JP3812611B2 - 回転子位置センサ付き多相モータ - Google Patents

回転子位置センサ付き多相モータ Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、回転子位置センサ付き多相モータに関し、詳しくは、回転子位置を検出するセンサ極を有する多相ブラシレスモータに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、この種の回転子位置センサ付きモータとしては、例えば図13の構成断面図(図13(a)は固定子構成断面図、図13(b)は回転子構成断面図である)に示される回転子位置センサが内蔵された2相直流モータmがある。
図13によれば、前記モータmは、固定子1と、回転子2と、該回転子2にトルクを発生させる複数個(図では20個)の突極3にそれぞれ回巻した巻線3と、該回転子2の回転角度を検出するための複数個(図では4個)の突極3にそれぞれ回巻したコイルSa ,Sb ,Sc ,Sd からなる回転子位置センサ5とから構成されている。
【0003】
前記固定子1は、その鉄心1aの内側に向かって放射状に等ピッチ角で配設された複数個(図では24個)の突極3を有する。前記回転子2は、該固定子1の中心軸上で、その外周面が、前記固定子1の内周面と空隙を介して前記突極3に対向するように配設され、その軸6の両端は図示しないブラケットと軸受により回動自在に支持されている。そして、その回転子鉄心2a の外周面には複数個(図では9対、すなわち18個)の永久磁石の回転子極7が、前記突極3に対向するようにその極性を外周面に沿って交互に繰り返して配置されている。この場合、固定子1の突極数と回転子2の回転子極数との比は、4:3(ほかに、4:5の場合もある)である。
【0004】
前記固定子1の24個の突極3のうち、20個の突極3にはトルク発生用の巻線4が回巻されるとともに、2相すなわち、A相、逆A相、B相、逆B相に結線されるように、前記巻線4が形成されている。また、固定子1の残りの4個の突極3には、回転子位置センサコイルSa ,Sb ,Sc ,Sd が回巻されるとともに、2組のセンサ回路8a ,8b に結線された2対の突極3からなる前記回転角位置センサ5が形成されている。
【0005】
該センサ5は、前記2組のセンサ回路8a ,8b のうち、一方8a は前記2対の突極3のうち第1対に回巻されたコイルSa 、Sd に接続され、他方8b は前記2対の突極3のうち第2対に回巻されたコイルSb 、Sc に接続されるとともに、各コイルSa ,Sb ,Sc ,Sd は、コイルSa ,Sc 間が75度(5突極分のピッチ角)、コイルSc ,Sb 間が90度(6突極分のピッチ角)、コイルSb ,Sd 間が105度(7突極分のピッチ角)、コイルSd ,Sa 間が90度(6突極分のピッチ角)で、前記固定子1に配置されている。(特開昭62ー244265 号公報)
【0006】
前記センサ5の各1対のコイルSa ,Sd およびSb ,Sc を、それぞれサインコイルペアおよびコサインコイルペアといい、これらのコイルSa ,Sd間およびS,Sc 間は、そのインダクタンス変化が差動結合となるように電気角で180度の位相差をもち、かつ前記2つのコイルペアSa ,Sd とSb ,Sc との間は、回転角電圧信号の位相差が90度になるように形成されている。
そして、前記それぞれ1対にされたコイルSa ,Sd およびSb ,Sc のインダクタンス変化から、前記回転子回転角の検出信号を発生する2組の検出チャンネルからなる回転角位置センサ5を形成している。
【0007】
前記センサ5のサインコイルペアSa 、Sd およびコサインコイルペアSb ,Sc の結線は、図13(a)に示すとおりであり、外部の交流電源から周波数100kHz程度の交流電圧で端子e1 ,e2 を介して、励磁されている。該各コイルペアSa 、Sd およびSb ,Sc の接続点における中点電位端子E1 ,E2 の出力は、前記回転子2の回転角θを1つの変数としており、それぞれθのサイン、コサイン関数の形で与えられている。
この中点電位端子E1 ,E2 の出力は、回転子2の回転角θを変数とする回転角電圧信号として取り出される。これらの値に対し、演算を行うことにより回転子2の回転角が算出される。
なお、ここで算出される回転子2の回転角は電気角であり、実際には演算により、これを機械角に変換している。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記従来のモータmの場合、回転子位置検出のために、該モータmの内部にセンサ回路8a ,8b を構成するとき、図13(a)に示されるように、該センサ回路8a ,8b に幾つかの電子部品であるコンデンサ9が使用されている。
すなわち、該モータmが回転すると、センサコイルに誘起電圧が発生する。図13(a)の場合、センサ回路8a ,8b にコンデンサを使用しないと、該センサ回路8a ,8b に還流電流が発生するので、センサの検出精度が悪くなる。また、センサコイルの誘起電圧により、該センサ回路8a 、8b の入力端子e1 ,e2 間および出力端子E1 ,E2 間に電圧差を生ずる。この電圧差は、前記モータが高速で回転すればするほど大きくなるので、モータ制御システムの誤動作や、故障などを発生するおそれがある。
【0009】
通常、これらのコンデンサを高温環境下で使用すると、該コンデンサの特性が不安定になったり、故障の原因になったりする。その結果、高温環境下では、前記モータmの信頼性及び耐久性に悪い影響を及ぼすという問題点があった。
【0010】
本発明はかかる点に鑑みなされたもので、その目的は前記問題点を解消し、固定子の突極数と回転子の回転子極数の組み合わせと、センサ極に回巻されるセンサ巻線及びトルク極に回巻されるトルク巻線の結線により、モータ内部のセンサ回路にコンデンサなどの電子部品を全く使用しない回転子位置センサ付き多相モータを提供することにある。
【0011】
本発明の他の目的は、センサ極とトルク極との配置及び各形状を最適にすることにより、モータ内部のセンサ回路にコンデンサなどの電子部品を全く使用しない回転子位置センサ付き多相モータを提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するための本発明の構成は、内側に向かって放射状に等ピッチ角で配設された複数個の突極を有する固定子と、該突極のそれぞれに回巻した巻線と、前記固定子の内周面と空隙を介して前記突極に対向するように配設され、その極性が外周面に沿って交互に繰り返される複数個の永久磁石の回転子極を有し、かつ回動自在に支持された回転子とからなるとともに、前記固定子突極が、トルクを発生するトルク極と前記回転子位置を検出するセンサ極とからなる回転子位置センサ付き多相モータにおいて、次のとおりである。
【0013】
(1) 前記固定子突極の数は、aを1以上の整数とするとき、16a個、そのうちのセンサ極の数は、kを1以上の整数で、かつk≦aとするとき、8k個、前記回転子極は、18a個を有し、前記センサ極に回巻されるセンサ巻線は、4つのセンサグループに分けられ、各グループ内の検出出力信号が最大に、かつ各グループ内の誘起電圧が最小になるように接続され、前記トルク極に回巻されるトルク巻線は、相数と同じ数のトルクグループに分けられ、各グループ内の誘起電圧を最大に、かつ各グループ間の誘起電圧の位相差が、相数(2、または4)分の180゜になるように接続されることを特徴とする。
【0015】
(2) 前記固定子突極の数は16個、そのうちのセンサ極の数は8個、前記回転子極は18個であり、該センサ極は機械角45°の等ピッチ角で設けられた同じ形状のもので、残りの8個のトルク極は、前記センサ極のそれぞれの間の中央位置にそれぞれ配設された同じ形状のもので、該トルク極の形状と前記センサ極の形状とは必ずしも同一でなく、前記各センサ極に回巻される8個のセンサ巻線は、4つのセンサグループに分けられ、各グループの2個のセンサ巻線は、互いに機械角180°の位置に配設され、かつ各グループ内の誘起電圧が最小になるように接続され、前記トルク極に回巻される8個のトルク巻線は、2つのトルクグループに分けられ、各グループ内の誘起電圧が最大に、かつ各グループ間の誘起電圧の位相差が90゜になるように接続される回転子位置センサ付き2相モータであることを特徴とする。
【0016】
本発明は以上のように構成されているので、固定子の突極数と回転子の回転子極数の組み合わせと、センサ極に回巻されるセンサ巻線及びトルク極に回巻されるトルク巻線の構成とその結線により、行うことができる。
そして、前記センサ極とトルク極とを分離し、該センサ極の形状とトルク極の形状を、それぞれ最適に設計することが可能となる。
【0017】
このため、モータの回転子位置検出機能および出力の両方に最適な磁気特性をもたらす。これを加えて、回転子の高精度位置検出およびモータの高出力を実現するとともに、固定子にある突極巻線の総数を、固定子の突極数と同じように極力少なくすることによって、生産性の優れた高信頼性、高耐久性のある回転子位置センサ付き多相モータを実現させることができる。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、図面に基づいて本発明の好適な実施の形態を例示的に詳しく説明する。
【0019】
(第1実施例)
図1ないし図5は、本発明の回転子位置センサ付き多相モータの第1実施例を示す図で、図1は、本発明における1以上の整数aおよびk(k≦a)の値が、a=k=1の該2相モータM1 の場合の固定子構成結線図で、トルク極に巻回された巻線およびセンサ極に巻回されたコイルの結線を示し、図2は、図1の固定子鉄心の断面図、図3は、回転子の断面図である。図1において、図13と同一部材には同一符号を付して、その説明を省略する。
【0020】
図1ないし図3において、回転子位置センサ付き2相モータM1 の固定子11には、内側に向かって放射状に等ピッチ角で配設された16個(16a=16)の突極にうち、回転子位置を検出するための8個(8k=8)センサ極と、トルクを発生させるための8個のトルク極とからなる。
【0021】
前記2相モータM1 は、前記固定子11と、回転子12と、該回転子12にトルクを発生させる複数個(図では8個)の突極13にそれぞれ回巻した巻線14と、前記回転子12の回転角度を検出するための複数個(図では8個)の突極13にそれぞれ回巻したコイルSからなる回転子位置センサ15とから構成されている。
【0022】
前記回転子12は、該固定子11の中心軸上で、その外周面が、前記固定子11の内周面と空隙を介して前記突極13に対向するように配設され、その軸16の両端が図示しないブラケットと軸受により回動自在に支持されている。そして、回転子鉄心12a の外周面には複数個(18a=18個、すなわち9対で、18個)の半径方向に磁化された永久磁石からなる回転子極17が、前記突極13に対向してその極性を外周面に沿って 交互に繰り返して配置されている。
このため、固定子11の突極数と回転子の極数の比が8/9である。
【0023】
前記固定子11は、その鉄心11a が電磁鋼の薄板を積層して形成され、内側に配設された8個の突極P1 ,P3 ,P5 ,P7 ,P9 ,P11,P13,P15をセンサ極とし、8個の突極P2 ,P4 ,P6 ,P8 ,P10,P12,P14,P16をトルク極とする。
【0024】
前記8個のセンサ極P1 ,P3 ,‥‥‥,P15に巻回されたセンサコイルは、4つのセンサグループに分けられ、各グループはセンサコイルの検出出力信号を最大に、かつ各グループ内の誘起電圧を最小になるように結線される。例えば、第1グループはセンサ極P1 とP9 、第2グループはP3 とP11、第3グループはP5 とP13、第4グループはP7 とP15より構成される。
【0025】
前記 8個のトルク極P2 ,P4 ,‥‥‥,P16に巻回されたトルク巻線は、2つのグループに分けられ、各グループの誘起電圧を最大に、かつ各グループ間の誘起電圧の位相差が90°になるように結線される。例えば、Aグループはトルク極P2 ,P4 ,P10,P12、Bグループはトルク極P6 ,P8 ,P14,P16より構成される。
【0026】
図4は、本実施例の回転子位置センサ付き2相モータM1 を、図1のように結線する場合のトルク極巻線の誘起電圧のベクトル図を示す。この場合、前記 8個のトルク極P2 ,P4 ,‥‥‥,P16に巻回されたトルク巻線に誘起される電圧をそれぞれV2 ,V4 ,‥‥‥,V16とすると、
A,Bグループの相電圧VA ,VB はそれぞれ、
VA =V2 +V4 −V10−V12,
VB =V6 +V8 −V14−V16
であり、該相電圧VA とVB は電気的に90°の位相差を有する。
【0027】
図5は、本実施例の前記モータMを、図1のように結線する場合のセンサ極コイルの誘起電圧のベクトル図を示す。
各センサグループにおける、第1グループのセンサ極P1 とP9 、第2グループのセンサ極P3 とP11、第3グループのセンサ極P5 とP13、第4グループのセンサP7 とP15の誘起電圧はそれぞれ、
第1センサグループの誘起電圧 =V1 +V9 =0,
第2センサグループの誘起電圧 =V3 +V11=0,
第3センサグループの誘起電圧 =V5 +V13=0,
第4センサグループの誘起電圧 =V7 +V15=0
であり、これによって、前記4つのセンサグループのそれぞれの誘起電圧が全て0になるので、前記センサコイルにより構成されたループ内での誘起電圧の和は0になる。このため、該センサコイルで構成されたループ内では還流(循環)電流は発生しない。
【0028】
これによって、図13(a)に示すような従来の回転子位置センサ付き多相モータmの誘起電圧による該モータ内部のセンサ回路の還流電流を抑えるための、電子部品であるコンデンサは不要である。また、前記4つのセンサグループの端子の任意端子間に発生する誘起電圧も0であるので、該モータmの高速回転の場合でも、センサの励磁回路およびセンサ信号の処理回路には、危険な誘起電圧がかかる可能性はない。このため、センサとセンサ励磁回路、およびセンサとセンサ信号処理回路の間には、危険な誘起電圧を遮断するための電子部品であるコンデンサも不要である。
【0029】
一般に、モータの生産工程ではある程度の回転子の偏心が発生する。この回転子の偏心がセンサの回転子位置検出に悪い影響がある。しかし、本実施例における回転子位置センサ付き多相モータM1 のもうひとつの大きな特徴は、前記各グループのセンサ極の相互位置が機械的に180°に配置されているので、該センサコイルの相互作用によって、その回転子の偏心によるセンサ特性への影響が抑えられ、安定な回転子位置検出特性が得られる。
さらに各トルクグループの各極が、該モータの中心に対して対称的に配置されているので、電磁力による半径方向の不平衡力は、該モータMの動作中の任意状態でも0になるので、該モータM1 は非常に円滑に回転することができる。
【0030】
図6は、本実施例の前記モータM1 に適用される動作制御システムの構成図を示す。
図6について簡単に説明すると、前記回転子位置センサ付き2相モータM1 の前記A相およびB相にそれぞれ増幅器HA およびHB から2相電力が供給される。センサのブリッジ回路の端子e1 ,e2 には、発振回路41から100kHz程度の高周波信号が供給され、その回転子12の回転に伴うセンサ極P1 ,P3 ,‥‥‥,P15のインダクタンスの変化がπ/2の位相差を有し、該回転子12の回転に伴って変化する2つの正弦波信号が、端子E1 ,E2 から出力される。この2つの正弦波信号は、同期検波回路42により該回転子12の回転角度の正弦関数、余弦関数に変換され、位置デコーダ43で回転子角度信号に変換され、この回転子角度信号は、端子44に入力される外部基準信号、またはマイクロプロセッサ45が出力する基準信号と加算回路46で加算され、PID制御回路47,48,49に出力されて、周知のディジタルPID制御が行われる。
【0031】
(第2実施例)
図7ないし図11は、本発明の回転子位置センサ付き多相モータの第2実施例を示す図で、図7は、本発明における1以上の整数aおよびk(k≦a)の値が、a=2,k=1の該2相モータM2 の場合の固定子構成結線図で、トルク極の巻線およびセンサ極のコイルの結線を示し、図8は、図7の固定子鉄心の断面図、図9は、回転子の断面図である。図7において、図1と同一部材には同一符号を付して、その説明を省略する。
【0032】
図7ないし図9において、回転子位置センサ付き2相モータM2 の固定子21には、内側に向かって放射状に等ピッチ角で配設された32個(16a=32)の突極のうち、回転子位置を検出するための8個(8k=8)センサ極と、トルクを発生させるための24個のトルク極とからなる。
【0033】
前記2相モータM2 は、前記固定子21と、回転子22と、該回転子22にトルクを発生させる複数個(図では24個)の突極23にそれぞれ回巻した巻線24と、前記回転子22の回転角度を検出するための複数個(図では8個)の突極23にそれぞれ回巻したコイルSからなる回転子位置センサ25とから構成されている。
【0034】
前記回転子22は、該固定子21の中心軸上で、その外周面が、前記固定子21の内周面と空隙を介して前記突極23に対向するように配設され、その軸26の両端が図示しないブラケットと軸受により回動自在に支持されている。そして、回転子鉄心22a の外周面には複数個(18a=36個、すなわち18対で、36個)の半径方向に磁化された永久磁石からなる回転子極27が、前記突極23に対向してその極性を外周面に沿って 交互に繰り返して配置されている。
このため、固定子21の突極数と回転子22の極数の比が8/9である。
【0035】
前記固定子21は、その鉄心21a が電磁鋼の薄板を積層して形成され、内側に配設された8個の突極P1 ,P3 ,P5 ,P7 ,P17,P19,P21,P23をセンサ極とし、24個の突極P2 ,P4 ,P6 ,P8 〜P16,P18,P20,P22,P24〜P32をトルク極とする。
【0036】
前記8個のセンサ極P1 ,P3 ,‥‥‥に巻回されたセンサコイルは、4つのセンサグループに分けられ、各グループはセンサコイルの検出出力信号を最大に、かつ各グループ内の誘起電圧を最小になるように結線される。例えば、第1グループはセンサ極P1 とP17、第2グループはP3 とP19、第3グループはP5 とP21、第4グループはP7 とP23より構成される。
【0037】
前記24個のトルク極P2 ,P4 ,‥‥‥に巻回されたトルク巻線は、2つのグループに分けられ、各グループの誘起電圧を最大に、かつ各グループ間の誘起電圧の位相差が90°になるように結線される。例えば、Aグループはトルク極P2 ,P10,P18,P26,P9 ,P25,P11,P27,P4 ,P12,P20,P28、BグループはP6 ,P14,P22,P30,P13,P29,P15,P31,P8 ,P16,P24,P32より構成される。
【0038】
図10は、本実施例の回転子位置センサ付き2相モータM2 を、図7のように結線する場合のトルク極巻線の誘起電圧のベクトル図を示す。この場合、前記24個のトルク極P2 ,P4 ,‥‥‥に巻回されたトルク巻線に誘起される電圧をそれぞれV2 ,V4 ,‥‥‥とすると、
A,Bグループの相電圧VA ,VB はそれぞれ、
VA =V2 −V10+V18−V26+V9 +V25+V11+V27+V4 −V12+V20−V28,
VB =V6 −V14+V22−V30+V13+V29+V15+V31+V8 −V16+V24−V32,
であり、該相電圧VA とVB は電気的に90°の位相差を有する。
【0039】
図11は、本実施例の前記モータM2 を、図7のように結線する場合のセンサ極コイルの誘起電圧のベクトル図を示す。
各センサグループにおける、第1グループのセンサ極P1 とP17、第2グループのセンサ極P3 とP19、第3グループのセンサ極P5 とP21、第4グループのセンサP7 とP23の誘起電圧はそれぞれ、
第1センサグループの誘起電圧 =V1 −V17=0,
第2センサグループの誘起電圧 =V3 −V19=0,
第3センサグループの誘起電圧 =V5 −V21=0,
第4センサグループの誘起電圧 =V7 −V23=0
であり、これによって、前記4つのセンサグループのそれぞれの誘起電圧が全て0になるので、前記センサコイルにより構成されたループ内での誘起電圧の和は0になる。このため、該センサコイルで構成されたループ内では還流(循環)電流は発生しない。
【0040】
これによって、第1実施例と同様に、図13(a)に示すような従来の回転子位置センサ付き多相モータmの誘起電圧による該モータ内部のセンサ回路の還流電流を抑えるための、電子部品であるコンデンサは不要である。また、前記4つのセンサグループの端子の任意端子間に発生する誘起電圧も0であるので、危険な誘起電圧を遮断するための電子部品であるコンデンサも不要である。
【0041】
(第3実施例)
図12は、本発明の第3実施例を示す固定子鉄心の断面図である。
図12において、本実施例の回転子位置センサ付き2相モータM3 のサイズは、縦横28mm×28mm、全長26mmで、固定子31の鉄心31aは、珪素鋼板を積層し、その外径は28mmである。
【0042】
該固定子31は、図示しない回転子と対向する面に放射状に機械角45°のピッチで設けられた幅の狭い同じ形状の8個の回転子位置検出するためのセンサ極P1 ,P3 ,P5 ,P7 ,P9 ,P11,P13,P15と、該センサ極P1 ,P3 ,‥‥‥,P15のそれぞれの間の中央位置にそれぞれ配設され、互いに機械角45°のピッチで設けられた幅の広い同じ形状の8個のトルク発生するための、トルク極P2 ,P4 ,P6 ,P8 ,P10,P12,P14,P16を有し、該各トルク極P2 ,P4 ,‥‥‥,P16と隣接する前記各センサ極との間のなす角度は、互いに機械角22.5°であり、全体で、16個の突極が設けられている。
【0043】
前記固定子31の前記センサ極P1 ,P3 ,‥‥‥,P15にはセンサコイルが巻回され、前記トルク極P2 ,P4 ,‥‥‥,P16にはトルク巻線が巻回され、回転子には永久磁石からなる18個の回転子極が設けられている。前記センサ極と前記トルク極の形状は必ずしも同一でなく、前記センサ極P1 ,P3 ,‥‥‥の形状は高精度な回転子位置検出のための形状に形成され、前記トルク極P2 ,P4 ,‥‥‥の形状は、該モータM3 の出力を最大になるように形成されている。
【0044】
この種の回転子位置センサ付き2相モータは、固定子にセンサ極が設けられている。回転子の位置を検出するためのセンサ極の磁束密度を飽和領域までに形成するのが必要である。しかし、トルク極の磁束密度を飽和領域まで形成すると、該モータが高速回転する場合、該モータの鉄損が増え、該モータの効率が悪化するという問題点がある。
【0045】
このため、本実施例の前記モータM3 は、図12に示すように、センサ極P1 ,P3 ,‥‥‥とトルク極P2 ,P4 ,‥‥‥の形状を異に形成している。該センサ極P1 ,P3 ,‥‥‥の幅は、前記トルク極P2 ,P4 ,‥‥‥の幅より狭く形成することにより、センサ極は適切な磁気飽和領域で作動し、トルク極は非飽和領域で動作することを可能にした。特に、前記センサ極P1 ,P3 ,‥‥‥の磁束密度を1.7T(テスラ)に設計することにより、最も優れたセンサ検出精度が得られた。また、センサ極の磁束密度を1.5T〜1.9Tの間で、実用的かつ良好なセンサ検出機能が得られた。
【0046】
また、センサ極P1 ,P3 ,‥‥‥の幅を、トルク極P2 ,P4 ,‥‥‥の幅より狭く形成することにより、スロット内の面積が大きくなり、該トルク極に太い電線が使えるので、トルク極巻線の電気抵抗を小さくでき、巻線の電流容量を大きくできる。このため、高出力かつ高効率の回転子位置センサ付き多相モータを実現できる。
本実施例の前記モータM3 として、前記サイズの出力が15Wのものが実現できた。これは同じサイズの従来の同種モータの出力に比べて大きい出力である。
【0047】
以上、各実施例で説明された回転子位置センサ付き多相モータによれば、以下に列挙する効果が得られる。
(1) 固定子の極数と回転子の極数の特別な組み合わせ、およびセンサコイルとトルク巻線の結線により、該モータ内部の回転子位置検出回路に、電子部品としてのコンデンサを一切使わないので、該モータは、一般の温度環境では勿論、高温環境でも、高精度な回転子位置検出が可能であると同時に、生産性の良い該モータを実現できる。
【0048】
(2) センサ極とトルク極とを対称的に分離でき、該センサ極およびトルク極の形状および磁気特性を、それぞれ最適に形成することが可能であるので、モータの回転子位置検出機能、および出力の両方に最適な特性をもたらす。
また、センサコイルの特別な配置位置により、各グループのセンサコイルの相互作用によって、回転子の偏心によるセンサ特性への影響が抑えられ、高精度な回転子位置検出が可能になる。
【0049】
(3) 各トルクグループの各極が、該モータの中心に対して、対称的に配置されているので、電磁力による半径方向の不平衡力は、該モータ動作中の任意状態でも0になる。このため、該モータは非常に円滑に回転できる。
これらを加えて、回転子の高精度な位置検出および高モータ出力を実現するとともに、、生産性の優れた高信頼性、高耐久性のある前記モータを提供することができる。
【0050】
なお、本発明の技術は前記実施例における技術に限定されるものではなく、同様な機能を果たす他の態様の手段によってもよく、また本発明の技術は前記構成の範囲内において種々の変更、付加が可能である。
【0051】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように本発明の回転子位置センサ付き多相モータによれば、固定子突極の数は、aを1以上の整数とするとき、16a個、そのうちのセンサ極の数は、kを1以上の整数で、かつk≦aとするとき、8k個、前記回転子極は、18a個を有するので、モータ内部のセンサ回路にコンデンサなどの電子部品を全く使用しないで済む高信頼性、高耐久性のある回転子位置センサ付き多相モータを実現させることができる。
【0052】
また、本発明の回転子位置センサ付き2相モータによれば、固定子突極の数は16個、そのうちのセンサ極の数は8個であり、該センサ極は機械角45°の等ピッチ角で設けられ、他の8個のトルク極は、該センサ極のそれぞれの間の中央位置にそれぞれ配設され、8個の各センサ巻線は、4つのセンサグループに分けられ、各グループの2個のセンサ巻線は、互いに機械角180°の位置に配設され、かつ各グループ内の誘起電圧が最小になるように接続され、8個の各トルク巻線は、2つのトルクグループに分けられ、各グループ内の誘起電圧が最大に、かつ各グループ間の誘起電圧の位相差が90゜になるように接続されるので、前述と同様に、モータ内部のセンサ回路にコンデンサなどの電子部品を全く使用しないで済む高信頼性、高耐久性のある回転子位置センサ付き2相モータを実現させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の回転子位置センサ付き多相モータの第1実施例で、1以上の整数aおよびk(k≦a)の値が、a=k=1の該2相モータの場合の固定子構成結線図である。
【図2】図1の固定子鉄心の断面図である。
【図3】回転子の断面図である。
【図4】図1のように結線する場合のトルク極巻線の誘起電圧を示すベクトル図である。
【図5】図1のように結線する場合のセンサ極コイルの誘起電圧を示すベクトル図である。
【図6】本実施例の前記モータMに適用される動作制御システムの構成図である。
【図7】本発明の回転子位置センサ付き多相モータの第2実施例で、1以上の整数aおよびk(k≦a)の値が、a=2,k=1の該2相モータの場合の固定子構成結線図である。
【図8】図7の固定子鉄心の断面図である。
【図9】回転子の断面図である。
【図10】図7のように結線する場合のトルク極巻線の誘起電圧を示すベクトル図である。
【図11】図7のように結線する場合のセンサ極コイルの誘起電圧を示すベクトル図である。
【図12】本発明の第3実施例を示す固定子の断面図である。
【図13】従来の回転子位置センサ付きモータとしての、回転子位置センサが内蔵された2相直流モータの構成断面図で、図13(a)は固定子構成断面図、図13(b)は回転子構成断面図である。
【符号の説明】
1,11,21,31 固定子
1a,11a,21a,31a 固定子鉄心
2,12,22 回転子
3,13,23 突極
4,14,24 巻線
5,15,25 回転子位置センサ
6,16,26 軸
7,17,27 回転子極
8a ,8b センサ回路
9 コンデンサ
m,M1 ,M2 ,M3 回転子位置センサ付き2相モータ
Sa,Sb,Sc,Sd,S コイル

Claims (2)

  1. 内側に向かって放射状に等ピッチ角で配設された複数個の突極を有する固定子と、該突極のそれぞれに回巻した巻線と、前記固定子の内周面と空隙を介して前記突極に対向するように配設され、その極性が外周面に沿って交互に繰り返される複数個の永久磁石の回転子極を有し、かつ回動自在に支持された回転子とからなるとともに、前記固定子突極が、トルクを発生するトルク極と前記回転子位置を検出するセンサ極とからなる回転子位置センサ付き多相モータにおいて、
    前記固定子突極の数は、aを1以上の整数とするとき、16a個、そのうちのセンサ極の数は、kを1以上の整数で、かつk≦aとするとき、8k個、前記回転子極は、18a個を有し、
    前記センサ極に回巻されるセンサ巻線は、4つのセンサグループに分けられ、各グループ内の検出出力信号が最大に、かつ各グループ内の誘起電圧が最小になるように接続され、前記トルク極に回巻されるトルク巻線は、相数と同じ数のトルクグループに分けられ、各グループ内の誘起電圧を最大に、かつ各グループ間の誘起電圧の位相差が、相数(2、または4)分の180゜になるように接続されることを特徴とする回転子位置センサ付き多相モータ。
  2. 内側に向かって放射状に等ピッチ角で配設された複数個の突極を有する固定子と、該突極のそれぞれに回巻した巻線と、前記固定子の内周面と空隙を介して前記突極に対向するように配設され、その極性が外周面に沿って交互に繰り返される複数個の永久磁石の回転子極を有し、かつ回動自在に支持された回転子とからなるとともに、前記固定子突極が、トルクを発生するトルク極と前記回転子位置を検出するセンサ極とからなる回転子位置センサ付き多相モータにおいて、
    前記固定子突極の数は16個、そのうちのセンサ極の数は8個、前記回転子極は18個であり、該センサ極は機械角45°の等ピッチ角で設けられた同じ形状のもので、残りの8個のトルク極は、前記センサ極のそれぞれの間の中央位置にそれぞれ配設された同じ形状のもので、該トルク極の形状と前記センサ極の形状とは必ずしも同一でなく、
    前記各センサ極に回巻される8個のセンサ巻線は、4つのセンサグループに分けられ、各グループの2個のセンサ巻線は、互いに機械角180°の位置に配設され、かつ各グループ内の誘起電圧が最小になるように接続され、前記トルク極に回巻される8個のトルク巻線は、2つのトルクグループに分けられ、各グループ内の誘起電圧が最大に、かつ各グループ間の誘起電圧の位相差が90゜になるように接続されることを特徴とする回転子位置センサ付き2相モータ。
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