JP3812365B2 - 過電流遮断構造 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、負荷短絡時等の過電流に対して通電経路を遮断して回路や機器等の故障や破壊を防止するのに好適な過電流遮断構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、負荷短絡などによる過電流から回路、電子部品あるいは電子機器などの故障や破壊を防止するために、ヒューズなどを用いて通電経路を遮断し、保護を行っていた。
【0003】
しかしながら、筒形ヒューズや管形ヒューズは、ヒューズホルダーを必要とするために、電子機器に内蔵する場合には、専有スペースが大きくなるといった問題がある。
【0004】
そこで、かかる問題を解決するために、本件出願人は、特願平10−169225号(特開平11−345553号)「過電流遮断構造」において、導電ワイヤを用いた過電流遮断構造を提案して専有スペースを小さくできるようにした。
【0005】
図24は、上記出願で提案した過電流遮断構造の一例を示す斜視図である。同図において、1,2は各々一対の導電体をなす接続端子、3は金等からなる導体ワイヤ、4は樹脂層、5は薄肉被覆層である。この薄肉被覆層5は、樹脂層4を形成する際に、同時に導体ワイヤ3の経路付近を円形に窪ませて形成したものであり、凹部となっている。
【0006】
かかる過電流遮断構造では、過電流が導体ワイヤ3を流れると、導体ワイヤ3の周囲の樹脂が炭化する前に、該導体ワイヤ3の急激な温度上昇に起因する熱応力によって、導体ワイヤ3の近傍の構造的に弱い薄肉被覆層5の部分に応力が集中し、この部分にクラックが生じ、あるいは、クラックが生じて一部の樹脂が弾き飛ばされ、これによって、溶融した導体ワイヤ3の逃げ場を形成して、あるいは、溶融した導体ワイヤ3の一部も弾き飛ばされて導体ワイヤ3による通電経路が遮断されるものである。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、かかる過電流遮断構造では、そのヒューズとしての溶断特性は、導体ワイヤ3と封止樹脂層4とに依存することになり、多種多様な回路との保護協調を行う上で、その細かな遮断特性の調整には、改善の余地があった。
【0008】
本発明は、上述の点に鑑みてなされたものであって、多様な遮断特性を実現できる過電流遮断構造を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明では、上述の目的を達成するために、次のように構成している。
【0010】
すなわち、本発明の過電流遮断構造は、通電経路の過電流によって遮断すべき複数箇所を、導体ワイヤでそれぞれ構成するとともに、樹脂封止し、前記複数箇所の少なくとも一箇所の導体ワイヤは、第1の樹脂と、該第1の樹脂とは熱膨張率が異なる他の樹脂とを用いて、前記両樹脂の境界層がほぼ直線状に前記導体ワイヤを横切るように封止し、各箇所における遮断特性を異ならせている。他の箇所の導体ワイヤは、単一の樹脂で封止してもよい。
【0013】
本発明によると、少なくとも一箇所の導体ワイヤを封止する二つの樹脂の熱膨張率が異なるので、温度の上昇によって前記境界層に熱応力が発生してずれが生じ、境界層に位置する導体ワイヤが破断して通電経路を遮断できることになり、温度ヒューズとして使用することもできる。
他の箇所の導体ワイヤが単一の樹脂で封止されている場合は、その導体ワイヤに過電流が流れて、導体ワイヤの周囲の樹脂が炭化する前に、該導体ワイヤの急激な温度上昇による膨張によって発生する熱応力によって、導体ワイヤの近傍の構造的に弱い被覆層の部分(例えば、薄肉の部分)に応力が集中し、この部分にクラックが生じ、あるいは、クラックが生じて一部の樹脂が弾き飛ばされ、これによって、溶融した導体ワイヤの逃げ場が形成され、あるいは、溶融した導体ワイヤの一部も弾き飛ばされて導体ワイヤによる通電経路が遮断されるものである。しかも、遮断すべき複数箇所の遮断特性を異ならせているので、多種多様な回路との保護協調を行う上で有効である。
【0014】
本発明の他の実施態様においては、前記各箇所における前記導体ワイヤの材質、線径、および本数の少なくともいずれか一つを異ならせている。
【0015】
本発明によると、遮断すべき複数箇所の導体ワイヤの材質、線径、および本数の少なくともいずれか一つを異ならせて遮断特性を異ならせるので、これらの組み合わせによって、多様な遮断特性を実現できる。
【0019】
本発明の他の実施態様においては、前記遮断すべき複数箇所は、一対の導電体間を、前記導体ワイヤで接続してなり、前記各箇所における導電体の熱容量を異ならせている。
【0020】
ここで、熱容量を異ならせるとは、例えば、導電体の材質を異ならせたり、導体ワイヤが接続される部分の幅や厚みなどを異ならせて体積を異ならせればよい。
【0021】
本発明によると、過電流によって発熱してその熱応力を利用して過電流を遮断する導体ワイヤにおける発熱が、該導体ワイヤが接続されている導電体の熱容量を変えることで導体ワイヤから導電体への熱伝導の度合が変わることになり、これによって、遮断特性を異ならせることができる。
【0022】
本発明の好ましい実施態様においては、前記遮断すべき複数箇所は、一対の導電体間を、前記導体ワイヤで接続してなり、前記複数箇所の少なくとも一箇所の導電体には、熱伝導体が設けられるものである。
【0023】
本発明によると、過電流によって発熱してその熱応力を利用して過電流を遮断する導体ワイヤにおける発熱が、該導体ワイヤが接続されている導電体に熱伝導体を設けることで導電体に伝導しやすくなり、これによって、遮断特性を異ならせることができる。
【0024】
この熱伝導体として、例えば、金属ブロックや導電ペーストを用いることができ、金属ブロックの材質や大きさ、導電ペーストの量などを変えることで、遮断特性を異ならせることができる。
【0025】
本発明の好ましい実施態様においては、遮断すべき前記複数箇所が、直列に接続されている。
【0026】
本発明によると、遮断特性の異なる複数の箇所が直列に接続されているので、異なる特性を組み合わせた遮断特性となる。
【0029】
【発明の実施の形態】
以下、図面によって、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
【0030】
(実施の形態1)
図1は、本発明の一つの実施の形態に係る過電流遮断構造の外観斜視図であり、この実施の形態の過電流遮断構造は、一対の表面実装用の導電体としての接続端子11,21;12,22を二組有するとともに、各一対の接続端子11,21;12,22間をそれぞれ接続する金などからなる導体ワイヤ31,32を有しており、エポキシ樹脂等の樹脂4で封止されている。なお、図1においては、樹脂4部分を破線で示している。
【0031】
この樹脂4は、図2の断面図に示されるように、各導体ワイヤ31,32の経路近傍を円形に窪ませて薄肉として凹部51,52を形成したものであり、基本的には、本件出願人が先に提案した上述の過電流遮断構造を二組組み合わせた構成となっている。
【0032】
したがって、基本的には、過電流が導体ワイヤ31,32を流れて、導体ワイヤ31,32の周囲の樹脂4が炭化する前に、該導体ワイヤ31,32の急激な温度上昇による膨張によって発生する熱応力によって、導体ワイヤ31,32の近傍の構造的に弱い薄肉の樹脂被覆層の部分に応力が集中し、この部分にクラックが生じ、あるいは、クラックが生じて一部の樹脂4が弾き飛ばされ、これによって、溶融した導体ワイヤ31,32の逃げ場が形成され、あるいは、溶融した導体ワイヤ31,32の一部も弾き飛ばされて導体ワイヤ31,32による各通電経路が遮断されるという動作は、上述の過電流遮断構造と同様である。
【0033】
この実施の形態では、異なる二つの遮断特性を実現するために、リードフレームからなる二組の接続端子11,21;12,22における導体ワイヤ31,32の接続部近傍の熱容量を異ならせるものであり、このために、一方の組の接続端子11,21の幅W1は、図1に示されるように、他方の組の接続端子12,22の幅W2に比べて小さくして体積を小さくしている。
【0034】
このように導体ワイヤ31,32がそれぞれ接続されるリードフレームからなる接続端子11,21;12,22の熱容量を異ならせているので、過電流が流れたときの発熱体となる導体ワイヤ31,32の熱の接続端子11,21;12,22への伝導の度合いが異なることになり、導体ワイヤ31,32の温度上昇の度合いが相違して遮断特性が異なることになる。
【0035】
図3は、この実施の形態における遮断(溶断)特性を示す図であり、実線は、一方の組の接続端子11,21側の導体ワイヤ31の遮断特性を示し、破線は、他方の組の接続端子12,22側の導体ワイヤ32の遮断特性を示している。
【0036】
一方の組の接続端子11,21は、導体ワイヤ31の接続部における体積を小さくして他方の組の接続端子12,22に比べて熱容量を小さくしている。このため、過電流が流れた場合に、導体ワイヤ31で発生する熱の一方の組の接続端子11,21への伝導が、導体ワイヤ32で発生する熱の他方の組の接続端子12,22への伝導に比べてしにくくなり、これによって、導体ワイヤ31の方が、温度上昇し易くなり、他方の接続端子12,22の組の導体ワイヤ32に比べて通電経路を遮断し易くなる。
【0037】
この実施の形態では、接続端子11,21;12,22の体積を異ならせて遮断特性を異ならせたけれども、本発明の他の実施の形態として、図4に示されるように、例えば、一方の組の接続端子11,21の導体ワイヤ31の近傍に、熱伝導体として金属ブロック6を追加してもよい。これによって、図5に示されるように、金属ブロック6を追加することで、一方の組の接続端子11,21の熱容量が増加することになる。このため、過電流が流れた場合に、導体ワイヤ31で発生する熱の一方の組の接続端子11,21への伝導が、導体ワイヤ32で発生する熱の他方の組の接続端子12,22への伝導に比べてし易くなり、これによって、導体ワイヤ31の方が、温度上昇しにくくなり、他方の接続端子12,22の組の導体ワイヤ32の方が通電経路を遮断し易くなる。
【0038】
他の実施の形態として、金属ブロック6に代えて、図6に示されるように、熱伝導体として導電ペースト7を塗布して接続端子11,21;12,22の熱容量を異ならせるようにしてもよい。
【0039】
なお、接続端子11,21;12,22、金属ブロック6および導電ペースト7の種類、体積や位置を調整することによって、遮断特性を細かく調整することができる。
【0040】
また、上述の実施の形態では、一方の組の接続端子11,21のみに金属ブロック6や導電ペースト7を設けたけれども、他方の組の接続端子12,22にも設けるようにしてもよい。
【0041】
上述の各実施の形態では、導体ワイヤ31,32が接続される接続端子11,21;12,22の熱容量を異ならせて遮断特性を異ならせたけれども、本発明の他の実施の形態として、例えば、AuやAlといった導体ワイヤ31,32の材質、本数および線径の少なくともいずれか一つを異ならせることによって、遮断特性を異ならせてもよい。
【0042】
さらに、導体ワイヤ31,32を封止する樹脂被覆層の厚み、すなわち、凹部の形状を異ならせて遮断特性を異ならせるようにしてもよい。
【0043】
(実施の形態2)
図7は、本発明の他の実施の形態に係る過電流遮断構造の平面図であり、図8は、その切断面線A−Aから見た断面図であり、図9は、その切断面線B−Bから見た断面図であり、上述の実施の形態に対応する部分には、同一の参照符号を付す。
【0044】
この実施の形態の過電流遮断構造は、一対の表面実装用の導電体としての接続端子11,21;12,22を二組有するとともに、各一対の接続端子11,21;12,22間を接続する金などからなる導体ワイヤ31,32を有しており、エポキシ樹脂等の樹脂4および後述のゲル状のシリコーン樹脂8で封止されている。
【0045】
樹脂4は、一方の組の接続端子11,21の導体ワイヤ31を封止するとともに、
図8に示されるように、その経路近傍を、円形に窪ませて上述の実施の形態と同様に、薄肉の凹部51を形成したものである。この樹脂4は、図9に示されるように、他方の導体ワイヤ32は封止しておらず、この導体ワイヤ32は、前記樹脂4とは異なる材料、この実施の形態では、ゲル状のシリコーン樹脂8を充填して封止しており、薄肉被覆層は、形成されていない。
【0046】
この他方の導体ワイヤ32は、過電流によって封止樹脂にクラック等を生じさせるのではなく、溶断して通電経路を遮断するものであり、その周囲は、ゲル状のシリコーン樹脂8で覆われているので、炭化してバイパス経路が形成されることもない。
【0047】
これに対して、一方の導体ワイヤ31は、上述の各実施の形態と同様に、過電流が導体ワイヤ31を流れて、導体ワイヤ31の周囲の樹脂4が炭化する前に、該導体ワイヤ31の急激な温度上昇による膨張によって発生する熱応力によって、導体ワイヤ31の近傍の構造的に弱い薄肉の樹脂4の被覆層の部分に応力が集中し、この部分にクラックが生じ、あるいは、クラックが生じて一部の樹脂4が弾き飛ばされ、これによって、溶融した導体ワイヤ31の逃げ場が形成され、あるいは、溶融した導体ワイヤ31の一部も弾き飛ばされて導体ワイヤ31による通電経路が遮断されるものである。
【0048】
図10は、この二組の接続端子11,21;12,22間の各導体ワイヤ31,32の遮断特性を示しており、他方の導体ワイヤ32は、一方の導体ワイヤ31のように周囲の樹脂にクラックを生じさせて遮断するものではなく、溶融によって通電経路を遮断するので、破線で示される一方の導体ワイヤ31に比べてより低い電流値で遮断されることになる。
【0049】
したがって、負荷短絡時の過電流は、一方の導体ワイヤ31で遮断し、定常動作時の定格を越えるような過電流(異常電流)は、他方の導体ワイヤ32で遮断するといったことが可能となる。
【0050】
この実施の形態では、並列な二組の接続端子11,21;12,22間の各通電経路を遮断する場合について説明したけれども、本発明の他の実施の形態として、図11の平面図に示されるように、各組の一方の接続端子21,22が連結された直列な接続端子11,12;23間の通電経路を遮断するようにしてもよい。この場合には、上述の図10の2種類の遮断特性を組み合わせた遮断特性が得られることになる。
【0051】
(実施の形態3)
図12は、本発明のさらに他の実施の形態に係る過電流遮断構造の外観斜視図であり、図13は、その切断面線A−Aから見た断面図であり、図14は、その切断面線B−Bから見た断面図であり、上述の実施の形態に対応する部分には、同一の参照符号を付す。
【0052】
この実施の形態の過電流遮断構造は、一対の表面実装用の導電体としての接続端子11,21;12,22を二組有するとともに、各一対の接続端子11,21;12,22間を接続する金などからなる導体ワイヤ31,32を有しており、エポキシ樹脂等の樹脂4およびゲル状のシリコーン樹脂8で封止されている。
【0053】
樹脂4は、各導体ワイヤ31,32の通電経路を含む中央部分を円形に窪ませて凹部5を形成したものであり、他方の導体ワイヤ32は、その中央部分がこの凹部5内に突出し、一方の導体ワイヤ31は、完全に封止されて凹部5の部分が薄肉被覆層となっている。なお、他の実施の形態として、各導体ワイヤ31,32に個別的に対応させて二つの凹部を形成してもよい。
【0054】
この実施の形態の凹部5には、上述の実施の形態と同様に、ゲル状のシリコーン樹脂8を充填して封止しており、他方の導体ワイヤ32の近傍には、薄肉被覆層は、形成されていない。
【0055】
この実施の形態では、他方の導体ワイヤ32は、過電流によって溶断して通電経路を遮断するものであり、その周囲は、ゲル状のシリコーン樹脂8で覆われているので、炭化してバイパス経路が形成されることもない。
【0056】
一方の導体ワイヤ31は、該ワイヤ31に過電流が流れて、導体ワイヤ31の近傍の構造的に弱い薄肉の樹脂被覆層の部分に応力が集中した際に、変形し易い材料であるゲル状のシリコーン樹脂8によってその変形が許容されることになり、これによって、クラックが生じ、あるいは、クラックが生じて一部の樹脂4が分離され、これによって、溶融した導体ワイヤ31の逃げ場が形成され、溶融した導体ワイヤ31がそこに流れ込むことにより、導体ワイヤ31による通電経路が遮断されるものである。
【0057】
このように、凹部5に、変形し易いゲル状のシリコーン樹脂8を充填しているので、かかる過電流遮断構造の全体を、例えば、図15に示されるように、樹脂9で封止して電子部品や機器に内蔵させた場合にも、ゲル状のシリコーン樹脂8によってその変形が許容されるので、上述のようにして通電経路を遮断できることになる。
【0058】
(実施の形態4)
図16は、遮断特性の異なる遮断素子の一例を示すものであり、上述の各実施の形態の過電流遮断構造に組み合わせることができる。
【0059】
この遮断素子10は、一対の表面実装用の導電体としての接続端子1,2間を接続する金などからなる導体ワイヤ3を有しており、線膨張率が異なる2種類の樹脂11,12を用いて、図17の断面図に示されるように、前記両樹脂11.12の境界層が、導体ワイヤ3を水平に横切るように封止されている。なお、他の実施の形態として、両樹脂11,12の境界層は、導体ワイヤ3を斜め方向や垂直方向に横切ってもよい。
【0060】
導体ワイヤ3の接続端子1,2との接続部を封止する第1の樹脂11は、線膨張率が小さく、また、第2の樹脂の成形に耐え得るために熱硬化性樹脂であり、この第1の樹脂11を覆う第2の樹脂12は、線膨張率が大きい熱硬化性樹脂または熱可塑性樹脂である。
【0061】
この遮断素子10は、加熱されると、2種類の樹脂11,12の熱膨張の差によって、図18の矢符に示されるように、両樹脂11,12の境界層部分の導体ワイヤ3に熱応力が加わることになり、これによって、導体ワイヤ3が機械的に切断されて通電経路が遮断されるものである。
【0062】
すなわち、温度の上昇によって通電経路を遮断する温度ヒューズとして機能することになる。
【0063】
従来の温度ヒューズは、例えば、図19に示されるように、低融点合金13を特殊樹脂14で覆った感温素子をリード線15で支える構造となっており、図20に示されるように、低融点合金13の溶融によってリード線15,15間を遮断するものである。なお、16は封止樹脂、17は絶縁ケースである。
【0064】
このような従来例の温度ヒューズでは、低融点合金13の融点を越える加熱に対して、すぐに反応してしまうために、半田付けなどの実装工程における温度上昇で不所望に溶融してしまう場合があるといった難点がある。
【0065】
これに対して、図16の遮断素子10は、2種類の樹脂11,12の熱膨張率の相違を利用して導体ワイヤ3を遮断するので、動作点付近の温度であっても極短時間では、導体ワイヤ3が切断されないので、例えば、リフロー半田付け工程などの実装工程での短時間の温度上昇によって、従来例のように不所望に通電経路を遮断するようなことがない。
【0066】
また、ワイヤボンディングと樹脂封止とによって形成されるので、従来例の温度ヒューズに比べて安価となる。
【0067】
本発明の他の実施の形態として、2重成形後に接続端子1,2を折り曲げ加工することによって、図21に示されるように、ディスクリートタイプの遮断素子としてもよい。
【0068】
また、上述の実施の形態のように第1の樹脂11を、第2の樹脂12で完全に覆うような構成に限らず、例えば、図22および図23に示されるように、上下二層に構成してもよい。
【0069】
(その他の実施の形態)
上述の実施の形態1〜3では、二組の接続端子間の通電経路、すなわち、2箇所の通電経路の遮断に適用して説明したけれども、本発明は、3箇所以上の通電経路の遮断にも同様に適用できるものである。
【0070】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、遮断すべき複数箇所の遮断特性を異ならせているので、多種多様な回路との保護協調を行う上で有効であるとともに、過電流が導体ワイヤを流れた場合に、温度の上昇によって二つの樹脂の境界層に熱応力が発生してずれが生じ、境界層に位置する導体ワイヤが破断して、通電経路が確実に遮断されるので、従来のヒューズに比べて小型化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一つの実施の形態に係る過電流遮断構造の斜視図である。
【図2】図1の断面図である。
【図3】図1の過電流遮断構造の遮断特性を示す図である。
【図4】図1の変形例を示す斜視図である。
【図5】図4の遮断特性を示す図である。
【図6】図1の他の変形例を示す斜視図である。
【図7】本発明の他の実施の形態の平面図である。
【図8】図7の切断面線A−Aから見た断面図である。
【図9】図7の切断面線B−Bから見た断面図である。
【図10】図7の遮断特性を示す図である。
【図11】図7の変形例の平面図である。
【図12】本発明のさらに他の実施の形態の斜視図である。
【図13】図12の切断面線A−Aから見た断面図である。
【図14】図12の切断面線B−Bから見た断面図である。
【図15】図12の過電流遮断構造を樹脂封止した場合の断面図である。
【図16】遮断特性の異なる遮断素子の斜視図である。
【図17】図16の断面図である。
【図18】温度上昇による導体ワイヤの破断を示す断面図である。
【図19】従来の温度ヒューズを示す図である。
【図20】図19の温度ヒューズが溶断した状態を示す図である。
【図21】図16の変形例を示す図である。
【図22】図16の他の変形例の断面図である。
【図23】図22の温度上昇による導体ワイヤの破断を示す断面図である。
【図24】先に提案している過電流遮断構造の斜視図である。
【符号の説明】
1,11,12 接続端子
2,21,22 接続端子
3,31,32 導体ワイヤ
4,9,11,12 樹脂
6 金属ブロック
7 導電ペースト
8 ゲル状のシリコーン樹脂
Claims (7)
- 通電経路の過電流によって遮断すべき複数箇所を、導体ワイヤでそれぞれ構成するとともに、樹脂封止し、前記複数箇所の少なくとも一箇所の導体ワイヤは、第1の樹脂と、該第1の樹脂とは熱膨張率が異なる他の樹脂とを用いて、前記両樹脂の境界層がほぼ直線状に前記導体ワイヤを横切るように封止し、各箇所における遮断特性を異ならせたことを特徴とする過電流遮断構造。
- 前記各箇所における前記導体ワイヤの材質、線径、および本数の少なくともいずれか一つを異ならせた請求項1記載の過電流遮断構造。
- 前記遮断すべき複数箇所は、一対の導電体間を、前記導体ワイヤで接続してなり、前記各箇所における導電体の熱容量を異ならせた請求項1または2に記載の過電流遮断構造。
- 前記遮断すべき複数箇所は、一対の導電体間を、前記導体ワイヤで接続してなり、前記複数箇所の少なくとも一箇所の導電体には、熱伝導体が設けられる請求項1〜3のいずれか記載の過電流遮断構造。
- 前記熱伝導体が、金属ブロックである請求項4記載の過電流遮断構造。
- 前記熱伝導体が、導電ペーストである請求項4記載の過電流遮断構造。
- 遮断すべき前記複数箇所が、直列に接続されている請求項1〜6のいずれかに記載の過電流遮断構造。
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