JP3809948B2 - 偏波モード分散抑制方法及びその装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は偏波モード分散抑制方法及びその装置に関し、光ファイバを伝搬する高速光通信、光交換、光情報処理等の光伝送システムに適用され、特にTE偏波成分とTM偏波成分との光強度差が大きくても、偏波モード分散を効果的に抑制することができるように工夫したものである。
【0002】
【従来の技術】
IT技術の発展に伴う伝送容量の増加に伴い、光信号のビットレートは2.5Gb/sから10Gb/s、さらには40Gb/sへと増加する傾向にある。ここで問題となるのが偏波モード分散である。図3は偏波モード分散を説明する図であって、1001は光ファイバ、1002は入力光パルス、1003は入力光パルス1002のTEもしくはTM偏波成分、1004は入力光パルス1002のTMもしくはTE偏波成分、1007は出力光パルス、1005は出力光パルス1007のTEもしくはTM偏波成分、1006は出力光パルス1007のTMもしくはTE偏波成分である。
【0003】
一般に光ファイバは偏波面によって速く進む成分と遅く進む成分が存在し、これを偏波モード分散と呼ぶ。図3において偏波成分1003が速く進む成分であり、出力端において、偏波成分1005となる。一方で偏波成分1004は遅く進む成分であり、出力端では偏波成分1006となり偏波成分1005より遅く到着する。出力光パルス1007は、偏波成分1005と偏波成分1006の和となるので、結果として光パルスの波形がなまる。
【0004】
この偏波モード分散の値としては、例えばファイバ長L(Km)に対し、
0.2×L1/2 (ps)〜2×L1/2 (ps)
程度である。すなわち、最悪の場合100Kmの光ファイバを仮定すると20psの偏波モード分散が生じる。この値は2.5Gb/s(パルス幅400ps)や10Gb/s(パルス幅100ps)ではさほど大きな問題ではないが、40Gb/s(パルス幅25ps)では致命的な波形劣化となり、符号誤り率を大きく劣化させる要因となる。
【0005】
この問題を解決するために、本願発明者は、図4に示すような偏波モード分散抑制装置を開発して、既に出願した(特願2001−227286)。図4において、101は入力用光ファイバ、102は入力光パルス、103は入力光パルス102のTEもしくはTM偏波成分、104は入力光パルス102のTMもしくはTE偏波成分、105は偏波コントローラ、106は偏波モード分散の特に大きな光ファイバで、例えば偏波面保持光ファイバ、107はTEもしくはTM偏波成分、108はTMもしくはTE偏波成分、109は1入力2出力の光カプラ、110は光導波路、111は出力用光ファイバ、112は偏波スプリッタ、113,114は偏波用光導波路、115は相互位相変調型の波長変換素子、116は波長変換素子115の光源、117,118は光導波路、119は受光器、120は偏波コントローラ105の制御系、123は波形整形された光パルス、121は光パルス123のTEもしくはTM偏波成分、122は光パルス123のTMもしくはTE偏波成分である。
【0006】
図4に示す偏波モード分散抑制装置では、遅延した偏波成分103が偏波面保持光ファイバ106の速く進む方向に、先行している偏波成分104が偏波面保持光ファイバ106の遅く進む方向に入力するように、制御系120にて偏波コントローラ105を制御することにより、入力光パルス102の偏波状態を調整して、偏波モード分散を抑制している。
【0007】
ここで光信号の一部を光カプラ109で分岐して、その偏波成分を偏波スプリッタ112でさらに分岐する。この結果、偏波用光導波路113にはTEもしくはTM偏波成分が、偏波用光導波路114にはTMもしくはTE偏波成分が出力される。ここで、偏波用光導波路113と偏波用光導波路114の光路長を等しくしたうえで波長変換素子115の信号入力ポートに入力する。
【0008】
波長変換素子115は相互位相変調型の波長変換素子であり、偏波用光導波路113,114の双方の光レベルが「0」レベルのときには光源116からの連続光を光導波路117に出力する。すなわち、このとき出力側の光導波路118は「0」レベルである。一方、偏波用光導波路113または偏波用光導波路114の光強度のうちどちらか一方だけが「1」レベルになると、波長変換素子115の原理により出力側の光導波路118の光強度は「1」レベルとなる。さらに偏波用光導波路113,114の双方の光強度が「1」レベルのとき、双方が打ち消し合って、出力側の光導波路118の光強度は「0」レベルとなる。
【0009】
これは偏波用光導波路113と偏波用光導波路114の光強度が等しいときは、光導波路118の光強度は「0」レベルとなり、偏波用光導波路113と偏波用光導波路114の光強度が等しくない場合には、光導波路118の光強度は「1」レベルとなる、いわゆるexOR(排他的論理和)動作を意味する。従って光導波路118の光強度を常に「0」レベルとすることは、偏波用光導波路113と偏波用光導波路114の信号がまったく等しいことになり、偏波成分107と偏波成分108の各成分に位相遅延がないことを意味する。
【0010】
受光器119は受光した光強度に応じた電気信号を出力するので、受光器119から出力される電気信号の強度を最小にするように(つまり受光した光強度を最小にするように)、制御系120にて偏波コントローラ105による入力光パルス102に対する偏波状態を制御することで、偏波モード分散を最小にするように、すなわち偏波成分121と偏波成分122の伝搬遅延の差を最小にするように調節する。このような制御動作をすることにより、波形成形された光パルス123を得ることができる。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、図4の構成の偏波モード分散抑制装置には以下のような問題が残っていた。すなわち、入力用光ファイバ101に入力されるTE偏波成分とTM偏波成分の光強度が等しい、もしくは光強度差が小さい(例えば5dB程度)場合にはexOR動作が正常動作し、偏波モード分散の抑制を行うことができるが、光強度差が5dB以上になると光強度が強い方の偏波成分のみ引きずられ、exOR回路(波長変換素子115)が正常動作しない場合が発生する。
【0012】
ちなみに、実際の光伝送路においては、両偏波成分の強度差は大きく、時として20dBにも達することがある。かかる場合、図4に示す偏波モード分散抑制装置では、偏波モード分散を抑制することはできない。
【0013】
本発明は、上記の欠点に鑑み、TE/TM偏波成分の強度差が大きい場合にもexOR回路が正常動作し、偏波モード分散を抑制することが可能な偏波モード分散抑制方法及びその装置を提供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成する本発明の構成は、次の通りである。
【0015】
1) 入力される光信号の偏波状態を偏波コントローラで制御するとともに、偏波状態を制御した光信号をTE偏波成分とTM偏波成分に分岐し、さらに、相互位相変調型の波長変換素子を用いて、これらの各偏波成分の光強度の排他的論理和を求める光exOR演算を行い、このexOR演算の結果が「0」となるように、前記偏波コントローラにより、遅延した偏波成分を偏波面保持光ファイバの速く進む方向に入力し、先行している偏波成分を偏波面保持光ファイバの遅く進む方向に入力して、偏波状態を制御する偏波モード分散抑制方法において、前記波長変換素子の後段において検出したTE偏波成分とTM偏波成分との光強度の差が、光信号のアイパターンの消光比を基準とする所定値以下である場合、光信号中に一方の偏波成分しか存在しない特殊状態でないと判定して、光exOR演算を行うに先立ち、光強度の弱い何れか一方の偏波成分を増幅して、両偏波成分の光強度が等しくなるように調整し、TE偏波成分とTM偏波成分との光強度の差が、前記所定値を越える場合、特殊状態であると判定して、両偏波成分の光強度の差が最大になるように偏波コントローラを制御すること。
【0017】
2) 上記1)に記載する偏波モード分散抑制方法において、TE偏波成分とTM偏波成分との光強度の差が所定値を越える特殊状態であることが検出された場合には、両偏波成分の偏波面が90度回転するように偏波コントローラを制御するとともに、このように偏波面を90度回転させた後の両偏波成分の光強度の差が所定値を越える特殊状態であることを確認した後、真正の特殊状態であると判断すること。
【0018】
3) 光ファイバを伝搬してきた光信号が入力され、この光信号の偏波状態を制御する偏波コントローラと、前記偏波コントローラから偏波状態が制御された光信号が入力され、この光信号を伝搬させることにより光信号の偏波モード分散を抑制する偏波面保持光ファイバと、前記偏波面保持光ファイバから出力された光信号が入力され、この光信号の一部を出力すると共に残りの一部を分岐する1入力2出力の光カプラと、前記1入力2出力の光カプラにて分岐された光信号をTE偏波成分とTM偏波成分に分ける偏波スプリッタと、前記偏波スプリッタから出力されたTE偏波成分とTM偏波成分の内の一方の偏波成分を伝搬する第1の偏波用光導波路と、第1の偏波用光導波路と同一の光路長を有しており、前記偏波スプリッタから出力されたTE偏波成分とTM偏波成分の内の他方の偏波成分を伝搬する第2の偏波用光導波路と、相互位相変調型の波長変換素子からなり、前記第1の偏波用光導波路及び第2の偏波用光導波路を経てTE偏波成分とTM偏波成分が個別に入力され、光信号のTE偏波成分の光強度とTM偏波成分の光強度との排他的論理和を求める光exOR演算をし演算結果と、入力されたTE偏波成分とTM偏波成分とを出力する光exOR回路と、前記光exOR回路の論理出力が「0」となるように前記偏波コントローラによる偏波状態を制御する第1の制御手段とを有する偏波モード分散抑制装置において、前記第1の偏波用光導波路を経て前記光exOR回路に入力される一方の偏波成分の光強度を調整する第1の光レベル調整手段と、前記第2の偏波用光導波路を経て前記光exOR回路に入力される他方の偏波成分の光強度を調整する第2の光レベル調整手段と、前記光exOR回路から出力される前記一方の偏波成分の光強度を検出する第1の受光器と、前記光exOR回路から出力される前記他方の偏波成分の光強度を検出する第2の受光器と、前記各光レベル調整手段を制御する第2の制御手段とを有し、前記第2の制御手段は、前記第1及び第2の受光器で受光した両偏波成分の光強度の差が光信号のアイパターンの消光比を基準とした所定値以下であることを検出した場合には、光信号中に一方の偏波成分しか存在しない特殊状態でないと判断すると共に、特殊状態でないことを条件として両偏波成分の光強度が等しくなるように、前記各光レベル調整手段を制御し、第1及び第2の受光器で受光した両偏波成分の光強度の差が前記所定値を越える特殊状態であることを検出した場合には、第1の制御手段を介して両偏波成分の光強度の差が最大になるように偏波コントローラを制御すること。
【0020】
4) 上記3)に記載する偏波モード分散抑制装置において、第1及び第2の受光器で受光した両偏波成分の光強度の差が所定値を越える特殊状態であることを第2の制御手段で検出した場合には、第1の制御手段を介して両偏波成分の偏波面が90度回転するように偏波コントローラを制御するとともに、このように偏波面を90度回転させた後の両偏波成分の光強度の差が所定値を越える特殊状態であることを再度第2の制御手段で検出したことを条件として真正の特殊状態であると判断すること。
【0021】
5) 上記4)に記載する偏波モード分散抑制装置において、一回目の特殊状態が検出された後の偏波コントローラの制御による偏波面の90度の回転の後、第2の制御手段において、再度特殊状態が検出されない場合には、異常状態であると判断してこれを告知するようにしたこと。
【0022】
6) 上記3)乃至5)の何れか一つに記載する偏波モード分散抑制装置において、所定値を、ゼロレベルとOFF状態の光信号が最大に偏移した位置とのレベル差と、ゼロレベルとON状態の光信号の偏移幅の中心とのレベル差との比とによる光信号のアイパターンの消光比としたこと。
【0023】
7) 上記6)に記載する偏波モード分散抑制装置において、前記消光比は、13dBであること。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の実施の形態を図面に基づき詳細に説明する。
【0025】
図1は本発明の実施の形態にかかる偏波モード分散抑制装置を示す。同図において、201は入力用光ファイバ、202は入力光パルス、203は入力光パルス202のTEもしくはTM偏波成分、204は入力光パルス202のTMもしくはTE偏波成分、205は偏波コントローラ、206は偏波モード分散制御手段であり、例えば偏波モード分散の特に大きい光ファイバである偏波面保持光ファイバで好適に構成することができる。また、207はTEもしくはTM偏波成分、208はTMもしくはTE偏波成分、209は1入力2出力の光カプラ、210は光導波路、211は出力用光ファイバ、212は偏波スプリッタ、213,214は偏波用光導波路、215は光exOR回路となる相互位相変調型の波長変換素子、216は波長変換素子215の光源、217,218は光導波路、219は平均出力のみを検知する受光器、220は第1の制御手段である偏波コントローラ205の制御系、223は波形整形された光パルス、221は光パルス223のTEもしくはTM偏波成分、222は光パルス223のTMもしくはTE偏波成分である。
【0026】
本形態に係る偏波モード分散抑制装置は、図4に示す偏波モード分散抑制装置に追加する構成要素として、更に光レベル調整機224,225、受光器226,227及び第2の制御手段である制御回路228を有する。これらのうち、光レベル調整器224は、偏波用光導波路213を介して波長変換素子215に入力される一方の偏波成分の光強度を、また光レベル調整器225は、偏波用光導波路214を介して波長変換素子215に入力される他方の偏波成分の光強度をそれぞれ調整する。受光器226は、波長変換素子215から出力される前記一方の偏波成分の光強度を、また受光器227は、波長変換素子215から出力される前記他方の偏波成分の光強度をそれぞれ検出する。
【0027】
制御回路228は、前記受光器226、227で受光した両偏波成分の光強度の差が所定値以下である(特殊状態(光信号中にTE/TMの何れか一方の偏波成分しか存在しない状態;以下同じ。)でない)ことを条件として両偏波成分の光強度が等しくなるように、前記各光レベル調整器224、225を制御する。さらに詳言すると、本形態に係る制御回路228は、受光器226、227で受光した両偏波成分の光強度の差を検出する機能を有しており、検出した前記光強度の差が、所定値を越える場合には、特殊状態であると判断し、同光強度の差が所定値以下の特殊状態でない場合にのみ、上述の如き各光レベル調整器224、225の制御を行う。一方、前記特殊状態であると判断した場合には、制御系220を介して両偏波成分の光強度の差が最大になるように偏波コントローラ205を制御する。ここで、前記所定値としては、光信号のアイパターンの消光比を基準とする。そして、両偏波成分の光強度の差が前記消光比を越える場合に特殊状態であると判断する。ちなみに、前記消光比は、図2に示す光信号のアイパターンにおける(b/a)として定義される。ここで、aはゼロレベルとOFF状態の光信号が最大に偏移した位置とのレベル差、bはゼロレベルとON状態の光信号の偏移幅の中心とのレベル差である。かかる消光比は通常10乃至13dBである。したがって、例えば制御回路228に入力される両偏波の光強度の差が13dBを越える場合に特殊状態であると判定することができる。
【0028】
図1に示す偏波モード分散抑制装置では、遅延した偏波成分203が偏波面保持光ファイバ206の速く進む方向に、先行している偏波成分204が偏波面保持光ファイバ206の遅く進む方向に入力するように、制御系220にて偏波コントローラ205を制御することにより、入力光パルス202の偏波状態を調整して、偏波モード分散を抑制している。
【0029】
ここで光信号の一部を光カプラ209で分岐して、その偏波成分を偏波スプリッタ212でさらに分岐する。この結果、偏波用光導波路213にはTEもしくはTM偏波成分が、偏波用光導波路214にはTMもしくはTE偏波成分が出力される。ここで、偏波用光導波路213と偏波用光導波路214の光路長を等しくしたうえで、波長変換素子215の信号入力ポートに、TE偏波成分とTM偏波成分が個別に入力する。
【0030】
波長変換素子215は相互位相変調型の波長変換素子であり、偏波用光導波路213,214の双方の光強度が「0」レベルのときには光源216からの連続光を光導波路217に出力する。すなわち、このとき出力側の光導波路218は「0」レベルである。一方、偏波用光導波路213または偏波用光導波路214の光強度のうちのどちらか一方だけが「1」レベルになると、波長変換素子215の原理により出力側の光導波路218の光強度は「1」レベルとなる。さらに偏波用光導波路213,214の双方の光強度が「1」レベルのとき、双方が打ち消し合って、出力側の光導波路218の光強度は「0」レベルとなる。
【0031】
一方、受光器226には、光レベル調整器224を通過して波長変換素子215に入力される偏波成分が入力され、受光器226は、この偏波成分の強度に応じた電気信号を出力する。また、受光器227には、光レベル調整器225を通過して波長変換素子215に入力される偏波成分が入力され、受光器227は、この偏波成分の強度に応じた電気信号を出力する。制御回路228は、受光器226及び受光器227からの電気信号を監視することにより、偏波用光導波路213を介して波長変換素子215に入力される偏波光の強度、及び、偏波用光導波路214を介して波長変換素子215に入力される偏波光の強度をモニタすることができる。
【0032】
そして、制御回路228は、前記受光器226、227で受光した両偏波成分の光強度の差が所定値以下である(特殊状態ではない)ことを条件として両偏波光の強度の差が最小になるように、フィードバック回路229,230を介して、光レベル調整器224,225の増幅度を個別に調整している。つまり、光強度が弱いときには光レベル調整器224,225の電流を増加することで増幅度を上げ、光強度が強いときには光レベル調整器224,225の電流を減少することで増幅度を下げる。このような光強度調整制御によって、偏波用光導波路213を介して波長変換素子215に入力される偏波光の強度と、偏波用光導波路214を介して波長変換素子215に入力される偏波光の強度を、厳密に一致させることができ、確実に偏波モード分散の制御が可能になる。
【0033】
ただ、制御回路228で、両偏波光の強度差のみに応じて光レベル調整器224,225を制御する場合には、次の様な問題が発生する。すなわち、光導波路210を介して伝送される光信号がTE及びTMの両偏波成分を常に有していれば特に問題はないが、何れか一方の偏波成分のみしか有していない場合、すなわち「特殊状態」の場合に問題を生じる。かかる特殊状態の場合(具体的には、両偏波成分の光強度の差が、例えば13dBを越える場合)には、波長変換素子215に入力される偏波成分の一方がゼロレベルということになり、ゼロレベルの偏波成分を光レベル調整器224又は光レベル調整器225の増幅度を上げて増幅しようとしても両偏波成分のレベルが同一になるまで増幅することは不可能であるからである。
【0034】
ちなみに、TE又はTMの何れか一方の偏波成分しか含まない場合は次の様な理由で、度々発生する。入力用光ファイバ201内の偏波面は、環境温度の変化及びこの入力用光ファイバ201に作用する風力の変化に伴う捩じれ等により自由に動き、数分程度で一回転する。そして、毎日一回程度は回転する。このため、両偏波面が一致する場合があり、このように両偏波面が一致した場合にはTE又はTMの何れか一方の偏波しか得ることができない。
【0035】
かかる問題点を解決すべく本形態に係る制御回路228は、上述の様な構成を有し、このことにより次の作用・効果を有する。すなわち、制御回路228で特殊状態であることを検出した場合には、光レベル調整器224,225の制御は中止し、当該特殊状態であることを表す信号を制御回路228から制御系220に送出する。この信号を制御系220が受信した場合、制御系220は両偏波成分の光強度の差が最大になるように偏波コントローラ205を制御する。この結果、最大レベルの何れか一方の偏波成分の光信号が出力用光ファイバ211を介して出力される。ここで、両偏波成分の光強度の差が最大になるように制御するには、具体的には次の様な手法が好適である。すなわち、偏波成分の一方の光強度がゼロにするように制御すべく、受光器226又は受光器227の何れかの受光電流が最低になるように偏波コントローラ205を調節する。このことにより偏波モード分散抑制により余計な偏波モード分散が付与されないようにすることもできる。
【0036】
上記実施の形態においてはTE及びTMの両偏波成分の光強度の差が所定値を越えることのみを以て特殊状態であると判断しているが、当該特殊状態になったことを原因としない場合でも両偏波の光強度の差が所定値を越える場合が、稀にではあるが、発生する。偏波用光導波路213,214の断線及び光レベル調整器224,225の故障等を発生した場合である。したがって、特殊状態であることが検出された場合、これを確認するのがより望ましい。かかる確認機能を有する偏波モード分散抑制装置を本願発明の他の実施の形態として説明する。
【0037】
本形態においては、制御系220の機能に次の機能を追加してある。すなわち、受光器226,227で受光した両偏波成分の光強度の差が所定値を越える特殊状態であることを制御回路228で検出した場合には、この特殊状態であることを表す信号が制御系220に送出されるが、この信号を受信した制御系220は、両偏波成分の偏波面が90度回転するように偏波コントローラ205を制御する。具体的には、偏波コントローラ205の(1/2)波長板を45度回転する。かかる処理の後、両偏波成分の光強度の差を再度制御回路228で検出し、これが再度所定値を越える特殊状態であることを以て、真正の特殊状態であると判断する。最初、例えばTE成分のみが存在し、TM成分が存在しなくて特殊状態であると判定された場合、偏波コントローラ205で偏波面を90度回転した2度目の処理ではTM成分のみが存在し、TE成分が存在しない状態となるので、両偏波の光強度の差は最初と同様に所定値を越えるはずであるからである。
【0038】
2度目の判定処理でも制御回路228は、再度特殊状態であることを表す信号を制御系220に送出するが、制御系220では前記信号の2度目の受信により、特殊状態であることが確認されたとして前記実施の形態と同様に、両偏波成分の光強度の差が最大になるように偏波コントローラ205を制御する。
【0039】
一方、2度目の判定処理では両偏波の光強度の差が所定値以下である場合には、前述の如き断線等、何らかの異常が発生しているので、これを告知するように構成することもできる。これは、例えばランプの点滅で実現し得る。
【0040】
なお通常、半導体光増幅器をこのように光レベル調整器として用いると信号のパターンによって増幅度が変化するいわゆるパターン効果による波形歪みが問題となるが、本発明においては受光器219における平均出力のみを検知するため、波形が歪んでも問題にならない。
【0041】
なお、半導体光増幅器1段で増幅度20dBの達成が困難な場合には、半導体光増幅器を2段、3段とカスケード接続しても良い。また、入力される光の強度が低い光伝送システムに用いる場合には、増幅度が高い光増幅器を採用し、入力される光の強度が高い光伝送システムに用いる場合には、増幅度が低い光増幅器を採用する。更に、半導体光増幅器の代わりに、光ファイバアンプ等を用いて光レベル調整器を構成しても良い。
【0042】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、TE偏波成分とTM偏波成分との強度差が大きい場合にもexOR回路が正常に動作し、偏波モード分散を抑制することが可能な偏波モード分散抑制装置を提供することができる。更に、何らかの原因で両偏波成分の偏波面が一致し、TE偏波成分とTM偏波成分とのレベル調整が不可能になった場合には、これを検出することができるので、一方の偏波成分が最大レベルになるように調整する等、当該特殊状態に応じた適切な措置を講じることができる。さらに、この特殊状態の確認もできるようにした場合には、この特殊状態ではない、光ファイバの断線等の異常状態を検出することもできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態にかかる偏波モード分散抑制装置を示す構成図である。
【図2】光信号のアイパターンの一例を示す説明図である。
【図3】偏波モード分散の状態を説明する説明図。
【図4】既に出願した偏波モード分散抑制装置を示す構成図。
【符号の説明】
101,201 入力用光ファイバ
102,202 入力光パルス
103,104,203,204 偏波成分
105,205 偏波コントローラ
106,206 偏波面保持光ファイバ
107,108,207,208 偏波成分
109,209 光カプラ
110,210 光導波路
111,211 出力用光ファイバ
112,212 偏波スプリッタ
113,114,213,214 偏波用光導波路
115,215 波長変換素子
116,216 光源
117,118,217,218 光導波路
119,219 受光器
120,220 制御系
121,122,221,222 偏波成分
123,223 光パルス
224,225 光レベル調整器
226,227 受光器
228 制御回路
229,230 フィードバック回路

Claims (7)

  1. 入力される光信号の偏波状態を偏波コントローラで制御するとともに、偏波状態を制御した光信号をTE偏波成分とTM偏波成分とに分岐し、
    さらに、相互位相変調型の波長変換素子を用いて、これらの各偏波成分の光強度の排他的論理和を求める光exOR演算を行い、
    このexOR演算の結果が「0」となるように、前記偏波コントローラにより、遅延した偏波成分を偏波面保持光ファイバの速く進む方向に入力し、先行している偏波成分を偏波面保持光ファイバの遅く進む方向に入力して、偏波状態を制御する偏波モード分散抑制方法において、
    前記波長変換素子の後段において検出したTE偏波成分とTM偏波成分との光強度の差が、光信号のアイパターンの消光比を基準とする所定値以下である場合、光信号中に一方の偏波成分しか存在しない特殊状態でないと判定して、光exOR演算を行うに先立ち、光強度の弱い何れか一方の偏波成分を増幅して、両偏波成分の光強度が等しくなるように調整し、
    TE偏波成分とTM偏波成分との光強度の差が、前記所定値を越える場合、特殊状態であると判定して、両偏波成分の光強度の差が最大になるように偏波コントローラを制御することを特徴とする偏波モード分散抑制方法。
  2. 〔請求項1〕に記載する偏波モード分散抑制方法において、
    TE偏波成分とTM偏波成分との光強度の差が所定値を越える特殊状態であることが検出された場合には、両偏波成分の偏波面が90度回転するように偏波コントローラを制御するとともに、このように偏波面を90度回転させた後の両偏波成分の光強度の差が所定値を越える特殊状態であることを再度確認した後、真正の特殊状態であると判断することを特徴とする偏波モード分散抑制方法。
  3. 光ファイバを伝搬してきた光信号が入力され、この光信号の偏波状態を制御する偏波コントローラと、
    前記偏波コントローラから偏波状態が制御された光信号が入力され、この光信号を伝搬させることにより光信号の偏波モード分散を抑制する偏波面保持光ファイバと、
    前記偏波面保持光ファイバから出力された光信号が入力され、この光信号の一部を出力すると共に残りの一部を分岐する1入力2出力の光カプラと、
    前記1入力2出力の光カプラにて分岐された光信号をTE偏波成分とTM偏波成分に分ける偏波スプリッタと、
    前記偏波スプリッタから出力されたTE偏波成分とTM偏波成分の内の一方の偏波成分を伝搬する第1の偏波用光導波路と、
    第1の偏波用光導波路と同一の光路長を有しており、前記偏波スプリッタから出力されたTE偏波成分とTM偏波成分の内の他方の偏波成分を伝搬する第2の偏波用光導波路と、
    相互位相変調型の波長変換素子からなり、前記第1の偏波用光導波路及び第2の偏波用光導波路を経てTE偏波成分とTM偏波成分が個別に入力され、光信号のTE偏波成分の光強度とTM偏波成分の光強度との排他的論理和を求める光exOR演算をし演算結果と、入力されたTE偏波成分とTM偏波成分とを出力する光exOR回路と、
    前記光exOR回路の論理出力が「0」となるように前記偏波コントローラによる偏波状態を制御する第1の制御手段とを有する偏波モード分散抑制装置において、
    前記第1の偏波用光導波路を経て前記光exOR回路に入力される一方の偏波成分の光強度を調整する第1の光レベル調整手段と、
    前記第2の偏波用光導波路を経て前記光exOR回路に入力される他方の偏波成分の光強度を調整する第2の光レベル調整手段と、
    前記光exOR回路から出力される前記一方の偏波成分の光強度を検出する第1の受光器と、
    前記光exOR回路から出力される前記他方の偏波成分の光強度を検出する第2の受光器と、
    前記各光レベル調整手段を制御する第2の制御手段とを有し、
    前記第2の制御手段は、
    前記第1及び第2の受光器で受光した両偏波成分の光強度の差が光信号のアイパターンの消光比を基準とした所定値以下であることを検出した場合には、光信号中に一方の偏波成分しか存在しない特殊状態でないと判断すると共に、特殊状態でないことを条件として両偏波成分の光強度が等しくなるように、前記各光レベル調整手段を制御し、
    第1及び第2の受光器で受光した両偏波成分の光強度の差が前記所定値を越える特殊状態であることを検出した場合には、第1の制御手段を介して両偏波成分の光強度の差が最大になるように偏波コントローラを制御することを特徴とする偏波モード分散抑制装置。
  4. 〔請求項3〕に記載する偏波モード分散抑制装置において、
    第1及び第2の受光器で受光した両偏波成分の光強度の差が所定値を越える特殊状態であることを第2の制御手段で検出した場合には、第1の制御手段を介して両偏波成分の偏波面が90度回転するように偏波コントローラを制御するとともに、このように偏波面を90度回転させた後の両偏波成分の光強度の差が所定値を越える特殊状態であることを再度第2の制御手段で検出したことを条件として真正の特殊状態であると判断することを特徴とする偏波モード分散抑制装置。
  5. 〔請求項4〕に記載する偏波モード分散抑制装置において、
    一回目の特殊状態が検出された後の偏波コントローラの制御による偏波面の90度の回転の後、第2の制御手段において、再度特殊状態が検出されない場合には、異常状態であると判断してこれを告知するようにしたことを特徴とする偏波モード分散抑制装置。
  6. 〔請求項3〕乃至〔請求項5〕の何れか一つに記載する偏波モード分散抑制装置において、
    所定値を、ゼロレベルとOFF状態の光信号が最大に偏移した位置とのレベル差と、ゼロレベルとON状態の光信号の偏移幅の中心とのレベル差との比とによる光信号のアイパターンの消光比としたことを特徴とする偏波モード分散抑制装置。
  7. 〔請求項6〕に記載する偏波モード分散抑制装置において、
    前記消光比は、13dBであることを特徴とする偏波モード分散抑制装置。
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