JP3809388B2 - 定着装置及び画像形成装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、未定着のトナー像を記録材に定着させるための定着装置、およびこれを備えた画像形成装置に関する。画像形成装置とは、例えば電子写真方式の複写機、プリンタ、ファクシミリ等である。
【0002】
【従来の技術】
従来の画像形成装置を図面により説明する。図10は従来の画像形成装置の例を示す断面図であって、四色のトナーを重ねあわせることによりフルカラー画像を得ることができるものである。図に示す画像形成装置は、電子写真感光体として感光体ドラム1を備えている。感光体ドラム1表面は帯電手段としての帯電ローラ2によって一様帯電され、次に画像情報に応じて露光手段である光学装置3によって制御されたレーザービームによる走査露光が行われることにより、静電潜像が形成される。形成された静電潜像は、現像装置4に備えられたブラック、マゼンタ、シアン、イエロー各色のトナーを有する第一〜第四現像器4a〜dにより現像され、各色のトナー像が形成される。
【0003】
各色のトナー像は一色ごとに中間転写ベルト5aに重畳的に一次転写され、一括して記録材Pに二次転写される。トナー像を担持した記録材Pは、入口ガイド板9を通って内部に加熱源(図示せず)を有する定着ローラ10と加圧ローラ11に加熱加圧されながら搬送され、トナー像を定着された後に機外に排出され、画像形成を終了する。
【0004】
しかしながら、上記の構成においては、トナー像を定着する際に、トナー像の一部が定着ローラ10側にひきつけられ、定着ローラ10の一周後に再び記録材P上にトナーが吐き出されることによるオフセット画像が発生することがあった。
【0005】
オフセットとは、通常、記録材P裏面のプラス電荷により保持されている、記録材P表面のマイナス極性に帯電したトナーが、表面が絶縁ないしは半導電性の定着ローラ10及び表面が絶縁性の加圧ローラ11により形成される圧接部(以下、「定着ニップ部」と呼ぶ)に突入する際に、定着ニップ部近傍における定着ローラ10表面電位がプラス方向に振れた際に、記録材P裏面のプラス電荷により保持できなくなり、定着ローラ10側に移動する現象である。この定着ローラ10に付着したトナーが再び記録材Pに戻ることにより、記録材P上に画像不良として現れてしまう。
【0006】
このオフセット現象は、特に、全面にトナーを載せたベタ画像や、さらには二色以上のトナーを重ねてカラー画像を形成するカラー画像形成装置における、二色以上のトナーを重ね合わせたベタ画像において、顕著となる。すなわち、トナー層が厚く堆積している表面においては、記録材P裏面の電荷によりすべてのトナーを保持することが難しく、オフセット現象も発生しやすくなる。
【0007】
この現象を防止するためには、定着ローラ10表面に導電性を持たせることが考えられるが、この場合は、トナーのマイナス電荷が定着ローラを通して逃げてしまうこととなり、記録材裏のプラス電荷によってトナーを引き止めることができなくなってしまう。このことにより、結局はオフセット現象が発生してしまうこととなり、根本的な解決とならない。
【0008】
これに対して、従来の画像形成装置においては、定着ローラ10に負のバイアスを印加することにより、定着ローラ10とトナーの間に反発電界を生じさせることによりオフセットを防止する方法が試みられている。
【0009】
図7は、特許第3053459号公報に掲載されている定着装置の構成を示した図である。図において、定着ローラ10には、バイアス印加手段としての電源30より抵抗R6を介して負バイアスが印加されている。これにより、定着ローラ10が負に帯電し、トナーと定着ローラ10との間に反発電界を生じ、オフセット現象を防止する働きをもたせている。
【0010】
ところが、上記の構成においてもなお、オフセット現象が発生する場合があった。特に、カラー画像形成装置の場合のようにトナー層が厚く堆積している場合においては、定着ローラ10の表面電位や、記録材P裏面の電荷をコントロールするだけでは、オフセット現象を解決できない場合があった。すなわち、トナー層が厚く堆積している場合においては、マイナス帯電した各トナー粒子が互いに反発力を生じるため、定着ローラ10表面の電位だけをコントロールしても、トナー粒子間の反発力により、最上層のトナーが、定着ローラ10に付着してしまうと考えられる。
【0011】
これに対して、近年、定着ローラ10にバイアスを印加し、定着ニップ部直後に、アースに接続された排出ローラを設け、定着ローラ10から記録材Pを通って排出ローラからアースへと流れる電流経路を形成することによりオフセット防止を図った構成が提案されている。
【0012】
本構成を、図8を用いて詳述する。図8において、電源30は定着ローラ10に対して負のバイアスを印加する。また、排出ローラ18は導電化されており、アースに接続されている。電源30から印加されたバイアスは、定着ローラ10、記録材Pを通って、排出ローラ18からアースに流れ込むことにより、電流経路が形成される。このように電流経路を形成することにより、トナー層表面と、記録材P表面の間に、電界が形成される。この電界によって、トナーが厚く体積した場合においても、トナー粒子を記録材側に押しつける力が発生し、トナー最上層が定着ローラ表面に付着することなく、良好な画像を得ることが可能となる。
【0013】
また、電流経路が形成されることにより、トナー層中に電荷が流れ込み、トナー層表面と記録材P裏面との間に形成される電界に見合った量の電荷が、トナー層中のトナー粒子に帯電される。このことにより、特にトナーが厚く堆積しているときには、トナー層最上層が帯電量が最も大きく、徐々に記録材表面付近に近づくにつれ、トナーの帯電状態が弱くなって行き、電流経路が形成されない場合、すなわちトナー層中のトナーが、全て一様に等しい電荷を持つ場合に比べて、記録材表面付近のトナー粒子とトナー層最上層部のトナー粒子との反発力が軽減される効果をもつ。このことによって、トナー層最上層部のトナー粒子が定着ローラ側に付着することがなくなり、オフセット現象が防止される。
【0014】
なお、電源30から定着ローラに流れ込む電流値を測定すると、通常環境で測定される記録材Pの抵抗値から予想されるよりも大きな値の電流が流れている。これは、定着ニップ部通過時に記録材Pより放出される水蒸気の影響によるものである。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来例の如く、定着ローラ10から、記録材P、排出ローラ18を通ってアースに流れ込む電流経路を形成するためには、定着ローラ10にある程度の導電性を持たせる必要がある。このため従来例においては、定着ローラ10の表面層に、カーボン等の導電剤を分散した材料を使用している。このことにより、定着ローラ10表面層の耐圧が不十分な状態となってしまい、定着ローラ10から排出ローラ18へと十分な電流を流そうとすると、定着ローラ10表面層が絶縁破壊を起こしてしまうという問題があった。
【0016】
これに対して、特開2000-338807号公報において、加圧ローラ11も導電化して、これに別電源からバイアスを印加することにより、定着ローラ10と加圧ローラ11の電位差を低く保つことにより、表面層の絶縁破壊を防止する構成が提案されている。
【0017】
本構成を図9によって説明する。図に示すように、本構成の定着装置は、複数の電源30a、30bを有し、定着ローラ用電源30aは保護抵抗R4を介して定着ローラ10に、加圧ローラ用電源30bは保護抵抗R5を介して加圧ローラ11にそれぞれ接続されており、排出ローラ18を導電化して、アースに接続している。そして電源30aと30bに印加するバイアスの差を、定着ローラ10の表面層が絶縁破壊を起こす電圧より低く設定することにより、定着ローラ10の表面層の絶縁破壊を防止している。
【0018】
しかしながら、本構成においては、抵抗の低い記録材が通紙された際に、保護抵抗による電圧降下が大きくなることで、定着ローラ10の電位が大幅に低下した際に、加圧ローラ11の電位との電位差が小さくなりすぎてしまい、かえってオフセット現象を悪化させてしまう場合があった。
【0019】
また、ラベル紙(表面層の抵抗が低く、裏面の剥離紙が樹脂ラミネート加工してあるため、裏面の抵抗が著しく高い)や、トナーを全面に乗せたベタ画像(トナーは高抵抗なため、記録材表面の抵抗が高く、裏面の抵抗が低い状態となる。さらに、ベタ画像を記録した場合は、記録材P表面のトナー層が蓋の役割を果たすことで、記録材P裏面側に放出される水蒸気量が、表面側に放出される水蒸気量に比べて著しく多くなるため、さらに裏面の抵抗が低い状態となる)等、記録材の表面と裏面で著しく抵抗の異なる記録材を通紙した際にも、オフセット現象の悪化が見られる。これは、記録材表面を通って流れる電流と、記録材裏面を通って流れる電流との差が大きいため、抵抗R4と抵抗R5における電圧降下のバランスが著しく崩れ、定着ローラ10と加圧ローラ11の電位の差が小さくなったり、時には逆転してしまう場合もあるばかりでなく、定着ローラ10から記録材P表面のトナー層に流れ込む電流に対して、加圧ローラ11から記録材P裏面に流れ込む電流の値が大きくなってしまうためである。すなわち、定着ローラ10よりトナー層にマイナス電荷が付与される以上に、記録材P裏面にマイナス電荷が付与されると、記録材P裏面の転写電荷とトナー帯電電荷のバランスが崩れ、記録材P裏面にトナーを保持する力が弱まってしまうためである。
【0020】
そこで本発明は、定着ローラ表面の絶縁破壊を起こすことなく、常に安定した定着ローラ、加圧ローラの電位関係、及びトナー層電荷と記録材裏面電荷の関係を保ち、オフセット現象の発生の少ない、良好な画像を得ることができる定着装置、および画像形成装置を提供することを目的としている。
【0021】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明に係る定着装置及び画像形成装置の代表的な構成は、少なくとも、加熱源を有する回転体と、該回転体と圧接部を形成する加圧部材とを有し、前記圧接部に記録材を挟持搬送しつつ、該記録材表面に静電的に付着形成されたトナー像を該記録材上に熱定着させる定着装置において、前記回転体及び前記加圧部材に電圧を印加し、アースに接続された電極部材を前記圧接部より下流側に設けることにより、前記圧接部から前記記録材を通してアースに流れる電流経路を形成するバイアス印加手段を有し、前記バイアス印加手段は、単一の電源から分岐することにより、前記回転体と前記加圧部材に電圧を印加することを特徴とする。
【0022】
【発明の実施の形態】
[第一実施形態]
本発明に係る定着装置及び画像形成装置の第一実施形態について、図を用いて説明する。図1は本実施形態に係る画像形成装置の概略構成図、図2は本実施形態に係る定着装置の構成図、図3は比較例1を説明する定着装置の構成図、図4は比較例2を説明する定着装置の構成図である。
【0023】
(全体構成)
まず、図1を用いて画像形成装置の全体構成について説明する。本実施形態においては、画像形成装置として、四色のトナーを重ねあわせることによりフルカラー画像を得ることができるフルカラー画像形成装置を用いている。
【0024】
図1に示す画像形成装置は、電子写真感光体として感光体ドラム1を備えている。感光体ドラム1表面は、まず帯電手段としての帯電ローラ2によって一様に帯電され、次に第一の画像情報に応じて、露光手段である光学装置3によって、ON/OFF制御されたレーザービームによる走査露光が行われることにより、第一の静電潜像が形成される。
【0025】
このように形成された静電潜像は、現像手段である現像装置4により、可視化される。現像装置4は、第一色目のトナーとしてブラックトナーが内包された第一の現像器4a、第二色目のトナーとしてマゼンタトナーが内包された第二の現像器4b、第三色目のトナーとしてシアントナーが内包された第三の現像器4c、第四色目のトナーとしてイエロートナーが内包された第四の現像器4dを搭載し、矢印D1方向に回転可能な回転支持体を備えている。この回転支持体を矢印D1方向に回転させることにより、現像に供される現像器4a〜dを順に感光体ドラム1に対向する現像位置に配置する構成となっている。
【0026】
上述の第一の静電潜像は、第一色目のトナーとしてブラックトナーが内包された第一の現像器4aによりブラックのトナー像として現像される。現像された第一のトナー像は、転写手段5の一部を構成する中間転写ベルト5a(中間転写体)に一次転写される。中間転写ベルト5aは、たとえば厚さ50〜200μm、体積抵抗率10^8〜10^14Ωcmに調整されたPVdF、PET、ポリカーボネート、ポリエチレン、シリコーン等の樹脂により構成される。また、厚さ0.3〜2mm、体積抵抗率10^4〜10^8Ωcmに調整されたウレタンゴム、ヒドリンゴム、NBR、EPDM等の弾性基層上に、厚さ2〜100μm、体積抵抗率10^8〜10^14Ωcmに調整されたゴム、または樹脂を表層として設ける構成としても良い。中間転写ベルト5aは、周長が441mmに設定されており、ローラ5b、5c、5dに掛け渡されている。
【0027】
中間転写ベルト5aは、その内側に配置された一次転写ローラ6によって、感光体ドラム1表面に所定の押圧力をもって押圧されており、感光体ドラム1との間に一次転写ニップ部T1を形成している。中間転写ベルト5aは、感光体ドラム1の周速とほぼ等速度で感光体ドラム1の回転方向(矢印D2方向)に回転駆動される。上述の感光体ドラム1表面に形成されたトナー像は、上述の一次転写ローラ6に対して、一次転写バイアス印加電源(不図示)によってトナーの帯電極性とは逆極性の電圧(一次転写バイアス)が印加されることにより、中間転写ベルト5a表面に静電的に一次転写される。なお、一次転写が終了した感光体ドラム1表面に若干量残存する一次転写残トナーは、クリーニング装置7によって除去される。
【0028】
続いて、上述の一連の画像形成工程、すなわち一次帯電、露光、現像、一次転写、クリーニングを残りの三色について繰り返し、その都度、マゼンタトナーにより現像された第二のトナー像、シアントナーにより現像された第三のトナー像、イエロートナーにより現像された第四のトナー像が、準じに中間転写ベルト5a表面に一次転写されて重ねあわされる。
【0029】
その後、中間転写ベルト5a表面に対して離間状態にあった定着手段としての二次転写ローラ8が所定の押圧力をもって中間転写ベルト5a表面に圧接され、中間転写ベルト5aとの間に二次転写ニップ部T2を形成する。二次転写ローラ8は矢印D3方向に回転駆動され、二次転写バイアス印加手段(不図示)によって、トナーの帯電極性とは逆極性の電圧(二次転写バイアス)が印加される。これにより、二次転写ニップ部T2に所定のタイミングで搬送されてくる記録材P表面に、中間転写ベルト5a表面に重ねあわされた四色のトナー像が一括して二次転写される。
【0030】
トナー像二次転写後の記録材Pは、矢印D4方向に定着手段として後述する定着装置へと搬送され、ここで、加熱、加圧されて永久画像として定着された後、機外(画像形成装置本体外部)へ排出される。
【0031】
そして、トナー像を二次転写した後の中間転写ベルト5aは、表面に若干量残存する二次転写残トナーが、駆動手段(不図示)により所定のタイミングで中間転写ベルト5a表面に対して当接状態となるクリーニングローラ21により除去される。このクリーニングローラ21は、たとえば芯金の周囲に厚さ2〜6mm、体積抵抗率10^4〜10^6Ωcmに調整されたゴム、樹脂等の表層が形成されており、感光体ドラム1表面のトナー像が中間転写ベルト5a表面に順次一次転写されている際には、中間転写ベルト5a表面から離間され、中間転写ベルト5a表面のトナー像が記録材P表面に当接され、高圧電源(不図示)によりバイアスが印加される。これにより中間転写ベルト5a表面に残存する二次転写残トナーは、本来の帯電極性とは逆の帯電極性に帯電され、連続して行われる後続の画像形成工程の第一色目のブラックトナーによる第一のトナー像が感光体ドラム1表面から中間転写ベルト5a表面に一次転写されると同時に、一次転写ニップ部T1において、中間転写ベルト5a表面から感光体ドラム1表面へと逆転写され、中間転写ベルト5a表面のクリーニング工程が完了する。
【0032】
(定着装置)
次に、本実施形態に係る定着装置について、図2を用いて詳述する。図において定着手段たる定着装置は、定着ローラ10及び加圧ローラ11によって形成された圧接部(定着ニップ部)において、記録材を挟持搬送しつつ、該記録材表面に静電的に付着形成されたトナー像を該記録材上に熱定着させるものである。
【0033】
定着ローラ10は、外径30mm、肉厚2mmのアルミニウム円筒10a上に、約30μm厚のPFA等のフッ素樹脂に導電剤を分散したものをコーティングして構成される表面層10bをを有している。また、内部には加熱体として、不図示のハロゲンヒータが配設されており、所定の制御により定着ローラ10の温度が適温となるように加熱する。
【0034】
加圧ローラ11は、芯金11a、芯金11aの外周の弾性ゴム層11b、最外殻層となるフッ素樹脂層11cから構成されている。具体的な例として、加圧ローラ11のローラ径を25mm、ゴム厚3.5mmとして、芯金11aの材質をアルミニウムとする。そして、弾性ゴム層11bのゴム材質としてはシリコーンゴムを用いるが、さらに、カーボンブラックなどの導電剤を添加して、体積抵抗が10^3〜10^7Ωcmとなるように導電化している。弾性ゴム層11bの上には、定着ローラ10の表面層と同様、導電剤を分散することにより導電化した離型性層として、フッ素樹脂層をコートし、これも同様に導電化している。
【0035】
定着ローラ10、加圧ローラ11の表面層に分散する導電剤としては、有機リン塩、パーフルオロアルキル基を含む有機塩といったイオン導電性導電剤、もしくは、カーボン等の電子導電性導電剤等、任意の導電剤を使用することができる。本実施形態においては、定着ローラ表面層に、カーボンを分散することにより、体積抵抗を約10^9Ωcmに調整している。定着ローラ10表面層の耐圧については、定着ローラ10、加圧ローラ11を圧接させ、定着ローラ10のみに電圧を印加した際に表面層に絶縁破壊の起こる電圧の値を調べることによって分かる。
【0036】
本実施形態の定着ローラ10においては、ともに、約-400Vの電圧を印加した際に、表面層に絶縁破壊が発生した。絶縁破壊が発生した箇所においては、表面層が失われ、下地層が露出する。このため、絶縁破壊の発生した定着ローラ10を使用した際には、絶縁破壊の発生した箇所において、電流のリークが発生することによる電圧降下が起こり、オフセット防止効果が不十分となるため、定着ローラ10周期でのオフセット画像が発生する。
【0037】
定着ローラ10および加圧ローラ11には、記録材Pを介して電流経路を形成するためのバイアス印加手段たる電源30aが接続されている。また、定着ニップ部より下流側には導電化された電極部材である排出ローラ18を設け、アースに接続している。電源30から印加されたバイアスは、抵抗R1を介して定着ローラ10に、さらに抵抗R2を介して加圧ローラ11にそれぞれ印加され、さらに抵抗R3を介してアースに接続されている。電源より印加するバイアスの値、およびR1、R2、R3の比を適切に設定することにより、定着ローラ10、加圧ローラ11の電圧を異ならせ、所望の比率で印加することができる。
【0038】
本実施形態においては、電源30よりDC-1000Vを印加し、R1:20MΩ、R2:30MΩ、R3:50MΩの抵抗を用いている。これにより、記録材Pを搬送しない状態での定着ローラ10、加圧ローラ11の電位はそれぞれ、-800V、-500Vとなり、定着ローラ表面層10bの絶縁破壊は発生しない。
【0039】
電源30から印加されたバイアスは、定着ローラ10および加圧ローラ11の定着ニップ部から、記録材Pを通って、排出ローラ18を通してアースに流れ込むことにより、電流経路が形成される。このように電流経路を形成することにより、トナー層表面と、記録材P裏面の間に、電界が形成される。この電界によって、トナーが厚く堆積した場合においても、トナー粒子を記録材P側に押し付ける力が発生し、トナー最上層が定着ローラ表面に付着することなく、良好な画像を得ることが可能となる。
【0040】
また、電流経路が形成されることにより、トナー層中に電荷が流れ込み、トナー層表面と記録材P裏面との間に形成される電界に見合った量の電荷が、トナー層中のトナー粒子に帯電される。このことにより、特にトナーが厚く堆積しているときには、トナー層最上層が帯電量が最も大きく、徐々に記録材表面付近に近づくにつれ、トナーの帯電状態が弱くなっていき、電流経路が形成されない場合、すなわち、トナー層中のトナーが全て一様に等しい電荷を持つ場合に比べて、記録材表面付近のトナー粒子とトナー層最上層部のトナー粒子との反発力が軽減される効果をもつ。このことによって、トナー層最上層部のトナー粒子が定着ローラ側に付着することがなくなり、オフセット現象が防止される。
【0041】
この定着装置を画像形成装置にセットし、普通紙(Xerox社製4024(商品名)75g/m^2紙)、ラベル紙(Avery社製5160(商品名))を、低温低湿環境(気温15℃、湿度10%Rh)および高温高湿環境(気温30℃、湿度80%Rh)において、先端50mm部分に、5mm角の二次色(シアン100%、マゼンタ100%)のパッチを記録したパターンを出力した。さらに、普通紙に関しては、画像の上半分を二次色のベタ画像としたパターンも出力した。
【0042】
このとき高温高湿環境においては、普通紙、ラベル紙とも吸湿により低抵抗化すると考えられる。さらにラベル紙の場合は、剥離紙が高抵抗な材質で作られているために表面抵抗が低くなるのに対し、裏面抵抗が高いままとなり、表裏の抵抗の差が極端に大きくなる。また普通紙にベタ画像を記録した場合、トナー層は高抵抗層を形成するため、表面抵抗が高く、裏面抵抗が低くなる。
【0043】
そこで、抵抗R1と定着ローラ10の間の電位VAおよび、抵抗R2と加圧ローラ11の間の地点における電位VBを測定し、VAとVBの差ΔVを求める実験を行った。さらに、定着ローラ10に流れ込む電流IAおよび、加圧ローラに流れ込む電流IBを測定し、IAとIBの差ΔIも求めた。
【0044】
このとき、普通紙では、高温高湿環境で、ΔV=150V、ΔI=30μAで、オフセットは若干見られるが、実用上問題のないレベルであった。低温低湿環境では、ΔV=310V、ΔI=6μAで、オフセットは全く問題のないレベルであった。
【0045】
また、ラベル紙では、高温高湿環境で、ΔV=150V、ΔI=30μAで、オフセットは若干見られるが、実用上問題のないレベルであった。低温低湿環境では、ΔV=150V、ΔI=25μAで、オフセットは若干見られるが、実用上問題のないレベルであった。
【0046】
また、普通紙にベタ画像を記録したパターンにおいては、高温高湿環境で、ΔV=240V、ΔI=20μAで、オフセットは全く問題のないレベルであった。低温低湿環境では、ΔV=450V、ΔI=7μAで、オフセット全く問題のないレベルであった。
【0047】
(比較例1)
本比較例においては、第一実施形態と基本的な構成は同様だが、定着ローラ10に印加するバイアスと、加圧ローラ11に印加するバイアスを別の電源から取っている。図3に、本比較例の定着装置の断面図を示す。図に示すごとく、バイアス印加用の電源は、定着ローラ用の電源30aと、加圧ローラ用の電源30bに分かれ、それぞれ抵抗R4、R5を介して、定着ローラ10、加圧ローラ11に接続されている。
【0048】
本比較例においては、定着ローラ用電源30aは-750V、加圧ローラ用電源30bは-450Vをそれぞれ印加する構成としている。これにより、定着ローラ10と加圧ローラ11の表面電位の差は、記録材Pが介在しない状態で、300Vとなり、定着ローラ表面層10bの絶縁破壊は発生しない構成となっている。また、R4、R5の抵抗値はともに20MΩとした。
【0049】
本比較例においても、第一実施形態と同様に、普通紙(Xerox社製4024(商品名)75g/m^2紙)、ラベル紙(Avery社製5160(商品名))を、低温低湿環境(気温15℃、湿度10%Rh)および高温高湿環境(気温30℃、湿度80%Rh)において、先端50mm部分に、5mm角の二次色(シアン100%、マゼンタ100%)のパッチを記録したパターンを出力した。さらに、普通紙に関しては、画像の上半分を二次色のベタ画像としたパターンも出力した。
【0050】
また、第一実施形態と同様、抵抗R4と定着ローラ10の間の電位VCおよび、抵抗R5と加圧ローラ11の間の地点における電位VDを測定し、VCとVDの差ΔVを求めた。さらに、定着ローラ10に流れ込む電流ICおよび、加圧ローラに流れ込む電流IDを測定し、ICとIDの差ΔIも求めた。
【0051】
このとき、普通紙では、高温高湿環境で、ΔV=60V、ΔI=12μAとなり、ひどいオフセット画像が発生してしまった。また低温低湿環境では、ΔV=200V、ΔI=4μAで、オフセットは全く問題のないレベルであった。
【0052】
ラベル紙では、高温高湿環境で、ΔV=0V、ΔI=15μAで、普通紙の場合と同様、ひどいオフセット画像が発生してしまった。低温低湿環境では、ΔV=170V、ΔI=8μAで、オフセットは若干見られるが、実用上問題のないレベルであった。
【0053】
また、普通紙にベタ画像を記録したパターンにおいては、高温高湿環境で、ΔV=150V、ΔI=7μAで、オフセットは若干見られるが、実用上問題のないレベルであった。低温低湿環境では、ΔV=480V、ΔI=-9μAで、ひどいレベルのオフセット画像が発生してしまった。
【0054】
(比較例2)
本比較例においては、第一実施形態に対して、加圧ローラ11にバイアスを印加しない構成とした。図4に示すごとく、電源30は抵抗R6を介して定着ローラ10のみに接続され、加圧ローラ11はフロートとしている。抵抗R6は20MΩのものを用いた。また、電源30には-750Vの電圧を印加した。
【0055】
本比較例の定着装置を画像形成装置に装着して、数枚の画像形成を行ったところ、定着ローラ周期のひどいオフセット画像が発生した。定着ローラ10を観察すると、表面層に絶縁破壊が起こっており、そこから電流がリークすることにより、定着ローラバイアスが落ち込み、これによりオフセットが発生したものである。
【0056】
(比較例3)
本比較例においては、比較例2と同様だが、電源30より印加するバイアスを-300Vとしたことが異なる。本比較例の定着装置を画像形成装置に装着し、第一実施形態と同様の画像形成を行った。
【0057】
高温高湿環境においては、普通紙で、ΔVが60Vとなり、ひどいレベルのオフセットが発生した。ラベル紙、ベタ画像を記録した普通紙においては、どちらもΔVが100Vとなり、いずれの画像においても、若干のオフセットは見られるが、実用上は問題のないレベルであった。
【0058】
低温低湿環境においては、普通紙、ラベル紙、ベタ画像を記録した普通しにおいて、それぞれΔVが、210V、250V、250Vとなり画像上は問題は発生しなかった。
【0059】
第一実施形態および比較例1〜3の結果を比較すると、表1の通りとなる。
【0060】
【表1】
【0061】
表1からも分かるとおり、ΔVが100Vより小さくなることで、オフセットのレベルが悪化する。これは、定着ローラ10と加圧ローラ11の間の電界が十分形成されないため、トナーが定着ローラ側に引き寄せられるのを防止できなくなってしまうためである。
【0062】
また、ΔIがマイナス(すなわち、加圧ローラ11側から定着ローラ10側にマイナス電荷が流れ込む状態)となると、同様にひどいオフセット画像が発生することが分かる。これは、加圧ローラ11側からマイナス電荷が流れ込むために、転写工程によって記録材P裏面に与えられたプラス電荷が失われてしまうため、記録材P裏面よりトナーを引き付ける力がなくなり、トナーが定着ローラ10側に引き付けられてしまうためである。
【0063】
上記説明した如く、単一の電源30から分岐して定着ローラ10及び加圧ローラ11に電圧を印加し、記録材Pを通して電極部材である排出ローラ18に流れる電流経路を形成することにより、記録材の抵抗や、表面、裏面の抵抗バランスの如何に関わらず、定着ローラ10と加圧ローラ11の電位関係を常に良好に保つことができ、回転体表層の絶縁破壊を防止すると同時に、記録材表面のトナーに与えられる電荷と記録材裏面の電荷のバランスを適正に保つことができ、安定してオフセット現象を防止することが可能となる。
【0064】
また定着ローラ10と加圧ローラ11に印加される電圧を異ならせることにより、定着ローラ10や加圧ローラ11に所望の比率のバイアス電圧を印加することができる。また定着ローラ10と加圧ローラ11に印加される電圧は、単一の電源から分岐された電流を異なる大きさの抵抗を介して印加することにより、容易に異ならせることができる。
【0065】
[第二実施形態]
本発明に係る定着装置及び画像形成装置の第二実施形態について、図を用いて説明する。図5は本実施形態に係る加圧部材としての加圧ローラの断面図であって、上記第一実施形態と説明の重複する部分については同一の符号を付して説明を省略する。
【0066】
本実施形態は、基本構成は上記第一実施形態と同様であるが、第一実施形態においては加圧部材としての加圧ローラ11の表面層を導電化した離型性層としていたのに対し、本実施形態においては絶縁層とした点において異なっている。
【0067】
図5において、芯金11a、弾性ゴム層11bは第一実施形態の加圧ローラと共通であるが、表面層11dには、導電剤を分散しない絶縁性のPFAをコートした。このとき、表面層11dの体積抵抗は、10^14Ωcm以上であった。
【0068】
この加圧ローラを、第一実施形態と同様の定着装置に装着し、この定着装置を第一実施形態と同様の画像形成装置に装着して、第一実施形態と同様、普通紙、ラベル紙及び普通しにベタ画像を記録したパターンを出力した。そして第一実施形態の場合と同様、抵抗R1と定着ローラ10の間の電位VAおよび、抵抗R2と加圧ローラ11の間の地点における電位VBを測定し、VAとVBの差ΔVを求めた。さらに、定着ローラ10に流れ込む電流IAおよび、加圧ローラに流れ込む電流IBを測定し、IAとIBの差ΔIも求めた。
【0069】
このとき、普通紙では、高温高湿環境でΔV=100V、ΔI=33μAで、オフセットは若干見られるが、実用上問題のないレベルであった。低温低湿環境では、ΔV=227V、ΔI=12μAで、オフセットは全く問題のないレベルであった。
【0070】
また、ラベル紙では、高温高湿環境で、ΔV=100V、ΔI=33μAで、オフセットは若干見られるが、実用上問題のないレベルであった。低温低湿環境では、ΔV=129V、ΔI=29μAで、オフセットは若干見られるが、実用上問題のないレベルであった。
【0071】
また、普通紙にベタ画像を記録したパターンにおいては、高温高湿環境で、ΔV=129V、ΔI=29μAで、オフセットは全く問題のないレベルであった。低温低湿環境では、ΔV=259V、ΔI=7μAで、オフセット全く問題のないレベルであった。
【0072】
(比較例4)
本比較例は、比較例1と同様に(図3参照)、二つの電源を用いて、定着ローラ10と加圧ローラ11にそれぞれ異なるバイアスを印加する構成において、第二実施形態と同様、加圧ローラ表面層を絶縁としたものである。
【0073】
本比較例においても、第二実施形態と同様に画像を出力したところ、普通紙では、高温高湿環境で、ΔV=-236V(これは、加圧ローラ11が定着ローラ10よりも強くマイナスに帯電していることを意味する)、ΔI=27μAで、ひどいレベルのオフセット画像が発生してしまった。低温低湿環境では、ΔV=86V、ΔI=11μAで、オフセットは若干発生するものの、実用上問題のないレベルであった。
【0074】
また、ラベル紙では、高温高湿環境で、ΔV=-236V、ΔI=27μAで、ひどいレベルのオフセットが発生した。低温低湿環境では、ΔV=-169V、ΔI=23μAで、やはり、ひどいレベルのオフセットが発生してしまった。
【0075】
また、普通紙にベタ画像を記録したパターンにおいては、高温高湿環境で、ΔV=-169V、ΔI=23μAで、オフセットは若干発生するものの、実用上問題のないレベルであった。低温低湿環境では、ΔV=175V、ΔI=6μAで、オフセットは若干発生するものの、実用上問題のないレベルであった。
【0076】
第二実施形態および比較例4の結果をまとめると、表2の通りとなる。
【0077】
【表2】
【0078】
一般に、加圧ローラ表面層の抵抗が、定着ローラ表面層の抵抗より高い場合、より少ない電位差で、大きな電流値を得ることができるのに加えて、加圧ローラ側からの記録材裏面へのマイナス電荷流れ込みがないため、通常の使用状態においては、オフセット防止効果には、より優れると考えられる。
【0079】
しかしながら、上記結果からも分かる通り、複数の電源を備えた定着装置においては、加圧ローラ表面層が絶縁の場合、定着ローラ10に印加されたバイアスが、表面抵抗の低い記録材が通紙されたときの電圧降下によって、定着ローラ電位が低下することにより、加圧ローラ11に印加されるバイアス、すなわち加圧ローラ電位の値を下回ってしまう可能性が高く、定着ローラ10と加圧ローラ11の間の電位関係が逆転してしまうことにから、ひどいレベルのオフセットを発生させてしまうことが分かる。これに対して、第二実施形態のような単一の電源から分岐してバイアスを印加する系では、定着ローラ10に印加されるバイアスの電圧降下に伴い、加圧ローラ11に印加されるバイアスも下がるため、定着ローラ10と加圧ローラ11の電位関係が逆転することなく、安定して良好な画像を得ることができる。
【0080】
上記説明した如く、単一の電源30から分岐して定着ローラ10及び加圧ローラ11に電圧を印加し、記録材Pを通して電極部材である排出ローラ18に流れる電流経路を形成することにより、トナー非定着面に接する側の部材である加圧ローラ11を導電ゴムに定着ローラ10表層より高抵抗な表層を被覆して、通常使用状態におけるオフセットに対し有利な系を採用した場合においても、第一の発明と同様、記録材の抵抗や、表面、裏面の抵抗バランスの如何に関わらず、定着ローラと加圧ローラの電位関係を常に良好に保つことができ、回転体表層の絶縁破壊を防止すると同時に、記録材表面のトナーに与えられる電荷と記録材裏面の電荷のバランスを適正に保つことにより、安定してオフセット現象を防止することが可能となる。
【0081】
[第三実施形態]
本発明に係る定着装置及び画像形成装置の第三実施形態について、図を用いて説明する。図6は本実施形態に係る定着装置の構成図であって、上記第一実施形態と説明の重複する部分については同一の符号を付して説明を省略する。
【0082】
上記第一実施形態においては加熱源を有する回転体として定着ローラを備えた定着装置を用いていたが、本実施形態においては回転体として定着フィルムを備えたフィルム定着装置12を用いたことを特徴とする。
【0083】
フィルム定着装置は、フィルムガイド14に沿って回転可能な回転体としての定着フィルム13、フィルムガイド14表面に固定された発熱手段としてのヒータ15、ヒータ裏面に配置されたサーミスタ16等からなるヒータユニットと、不図示の加圧手段によりヒータユニットに対して加圧される加圧ローラ11を基本構成とするものである。
【0084】
図6を用いて、本実施形態のフィルム定着装置について詳述する。なお、この定着装置は、特開平4-44075〜44083号公報等に開示の、円筒状の定着フィルムを用いたフィルム加熱方式、加圧ローラ駆動式、テンションレスタイプの加熱定着装置である。
【0085】
加熱源を有する回転体は、定着フィルム13、フィルムガイド14、ヒータ15等から構成されている。加圧部材は加圧ローラ11である。
【0086】
ヒータ15は薄肉、横長のセラミックヒータであり、セラミック基板上に配置された抵抗発熱体と電極、保護ガラス等から構成される。フィルムガイド14は、ヒータ15を保持し、定着ニップ部と反対方向への放熱を防ぐ部材であり、液晶ポリマー、フェノール樹脂、PPS、PEEK等により形成されている。本例のフィルムガイド14は横断面略半円弧状樋型の横長で、耐熱性、電気絶縁性で、高い加重に耐えられる部材であり、ヒータ15はこのフィルムガイド14の下面のほぼ中央部に部材長手に沿って設けた溝部に表面側を下向きに露呈させて嵌入して固定支持させてある。
【0087】
定着フィルム13は円筒状の耐熱性フィルムであり、ヒータを含むフィルムガイド14に対して周長に余裕を持たせた形でルーズに外嵌させてあり、フィルムガイド14は定着フィルム13を内面から支える。
【0088】
定着フィルム13は熱容量の小さなものであり、クイックスタートを可能にするために総厚100μm以下の厚みで耐熱性、熱可塑性を有するポリイミド、ポリアミドイミド、PEEK、PES、PPS、PFA、PTFE、FEP等を単独ないし混合して基層としたフィルムである。また、長寿命の加熱定着装置を構成するために充分な強度を持ち、耐久性に優れたフィルムとして、総厚20μm以上の厚みが必要である。よって定着フィルム13の総厚みとしては20μm以上100μm以下が最適である。さらにオフセット防止や記録材の分離性を確保するために表層には、PFA、PTFE、FEP、シリコーン樹脂等の離型性の良好な耐熱樹脂を混合ないし単独で被覆している。
【0089】
加圧部材としての加圧ローラ11は、不図示の軸受部材に保持させ、フィルムガイド14の下面側に固定支持させたヒータ15の下向き表面に対して定着フィルム13を挟ませて、不図示の加圧手段により長手方向両端部から加熱定着に必要な定着ニップ部を形成するべく十分に加圧されている。加圧ローラ11は不図示の駆動手段により矢印の反時計方向に回転駆動される(加圧用回転体駆動方式)。この加圧ローラ11の回転駆動による該ローラの外面と定着フィルム13の外面との、定着ニップ部における圧接摩擦力で定着フィルム13に回転力が作用して、該定着フィルム13はその内面が定着ニップ部においてヒータ15の下向き表面に密着して摺動しながら矢印の時計方向に加圧ローラ11の回転周速度にほぼ対応した周速度をもってフィルムガイド14の外回りを従動回転状態になる。
【0090】
この場合、フィルムガイド14の外回りを従動回転する円筒状の定着フィルム13はその周長の定着ニップ部とその近傍部の定着フィルム部分以外の定着フィルム部分はテンションフリー(テンションが加わらない状態)の状態にある。
【0091】
定着フィルム13はその内面側がヒータ15およびフィルムガイド14の外面の一部に摺擦しながら回転するため、ヒータ15およびフィルムガイド14と定着フィルム13の間の摩擦抵抗を小さく抑える必要がある。このためヒータ15およびフィルムガイド14の表面に耐熱性グリース等の潤滑剤を少量介在させてある。これにより定着フィルム13はスムーズに回転することが可能となる。
【0092】
加圧ローラ11が回転駆動され、それに伴って円筒状の定着フィルム13がフィルムガイド14の外回りを従動回転状態になり、ヒータ15に通電がなされて、その発熱で定着ニップ部の温度が所定に立ち上がって温調された状態において、定着ニップ部に、未定着トナー像を形成担持させた記録材Pが入口ガイド板9に沿って導入され、定着ニップ部において記録材Pの未定着トナー像担持面側が定着フィルム13の外面に密着して定着フィルム13と一緒に定着ニップ部を挟持搬送されていく。この記録材Pの挟持搬送過程において、ヒータ15の熱が定着フィルム13を介して記録材Pに付与され、記録材P上の未定着トナー像が熱圧定着される。
【0093】
この定着装置を用いて、第二実施形態と同様の画像形成を行ったところ、第二実施形態と同様の結果が得られ、実用上問題のない画像を得ることができた。
【0094】
上記説明した如く、回転体として定着フィルムを用いたフィルム定着装置においても本発明を適用してその効果を得ることができ、画像形成のクイックスタートを可能としつつ、第一の発明と同様、記録材の抵抗や、表面、裏面の抵抗バランスの如何に関わらず、定着ローラと加圧ローラの電位関係を常に良好に保つことができ、回転体表層の絶縁破壊を防止すると同時に、記録材表面のトナーに与えられる電荷と記録材裏面の電荷のバランスを適正に保つことにより、安定してオフセット現象を防止することが可能となる。
【0095】
【発明の効果】
上記説明した如く、本発明に係る定着装置及び画像形成装置においては、単一の電源から分岐して回転体及び加圧部材に電圧を印加し、記録材を通して電極部材に流れる電流経路を形成することにより、記録材の抵抗や、表面、裏面の抵抗バランスの如何に関わらず、定着ローラ10と加圧ローラ11の電位関係を常に良好に保つことができ、回転体表層の絶縁破壊を防止すると同時に、記録材表面のトナーに与えられる電荷と記録材裏面の電荷のバランスを適正に保つことができ、安定してオフセット現象を防止することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【図1】画像形成装置の概略構成図である。
【図2】本実施形態に係る定着装置の構成図である。
【図3】比較例1を説明する定着装置の構成図である。
【図4】比較例2を説明する定着装置の構成図である。
【図5】第二実施形態に係る加圧部材としての加圧ローラの断面図である。
【図6】第三実施形態に係る定着装置の構成図である。
【図7】特許第3053459号公報に掲載されている定着装置の構成を示した図である。
【図8】定着ローラから記録材を通って排出ローラからアースへと流れる電流経路を形成した定着装置を説明する図である。
【図9】定着ローラと排出ローラに別電源からバイアスを印加した定着装置を説明する図である。
【図10】従来の画像形成装置の全体構成を示す断面図である。
【符号の説明】
P …記録材
T1 …一次転写ニップ部
T2 …二次転写ニップ部
1 …感光体ドラム
2 …帯電ローラ
3 …光学装置
4 …現像装置
4a〜d …現像器
5 …転写手段
5a …中間転写ベルト
5b〜d …ローラ
6 …一次転写ローラ
7 …クリーニング装置
8 …二次転写ローラ
9 …入口ガイド板
10 …定着ローラ
10a …アルミニウム円筒
10b …表面層
11 …加圧ローラ
11a …芯金
11b …弾性ゴム層
11c …フッ素樹脂層
11d …表面層
12 …フィルム定着装置
13 …定着フィルム
14 …フィルムガイド
15 …ヒータ
16 …サーミスタ
18 …排出ローラ
21 …クリーニングローラ
30 …電源
30a、30b …電源
Claims (8)
- 少なくとも、加熱源を有する回転体と、該回転体と圧接部を形成する加圧部材とを有し、前記圧接部に記録材を挟持搬送しつつ、該記録材表面に静電的に付着形成されたトナー像を該記録材上に熱定着させる定着装置において、
前記回転体及び前記加圧部材に電圧を印加し、アースに接続された電極部材を前記圧接部より下流側に設けることにより、前記圧接部から前記記録材を通してアースに流れる電流経路を形成するバイアス印加手段を有し、
前記バイアス印加手段は、単一の電源から分岐することにより、前記回転体と前記加圧部材に電圧を印加することを特徴とする定着装置。 - 前記回転体と前記加圧部材に印加される電圧が異なることを特徴とする請求項1記載の定着装置。
- 単一の電源から分岐された電流が、異なる大きさの抵抗を介することにより、前記回転体と前記加圧部材に印加される電圧が異なることを特徴とする請求項2記載の定着装置。
- トナー定着面に接する側の部材の表層抵抗が、トナー非定着面に接する側の部材の表層抵抗よりも大きいことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の定着装置。
- トナー非定着面には前記加圧部材が当接し、該加圧部材は、導電ゴムに絶縁表層を被覆してなることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載の定着装置。
- トナー定着面には前記回転体が当接し、該回転体とは、フィルムガイド表面に固定された発熱手段と、前記フィルムガイドに沿って回転可能な耐熱性の定着フィルムであることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項記載の定着装置。
- 電子写真感光体と、
前記電子写真感光体を帯電させるための帯電手段と、
前記帯電した電子写真感光体を露光するための露光手段と、
前記露光手段により前記電子写真感光体上に形成された静電潜像を現像するための現像手段と、
前記現像像を記録材に転写させるための転写手段と、
前記転写像を記録材に定着させるための定着手段とを有し、
前記定着手段として、請求項1乃至請求項6のいずれか1項記載の定着装置を用いたことを特徴とする画像形成装置。 - 前記現像手段は少なくとも二色のトナーを保持し、
前記画像形成装置は、二色以上の現像像を重ねあわせることによりカラー画像を得る、カラー画像形成装置であることを特徴とする請求項7記載の画像形成装置。
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