JP3810759B2 - プレキャストブロックによる既設下部構造物の縁端拡幅構造およびその施工方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、プレキャストブロックによる既設下部構造物の縁端拡幅構造およびその施工方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、既設の橋梁の落橋防止構造として、下部構造物と橋体とを、ブラケット等により連結して、橋体の変位制限する落橋防止構造が知られている(例えば、特許文献1,2参照)。
【0003】
【特許文献1】
特開平9−137410号公報
【特許文献2】
特開平10−168823号公報
【非特許文献1】
道路橋示方書(V耐震設計編) 社団法人日本道路協会発行、2003年3月、P.258−271
【0004】
地震時において最初から橋体の変位制限装置が機能する落橋防止構造では、橋体と下部構造物とに支持力あるいは移動制限支持力を発揮させる構造であるので、変位制限装置が地震時に損傷する恐れのある落橋防止構造である。これに対して、変位制限装置を設ける場合でも、桁かかり長を長くした上で、変位制限装置を機能させることも考えられ、例えば下部構造物の縁端を広げて桁かかり長を長くする縁端拡幅構造が知られている(非特許文献1参照)。
【0005】
そして、現場打ちコンクリートによって、既設コンクリート製下部構造物の縁端を拡幅し前記の桁かかり長を長くする場合、既設コンクリート下部構造物の上部における配筋状態を調査した上で、既設コンクリート製下部構造物の上部に多数埋め込み配置されている鉄筋をよけるように多数の鉄筋定着用のアンカー用孔を削孔する必要があり、この作業が大変であると共に、新設の現場打ちコンクリートとの一体化を高めるために既設コンクリート製下部構造物の上部をはつる必要があり、さらに、新設の現場打ちコンクリートを打設するための大掛かりな型枠の設置作業等が必要とされ、このように、新設のコンクリート打ち継ぎ部の一体化および狭小空間での多数の鉄筋定着用のアンカー孔の削孔作業、型枠の配設やコンクリート打設等の作業が煩雑であると共に、高い品質を維持するために高度の管理が必要であると共に、現場施工性がそれほど高くなく、施工コストが高くなるという課題があった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、前記従来の課題を解決し、既設コンクリート製下部構造物の上部に少ない数の横孔で済み、表層部のはつりはチッピング程度ですみ、さらに、新設の現場打ちコンクリートを打設するための大掛かりな型枠の設置作業等を必要とすることなく、作業が簡単であると共に、高い品質を維持するために高度の管理の必要がなく、現場施工性がよく、施工コストを低減することができるプレキャストブロックによる既設下部構造物の縁端拡幅構造およびその施工方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
前記の従来の問題点を有利に解決するために、第1発明のプレキャストブロックによる既設下部構造物の縁端拡幅構造においては、既設下部構造物に横方向に間隔をおいて複数のアンカー用横孔を設け、桁支承用上面を備えていると共に中空PC鋼棒挿通用の横貫通孔を有する桁支承部付プレキャストコンクリートブロックが既設下部構造物の上部側周面に配置され、前記各アンカー用横孔と横貫通孔とに渡って、中空PC鋼棒の内部に押込み用反力PC鋼棒を押込むことで緊張された前記中空PC鋼棒を備えたプレストレス力導入装置が挿入配置され、かつ、前記各アンカー用横孔内と、横貫通孔内にグラウトが充填・硬化され、かつ押込み用反力PC鋼棒の圧縮力が解放されて前記中空PC鋼棒により圧縮力が導入されて、前記既設下部構造物に桁支承部付プレキャストコンクリートブロックが一体化されて取付けられていることを特徴とする。
【0008】
第2発明のプレキャストブロックによる既設下部構造物の縁端拡幅構造においては、既設下部構造物に横方向に間隔をおいて複数のアンカー用横孔を設け、桁支承用上面を備えていると共に中空PC鋼棒挿通用の横貫通孔を有する桁支承部付プレキャストコンクリートブロックと、桁支承用上面および桁支承用縦側面を備えていると共に中空PC鋼棒挿通用の横貫通孔を有する桁支承部付プレキャストコンクリートブロックとが、既設下部構造物の上部側周面に配置され、前記各アンカー用横孔と横貫通孔とに渡って、中空PC鋼棒の内部に押込み用反力PC鋼棒を押込むことで緊張された前記中空PC鋼棒を備えたプレストレス力導入装置が挿入配置され、かつ、前記各アンカー用横孔内と、横貫通孔内にグラウトが充填・硬化され、かつ押込み用反力PC鋼棒の圧縮力が解放されて前記中空PC鋼棒により圧縮力が導入されて、前記既設下部構造物に前記各桁支承部付プレキャストコンクリートブロックが一体化されて取付けられていることを特徴とする。
【0009】
また、第3発明では、第1または第2発明のプレキャストブロックによる既設下部構造物の縁端拡幅構造において、既設下部構造物における橋軸方向の側面に、桁支承用上面を備えていると共に中空PC鋼棒挿通用の横貫通孔を有する桁支承部付プレキャストコンクリートブロックが取付けられ、橋軸直角方向の側面に、桁支承用上面および桁支承用縦側面を備えていると共に中空PC鋼棒挿通用の横貫通孔を有する桁支承部付プレキャストコンクリートブロックが取付けられていることを特徴とする。
【0010】
また、第4発明のプレキャストブロックによる既設下部構造物の縁端拡幅施工方法においては、既設下部構造物に横方向に間隔をおいて複数のアンカー用横孔を設け、桁支承用上面を備えていると共に中空PC鋼棒挿通用の横貫通孔を有する桁支承部付プレキャストコンクリートブロックを既設下部構造物の上部側周面に配置し、前記各アンカー用横孔と横貫通孔とに渡って、中空PC鋼棒の内部に押込み用反力PC鋼棒を押込むことで緊張された前記中空PC鋼棒を備えたプレストレス力導入装置を挿入配置した後、前記各アンカー用横孔内と、横貫通孔内にグラウトが充填・硬化され、その後、押込み用反力PC鋼棒の圧縮力が解放されて前記中空PC鋼棒により圧縮力を導入して、前記既設下部構造物に桁支承部付プレキャストコンクリートブロックを一体化して取付けることを特徴とする。
【0011】
【発明の実施の形態】
次に、この発明を図示の実施形態に基づいて詳細に説明する。
図1〜図7には、本発明のプレキャストブロックによるコンクリート製既設下部構造物の縁端拡幅構造の第1実施形態が示されている。図8には、下部構造物における橋軸方向の桁かかり長を長くするためのプレキャストブロックが示され、図9には、下部構造物における橋軸直角方向の桁かかり長を長くするためおよび変位制限機能を備えたプレキャストブロックが示され、前記各プレキャストブロックには、既設下部構造物の桁支承用上面とほぼ同レベルの桁支承用上面を備えている。図11以降には、反力PC鋼材によるプレストレス力導入装置の形態が示されている。
【0012】
先ず、本発明において使用する主要な部品について説明する。
図8(a),(b)に示すプレキャストコンクリート製の桁支承部付プレキャストブロック5(5a)は、橋脚または橋台からなる鉄筋コンクリート製下部構造物1における橋軸方向の上部の前後面に取付けられるプレキャストブロックであり、上部に桁下面に近接して対向配置される桁支承上面3(3a)を備えており、かつ橋軸直角方向の両側面に目地部用内向き凹部11が設けられ、かつその桁支承部付プレキャストブロック5aの前面側の左右両側には、間隔をおいて後面側に貫通する反力PC鋼材によるプレストレス力導入装置を配置するための横貫通孔4が設けられている。
【0013】
なお、橋軸直角方向の両端部に配置される桁支承部付プレキャストブロック5aにおける横貫通孔4は2点鎖線で示すように、上下に位置をずらして設けられており、後記のプレキャストブロック5(5b)における横貫通孔4の延長線上で、既設下部構造物1側のアンカー用横孔での干渉をさけるように構成されている。また、前記の目地部用内向き凹部12は、橋軸直角方向に隣り合うプレキャストブロック5aにおける凹部間に目地用充填材が充填されて、一体性を高めるに構成されている。
【0014】
図9に示すプレキャストコンクリート製の桁支承部付プレキャストブロック5bは、橋脚または橋台からなる鉄筋コンクリート製既設下部構造物1における橋軸直角方向の上部側面(図示の形態の場合)または橋軸方向の上部側面に取付けられるプレキャストブロックである。この桁支承部付プレキャストコンクリート5bは、本体が断面逆L字状のプレキャストブロックであり、橋軸直角方向の内側に、桁下面に近接して対向するように配置される桁支承用上面3(3b)と、桁側面に間隔をおいて対向配置される桁支承用縦側面12とからなる内向き段部10が設けられ、桁支承用縦側面12には、ゴム製等の緩衝材13が図示省略のボルト等により固定されて地震時の桁の変位制限装置として緩衝支承するように構成され、かつプレキャストブロック5bの橋軸直角方向前面側の左右両側には、間隔をおいて後面側に貫通する反力PC鋼材によるプレストレス力導入装置8を配置するための横貫通孔4が設けられている。前記各プレキャストブロック5(5a,5b)は、予め工場あるいは現場付近で製作し、現場に搬入する。
【0015】
次に、本発明において使用する反力PC鋼材によるプレストレス力導入装置8の構造について、図11以降を参照して説明する。
【0016】
図11(a)は、本発明において使用する一実施形態の中空PC鋼棒を使用したコンクリート用プレストレス力導入装置8の1ユニットの一部切欠側面図を示し、(b)はその縦断側面図を示すものであって、鋼製中空PC鋼棒本体6aの長手方向の一端部(前端部)外側に雄ねじ部20を有すると共に、他端部(後端部)外側に雄ねじ部21を有する中空PC鋼棒6における前記雄ねじ部21に、前後両端部に雌ねじ孔22、23を有すると共に多角形の回動工具係合用外面24を有する支承筒25における前端部の雌ねじ孔22が螺合連結されている。
【0017】
前記支承筒25の後端部の雌ねじ孔23に、鋼製筒状の環状係止片からなるストッパー26の前部雄ねじ部27が螺合され、前記ストッパー26の後端部外側には、回動工具係合用外面28が形成され、前記ストッパー26の前端部には、前記支承筒25の内部に配置され、前端部に凹部29を有する押圧係止片30の後端面が係合され、前記押圧係止片30の前端部の凹部29には、中空PC鋼棒6内に他端側を除くほぼ全体が挿入され、かつ他端側が前記中空PC鋼棒6の他端部から突出するように配置されたノンプル用反力PC鋼棒7aの後端部が嵌合されている。なお、前記のノンプルとは、引き抜かない方式で、換言すると据え置き方式の意味である。
【0018】
この実施形態においては、1本もののノンプル用反力PC鋼棒7aにより押込み鋼棒を構成しているが、他端側に短尺の撤去用反力PC鋼棒と前記ノンプル用反力PC鋼棒7aよりも若干短尺なノンプル用反力PC鋼棒との2本により押し込み用反力PC鋼棒7を構成することも可能である。前記中空PC鋼棒6の前端部外側の雄ねじ20に、雌ねじ部31を有するナットからなるアンカー材32が着脱自在に螺合固定され、前記ノンプル用反力PC鋼棒7の先端部は前記雌ねじ部31に連結されている。前記アンカー材32には雄ねじ部材41が螺合固定され、前記雄ねじ部材41により反力PC鋼棒7の先端部が支承されている。
【0019】
図11に示す状態は、図13に示すような状態にプレストレス力導入装置8を、前部フレーム43および後部フレーム44を複数の連結ロッド45で平行に結合し、後部フレーム44側に油圧ジャッキ34を備えた枠形フレーム33に配置して、液圧ジャッキ34を利用して、その可動ピストン35の先端部に係合され、ストッパー26の中央中空部に挿入される押し込み鋼棒36により押圧係止片30を前記中空PC鋼棒6に向かって移動するように押圧し、前記ノンプル(据置)用反力PC鋼棒7aを中空PC鋼棒6内に押し込むように圧縮力を導入した後、その状態においてフリーになっている前記支承筒25またはストッパー26を前記押圧係止片30に向かって接近する方向(図11の右方向)に回転させて、前記ストッパー26を前進移動して、ストッパー26の前端部を押し込み係止片30に係合させ、枠形フレーム33から分離させた状態を示した図である。このようなプレストレス力導入装置8は特開2001−207590号公報等により公知であり各種の形態の装置を使用することもできる。
【0020】
次に、前記の桁支承部付プレキャストコンクリートブロック5a,5bおよびプレストレス力導入装置8を使用して、本発明のプレキャストブロックによる既設下部構造物の縁端拡幅構造および縁端拡幅方法について、図1〜図7を参照して説明する。
【0021】
版桁等の桁38は支承装置39を介して橋脚または橋台等のコンクリート製既設下部構造物1に支承されている。前記コンクリート製既設下部構造物1の上部周側面における橋軸方向の前面または後面あるいはこれらの両面に、橋軸直角方向に間隔をおいて平行に橋軸方向に延長する複数のアンカー用横孔2を設ける。前記のアンカー用横孔2は桁支承部付プレキャストコンクリートブロック5(5a)における横貫通孔4と合致するように設けられ、かつ既設下部構造物1における埋め込み鉄筋から外れた位置に設け、さらに桁支承部付プレキャストコンクリートブロック5aにおける桁支承上面3(3a)が既設下部構造物1の上面と同レベルになる位置に設ける。
【0022】
また、前記コンクリート製既設下部構造物1の上部における橋軸直角方向の前面または後面あるいはこれらの両面に、橋軸方向に間隔をおいて平行に橋軸直角方向に延長する複数のアンカー用横孔2を設ける。前記のアンカー用横孔2は桁支承部付プレキャストコンクリートブロック5(5b)における横貫通孔4と合致するように設けられ、かつ既設下部構造物1における埋め込み鉄筋から外れた位置に設け、さらに桁支承部付プレキャストコンクリートブロック5bにおける桁支承上面3(3b)が既設下部構造物1の上面と同レベルになる位置に設ける。また、目地部に充填するグラウト17との一体化を高めるために、コンクリート製既設下部構造物1の上部周側面における表層部のはつり(チッピング)を行なう。
【0023】
前記のようにコンクリート製既設下部構造物1の上部に各アンカー用横孔2を削孔した後、既設下部構造物1における橋軸方向の前面側または後面側あるいはこれらの両面側等の上部周側面に、橋軸直角方向に目地間隔をおいて多数の桁支承部付プレキャストコンクリートブロック5aを、図示省略の支保工等により支持して配置する。前記の桁支承部付プレキャストコンクリートブロック5aにおける桁支承用上面3aは既設の桁37の下面に近接して対向するように配置される。
【0024】
前記の目地間隙には、桁支承部付プレキャストコンクリートブロック5aの下面を型枠兼支承部材14を介して図示省略の仮支持梁部材および支保工により支持させて、アンカー用横孔2と横貫通孔4の中心軸線が一致するように所定の位置の配置すると共に、既設下部構造物1における橋軸直角方向の側面に桁支承部付プレキャストコンクリートブロック5bを前記と同様、図示省略の仮支持梁部材および支保工により支持させて、アンカー用横孔2と横貫通孔4の中心軸線が一致するように所定の位置に配置する。
【0025】
さらに説明すると、図3に点線で示すように、橋軸直角方向に隣合う各プレキャストコンクリートブロック5aの橋軸直角方向の端部下面は、橋軸方向に延長する目地部型枠を兼ねた木製板状等の型枠兼支承部材14に載置されてこれを介して図示省略の仮支持梁部材および支保工により適宜支持され、橋軸直角方向に隣合う各桁支承部付プレキャストコンクリートブロック5aの端部縦目地間にわたって、前記型枠兼支承部材14上に木製板状の目地部縦型枠15が立設されて目地部がふさがれ、またコンクリート製既設下部構造物1と各プレキャストコンクリートブロック5aとの目地部の下部には、図4(b)に点線で示すように木製板状等の隅部底部型枠16が介在されて図示省略の仮支持梁部材および支保工により支持されて、後記のプレストレス力導入装置8をセットした後、前記目地間隙に無収縮モルタル等のグラウト17が充填される。
【0026】
また、コンクリート製既設下部構造物1の橋軸直角方向両端部に目地間隙を介して配置される一つの桁支承部付プレキャストコンクリートブロック5(5b)における桁支承用上面3(3b)は桁37の橋軸直角方向端部下面に近接して対向するように配置され、また桁支承用縦側面12および緩衝材13は桁37の橋軸直角方向の側面に間隔をおいて対向するように配置され、地震時において桁37が橋軸直角方向に移動したときに変位制限装置として機能し桁を緩衝支承するように構成されている。前記桁支承部付プレキャストコンクリートブロック5(5b)とコンクリート製既設下部構造物1との目地間隙用の型枠として、図3に点線で示すように、前記と同様板状の隅部底部型枠16を介して図示省略の仮支持梁部材および支保工により支持され、また前記底部型枠16に立設される目地部縦型枠15によりふさがれた状態で、後記のプレストレス力導入装置8をセットした後、前記目地間隙に無収縮モルタル等のグラウト17が充填される。
【0027】
橋脚等のコンクリート製既設下部構造物1の橋軸直角方向の両端部に橋軸方向に目地間隙を介して複数のプレキャストコンクリートブロック5bを配置する場合には、前記ブロック5b間における橋軸方向の端部下面は、前記と同様木製板状の型枠兼支承部材を介在させて仮支持梁材および支保工により支持され、またプレキャストコンクリートブロック5b間の橋軸方向の端部外側面間に前記型枠兼支承部材上に立設される木製板状の目地部縦型枠によりふさがれた状態で、後記のプレストレス力導入装置8をセットした後、前記目地部間隙に無収縮モルタル等のグラウト17が充填される。
【0028】
前記のように、コンクリート製既設下部構造物1の橋軸方向の前面または後面あるいは前後両面にプレキャストコンクリートブロック5aを配置すると共に、橋軸直角方向の両端部にプレキャストコンクリートブロック5bを配置し、目地部型枠を設置した後、前記アンカー用横孔2と横貫通孔4に渡ってプレストレス力導入装置8を挿入配置する。前記のアンカー用横孔2と横貫通孔4の直径寸法はプレストレス力導入装置8の外径寸法よりも大きく設定され、プレストレス力導入装置8の奥部にグラウト17を充填可能なようにされ、また、前記プレストレス力導入装置8のストッパ26が、プレキャストコンクリートブロック5a端面から外部に突出した状態に配置される。そのため前記プレストレス力導入装置8の長さは適宜設定される。
【0029】
前記プレストレス力導入装置8を各アンカー用横孔2および横貫通孔4に渡って挿入設置した後、前記各目地部間隙に無収縮モルタル等のグラウト17を充填すると共に、前記プレストレス力導入装置8における雄ねじ部21にねじ込まれているアンカー材37を埋め込むように、前記アンカー用横孔2および横貫通孔4に無収縮モルタル等のグラウト17を充填する。
【0030】
前記グラウト17が所定の強度を発揮した後、プレストレス力導入装置8におけるストッパ26を電動式レンチ等の回動工具により後退するように回転させることにより、反力PC鋼棒7の圧縮力が開放され、反対に、中空PC鋼棒6とグラウト17との付着およびグラウト17とコンクリート製既設下部構造物1および各ブロック5a,5bの付着によって、中空PC鋼棒6の短縮が阻まれ、これにより相対的にコンクリート製既設下部構造物1および各ブロック5a,5bが接近する方向に圧縮のプレストレスが導入され、コンクリート製既設下部構造物1と各ブロック5a,5bとが強固に接合され一体化される。中空PC鋼棒6とグラウト17との付着が十分であれば、アンカー材32とアンカー部材37、原理的には省略することもできる。なお、前記のストッパ26および支承筒25は取り外し、反力PC鋼棒7は取り外すことも可能であるが、反力PC鋼棒7を残地させるノンプル用反力PC鋼棒7とすることも可能である。
【0031】
反力PC鋼棒7を残地させる場合、前記支承筒25を中空PC鋼棒6から取り外し、グラウト17の硬化した後に硬化し、中空PC鋼棒6とノンプル用反力PC鋼棒7の一体性を高め、接合されたブロック5a,5bの終局耐力を向上させるため、適宜遅延剤を硬化型接着剤に混合させてなる経時硬化型の合成樹脂製接着剤からなる接着兼用防錆材が中空PC鋼棒6の端部開口部から予めあるいは適宜の時期に注入充填される。
【0032】
その後、前記支承筒25を取り外した後、ノンプル用反力PC鋼棒7を回収することなく、前記中空PC鋼棒6内に据え置き、防錆を兼ねる経時硬化製樹脂等の接着兼用防錆材40の硬化により中空PC鋼棒6とノンプル用PC鋼棒7の一体化を図る。その後、横貫通孔4の端部に跡埋めモルタル59を充填し中空PC鋼棒6および反力PC鋼棒7の防錆を図る。
【0033】
(第2実施形態)
図10は、本発明の他の実施形態を示すものであって、この形態では、橋脚等のコンクリート製既設下部構造物1に適用した場合で、コンクリート製既設下部構造物1の上部に、橋軸方向に貫通したアンカー用横孔2が設けられ、前記既設下部構造物1に橋軸方向両側にプレキャストコンクリート製ブロック5aを目地間隙を介して前記アンカー用横孔2と同心状に横貫通孔4が位置するように配置され、かつ前記の横貫通孔4の端部は拡径した支承用凹溝18に接続するようにされ、プレストレス力導入装置8における中空PC鋼棒6を前記支承用凹溝18に渡って挿入設置した後、支圧プレート19を介してアンカー材32および37を配置するように組立て、押込み用反力PC鋼棒7に押込み力を外側の中空PC鋼棒6に緊張力を導入したプレストレス力導入装置8の場合である。
【0034】
この場合には、目地部におけるグラウト17が硬化して所定の強度を発現した後、ストッパ26および支承筒25を取り外し、支承用凹溝18内に跡埋めモルタル59を充填すればよい。
【0035】
その他の構成については、前記実施形態と同様であるので、同様である部分については、前記実施形態と同じ符号を付してその構造および施工手順の説明を省略する。
【0036】
なお、本発明において使用するプレストレス力導入装置8の変形形態として、図12に示すような形態でもよい。この形態は、ノンプル方式で使用される押込み用反力PC鋼棒7を中空PC鋼棒6よりも突出する長さにしておき、かつ前記押込み用反力PC鋼棒6両端部を予めねじ切り加工して、先端部に雄ねじ部46および後端部に雄ねじ部47を形成し、また先端部をアンカー材32に螺合固定し、既設下部構造物およびコンクリートブロック5a(5b)への無収縮モルタル等のグラウト17を介してプレストレス導入後、後端側の突出した部分を利用して、中空PC鋼棒1の外径よりも大きい内径の透孔を有するアンカープレート49を中空PC鋼棒6に嵌設すると共に無収縮モルタル等のグラウト17の端部支承部に当接させ、ワッシャー50、反力PC鋼棒定着用ナット51を取付けている。
【0037】
その後、図12(a)に示すように、押し込み用反力PC鋼棒7の後端部雄ねじ部47にカップラー52を介して引張用螺杆53を直列に連結し、脚部55を有し周側面部が一部開放されている間隔保持部材54を前記引張用螺杆53に嵌設すると共に、脚部55をアンカープレート49に取付け、前記引張用螺杆53にセンターホールジャッキ56を嵌設し、前記引張用螺杆53の後端部にナット57を螺合させると共に、可動ピストン58に係合させる。
【0038】
この状態でセンターホールジャッキ56を伸長させて、引張用螺杆53を介して押し込み用反力PC鋼棒7を図12の左方向に引張すると、反力PC鋼棒定着用ナット51がアンカープレート49から離れるので、前記反力PC鋼棒定着用ナット51をアンカープレート49に接近する方向に回転させて、アンカープレート49に締め付けることにより、押込み用反力PC鋼棒7を緊張できる構造としたものである。なお、押込み用反力PC鋼棒7を緊張した後は、センターホールジャッキ56を開放して、ナット57,引張用螺杆53,間隔保持部材54,カップラー52を撤去し、跡埋めモルタル59を横貫通孔4の端部に充填する(図12bの状態)。前記実施形態の場合もこのような構造に変更することができる。
【0039】
その他の構成および操作施工手順については、前記実施形態と同様であるので、同様な部分については同様な符号を付して説明を省略する。
【0040】
本発明を実施する場合、横桁を備えているような桁構造によっては、図9に示すような桁支承用上面および桁支承用縦側面を備えていると共に中空PC鋼棒挿通用の横貫通孔を有する桁支承部付プレキャストコンクリートブロック5bを、既設下部構造物の橋軸方向の上部側面に取付けるようにしてもよい。
【0041】
【発明の効果】
本発明によると次のような効果を奏する。
(1)プレキャストコンクリート製ブロックを使用すると共にプレストレス力導入装置を使用するので、コンクリート製既設下部構造物とプレキャストコンクリート製ブロックとを確実に一体化することができ、耐久性も向上させることができる。
【0042】
(2)また、従来のように既設コンクリート製下部構造物の上部に多数埋め込み配置されている鉄筋をよけるように多数の鉄筋定着用のアンカー用孔を削孔する必要がなく、少ない横孔で済み、表層部のはつりはチッピング程度ですむため、環境にやさしい工法となり騒音も少なくすることができる。さらに、新設の現場打ちコンクリートを打設するための大掛かりな型枠の設置作業等を必要とすることなく、目地部の簡単な型枠ですむので、現場作業が簡単で現場作業の省力化ができると共に工期の短縮が図ることができ、また、予め工場製作の中空PC鋼棒等を配置するため、高い品質を維持するために高度の管理の必要がなく、現場施工性がよく、施工コストを低減することができる。
【0043】
(3)コンクリート製既設下部構造物とプレキャストコンクリート製ブロックとは、従来のようにアンカーボルトで定着されることなく、所定長の中空PC鋼棒を配置するため、高品質な定着構造および定着工法とすることができる。
(4)プレキャストコンクリート製ブロックを使用するため、美観がよくなると共に高い耐久性を保持することができる。
【0044】
各桁支承部付プレキャストコンクリートブロックは、桁支承用上面を備えているので、桁かかり長を長くすることができ、桁支承用上面および桁支承用縦側面を備えていると共に中空PC鋼棒挿通用の横貫通孔を有する桁支承部付プレキャストコンクリートブロックを既設下部構造物に取付けると、既設下部構造物の縁端を拡幅できると共に、桁支承用縦側面により地震時の桁の変位制限装置として機能させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態に係るプレキャストブロックによる既設下部構造物の縁端拡幅構造を示す一部縦断側面図である。
【図2】図1の平面図である。
【図3】図1の一部縦断正面図である。
【図4】本発明の第1施形態に係るプレキャストブロックによる既設下部構造物の縁端拡幅構造を示すものであって、(a)は橋台端部付近を示す側面図であり、(b)は橋脚部付近の縦断側面図である。
【図5】下部構造物の橋軸直角方向の端部にプレキャストブロックを配置固定して既設下部構造物の縁端部を拡幅している構造を示す縦断正面図である。
【図6】下部構造物の橋軸方向の端部にプレキャストコンクリートブロックを配置固定して、既設下部構造物の縁端部を拡幅している状態を示す横断平面図である。
【図7】図6の一部を拡大して示す横断平面図である。
【図8】本発明において下部構造物の橋軸方向の端部に配置するプレキャストコンクリートブロックを示すものであって、(a)正面図、(b)は側面図である。
【図9】本発明において下部構造物の橋軸直角方向の端部に配置するプレキャストコンクリートブロックを示すものであって、(a)正面図、(b)は拡大断面図である。
【図10】(a)は本発明の第2実施形態に係るプレキャストブロックによる既設下部構造物の縁端拡幅構造を示す一部縦断側面図、(b)はその一部を拡大して示す一部切欠縦断側面図である。
【図11】本発明において使用するプレストレス力導入装置の一形態を示すものであって、(a)は一部切欠側面図、(b)は一部切欠縦断側面図である。
【図12】本発明において使用可能なプレストレス力導入装置の他の形態を示すものであって、(a)および(b)は縦断側面図である。
【図13】油圧ジャッキを備えた枠形フレームにプレストレス力導入装置をセットして中空PC鋼棒に緊張力を導入する場合の一形態を示す縦断側面図である。
【符号の説明】
1 既設下部構造物
2 アンカー用横孔
3 桁支承用上面
4 横貫通孔
5 桁支承部付プレキャストコンクリートブロック
5a 桁支承部付プレキャストコンクリートブロック
5b 桁支承部付プレキャストコンクリートブロック
6 中空PC鋼棒
7 押込み用反力PC鋼棒
8 プレストレス力導入装置
9 無収縮モルタル
10 内向き段部
11 目地部用内向き凹部
12 桁支承用縦側面
13 緩衝材
14 型枠兼支承部材
15 目地部縦型枠
16 隅部底部型枠
17 グラウト
18 支承用凹溝
20 雄ねじ部
21 雄ねじ部
22 雌ねじ孔
23 雌ねじ孔
24 回動工具係合用外面
25 支承筒
26 ストッパ
27 前部雄ねじ部
28 回動工具係合用外面
29 凹部
30 押圧係止片
31 雌ねじ部
32 アンカー材
33 枠形フレーム
34 液圧ジャッキ
35 可動ピストン
36 押込み鋼棒
37 アンカー材
38 桁
39 支承装置
40 接着兼用防錆材
41 雄ねじ部材
43 前部フレーム
44 後部フレーム
45 連結ロッド
46 雄ねじ部
47 雄ねじ部
49 アンカープレート
50 ワッシャ
51 反力PC鋼棒定着用ナット
52 カップラー
53 引張用螺杆
54 間隔保持部材
55 脚部
56 センターホールジャッキ
57 ナット
58 可動ピストン
59 跡埋めモルタル
Claims (4)
- 既設下部構造物に横方向に間隔をおいて複数のアンカー用横孔を設け、桁支承用上面を備えていると共に中空PC鋼棒挿通用の横貫通孔を有する桁支承部付プレキャストコンクリートブロックが既設下部構造物の上部側周面に配置され、前記各アンカー用横孔と横貫通孔とに渡って、中空PC鋼棒の内部に押込み用反力PC鋼棒を押込むことで緊張された前記中空PC鋼棒を備えたプレストレス力導入装置が挿入配置され、かつ、前記各アンカー用横孔内と、横貫通孔内にグラウトが充填・硬化され、かつ押込み用反力PC鋼棒の圧縮力が解放されて前記中空PC鋼棒により圧縮力が導入されて、前記既設下部構造物に桁支承部付プレキャストコンクリートブロックが一体化されて取付けられていることを特徴とするプレキャストブロックによる既設下部構造物の縁端拡幅構造。
- 既設下部構造物に横方向に間隔をおいて複数のアンカー用横孔を設け、桁支承用上面を備えていると共に中空PC鋼棒挿通用の横貫通孔を有する桁支承部付プレキャストコンクリートブロックと、桁支承用上面および桁支承用縦側面を備えていると共に中空PC鋼棒挿通用の横貫通孔を有する桁支承部付プレキャストコンクリートブロックとが、既設下部構造物の上部側周面に配置され、前記各アンカー用横孔と横貫通孔とに渡って、中空PC鋼棒の内部に押込み用反力PC鋼棒を押込むことで緊張された前記中空PC鋼棒を備えたプレストレス力導入装置が挿入配置され、かつ、前記各アンカー用横孔内と、横貫通孔内にグラウトが充填・硬化され、かつ押込み用反力PC鋼棒の圧縮力が解放されて前記中空PC鋼棒により圧縮力が導入されて、前記既設下部構造物に前記各桁支承部付プレキャストコンクリートブロックが一体化されて取付けられていることを特徴とするプレキャストブロックによる既設下部構造物の縁端拡幅構造。
- 既設下部構造物における橋軸方向の側面に、桁支承用上面を備えていると共に中空PC鋼棒挿通用の横貫通孔を有する桁支承部付プレキャストコンクリートブロックが取付けられ、橋軸直角方向の側面に、桁支承用上面および桁支承用縦側面を備えていると共に中空PC鋼棒挿通用の横貫通孔を有する桁支承部付プレキャストコンクリートブロックが取付けられていることを特徴とする請求項1または2に記載のプレキャストブロックによる既設下部構造物の縁端拡幅構造。
- 既設下部構造物に横方向に間隔をおいて複数のアンカー用横孔を設け、桁支承用上面を備えていると共に中空PC鋼棒挿通用の横貫通孔を有する桁支承部付プレキャストコンクリートブロックを既設下部構造物の上部側周面に配置し、前記各アンカー用横孔と横貫通孔とに渡って、中空PC鋼棒の内部に押込み用反力PC鋼棒を押込むことで緊張された前記中空PC鋼棒を備えたプレストレス力導入装置を挿入配置した後、前記各アンカー用横孔内と、横貫通孔内にグラウトが充填・硬化され、その後、押込み用反力PC鋼棒の圧縮力が解放されて前記中空PC鋼棒により圧縮力を導入して、前記既設下部構造物に桁支承部付プレキャストコンクリートブロックを一体化して取付けることを特徴とするプレキャストブロックによる既設下部構造物の縁端拡幅施工方法。
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