JP3812240B2 - 圧縮着火エンジンの排気浄化装置 - Google Patents

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  • Exhaust Gas After Treatment (AREA)

Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、圧縮着火エンジンの排気浄化装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
エンジンの排気中の有害成分であるNOxの発生を抑制する手段として、吸気系に排気の一部を再循環させる排気還流装置(EGR装置)が用いられている。このEGR装置では、排気の一部を吸気系に導くためのEGR通路にEGR弁を装着し、EGRの必要な領域でEGR弁を開いて所定量の排気(EGRガス)を吸入空気に混合させることにより、燃焼時の最高温度を下げてNOxの発生量を抑えることができる。
【0003】
また、排気中のNOxを除去する排気浄化装置として特許公報第2600492号に開示されたものがある。これによると、流入する排気の空燃比がリーンのときに排気中のNOxを吸収し、流入する排気中の酸素濃度が低下したときに吸収したNOxを放出するNOx吸収剤を排気通路に配置し、エンジンをリーン空燃比で運転しているときの排気中のNOxをNOx吸収剤に吸収させている。
【0004】
そして、NOx吸収剤のNOx吸収量が増大するとNOx吸収剤のNOx吸収能力が低下してくるので、リーン空燃比運転が一定時間続きNOx吸収剤の吸収したNOx量が増大した場合にはエンジンの運転空燃比を短時間リッチ又は理論空燃比に切り換えて排気中の酸素濃度を低下させ、NOx吸収剤に吸収されたNOxを放出させている。放出されたNOxは排気中の未燃HC、CO等の成分により還元浄化される。
【0005】
なお、この特許公報第2600492号は火花点火エンジンを対象としたものであるが、圧縮着火エンジン、特にディーゼルエンジンであっても、吸気通路に吸気絞り弁(スロットル弁)を設け、NOx吸収剤からNOxを放出させる際に吸気絞り弁を閉弁方向に制御し且つ燃料噴射量を一定量増量することにより、あるいは、NOx吸収剤上流の排気中に別途炭化水素を供給することにより、NOx吸収剤に流入する排気をリッチ化でき、同様のNOx放出浄化処理が可能である。
【0006】
【発明が解決しようとしている問題点】
しかしながら、拡散燃焼が主体のディーゼルエンジンにおいて吸気絞り弁を閉弁方向に制御し、燃焼室内の平均空燃比をリッチ化すると、燃焼が大幅に悪化し、NOxは低減されるものの多量のスモークが発生する。また、この状態で燃料噴射量を増量させるとNOx吸収剤に供給されるHC、COは増加するが、スモークはさらに増加する。
【0007】
さらに、空気過剰率が1以下となると比熱比が小さくなって熱効率が低下し、また、吸入空気量の減少に伴いポンピングロスが増加するのでエンジンが発生するトルクが低下し、運転性が悪化する。
【0008】
一方、NOx吸収剤上流の排気中に別途炭化水素を供給することによってNOx吸収剤へ流入する排気をリッチ化する場合、その炭化水素を供給する装置を追加する必要があり、構造が複雑になる。供給する炭化水素として軽油以外を用いる場合には、それを貯蔵するタンクを燃料タンクとは別に車両に装着する必要もある。また、軽油を供給する場合であっても、軽油には重質の多環芳香族等が多量に含まれており、供給された軽油の多くは還元に寄与せずそのまま放出されてしまうという問題があった。
【0009】
本発明は、上記技術的課題を鑑みてなされたものであり、排気通路にNOx吸収剤を備えた圧縮着火エンジンにおいて、リーン燃焼運転時にNOx吸収剤に吸収されたNOxを空気過剰率を低下させて放出浄化する際の排気組成の悪化と運転性の悪化を防止することを目的とする。
【0010】
【問題点を解決するための手段】
第1の発明は、排気の一部を吸気系に還流することにより燃焼温度を下げるとともに燃料噴射時期の遅角化により着火遅れ期間を長くし、上死点後に熱発生パターンが単段の予混合燃焼の形となる燃焼を行う圧縮着火エンジンの排気浄化装置において、流入する排気の空気過剰率に応じて排気中のNOxを吸収あるいは吸収したNOxを放出するNOx吸収剤と、吸収されたNOx量の増大による前記NOx吸収剤のNOx吸収能力の低下を判断する手段と、前記NOx吸収剤のNOx吸収能力が低下したと判断された場合に、前記上死点後の熱発生パターンが単段の予混合燃焼の形となる燃焼を維持した状態で空気過剰率を低下させ、前記NOx吸収剤に吸収されたNOxを放出浄化処理する手段とを備えたこと特徴とするものである。
【0011】
第2の発明は、排気の一部を吸気系に還流することにより燃焼温度を下げるとともに燃料噴射時期の遅角化により着火遅れ期間を長くし、上死点後に熱発生パターンが単段の予混合燃焼の形となる燃焼を行う圧縮着火エンジンの排気浄化装置において、流入する排気の空気過剰率に応じて排気中のNOxを吸収あるいは吸収したNOxを放出するNOx吸収剤と、エンジンの吸入空気量を調整する吸入空気量調整手段と、排気還流量を調整する排気還流量調整手段と、NOx吸収量の増大による前記NOx吸収剤のNOx吸収能力の低下を判断する手段と、前記NOx吸収剤のNOx吸収能力が低下したと判断された場合に、運転条件に応じて前記吸入空気量調整手段により吸入空気量を制御するとともに、そのときの吸入空気量又は吸気管圧力に応じて前記排気還流量調整手段により排気還流量を制御し、前記上死点後に熱発生パターンが単段の予混合燃焼の形となる燃焼を維持した状態で空気過剰率を所定値まで低下させ、前記NOx吸収剤に吸収されたNOxを放出浄化処理するNOx放出浄化処理手段とを備えたことを特徴とするものである。
【0012】
第3の発明は、第2の発明において、吸入空気量制御手段が吸気通路に設けられた吸気絞り弁であることを特徴とするものである。
【0013】
第4の発明は、第2の発明において、吸入空気量制御手段がエンジンの過給圧を制御することで吸入空気量を制御することを特徴とするものである。
【0014】
第5の発明は、第2から第4の発明において、前記吸入空気量調整手段によって調整された吸入空気量あるいは吸気管圧力に応じて燃料噴射量を補正する燃料噴射量補正手段を備えたことを特徴とするものである。
【0015】
第6の発明は、第5の発明において、燃料噴射量補正手段が、吸入空気量が所定の基準値以下あるいは吸気管圧力が所定の基準値以下の場合に、燃料噴射量を所定の基準値と吸入空気量又は吸気管圧力の差に応じて増量補正することを特徴とするものである。
【0016】
第7の発明は、第2から第4の発明において、前記吸入空気量調整手段によって調整された吸入空気量あるいは吸気管圧力に応じて燃料噴射時期を補正する燃料噴射時期補正手段を備えたことを特徴とするものである。
【0017】
第8の発明は、第7の発明において、燃料噴射時期補正手段が、吸入空気量が所定の基準値以下あるいは吸気管圧力が所定の基準値以下の場合に、燃料噴射時期を所定の基準値と吸入空気量又は吸気管圧力との差に応じて進角補正することを特徴とするものである。
【0018】
第9の発明は、第2から第4の発明において、吸入空気量調整手段が、吸入空気量をエンジン負荷及びエンジン回転数に応じて調整することを特徴とするものである。
【0019】
第10の発明は、第2から第9の発明において、NOx放出浄化処理手段が、前記NOx吸収剤にNOx量が所定値以上吸収されたと判断された後に所定期間前記NOx放出浄化処理を行うことを特徴とするものである。
【0020】
第11の発明は、第2から第10の発明において、NOx放出浄化処理手段が、前記NOx吸収剤にNOx量が所定値以上吸収されたと判断された後の減速中、前記吸入空気量調整手段により吸入空気量を最小値に調整するとともに、前記排気還流量調整手段により排気還流量を最大値に調整し、定常又は加速運転条件に移行したと判断された後に前記NOx放出浄化処理を行うことを特徴とするものである。
【0021】
第12の発明は、第2から第11の発明において、NOx吸収剤温度が所定値以下の場合、前記NOx放出浄化処理手段が前記NOx放出浄化処理を行わないことを特徴とするものである。
【0022】
【作用及び効果】
第1から第4の発明によると、NOx吸収剤に吸収されたNOxを放出させるときにも上死点後の熱発生パターンが単段の予混合燃焼の形となる燃焼を維持するようにしたことにより、スモーク、粒子状物質(PM)を増加させることなくNOx吸収剤からNOxを放出させることができる。また、このとき、エンジンからのCO排出量が増大するので、NOx吸収剤から放出されたNOxを効果的に還元浄化することができる。
【0023】
また、第5、第6の発明によると、吸入空気量又は吸気管圧力に応じて燃料噴射量が補正されるので、吸入空気量の減少に伴うトルク低下、具体的にはポンピングロスや熱効率の悪化に伴うトルク低下が補正され、吸入空気量を減少させたことによるトルク段差が無くなり、運転性の悪化を防止できる。
【0024】
また、第7、第8の発明によると、吸入空気量又は吸気管圧力に応じて、燃料噴射時期が補正される。これにより、吸入空気量減少によって生じる圧縮上死点での圧縮温度低下に伴う着火遅れ期間の増加が補正され、着火遅れ増加による排気組成の悪化を最小限に抑えることができ、熱発生パターンが単段の予混合燃焼の形態を維持できるとともに失火の発生も防止できる。
【0025】
また、第9の発明によると、吸入空気量がエンジン負荷及び回転数に応じて制御されるので、常に適正な空気過剰率に維持され、空気過剰率が小さすぎることによる燃費悪化が防止されるとともに、空気過剰率がNOx吸収剤からNOxが効率的に放出される値からずれてしまい、NOxの放出浄化処理が不完全に行われるのを防止できる。
【0026】
また、第10の発明によると、NOx吸収剤にNOxが所定量以上吸収されたと判断されたときにNOxの放出浄化処理が行われる。これにより、必要以上にNOx放出浄化処理が行われることによる燃費の悪化を抑えることができる。
【0027】
また、第11の発明によると、減速中、吸入空気量が最小値に制御されるとともに排気還流量が最大値に制御されるので、NOx吸収剤への排気の流入が最小限に抑えられ、NOx吸収剤の保温及びHC、CO等との反応による昇温が図られる。これにより、その後定常又は加速運転条件に移行し、吸収されたNOxを放出浄化すべく空気過剰率を所定値まで低下させるときに、NOx吸収剤から効果的にNOxを放出できる温度条件とすることができる。
【0028】
また、第12の発明によるとNOx吸収剤の温度が所定値以下の場合はNOxの放出浄化処理は行われない。これにより、NOxを放出浄化可能な状況でのみNOx放出浄化処理が行われるので、NOxを放出浄化できない状況にもかかわらずNOx放出浄化処理が行われ、燃費だけが悪化するという状況を回避できる。
【0029】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。
【0030】
図1は、本発明に係る排気浄化装置を備えたディーゼルエンジンの概略構成を示す。図中1は可変容量過給機であり、過給機1はエアフィルタ2を介して吸気通路3に吸入された空気を吸気コンプレッサ1Aにより圧縮過給し、下流の吸気マニホールド4へ送り込む。
【0031】
エンジン5はコモンレール式の燃料噴射装置を備えたディーゼルエンジンであり、燃焼室毎に装着された燃料噴射弁6には燃料ポンプ7によって加圧された燃料が供給され、燃料噴射弁6から各燃焼室に向けて燃料が噴射される。燃料噴射弁6から噴射された燃料は圧縮着火して燃焼する。
【0032】
また、排気マニホールド8の途中と吸気マニホールド4の途中とを接続する排気還流路(以下、EGR通路)10が設けられ、このEGR通路10の途中には排気還流弁(以下、EGR弁)9が介装される。デューティ制御される電磁弁12で大気との希釈割合を変化させるとEGR弁9の圧力室13に導かれる圧力が変化し、EGR弁9の開度が変化してEGR率が変化する。
【0033】
また、吸気コンプレッサ1Aの上流には吸気を絞る吸気絞り弁20が介装されている。吸気絞り弁20の開度は、デューティ制御される電磁弁22でバキュームポンプ11からの負圧と大気との希釈割合を変化させ、ダイアフラム装置21の圧力室21Aに導かれる圧力を変化させることにより制御される。
【0034】
また、エンジン5の各気筒にはタンジェンシャルポートとヘリカルポートが設けられ、タンジェンシャルポートにはスワールコントロール弁が設けられている(図示せず)。スワールコントロール弁は負圧アクチュエータに接続されており、スワールコントロール弁開度の制御は負圧アクチュエータに供給される負圧を制御する電磁弁を制御することにより行われる。
【0035】
これらEGR弁9、吸気絞り弁20、スワールコントロール弁の開度の制御及び燃料の噴射量・噴射時期の制御はコントローラ30により行われる。
【0036】
燃焼後の排気は排気マニホールド8を通って過給機1の排気タービン1Bを回転駆動した後、NOx吸収剤16で浄化され、マフラー17で消音されて大気中に放出される。
【0037】
また、過給機1には可変ノズル1Gが設けられている。この可変ノズル1Gはダイアフラム装置1Hによって開度が制御される。可変ノズル1Gの開度に応じて排気タービン1Bの回転数が制御されるとエンジン5の吸入空気量が制御される。ダイアフラム装置1Hの圧力室1Jへ供給される負圧は、デューティ制御される電磁弁1Kでバキュームポンプ11からの負圧と大気との希釈割合を調整することによって制御される。
【0038】
また、過給機1にはウエストゲートバルブ1Fが設けられている。ウエストゲートバルブ1Fはダイアフラム装置1Dによって開度が制御される。ウエストゲートバルブ1Fの開度に応じても排気タービン1Bの回転数が制御され、エンジン5の吸入空気量が制御される。ダイアフラム装置1Dの圧力室1Eへの供給負圧は、デューティ制御される電磁弁1Cでバキュームポンプ11からの負圧と大気との希釈割合を調整することによって制御される。なお、可変ノズル1Gとウエストゲートバルブ1Fは、どちらか一方が設けられていれば吸入空気量の制御が可能である。これら可変ノズル1G、ウエストゲートバルブ1Fの制御もコントローラ30により行われる。
【0039】
一方、過給機1の吸気コンプレッサ1A上流の吸気通路3には、吸入空気量を検出するエアフローメータ31が設けられている。また、エンジン回転数Neを検出するエンジン回転数センサ32、アクセルペダル操作量を検出するアクセル操作量センサ33、クランク角を検出するクランク角度センサ34、NOx吸収剤上流には温度センサ35等が設けられる。また、吸気マニホールド4には吸気管圧力センサ36が設けられ、これらセンサの出力はコントローラ30に入力される。
【0040】
図2は燃料噴射装置の概略構成を示す。
【0041】
エンジン5の気筒毎に設けられた燃料噴射弁6は、噴射管86を介してコモンレール85に接続されている。コモンレール85には供給管87、チェック弁88を介して燃料ポンプ7が接続されている。燃料ポンプ7は燃料タンク89から燃料フィルタ90を介して、燃料フィードポンプ91を経て吸入された燃料を昇圧し、所定の高圧に制御する。すなわち、エンジン回転に同期してカムロブを有するドライブシャフト92が回転し、燃料ポンプ7内のピストンが往復運動し、燃料フィードポンプ91からの燃料が加圧され、コモンレール85に供給される。また、燃料ポンプ7には常にコモンレール圧を所望の圧力に制御するための電磁弁93が設けられる。
【0042】
コントローラ30は、エンジン回転数Ne、アクセル操作量、クランク角度から判断されるエンジン状態に応じて決定される最適の噴射量、噴射時期となるよう燃料噴射弁6を駆動する。さらに、コモンレール圧を検出する圧力センサ94がコモンレール85に設けられ、コントローラ30はこの圧力センサ94の信号が予め負荷やエンジン回転数Neに応じて設定した最適値となるように吐出量を制御する。
【0043】
次に、図3から図5を参照しながらNOx吸収剤16について説明する。
【0044】
NOx吸収剤16は、例えばアルミナ等の担体を使用し、この担体上に例えばセシウムCsのようなアルカリ金属、バリウムBa、カルシウムCaのようなアルカリ土類、ランタンLaのような希土類から選ばれた少なくとも一つと、白金Ptのような貴金属とが担持されている。
【0045】
このNOx吸収剤16は、空気過剰率が所定値以上で且つ吸収剤16の温度(吸収剤入口の排温でほぼ代用可能)が所定の範囲内(T1〜T2)の場合にNOxを吸収する。そのため、図3に示すように、所定の排温T1(例えば100℃)以下ではNOxの吸収量が減少し、所定温度T2(例えば450℃)以上ではNOxの吸収量が減少する。
【0046】
NOxの吸収・放出作用の詳細なメカニズムについては明らかでない部分もあるが、NOxの吸収・放出作用は図4、図5に示すようなメカニズムで行われているものと考えられる。
【0047】
すなわち、リーン燃料運転時はNOx吸収剤に流入する排気がかなりリーンである為、図4に示されるように排気中の酸素O2がO2 -の形で白金Ptの表面に付着する。一方、排気中のNOは白金Ptの表面上でこのO2 -と反応し、NO2となる(2NO+O2→2NO2)。生成されたNO2の一部は白金Pt上で酸化されつつ吸収剤内に吸収されてランタンLaと結合しながら硝酸イオンNO3 -の形で吸収剤内に拡散する。このようにしてNOxがNOx吸収剤16内に吸収される。なお、この反応は還元剤となるHC、COが少ない条件で発生するものであり、還元剤が多いと吸収は行われない。
【0048】
これに対し、図5に示すように、温度が所定範囲内に有り、且つ空気過剰率が所定値以下になると、吸収されていたNOxは、平衡分解によってNO、O2として放出されるとともに排気中のHC、COによって還元反応が起こり、N2となる。図3で所定温度T2以上でNOxの吸収量が減少しているのは、このようにNOxの平衡分解によって分解されて放出されるNOxの量が増大するためである。
【0049】
なお、ここでは担体上に白金PtおよびランタンLaを担持させた場合を例にとって説明したが他の貴金属、アルカリ金属、アルカリ土類、希土類を用いても同様なメカニズムでNOxの吸収・放出が行われる。
【0050】
次に、コントローラ30が行う制御について、図6のフローチャートを参照しながら説明する。
【0051】
これによると、まず、ステップS1でエンジン回転数センサ32、アクセル操作量センサ33の出力が読み込まれ、ステップS2で図7に示すマップより目標燃料噴射量Qが読み込まれる。
【0052】
次にステップS3で後述する噴射量補正量が読み込まれ、ステップS4で最終噴射量が、ステップS2で読み込まれた目標燃料噴射量QとステップS3で読み込まれた噴射量補正量を加算することによって求められる。
【0053】
ステップS5では図8に示すマップより燃料噴射時期の目標噴射時期(噴射開始時期)が読み込まれ、ステップS6で後述する噴射時期補正量が読み込まれ、ステップS7で最終噴射時期が、ステップS5で読み込まれた目標噴射時期とステップS6で読み込まれた噴射時期補正量を加算することによって求められる。
【0054】
ステップS8では図9に示すマップから目標噴射圧が読み込まれる。この目標噴射圧に基づきステップS9では燃料ポンプ7の吐出量を制御する電磁弁93に対して制御値が出力される。
【0055】
そして、ステップS10ではコモンレール85内の燃料圧力が圧力センサ94で読み込まれ、ステップS11では燃料噴射弁6を駆動する圧電素子への通電時期(噴射開始時期)と通電期間が演算される。通電時間は、例えば、燃料圧力毎に設定された所定の通電期間マップ等から補間計算によって求められる。そして、ステップS12では、所定の噴射時期からステップS11で演算した期間だけ燃料噴射弁6を駆動する圧電素子に通電され、燃料が噴射される。
【0056】
さらにステップS13では、目標EGR弁開度が図10に示すマップより読み込まれる。図10は便宜上縦軸をトルクで記載しているが、目標噴射量とエンジン回転数からのマップでも良い。ステップS14では後述するEGR弁開度補正量が読み込まれ、ステップS15では目標EGR弁開度とEGR弁開度補正量を加算することによって最終EGR弁開度が演算される。
【0057】
この最終EGR弁開度に応じて、ステップS16では、例えば、EGR弁開度に応じたマップから読み出す等によりEGR弁9を制御する電磁弁12のデューティ比が演算され、ステップS17でその値が出力される。
【0058】
さらに、ステップS18で図11に示すマップから要求スワール比が読み込まれ、ステップS19でスワールコントロール弁を負圧アクチュエータを介して制御する電磁弁に出力するデューティ比が演算され、ステップS20でこれが出力されることによって所望のスワール比が実現される。なお、このフローには示していないが、EGR率はエンジン5の冷却水温度が低い場合は減量補正され、また、燃料噴射時期は進角される。
【0059】
次に、ステップS21では図12に示す可変ノズル過給機1の目標ノズル開度がマップから読み出され、ステップS22で後述するノズル開度補正量が読み込まれる。そして、ステップS23で目標ノズル開度とノズル開度補正量を加算することによって最終ノズル開度が求められ、ステップS24で電磁弁1Kに出力するデューティ比が演算され、ステップS25で出力されることによって所望のノズル開度を得る。
【0060】
なお、ここでは可変容量過給機1のノズル開度を制御することによって吸入空気量を制御しているが、ウェストゲート1Fを制御することによって吸入空気量を制御するようにしてもよく、この場合は、電磁弁1Cに出力するデューティ比が演算され出力される。
【0061】
以上のようにして大量EGRと燃料噴射時期の遅角化を行うことにより、燃焼温度が低下するとともに着火遅れ期間が大幅に長くなり、エンジン5は熱発生パターンが単段の予混合燃焼状態での運転を行うことができる。
【0062】
このときの熱発生パターンと排気性能の関係を図13に示す。図示されるように、熱発生パターンがエンジン5の上死点後に予混合燃焼の形となり、比較として示した従来の燃焼に比べ、低NOx、低スモークの両立が図られる。また、この燃焼は図14に示すように、上記着火遅れ期間中に燃料の大部分が噴射される、すなわち、燃料の噴射終了後に燃焼が発生する燃焼であることによって特徴付けられる。
【0063】
次に、NOx吸収剤16に吸収されたNOxを放出還元するときにコントローラ30が行う制御について図15を参照しながら説明する。
【0064】
これによると、まずステップS31で後述するFlagがチェックされ、セットされていなければステップS32に進み、セットされていればステップS36に進む。
【0065】
ステップS32ではNOx吸収剤16のNOx吸収量が演算される。NOx吸収量は、例えば図16に示すマップから読み込まれたエンジン5から排出される単位時間当たりのNOx排出量に、図17に示すマップから読み込まれたNOx吸収剤16の吸収率を積算した値を累積することによって求めることができる。
【0066】
次に、ステップS33でステップS32で演算したNOx吸収量と所定値Aの比較が行われ、NOx吸収量が所定値A以上であればステップS34に進んで、NOx吸収剤上流の温度センサ35の検出値が読み込まれ、所定温度B以上であればステップS36に進む。
【0067】
なお、ステップS33でNOxの吸収量(演算値)が所定値A未満であれば何もせずに本ルーチンを抜ける。また、ステップS34でNOx吸収剤16の上流温度が所定温度B未満であっても何もせずに本ルーチンを抜ける。
【0068】
ステップS36ではカウンタと所定値Cの比較が行われ、カウンタの値が所定値C未満であればステップS37に進む。
【0069】
ステップS37ではFlagがセットされる。したがって、これ以降、ステップS31でFlagがチェックされると、ステップS32からステップS35がバイパスされ、ステップS36でカウンタの値が所定値C以上となるまでステップS38以降の演算が実行される。
【0070】
ステップS38からS41では、熱発生パターンが単段の予混合燃焼状態を維持した状態で空気過剰率を所定値(=1近傍)に制御すべく、後述する吸入空気量制御、燃料噴射量補正制御、燃料噴射時期補正制御及びEGR弁開度補正制御が実行され、ステップS42でNOx吸収量をゼロとし、ステップS43でカウンタをインクリメントする。
【0071】
カウンタの値が所定値C以上となると、ステップS36からステップS44に進み、ステップS44でFlagがリセットされ、ステップS45でカウンタの値がゼロとされ、ステップS46からS49で噴射量補正量、噴射時期補正量、EGR弁開度補正量及びノズル開度補正量がゼロとされ、本ルーチンを終了する。
【0072】
また、NOx吸収剤16に吸収されたNOxを放出還元するときにコントローラ30が行う制御の別の例を図18に示す。
【0073】
これについて説明すると、まず、ステップS51でFlagがチェックされ、ステップS52ではNOx吸収剤16へのNOx吸収量が演算される。NOx吸収量は、例えば、図16に示したマップからNOx排出量が読み込まれ、これに図17に示したマップから読み込まれたNOx吸収率を積算したものを累積することによって求められる。
【0074】
次に、ステップS53で、ステップS52で演算されたNOx吸収量と所定値Aの比較が行われ、ステップS54では車両が減速中か否かの判断が行われる。減速中か否かは、例えばアクセル操作量の変化率が所定値以下であり、且つ、車速の変化率がマイナスの所定値以下か否かによって判断できる。
【0075】
ステップS54で減速中と判断されると、ステップS55で後述する吸入空気量最小化制御が行われるとともに、ステップS56で後述するEGR量最大化制御が行われる。さらにステップS57でNOx吸収剤16の上流の温度センサ35の検出値が読み込まれ、ステップS58で所定温度B以上であればステップS59に進む。
【0076】
なお、ステップS53でNOxの吸収量(演算値)が所定値A未満であれば、何もせずに本ルーチンを抜ける。また、ステップS54で減速中と判定されなかった場合やステップS58でNOx吸収剤16の上流温度が所定温度B未満の場合も何もせずに本ルーチンを抜ける。
【0077】
ステップS59ではカウンタと所定値Cの比較がなされ、カウンタの値が所定値C未満であればステップS60に進む。
【0078】
ステップS60ではFlagがセットされる。したがって、これ以降、ステップS51でFlagがチェックされるとステップS52からS58がバイパスされ、ステップS59でカウンタの値が所定値C以上となるまでステップS60以降の演算が実行される。
【0079】
ステップS61からS64では、熱発生パターンが単段の予混合燃焼状態を維持した状態で空気過剰率を所定値(=1近傍)に制御すべく、後述する吸入空気量制御、燃料噴射量補正制御、燃料噴射時期補正制御、EGR弁開度補正制御が実行され、ステップS65でNOx吸収量(演算値)をゼロとし、ステップS66でカウンタをインクリメントする。
【0080】
このカウンタの値が所定値C以上となると、ステップS59からS67に進み、ステップS67でFlagがリセットされ、ステップS68でカウンタの値がゼロとされ、ステップS69からS72で噴射量補正量、噴射時期補正量、EGR弁開度補正量、ノズル開度補正量がゼロとされ、本ルーチンを終了する。
【0081】
次に、図15のステップS38(あるいは図18のステップ61)で実行される吸入空気量制御について図19を参照しながら説明する。
【0082】
これによると、ステップS81で吸気絞り弁20の開度が演算され、ステップS82でその絞り弁開度を実現するデューティ比が演算され、ステップS83で電磁弁22に出力されて終了する。
【0083】
吸気絞り弁開度は、例えば、図20に示すようなマップから読み出される。また、ステップS82では図示しない変換テーブルによって開度からデューティ比への変換が行われる。
【0084】
吸入空気量制御の別の例を図21に示す。図19に示したフローでは吸気絞り弁開度を制御することにより吸入空気量を制御しているが、このフローでは過給圧を制御することにより吸入空気量を制御する。
【0085】
これによると、ステップS91で可変ノズルの開度補正量が図22のマップから読み出し終了する。なお、この補正量は図6のステップS22で利用される。
【0086】
また、ここでのノズル開度補正量は、低負荷、低回転数側ほど大きな値となっており、基本的には過給機のタービン回転数を落とす、すなわち吸入空気量を減少させる方向に制御される。
【0087】
次に、図15のステップS39(あるいは図18のステップS62)で実行される噴射量補正制御について図23を参照しながら説明する。
【0088】
これによると、まず、ステップS101でエアフローメータ31の信号が読み込まれ、正規化された後、ステップS102でエンジン回転数Neで除算されることによって吸入空気量Qaが演算される。この吸入空気量Qaは1シリンダ当たりの吸入空気量相当の値と比例関係にある。
【0089】
次に、ステップS103で基準吸入空気量R_Qaがマップより読み込まれ、ステップS104でR_QaとQaの比較が行われ、R_Qa≧Qaの場合、ステップS105で燃料噴射量補正量が演算される。
【0090】
ここで基準吸入空気量R_Qaは、例えば、図24に示すようなマップで与えられ、吸入空気量Qaがこの基準吸入空気量R_Qa以下ではポンピングロス及び燃焼室内の比熱比の低下に伴う熱効率の悪化が発生する。
【0091】
したがって、燃料噴射量補正量は、上記ポンピングロス及び燃焼室内の比熱比の低下に伴う熱効率の悪化分を補うように演算される。具体的には、図25に示すテーブルを参照してR_Qa−Qaに対応する噴射量補正係数が演算され、図6のステップS2で読み込まれた目標噴射量にこの噴射量補正係数を乗算して燃料噴射量補正量が演算される。なお、ここで演算された燃料噴射量補正量は図6のステップS3で参照される。
【0092】
また、噴射量補正制御の別の例を図26に示す。
【0093】
これによると、ステップS111で吸気管圧力センサ36の出力Bstが読み込まれ、ステップS112で基準吸気管圧力R_Bstがマップより読み込まれる。
【0094】
そしてステップS113で基準吸気管圧力R_Bstと吸気管圧力Bstの比較が行われ、吸気管圧力Bstが基準吸気管圧力R_Bstよりも低い場合、ステップS114で燃料噴射量補正量が演算される。
【0095】
ここで基準吸気管圧力R_Bstは、例えば、図27に示すようなマップで与えられており、吸気管圧力Bstがこの基準吸気管圧力R_Bst以下の場合、ポンピングロス及び燃焼室内の比熱比の低下に伴う熱効率の悪化が生じる。そのため、燃料噴射量補正量は、上記吸入空気量の減少に伴うポンピングロス及び燃焼室内の比熱比の低下に伴う熱効率の悪化分を補うように演算される。具体的には、図25に示したマップを参照してR_Bst−Bstに対応する噴射量補正係数が演算され、図6のステップS2で読み込まれた目標噴射量にこの噴射量補正係数を乗算して燃料噴射量補正量が演算される。
【0096】
なお、基準吸入空気量R_Qaあるいは及び基準吸気管圧力R_Bstをテーブルとして与えず、固定値(例えば:吸気管圧力が大気圧相当の値)としても良い。
【0097】
次に、図15のステップS40(あるいは図18のステップS63)で実行される噴射時期補正制御について図28を参照しながら説明する。
【0098】
これによると、まず、ステップS121でエアフローメータ31の信号が読み込まれ、正規化された後、ステップS122でエンジン回転数Neで除算されることによって吸入空気量Qaが演算される。
【0099】
そして、ステップS123で基準吸入空気量R_Qaを図24に示したマップより読み込まれ、ステップS124で基準吸入空気量R_Qaと吸入空気量Qaの比較が行われ、吸入空気量Qaが基準吸入空気量R_Qaよりも小さい場合、ステップS125で燃料噴射時期補正量が演算される。
【0100】
ここで、基準吸入空気量R_Qaは図24に示したようなマップで与えられ、この吸入空気量以下では、吸入空気量の低下により圧縮上死点での圧縮温度が低下し、燃料の着火時期の遅れが生じる。そのため、燃料噴射時期補正量は、吸入空気量を減少による着火遅れ期間の遅れ過ぎを補うように演算され、例えば、図29に示すテーブルを参照して演算される。ここで演算された燃料噴射時期補正量は図9のステップS6で参照される。
【0101】
また、噴射時期補正制御の別の例を図30を参照しながら説明する。
【0102】
これによると、ステップS131で吸気管圧力センサ36の信号Bstが読み込まれ、ステップS132で基準吸気管圧力R_Bstが図27に示したマップより読み込まれる。
【0103】
そして、ステップS133で基準吸気管圧力R_Bstと吸気管圧力Bstの比較が行われ、吸気管圧力Bstが基準吸気管圧力R_Bstよりも小さい場合、ステップS134で燃料噴射時期補正量が演算される。
【0104】
ここで基準吸気管圧力R_Bstは、図27に示したマップで与えられており、吸気管圧力Bstがこの以下基準吸気管圧力R_Bstでは、吸入空気量の低下により圧縮上死点での圧縮温度が低下し、燃料の着火時期の遅れが発生する。そのため、燃料噴射時期補正量は、吸入空気量を減少による着火遅れ期間の遅れ過ぎを補うように演算され、例えば、図29に示すテーブルを参照して設定される。ここで演算された燃料噴射時期補正量は図9のステップS6で参照される。
【0105】
なお、基準吸入空気量R_Qa、及び基準吸気管圧力R_Bstをテーブルとして与えずに、固定値(例えば:吸気管圧力として大気圧相当の値)としても良い。
【0106】
次に、図15のステップS41(あるいは図18のステップS64)で実行されるEGR弁開度補正制御の内容を図31を参照しながら説明する。
【0107】
これによると、ステップS151でエアフローメータ31の信号が読み込まれ、正規化された後、ステップS152でエンジン回転数Neで除算されることによって吸入空気量Qaが演算される。
【0108】
そして、ステップS153で空気過剰率が目標値となる目標吸入空気量T_Qaが図32に示すマップより読み込まれ、ステップS154でT_Qa−Qaの関数としてEGR弁開度の補正量が演算される。
【0109】
具体的には、本来吸入されなければならない吸入空気量T_Qaに対して実際の空気量が少ない場合は、EGR量が多く入りすぎているため、EGR弁開度を小さくする補正量が演算される。また、逆の場合はEGR弁開度を大きくする補正量が演算される。
【0110】
この結果、EGR量、空気量が適正となり、目標とする空気過剰率を得ながら、EGRによって燃焼温度を低下させることが可能となる。なお、ここでは目標吸入空気量T_Qaと吸入空気量Qaとの差に基づきEGR弁開度の補正量を演算したが、図33に示すマップより目標吸気管負圧T_Bstを読み込み、これと吸気管負圧Bstとの差に基づきEGR弁開度の補正量を演算するようにしても良い。
【0111】
次に、図18のステップS55、S56で実行される吸入空気量最小化制御とEGR量最大化制御について図34、図35のフローを参照しながら説明する。
【0112】
図34は吸入空気量最小化制御の内容を示し、これによると、ステップS161で吸気絞り弁20の開度を最小とするデューティ比が電磁弁22に出力される。
【0113】
また、図35はEGR量最大化制御の内容を示し、これによると、ステップS171でEGR弁9の開度を最大とするデューティ比が電磁弁12に出力され、ステップS172で可変ノズル1Gの開度を最小とするデューティ比が電磁弁1Kに出力される。
【0114】
これら吸入空気量最小化制御とEGR量最大化制御はセットで行うものであり、また、吸気絞り弁を持たない場合は吸気絞り弁開度の最小化は行わない。また、可変容量過給機1の可変ノズル最小開度とするのは、吸気管と排気管の圧力差を増大させ、EGRガス量を確保するためである。
【0115】
この制御を減速時に行うことによる効果を図36に示す。
【0116】
この図に示すように、減速時にこの制御を行う場合と行わない場合とでは吸収剤16の上流の排気温度に大きな差が生じ、この制御を行うことによって吸収剤16からNOxを効果的に離脱させることが可能な温度に直ちに昇温できることがわかる。
【0117】
次に、全体的な作用について説明する。
【0118】
上述した通り、エンジン5は上死点以降に熱発生パターンが単段の予混合燃焼を行い、エンジン5から放出されるNOxは排気通路に設けられたNOx吸収剤16に吸収されるが、NOxの吸収量が増大してくるとNOx吸収剤16のNOx吸収能力は低下してくる。
【0119】
そのため、コントローラ30は演算推定したNOx吸収量に基づきNOx吸収剤16のNOx吸収能力の低下を判断し、NOx吸収剤16の吸収能力が低下してきたら空気過剰率を所定値(=1近傍)まで低下させ、吸収されたNOxの放出浄化処理を行う。このとき、本発明によると、運転条件に応じて吸入空気量を制御するとともに、吸入空気量又は吸気管圧力に応じて排気還流量を制御することにより、熱発生パターンが単段の予混合燃焼状態を維持した状態で空気過剰率を所定値まで低下させる。
【0120】
したがって、NOx放出浄化処理中も熱発生パターンが単段の予混合燃焼状態が維持されることになり、スモーク、PMを増加させることなくNOx吸収剤16からNOxを放出させることができる。この状況を図37に示す。この図に示されるように、スモーク量を増大させることなく空気過剰率を低下させることができNOxの増加も無い。また、COが増加するので、NOx吸収剤16から放出されらNOxと反応し、NOxを効果的に還元することができる。
【0121】
さらに、吸入空気量又は吸気管圧力に応じて燃料噴射量を増量補正することにより、吸入空気量減少に伴うトルク低下、具体的にはポンピングロスや熱効率の悪化に伴うトルク低下が補正される。これにより、NOx放出浄化処理で吸入空気量が減少することによるトルク段差が解消され、運転性が悪化するのを防止できる。
【0122】
また、吸入空気量又は吸気管圧力に応じて燃料噴射時期を補正することによって、吸入空気量減少によって生起される圧縮上死点での圧縮温度低下に伴う着火遅れ期間の増加が補正される。これにより、着火遅れ増加による排気組成の悪化を最小限にとどめ、NOx放出浄化処理中も熱発生パターンが単段の予混合燃焼の形態を維持できるとともに、失火の発生も防止できる。
【0123】
さらに吸入空気量がエンジン負荷と回転数に応じて制御されるので、常に適正な空気過剰率を維持でき、空気過剰率が小さすぎることによる燃費悪化の増大が防止されるとともに、空気過剰率がNOx吸収剤16からNOxが効率的に放出される値となり、NOxの放出が不完全に行われるのを防止できる。
【0124】
しかも、NOx吸収剤16にNOx量が所定値以上吸収されたと判断されたときに所定期間実行されるので、吸入空気量を減少させることによる空気過剰率低下に起因する燃費の悪化を最小限に抑えることができる。また、NOx吸収剤温度が所定値以下の場合、NOx放出浄化制御は行われないので、燃費を犠牲にするだけでNOx吸収剤のNOx吸収能力を回復できないという状況を回避できる。
【0125】
さらに、減速中、吸入空気量制御手段によって、吸入空気量を最小、排気還流量を最大にすべく制御されるので、NOx吸収剤への排気の流入を最小限に抑えることができ、NOx吸収剤の保温及びHC、CO等との反応による昇温が図られる。この結果、定常又は加速運転条件に移行してから空気過剰率を所定値に制御するときに、NOx吸収剤から効果的にNOxを放出できる温度条件にすることができる。
【0126】
しかも、減速中でNOx吸収剤温度が所定値以下の場合、NOx放出浄化処理は行われないので、燃費を犠牲にするだけでNOx吸収剤のNOx吸収能力を回復できないという状況を回避できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る排気浄化装置を備えたディーゼルエンジンの概略構成図である。
【図2】燃料噴射装置の概略構成図である。
【図3】NOx吸収剤温度とNOx吸収量の関係を示した図である。
【図4】NOx吸収反応のメカニズムを説明するための図である。
【図5】NOx放出浄化反応のメカニズムを説明するための図である。
【図6】コントローラが行う制御を説明するためのフローチャートである。
【図7】目標燃料噴射量を設定するためのマップである。
【図8】目標噴射時期を設定するためのマップである。
【図9】目標噴射圧を設定するためのマップである。
【図10】目標EGR弁開度を設定するためのマップである。
【図11】要求スワール比を設定するためのマップである。
【図12】目標ノズル開度を設定するためのマップである。
【図13】熱発生パターンと排気性能との関係を示した図である。
【図14】エンジンの燃焼状態を説明するための図である。
【図15】NOx吸収剤に吸収されたNOxを放出還元するときにコントローラが行う制御を説明するためのフローチャートである。
【図16】単位時間あたりのNOx排出量を演算するためのマップである。
【図17】NOx吸収率を演算するためのマップである。
【図18】NOx吸収剤に吸収されたNOxを放出還元するときにコントローラが行う制御の別の例を説明するためのフローチャートである。
【図19】吸入空気量制御を説明するためのフローチャートである。
【図20】吸気絞り弁開度を演算するためのマップである。
【図21】吸入空気量制御の別の例を説明するためのフローチャートである。
【図22】ノズル開度補正量を演算するためのマップである。
【図23】噴射量補正制御を説明するためのフローチャートである。
【図24】基準吸入空気量を設定するためのマップである。
【図25】噴射量補正係数を演算するためのテーブルである。
【図26】噴射量補正制御の別の例を説明するためのフローチャートである。
【図27】基準吸気管圧力を設定するためのマップである。
【図28】噴射時期補正制御を説明するためのフローチャートである。
【図29】噴射時期補正量を演算するためのテーブルである。
【図30】噴射時期補正制御の別の例を説明するためのフローチャートである。
【図31】EGR弁開度補正制御(目標空気過剰率が1以下)を説明するためのフローチャートである。
【図32】目標吸入空気量を設定するためのマップである。
【図33】目標吸気管圧力を設定するためのマップである。
【図34】吸入空気量最小化制御を説明するためのフローチャートである。
【図35】EGR量最大化制御を説明するためのフローチャートである。
【図36】減速時に吸入空気量最小化制御とEGR量最大化制御を行うことによる効果を説明するための図である。
【図37】本発明の効果を説明するための図である。
【符号の説明】
1 可変容量過給機
1F ウエストゲートバルブ
1G 可変ノズル
5 ディーゼルエンジン
6 燃料噴射弁
9 EGR弁
10 EGR通路
16 NOx吸収剤
20 吸気絞り弁
30 コントローラ
31 エアフローメータ
85 コモンレール

Claims (12)

  1. 排気の一部を吸気系に還流することにより燃焼温度を下げるとともに燃料噴射時期の遅角化により着火遅れ期間を長くし、上死点後に熱発生パターンが単段の予混合燃焼の形となる燃焼を行う圧縮着火エンジンの排気浄化装置において、
    流入する排気の空気過剰率に応じて排気中のNOxを吸収あるいは吸収したNOxを放出するNOx吸収剤と、
    吸収されたNOx量の増大による前記NOx吸収剤のNOx吸収能力の低下を判断する手段と、
    前記NOx吸収剤のNOx吸収能力が低下したと判断された場合に、前記上死点後に熱発生パターンが単段の予混合燃焼の形となる燃焼を維持した状態で空気過剰率を低下させ、前記NOx吸収剤に吸収されたNOxを放出浄化処理する手段と、
    を備えたこと特徴とする圧縮着火エンジンの排気浄化装置。
  2. 排気の一部を吸気系に還流することにより燃焼温度を下げるとともに燃料噴射時期の遅角化により着火遅れ期間を長くし、上死点後に熱発生パターンが単段の予混合燃焼の形となる燃焼を行う圧縮着火エンジンの排気浄化装置において、
    流入する排気の空気過剰率に応じて排気中のNOxを吸収あるいは吸収したNOxを放出するNOx吸収剤と、
    エンジンの吸入空気量を調整する吸入空気量調整手段と、
    排気還流量を調整する排気還流量調整手段と
    NOx吸収量の増大による前記NOx吸収剤のNOx吸収能力の低下を判断する手段と、
    前記NOx吸収剤のNOx吸収能力が低下したと判断された場合に、運転条件に応じて前記吸入空気量調整手段により吸入空気量を制御するとともに、そのときの吸入空気量又は吸気管圧力に応じて前記排気還流量調整手段により排気還流量を制御し、前記上死点後に熱発生パターンが単段の予混合燃焼の形となる燃焼を維持した状態で空気過剰率を所定値まで低下させ、前記NOx吸収剤に吸収されたNOxを放出浄化処理するNOx放出浄化処理手段と、
    を備えたことを特徴とする圧縮着火エンジンの排気浄化装置。
  3. 前記吸入空気量制御手段は吸気通路に設けられた吸気絞り弁であることを特徴とする請求項2に記載の圧縮着火エンジンの排気浄化装置。
  4. 前記吸入空気量制御手段はエンジンの過給圧を制御することで吸入空気量を制御することを特徴とする請求項2に記載の圧縮着火エンジンの排気浄化装置。
  5. 前記吸入空気量調整手段によって調整された吸入空気量あるいは吸気管圧力に応じて燃料噴射量を補正する燃料噴射量補正手段を備えたことを特徴とする請求項2から4のいずれか一つに記載の圧縮着火エンジンの排気浄化装置。
  6. 前記燃料噴射量補正手段は、吸入空気量が所定の基準値以下あるいは吸気管圧力が所定の基準値以下の場合に、燃料噴射量を所定の基準値と吸入空気量又は吸気管圧力の差に応じて増量補正することを特徴とする請求項5に記載の圧縮着火エンジンの排気浄化装置。
  7. 前記吸入空気量調整手段によって調整された吸入空気量あるいは吸気管圧力に応じて燃料噴射時期を補正する燃料噴射時期補正手段を備えたことを特徴とする請求項2から4のいずれか一つに記載の圧縮着火エンジンの排気浄化装置。
  8. 前記燃料噴射時期補正手段は、吸入空気量が所定の基準値以下あるいは吸気管圧力が所定の基準値以下の場合に、燃料噴射時期を所定の基準値と吸入空気量又は吸気管圧力との差に応じて進角補正することを特徴とする請求項7に記載の圧縮着火エンジンの排気浄化装置。
  9. 前記吸入空気量調整手段は、吸入空気量をエンジン負荷及びエンジン回転数に応じて調整することを特徴とする請求項2から4のいずれか一つに記載の圧縮着火エンジンの排気浄化装置。
  10. 前記NOx放出浄化処理手段は、前記NOx吸収剤にNOx量が所定値以上吸収されたと判断された後に所定期間前記NOx放出浄化処理を行うことを特徴とする請求項2から9のいずれか一つに記載の圧縮着火エンジンの排気浄化装置。
  11. 前記NOx放出浄化処理手段は、前記NOx吸収剤にNOx量が所定値以上吸収されたと判断された後の減速中、前記吸入空気量調整手段により吸入空気量を最小値に調整するとともに、前記排気還流量調整手段により排気還流量を最大値に調整し、定常又は加速運転条件に移行したと判断された後に前記NOx放出浄化処理を行うことを特徴とする請求項2から10のいずれか一つに記載の圧縮着火エンジンの排気浄化装置。
  12. NOx吸収剤温度が所定値以下の場合、前記NOx放出浄化処理手段は前記NOx放出浄化処理を行わないことを特徴とする請求項2から11のいずれか一つに記載の圧縮着火エンジンの排気浄化装置。
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