JP3807455B2 - ポリ(アリルトリアルキルアンモニウム塩)の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリ(アリルトリアルキルアンモニウム塩)の製造方法に関する。さらに詳しくは、本発明は、アリルトリアルキルアンモニウム塩をラジカル開始剤の存在下に重合させて、低重合度のポリ(アリルトリアルキルアンモニウム塩)を高収率で製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
周知のように、モノアリル化合物は通常のラジカル開始剤によっては重合し難く、ラジカル開始剤を用いた重合では、一般に重合体を低収率で生成するだけである。これはアリル水素原子とラジカルとの反応による自己停止反応が起こるためであると説明され、通常アリル型破壊的連鎖移動と呼ばれている。このことはアリル化合物の一種であるアリルトリアルキルアンモニウム塩についても例外ではなく、通常のラジカル開始剤によっては、痕跡量を得るのみでほとんど重合せず、現在までのところポリ(アリルトリアルキルアンモニウム塩)を高収率で得たという報告は我々の知る限りない。
【0003】
ポリ(アリルトリアルキルアンモニウム塩)は、側鎖に第4級アンモニウム基を含む直鎖のオレフィン系重合体で、水に溶け、水中でプラスに荷電するカチオン系高分子化合物であるので、実用的に極めて興味ある重合体である。そのため、これまで、その製造方法が種々開発されているが、これらの方法は、いずれも他のビニル重合体またはポリアリルアミンを化学修飾して、ポリ(アリルトリアルキルアンモニウム塩)を製造する方法である。例えば、特開昭53−17,687号公報には、塩化アリルの重合体をトリメチルアミンと反応させて、ポリ(アリルトリメチルアンモニウムクロライド)を製造する方法が記載されている。また、米国特許4,053,512号明細書には、ポリ(N,N−ジメチルアクリルアミド)を特殊な試薬で還元し、得られるポリ(N,N−ジメチルアリルアミン)と4級化試薬とを反応させて、ポリ(アリルトリメチルアンモニウム塩)を製造する方法が記載されている。更に、特公昭63−43,402号公報には、ポリアリルアミンに蟻酸とホルムアルデヒドを反応させて、ポリ(N,N−ジメチルアリルアミン)を製造する方法が記載されているが、このポリマーをハロゲン化メチルなどの4級化試薬と反応させることによっても、ポリ(アリルトリメチルアンモニウム塩)の製造は可能である。
【0004】
しかしながら、これらの既知の製造方法は、アリルトリアルキルアンモニウム塩以外の別な単量体から、ある前駆重合体を製造し、次いで、その重合体の側鎖を化学修飾することにより、ポリ(アリルトリアルキルアンモニウム塩)を製造するものである。そのため、これらの方法には製造工程が長くなるのを免れないという問題がある。また、使用する還元試薬が危険であることと、重合体の精製が難しい等の問題があった。その結果、これらの製造方法は、大量のポリ(アリルトリアルキルアンモニウム塩)を製造する方法としては、優れた方法とは言えず、これらの製造方法により工業的にポリ(アリルトリアルキルアンモニウム塩)を製造している例はないのが現状である。
【0005】
そこで、工業的に製造可能な単量体であるアリルトリアルキルアンモニウム塩を重合させて、ポリ(アリルトリアルキルアンモニウム塩)を簡単に製造する方法の開発が望まれていた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、アリルトリアルキルアンモニウム塩の単量体を重合させて、ポリ(アリルトリアルキルアンモニウム塩)を高収率で簡単に製造する方法を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
ポリアリルアミンおよびポリアリルアミンの誘導体であるポリ(N−アルキルアリルアミン)の一般的な製造方法としては、特公平2−14,364号公報、特公平2−57,084号公報に記載されているように、アリルアミンおよびN−アルキルアリルアミンの無機酸塩を、極性溶媒中で、分子中にアゾ基とカチオン性の窒素原子を持つ基とを含むラジカル開始剤の存在下で重合させる方法が知られている。しかし、特公平2−14,364号公報には、アリルアミンの誘導体であるアリルトリアルキルアンモニウム塩の重合に、この方法を適用しても、殆ど重合が起こらず、目的のポリ(アリルトリアルキルアンモニウム塩)は殆ど得られなかったことが記載されている。
【0008】
かかる現状に鑑み、本発明者らは、ポリ(アリルトリアルキルアンモニウム塩)の実用的製造方法を開発すべく鋭意検討した結果、ある種のアリルトリアルキルアンモニウム塩を、ある条件下で反応させると重合が起こり、その結果、ポリ(アリルトリアルキルアンモニウム塩)を高収率で製造できることを見出し、かかる知見に基づいて本発明を成すに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、一般式(I)
【化5】
(式中のRおよびR1は、それぞれ炭素数1〜4のアルキル基を示し、それらはたがいに同一でも異なっていてもよく、R2は炭素数1〜4のアルキル基またはベンジル基、Xn-は陰イオン、nは該陰イオンの価数を示す。)
で表されるアリルトリアルキルアンモニウム塩を、一般式(II)
【化6】
(式中、R3はメチル基またはフェニル基を示す。)
で表されるヒドロペルオキシド化合物及び過酸化水素から選ばれるラジカル開始剤の存在下に、多価アルコールまたは多価アルコールと水との混合物からなる溶媒中において重合させることを特徴とする、一般式(III)
【化7】
(式中のR、R1、R2、Xn-およびnは上記と同じである。)
で表される繰り返し単位を含むポリ(アリルトリアルキルアンモニウム塩)の製造方法を提供するものである。
【0010】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明の方法において用いられる原料の単量体は、一般式(I)
【化8】
(式中のRおよびR1は、それぞれ炭素数1〜4のアルキル基を示し、それらはたがいに同一でも異なっていてもよく、R3は炭素数1〜4のアルキル基またはベンジル基、Xn-は陰イオン、nは該陰イオンの価数を示す。)
で表されるアリルトリアルキルアンモニウム塩である。
【0012】
上記一般式(I)において、R、R1で示される炭素数1〜4のアルキル基およびR2のうちの炭素数1〜4のアルキル基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよく、その具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、シクロブチル基が挙げられるが実用上、炭素数1〜4の直鎖アルキル基が好ましい。Xn-はn価の陰イオンを示し、好ましい陰イオンとしては、一価のCl-、Br-、I-、CH3OSO3 -、CH3−C6H4−SO3 -(p−トルエンスルホン酸イオン)などが挙げられ、特にCl-が好適である。
【0013】
このような一般式(I)で表されるアリルトリアルキルアンモニウム塩としては、原料の入手の容易さや合成のし易さなどの点から、アリルトリメチルアンモニウム塩、アリルベンジルジメチルアンモニウム塩、アリルジメチルエチルアンモニウム塩、アリルジエチルメチルアンモニウム塩が、特に好ましい。
【0014】
本発明の方法においては、重合反応の溶媒として、重合収率を向上させる目的で、多価アルコールまたは多価アルコールと水との混合物が用いられる。溶媒として多価アルコールを用いることにより、重合収率が向上する理由については、必ずしも明確ではないが、多価アルコール1分子中の複数のOH基のOが、複数分子の単量体のN+とそれぞれ相互作用をするため複数分子の単量体の接近が起こりやすくなるので、アリル型破壊的連鎖移動が起こりにくくなり、その結果、重合反応が起こりやすくなるとも考えられる。
【0015】
この多価アルコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、トリメチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、グリセリンなどが例示できる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。多価アルコールと水との混合溶媒は多価アルコール1重量部に対し、水2重量部以下の混合物が好ましい。この溶媒の中で、重合収率の点から、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、ジエチレングリコールなどのグリコール類が特に好ましい。また、この多価アルコールには、所望により一価アルコールを適宜量含有させてもよい。そのような一価アルコールとしてメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールを例示できる。
【0016】
本発明においては、アリルトリアルキルアンモニウム塩の重合に用いるラジカル開始剤と溶媒とが共に−O−H構造を含むことが重要であると考えられる。このことは−O−H構造を含まないラジカル開始剤または溶媒を用いると重合しずらくなることからも支持される。
【0017】
したがって、本発明の方法においては、ラジカル開始剤として、一般式(II)
【化9】
(式中、R3はメチル基またはフェニル基を示す。)
で表されるヒドロペルオキシド化合物及び過酸化水素から選ばれるものが用いられる。上記一般式(II)で表されるヒドロペルオキシド化合物としては、R3がメチル基であるt−ブチルヒドロペルオキシドおよびR3がフェニル基であるクメンヒドロペルオキシドが挙げられる。
【0018】
これらのラジカル開始剤は単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよいが、重合収率の点から、特にt−ブチルヒドロペルオキシドが好ましい。
【0019】
本発明において、単量体であるアリルトリアルキルアンモニウム塩の溶媒に対する濃度は、その溶解度の範囲内で、できるだけ高い濃度であることが好ましい。その濃度は、通常10〜85重量%、好ましくは30〜80重量%である。
【0020】
本発明に用いられるラジカル開始剤の量は、通常、単量体であるアリルトリアルキルアンモニウム塩に対して通常3〜30重量%、好ましくは5〜20重量%である。
【0021】
本発明において重合温度は、ラジカル開始剤の化学構造及び溶媒により異なるが、通常、30℃以上である。その温度の上限は、本発明に用いる溶媒の沸点である。更に、その温度は、重合収率の点から、好ましくは55〜100℃であるが、70〜90℃が特に好ましい。
【0022】
本発明において重合時間は種々の条件で異なるが、比較的長い方が良い。その時間は、通常1〜15日間、好ましくは5〜10日間である。
【0023】
本発明においては、重合が終了した後、反応溶液を、例えば多量のアセトンまたはアセトンと低級アルコールとの混合溶媒に加えることにより、ポリ(アリルトリアルキルアンモニウム塩)を沈殿させ、固体として単離することができる。
【0024】
このようにして、一般式(III)
【化10】
(式中のR、R1、R2、Xn-およびnは前記と同じである。)
で表される繰り返し単位を含み、かつ重量平均分子量が400以上1,000未満の低重合度のポリ(アリルトリアルキルアンモニウム塩)が、高収率で効率よく得られる。本発明の方法において、通常、重量平均分子量が500〜950の重合体が得られるが、触媒の添加量を少なくすると、重量平均分子量は大きくなり、触媒の添加量を多くすると、重量平均分子量は小さくなる。なお、上記重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC法)により測定したポリエチレングリコール換算の値である。
【0025】
【実施例】
以下に、本発明のポリ(アリルトリアルキルアンモニウム塩)の製造方法を実施例で示す。本発明は、これらの実施例によって限定されるものではないことは勿論である。
【0026】
なお、ポリマーの重量平均分子量および重合収率は、日立L−6000型高速液体クロマトグラフを使用し、GPC法によって測定した。溶離液流路ポンプは日立L−6000、検出器はショーデクスRI SE−61示差屈折率検出器、カラムはアサヒパックの水系ゲル濾過タイプのGS−220HQ(排除限界分子量3,000)とGS−620HQ(排除限界分子量200万)とをダブルに接続したものを用いた。サンプルは溶離液で0.5g/100mlの濃度に調整し、20μlを用いた。溶離液には0.4モル/リットルの塩化ナトリウム水溶液を使用した。カラム温度は30℃で、流速は1.0ml/分で実施した。標準サンプルとして分子量106、194、440、600、960、1,470、4,100、7,100、10,300、12,600、23,000の11種のポリエチレングリコールを用いて較正曲線を求め、その較正曲線を基に、ポリ(アリルトリアルキルアンモニウム塩)の重量平均分子量を求めた。更に、クロマトグラムの各成分のピーク面積から、重合収率を算出した。
【0027】
[製造例]
アリルトリメチルアンモニウムクロライドの製造
攪拌機、温度計、滴下漏斗、還流冷却器およびガス導入管を備えた2リットルのセパラブルフラスコ中に、蒸留したアセトン1,021gを入れ、冷却下に温度を5℃以下に保ちながら、攪拌下でトリメチルアミンガス380.3g(6.43モル)を吹き込み溶解させた。次いで、温度を10℃以下に保ちながら、アリルクロライド492.3g(6.43モル)を0.5時間かけて滴下した。滴下開始10分後から結晶が析出し始め、約2時間後には攪拌が不可能となったため、そのまま24時間放置した。反応後、この結晶をガラスフィルターにて濾別し、アセトンで十分に洗浄してから、室温で24時間、次いで50℃で24時間真空乾燥した。収量は732.8gで収率は84.0%であった。得られた結晶の元素分析の結果は、C=52.98%、H=10.35%、N=9.98%であった。これらの値はアリルトリメチルアンモニウムクロライドとしての計算値、C=53.13%、H=10.40%、N=10.33%と一致した。
【0028】
実施例1〜3および比較例1〜14
エチレングリコール中におけるアリルトリメチルアンモニウムクロライドの重 合に対するラジカル開始剤の効果
共栓付きの30ml試験管中に、濃度60重量%のアリルトリメチルアンモニウムクロライドのエチレングリコール溶液5g(22.1ミリモル)を入れ、次いで、表1に示された各種のラジカル開始剤0.15g(モノマーに対して5重量%)を加え、80℃の恒温水槽中で72時間静置重合した。重合後、得られたポリマー溶液を前記のGPC法により分析し、重合収率と重量平均分子量を求めた。その結果を表1に示した。
【0029】
【表1】
注:ラジカル開始剤の仕込み量はモノマーに対する値である。
【0030】
(A):t−ブチルヒドロペルオキシド
(B):クメンヒドロペルオキシド
(C):過酸化水素
(D):2−シアノ−2−プロピルアゾホルムアミド
(E):2,2′−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩
(F):2,2′−アゾビスイソブチロニトリル
(G):2,2′−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]二塩酸塩
(H):2,2′−アゾビス{2−メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル]プロピオンアミド}
(I):2,2′−アゾビス{2−メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)エチル]プロピオンアミド}
(J):2,2′−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]
(K):過硫酸アンモニウム
(L):過硫酸カリウム
(M):過硫酸ナトリウム
(N):過酸化ベンゾイル
(O):ジクミルペルオキシド
(P):過酸化ジ−t−ブチル
(Q):過酸化ラウロイル
【0031】
実施例4〜10
エチレングリコール中におけるアリルトリメチルアンモニウムクロライドの重合に対する重合条件の影響
共栓付きの30ml試験管中に、濃度60重量%のアリルトリメチルアンモニウムクロライドのエチレングリコール溶液5g(22.1ミリモル)を入れ、次いで、ラジカル開始剤としてt−ブチルヒドロペルオキシド0.15gおよび0.30g(モノマーに対して5重量%および10重量%)を加え、80℃および100℃の恒温水槽中で72時間および120時間静置重合した。重合後、得られたポリマー溶液をGPC法により分析し、その結果を表2に示した。
【0032】
【表2】
(A):t−ブチルヒドロペルオキシド
【0033】
実施例11〜13
ラジカル開始剤としてt−ブチルヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシドおよび過酸化水素を用いた、エチレングリコール中におけるアリルトリメチルアンモニウムクロライドの重合
共栓付きの30ml試験管中に、濃度60重量%のアリルトリメチルアンモニウムクロライドのエチレングリコール溶液5g(22.1ミリモル)を入れ、次いで、表3に示された各種のラジカル開始剤0.45g(モノマーに対して15重量%)を加え、80℃の恒温水槽中で120時間静置重合した。重合後、得られたポリマー溶液をGPC法により分析し、その結果を表3に示した。
【0034】
【表3】
注:ラジカル開始剤の仕込み量はモノマーに対する値である。
【0035】
(A):t−ブチルヒドロペルオキシド
(B):クメンヒドロペルオキシド
(C):過酸化水素
【0036】
実施例14〜20および比較例15〜21
各種の溶媒中におけるアリルトリメチルアンモニウムクロライドの重合
共栓付きの30ml試験管中に、濃度50および60重量%のアリルトリメチルアンモニウムクロライドの表4に示された溶液5g(22.1ミリモル)を入れ、次いで、ラジカル開始剤としてt−ブチルヒドロペルオキシド0.15g(モノマーに対して5重量%)を加え、55℃および80℃の恒温水槽中で72時間および120時間静置重合した。重合後、得られたポリマー溶液をGPC法により分析し、その結果を表4に示した。
【0037】
【表4】
注:t−ブチルヒドロペルオキシドの仕込量はモノマーに対する値である。
【0038】
(A):t−ブチルヒドロペルオキシド
EG :エチレングリコール
DEG :ジエチレングリコール
1,2−PD:1,2−プロパンジオール
TMG :トリメチレングリコール
DMAA:ジメチルアセトアミド
DMSO:ジメチルスルホキシド
【0039】
実施例21
フラスコスケールでのポリ(アリルトリメチルアンモニウムクロライド)の製造
攪拌機、温度計、滴下漏斗および還流冷却器を備えた300mlのセパラブルフラスコに、濃度59.5重量%のアリルトリメチルアンモニウムクロライドのエチレングリコール溶液272.7g(1.2モル)を入れ、次いで内温を80℃に保ちながら攪拌下で、濃度80重量%のt−ブチルヒドロペルオキシド10.141g(モノマーに対して5重量%)を4時間かけて滴下し3日間重合した。その後、t−ブチルヒドロペルオキシド20.282g(モノマーに対して10重量%)を滴下し、更に4日間重合を続けた。
【0040】
重合後、得られたポリマー溶液をGPC法により分析した。図1に、そのクロマトグラムを示した。各々のピークは、Aはポリマー、Bはシステムピーク、Cはオリゴマー、Dは未重合のアリルトリメチルアンモニウムクロライドおよびEはエチレングリコールと考えられる。重合収率は93.15%であった。このポリマーの重量平均分子量は881であった。
【0041】
次に、得られたポリマー溶液7.000gを多量のアセトンとメタノールとの混合溶媒250ml(重量比7対1)中に加えて、ポリマーを沈殿させた。この沈殿物を濾別しアセトンで十分に洗浄してから、60℃で48時間真空乾燥し、ポリマー2.108gを得た。このポリマーの元素分析の結果は、C=53.85%、H=10.94%、N=9.78%であった。これらの値はポリ(アリルトリメチルアンモニウムクロライド)の計算値と一致していた。
【0042】
図2に、このポリマーの赤外線吸収スペクトル(KBr法)を示した。吸収スペクトルには、アリル基のδCHに基づく、990cm-1の吸収が無くなったことから、このポリマーの構造としては、ポリ(アリルトリメチルアンモニウムクロライド)の構造が支持される。
【0043】
図3に、このポリマーのプロトン核磁気共鳴(1H−NMR)スペクトルを示した。
【0044】
このスペクトル中、1.9ppmのシャープなシグナルがポリマー末端の(CH3)3C−O(触媒由来)中の水素原子を表わし、4.5ppmのシャープなシグナルがポリマー側鎖の(CH3)3N+中の水素原子を表わすと考えられる。(CH3)3C−Oと(CH3)3N+とのシグナル積分比は、おおよそ1:10である。よって、NMRスペクトルのデータからは、このポリマーの重合度は約10であり、GPCによる分子量測定から求めた重合度9とほぼ一致している。
【0045】
【発明の効果】
本発明の方法によれば、低重合度のポリ(アリルトリアルキルアンモニウム塩)を、ラジカル開始剤にt−ブチルヒドロペルオキシドもしくはクメンヒドロペルオキシドまたは過酸化水素を用いることによって、高収率で製造することができる。しかも、本発明の方法は、重合反応の制御が容易であり、ラジカル開始剤による酸化反応などの副反応もない。したがって、品質の安定した低分子量のポリ(アリルトリアルキルアンモニウム塩)が簡単に製造できるので、工業的に優れた方法である。
【0046】
本発明のポリ(アリルトリアルキルアンモニウム塩)は、現在カチオン系高分子化合物が使用されている分野で、かつ、その溶液粘性が小さいことが望まれる分野などに、極めて有用な材料を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例21で得られたポリ(アリルトリメチルアンモニウムクロライド)のGPCクロマトグラムを示す。
【図2】実施例21で得られたポリ(アリルトリメチルアンモニウムクロライド)のKBr法の赤外線吸収スペクトルを示す。横軸は波数(cm-1)、縦軸は透過率(%)を表わす。
【図3】実施例21で得られたポリ(アリルトリメチルアンモニウムクロライド)のプロトン核磁気共鳴スペクトルを示す。
Claims (1)
- 一般式(I)
で表されるアリルトリアルキルアンモニウム塩を、一般式(II)
で表されるヒドロペルオキシド化合物及び過酸化水素から選ばれるラジカル開始剤の存在下に、多価アルコールまたは多価アルコールと水との混合物からなる溶媒中において重合させることを特徴とする、一般式(III)
で表される繰り返し単位を含むポリ(アリルトリアルキルアンモニウム塩)の製造方法。
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