンオピオイド受容体ポリペプチドの検出方法。
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